説明

クリーンルーム

【課題】ケミカル物質の室内への侵入を確実に防止することができるうえ、外気に対する区画性能や気密性能を高めることで、ケミカルユニットにかかるコストの低減を図ることができる。
【解決手段】室R内を内壁2と外壁3とからなる二重の壁体で覆い、それら内壁2と外壁3とによって囲まれる加圧ゾーンSを形成し、この加圧ゾーンSを空気清浄化装置10により供給されたケミカル外気E0で充満させることで、室R内の気密性能を高め、外部から室内への空気の流入を確実に防止することを可能にしたクリーンルーム1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの製造工場等に設けられる従来のクリーンルームは、粉塵微粒子の除去を目的として設けられているのが一般的である。このようなクリーンルームでは、粉塵微粒子を含む空気は高性能フィルタで濾過し、0.1μm以上の微粒子を除去している。
さらに、空気に含まれている分子状の汚染物質が外部から侵入するのを防ぐ必要があり、これらの工場では、例えばケーシング内に各種フィルタ等を備えて外部からの空気を清浄化する外調機が設置されている。
【0003】
また、クリーンルームには、その出入口を経由してクリーンルーム室内に通じる前室を備えたものがある。この前室は、クリーンルームの室内圧及び外部の気圧に対して所定の差圧で室内圧を維持することで、外部からクリーンルーム内に汚染空気が流入するのを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−132346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のクリーンルームでは、以下のような問題があった。
すなわち、液晶パネルの製造工程では、ケミカル物質に対して極めて敏感な工程があり、当該工程におけるクリーンルームの気中ケミカル物質の品質が劣化したり、生産効率が低下するといった不具合が生じるという問題があった。
そして、高度なケミカルクリーン性能を実現するためには、外気量及び内部循環風量を増やす必要があり、コストが増大することから、その点で改良の余地があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ケミカル物質の室内への侵入を確実に防止することができるうえ、外気に対する区画性能や気密性能を高めることで、ケミカルユニットにかかるコストの低減を図ることができるクリーンルームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るクリーンルームでは、室内を二重の壁体で覆うことで、それら壁体同士の間に空間を形成し、空間を清浄空気で充満させる構成としたことを特徴としている。
【0008】
本発明では、クリーンルームの室内を覆う壁面及び天井を二重化させることができるとともに、その二重化された間の空間に清浄空気を充満されているので、室内の気密性能も高くなり、クリーンルームの外部から室内への空気の流入を確実に防止することができる。そのため、ケミカル物質が室内に侵入するのを防止することができる。このように二重構造とすることで、区画性能や気密性能が高まるので、従来設置していた外気処理や内部循環用のケミカル除去装置の台数や運転時間などを抑えることができ、ランニングコストを低減させることができるという利点があり、優れたクリーンルームを実現することができる。
【0009】
また、本発明に係るクリーンルームでは、空間の圧力を二重の壁体の外部の圧力より高くする構成としたことが好ましい。
【0010】
この場合、二重化された間の空間が加圧された状態となることから、この壁体よりも外部の空気(ケミカル物質)が前記空間を介して室内に侵入するのを確実に防止することができる。
【0011】
また、本発明に係るクリーンルームでは、室には、ケミカルフィルタユニットが設置されていることが好ましい。
【0012】
本発明では、クリーンルームの室内においてもケミカルフィルタユニットによってケミカル物質を除去することができるので、より優れたクリーンルームを実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクリーンルームによれば、室内を二重の壁体で覆うとともに、それら壁体同士の間の空間に清浄空気を充満させることで、その空間に加圧ゾーンが形成され、外部から室内へのケミカル物質の侵入を確実に防止することができる。
しかも、外気に対する区画性能や気密性能を高めることで、外気量および内部循環風量の増加を抑制することが可能となるので、ケミカルユニットにかかるコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態によるクリーンルームの概要を示す平面図である。
【図2】図1に示すクリーンルームの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態によるクリーンルームについて、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1および図2に示すように、本実施の形態によるクリーンルーム1は、例えば液晶パネル工場等の一例であり、平面視で長方形状をなしており、短辺方向の中央部に長手方向に沿って延びる搬送路1Aを有し、その搬送路1Aを挟んで幅方向両側には製品ストックエリア1Bとリターンエリア1Cとが設けられている。リターンエリア1Cは、長手方向の両端部と中央部に配置されており、搬送路1A側のみに開口部1aを有している。また、クリーンルーム1の天井部には、搬送路1A及びリターンエリア1Cのそれぞれに連通する天井チャンバー1Dが設けられている。さらに搬送路1Aの長手方向の一端側に配置される入口部には、開口シャッター1bを有する製品の受け渡し口1Eが設けられている。
