説明

キャビネット

【課題】天板の下面に形成される狭い収納空間部内に物品を効率よく収納することができるキャビネットを提供すること。
【解決手段】上下方向に配設される複数の収納体4,5と、複数の収納体4,5を、姿勢を維持したまま収納空間部11に収納される収納位置とキャビネット1の本体2外部の使用位置との間で移動案内し、かつ、開閉扉6と収納体4,5とを連結するとともに、開閉扉6の開閉動作に連動して収納体4,5を収納位置と使用位置との間で移動させるガイド手段12,13,14,15と、を備え、ガイド手段12,13,14,15は、使用位置において、複数の収納体4,5それぞれを前後方向の異なる位置に配置するとともに、収納位置において、複数の収納体4,5を前後方向のほぼ同位置に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板の下面にシンクや洗面ボウル等の機能設備部が設けられるとともに、本体内部における前記機能設備部と本体側面との間に物品を収納可能な収納空間部が設けられたキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のキャビネットとしては、例えばキャビネットの本体内上部、つまり洗面ボウル等の前方に形成される収納空間の前面開口を蓋体により開閉可能とし、本体内部のスペースを有効に利用できるようにするとともに、この収納空間に引き出しを収納して物品を出し入れ自在としたもの等がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−143646号公報(第4頁、第3−4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のキャビネットにあっては、蓋体を開放することはできるものの、収納空間内に収納された物品は天板の下方に位置するため、取り出しにくいという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、天板の下面に形成される狭い収納空間部内に物品を効率よく収納することができるキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のキャビネットは、
天板の下面に機能設備部が設けられるとともに、本体内部における前記機能設備部と本体側面との間に物品を収納可能な収納空間部が設けられたキャビネットであって、
前記本体側面における前記収納空間部との対向位置に設けられた開口を開閉可能な開閉扉と、
前記物品を収納可能であり、上下方向に配設される複数の収納体と、
前記複数の収納体を、姿勢を維持したまま前記収納空間部に収納される収納位置と前記キャビネットの本体外部の使用位置との間で移動案内し、かつ、前記開閉扉と前記収納体とを連結するとともに、前記開閉扉の開閉動作に連動して前記収納体を前記収納位置と前記使用位置との間で移動させるガイド手段と、
を備え、
前記ガイド手段は、前記使用位置において、前記複数の収納体それぞれを前後方向の異なる位置に配置するとともに、前記収納位置において、前記複数の収納体を前後方向のほぼ同位置に配置することを特徴としている。
この特徴によれば、開閉扉の開閉に連動して複数の収納体が使用位置と収納位置との間で移動するため、物品の出し入れが容易になるばかりか、収納体を出し入れする際に物品の姿勢が変わることがないので、収納体内での物品の横転、散乱や脱落等が防止される。また、収納位置においては、複数の収納体が上下方向に重なって収納されることで、奥行き幅が狭い収納空間部でも、上下方向の収納スペースを有効に利用してより多くの物品を効率よく収納でき、使用位置においては、複数の収納体が上下に重ならないように前後にずらして配置されるため、下方の収納体に物品を出し入れする際に上方の収納体が邪魔になることがない。
【0007】
本発明の請求項2に記載のキャビネットは、請求項1に記載のキャビネットであって、
前記開閉扉は、下端辺側を中心として上端辺側が前後方向に揺動するように開閉自在に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、開閉扉は、回動により上端辺側が下方に傾倒して開放されることで、開閉扉を閉塞時の起立姿勢のまま収納体とともにスライドさせて引き出す場合に比べて、開放された開閉扉の上端辺と天板端縁との間の間口が大きくなるため、奥行き幅が狭い収納体を収納位置から大きく引き出さなくても、開閉扉が物品の出し入れの際に邪魔になることがない。
【0008】
本発明の請求項3に記載のキャビネットは、請求項1または2に記載のキャビネットであって、
前記複数の収納体は、上部収納体と、該上部収納体の下方に配置される下部収納体と、からなり、
前記ガイド手段は、
