説明

キャブマウント構造

【課題】 フレーム側からキャブ側への振動の伝達を確実に遮断することができるキャブマウント構造の提供。
【解決手段】 キャブマウント支持パイプ5は、車幅方向に沿って延びる筒状であり、キャブ取付ブラケット6は、キャブマウント支持パイプ5をキャブ2に固定する。ラバー部材7は、フレーム4に対して固定され、キャブマウント支持パイプ5を回転自在に支持する。トーションバー9は、キャブマウント支持パイプ5の内部を挿通し、キャブ2に対して固定される一端部9aとフレーム4に対して固定される他端部9bとを有する。粒状部材10は、キャブマウント支持パイプ5の内面とトーションバー9の外面との間の間隙に充填される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のキャブマウント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キャブチルト機構を有するキャブオーバトラックの場合、キャブチルトの際の操作力を補助する目的で、トーションバーを含んだキャブマウント構造が採用されている。
【0003】
係るキャブマウント構造は、フレームに対して固定された防振用のラバー部材と、ラバー部材に回転自在に支持されたキャブマウント支持パイプとを備えている。キャブマウント支持パイプは、キャブ取付ブラケットを介してキャブに固定されている。キャブマウント支持パイプ内には、トーションバーが挿通されている。
【0004】
トーションバーは、キャブがチルトダウン位置(走行時を含む通常位置)にあるときに捩れた状態で、その一端及び他端がキャブ側及びフレーム側にそれぞれ固定されている。このトーションバーの捩り反力により、キャブチルトの際の操作力が軽減される。また、ラバー部材は、キャブマウント支持パイプを介してフレームからキャブへ伝達される振動を遮断する機能を果たす。
【0005】
【特許文献1】特開2002−96767号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のキャブマウント構造では、トーションバーがラバー部材を介することなくフレーム側とキャブ側とを連結しているため、フレームからキャブへの振動がトーションバーを介して直接伝達されてしまう。また、フレームで発生する振動数が所定の固有振動数に近い場合、トーションバー自体の曲げ共振により振動が増幅して伝達されてしまう可能性がある。このため、ラバー部材による振動遮断機能が低下し、騒音が発生してしまう恐れがある。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、フレーム側からキャブ側への振動の伝達を確実に遮断することができるキャブマウント構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、車両用のキャブの前端底部を、フレームに対して回転自在に支持するキャブマウント構造であって、キャブマウント支持パイプと、キャブ取付ブラケットと、ラバー部材と、トーションバーと、粒状部材と、を備える。
【0009】
キャブマウント支持パイプは、車幅方向に沿って延びる筒状であり、キャブ取付ブラケットは、キャブマウント支持パイプをキャブに固定する。ラバー部材は、フレームに対して固定され、キャブマウント支持パイプを回転自在に支持する。トーションバーは、キャブマウント支持パイプの内部を挿通し、キャブに対して固定される一端部とフレームに対して固定される他端部とを有する。粒状部材は、キャブマウント支持パイプの内面とトーションバーの外面との間の間隙に充填される。
【0010】
上記構成では、トーションバーは、キャブがチルトダウン位置(走行時を含む通常位置)にあるときに捩れた状態で、その一端及び他端がキャブ側及びフレーム側にそれぞれ固定されている。このトーションバーの捩り反力により、キャブチルトの際の操作力が軽減される。ラバー部材は、キャブマウント支持パイプを介してフレームからキャブへ伝達される振動を遮断する。
【0011】
トーションバーの他端部はフレームに対して固定されているため、この他端部からトーションバーへフレームの振動が伝達され、トーションバーの曲げ共振が発生する場合がある。この場合、キャブマウント支持パイプの内部に充填された粒状部材がトーションバーと接触しているため、粒状部材の相互の接触摩擦によってトーションバーの振動エネルギーが吸収され、共振が減衰される。これにより、トーションバーの一端部からキャブに伝達される振動エネルギーが低減される。
