説明

キャビネット

【課題】収納物の増減等に合わせて、框体の段数を変更しうるとともに、扉の高さもこれに合わせて変更でき、収納スペースを増減できるようにする。
【解決手段】下部筐体31の上に上部筐体32を載置し、下部筐体31の下端前縁に下レール33を、また上部筐体32の上端前縁に上レール34をそれぞれ設け、上下のレール34、31の対向面間に、下部筐体31の前面を開閉する扉1の上端に、上部筐体32の前面を開閉するアドオン扉11を着脱自在に設けた2枚の扉を、それぞれ左右方向に摺動自在に嵌合し、下部筐体31のみで使用するときは、上レール34を上部筐体32から外して、下部筐体31の前上部に取り付け、かつ扉1からアドオン扉11を外して、扉1のみを上下のレールの前後2条のガイド溝間に、それぞれ左右方向に摺動自在に嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納物の増減に応じて、筐体の段数を変更しうるとともに扉の高さもこれに合わせて変更できるようにしたキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
スペースが限られたオフィスにおいて、収納物を増加した場合、本体キャビネットの上に、上置きキャビネットを複数段に積み重ねることがある。この場合、両キャビネットのための扉の態様については、従来2つのものが知られていた。
【0003】
その1つは、図11に示すように、前面が開口する筐体(51)の前面に、把手(52)付きの両開き式の扉(53)を設けた本体キャビネット(54)の上に、筐体(55)の前面に把手(56)付きの扉(57)を備える上置きキャビネット(58)を載置するものである。
【0004】
もう1つは、図12に示すように、図11のものと同様の本体キャビネット(54)の上に、扉のない上置きキャビネット用の筐体(55)を載置し、それらの前面に、両筐体(51)(55)の高さの和と等しい高寸の扉(59)を付け替えるものである。この態様では、扉(59)には、上述の扉(53)におけるのとほぼ同じ位置に、ただ1個の把手(60)が設けられる。
【0005】
さらに、次のような公知の特許文献もある。
【特許文献1】実開平2−1391号公報
【特許文献2】特開昭60−83611号公報
【特許文献3】実開昭61−94188号公報
【特許文献4】特開昭52−10027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前者においては、上置きキャビネット(58)専用の扉(57)の把手(56)が高い位置にあるため、扉の開け閉めが不自由である。また、本体キャビネット(54)の扉(53)と上置きキャビネット(58)専用の扉(57)との間に境界線ができるので、意匠的な観点から、ユーザの嗜好に合わないこともある。
【0007】
他方、後者の態様においては、本体キャビネット(54)用の扉(53)とは別に、高寸の扉(59)を用意しておかなければならず、使用しない方の扉の保管が面倒である。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、収納物の増減等に合わせて、框体の段数を変更しうるとともに、扉の高さもこれに合わせて変更でき、収納スペースを増減できるようにしたキャビネットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 基本となる下部筐体の上に、上置き用の上部筐体を載置し、下部筐体の下端前縁に下レールを、また上部筐体の上端前縁に上レールをそれぞれ設け、上下のレールの対向面間に、下部筐体の前面を開閉する扉の上端に、上部筐体の前面を開閉するアドオン扉を着脱自在に設けた上下方向の長さを大とした2枚の扉を、それぞれ左右方向に摺動自在に嵌合し、前記下部筐体のみで使用するときは、前記上レールを上部筐体から外して、下部筐体の前上部に取り付け、かつ前記上下方向の長さを大とした扉からアドオン扉を外して、上下方向の長さを小とした扉を、上下のレール間に、それぞれ左右方向に摺動自在に嵌合しうるようにする。
【0010】
(2) 上記(1)項において、上下のレールの対向面に、前後2条のガイド溝を設け、下レールのガイド溝に、扉の下端部を、左右方向に摺動自在に嵌合し、上レールのガイド溝に、上下方向の長さを小としたときの扉の上端部と、アドオン扉の上端部とのいずれをも、左右方向に摺動自在に嵌合しうるようにする。
【0011】