一端が前記キャビネットの本体側に枢着され、他端が前記下部収納体に枢着される第1リンクと、
一端が前記下部収納体に枢着され、他端が前記上部収納体に枢着される第2リンクと、
一端が前記キャビネットの本体側に枢着され、他端が前記上部収納体に枢着され、中間部が前記下部収納体に枢着されるとともに、前記一端と前記中間部との間の下リンク部が前記第1リンクと平行に、かつ、前記中間部と前記他端との間の上リンク部が前記第2リンクと平行に設けられた第3リンクと、
からなる平行リンク機構であることを特徴としている。
この特徴によれば、上部収納体と下部収納体とを開閉扉の開閉に連動して、互いの姿勢を維持し、かつ、同時に移動させることができる。
【0009】
本発明の請求項4に記載のキャビネットは、請求項3に記載のキャビネットであって、
前記開閉扉は、前記第1リンク、前記第2リンクまたは前記第3リンクのうちいずれかに取り付けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、開閉扉の開閉動作によりいずれかのリンクが直接移動されるため、開閉扉とリンクとを連動機構等を介して連結しなくても、簡単な機構で連動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係るキャビネットを実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0011】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例における洗面台の全体像を示す斜視図であり、図2は、洗面台の図1におけるA−A断面図であり、図3は、洗面台の開閉扉が閉塞した状態を示す縦断側面図であり、図4は、洗面台の図3におけるB−B断面図であり、図5は、洗面台の図4におけるC−C断面図であり、図6(a)は、洗面台の開閉扉が開放されている状態を示す概略図であり、図6(b)は、洗面台の開閉扉が閉塞する途上の状態を示す概略図であり、図6(c)は、洗面台の開閉扉が閉塞した状態を示す概略図である。以下、図2、図3及び図6(a)〜(c)の紙面左側を洗面台の前側とし、図4の紙面手前側を洗面台の前側とし、図5の紙面下方側を洗面台の前側として説明する。
【0012】
図1の符号1は、本発明の適用されたキャビネットの一例である洗面台である。この洗面台1は、バスルーム等の屋内に設置され、洗面台1の本体2の内部に櫛や整髪料等の物品を収納できるようになっている。
【0013】
図1に示すように、キャビネット1の本体2は、床面から立設される左右の側板10,10と、図示しない後板と、側板10,10及び後板の上部に載置される方形状の天板8と、図示しない底板と、により前面が開口する箱状に形成されており、内部が物品を収納可能な収納空間部とされている。
【0014】
本実施例における本体側面である本体2の前面に形成された開口3は、上下2枚の横長長方形状の開閉扉6,7によって開閉可能に閉塞されており、これらのうち下方の開閉扉7は、本体2の下部に前後方向に引出し自在に収納された引出しの前板である。
【0015】
天板8には、上下方向に貫通する開口8aが形成されており、この天板8の下面の開口周縁部には、縦断面視略凹状に形成された本発明における機能設備付部としての水槽9が、開口8aを下方から覆うように取り付けられている。つまり、水槽9は、本体2内上部において、天板8の下面から下方に向かって凸設されている。
【0016】
そして、水槽9は天板8よりも小さく形成されているため、図3に示すように、本体2内上部において、水槽9の外周面と、本体2の側面を構成する開閉扉6、側板10,10及び後板それぞれの内面と、の間には間隙が形成されており、特に、水槽9の外周前面と、該水槽9の外周前面に対向する開閉扉6の内面との間に形成された間隙は、後述する上部収納体4及び下部収納体5が収納される収納空間部11として利用されている。この収納空間部11は、本体2内上部に設けられ、その下方の本体2内下部空間よりも前後方向の奥行き幅が狭い空間部とされている。
【0017】
上部収納体4及び下部収納体5は、図4及び図5に示すように、上面が開口する横長箱状に形成される保持体4a,5aと、これら保持体4a,5aに形成される収納凹部4c,5cに上方から着脱自在に収納保持される収納トレー4b,5bと、で構成されている。また、これら保持体4a,5aの左右後端部からは、枢着片4e,5eが後方に向かって延設されており、該枢着片4e,5eには、後述する第1〜第3リンク12,13,14が枢着されている。
【0018】
収納トレー4b,5bは、図1に示すように、上面が開口するとともに、収納凹部4c,5c内に嵌合可能な大きさに形成された略直方体形状の箱体であり、内部には複数の中仕切4d,5dが形成されており、種別の異なる物品を分別して収納可能となっている。
