説明

クランクケースヒータを備えた空気調和機

【課題】ユーザーの空気調和機の使用実態からCHのON/OFFタイミングを予測し、圧縮機が起動される一定時間前に確実にCHに通電することができる空気調和機を提供することを目的とする。
【解決手段】圧縮機10にクランクケースヒータ40が付設され、圧縮機10が停止されている期間、クランクケースヒータ40に通電することにより圧縮機10が加熱可能とされている空気調和機において、予め設定された運転期間では、圧縮機10が停止期間中にクランクケースヒータ40に対して常に通電を行うとともに、空気調和機による暖房ON/OFF時間を集計し、設定運転期間が経過後は、その集計結果に基づいて、クランクケースヒータ40のOFF可能時間を算出し、クランクケースヒータ40のONタイミングを予測してクランクケースヒータ40をON/OFF制御する制御部41を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機を加熱するためのクランクケースヒータを備えた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機を長時間停止しておくと、冷媒が液状態となって圧縮機内に溜り込み、その状態で圧縮機を起動すると、液圧縮により圧縮機を損傷する虞がある。このため、特に寒冷地向けの空気調和機では、圧縮機にクランクケースヒータ(以下、CHと略称する。)を付設し、空気調和機を運転する前にCHに通電して圧縮機を加熱することにより、液冷媒の溜り込みによる液圧縮を防止している。CHに対しては、圧縮機を起動する一定時間前に通電すればよいが、ユーザーが空気調和機を何時使用するか判らないため、圧縮機が停止している期間中は常にCHに通電している。このため、必要以上にCHに対する通電時間が長くなり、待機電力が増加するという課題があった。
【0003】
そこで、CHの消費電力を抑えるため、特許文献1には、(1)圧縮機停止後の所定時間を検知するタイマを設け、その時間後にCHをONする。(2)所定時刻を検知するタイマを設け、その時刻にCHをONする。(3)所定時刻を検知するタイマと月日を検知するカレンダ検知手段及び通電量制御手段を設け、所定時刻にCHをONするとともに、月日により通電量を制御する。(4)所定時刻を検知するタイマと地域設定手段および通電量制御手段を設け、所定時刻にCHをONするとともに、地域により通電量を制御する。(5)所定時刻を検知するタイマとカレンダ検知手段およびカレンダ検知手段に基づいてCHへの通電を制御するCH制御手段を設け、月日により通電時刻を決定する。(6)所定時刻を検知するタイマと地域設定手段および地域設定手段に基づいてCHへの通電を制御するCH制御手段を設け、地域により通電時刻を決定する。ようにしたものが提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−277070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示すものでは、所定時刻を検知するタイマを設けており、このタイマが所定時刻を検知すると、CH通電手段を介してCHに通電する構成としている。しかしながら、タイマが検知する所定時刻を如何にして決定しているのか、その具体的内容が不明である。一般に空気調和機を使用する時間、すなわち圧縮機を起動する時間は、ユーザーによって区々であり、タイマが検知する所定時刻を一律に決定することは困難である。
従って、圧縮機が起動される一定時間前にCHに通電し、液圧縮を起こさないようにするには、ユーザーによる空気調和機の使用実態を反映して、CHのON/OFFタイミングを決定する以外になかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ユーザーの空気調和機の使用実態からCHのON/OFFタイミングを予測し、圧縮機が起動される一定時間前に確実にCHに通電することができる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明の空気調和機は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる空気調和機は、圧縮機にクランクケースヒータが付設され、前記圧縮機が停止されている期間、前記クランクケースヒータに通電することにより前記圧縮機が加熱可能とされている空気調和機において、予め設定された運転期間では、前記圧縮機が停止期間中に前記クランクケースヒータに対して常に通電を行うとともに、前記空気調和機による暖房ON/OFF時間を集計し、前記設定運転期間が経過後は、その集計結果に基づいて、前記クランクケースヒータのOFF可能時間を算出し、該クランクケースヒータのONタイミングを予測して該クランクケースヒータをON/OFF制御する制御部を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、予め設定された運転期間では、圧縮機が停止期間中に、予め定められたスペックに基づいてクランクケースヒータに対して常に通電を行うとともに、空気調和機による暖房ON/OFF時間を集計し、設定運転期間が経過後は、その集計結果に基づいて、クランクケースヒータのOFF可能時間を算出し、該クランクケースヒータのONタイミングを予測してクランクケースヒータをON/OFF制御する制御部を備えているため、該制御部によって圧縮機が停止されている期間中、クランクケースヒータをOFFできる時間を算出し、その間、クランクケースヒータをOFF状態とすることができる。