説明

キャブの前部構造

【課題】ダッシュパネルの支持剛性を高めて、ダッシュパネルの共振周波数を、ダッシュパネルの振動に起因した騒音を低減することが可能な所望の共振周波数に設定可能なキャブの前部構造を提供する。
【解決手段】キャブ3の前端下部から後方に延びて車室10の底部を区画するフロアパネル13と、フロアパネル13の前端部から車幅方向に沿って起立し、車室10の前部を区画するダッシュパネル15と、インストバー50と、を備える。インストバー50は、フロアパネル13の上方でインストルメントパネルを前方から支持するインストバー本体51と、ダッシュパネル15の後方でインストバー本体51とフロアパネル13とを連結しインストバー本体51を下方から支持する支柱52と、を有し、支柱52の前側下部には、ダッシュパネル15の後面下部まで延出し、後面下部に接合される下リブ60が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダッシュパネルとフロアパネルとインストバーとを有するキャブオーバ型トラック等のキャブの前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平10−129520号公報には、ダッシュパネルの両側縁が一対のフロントピラーにそれぞれ溶着され、ダッシュパネルの下縁がフロアパネルの前縁に溶着されたキャブオーバ型トラックのキャブのインストルメントパネルクロスメンバの取付構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−129520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にキャブオーバー型車両のキャブ内の騒音は、主にエンジンで発生した加振力が車両のエンジンマウント及びキャブマウントを介して、下方からキャブに伝達され、キャブを構成する各パネル(ルーフパネル、サイドパネル、ダッシュパネル、バックパネル及びフロアパネル)が振動することによって発生する。フロアパネルに支持されるダッシュパネルが下方から入力される加振力に起因して前後方向に振動することによって発生する騒音を低減する一つの対策として、この加振力に対するダッシュパネルの支持剛性を高めて、ダッシュパネルの共振周波数を、エンジンの加振周波数(例えば、エンジンの回転数が700rpm〜3200rpmの場合は23Hz〜107Hz)よりも高い値に設定することが有効である。
【0005】
しかし、特許文献1に記載された構造では、上記のようにダッシュパネルの下部のうちその下縁のみがフロアパネルに接合され支持されるので、キャブの下方から入力される加振力に対するダッシュパネルの支持剛性を十分に高めることができない。このため、ダッシュパネルの共振周波数の設定可能範囲が制限され、ダッシュパネルの振動に起因した騒音を十分に低減できない可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、ダッシュパネルの支持剛性を高めて、ダッシュパネルの共振周波数を、ダッシュパネルの振動に起因した騒音を低減することが可能な所望の共振周波数に設定可能なキャブの前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のキャブの前部構造は、フロアパネルと、ダッシュパネルと、インストバーと、を備える。
【0008】
フロアパネルは、キャブの前端下部から後方に延びて車室の底部を区画する。ダッシュパネルは、フロアパネルの前端部から車幅方向に沿って起立し、車室の前部を区画する。インストバーは、フロアパネルの上方でインストルメントパネルを前方から支持するインストバー本体と、ダッシュパネルの後方でインストバー本体とフロアパネルとを連結しインストバー本体を下方から支持する支柱と、を有する。また、支柱の前側下部には、ダッシュパネルの後面下部まで延出し、後面下部に接合される下リブが形成されている。
【0009】
上記構成では、下リブがダッシュパネルの後面下部に接合されるので、ダッシュパネルの下部が下リブを介して支柱に接合され支持される。このため、キャブの下方から入力される加振力に対するダッシュパネルの支持剛性を高めることができる。したがって、ダッシュパネルの共振周波数の設定可能範囲が高周波数側へ拡大し、下リブの板厚や形状を変更するなどして調整することで、ダッシュパネルの共振周波数をエンジンの加振周波数よりも高い所望の周波数に設定することが可能となるので、ダッシュパネルの振動に起因して発生する騒音を低減することができる。
