説明

キャビネット構造

【課題】広い天板スペースを確保することができ、しかも、奥行き幅をとらない引出しを備えたキャビネットを提供する。
【解決手段】キャビネット本体2から前方側へ引き出し可能に引出し6が設けられ、この引出し6には天板7が備えられているキャビネットにおいて、天板7の後端部には、引出し6がキャビネット本体2内に収納された時に、折り畳まれる拡張天板9が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面に天板を有する引出しを備えたキャビネットの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、キャビネットのけこみ板から、踏み台を前方へスライドさせて引き出し可能に設け、引き出した踏み台の上に乗って、上方のキャビネット等から収納物等を取り出すことができるように構成したキャビネット構造が存在する。
【特許文献1】特開昭62−290409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記引き出し可能な踏み台を備えたキャビネットにおいて、キャビネット内部には給水,排水等の配管が設けられており、これらの配管との干渉を避けるためには踏み台の奥行き寸法を短く設定する必要があり、そのため踏み台を引き出してその上に乗る際に、スペースが狭く、使い勝手が悪くなってしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、使用する際に天板のスペースを十分に確保することのできるキャビネット構造を提供するものであり、その請求項1は、キャビネット本体から前方側へ引き出し可能に引出しが設けられ、該引出しの上面には天板が備えられているキャビネットにおいて、前記天板の後端部には、前記引出しがキャビネット本体内に収納された時に、折り畳まれる拡張天板が設けられていることである。
【0005】
また、請求項2は、前記引出しが前方側へ引き出された時に、前記拡張天板がほぼ水平状態となるように、前記キャビネット本体の側板にガイドを設けたことである。
【0006】
また、請求項3は、前記拡張天板はヒンジを介し、折り畳まれた状態から水平状態へ回動可能に設けられているとともに、前記ガイドには、前方側へ向かって上傾したガイド面が設けられ、引出しが前方側へ引き出される時に前記ガイド面に沿って前記拡張天板が折り畳まれた状態から水平状態に移行するように構成したことである。
【0007】
また、請求項4は、前記ガイドは、複数のローラーで構成されていることである。
【0008】
また、請求項5は、前記天板の後端部に、収納された時に略垂直状態に折り畳まれる拡張天板が設けられていることである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のキャビネット構造は、キャビネット本体から前方側へ引き出し可能に引出しが設けられ、該引出しの上面には天板が備えられているキャビネットにおいて、前記天板の後端部には、前記引出しがキャビネット本体内に収納された時に、折り畳まれる拡張天板が設けられていることにより、引出しはキャビネット本体内に収納される時には拡張天板が折り畳まれるため、奥行き寸法は小さくなり、キャビネット内部の給水,排水配管との干渉を避けることができ、コンパクトに収納されるものとなり、引出しを前方側へ引き出して使用する際には、拡張天板の分だけ天板スペースを広く確保することができるものとなる。
なお、「折り畳まれる」とは、天板に対し拡張天板が一定の角度をもって収納される状態、或いは、天板に対し拡張天板が重ね合わされる状態を含むものである。
【0010】
また、前記引出しが前方側へ引き出された時に、前記拡張天板がほぼ水平状態となるように、前記キャビネット本体の側板にガイドを設けたことにより、引出しを前方側へ引き出す際に、キャビネット本体に設けられたガイドに沿って拡張天板が水平状態となり、拡張天板と引出し天板とを加えた広いスペースとなる。
【0011】
また、前記拡張天板はヒンジを介し、折り畳まれた状態から水平状態へ回動可能に設けられているとともに、前記ガイドには、前方側へ向かって上傾したガイド面が設けられ、引出しが前方側へ引き出される時に前記ガイド面に沿って前記拡張天板が折り畳まれた状態から水平状態に移行するように構成したことにより、キャビネット本体側に設けられたガイドの上傾したガイド面に沿って良好に拡張天板が折り畳まれた状態から水平状態へ回動されてゆき、引出しを引き出す時にスムーズに拡張天板を水平状態にすることができるものとなる。