また、クランクケースヒータのOFF可能時間を算出してクランクケースヒータのONタイミングを予測することにより、実際に圧縮機を起動する一定時間前に、クランクケースヒータをONして圧縮機を加熱することが可能となる。従って、圧縮機が停止期間中、常にクランクケースヒータに対して通電する必要がなくなり、待機電力を節減することができる。
【0009】
さらに、本発明の空気調和機は、上記の空気調和機において、前記制御部は、前記クランクケースヒータのONタイミングを予測して、該クランクケースヒータをON/OFF制御する運転低減モードと、前記圧縮機が停止期間中、予め定められたスペックに基づいてクランクケースヒータに常時通電を行う通常運転モードとのいずれかに切替え可能な切替え手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、制御部が、クランクケースヒータのONタイミングを予測して、クランクケースヒータをON/OFF制御する運転低減モードと、圧縮機が停止期間中、予め定められたスペックに基づいてクランクケースヒータに常時通電を行う通常運転モードとのいずれかに切替え可能な切替え手段を備えているため、空気調和機を不規則な状態で使用する場合は、切替え手段によりクランクケースヒータの制御モードを、運転低減モードから通常運転モードに切替え、圧縮機が停止期間中、クランクケースヒータに常時通電を行う通常運転モードでクランクケースヒータを制御することができる。従って、空気調和機の使用実態に応じ、いずれかの制御モードに選択的に切替えて運転することができ、クランクケースヒータによる液圧縮防止機能を確保しつつ、待機電力の節減を図ることができる。
【0011】
さらに、本発明の空気調和機は、上記の空気調和機において、前記切替え手段は、リモコン側から切替え可能とされていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、切替え手段が、リモコン側から切替え可能とされているため、空気調和機の使用実態に合わせて、必要に応じリモコンからの操作によりクランクケースヒータのON/OFF制御モードを、運転低減モードまたは通常運転モードのいずれかに切替えることができる。従って、ユーザーによる空気調和機の使用実態に適合するように、クランクケースヒータの制御形態をリモコンにより簡易に切替えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、圧縮機が停止されている期間中、クランクケースヒータをOFFできる時間を算出し、その間、クランクケースヒータをOFF状態とすることができるとともに、クランクケースヒータのOFF可能時間を算出してクランクケースヒータのONタイミングを予測することにより、実際に圧縮機を起動する一定時間前に、クランクケースヒータをONして圧縮機を加熱することが可能となるため、圧縮機が停止期間中、常にクランクケースヒータに対して通電する必要がなくなり、待機電力を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るマルチ空気調和機の概略構成図である。
【図2】図1に示すマルチ空気調和機のクランクケースヒータを備えた圧縮機周りの構成図である。
【図3】図2に示すクランクケースヒータの制御フローチャート図である。
【図4】図3に示すクランクケースヒータの制御に用いる暖房ON時間集計テーブルの一例である。
【図5】図3に示すクランクケースヒータの制御に用いる空気調和機のON/OFFデータ集計と、クランクケースヒータのOFF可能時間の計算例の一例である。
【図6】図1に示すマルチ空気調和機およびクランクケースヒータのON/OFFタイミングチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態について、図1ないし図6を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係るマルチ空気調和機の概略構成図が示され、図2には、そのクランクケースヒータを備えた圧縮機周りの構成図が示されている。