【0012】
すなわち、フレームからキャブへ伝達される振動のうちキャブマウント支持パイプを介して伝達される振動はラバー部材によって確実に遮断され、トーションバーを介して伝達される振動は粒状部材によって良好に遮断される。従って、キャブの室内における騒音の発生を確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フレーム側からキャブ側への振動の伝達を確実に遮断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施形態を示すキャブマウント構造の全体斜視図、図2は図1のキャブマウント構造を車両前後方向から視た断面図、図3は図2の要部拡大図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、キャブチルト機構を有するキャブオーバトラック1のキャブ2の前端底部2aは、キャブマウント構造3によって、車体を構成するフレーム(フロントクロスメンバ)4上に回転自在に支持される。このキャブマウント構造3は、キャブマウント支持パイプ5と、2箇所のキャブ取付ブラケット6と、それぞれがラバー部材7を有する2箇所のキャブマウント部材8と、トーションバー9と、粒状部材10とを備える。
【0016】
各キャブマウント部材8は、ラバー部材7とラバー支持部材11と軸受12とを有する。ラバー部材7は、その中心に貫通穴を有する略円板形状であり、この貫通穴に軸受12の外周面が固定されている。各ラバー支持部材11の下部は、車幅方向の左右位置でフレーム4の上面にボルト(図示省略)等によって固定されている。ラバー支持部材11の上部は略円筒状に形成され、その内周面にラバー部材7の外周面が固着されている。
【0017】
キャブマウント支持パイプ5は、車幅方向に沿って延びる略円筒形状を有する。各キャブ取付ブラケット6の下部は、車幅方向の左右位置でそれぞれキャブマウント支持パイプ5の外周面にボルト(図示省略)等によって固定されている。各キャブ取付ブラケット6の上部は、キャブ2の前端底部2aに固定されている。キャブマウント支持パイプ5は、キャブマウント部材8の軸受12内を挿通し、軸受12の内周面に固定されている。これにより、キャブマウント支持パイプ5は、軸受12、ラバー部材7及びラバー支持部材11を介して、フレーム4に回転自在に支持されている。
【0018】
トーションバー9は、キャブマウント支持パイプ5の内部を挿通する。トーションバー9の一端部9aは、キャブマウント支持パイプ5の一端部5aに固定されている。トーションバー9の他端部9bは、キャブマウント支持パイプ5の他端部5bから突出し、連結ブラケット13を介してラバー支持部材11の下部に固定されている。すなわち、トーションバー9の一端部9aは、キャブマウント支持パイプ5及びキャブ取付ブラケット6を介してキャブ2に固定され、トーションバー9の他端部9bは、連結ブラケット13及びキャブマウント部材8を介してフレーム4に固定されている。
【0019】
トーションバー9は、キャブ2が図1に示すチルトダウン位置(走行時を含む通常位置)にあるときに捩れた状態で、その一端部9a及び他端部9bがキャブ2側及びフレーム4側にそれぞれ固定されている。このトーションバー9の捩り反力により、キャブマウント支持パイプ5を中心としてキャブ2を前上方へ傾動するキャブチルトの際の操作力が軽減される。
【0020】
図3に示すように、キャブマウント支持パイプ5の内面とトーションバー9の外面との間には、所定の間隙が形成されている。この間隙のキャブマウント支持パイプ5の一端部宇宇5a側はトーションバー9の一端部9aによって密閉され、他端部5b側はシール部材14によって密閉されている。この密封された間隙に、粒状部材10が充填されている。
【0021】
この充填部材は、フレーム4の振動がトーションバー9へ伝達されてトーションバー9の曲げ共振が発生した場合に、粒状部材10の相互の接触摩擦によってトーションバー9の振動エネルギーを吸収するためのものである。係る観点から、充填部材(粒状部材10)は、粒子が細かく、個々の粒子が振動する際に、相互に接触した状態で相対的に変位して摩擦が生じやすく、減衰の効果を得やすい物質が適しており、例えば砂が使用される。また、間隙への粒状部材10の充填量が過少の場合、トーションバー9の振動が粒状部材10に伝達され難くなり、トーションバー9の振動が粒状部材10によって良好に拘束されない。反対に、粒状部材10の充填量が過多の場合、粒状部材10の相対的な移動が困難となる。このため、何れの場合も得られる減衰効果が小さくなる。従って、粒状部材10は、トーションバー9の振動が良好に伝達され、且つ振動を減衰させるための摩擦が良好に発生するように相対的に移動し得る量を、隙間の全域にほぼ均等に充填することが好ましい。また、粒状部材10が充填される隙間の大きさは、特に大きく設定する必要はなく、キャブマウント支持パイプ5の内面とトーションバー9の外面との距離は数mm程度離間していればよい。