【0012】
また、前記ガイドは、複数のローラーで構成されていることにより、複数のガイドローラーを側板に取り付ける際に、配列および高さ位置等を適宜調整しやすいものであり、複数のガイドローラーの取り付け位置の自由度があり、良好に拡張天板が垂直状態から水平状態へ移行するように複数のガイドローラーの配列を決めることができ、複数のガイドローラーに沿って良好に拡張天板が折り畳まれた状態から水平状態へ回動されてゆき、引出しを引き出す時にスムーズに拡張天板を水平状態にすることができるものとなる。
【0013】
また、前記天板の後端部に、収納された時に略垂直状態に折り畳まれる拡張天板が設けられていることにより、引出しはキャビネット本体内に収納される時には拡張天板が略垂直状態に折り畳まれるため、奥行き寸法は小さくなり、キャビネット内部の給水,排水配管との干渉を避けることができ、コンパクトに収納されるものとなり、引出しを前方側へ引き出して使用する際には、拡張天板が略垂直状態から水平状態へ回動されてゆき、拡張天板の分だけスペースを広く確保することができるものとなる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、洗面台を構成するキャビネット1の斜視構成図であり、また図2は、キャビネットの下部の拡大正面構成図である。
キャビネット本体2は、左右の側板2a,2bと背板2cで前面側および上面が開放された箱状に形成されて、前方側へ引き出し可能に収納部3が設けられており、また、上面にはカウンター一体型の洗面器4が設置されている。この洗面器4の後方には水栓5およびハンドル5aが立設されている。
【0015】
また、キャビネット本体2の底側には、前方側へ引き出し可能に引出し6が設けられている。
この引出し6は、図3に側面図で示すような構造となっている。
即ち、引出し6の左右の側板6aには、前後方向に略水平に延びてスライドレール10が固設され、引出し6の前面側には、上前板6bと下方の下前板6cが設けられており、引出し6の上面には、上方側へ開閉可能に天板7が水平に設けられている。また、引出し6の底側にはキャスター11,11が設けられており、このキャスター11を介して引出し6を床面上で前後方向に移動させることができる。
【0016】
また、引出し6の天板7の後端側には、拡張天板9が設けられており、この拡張天板9は、引出し6の背面に固設されたヒンジ(蝶番)8に連結され、ヒンジ(蝶番)8を介して、天板7と面一状をなす水平状態の使用位置から、略垂直状態となる収納位置に亘り回動可能となっている。
更に、引出し6の側板6aには、ロック金具12が固設されており、このロック金具12に、軸部13aを中心として上下方向に回動可能にロックバー13が設けられ、ロックバー13は、ロック金具12に形成されている上下方向に長い長孔部12aの寸法分だけ上下方向に回動できるように構成されている。
【0017】
一方、キャビネット本体2側には図6および図7に示すように、その左右の側板2a,2bの何れかまたは両方の内側に、板状のガイド14が固設され、ガイド14の前部上端には、L字状断面のストッパーアングル16が固設されている。
また、ガイド14の下端側には、図示しない固定レールが略水平に固定されており、このキャビネット本体2側に固定された固定レールに対し、引出し6に固設されたスライドレール10が係合して、固定レールに沿ってスライドレール10が前後方向にスライドされて、引出し6がキャビネット本体2から前方側へ引き出されるように構成されている。
【0018】
前記ガイド14は、図4の正面図で、また図5の側面図で示すような構造となっており、上面側にはガイド面15が形成されており、ガイド面15は、後方側から前方側へ向かって上傾する上傾面15aの上端に、略水平な上水平面15bが前端側に設けられており、また、上傾面15aの後端側には下水平面15cが形成されている。
このガイド14のガイド面15上に、引出し6の拡張天板9の側端部が当接状に乗り、このガイド面15に沿って、引出し6が移動する際に、拡張天板9が垂直状態から水平状態に移動されるものである。
【0019】