マルチタイプの空気調和機(以下、単にエアコンと称する場合もある。)1は、1台の室外機2に対して、複数台の室内機3A,3Bが室外機2から導出されるガス側配管4および液側配管5の間に分岐器6を介して互いに並列に接続されている。
【0016】
室外機2は、冷媒を圧縮するインバータ駆動の圧縮機10と、冷媒ガス中から潤滑油を分離する油分離器11と、冷媒の循環方向を切換える四方切換弁12と、冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器13と、室外熱交換器13と一体的に構成されている過冷却コイル14と、室外側膨張弁(EEVH)15と、液冷媒を貯留するレシーバ16と、液冷媒に過冷却を与える過冷却熱交換器17と、過冷却熱交換器17に分流される冷媒量を制御する過冷却用膨張弁(EEVSC)18と、圧縮機10に吸入される冷媒ガスから液分を分離し、ガス分のみを圧縮機10側に吸入させるアキュームレータ19と、ガス側操作弁20と、液側操作弁21とを備えている。
【0017】
室外機2側の上記各機器は、冷媒配管22を介して公知の如く接続され、室外側冷媒回路23を構成している。また、室外機2には、室外熱交換器13に対して外気を通風する室外ファン24が設けられているとともに、油分離器11と圧縮機10の吸入配管との間に、油分離器11内で吐出冷媒ガスから分離された潤滑油を所定量ずつ圧縮機10側に戻すための油戻し回路25が設けられている。
【0018】
ガス側配管4および液側配管5は、室外機2のガス側操作弁20および液側操作弁21に接続される冷媒配管であり、現場での据え付け施工時に、室外機2とそれに接続される複数台の室内機3A,3Bとの間の距離に応じて、その配管長が設定されるようになっている。ガス側配管4および液側配管5の途中には、適宜数の分岐器6が設けられ、該分岐器6を介して適宜台数の室内機3A,3Bが接続されている。これによって、密閉された1系統の冷凍サイクル(冷媒回路)7が構成されている。
【0019】
室内機3A,3Bは、室内空気を冷媒と熱交換させて室内の空調に供する室内熱交換器30と、室内側膨張弁(EEVC)31と、室内空気を室内熱交換器30に循環させる室内ファン32とを備えており、室内側の分岐ガス側配管4A,4Bおよび分岐液側配管5A,5Bを介して分岐器6に接続されている。
【0020】
上記の空気調和機1において、冷房運転は、以下のように行われる。
圧縮機10で圧縮され、吐出された高温高圧の冷媒ガスは、油分離器11で冷媒中に含まれている潤滑油が分離される。その後、冷媒ガスは、四方切換弁12により室外熱交換器13側に循環され、室外熱交換器13で室外ファン24により送風される外気と熱交換して凝縮液化される。この液冷媒は、過冷却コイル14で更に冷却された後、室外側膨張弁15を通過し、レシーバ16内にいったん貯留される。
【0021】
レシーバ16で循環量が調整された液冷媒は、過冷却熱交換器17を経て液冷媒配管側を流通される過程で、液冷媒配管から分流され、過冷却用膨張弁(EEVSC)18で断熱膨張された一部の冷媒と熱交換されて過冷却度が付与される。この液冷媒は、液側操作弁21を経て室外機2から液側配管5へと導出される。更に液側配管5に導出された液冷媒は、分岐器6を介して各室内機3A,3Bの分岐液側配管5A,5Bへと分流される。
【0022】
分岐液側配管5A,5Bに分流された液冷媒は、各室内機3A,3Bに流入し、室内側膨張弁(EEVC)31で断熱膨張され、気液二相流となって室内熱交換器30に流入される。室内熱交換器30では、室内ファン32により循環される室内空気と冷媒とが熱交換され、室内空気は冷却されて室内の冷房に供される。一方、冷媒はガス化され、分岐ガス側配管4A,4Bを経て分岐器6に至り、他の室内機からの冷媒ガスとガス側配管4で合流される。
【0023】
ガス側配管4で合流された冷媒ガスは、再び室外機2に戻り、ガス側操作弁20、四方切換弁12を経て、過冷却熱交換器17からの冷媒ガスと合流された後、アキュームレータ19に導入される。アキュームレータ19では、冷媒ガス中に含まれている液分が分離され、ガス分のみが圧縮機10に吸入される。この冷媒は、圧縮機10において再び圧縮され、以上のサイクルを繰り返すことによって冷房運転が行われる。
【0024】
一方、暖房運転は、以下のように行われる。
圧縮機10により圧縮され、吐出された高温高圧の冷媒ガスは、油分離器11で冷媒中に含まれている潤滑油が分離された後、四方切換弁12を介してガス側操作弁20側に循環される。ガス側操作弁20側に循環された冷媒は、ガス側配管4を経て室外機2から導出され、分岐器6、室内側の分岐ガス側配管4A,4Bを経て複数台の室内機3A,3Bに導入される。
【0025】
室内機3A,3Bに導入された高温高圧の冷媒ガスは、室内熱交換器30で室内ファン32を介して循環される室内空気と熱交換され、室内空気は加熱されて室内の暖房に供される。室内熱交換器30で凝縮された液冷媒は、室内側膨張弁(EEVC)31、分岐液側配管5A,5Bを経て分岐器6に至り、他の室内機からの冷媒と合流された後、液側配管5を経て室外機2側に戻される。なお、暖房時、室内機3A,3Bでは、凝縮器として機能する室内熱交換器30の冷媒出口温度(以下、熱交出口温度という。)または冷媒過冷却度が目標値となるように、室内側膨張弁(EEVC)31の開度が制御されるようになっている。