(3) 基本となる下部筐体の上に、上置き用の上部筐体を載置し、前記下部筐体の両側部に枢着した下部筐体の前面開閉用の扉の上端に、上部筐体の前面開閉用のアドオン扉を着脱自在に設け、上置き用の上部筐体を外して、下部筐体のみで使用するときは、下部筐体に枢着した扉から、前記アドオン扉を外すようにする。
【0012】
これらの構成とすると、収納物の増減に合わせて、下部框体の上に上部框体を載置したり、取り外したりして、収納スペースを自在に変更し、かつ扉の高さもキャビネット筐体の高さに合わせて自在に変更できる。
【0013】
(4) 上記(1)または(2)項において、基本となる扉が、縦枠と、この縦枠の上下端にそれぞれ取付けられる横枠と、これら縦枠と横枠に支持されるパネルとを備え、アドオン扉が、前記縦枠の上端から横枠を取外して前記縦枠の上端に連設されるアドオン縦枠と、このアドオン縦枠に両側を支持されながら前記パネルの上端の上に中間枠を介して連続して配置され、かつ前記横枠を前記アドオン縦枠に取付けることによって上端部を支持されるアドオンパネルを備え、前記アドオン縦枠は、前記縦枠とアドオン縦枠の双方に差し込み可能なアドオン連結金具を介して縦枠に連設されるようにする。
【0014】
このような構成とすると、基本となる下部筐体を閉塞していた元の扉の各構成部材をそのまま使用して、積み重ねた上部筐体全体の高さにわたって覆うことのできる上下方向の長さが長い1枚の扉を簡単に形成することができ、高さ変更の可能性のあるキャビネット用の扉として、有意義に使用することができる。
また、特別なパネル固定部材を用いることなく、パネルおよびアドオンパネルの取付けを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、収納物の増減等に合わせて、框体の段数を変更しうるとともに、扉の高さもこれに合わせて変更でき、収納スペースを増減できるようにしたキャビネットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態を、添付の図面を参照して説明する。なお、共通の要素には、各図にわたって同一の符号を付してある。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る、キャビネットの扉(1)を示す正面図であり、図2は、図1の扉(1)に、アドオンパネル(2)等を取り付ける前の状態を示す正面図である。
【0018】
図2において、扉(1')は、2本の縦枠(3)と、その上下端にそれぞれ取付けられる横枠(4)とによってパネル(5)を支持してなる。パネル(5)は、仕切枠(6)を介して縦方向に配列される複数の分割パネル(5a)からなる。中ほどにある分割パネル(5a)には把手(7)が設けられている。複数の分割パネル(5a)の高さは、それぞれユーザの嗜好に応じて種々のものを選択でき、またどのような順序で配列することもできる。なお、パネル(5)を、ただ1枚の板で構成することもできる。
【0019】
図1において、扉(1)には、2本の縦枠(3)の上端に、それぞれアドオン縦枠(11)が連設され、これらアドオン縦枠(11)(11)の間には、アドオンパネル(2)が配置されている。アドオンパネル(2)は、パネル(5)の上に中間枠(12)を介して連設される。アドオンパネル(2)が取付けられたこと以外に変わったところはないため、把手(7)の位置は変わらない。
【0020】
図3は、図2に示す扉(1)の上端部の拡大背面図である。また、図4〜図6は、それぞれ、図3における横枠(4)、縦枠(3)および仕切枠(6)の断面図である。
【0021】
縦枠(3)には、その上端にL金具(13)を介して、横枠(4)の左右両端が、ねじ(14)によって連結されている。L金具(13)は、図4と図5にそれぞれ示すように、横枠(4)の段差部(4a)と縦枠(3)の段差部(3a)に当てがわれることによって容易に位置決めすることができる。
【0022】
また、図4に示す横枠(4)の下面には溝(4b)が設けられ、最上段の分割パネル(5a)は、上端がこの溝(4b)に差し込まれることにより支持される。なお、縦枠(3)の下端に取付けられる横枠の場合は、その上面に同様の溝が設けられ、最下段の分割パネル(5a)の下端が、この溝に差し込まれることによって支持される。
【0023】
他方、図5に示す縦枠(3)の右面には、溝(3b)が設けられているが、もう一方の縦枠(3)の左面にも同様に溝(3b)が設けられている。各分割パネル(5a)の左右両端がこれらの溝(3b)にそれぞれ差し込まれることによって、各分割パネル(5a)は確実に支持される。なお、縦枠(3)には、上下方向を向く中空部(3c)が設けられているが、これは、後述するアドオン連結金具(15)を挿入するためのものである。