【0010】
また、下リブは、フロアパネルの上面に沿って前方へ延出し、フロアパネルの上面に接合されてもよい。
【0011】
上記構成では、下リブがフロアパネルの上面と接合されるので、ダッシュパネルの下部を、下リブを介して、下リブが接合されるフロアパネルの上面で支持することができる。このため、ダッシュパネルの支持剛性をより高めることができる。したがって、ダッシュパネルの共振周波数の設定可能範囲がより高周波数側へ拡大し、下リブの板厚や形状を変更して下リブとフロアパネルの上面との接合部分の面積を変更するなどして調整することで、ダッシュパネルの共振周波数をエンジンの加振周波数よりも高い所望の周波数に設定することができる。
【0012】
また、支柱の上部には、支柱の曲げ剛性を高めるための上リブが形成されてもよい。
【0013】
上記構成では、上リブによって支柱の曲げ剛性が高まる。このため、支柱自体の振動を抑制し、支柱の振動によるダッシュパネル及びフロアパネルの振動への影響を低減することができる。また、高い曲げ剛性を有する支柱によってダッシュパネルを支持することができるので、ダッシュパネルの支持剛性をより高めることができる。したがって、ダッシュパネルの共振周波数の設定可能範囲がより高周波数側へ拡大し、支柱の曲げ剛性を調整することで、ダッシュパネルの共振周波数をエンジンの加振周波数よりも高い所望の周波数に設定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ダッシュパネルの振動に起因して発生する騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両の要部斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1の車両のフロアパネル、ダッシュパネル及びインストバーの概略を示す平面図である。
【図4】図2の支柱のIV−IV線断面図である。
【図5】図2の支柱のV−V線断面図である。
【図6】本発明の一実施形態の第一の変形例を示す車両のフロアパネル、ダッシュパネル及びインストバーの概略を示す平面図である。
【図7】本発明の一実施形態の第二の変形例を示す車両のフロアパネル、ダッシュパネル及びインストバーの概略を示す平面図である。
【図8】本発明の一実施形態の第三の変形例を示す図1のII−II線要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図中矢印FRは車両前方を、矢印UPは上方を、矢印INは車幅方向内側をそれぞれ示している。また、以下の説明において、前後とは車両の前後を意味し、左右とは車両前方を向いた状態での左右を意味する。
【0017】
図1〜図3に示すように、本実施形態にかかるキャブの前部構造1は、ダッシュパネル15、フロアパネル13及びインストバー50を有するキャブ3の前部に設けられる。
【0018】
車両2は、キャブ3の下方にエンジンルーム9が位置するキャブオーバー型のトラックである。キャブ3は、車体フレーム4の前端部に取付けられている前方キャブマウント5及び後方キャブマウント(図示省略)によって前方へ傾斜可能に支持される。
【0019】
車体フレーム4は、前後方向に沿って並行に延びる左右のメインビーム6と、複数のクロスメンバ7と前方キャブマウント5及び後方キャブマウントとを有する。左右のメインビーム6は、直交する複数のクロスメンバ7によって相互に連結される。車体フレーム4の前端部付近及び後端部付近には、走行車軸(図示省略)が設けられる。走行車軸の車幅方向両端には、走行車輪8が回転自在に支持される。
【0020】
キャブ3は、略箱状体であり、内部に車室10を区画する。キャブ3は、ルーフパネル11と、サイドパネル12と、フロントフレーム部16と、ダッシュパネル15と、バックパネル14と、フロアパネル13と、を有する。これらのパネルは、例えば、鋼板などの高強度材料からなり、プレス成形によって成形される。また、キャブ3は、車室10内に車室10の前方に位置するインストルメントパネル(図示省略)を支持するインストバー50を有する。
【0021】