【0026】
室外機2側に戻った冷媒は、液側操作弁21を経て過冷却熱交換器17に至り、冷房時の場合と同様に過冷却が付与された後、レシーバ16に流入され、いったん貯留されることにより循環量が調整される。この液冷媒は、室外側膨張弁(EEVH)15に供給されて断熱膨張された後、過冷却コイル14を経て室外熱交換器13に流入される。
【0027】
室外熱交換器13においては、室外ファン24を介して送風される外気と冷媒とが熱交換され、冷媒は外気から吸熱して蒸発ガス化される。該冷媒は、室外熱交換器13から四方切換弁12を経て、過冷却熱交換器17からの冷媒ガスと合流された後、アキュームレータ19に導入される。アキュームレータ19では、冷媒ガス中に含まれている液分が分離されてガス分のみが圧縮機10に吸入され、圧縮機10において再び圧縮される。以上のサイクルを繰り返すことによって暖房運転が行われる。
【0028】
さらに、上記空気調和機1において、圧縮機10には、図2に示されるように、密閉ハウジング10Aの外周にクランクケースヒータ(以下、CHと略称する。)40が付設されている。このCH40は、圧縮機10が停止期間中に、圧縮機10内に冷媒が液状態となって溜り込み、その液冷媒を圧縮機10が起動時に吸込んで液圧縮を起こし、圧縮機10が損傷するのを防ぐために設けられるものであり、エアコン1を運転する前にCH40に通電して圧縮機10を加熱することにより、液冷媒を圧縮機10から追出し、液圧縮を防止する役割を担うものである。
【0029】
CH40は、制御部41を介してON/OFF制御されるように構成されている。この制御部41は、圧縮機10が停止期間中、CH40に対して予め定められたスペックに基づいて常時通電制御する通常運転モード制御部42と、CH40のONタイミングを予測して該CH40をON/OFF制御する運転低減モード制御部43と、制御モードを通常運転モードまたは運転低減モードのいずれかのモードに選択的に切替えできる切替え手段44とを備えており、切替え手段44は、リモコン45側から切替え操作できるように構成されている。更に、制御部41には、外気温センサ46による検出値が入力されるようになっている。
【0030】
通常運転モード制御部42は、予め定められているスペック記載のCH40のON条件を満たす場合、圧縮機10が停止期間中はCH40に対して常に通電し、CH40をONとして圧縮機10を加熱するものである。この場合、CH40は、圧縮機10が起動されると、起動中はOFFとされ、圧縮機10が停止されると、停止期間中は常にONされるようになる。このような運転モードは、従来からCH40の運転モードとして適用されている公知のモードであり、特に新しいものではない。
【0031】
一方、運転低減モード制御部43は、ユーザーが空気調和機1を使用(圧縮機10を起動)する時間帯からCH40をONするタイミングを予測して、CH40をON/OFF制御することにより、CH40の運転時間を低減し、待機電力を節減しようとするものである。具体的には、予め設定された運転期間では、圧縮機10が停止期間中に、通常運転モードと同様にCH40に対して予め定められたスペックに基づいて常時通電を行うとともに、空気調和機1による暖房ON/OFF時間を集計し、設定した運転期間が経過した後は、その集計結果に基づいて、CH40のOFF可能時間を算出し、CH40のONタイミングを予測して、CH40をON/OFF制御することにより、実際に圧縮機10が起動される一定時間前に、CH40をONとして圧縮機10を加熱できるようにするものである。
【0032】
以下に、この運転低減モード制御部43による制御フローを、図3ないし図5を参照して詳細に説明する。
CH40は、上記の通り、通常運転モードまたは運転低減モードのいずれかで制御されるようになっており、運転低減モードが選択されると、以下のように動作される。
例えば、最初の4週間(予め設定された運転期間)は、エアコン1の暖房ON/OFF状況を集計するため、A〜Gtwの初期値を1とし、CH40は通常運転モードとなるようにする。ここで、A〜Gtwは、A〜Gが曜日(日〜土)、tが時間(0〜24h)、wが週を表すものである。また、CH40のON/OFF判定は、現時刻帯において曜日毎の4週間前まで、暖房が一度もONしていなければ、現時刻帯では暖房が使用されることはないと判断し、CH40をOFFするようにしている。
【0033】
