説明

クリップ

【課題】構成部品をプラスチックで一体成形し、しかも追加加工する必要がないようなクリップを提供する。
【解決手段】先端に爪21を有する下部要素2と、先端に爪31を有する上部要素3と、前記上下要素2,3の爪21,31同士を閉鎖方向に付勢するバネ作用を有する連結部4と、前記連結部4のバネ作用を補助する補助バネ、の4部品を有し、これらの4部品がプラスチックにより一体成形されている。前記補助バネ5は、前記下部要素2から前記上部要素3に向かって立ち上がっており、この補助バネ5の遊端は前記上部要素3の後端近くまで伸びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の爪で物を挟むクリップに関し、特に一体成形が可能なプラスチック製のクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
書類挟み、名札挟み、洗濯挟み、等として使用されるクリップにはさまざまな種類がある。よく見かけるものは、先端に爪を有する右側要素と、先端に爪を有する左側要素と、前記左右要素の爪同士を閉鎖方向に付勢するバネ、の3点から構成されているものである。右側要素と左側要素はそれぞれの中央に位置する支点で連結されている。
【0003】
このタイプのクリップは、3点の要素を組み立てる必要がある。バネをはめ込みながら、右側要素と左側要素をそれぞれの中央に位置する支点で連結するのは手間のかかる作業である。
【0004】
この欠点を解消するために、前記3要素をプラスチックで一体成形したクリップが提案されている。たとえば、実開昭62−43591、実開昭56−158510などである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術はプラスチックによる一体成形であるが、成形後に支点部分で左右要素を連結する追加加工を必要とする。本発明は、前記3要素をプラスチックで一体成形するが、前記従来技術と異なって成形後には完成状態となり、後で追加加工する必要がないようなクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のクリップは、先端に爪21を有する下部要素2と、先端に爪31を有する上部要素3と、前記上下要素2,3の爪21,31同士を閉鎖方向に付勢するバネ作用を有する連結部4と、前記連結部のバネ作用を補助する補助バネ、の4部品からなり、これらの4部品がプラスチックにより一体成形されていることを特徴とする(請求項1)。
【0007】
好ましくは、前記補助バネは、下部要素2から上部要素3に向かって立ち上がっており、補助バネ5の遊端は上部要素3の後端近くまで伸びているものである(請求項2)。
【0008】
好ましくは、前記連結部は、上下要素2,3のほぼ中央部かそのやや前方に、縦断面円弧状に湾曲して設けられた板状部材であることである(請求項3)。
【0009】
なお、上記において、「上」「下」という表現は相対的なものであり、上と下を逆に見ることも、左右ととらえることもできるのはもちろんである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、全部品がプラスチックで一体成形される。しかも、前記従来技術と異なって成形後には完成状態となり、後で追加加工する必要がない。
【0011】
請求項2の発明によれば、補助バネが設けられるので、一体成形された製品に不足しがちなバネ作用を強化することができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、前記連結部は縦断面円弧状に湾曲して設けられているので、バネ作用が発揮されやすくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の使用状態を示す斜視図である。
【図2】斜め前方から見た本発明クリップの斜視図である。
【図3】斜め後方から見た本発明クリップの斜視図である。
【図4】本発明クリップの(a)平面図、(b)側面図、(c)底面図、(d)正面図、(e)背面図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明クリップの動作を示す一連の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すクリップ1は名札挟みである。図2〜図5から明らかなように、このクリップ1はプラスチックで一体成形されたものであり、構成部品の間に継ぎ目や嵌め込みがない。
【0015】
一体成形はたとえば射出成形法によることができる。使用可能なプラスチックとしては、芳香族ポリアミド樹脂、6,6−ナイロン、4,6−ナイロン、熱可塑性ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0016】
図2〜図4に示すように、このクリップ1は、先端に爪21を有する下部要素2と、先端に爪31を有する上部要素3と、前記上下要素2,3の爪21,31同士を閉鎖方向に付勢するバネ作用を有する連結部4、このバネ作用を補助する補助バネ、の4部品を有する。
【0017】
下部要素2は先端に上向きの短い板状の爪21を突出させている。さらにこの実施例では、下部要素2の外側にU字状部22が形成されていて、このU字状部と胸ポケット生地を係合させることにより、名札挟みを直接衣服に固定させることもできるようにしている。符号23は抜け止め突起である。
【0018】
上部要素3は先端に下向きの短い板状の爪31を突出させている。図2、図4(b)に示すように、上下の爪21、31はずらされて配置されているので爪21,31同士が直接接触はしていない。さらにこの実施例では、上部要素3の後部にストラップSの挿通孔32を形成するように延長部33が設けられている。
【0019】
上下要素2,3を繋ぐと共にバネの役割を果たすのが連結部4である。連結部4は、上下要素2,3のほぼ中央部かそのやや前方に、縦断面円弧状に湾曲して設けられた板状部材である。
【0020】
この連結部4のバネ機能を強化するために別に補助バネ5が設けられている。補助バネ5は下部要素2から上部要素3に向かってS字カーブを描きながら立ち上がっている。補助バネ5の遊端は上部要素3の後端近く、延長部33の手前まで伸びているが、自然状態では上部要素3に接触していない。
【0021】
図5に基づき、このクリップの作用を説明する。(a)はこれから名札Nを挟もうとする段階である。(b)は名札Nを挟むために上部要素3の後端を指で押し下げているところである。このとき、連結部4が支点となって上下の爪21,31は開く。補助バネ5は上部要素3の後端により押し下げられる。
【0022】
圧力を加えていた指を離すと連結部4のバネ作用で(c)の状態となる。連結部4だけではバネ作用がやや弱いので、補助バネ5の反発力も借りている。補助バネの形状は図示のものに限られず、バネ作用を生じさせる形状であればどのようなものでもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】実開昭62−43591
【特許文献2】実開昭56−158510
【符号の説明】
【0024】
1 クリップ
2 下部要素
21 爪
22 U字状部
23 抜け止め突起
3 上部要素
31 爪
32 挿通孔
33 延長部
4 連結部
5 補助バネ
N 名札
S ストラップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に爪(21)を有する下部要素(2)と、
先端に爪(31)を有する上部要素(3)と、
前記上下要素(2,3)の爪(21,31)同士を閉鎖方向に付勢するバネ作用を有する連結部(4)と、
前記連結部(4)のバネ作用を補助する補助バネ、
の4部品を有し、これらの4部品がプラスチックにより一体成形されていることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記補助バネ(5)が、前記下部要素(2)から前記上部要素(3)に向かって立ち上がっており、この補助バネ(5)の遊端は前記上部要素(3)の後端近くまで伸びているものである請求項1記載のクリップ。
【請求項3】
前記連結部(4)は、前記上下要素(2,3)のほぼ中央部かそのやや前方に、縦断面円弧状に湾曲して設けられた板状部材であることである請求項1又は2記載のクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−19497(P2013−19497A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154403(P2011−154403)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】