ルーフパネル11は、キャブ3の前端上部から後方に延び、車室10の上部を区画する。サイドパネル12は、キャブ3の両端で上下方向に延び、ルーフパネル11の車幅方向両端部に接合し、車室10の車幅方向両端部を区画する。フロントフレーム部16は、キャブ3の前部で車幅方向に沿って延び、車室10の前方でサイドパネル12に接合する。ダッシュパネル15は、フロアパネル13の前端部から車幅方向に沿って起立し、フロントフレーム部16とサイドパネル12とに接合して車室10の前部を区画する。バックパネル14は、キャブ3の後部で上下方向に延び、ルーフパネル11とサイドパネル12とに接合し、車室10の後部を区画する。フロアパネル13は、キャブ3の前端下部から後方に延び、サイドパネル12、ダッシュパネル15及びバックパネル14に接合して車室10の底部を区画する。
【0022】
ルーフパネル11は、略矩形状の平板である。ルーフパネル11の車幅方向両端部は、サイドパネル12の上端部と接合し、後端部は、バックパネル14の上端部と接合する。
【0023】
サイドパネル12は、図1に示すように、中央に略矩形状に形成されるドア開口20を有し、また、フロントピラー部21と、ロッカー部22と、フェンダー部23と、ルーフサイドレール部24と、リアピラー部25と、を有する。
【0024】
フロントピラー部21は、上端から前方へ傾斜して延びるフロントピラー傾斜部21aとフロントピラー傾斜部21aの下端から略垂直下方へ曲折して延びるフロントピラー鉛直部21bとを有し、ドア開口20の前縁を構成する。ロッカー部22は、フロントピラー部21の下端(フロントピラー鉛直部21bの下端)から後方へ曲折して延び、ドア開口20の下縁の一部を構成する。フェンダー部23は、ロッカー部22の後端からアーチ状に延びている。フェンダー部23の下端側は、前車輪を上方から覆うホイールハウスを構成する。また、フェンダー部23の上端側は、ドア開口20の下縁の一部を構成する。ルーフサイドレール部24は、フロントピラー部21の上端(フロントピラー傾斜部21aの上端)から車両後方へ曲折して延び、ドア開口20の上縁を区画する。リアピラー部25は、フェンダー部23の後端とルーフサイドレール部24の後端とを連結してドア開口20の後縁を区画する。
【0025】
フロアパネル13は、略矩形板状体である。フロアパネル13は、キャブの前端から後方へ延びるフロアパネル前方部30と、フロアパネル前方部30の後端から後上方へ傾斜して延びるフロアパネル傾斜部31と、フロアパネル傾斜部31の後端からフロアパネル前方部30に対して略平行に曲折してキャブの後端まで延びるフロアパネル後方部32と、を有する。車両2のフロアパネル13の下側には、エンジン(図示省略)を収容するエンジンルーム9が形成されている。
【0026】
フロアパネル前方部30は、図2に示すように、前端から後方へ略水平に延びる前端部33と、前端部33の後端から後下方へ傾斜して延びる傾斜部34と、傾斜部34の後端から前端部33に対して略平行に曲折してフロアパネル傾斜部31の前端まで後方へ延びる後端部35とを有する。
【0027】
フロア前方部30の前端部33の前端には、略垂直下方に延びるフロアパネル接合部36が形成されている。
【0028】
バックパネル14は、図1に示すように、略矩形板状体である。バックパネル14は、略中央部に後部窓ガラスが嵌合されるバックパネル開口部40を有する。
【0029】
インストバー50は、インストルメントパネル(図示省略)の内部に配置され、図2及び図3に示すように、フロアパネル13の上方でダッシュパネル15と略平行に車幅方向に沿って延びる金属製の略円柱状の部材であるインストバー本体51と、ダッシュパネル15の後方で、且つ、車幅方向の中心よりもやや左側(助手席側)で、インストバー本体51とフロアパネル13とを連結しインストバー本体51を下方から支持する金属製の略円柱状の部材である支柱52と、を有する。
【0030】