【0024】
さらに、図3に示す2枚の分割パネル(5a)の間には仕切枠(6)が介在するが、この仕切枠(6)の上面と下面には、図6に示すようにそれぞれ上溝(6a)と下溝(6b)が設けられ、上方と下方からそれぞれ分割パネル(5a)の下端と上端が差し込まれて支持される。
【0025】
上述の扉(1)において、図1に示したようなアドオンパネル(2)を装着するには、次のようにする。図7は、アドオン縦枠(11)とアドオンパネル(2)を取付けたキャビネットの扉(1)の上部の拡大分解図である。
【0026】
まず、縦枠(3)とこの縦枠(3)に取付けた分割パネル(5a)と仕切枠(6)はそのままにして、L金具(13)を締結していたねじ(14)を緩めて、横枠(4)を縦枠(3)から取外す。次に、横枠(4)を取外した縦枠(3)の上端において、図5で説明した中空部(3c)に、アドオン連結金具(15)の下半部を挿入する。他方、このアドオン金具(15)の上半部は、長さ以外は図5で説明した縦枠(3)と同一形状であるアドオン縦枠(11)の中空部(図示せず)に挿入する。ボルト(16)を用いて、縦枠(3)とアドオン縦枠(11)をそれぞれアドオン連結金具(15)に締結することにより、縦枠(3)とアドオン縦枠(11)を面一に連設することができる。
【0027】
次に、すでに図6を参照して説明した仕切枠(6)と同一の形状を有する中間枠(12)の下面に設けた溝(図示せず)を、最上段の分割パネル(5a)に嵌合し、さらにこの中間枠(12)の上面に設けた溝(図示せず)に、アドオンパネル(2)の下端を差し込む。この際、アドオンパネル(2)は、アドオン縦枠(11)の側面に縦枠(3)と同様に設けてある溝(図示せず)内を摺動させ、最終的にはこの溝によって左右両側を支持される。なお、アドオンパネル(2)は、パネル(5)と同様に、間に仕切枠を介在させて支持される複数の分割アドオンパネルから構成することもできる。
【0028】
アドオンパネル(2)の装着が終わったら、この上端に、取外しておいた横枠(4)の溝(4b)を当てがい、最終的にL金具(13)を横枠(4)とアドオン縦枠(11)の各段差部に載置して位置合わせした後、ねじ(14)で連結し、図1の扉(1)を形成することができる。
【0029】
なお、分割パネル(5a)の高さと、アドオンパネル(2)の高さが異なる場合、アドオンパネル(2)を追加する際に、必要に応じて、最上段の分割パネル(5a)を上方に外し、その代りにアドオンパネル(2)を装着し、その上に、中間枠(12)を嵌合し、さらにその上に、先に外した最上段の分割パネル(5a)を装着して、上下寸法の大きい扉(1)を形成してもよい。すなわち、アドオンパネル(2)を、任意の分割パネル(5a)(5a)間に入れることができる。
【0030】
図8及び図9は、図1に示す扉(1')を、引き違い式の引戸として用いた本発明に係るキャビネットを示す。この例では、基本となる筐体(31)の上に、上置き用の筐体(32)を載置し、筐体(31)の下端前縁に下レール(33)を、また筐体(32)の上端前縁に上レール(34)をそれぞれ設け、上下のレール(34)(33)の対向面に設けた前後2条のガイド溝(34a)(34b)(33a)(33b)に、上下方向の長さを大とした扉(1)の上下の端部を、それぞれ左右方向に摺動自在に嵌合してある。
【0031】
上置き用の筐体(32)を外して、基本となる筐体(31)のみで使用する場合は、上レール(34)を筐体(32)から外して、筐体(31)の前上部に取り付け、かつ上記扉(1)からアドオンパネル(2)等を外して、図2に示すようにした、上下方向の長さを小とした扉(1)を、上下のレール(34)(33)間に上記と同様にして装着する。
【0032】
図10は、図1に示す扉(1)を、両開き式の扉として用いた本発明に係るキャビネットを示す。この例では、基本となる筐体(41)の上に、上置き用の筐体(42)を載置し、上下方向の長さを、両筐体(41)(42)の高さの和とほぼ等しくした、図1に示す扉(1)を、下方の筐体(41)の両側部に、上下1対ずつの蝶番(43)(43)をもって、それぞれ枢着してある。
【0033】
この例では、上置き用の筐体(42)を外して、基本となる筐体(41)のみで使用する場合は、各扉(1)を筐体(41)に枢着したままの状態で、各扉(1')から、アドオンパネル(2)等を、上述したのと逆の手順で外して、図2に示す上下寸法の短い扉(1')とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャビネットの扉構造の正面図である。
