説明

ギヤボックスの支持装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はギヤボックスの支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】車両走行用の駆動力を発生する電動機を備える車両において、図7のように動力伝達経路を構成することが考えられる。
【0003】1は駆動輪の車軸(アクスル)であり、その中間部にデファレンシャル2が介装される。デファレンシャル2のドライブピニオンにプロペラシャフト3を介して減速用のギヤボックス4の出力軸が連結される。
【0004】減速用のギヤボックス4は車体側に取り付けられる。このギヤボックス4には、2つの入力軸が設けられ、これらのそれぞれに電動機5が連結される。1つの出力軸と2つの入力軸との間には、同じ歯数比でかみ合う歯車が介装される。
【0005】電動機5は電源の供給を受けると、車両走行用の駆動力を発生する。その駆動力は減速用のギヤボックス4を介してプロペラシャフト3に出力され、デファレンシャル2からアクスル1を介して駆動輪6へと伝達される。
【0006】関連する従来技術としては、電動機を含むパワーユニットをバネ定数の可変な液封マウントブッシュを介して支持したもの(特開平9ー215104号公報)、動力伝達経路のデファレンシャルを省略したもの(特開平9ー215101号公報)、車両停止中も電動機で補機を駆動可能にしたもの(特開平5ー147445号公報)、などが知られる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】図7のような動力伝達経路を備える車両においては、電動機5の回転にトルク変動が生じると、ギヤボックス4の出力軸にねじれ振動が発生する。また、路面の凹凸などにより、駆動輪6(タイヤ)の回転にトルク変動が生じると、アクスル1からねじれ振動がギヤボッスク4へ入力される。そのため、これら振動の車体側への伝達により、車両の快適な乗心地を損なうばかりでなく、大きな変動トルクなどが入力すると、ギヤボックス4などに破損を生じる可能性も考えられる。
【0008】この発明はこのような問題点を解決するための有効な対策手段の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】発明では、車両走行用の駆動力を発生する電動機およびその減速用のギヤボックスを備える車両において、ギヤボックスの出力軸と直交する方向の両側をそれぞれ出力軸と同じ高さに弾性体を介して支持する1対のサイドマウントを設ける。
【0010】また、ギヤボックスの出力軸と同軸上を回転自由に弾性体を介して支持するセンタマウントと、を設ける。
【0011】
【発明の効果】発明では、1対のサイドマウントにより、ギヤボックスの重量はその出力軸を含む平面上で同じ高さに支持される。電動機の回転や駆動輪の回転にトルク変動を生じると、ギヤボックスの出力軸にねじれトルクが発生し、ギヤボックスの両側を上下(ロール方向)へ振動させる。この振動(トルク)は、ギヤボックスの両側に位置するサイドマウント12で支持される。
【0012】各サイドマウントは上下へ伸縮するが、ギヤボックスの出力軸を含む平面は、出力軸を中心にロール方向へ揺れるようになる。このため、ギヤボックスの両側を上下へ揺する変動トルクによって出力軸が左右へ揺れる連成振動の誘発が抑えられる。したがって、ギヤボックスから車体側へ伝わる振動がサイドマウントを介して低レベルに抑制され、ギヤボックスなどの破損を防止しながら、車両の快適な乗心地を確保することが可能になる。
【0013】発明では、センタマウントも若干のトルク(振動)を受けるが、ギヤボックスの出力軸と同軸上を回転自由に支持するため、その出力軸が左右へ揺れる連成振動の誘発を効果的に抑制できる。
【0014】
【発明の実施の形態】図1〜図5において、10は減速用のギヤボックスであり、2つの入力軸に電動機11がそれぞれ連結される。このギヤボックス10はその出力軸15と直交する方向(車幅方向)の両側を出力軸と同じ高さに支持するサイドマウント12と、後面の電動機の間を出力軸と同軸上に支持するセンタマウント13を介して車体側に搭載される。
【0015】サイドマウント12はラバーブロック16の上下面にプレート17,18(金属板)を接着したものであり、車体側に対して下側プレート18を介してボルトナットで結合される。ギヤボックス10の両側面にはそれぞれブラケット19がボルトナットで結合され、各ブラケット19に出力軸と略同じ高さの取付面20が形成される。サイドマウント12はこの取付面20に上側プレート17を介してボルトおよびナットで結合される。
【0016】下側プレート18は、その両端部21がラバーブロック16の前後に立ち上がり、上側プレート17の上方へ延びる先端に内側へ曲がる係止部22が形成される。両端部21の内面にラバー23が、係止部21の内面にラバー24が接着される。ラバーブロック16の内部には、バネ特性の調整用にすぐり25(孔)が設けられる。
【0017】センタマウント13は外筒26(カラー)と内筒27(軸受メタル)との間にラバーブッシュ28を介装したものであり、U字形の中央部に下側の支えと共にカラー26を包持するブラケット29を介して車体側にボルトナットで取り付けられる。
【0018】ラバーブッシュ28の内筒27にピン30が回動自由に挿入され、ピン30はギヤボックス10の裏面中央(電動機11と11の間)に円錐台形のステイ31を介して出力軸15と同軸上に固定される。32はピン30の抜け止用のナットであり、ラバーブッシュ28の内筒27から突出するピン30の先端(雄ネジ部)に結合する。