インストバー本体51の車幅方向の両端には、上下方向に延びるブラケット部(図示省略)が一体的に形成されている。ブラケット部は、ブラケット部に設けられたボルト孔を挿通するボルト(図示省略)が、サイドパネル12のフロントピラー鉛直部21bに設けられたボルト孔(図示省略)と螺合することによって、フロントピラー鉛直部21bの内側の上部に固定される。インストバー本体51の車幅方向右側(運転席側)には、ステアリングのステアリングコラムを支持するステアリングサポートブラケット(図示省略)が固定される。また、インストバー本体51は、インストバー本体51の側面から前方へ延出する一対のブラケット部(図示省略)が車幅方向に所定間隔を隔てて並設されている。ブラケット部の前端は、前端の略中央に設けられたボルト孔に相通するボルトが、ダッシュパネル15の後面(車室側の面)上部に設けられたボルト孔(図示省略)と螺合することによって、ダッシュパネル15の後面上部に固定される。
【0031】
支柱52は、支柱本体53と、支柱本体53の上端から延びる上ブラケット部57と、支柱本体53の下端から延びる下ブラケット部58と、を有する。
【0032】
下ブラケット部58は、略平板状体であり、支柱本体53の下端部に一体的に形成されている。下ブラケット部58は、支柱本体53の下端部から後下方に傾斜して延びる。下ブラケット部58の略中央に設けられたボルト孔(図示省略)に挿通するボルトが、フロアパネル13のフロアパネル前方部30の傾斜部34に設けられたボルト孔(図示省略)に螺合することによって、下ブラケット部58は傾斜部34に固定される。なお、スポット溶接等によって、下ブラケット部58の下面を傾斜部34の上面に溶着してもよい。
【0033】
支柱本体53は、円柱状であり、下ブラケット部58の上端から略垂直上方に延びる下支柱54と、下支柱54の上端から後上方へ傾斜して延びる中間支柱55と、中間支柱55の上端から後上方へ傾斜して延びる上支柱56と、を有する。
【0034】
支柱本体53は、図2及び図4に示すように、支柱本体53の側面の後側上部から後方へ延出し、中間支柱55と上支柱56とを連結する平板状の上リブ59を有する。したがって、上リブ59は、支柱本体53の後方(曲げ方向)への入力に対する曲げ剛性を高める。
【0035】
また、支柱本体53は、図2、図3及び図5に示すように、支柱本体53の下支柱54の前側(支柱52の前側下部)から前方へ突出する平板状の下リブ60を有する。下リブ60は、フロアパネル13の前端部33の上面に沿って、ダッシュパネル15の後面下端部まで延出し、下リブ60の前端は、ダッシュパネル15の後面下端部に当接し、下リブ60の下端はフロアパネル13の前端部33の上面に当接する。下リブ60の前端には、車幅方向に延出する左右一対のリブ前ブラケット部(図示省略)が一体的に形成され、各リブ前ブラケット部に設けられたボルト孔に挿通するボルト(図示省略)が、ダッシュパネル15の後面下端部に設けられたボルト孔(図示省略)に螺合することによって、各リブ前ブラケット部はダッシュパネル15の後面下端部に固定される。また、下リブ60の下端には、車幅方向に延出する左右一対のリブ下ブラケット部(図示省略)が前後方向に亘って一体的に形成され、各リブ下ブラケット部に設けられたボルト孔に挿通するボルトが、フロアパネル13の前端部33の上面に設けられたボルト孔(図示省略)に螺合することによって、各リブ下ブラケット部はフロアパネル13の前端部33の上面に固定される。なお、下リブ60の前端をダッシュパネル15の後面下部に、また、下リブ60の下端をフロアパネル13の前端部33の上面に、スポット溶接等によって溶着してもよい。
【0036】
また、下リブ60は、前後方向の断面が、略U字形状となるように形成される。U字のくぼみ部分の上方には、図示しないヒーターユニット、ベンチレーションユニット及びエアコンユニットを1つにまとめたユニットであるHVAC(Heating,Ventilating and Air-Conditining)などが配置されている。
【0037】
上ブラケット部57は、略平板状体であり、上支柱56の上端に一体的に形成されている。上ブラケット部57は、上支柱56の上端から略垂直上方に延びる。上ブラケット部57の上端面には、前後方向の断面が円弧状に窪んだ接合面57aが形成されている。接合面57aとインストバー本体51の側面の下部とがスポット溶接等で固定(溶着)されることによって、支柱52は、インストバー本体51とフロアパネル13とを連結し、インストバー本体51を下方から支持する。なお、接合面57aにボルト孔を形成し、ボルト孔を挿通するボルトがインストバー本体51の側面に形成されたボルト孔に螺合することによって、接合面57aとインストバー本体51とを固定してもよい。
【0038】