【図2】図1の扉構造に、アドオンパネルを取り付ける前の状態を示す正面図である。
【図3】図2の扉構造の上端部の拡大背面図である。
【図4】図1の扉構造で用いる横枠の縦断面図である。
【図5】図1の扉構造で用いる縦枠の横断面図である。
【図6】図1の扉構造で用いる仕切枠の縦断面図である。
【図7】アドオン縦枠とアドオンパネルを取付けたキャビネットの扉構造の拡散分解背面図である。
【図8】扉を引戸として筐体に取付けた本発明に係るキャビネットの正面図である。
【図9】同じく、図8のIX−IX線に沿う縦断側面図である。
【図10】本発明に係る扉を開き戸として筐体に取付けた本発明に係るキャビネットの正面図である。
【図11】従来の本体キャビネットの上に上置きキャビネットを載置した状態を示す正面図である。
【図12】基本となる筐体の上に上置き用の筐体を載置し、それらの前面に、高寸の扉を装着した従来のキャビネットを示す正面図である。
【符号の説明】
【0035】
(1)(1')扉
(2)アドオンパネル
(3)縦枠
(3a)段差部
(3b)溝
(3c)中空部
(4)横枠
(4a)段差部
(4b)溝
(5)パネル
(5a)分割パネル
(6)仕切枠
(6a)上溝
(6b)下溝
(7)把手
(11)アドオン縦枠
(12)中間枠
(13)L金具
(14)ねじ
(15)アドオン連結金具
(16)ボルト
(31)(32)筐体
(33)下レール
(34)上レール
(33a)(33b)(34a)(34b)ガイド溝
(41)(42)筐体
(43)蝶番
(51)筐体
(52)把手
(53)扉
(54)本体キャビネット
(55)筐体
(56)把手
(57)扉
(58)上置きキャビネット
(59)扉
(60)把手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本となる下部筐体の上に、上置き用の上部筐体を載置し、下部筐体の下端前縁に下レールを、また上部筐体の上端前縁に上レールをそれぞれ設け、上下のレールの対向面間に、下部筐体の前面を開閉する扉の上端に、上部筐体の前面を開閉するアドオン扉を着脱自在に設けた上下方向の長さを大とした2枚の扉を、それぞれ左右方向に摺動自在に嵌合し、前記下部筐体のみで使用するときは、前記上レールを上部筐体から外して、下部筐体の前上部に取り付け、かつ前記上下方向の長さを大とした扉からアドオン扉を外して、上下方向の長さを小とした扉を、上下のレール間に、それぞれ左右方向に摺動自在に嵌合しうるようにしたことを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
上下のレールの対向面に、前後2条のガイド溝を設け、下レールのガイド溝に、扉の下端部を、左右方向に摺動自在に嵌合し、上レールのガイド溝に、上下方向の長さを小としたときの扉の上端部と、アドオン扉の上端部とのいずれをも、左右方向に摺動自在に嵌合しうるようにしたことを特徴とする請求項1記載のキャビネット。
【請求項3】
基本となる下部筐体の上に、上置き用の上部筐体を載置し、前記下部筐体の両側部に枢着した下部筐体の前面開閉用の扉の上端に、上部筐体の前面開閉用のアドオン扉を着脱自在に設け、上置き用の上部筐体を外して、下部筐体のみで使用するときは、下部筐体に枢着した扉から、前記アドオン扉を外すようにしたことを特徴とするキャビネット。
【請求項4】
基本となる扉が、縦枠と、この縦枠の上下端にそれぞれ取付けられる横枠と、これら縦枠と横枠に支持されるパネルとを備え、アドオン扉が、前記縦枠の上端から横枠を取外して前記縦枠の上端に連設されるアドオン縦枠と、このアドオン縦枠に両側を支持されながら前記パネルの上端の上に中間枠を介して連続して配置され、かつ前記横枠を前記アドオン縦枠に取付けることによって上端部を支持されるアドオンパネルを備え、前記アドオン縦枠は、前記縦枠とアドオン縦枠の双方に差し込み可能なアドオン連結金具を介して縦枠に連設されるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−121422(P2008−121422A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42075(P2008−42075)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【分割の表示】特願2003−141553(P2003−141553)の分割
【原出願日】平成15年5月20日(2003.5.20)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】