説明

キャップ及びその製法

【課題】ひさし部の弯曲形状を任意の形状に変更することができるキャップを提供する。
【解決手段】樹脂製芯板材2と芯板材2を被覆する外被布体3とを有するヒサシ部1を備えたキャップに於て、形状保持プラスチック線材4と、形状保持プラスチック線材4を縦添え巻き状に巻き込んで両側縁部5を外鍔状に重ね合わせた帯布包囲材6と、両側縁部6を縫製した第1縫製糸H1 とを、備えた線材内包ユニットGを有する。線材内包ユニットGが、両側縁部5と芯板材2を第2縫製糸H2 にて縫製することにより、芯板材2に取着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のキャップは、ヒサシ部(ツバ)が、前後方向の中心線の両側が下方へしだいに弯曲する(例えば、特許文献1参照)ように形成されている。
【0003】
しかし、ひさし部の弯曲形状を所望の形状に保持させることが難しいという欠点があった。
【特許文献1】特開平9−137315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、ひさし部の弯曲形状が一定であって、任意の形状に変更することができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明に係るキャップは、樹脂製芯板材と該芯板材を被覆する外被布体とを有するヒサシ部を備えたキャップに於て、形状保持プラスチック線材と、該形状保持プラスチック線材を縦添え巻き状に巻き込んで両側縁部を外鍔状に重ね合わせた帯布包囲材と、該両側縁部を縫製した第1縫製糸とを、備えた線材内包ユニットを有し、該線材内包ユニットが、上記両側縁部と上記芯板材を第2縫製糸にて縫製することにより、上記芯板材に取着されているものである。また、上記芯板材が低発泡の熱可塑性樹脂から成るものである。また、上記芯板材と上記外被布体が、上記形状保持プラスチック線材に沿って第3縫製糸にて縫製されているものである。
【0006】
また、本発明に係るキャップの製法は、形状保持プラスチック線材を帯布包囲材にて縦添え巻き状に巻き込んで両側縁部を外鍔状に重ね合わせて、第1縫製糸にて縫製して線材内包ユニットを形成し、該線材内包ユニットを樹脂製芯板材に第2縫製糸にて縫製して線材付芯板材を形成し、該線材付芯板材を外被布体で包囲してヒサシ中間体を形成し、該ヒサシ中間体をキャップ本体と一体化して、ヒサシ部とし、該ヒサシ部を加熱プレスして弯曲させる方法である。また、上記芯板材を低発泡の熱可塑性樹脂とした方法である。また、上記線材付芯板材を外被布体で包囲した後に、上記芯板材と上記外被布体を、上記形状保持プラスチック線材に沿って第3縫製糸にて縫製して、ヒサシ中間体を形成した方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のキャップによれば、使用者の好みで、また時に応じて、自由自在なひさし部の弯曲形状や折曲形状に容易に変形させることができる。そして、その弯曲形状や折曲形状を長期使用期間にわたって確実に保持することができる。また、本発明のキャップの製法によれば、容易に製造することができる。特に、形状保持プラスチック線材を芯板材にミシンにて高能率に取着可能である。また、形状保持プラスチック線材を芯板材の正確な位置に取着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1〜図4は、本発明の実施の一形態を示す。このキャップは、自由自在な弯曲形状や折曲形状に変形させてその弯曲形状や折曲形状を長期使用期間にわたって確実に保持することができるヒサシ部1を備えている。図1は、ヒサシ部1をゆるやかに(大きな曲率半径Rで)弯曲させた状態を示す。図2は、ヒサシ部1を極端に(小さな曲率半径rで)弯曲させた状態を示す。なお、図1・図2に於て、(後述の)第3縫製糸H3 を図示省略した。
【0009】
ヒサシ部1が、樹脂製芯板材2と芯板材2を被覆する外被布体3とを有する。芯板材2は、具体的には、低発泡の熱可塑性樹脂(ポリエチレン等)から成る。形状保持プラスチック線材4(後述)と、形状保持プラスチック線材4を縦添え巻き状に巻き込んで両側縁部5を外鍔状に重ね合わせた帯布包囲材6と、両側縁部5を縫製した第1縫製糸H1 とを、備えた線材内包ユニットGを有する。線材内包ユニットGが、両側縁部5と芯板材2を第2縫製糸H2 にて縫製することにより、芯板材2に取着されている。芯板材2と外被布体3が、形状保持プラスチック線材4に沿って第3縫製糸H3 にて縫製されている。