【0019】
このように構成された上部収納体4及び下部収納体5は、ガイド手段としての第1〜第3リンク12,13,14及び後述する取付金具15を介して本体2に対して回動自在に枢支され、開閉扉6の開閉に連動して、図3に示す収納空間部11に収納されている収納位置と、図2に示す本体2の外部である使用位置との間で前後方向に移動可能となっている。
【0020】
具体的には、図2及び図3に示すように、本体2の両側板10,10内側面の前部には、略くの字状に形成された第1リンク12の下端が、左右方向を向く枢軸12aによって枢着されている。この第1リンク12の上端は、下部収納体5の左右の枢着片5eの外側に、左右方向を向く枢軸12bによって枢着されている。また、下部収納体5の左右外側面の前部には、棒状に形成された第2リンク13の下端が、左右方向を向く枢軸13aによって枢着されており、第2リンク13の上端は、上部収納体4の左右枢着片4eの外側前部に、左右方向を向く枢軸13bによって枢着されている。
【0021】
更に、本体2の両側板10,10内側面における、第1リンク12の下端が枢着された位置よりも前側には、第3リンク14の下端が、左右方向を向く枢軸14dによって枢着されており、上部収納体4の左右枢着片4eの外側の後部には、第3リンク14の上端が、左右方向を向く枢軸14eによって枢着されている。この第3リンク14は、本体2の両側板10,10内側面に枢着された下端と、上部収納体4の左右枢着片4eの外側の後部に枢着された上端との間の中間部14aにおいて、下部収納体5の左右外側面の前後方向の略中央位置に、左右方向を向く枢軸14fによって枢着されている。
【0022】
第3リンク14の下リンク部14bは、第1リンク12と同形である略くの字状に形成されているとともに、第1リンク12と平行となるように設けられている。また、第3リンク14の上リンク部14cは、第2リンク13と同様に直線状に形成され、第2リンクと平行となるように設けられている。
【0023】
このように、上部収納体4及び下部収納体5は、それぞれ第3リンク14に枢支され、この第3リンク14の下端の枢軸14dを中心に前後に揺動するようになっている。そして、この第3リンク14の下リンク部14bと、この下リンク部14bに対して平行に設けられる第1リンク12とは、本体2に対して下部収納体5を前後に揺動(移動)可能にガイドする下部平行リンク機構を構成しており、また、第3リンク14の上リンク部14cと、この上リンク部14cに対して平行に設けられる第2リンク13とは、本体2に対し下部収納体5を介して上部収納体4を前後に揺動(移動)可能にガイドする上部平行リンク機構を構成している。
【0024】
よって、上部収納体4及び下部収納体5は、これら第1〜第3リンク12,13,14によって、常に同一の水平姿勢を維持したまま、収納空間部11内の収納位置と本体2の外部の使用位置との間を移動可能となっている(図6参照)。つまり、これら第1〜第3リンク12,13,14は、上部収納体4及び下部収納体5を、水平姿勢を維持したまま収納空間部11に収納される収納位置と本体2の外部の使用位置との間で前後に揺動(移動)案内する本発明におけるガイド手段を構成している。
【0025】
また、上部平行リンク機構のうち一方のリンクと、下部平行リンク機構のうち一方のリンクと、が単一の第3リンク14にて形成されていることで、上部収納体4及び下部収納体5は本体2に対してそれぞれ別個に揺動することなく、一緒に移動される。
【0026】
また、下部収納体5及び上部収納体4が使用位置に配置されたとき、図2に示されるように、第1リンク12の前端面が下リンク部14bの後端面に当接し、開閉扉6の開放が規制されるようになっている。つまり、これら第1リンク12の前端面と下リンク部14bの後端面とによって開閉扉6の開放規制部17が構成されている。
【0027】
左右の第2リンク13の前端面からは、取付金具15が前側に向かって延設されており、この取付金具15の前端部に開閉扉6の後面が取り付けられている。つまり開閉扉6は、上部収納体4及び下部収納体5を本体2に対して前後に揺動自在に支持する第1〜第3リンク12,13,14の一つである第2リンク13に直接取り付けられていることで、開閉扉6を下端辺側を中心として上端辺側を前後に揺動する開閉動作が行われることに連動して、取付金具15を介して第1〜第3リンク12,13,14が前後に揺動し、これにより上部収納体4及び下部収納体5が本体2の内部の収納位置と外部の使用位置との間で前後に移動する。すなわち、取付金具15及び第1〜第3リンク12,13,14は、開閉扉6と上部収納体4及び下部収納体5とを連結するとともに、開閉扉6の開閉動作に連動して上部収納体4及び下部収納体5を収納位置と使用位置との間で移動させるガイド手段を構成している。
