説明

クランプバンド締結開放取り外し工具

【課題】 本発明は、クランプバンドを使用する締結において、クランプバンドの変形がなく締結開放し、取り外しが簡単に行なえる工具を提供する。
【手段】 ベースプレート8の一端に固定爪2を設け、他端には稼動支点軸12で平行移動片5に回転揺動が可能な状態で稼動爪3を取り付ける。ベースプレート8、作用レバー9間を縮める方向に引き縮めることで稼動爪3に、引き縮めながらクランプバンド外側重合部分25を外側に引き開く動きを付加する平行移動リンク機構Lや、外径差をカバーするバンドサポート片4を有することを特徴とする。
本発明のクランプバンド締結開放取り外し工具を使用することによって、クランプバンド1の変形がなく、ブーツ23などのワークに損傷を与えず、簡単に取り外しができ修理、移動設置、実験、廃車などが容易にできる効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ドライブシャフトのブーツなど、被固定物に使用するクランプバンドの取り外しを行う時に使用するクランプバンド締結開放取り外し工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図5に示すように従来から自動車の駆動力伝達部において、デファレンシャルギアと車輪との間には、等速ジョイントを両端に備えたドライブシャフトが配置される。
等速ジョイントは、潤滑油を充填するためのカップ部24を有しており、カップ部24に例えば、ゴムや合成樹脂からなるブーツ23が装着され、その内部に潤滑油が封入される。
ここで、カップ部24に対してブーツ23を固定するため、帯状のクランプバンド1を用いるのが一般的である。
また流体給送用ホースにも帯状のクランプバンド1が用いられるようになってきた。パイプとパイプを締結固定するのにも利用できる。このようにクランプバンドは、大きな突起物がなく締結工具で簡単に装着締結できるために利用が増えている。
【0003】
クランプバンド1は、図6に示すようにブーツ23の外周面に沿って巻回され、クランプバンド1の先端部分が重なるように締結される。クランプバンド1を締結する時は、クランプバンド1に成形してある工具爪20a,20bに締結工具先端を入れて、手動または、空圧などを使った工具で締結する。
修理、移動設置、実験、廃車などの時には、クランプバンド1を取り外す必要があるが、一度締結されたクランプバンド1を殆ど変形させずに取り外すことが困難であり、現状はクランプバンド1を切断するか、締結工具とドライバーなどを用いて強引に締結を開放するしかない。
それ故現在では、クランプバンド1を再度使用することが殆どできなかった。
【0004】
【特許文献1】実開平6−28478号公報(クランプバンド締結工具として図17、図18参照)
【特許文献2】特開2002−221290号公報(クランプバンド締結補助工具として図1、図7参照)
【発明の開示】

【発明が解決しょうとする課題】
【0005】
クランプバンドを使用する締結において、修理、移動設置、実験、廃車などでは、クランプバンドを変形が無く取り外しを行う必要がある。
現在、上記クランプバンドの締結工具は存在するが、当該締結されたクランプバンドの締結を開放し、取り外しできる工具がない。
そこで、本発明はクランプバンド締結開放取り外し工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載される発明は、図5に示すごとく被締結部材の締結部外周に巻回されるクランプバンド1の締結を開放し取り外しを行う。その工具は、ベースプレート8の一端に、該クランプバンドの工具爪20bに係合する固定爪2と、ベースプレート8の他端に平行リンク6a,6b,平行リンク支点ピン14a,14b,14c,14dで平行移動が可能な状態に取り付けられた平行移動片5を有する平行移動リンク機構Lを構成、その平行移動片5に取り付けられた回転支点軸12を中心として、回転揺動する稼動爪3を有する。
また、平行移動片5の他端は引張リンク7、引張リンク支点ピン15a,15bを介して作用レバー9に連結してある。前記作用レバー9は、ベースプレート8にレバー支点軸10を中心に回転揺動が可能な状態に取り付ける。
【0007】
クランプバンド締結開放取り外し工具では、取り外すクランプバンドの外径がある範囲で変ることがあるので、簡単な操作で対応する必要がある。それを行うべく稼動爪3にバンドサポート片4を有する構造とする。