【0019】図6はサイドマウント12の上下への伸縮(ストローク)に対するバネ特性を表すものである。縮み側では、ストロークに応じてラバーブロック16のすぐり25が潰れるまでは、弾性力(支持力)が小さく緩やかに上昇する一方、すぐり25が潰れると、その時点から弾性力が急に増大するようになる。伸び側では、ストロークに応じてラバーブロック16のすぐり25で弾性力が小さく緩やかに上昇する一方、上側プレート17が係止部22のラバー24に突き当たると、ラバー24の弾性力が加わるため、サイドマウント全体の弾性力は急激に立ち上がるようになる。
【0020】このように構成すると、ギヤボックス10および電動機11の重量は、サイドマウント12およびセンタマウント13を介してギヤボックス10の出力軸15を含む平面上の3点で同じ高さに支持される。電動機11が駆動されると、その駆動力はギヤボックス10を介してプロペラシャフトに出力され、デファレンシャルからアクスルを介して駆動輪へ伝達される(図7参照)。
【0021】電動機11の回転や駆動輪の回転にトルク変動を生じると、ギヤボックス10の出力軸15にねじれトルクが発生し、ギヤボックス10の両側をロール方向へ振動させる。この振動(トルク)は、ギヤボックス10の両側に位置するサイドマウント12で主に支持される。
【0022】各サイドマウント12は上下へ伸縮するが、ギヤボックス10の出力軸15を含む平面s(マウント支持面)は、出力軸15を中心にロール方向へ揺れるようになる。そのため、ギヤボックス10の両側を上下へ揺する変動トルクによって出力軸15が左右へ揺れる連成振動の誘発を抑えられる。
【0023】センタマウント13も若干のトルク(振動)を受けるが、ギヤボックス10の出力軸15と同軸上(サイドマウント12の伸縮に伴うマウント支持面sのロール方向への揺れの中心)を回転自由に支持するため、出力軸15が左右へ揺れる連成振動を効果的に抑制できる。
【0024】サイドマウント12は図6のようなマウント特性を備えるため、ギヤボックス10の両側をロール方向へ揺する変動トルクが小さいときは、これを柔らかく支持し、ラバー16の弾性で車体側へ伝わる振動を良好に吸収する。また、変動トルクが大きくなると、これに見合う大きな支持力(弾性力)が得られ、ラバー16,24の弾性で車体側への振動を十分に吸収できる。
【0025】アクスルが上下すると、プロペラシャフトの揺動に伴う、軸方向への作用力により、ギヤボックス10が前後へ揺れる(図7参照)。両側のサイドマウント12において、上側プレート17が前後へ変位すると、下側プレート18の両端部21に突き当たるため、ギヤボックス10の前後への揺れも小さく抑えられる。また、両端部21のラバー23でプレート17と18間の衝突が緩和され、衝撃音の発生も防止できる。
【0026】これらの結果、ギヤボックス10から車体側へ伝わる振動が低減されるため、ギヤボックス10などの破損を防止しながら、車両の快適な乗心地を確保することが可能になる。サイドマウント12においては、ラバーブロック16のすぐり25とラバー24付きの係止部22とを設けるという簡単かつ容易な手段により、図6のような望ましい非線形のバネ特性を低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態を表す一部切欠きの正面図である。
【図2】同じく右側面図である。
【図3】同じく平面図である。
【図4】同じく斜視説明図である。
【図5】同じくサイドマウントの拡大図である。
【図6】同じくサイドマウントの特性図である。
【図7】動力伝達経路の構成説明図である。
【符号の説明】
10 ギヤボックス
11 電動機
12 サイドマウント
13 センタマウント
15 出力軸
16 ラバーブロック
17 上側プレート
18 下側プレート
19 ブラケット
23,24 ラバー
26 外筒
27 内筒
28 ラバーブッシュ
29 ブラケット
30 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】車両走行用の駆動力を発生する電動機およびその減速用のギヤボックスを備える車両において、ギヤボックスの出力軸と直交する方向の両側をそれぞれ出力軸と同じ高さに弾性体を介して支持する1対のサイドマウントを設け、ギヤボックスの出力軸と同軸上を回転自由に弾性体を介して支持するセンタマウントを設けたことを特徴とするギヤボックスの支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【特許番号】特許第3429649号(P3429649)
【登録日】平成15年5月16日(2003.5.16)
【発行日】平成15年7月22日(2003.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−280799
【出願日】平成9年10月14日(1997.10.14)
【公開番号】特開平11−117995
【公開日】平成11年4月27日(1999.4.27)
【審査請求日】平成13年9月27日(2001.9.27)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【参考文献】
【文献】特開 平4−193627(JP,A)
【文献】実開 平4−107111(JP,U)
【文献】実開 昭57−135426(JP,U)
【文献】実開 昭63−173839(JP,U)