次に、フロアパネル13、ダッシュパネル15及びインストバー50の連結態様について説明する。
【0039】
図2及び図3に示すように、フロア前方部30のフロアパネル接合部36とダッシュパネル15の下端部とがスポット溶接等によって溶着される。
【0040】
上述のように、インストバー50の支柱52の下ブラケット部58が、フロアパネル13のフロアパネル前方部30の傾斜部34に固定され、また、下リブ60の各リブ下ブラケット部がフロアパネル13の前端部33の上面に固定されることによって、インストバー50がフロアパネル13に固定されてインストバー50とフロアパネル13とが連結される。
【0041】
また、上述のように、インストバー50のブラケット部の前端が、ダッシュパネル15の後面上部に固定され、また、インストバー50の支柱52の下リブ60の各リブ前ブラケット部が、ダッシュパネル15の後面下端部に固定されることによって、インストバー50とダッシュパネル15とが連結される。
【0042】
本実施形態によれば、下リブ60がダッシュパネル15の後面下端部に固定されるので、ダッシュパネル15の下端部が下リブ60を介して支柱52によって支持される。このため、キャブの下方から入力される加振力に対するダッシュパネル15の支持剛性を高めることができる。したがって、ダッシュパネル15の共振周波数の設定可能範囲が高周波数側へ拡大し、下リブ60の板厚や形状を変更するなどして調整することで、ダッシュパネル15の共振周波数をエンジンの加振周波数よりも高い所望の周波数に設定することが可能となるので、ダッシュパネル15の振動に起因して発生する騒音を低減することができる。
【0043】
また、下リブ60がフロアパネル13の上面に沿って前方へ延出し、下リブ60のリブ下ブラケット部がフロアパネル13の上面に固定されるので、ダッシュパネル15の下部を、下リブ60を介して、下リブ60が固定(接合)されるフロアパネル13の上面で支持することができる。このため、ダッシュパネル15の支持剛性をより高めることができる。したがって、ダッシュパネル15の共振周波数の設定可能範囲がより高周波数側へ拡大し、下リブ60とフロアパネル13の上面との接合部分の面積を変更するなどして調整することで、ダッシュパネル15の共振周波数を所望の周波数に設定することが可能となる。
【0044】
また、支柱52の上部には、支柱本体53の側面の後側上部から後方へ延出し、中間支柱55と上支柱56とを連結する上リブ59が形成されているので、上リブ59によって支柱52の曲げ方向に対する曲げ剛性が高まる。このため、支柱52自体の振動を抑制し、支柱の振動によるダッシュパネル15及びフロアパネル13の振動への影響を低減することができる。また、高い曲げ剛性を有する支柱52によってダッシュパネル15を支持することができるので、ダッシュパネル15の支持剛性をより高めることができる。したがって、ダッシュパネル15の共振周波数の設定可能範囲がより高周波数側へ拡大し、支柱52の曲げ剛性を調整することで、ダッシュパネル15の共振周波数を所望の周波数に設定することが可能となる。
【0045】
また、フロアパネル13に支持されるダッシュパネル15の振動によって発生する騒音を低減するために、ダッシュパネル15にアスファルトシートなどを貼り付け重量化して、その質量によって制振する必要がないので、ダッシュパネル15の重量化を防止しつつ、騒音を低減することができる。
【0046】
また、ダッシュパネル15にビードを設けたり、ダッシュパネル15を曲面化したりして、ダッシュパネル15自体の曲げ剛性を高めて、ダッシュパネル15の共振周波数を、エンジンの加振周波数よりも高い値に設定する必要がない。このため、ダッシュパネル15の形状を変更する必要がないので、ダッシュパネル15の前方外側(キャブの前面)に配置されるフロントパネル(図示省略)やダッシュパネルの後方内側に配置されるHVACなどのレイアウトを変更することなく騒音を低減することができる。
【0047】
また、インストバー本体51の振動が支柱52及び下リブ60を介してダッシュパネル15の前後方向の振動に対して相殺的に干渉するように、インストバー本体51の振動モードを調整することによって、ダッシュパネル15の前後方向の振動に起因する騒音をより低減させることができる。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。