【0008】
クランプバンド締結開放取り外し工具の固定爪2は、取り替えが簡単にできるようネジ11によりネジ止めした構造とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を自動車ドライブシャフトクランプバンドを例にして、図面に基づき詳細に説明する。
【0010】
図1は、クランプバンド締結開放取り外し工具を使用して、クランプバンド1に固定爪2、稼動爪3を挿入し、ベースプレート8と作用レバー9間を引き締める方向に力を加えた状態の平面図である。
図2は、クランプバンド締結開放取り外し工具を、図1のA方向から見た部分斜視図である。
図3は、クランプバンド締結開放取り外し工具の作動部分の明細を示す部分図である。この状態は、クランプバンド1の締結爪21a,21bが外れる寸前の状態を示す。
図4は、ベースプレート8に平行移動片5が平行リンク6a,6b、平行リンク支点ピン14a,14b,14c,14dで取り付けられた平行移動リンク機構Lを示すと共に、作用レバー9、引張リンク7の動作関連図である。
図5は、ドライブシャフトカップ部24にブーツ23、及びクランプバンド1が装着された状態の部分装着図である。
図6は、クランプバンド1が装着された状態の断面図である。この図においてブーツ23は、弾性体でクランプバンド左右の締結爪21a,21bには、張力が働いているので簡単には取り外しできない。
【0011】
以下、本発明のクランプバンド締結開放取り外し工具の手作業による操作を説明する。
換言すれば自動車ドライブシャフトカップ部24に装着されたクランプバンド1を、取り外す動作手順を例に説明することとする。
(イ)ドライブシャフトを作業台等の上に長手横向きに置き、クランプバンド1の重合部分25が、おおむね上面手前に向くように置く。しかし作業状態により前記のようにならなくても作業はできるが、操作方法を説明するために限定している。
(ロ)図3に示すクランプバンド締結開放取り外し工具の固定爪2を下側に、稼動爪3を上側にして持ち、クランプバンド工具爪20bに対して固定爪2を挿入し、作用レバー9を図3の矢印(P→)で示した方向に縮めながらクランプバンド工具爪20aに、稼動爪3を挿入する。
(ハ)作用レバー9を強く縮めると工具の固定爪2に対して、稼動爪3に引き込み力が加わり、クランプバンド1がブーツ23を弾性変形させ両工具爪20a,20b間が引き込まれると同時に、図6のクランプバンド締結爪21a,21bの係止が開放される。
また、クランプバンド外側重合部分25の工具爪20aに作用する工具の稼動爪3には、図4に示すごとく平行移動リンク機構Lが設けてあり、作用レバー9を強く縮めると引張リンク7、引張リンク支点ピン15a,15bの連結により、平行移動片5がベースプレート基線X−Xに近づく方向に動く。そのことによりクランプバンド外側重合部分25を引き離す方向に力が掛かる。
故にクランプバンドの締結が完全に離され、重合部分25が稼動爪3と共に浮き締結が開放されることになる。
(ニ)作用レバー9の引き縮めを緩めて工具をクランプバンド1から取り外し、その後ドライブシャフトカップ部24に取り付けたブーツ23から簡単にクランプバンド1が外せる状態になる。
しかし、長時間使用された場合にはブーツ23とクランプバンド1が接着に近い状態となることがある。この場合は、クランプバンド締結爪21a,21bの係止開放の確認が必要になることがある。
(ホ)ドライブシャフトカップ部24に取り付けたブーツ23は、左右で外径が異なる。その外径差が大きいクランプバンド1の場合には、クランプバンド締結開放取り外し工具の稼動爪3に、バンドサポート片4を取り付けた構造とする。そして大きな外径の時には、図3に示す状態でボルト13を締め固定する。
一方、小径に対しては、ボルト13を緩めバンドサポート片4をクランプバンド方向に動かして、稼動爪3に対してバンドサポート片4の一部分が飛び出すような状態にし、ボルト13を締め固定する。
この状態で、クランプバンドの締結を開放し取り外しを行う。
【0012】
ところで、クランプバンド締結開放取り外し工具の固定爪2、稼動爪3は、クランプバンド1の締結張力を開放する必要があるため、一般に次のような問題がある。