【0028】
このように、開閉扉6の開閉動作により第2リンク13が直接移動されるため、開閉扉6と第2リンク13とを別途連動機構等を介して連結しなくても、簡単な機構で開閉扉6に対して上部収納体4及び下部収納体5を連動させることができる。尚、本実施例では開閉扉6は第2リンク13に取り付けられていたが、第1リンク12または第3リンク14に取り付けられていてもよい。
【0029】
また、本実施例では特に図示しないが、第1リンク12及び第3リンク14と本体2の左右側板10,10の内側面とを枢着する枢着軸12a,14dにはロータリーダンパーが取り付けられており、開閉扉6の急激な開閉が防止されるとともに、安全性の向上の他、開閉扉6の開閉時の静音効果を得ることができるようになっている。
【0030】
図1及び図3に示すように、本体2の左右側板10,10内側の前端部には、公知のプッシュオープン装置16が取り付けられている。このプッシュオープン装置16は、内部に図示しないバネ等の機械要素とロック機構を含んでおり、前端部に備えられた押圧部16aを前側から押圧すると、内部のロック機構により押圧部16aが装置本体16b内に押し込められた状態で固定され、再び押圧部16aを押圧すると、ロック機構が解除され、押圧部16aが前側に向かって押し出される装置である。
【0031】
また、このプッシュオープン装置16は、左右側板10,10の前端部に取り付けられることによって、開閉扉6が開口3の上部を閉塞する閉塞位置において、開閉扉6の後面に当接して開閉扉6の閉塞方向への揺動を当接規制するようになっている。尚、本実施例では、プッシュオープン装置16を左右側板10,10の2箇所に取り付けた例で示したが、例えば片押し不良防止のためには、プッシュオープン装置16を天板2下面の前端部略中央に1箇所設けることが好ましい。
【0032】
次に、開閉扉6の開閉に連動する上部収納体4及び下部収納体5の移動について説明する。まず、図6(a)に示すように、開閉扉6が開放されているときには、上部収納体4及び下部収納体5は、本体2の外部となる使用位置において、上部収納体4の方が下部収納体5よりも前側に配置され、互いに上下に重ならないように配置される。すなわち、第1〜第3リンク12,13,14は、本体2の外部となる使用位置において、上部収納体4及び下部収納体5を前後方向の異なる位置に配置される。尚、上部収納体4及び下部収納体5の姿勢は床面に対して水平状態に保たれている。
【0033】
よって、図5中2点鎖線で示すように、使用者は上部収納体4の左右枢着片4e,4e間から下部収納体5を視認することができるとともに、上部収納体4と下部収納体5とのどちらに収納されている物品も取り出すことができるようになっている。
【0034】
次いで、図6(a)に示す開閉扉6が開放されている状態から、開閉扉6を閉塞方向に向けて押圧すると、開閉扉6に取付金具15を介して連結されている第2リンク13が、枢軸13aを中心として後方に向かって揺動され、そしてこの開閉扉6の押圧が、上部収納体4及び下部収納体5を介して第1リンク12及び第3リンク14に伝達され、第1リンク12及び第3リンク14が枢軸12a,14dを中心に後方に向かって回動することで、上部収納体4及び下部収納体5が収納位置に向けて移動する。
【0035】
図6(b)に示すように、上部収納体4と下部収納体5とが収納位置に移動しつつ、上部収納体4と下部収納体5との前後の相対位置が徐々に縮まっていく。同時に、第2リンク13が後方に向かって傾斜することによって、傾斜姿勢とされていた開閉扉6は、下端辺側を中心に上端辺側を後方に揺動することで起立姿勢に姿勢変更し、上部収納体4の前側に配置される。
【0036】
また、第1〜第3リンク12,13,14、上部収納体4、下部収納体5及び開閉扉6は、上部収納体4及び下部収納体5が使用位置から収納位置に移動するまでの間に円弧状の軌跡を描くため、それぞれの重心が軌跡の頂点を通過すると、以降は上部収納体4及び下部収納体5は自重によりに収納位置まで移動する。
【0037】
更にこのとき、第1〜第3リンク12,13,14によって上部収納体4及び下部収納体5は姿勢を水平に維持しながら収納位置に向かって移動するので、上部収納体4及び下部収納体5に収納されている物品が乱雑に散らばることが無い。
【0038】
そして、図6(c)に示すように、開閉扉6がほぼ起立姿勢となると、上部収納体4及び下部収納体5が収納位置である収納空間部11に配置される。このとき、上部収納体4と下部収納体5との上下位置は、収納空間部11内で前後方向の同位置となっており、上部収納体4及び下部収納体5は、共に姿勢が水平に保たれている。