制御フローでは、まず、CH40のON時間低減モードがスタートすると、ステップS1において、1時間(1h)が経過する毎に「t=+1」と処理する。そして、tが「t≧24」となった段階で、「t=1」とし、その都度、A→B→C→・・・G→Aに移行するようにしている。ステップS1での処理が終了後、ステップS2に進み、G→Aに戻って週が変わると、「w=+1」と処理し、「w≧4」となった段階で、「w=1」とするようにしている。続いて、ステップS3に進み、各曜日、時間ごとの暖房運転状況合計値「SUM_A〜Gt」を求める。この各曜日、時間ごとの暖房運転状況合計値「SUM_A〜Gt」は、「SUM_A〜Gt=A〜Gt1+A〜Gt2+A〜Gt3+A〜Gt4」によって算出される。
【0034】
暖房運転状況合計値「SUM_A〜Gt」が算出されると、ステップS4に進み、「暖房はOFFか」が判定される。NOと判定されると、ステップS5に進み、暖房ON時間が集計される。この暖房ON時間は、「A〜Gtw」として各曜日、時間ごとに集計され、例えば、2週目の日曜日のAM3時であれば、「A〜Gtw=A0302」とされる。この場合の「A0302」では、暖房ONのため、「A〜Gtw」は「1」と処理され、ステップS1に戻る。一方、ステップS5でYESと判定されると、ステップS6に進み、同様に暖房OFF時間が集計され、「A〜Gtw」は「0」と処理される。
【0035】
ステップS6での処理が終了すると、ステップS7に進み、CH40が「運転低減モードか」が判定される。しかし、最初の4週間(予め設定された運転期間)は、空気調和機1のON/OFFデータ集計期間のため、通常運転モードで制御されることから、NOと判定され、ステップS8に進み、圧縮機10がON期間中、CH40はOFF、圧縮機10がOFF期間中、CH40はONを基本に、予め定められているスペック記載のCH40のON条件に基づいて、CH40は通常運転モードでON/OFF判定され、通電制御されるようになっている。なお、スペック記載のCH40がONする条件は、例えば、外気温センサ46による検出値や前回の運転モードを加味する、etc.である。
【0036】
以上のステップS1ないしS6の動作により、図4に示されるように、暖房ON時間集計テーブルを作成し、CH40をOFFできるタイミングを集計する。図5は、この間における空気調和機1のON/OFF集計データにより、CH40のON時間低減動作例を求めたものであり、一例として、或る日曜日の空気調和機1のON/OFFデータ集計結果と、CH40のOFF可能時間の算出例が図示されている。
【0037】
最初の4週間(設定運転期間)で、上記の如く暖房ON/OFF状況を集計し、当該期間が経過後は、その集計結果に基づいて、CH40のOFF可能時間を算出し、CH40のONタイミングを予測して、CHをON/OFF制御することができる。図3に示されている制御フローでは、ステップS7において、CH40が「運転低減モードか」が判定され、NOであれば、ステップS8に進み、CH40は通常運転モードでON/OFF判定され、通電制御されることになる。
【0038】
また、ステップS7でYESと判定されると、ステップS9に進み、「SUM_A〜Gt=0&SUM_A〜G(t+1)=0」か、否かが判定される。ここで、NOと判定されると、上記したステップS8に進み、CH40を通常運転モードでONまたはOFFとした後、ステップS1に戻り、YESと判定されると、ステップS10に進み、CH40をOFFとした後、ステップS1に戻る。以上によって、CH40は、圧縮機10が停止期間中において、OFF可能な時間を算出し、その間、OFFとされることになり、待機電力を節減することが可能となる。
【0039】
図5に示されている具体例では、運転低減モードが選択された場合において、通常運転モードでON/OFF制御される以外に、運転低減モードによって、t=2〜t=6までの間、すなわちAM1時からAM6時までの間、CH40がOFF状態とされるようになっている。従って、本実施形態によれば、CH40のOFF可能時間を算出し、CH40のONタイミングを予測して、CH40をON/OFF制御することにより、圧縮機10の停止期間中、常にCH40をONとすることなく、例えば、図6に示されるタイミングチャートのように、実際に圧縮機10が起動される一定時間前に、CH40をONとして圧縮機10を加熱することができるようになる。
【0040】
一方、空気調和機1は、ユーザーにより不規則に使われる場合がある。このため、CH40のON/OFF制御を、運転低減モードのみに固定することは、空気調和機1の使用実態から見て必ずしも実用的とは云えない。この点に鑑み、本実施形態では、CH40の制御部41に切替え手段44を設け、該切替え手段44を介して、上記したように、リモコン45からCH40の制御モードを、運転低減モードまたは通常運転モードのいずれかに切替え可能な構成としている。
【0041】