すなわち、それらの爪はクランプバンド1の小さな穴に挿入するため、剛性のある大きな爪にできない。そのため、長時間の使用で、爪が細りや折れなどの不具合が生じることがある。
そこで、固定爪2は、この対策としてネジ止めなどとし、簡単に取り替えができる構造としてある。
【発明の効果】
【0013】
(イ)クランプバンド1を使用する締結において、クランプバンド1の変形がなく取り外しでき、クランプバンドの再使用が可能になる。
(ロ)ブーツ23など取り付けワークの損傷などがなく、簡単に取り外しができる。
(ハ)修理、移動設置、実験に伴う解体が、簡単かつ短時間にでき労力の軽減と、これらの作業コストの低減が図れる。
(ニ)廃車時リサイクル法に基づく解体分別が、簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の、クランプバンド締結開放取り外し工具の全体図である。
【図2】本発明の、クランプバンド締結開放取り外し工具を、図1A方向から見た斜視図である。
【図3】クランプバンド取り外し作業の状態を示す詳細図である。
【図4】平行移動片5がベースプレート8に平行リンク6a,6b平行リンク支点ピン14a,14b,14c,14dによって取り付けられ、平行移動する状態を示す平行移動リンク機構Lの説明図である。
【図5】自動車ドライブシャフトカップ部24に取り付けたブーツ23上に、クランプバンド1が取り付けられた状態を示す部分装着図である。
【図6】クランプバンド1が装着された状態の断面図である。
【符号の説明】
1 クランプバンド
2 固定爪
3 稼動爪
4 バンドサポート片
5 平行移動片
6a 平行リンク
6b 平行リンク
7 引張リンク
8 ベースプレート
9 作用レバー
10 レバー支点軸
11 固定爪取り付けボルト
12 稼動爪支点軸
13 ボルト
14a 平行リンク支点ピン
14b 平行リンク支点ピン
14c 平行リンク支点ピン
14d 平行リンク支点ピン
15a 引張リンク支点ピン
15b 引張リンク支点ピン
20a 工具爪
20b 工具爪
21a 締結爪
21b 締結爪
22 ドライブシャフト
23 ブーツ
24 カップ部
25 クランプバンドの重合部分
X−X ベースプレート基線
L 平行移動リンク機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締結部材の締結に使用されるクランプバンドの締結を開放し取り外しを行う場合に使用するクランプバンド締結開放取り外し工具において、以下の構成とするクランプバンド締結開放取り外し工具。
(1)ベースプレート8の一端にクランプバンド1の工具爪20bに係合する固定爪2を設ける。
(2)ベースプレート8の他端には、平行リンク6a,6b,平行リンク支点ピン14a,14b,14c,14dで平行移動が可能な状態に取り付けた平行移動片5を有する平行移動リンク機構Lを設ける。
(3)その平行移動片5に取り付けた回転支点軸12を中心として、回転揺動する稼動爪3を設ける。
【請求項2】
前記平行移動片5の他端は、引張リンク7、引張リンク支点ピン15a,15bを介して作用レバー9に連結し、作用レバー9は、ベースプレート8にレバー支点軸10を中心に回転揺動が可能な状態に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のクランプバンド締結開放取り外し工具。
【請求項3】
前記稼動爪3にバンドサポート片4を有する構造とし、クランプバンドの外径差に対応できるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクランプバンド締結開放取り外し工具。
【請求項4】
前記固定爪2は、着脱可能としたことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載のクランプバンド締結開放取り外し工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−105867(P2007−105867A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328067(P2005−328067)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(505420116)
【Fターム(参考)】