【0010】
「形状保持プラスチック線材」とは、塑性変形性(言い換えると、自由に折曲げることができ、かつ、折曲げた時の戻り量が小さく、変形前の形状に戻らない性質)を有するプラスチック線材をいう。例えば、糸状塑性変形性ポリエチレン材料が挙げられる。
【0011】
次に、図5〜図11に於て、本発明のキャップの製法について説明する。まず、図5に示すように、形状保持プラスチック線材4を帯布包囲材6にて縦添え巻き状に巻き込んで両側縁部5を外鍔状に重ね合わせて、第1縫製糸H1 にて縫製して線材内包ユニットGを形成する。
【0012】
次に、図6に示すように、線材内包ユニットGを樹脂製芯板材2に第2縫製糸H2 にて縫製して線材付芯板材7を形成する。次に、図7・図8に示すように、線材付芯板材7を袋状外被布体3で包囲する。外被布体3が、表外被布体3aと裏外被布体3bから成る。また、外被布体3が、織布又は不織布から成る。その後、図9に示すように、芯板材2(図3・図6・図7・図8参照)と外被布体3を、形状保持プラスチック線材4に沿って第3縫製糸H3 にて縫製してヒサシ中間体Tを形成する。
【0013】
図10に示すように、ヒサシ中間体Tをキャップ本体8と一体化してヒサシ部1とする。その後、ヒサシ部1を加熱プレスして弯曲させる。なお、加熱プレスとは、あらかじめ加熱した状態でプレスする場合と、加熱しながらプレスする場合の両方を含むものとする。加熱温度は、例えば、 120℃以上 150℃以下に設定するのが好ましい。加熱温度が、下限値未満の場合はプレスが不十分であり、上限値を超える場合はエネルギーが無駄である。加熱プレス後、冷風を吹き付けてヒサシ部1を弯曲させるも好ましい。
【0014】
本発明は、設計変更可能であって、例えば、形状保持プラスチック線材4の本数を増減させるも自由である。すなわち、形状保持プラスチック線材4を1本又は3本以上とするも良い。また、形状保持プラスチック線材4の横断面形状は、楕円形、六角形等とするも良い。さらに、第3縫製糸H3 による縫製を省略して、(第3縫製糸H3 を有さない)ヒサシ中間体Tとするも良い。
【0015】
以上のように、本発明は、樹脂製芯板材2と芯板材2を被覆する外被布体3とを有するヒサシ部1を備えたキャップに於て、形状保持プラスチック線材4と、形状保持プラスチック線材4を縦添え巻き状に巻き込んで両側縁部5を外鍔状に重ね合わせた帯布包囲材6と、両側縁部5を縫製した第1縫製糸H1 とを、備えた線材内包ユニットGを有し、線材内包ユニットGが、両側縁部5と芯板材2を第2縫製糸H2 にて縫製することにより、芯板材2に取着されているので、使用者の好みで、また時に応じて、自由自在なひさし部1の弯曲形状や折曲形状に容易に変形させることができる。特に、芯板材2の弯曲癖と形状保持プラスチック線材4の形状保持効果(塑性変形性)との相乗効果により、任意の弯曲形状や折曲形状を長期使用期間にわたって確実に保持することができる。
【0016】
さらに、形状保持プラスチック線材4が軽量であり、着用感が良い。また、形状保持プラスチック線材4はプラスチックから成るので、針金のように長期使用時に先端が露出して怪我の原因となることを防止することができる。
【0017】
また、芯板材2が低発泡の熱可塑性樹脂から成るので、容易に芯板材2を変形させることができる。すなわち、形状保持プラスチック線材4によって、容易にヒサシ部1全体を任意の弯曲形状に変形させて保持することができる。
【0018】
また、芯板材2と外被布体3が、形状保持プラスチック線材4に沿って第3縫製糸H3 にて縫製されているので、形状保持プラスチック線材4の外被布体3内での移動を、第2縫製糸H2 による縫製とともに、規制することができる。言い換えると、第3縫製糸H3 によって、第2縫製糸H2 による縫製を補強することができる。
【0019】
また、形状保持プラスチック線材4を帯布包囲材6にて縦添え巻き状に巻き込んで両側縁部5を外鍔状に重ね合わせて、第1縫製糸H1 にて縫製して線材内包ユニットGを形成し、線材内包ユニットGを樹脂製芯板材2に第2縫製糸H2 にて縫製して線材付芯板材7を形成し、線材付芯板材7を外被布体3で包囲してヒサシ中間体Tを形成し、ヒサシ中間体Tをキャップ本体8と一体化して、ヒサシ部1とし、ヒサシ部1を加熱プレスして弯曲させるので、容易に製造することができる。特に、形状保持プラスチック線材4を芯板材2にミシンにて高能率に取着可能である。また、形状保持プラスチック線材4を芯板材2の正確な位置に取着することができる。