図7では、キャビネット本体2内に引出し6が収納された状態を示しており、この状態では、拡張天板9はヒンジ(蝶番)8を介して自重により略垂直状態となり、引出し6の背側に折り畳まれて、コンパクトに収納された状態に維持されるものである。従って、この状態では、キャビネット本体2内に配管されている排水管17等に拡張天板9が干渉することはなく、コンパクトに引出し6はキャビネット本体2内に収納されるものである。
【0020】
この状態から引出し6を前方側へ図6のように引き出すと、前方側へ引き出すにつれて拡張天板9がガイド14の上傾面15aに当接状態となり、拡張天板9は上傾面15aに沿って次第に垂直状態から水平状態に起き上がってゆき、引出し6を前方側へ十分に引き出した状態では、図6のように、拡張天板9はガイド14の上水平面15b上に乗り略水平となって、引出しの天板7とその上面が面一状をなし、あたかも天板7の後部が拡張天板9の分だけ拡張されたような広いスペースが確保されることとなる。
従って、天板7および拡張天板9による広い踏み台となり、その上に良好に乗って、上方側に設置されているキャビネット内の収納物の取り出し等を良好に行うことができるものであり、広いスペースが確保されるため、踏み台としての使用が良好なものとなる。
【0021】
また、図6の状態では、ロックバー13の前端側が自重により下方側に傾き、ロックバー13の後端側がストッパーアングル16に整合され、この状態では、引出し6をキャビネット本体2側へ押し込もうとしても、ロックバー13とストッパーアングル16の当接により阻止されるものである。なお、引出し6をキャビネット本体2内に収納させる際には、ロックバー3の前端を上方側へ押し上げて、ロックバー13をストッパーアングル16から外すことにより、容易に引出し6を収納させることができるものである。
【0022】
次に、図8〜図10はキャビネットの変更例を示すものであり、図8〜図10のキャビネットでは、引出し6の上下寸法が400mmの高い寸法に設定されたものである。
引出し6の上面には、ベンチ台として腰掛けることのできる天板7が設けられており、この天板7の後端にヒンジ8を介して拡張天板9が連結されており、この拡張天板9は、図10の収納状態では、水平な天板7に対し垂直に折り畳まれて収納されるものである。
なお、引出し6の上方に引き出し可能に設けられている収納部3は、図1および図2のものよりも上下寸法が小さく形成されている。
【0023】
このように、引出し6と収納部3の寸法が、前述した実施例とは異なる寸法に設定されており、その他、前述した実施例と異なる点は、キャビネット本体2の左右の側板2a,2bの何れかまたは両方の内側に、ガイド14に代えて複数のガイドローラー19が設けられている点である。
この複数のガイドローラー19は、前面側から背板2c側に向かって湾曲状に下傾した軌跡上に複数配置されたものであり、図10の引出し6の収納状態から徐々に引出し6を前方側へ引き出してゆくと、垂直状態に折り畳まれている拡張天板9が後端側のガイドローラー19から次第に前方側のガイドローラー19に当接してゆき、垂直状態から徐々に水平状態に移行し、引出し6を完全に引き出した状態では、拡張天板9は天板7と面一状の水平状態になるように設定されている。この状態では、天板7の後部に更に拡張天板9が加わり、広い面積のベンチ台が形成されることとなり、安定して広い面積の天板7および拡張天板9上に腰を降ろすことができるものである。また、この広い面積の天板7,9上は、様々な調理等の作業台としても有効に使用することができるものとなる。
【0024】
本例では、前記ロックバー13の形状も変更されており、ロックバー13は、横方向に延びる横棒部13bの前端に上方へ一体状に立ち上げて立上部13cが形成され、立上部13cの上端で後方側へ略水平に折り曲げて操作部13dが一体形成されたものであり、引出し6を引き出した状態では、横棒部13bの後端がキャビネット本体2の側板2bに固定されているストッパーアングル16に当接して、後方側への移動が良好に規制されるものである。
この状態から、操作部13dを手で上方へ引き上げることにより、横棒部13bが略水平状態となってストッパーアングル16から離れ、この状態で良好に引出し6を収納方向へ移動させてキャビネット本体2側へ収納させることができるものである。
【0025】