【0022】
車両の走行中には、エンジンやタイヤ等からの入力によりフレーム4が振動する。また、車両の停車中においても、エンジンの回転数が高くなると、フレーム4が振動する。
【0023】
本実施形態によれば、キャブマウント部材8のラバー部材7は、キャブマウント支持パイプ5を介してフレーム4からキャブ2へ伝達される振動を遮断する。
【0024】
また、トーションバー9の一端部9aは、キャブマウント支持パイプ5及びキャブ取付ブラケット6を介してキャブ2に固定され、トーションバー9の他端部9bは、連結ブラケット13及びキャブマウント部材8を介してフレーム4に固定されている。このため、この他端部9bからトーションバー9へフレーム4の振動が伝達され、トーションバー9の曲げ共振が発生する場合がある。この場合、キャブマウント支持パイプ5の内部に充填された粒状部材10がトーションバー9と接触しているため、粒状部材10が相対的に移動し、粒状部材10の相互の接触摩擦によってトーションバー9の振動エネルギーが吸収され、共振が減衰される。これにより、トーションバー9の一端部9aからキャブ2に伝達される振動エネルギーが低減される。
【0025】
すなわち、フレーム4からキャブ2へ伝達される振動のうちキャブマウント支持パイプ5を介して伝達される振動はラバー部材7によって確実に遮断され、トーションバー9を介して伝達される振動は粒状部材10によって良好に遮断される。従って、キャブ2の室内における騒音の発生を確実に抑制することができる。
【0026】
なお、上記説明では、粒状部材10の例として砂を挙げたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、キャブチルト機構を有する車両用のキャブマウント構造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は本発明の一実施形態を示すキャブマウント構造の全体斜視図である。
【図2】図1のキャブマウント構造を車両前後方向から視た断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0029】
1:キャブオーバトラック
2:キャブ
2a:キャブの前端底部
3:キャブマウント構造
4:フレーム
5:キャブマウント支持パイプ
6:キャブ取付ブラケット
7:ラバー部材
8:キャブマウト部材
9:トーションバー
10:粒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のキャブの前端底部を、フレームに対して回転自在に支持するキャブマウント構造であって、
車幅方向に沿って延びる筒状のキャブマウント支持パイプと、
前記キャブマウント支持パイプを前記キャブに固定するキャブ取付ブラケットと、
前記フレームに対して固定され、前記キャブマウント支持パイプを回転自在に支持するラバー部材と、
前記キャブマウント支持パイプの内部を挿通し、前記キャブに対して固定される一端部と前記フレームに対して固定される他端部とを有するトーションバーと、
前記キャブマウント支持パイプの内面と前記トーションバーの外面との間の間隙に充填される粒状部材と、
を備えたことを特徴とするキャブマウント構造。
【請求項2】
請求項1記載のキャブマウント構造であって、
前記粒状部材は、該粒状部材の相互間の移動を許容する状態で前記間隙に充填されている
ことを特徴とするキャブマウント構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−21709(P2006−21709A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203337(P2004−203337)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】