【0039】
また、起立姿勢となった開閉扉6は、上部収納体4の前面側に配置され、左右のプッシュオープン装置16の押圧部16aが装置本体16b内に押し込められると、開口3の上部を完全に閉塞する。
【0040】
次に、図6(c)に示す収納位置に収納された上部収納体4及び下部収納体5を使用位置まで移動させるには、開口3を閉塞している開閉扉6を前側から押圧してプッシュオープン装置16のロック機構の解除を行い、開閉扉6の上端辺側を手前に引き出すことで、上部収納体4及び下部収納体5は、開閉扉6の開放動作に連動して、第1〜第3リンク12,13,14を介して前方に移動され、開閉扉6が最大開放位置まで開放されたとき、前述した使用位置に配置される。この開放動作は収納動作と逆の動きであるため、詳細な説明は省略する。
【0041】
また、開閉扉6は、開口3を閉塞する閉塞位置において、上部収納体4及び下部収納体5の前面側にて起立姿勢に保持されているが、前述したように下端辺側を中心として上端辺側が前方に傾倒されることで開放するようになっているため、図2に示すように、開放位置において傾斜姿勢となり、上部収納体4及び下部収納体5の下方位置に退避される。
【0042】
従って、開閉扉6を、開口3を閉塞する起立姿勢のまま手前に引き出した場合、上部収納体4の前側に開閉扉6の上部が配置されるため(図2中2点鎖線の開閉扉6を参照)、洗面台1の前方に位置する使用者が上部収納体4に収納されている物品に、手前側の斜め上方からアプローチする際に開閉扉6が邪魔になるが、本実施例の開閉扉6は、下端辺側を中心として上端辺側が前方に傾倒されることで、開放位置において上部収納体4及び下部収納体5の下方位置に傾斜姿勢で配置されるため、使用者が上部収納体4に収納されている物品に手前側の斜め上方からアプローチする際に開閉扉6が邪魔になることがない。
【0043】
具体的には、開放された開閉扉6の上端辺と天板8の前端縁との間の間口寸法L1が、開閉扉6を起立姿勢のまま手前に引き出した場合の間口寸法L2よりも大きくなるため(L1>L2)、奥行き幅が狭い上部収納体4及び下部収納体5を収納位置から大きく引き出さなくても、開閉扉6が物品の出し入れの際に邪魔になることがない。
【0044】
以上説明したように、本発明の実施例としての洗面台1では、開閉扉6の開閉動作に連動して、上部収納体4及び下部収納体5が使用位置と収納位置との間で前後に揺動(移動)するため、物品の出し入れが容易になるばかりか、上部収納体4及び下部収納体5を出し入れする際に物品の姿勢が変わることがないので、上部収納体4及び下部収納体5内での物品の横転、散乱や脱落等が防止される。また、収納位置においては、上部収納体4及び下部収納体5が上下方向に重なって収納されることで、奥行き幅が狭い収納空間部11でも、上下方向の収納スペースを有効に利用してより多くの物品を効率よく収納でき、使用位置においては、上部収納体4及び下部収納体5が上下に重ならないように前後にずらして配置されるため、下部収納体5に物品を出し入れする際に上部収納体4が邪魔になることがない。
【0045】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0046】
例えば、前記実施例では、開閉扉6の下端辺側を中心する上端辺側の前後方向の揺動に連動して、上部収納体4及び下部収納体5を収納位置と使用位置との間で移動させていたが、開閉扉6の開閉動作に連動して上部収納体4及び下部収納体5をその姿勢を維持しつつ収納位置と使用位置との間で移動可能とされていれば、開閉扉6の開閉動作は、下端辺側を中心とした回動によるものに限定されるものではなく、例えば左右側辺や上端辺を中心とした回動により開閉するものでもよいし、あるいは起立姿勢のまま前後にスライド移動することで開閉するものであってもよい。さらに、開閉扉6は第2リンク13に取り付けられていたが、本体2における開口3の周縁に下端辺が枢着されていてもよい。
【0047】
また、前記実施例では、収納体を上部収納体4と下部収納体5との上下2つによって構成したが、収納空間部11内の広さによっては、上下に3段以上の複数の収納体が収納されてもよい。
【0048】
また、前記実施例では、開閉扉6が開放されることで、収納位置において、上部収納体4は下部収納体5よりも上部且つ前側に配置されるようにしたが、下部収納体5を上部収納体4よりも前側に配置されるようにしてもよい。また、使用位置において、上部収納体4と下部収納体5とは、少なくとも前後幅の半分以上が上下に重なるように配置されていれば、一部が前後にずれて配置されていてもよい。
【0049】
また、前記実施例では、ガイド手段として、一端が本体2に対して回動自在に枢着された第1〜第3リンク12,13,14が適用されていたが、収納体をその姿勢を維持しつつ前後に移動可能なものであれば、例えば直線状のガイドレール等であってもよい。