なお、図9中10aは、キャビネット本体の側板2a,2bに固定された横方向に延びる固定レールであり、この固定レール10aに、引出し6の側面に固定状に設けられているスライドレール10が係合されて、固定レール10aに沿ってスライドレール10が引出し6と共に前後方向に移動できるものである。
なお、キャビネット本体の側板2a,2bの内側の底側には、桟木18が立設されており、引出し6の収納状態では、引出し6の後端がこの桟木18に当接するように構成されている。
その他の構成は、前述した実施例とほぼ同様であり、ほぼ同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0026】
このように本例では、拡張天板9のガイドとして、複数のガイドローラー19をキャビネット本体の左右の側板2a,2bの何れかまたは両方の内側に湾曲状に配列させたものであり、この複数のガイドローラー19を側板2a,2bに取り付ける際に、湾曲状の配列および高さ位置等を適宜調整しやすいものであり、複数のガイドローラー19の取り付け位置の自由度があり、良好に拡張天板9が垂直状態から水平状態へ移行するように複数のガイドローラー19の配列を決めることができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】踏み台となる引出しを備えたキャビネットの斜視構成図である。
【図2】図1のキャビネットの下部の正面拡大構成図である。
【図3】引出しの側面構成図である。
【図4】キャビネット本体の側板の内側に固設されるガイドの正面構成図である。
【図5】ガイドの側面構成図である。
【図6】キャビネット本体から引出しを引き出して踏み台として使用する状態の側面構成図である。
【図7】引出しをキャビネット本体内に収納させた状態の側面構成図である。
【図8】キャビネットの別例を示すキャビネットの正面構成図である。
【図9】図8のキャビネット本体から引出しを引き出した状態の側面構成図である。
【図10】図8のキャビネット本体内に引出しを収納させた状態の側面構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1 キャビネット
2 キャビネット本体
2a,2b 側板
2c 背板
3 収納部
4 洗面器
6 引出し
6a 側板
6b,6c 前板
7 天板
8 ヒンジ(蝶番)
9 拡張天板
10 スライドレール
10a 固定レール
11 キャスター
12 ロック金具
13 ロックバー
13b 横棒部
13d 操作部
14 ガイド
15 ガイド面
15a 上傾面
15b 上水平面
16 ストッパーアングル
17 排水管
18 桟木
19 ガイドローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット本体から前方側へ引き出し可能に引出しが設けられ、該引出しの上面には天板が備えられているキャビネットにおいて、
前記天板の後端部には、前記引出しがキャビネット本体内に収納された時に、折り畳まれる拡張天板が設けられていることを特徴とするキャビネット構造。
【請求項2】
前記引出しが前方側へ引き出された時に、前記拡張天板がほぼ水平状態となるように、前記キャビネット本体の側板にガイドを設けたことを特徴とする請求項1に記載のキャビネット構造。
【請求項3】
前記拡張天板はヒンジを介し、折り畳まれた状態から水平状態へ回動可能に設けられているとともに、前記ガイドには、前方側へ向かって上傾したガイド面が設けられ、引出しが前方側へ引き出される時に前記ガイド面に沿って前記拡張天板が折り畳まれた状態から水平状態に移行するように構成したことを特徴とする請求項2に記載のキャビネット構造。
【請求項4】
前記ガイドは、複数のローラーで構成されていることを特徴とする請求項2に記載のキャビネット構造。
【請求項5】
前記天板の後端部に、収納された時に略垂直状態に折り畳まれる拡張天板が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4何れかに記載のキャビネット構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−50677(P2009−50677A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283834(P2007−283834)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】