説明

キャブマウント構造

【課題】キャブとフレームとが締結された状態におけるマウントブラケットの共振周波数を高くすることにより、フレーム側からキャブ側への振動伝達を効果的に抑制する。
【解決手段】キャブマウント構造10は、車両のフレーム14に設けられ、上方に開口した椀状に形成された受部22を有するフレーム側マウントブラケット18と、フレーム側マウントブラケット18の受部22の内周面に貼設された環状の弾性部材20と、車両のキャブ11に設けられ、上方に開口した椀状に形成された係合部26を有するキャブ側マウントブラケット19と、キャブ側マウントブラケット19の係合部26がフレーム側マウントブラケット18の受部22に係合された状態でフレーム側マウントブラケット18とキャブ側マウントブラケット19とを締結する締結機構21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のキャブを車両のフレームに対して分離可能に締結するキャブマウント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックのキャブマウントは、路面からキャブへの振動伝達やエンジンからキャブへの振動伝達を低減させるためのものであり、キャブに計4個(車両前側2個、車両後側2個)設けられている。そして、キャブの下にあるエンジンのメンテナンスが容易に行えるように、キャブは車両前側のキャブマウントを回転中心としてチルト可能な構造となっている。一方、車両後側のキャブマウントは、フレーム側とキャブ側とに分割可能な構造となっている。このようなキャブマウント構造は、特許文献1に記載されている。
【0003】
従来例に係るキャブマウント構造を図4に示す。図4に示す従来例に係るキャブマウント構造40では、車両後側のキャブマウント41は、車両のフレーム42に固定され、車両前後方向に沿って延びる筒状のマウントラバー43と、マウントラバー43に装着され、略U字状に形成された受部44を有するフレーム側マウントブラケット45と、フレーム側マウントブラケット45の受部44の先端に貼設された防振用のクッションラバー46と、車両のキャブ47に設けられ、略U字状に形成された係合部48を有するキャブ側マウントブラケット49とを有している。キャブ側マウントブラケット49の係合部48をフレーム側マウントブラケット45の受部44に係合させた状態でキャブ47に設けられたフック50でフレーム側マウントブラケット45に設けられたアーム51を引き上げることで、フレーム側マウントブラケット45とキャブ側マウントブラケット49との間でクッションラバー46が押しつぶされ、フレーム側マウントブラケット45とキャブ側マウントブラケット49とが締結される。このようなキャブマウント41は、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−145115号公報
【特許文献2】特開2008−132834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4に示す従来例に係るキャブマウント構造40では、キャブ47とフレーム42とが締結された状態において、フレーム側マウントブラケット45とキャブ側マウントブラケット49との間にはクッションラバー46が挟まっているため、キャブ47とフレーム42とは剛に締結された状態になっておらず、特にキャブ47の車両前後方向の支持剛性が低い。そのため、車両前後方向の振動がマウントブラケット(フレーム側マウントブラケット45、キャブ側マウントブラケット49)に特定の周波数で発生する。具体的には、フレーム側マウントブラケット45とキャブ側マウントブラケット49とが車両前後方向に相対的にずれるような振動が発生する。
【0006】
マウントブラケットが振動すると、その周波数で振動伝達率を増幅させてしまい、エンジンからの振動がキャブに伝わりやすくなり、キャブ内部の騒音悪化を招く。特に、マウントブラケットの共振周波数とエンジンの回転2次成分とが一致するエンジン回転域でキャブ内部の騒音悪化を招いていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、キャブとフレームとが締結された状態におけるマウントブラケットの共振周波数を高くすることにより、フレーム側からキャブ側への振動伝達を効果的に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は、車両のキャブを前記車両のフレームに対して分離可能に締結するキャブマウント構造であって、前記フレームに設けられ、上方に開口した椀状に形成された受部を有するフレーム側マウントブラケットと、該フレーム側マウントブラケットの受部の内周面に貼設された環状の弾性部材と、前記キャブに設けられ、上方に開口した椀状に形成された係合部を有するキャブ側マウントブラケットと、該キャブ側マウントブラケットの係合部が前記フレーム側マウントブラケットの受部に係合された状態で前記フレーム側マウントブラケットと前記キャブ側マウントブラケットとを締結する締結機構とを備えたものである。
【0009】
前記締結機構は、椀状の前記受部の底部に立設されたアームと、前記キャブに設けられ、前記アームを引き上げるためのフックとを有するものであっても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、キャブとフレームとが締結された状態におけるマウントブラケットの共振周波数を高くすることにより、フレーム側からキャブ側への振動伝達を効果的に抑制することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャブマウント構造の斜視図である。
【図2】(a)はフレーム側マウントブラケットの斜視図であり、(b)はキャブ側マウントブラケットの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るキャブマウント構造が適用されるトラックの概略図である。
【図4】従来例に係るキャブマウント構造の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0013】
なお、図1及び図2中、矢印xが車両幅方向を示し、矢印yが車両前後方向を示し、矢印zが車両高さ方向(上下方向)を示している。
【0014】
図3に示すように、本実施形態に係るキャブマウント構造10は、車両(本実施形態では、トラック)のキャブ11の車両前端部に車両幅方向に間隔を隔てて配設された一対の車両前側のキャブマウント12と、キャブ11の車両後端部に車両幅方向に間隔を隔てて配設された一対の車両後側のキャブマウント13とを備えている。