【0049】
例えば、本実施形態では、1本の支柱52を車幅方向の中心よりもやや左側(助手席側)に設けたが、複数の支柱を設けてもよい。例えば、車幅方向の中心よりもやや右側(運転席側)に支柱をもう1本設けてもよい。
【0050】
また、図6に示すように、下リブ60を下支柱54の前側からダッシュパネル15の後面下端部まで延出するにつれて徐々に車幅方向に拡幅するように形成してもよい。これによって、下リブ60とダッシュパネル15の後面下端部との接合面積が増加するので、支柱52は下リブ60を介して、ダッシュパネル15をより剛に支持することができる。また、下リブ60の下端部とフロアパネル13の上面との接合面積が増加するので、フロアパネル13は、下リブ60を介して、ダッシュパネル15をより剛に支持することができる。
【0051】
また、図7に示すように、下リブ60の下端を下支柱54の前側からダッシュパネル15の後面下端部まで延出するにつれて徐々に車幅方向に拡幅し、下リブ60は、下リブ60の上端から下端まで外側に傾斜して延びる下リブ側面60aを有してもよい。この場合、下リブ60の前端の車幅方向の断面(ダッシュパネル15との当接面)は台形状に形成される。
【0052】
また、レイアウト上の制約がない場合は、下リブ60を、前後方向の断面が略矩形状となる平板状に形成してもよい。
【0053】
また、図8に示すように、上支柱56の上端部に平板状の上支柱ブラケット部56aを設け、また、上ブラケット部57の下端部に平板状の固着部57bを設け、上支柱ブラケット部56a及び固着部57bの略中央部に各々ボルト孔(図示省略)を形成してもよい。この場合、上支柱ブラケット部56aと固着部57bとを対向して配置し、各々に形成されたボルト孔を連通させ、連通させたボルト孔にボルト61を挿通してナット62と螺合させることで、上支柱56と上ブラケット部57とが結合する。
【0054】
すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、キャブオーバー型車両のキャブの前部構造に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1:前部構造
2:車両
3:キャブ
10:車室
13:フロアパネル
15:ダッシュパネル
30:フロアパネル前方部
31:フロアパネル傾斜部
32:フロアパネル後方部
33:前端部
34:傾斜部
35:後端部
36:フロアパネル接合部
50:インストバー
51:インストバー本体
52:支柱
53:支柱本体
54:下支柱
55:中間支柱
56:上支柱
57:上ブラケット部
57a:上ブラケット部の接合面
58:下ブラケット部
59:上リブ
60:下リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブの前端下部から後方に延びて車室の底部を区画するフロアパネルと、
前記フロアパネルの前端部から車幅方向に沿って起立し、前記車室の前部を区画するダッシュパネルと、
前記フロアパネルの上方でインストルメントパネルを前方から支持するインストバー本体と、前記ダッシュパネルの後方で前記インストバー本体と前記フロアパネルとを連結し該インストバー本体を下方から支持する支柱と、を有するインストバーと、を備え、
前記支柱の前側下部には、前記ダッシュパネルの後面下部まで延出し、該後面下部に接合される下リブが形成されている
ことを特徴とするキャブの前部構造。
【請求項2】
請求項1に記載のキャブの前部構造であって、
前記下リブは、前記フロアパネルの上面に沿って前方へ延出し、該上面に接合される
ことを特徴とするキャブの前部構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のキャブの前部構造であって、
前記支柱の上部には、該支柱の曲げ剛性を高めるための上リブが形成されている、
ことを特徴とするキャブの前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−18301(P2013−18301A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150784(P2011−150784)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】