【0020】
また、芯板材2を低発泡の熱可塑性樹脂としたので、容易に芯板材2を加熱プレスして弯曲させることができる。
また、線材付芯板材7を外被布体3で包囲した後に、芯板材2と外被布体3を、形状保持プラスチック線材4に沿って第3縫製糸H3 にて縫製して、ヒサシ中間体Tを形成したので、形状保持プラスチック線材4の外被布体3内での移動を、第2縫製糸H2 による縫製とともに、規制することができる。言い換えると、第3縫製糸H3 によって、第2縫製糸H2 による縫製を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の一形態を示す簡略正面図である。
【図2】ヒサシ部の弯曲形状を変更した状態を示す簡略正面図である。
【図3】図3のX−X断面拡大図である。
【図4】底面図である。
【図5】線材内包ユニットを示す拡大横断面図である。
【図6】線材付芯板材を示す図であって、(A)は底面図であり、(B)はそのY−Y断面拡大図である。
【図7】本発明の製法を示す斜視図である。
【図8】要部拡大断面図である。
【図9】ヒサシ中間体を示す平面図である。
【図10】キャップ本体にヒサシ中間体を一体化した直後の状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ヒサシ部
2 芯板材
3 外被布体
4 形状保持プラスチック線材
5 両側縁部
6 帯布包囲材
7 線材付芯板材
8 キャップ本体
G 線材内包ユニット
T ヒサシ中間体
1 第1縫製糸
2 第2縫製糸
3 第3縫製糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製芯板材(2)と該芯板材(2)を被覆する外被布体(3)とを有するヒサシ部(1)を備えたキャップに於て、
形状保持プラスチック線材(4)と、該形状保持プラスチック線材(4)を縦添え巻き状に巻き込んで両側縁部(5)を外鍔状に重ね合わせた帯布包囲材(6)と、該両側縁部(5)を縫製した第1縫製糸(H1 )とを、備えた線材内包ユニット(G)を有し、該線材内包ユニット(G)が、上記両側縁部(5)と上記芯板材(2)を第2縫製糸(H2 )にて縫製することにより、上記芯板材(2)に取着されていることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
上記芯板材(2)が低発泡の熱可塑性樹脂から成る請求項1記載のキャップ。
【請求項3】
上記芯板材(2)と上記外被布体(3)が、上記形状保持プラスチック線材(4)に沿って第3縫製糸(H3 )にて縫製されている請求項1又は2記載のキャップ。
【請求項4】
形状保持プラスチック線材(4)を帯布包囲材(6)にて縦添え巻き状に巻き込んで両側縁部(5)を外鍔状に重ね合わせて、第1縫製糸(H1 )にて縫製して線材内包ユニット(G)を形成し、該線材内包ユニット(G)を樹脂製芯板材(2)に第2縫製糸(H2 )にて縫製して線材付芯板材(7)を形成し、該線材付芯板材(7)を外被布体(3)で包囲してヒサシ中間体(T)を形成し、該ヒサシ中間体(T)をキャップ本体(8)と一体化して、ヒサシ部(1)とし、該ヒサシ部(1)を加熱プレスして弯曲させることを特徴とするキャップの製法。
【請求項5】
上記芯板材(2)を低発泡の熱可塑性樹脂とした請求項4記載のキャップの製法。
【請求項6】
上記線材付芯板材(7)を外被布体(3)で包囲した後に、上記芯板材(2)と上記外被布体(3)を、上記形状保持プラスチック線材(4)に沿って第3縫製糸(H3 )にて縫製して、ヒサシ中間体(T)を形成した請求項4又は5記載のキャップの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−19302(P2009−19302A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182531(P2007−182531)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(301015967)株式会社コカジ (4)