【0015】
車両前側の各キャブマウント12は、トラックのフレーム14に固定され、車両幅方向に沿って延びる筒状のマウントラバー15を有している。マウントラバー15には、キャブ11に装着されたトーションバー16が挿通されている。この構成により、キャブ11は車両前側のキャブマウント12(トーションバー16)を回転中心としてフレーム14に対してチルト可能な構造となっている。
【0016】
車両後側の各キャブマウント13は、フレーム14に固定され、車両前後方向に沿って延びる筒状のマウントラバー17と、マウントラバー17に装着されたフレーム側マウントブラケット18と、キャブ11に設けられたキャブ側マウントブラケット19と、フレーム側マウントブラケット18とキャブ側マウントブラケット19との間に介設される防振用のクッションラバー(弾性部材)20(図1参照)と、フレーム側マウントブラケット18とキャブ側マウントブラケット19とを分離可能に締結する締結機構21(図1参照)とを有している。
【0017】
図1及び図2に示すように、フレーム側マウントブラケット18は、上方に開口した椀状に形成された受部(球面受部)22と、受部22の下面に車両前後方向に間隔を隔てて設けられ、下方に延びる一対のフランジ部23と、受部22の底部に立設されたアーム24とを有している。フレーム側マウントブラケット18のフランジ部23は、マウントラバー17に装着された回動軸25(図3参照)に固定されている。フレーム側マウントブラケット18は、例えば、スチール等の金属材料からなる。
【0018】
キャブ側マウントブラケット19は、上方に開口した椀状に形成された係合部(球面係合部)26と、係合部26の上部に車両幅方向に間隔を隔てて設けられ、上方に延びる一対の支持部27と、係合部26の底部に貫通形成された挿通穴28とを有している。キャブ側マウントブラケット19の支持部27は、キャブ11の下面と繋がっている。キャブ側マウントブラケット19は、例えば、スチール等の金属材料からなる。
【0019】
クッションラバー20は、環状に形成されており、フレーム側マウントブラケット18の受部22の内周面に貼られている。クッションラバー20は、例えば、天然ゴムや合成ゴム等のゴム材料からなる。
【0020】
締結機構21は、フレーム側マウントブラケット18の受部22の底部に立設されたアーム24と、キャブ11に設けられ、アーム24を引き上げるためのフック(図示せず)とから構成されている。
【0021】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0022】
キャブ11とフレーム14との締結方法は、図4に示す従来例に係るキャブマウント構造40と同様である。即ち、キャブ側マウントブラケット19の係合部26がフレーム側マウントブラケット18の受部22に係合された状態で、キャブ11に設けられたフック(図示せず)でフレーム側マウントブラケット18に設けられたアーム24を引き上げることで、フレーム側マウントブラケット18の受部22の内周面とキャブ側マウントブラケット19の係合部26の外周面との間でクッションラバー20が押しつぶされ、フレーム側マウントブラケット18とキャブ側マウントブラケット19とが締結される。
【0023】
このとき、本実施形態に係るキャブマウント構造10では、フレーム側マウントブラケット18の受部22の内周面に貼設されたクッションラバー20と、キャブ側マウントブラケット19の係合部26の外周面とは、その全周で接触するため、キャブ11は、図4に示す従来例に係るキャブマウント構造40において支持される車両幅方向だけでなく、車両前後方向も支持される。その結果、キャブ11の車両前後方向の支持剛性が向上し、キャブ11の車両前後方向の振動が抑制できる。
【0024】
要するに、本実施形態に係るキャブマウント構造10では、キャブ側マウントブラケット19の全周をフレーム側マウントブラケット18(クッションラバー20)によって支持するため、マウントブラケット(フレーム側マウントブラケット18、キャブ側マウントブラケット19)の共振周波数をエンジンの回転2次成分よりも十分高くすることが可能となり、フレーム14側からキャブ11側への振動伝達を効果的に抑制することが可能となる。従って、本実施形態に係るキャブマウント構造10によれば、キャブ11内部の騒音悪化を抑制することが可能となる。
【0025】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0026】
例えば、フレーム側マウントブラケット18をマウントラバー17を介してフレーム14に取り付けるとしたがこれには限定はされず、フレーム側マウントブラケット18をフレーム14に直接取り付けるようにしても良い。フレーム側マウントブラケット18に設けたクッションラバー20によってキャブ11における所望の防振効果が得られるようにチューニングすることで、マウントラバー17を省略し得る。
【符号の説明】
【0027】
10 キャブマウント構造
11 キャブ
14 フレーム
18 フレーム側マウントブラケット
19 キャブ側マウントブラケット
20 クッションラバー(弾性部材)
21 締結機構
24 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のキャブを前記車両のフレームに対して分離可能に締結するキャブマウント構造であって、前記フレームに設けられ、上方に開口した椀状に形成された受部を有するフレーム側マウントブラケットと、該フレーム側マウントブラケットの受部の内周面に貼設された環状の弾性部材と、前記キャブに設けられ、上方に開口した椀状に形成された係合部を有するキャブ側マウントブラケットと、該キャブ側マウントブラケットの係合部が前記フレーム側マウントブラケットの受部に係合された状態で前記フレーム側マウントブラケットと前記キャブ側マウントブラケットとを締結する締結機構とを備えたことを特徴とするキャブマウント構造。
【請求項2】
前記締結機構は、椀状の前記受部の底部に立設されたアームと、前記キャブに設けられ、前記アームを引き上げるためのフックとを有する請求項1に記載のキャブマウント構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−187972(P2012−187972A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51752(P2011−51752)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】