斯くして、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上記空気調和機1においては、圧縮機10に付設されているCH40に対して、通常運転モード制御部42または運転低減モード制御部43のいずれかを介して通電制御することができる。そして、切替え手段44を介して通常運転モード制御部42による制御が選択された場合、圧縮機10が駆動されている期間以外、常時CH40に対して予め定められたスペックに基づいて通電されることになり、このため、停止中の圧縮機10への液冷媒の溜り込みを防止し、圧縮機10を起動する際の液圧縮を確実に防止することが可能となる。
【0042】
一方、運転低減モード制御部43による制御が選択された場合、エアコン1による暖房ON/OFF時間を集計し、設定運転期間が経過後、その集計結果に基づいて、CH40のOFF可能時間を算出し、該CH40のONタイミングを予測してCH40をON/OFF制御することができるため、圧縮機10が停止されている期間中にCH40をOFFできる時間を算出し、その間CH40をOFF状態とすることができる。また、CH40のOFF可能時間を算出してCH40のONタイミングを予測することにより、実際に圧縮機10を起動する一定時間前に、CH40をONして圧縮機10を加熱することが可能となる。これにより、圧縮機10が停止期間中、常にCH40に対して通電する必要がなくなり、待機電力を節減することができる。
【0043】
また、切替え手段44により、通常運転モードで制御するか、運転低減モードで制御するかのいずれかを選択することができるため、エアコン1を不規則な状態で使用する場合には、切替え手段44を介してCH40の制御モードを、運転低減モードから通常運転モードに切替え、圧縮機10が停止期間中、予め定められたスペックに基づいてCH40に常時通電を行う通常運転モードでCH40を制御することができる。従って、エアコン1の使用実態に応じ、いずれかの制御モードに選択的に切替えて運転することができ、CH40による液圧縮防止機能を確保しつつ、待機電力の節減を図ることができる。
【0044】
さらに、上記切替え手段44を、リモコン45側から切替え可能としているため、エアコン1の使用実態に合わせて、必要に応じリモコン45からの操作によりCH40のON/OFF制御モードを、運転低減モードまたは通常運転モードのいずれかに切替えることができる。従って、ユーザーによるエアコン1の使用実態に適合するように、CH40の制御形態をリモコン45により簡易に切替えることができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、マルチ空気調和機1に適用した例について説明したが、室外機2に対して1台の室内機が接続されたシングルタイプの空気調和機にも同様に適用できることは云うまでもない。
また、空気調和機1による暖房ON/OFF時間を集計するための設定運転期間を4週間として例について説明したが、この期間は適宜設定されるものであり、4週間に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 空気調和機(エアコン)
10 圧縮機
40 クランクケースヒータ(CH)
41 制御部
42 通常運転モード制御部
43 運転低減モード制御部
44 切替え手段
45 リモコン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機にクランクケースヒータが付設され、前記圧縮機が停止されている期間、前記クランクケースヒータに通電することにより前記圧縮機が加熱可能とされている空気調和機において、
予め設定された運転期間では、前記圧縮機が停止期間中に前記クランクケースヒータに対して常に通電を行うとともに、前記空気調和機による暖房ON/OFF時間を集計し、前記設定運転期間が経過後は、その集計結果に基づいて、前記クランクケースヒータのOFF可能時間を算出し、該クランクケースヒータのONタイミングを予測して該クランクケースヒータをON/OFF制御する制御部を備えていることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記制御部は、前記クランクケースヒータのONタイミングを予測して、該クランクケースヒータをON/OFF制御する運転低減モードと、前記圧縮機が停止期間中、クランクケースヒータに常時通電を行う通常運転モードとのいずれかに切替え可能な切替え手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記切替え手段は、リモコン側から切替え可能とされていることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−108672(P2013−108672A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253809(P2011−253809)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)