【0050】
また、本実施例では、水槽9の外周前面側と開閉扉6の後面との間を収納空間部11としていたが、収納空間部11は、水槽9の外周左右側面と左右側板10,10の内面との間、または水槽9の外周後面側と後板の内面との間でもよく、これらの空間部に本発明を適用してもよい。
【0051】
また、前記実施例では、キャビネットの一例として洗面台を説明したが、キッチンカウンタ等、種々のものであってもよい。
【0052】
また、前記実施例では、機能設備部の一例として水槽9が適用されていたが、天板の下面に取り付けられてなるものであれば、例えばキッチンカウンタ等において、天板埋設型のコンロや食器洗浄器等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例における洗面台の全体像を示す斜視図である。
【図2】洗面台の図1におけるA−A断面図である。
【図3】洗面台の開閉扉が閉塞した状態を示す縦断側面図である。
【図4】洗面台の図3におけるB−B断面図である。
【図5】洗面台の図4おけるC−C断面図である。
【図6】(a)は、洗面台の開閉扉が開放されている状態を示す概略図であり、(b)は、洗面台の開閉扉が閉塞する途上の状態を示す概略図であり、(c)は、洗面台の開閉扉が閉塞した状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0054】
1 洗面台
2 本体
3 開口
4 上部収納体
5 下部収納体
6,7 開閉扉
8 天板
8a 開口
9 シンク(機能設備部)
10 側板
11 収納空間部
12 第1リンク(平行リンク機構、ガイド手段)
13 第2リンク(平行リンク機構、ガイド手段)
14 第3リンク(ガイド手段)
14a 中間部
14b 下リンク部(平行リンク機構)
14c 上リンク部(平行リンク機構)
15 取付金具(ガイド手段)
17 開放規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板の下面に機能設備部が設けられるとともに、本体内部における前記機能設備部と本体側面との間に物品を収納可能な収納空間部が設けられたキャビネットであって、
前記本体側面における前記収納空間部との対向位置に設けられた開口を開閉可能な開閉扉と、
前記物品を収納可能であり、上下方向に配設される複数の収納体と、
前記複数の収納体を、姿勢を維持したまま前記収納空間部に収納される収納位置と前記キャビネットの本体外部の使用位置との間で移動案内し、かつ、前記開閉扉と前記収納体とを連結するとともに、前記開閉扉の開閉動作に連動して前記収納体を前記収納位置と前記使用位置との間で移動させるガイド手段と、
を備え、
前記ガイド手段は、前記使用位置において、前記複数の収納体それぞれを前後方向の異なる位置に配置するとともに、前記収納位置において、前記複数の収納体を前後方向のほぼ同位置に配置することを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記開閉扉は、下端辺側を中心として上端辺側が前後方向に揺動するように開閉自在に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記複数の収納体は、上部収納体と、該上部収納体の下方に配置される下部収納体と、からなり、
前記ガイド手段は、
一端が前記キャビネットの本体側に枢着され、他端が前記下部収納体に枢着される第1リンクと、
一端が前記下部収納体に枢着され、他端が前記上部収納体に枢着される第2リンクと、
一端が前記キャビネットの本体側に枢着され、他端が前記上部収納体に枢着され、中間部が前記下部収納体に枢着されるとともに、前記一端と前記中間部との間の下リンク部が前記第1リンクと平行に、かつ、前記中間部と前記他端との間の上リンク部が前記第2リンクと平行に設けられた第3リンクと、
からなる平行リンク機構であることを特徴とする請求項1または2に記載のキャビネット。
【請求項4】
前記開閉扉は、前記第1リンク、前記第2リンクまたは前記第3リンクのうちいずれかに取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載のキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−82122(P2010−82122A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253477(P2008−253477)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)