【0017】
また、クリーンルーム1は、内壁2と外壁3とからなる二重壁構造、すなわち内壁2に囲まれた室Rを覆う空間が外壁3によって形成されている。この内壁2と外壁3とによって囲まれる空間(加圧ゾーンS)は、図2に示す空気清浄化装置10によって清浄化されたケミカル外気E0(清浄空気)を取り入れて充満させている。ここで、ケミカル外気E0は、空気清浄化装置10によって例えば時間当たり5回程度でケミカル処理を施した外気である。
【0018】
搬送路1Aは、図2に示す搬送台車5が走行する部分である。
製品ストックエリア1Bを流通する空気は、搬送路1Aから取り込まれ、製品ストックエリア1Bと搬送路1Aを通過した空気が内壁2の外(加圧ゾーンS)へ排気される。リターンエリア1Cを流通する空気は、搬送路1Aから取り込まれるとともに、空気清浄化装置10によって清浄化されたケミカル外気E0も取り込まれ、天井チャンバー1Dへ送気される。また、各リターンエリア1C内には、このリターンエリア1C内の空気に対して内部循環除去するケミカルフィルタユニット4が設けられている。
また、受け渡し口1Eは、開口シャッター1bによって搬送路1Aへの有機物の侵入を防止している。
【0019】
空気清浄化装置10は、クリーンルーム1の外部(外壁3より外側)に配置されており、ダクト6を介して加圧ゾーンS及び室Rのリターンエリア1Cにケミカル外気E0を供給するものである。
【0020】
図2に示すように、具体的に空気清浄化装置10は、外気中の汚染物質を除去すると共に、外気の温度及び湿度を調節する外調機であって、外気を取り入れる吸気口12及び空気を吹き出す吹出し口13が形成されているケーシング11と、このケーシング11内に配置されている各種フィルタ等と、このケーシング11内に配置され、吸気口12からケーシング11内に空気を取り入れて吹出し口13から空気を吹き出すためのファン14と、を備えている。
【0021】
ケーシング11内には、吸気口12側の上流側から順に、外部から入ってきた空気を冷却する冷却コイル15、空気を加熱する温水コイル16、ケーシング11内の空気流路を遮るように水膜を形成して、空気中の水溶性汚染物質等を除去する水膜式加湿機17、空気を再び加熱する再熱コイル18、前述のファン14、空気中の分子状汚染物質(ケミカル汚染物質)を除去する有機除去ケミカルフィルタ19、高性能フィルタ(HEPA (High Efficiency Particulate Air))20が配置されている。
【0022】
このように設けられるクリーンルーム1は、室Rを構成する内壁2の外部に、室R(内壁2)を覆う空間(加圧ゾーンS)を作り、その加圧ゾーンSにケミカル外気E0を満たす構成となっている。つまり、ケミカル外気E0が導入された加圧ゾーンSの圧力を外壁3の外部の圧力よりも大きくすることができ、外部の空気がクリーンルーム1内(外壁3内)に侵入するのを防止することができる。
【0023】
また、クリーンルーム1の気中ケミカル物質を低減させる方法として、空気清浄化装置10によりリターンエリア1C内にケミカル外気E0を導入し、そのリターンエリア1C内に設けられているケミカルフィルタユニット4によって内部循環除去を行う方法となっている。
【0024】
次に、上述した構成からなるクリーンルーム1の作用について、以下説明する。
図1及び図2に示すように、クリーンルーム1の室R内を覆う壁面及び天井を二重化させることができるとともに、その二重化された間の加圧ゾーンSにケミカル外気E0が充満されているので、室R内の気密性能も高くなり、クリーンルーム1の外部から室内への空気の流入を確実に防止することができる。そのため、ケミカル物質が室R内に侵入するのを防止することができる。
【0025】
なお、リターンエリア1Cと天井チャンバー1Dが陰圧となり、外部からの空気が侵入し易い条件となるが、上記のように二重構造としてケミカル外気E0で満たされた加圧ゾーンSを設けることで、仮にリターンエリア1Cと天井チャンバー1D内には加圧ゾーンS内のケミカル外気E0が侵入するので、室R内にケミカル物質が侵入することが防止されることになる。
例えば、本実施の形態では、従来のような通常のケミカル対策で行った場合での目標とする室内濃度が100μg・C/mであるのに対して、30μg・C/m以下に抑えることが可能である。
【0026】
このように二重構造とすることで、区画性能や気密性能が高まるので、従来設置していた外気処理や内部循環用のケミカル除去装置の台数や運転時間などを抑えることができ、ランニングコストを低減させることができるという利点があり、優れたクリーンルーム1を実現することができる。
しかも、リターンエリア1C内には、ケミカルフィルタユニット4が設置されており、クリーンルーム1の室内においてもケミカルフィルタユニット4によってケミカル物質を除去することができ、これにより室内清浄循環が行われるため、より優れたクリーンルーム1を実現することができる。
【0027】
上述のように本実施の形態によるクリーンルームでは、室R内を二重の壁体(内壁2と外壁3)で覆うとともに、それら壁体2、3同士の間の加圧ゾーンSにケミカル外気Sを充満させることで、外部から室内へのケミカル物質の侵入を確実に防止することができる。
しかも、外気に対する区画性能や気密性能を高めることで、外気量および内部循環風量の増加を抑制することが可能となるので、ケミカルユニットにかかるコストの低減を図ることができる。
【0028】
以上、本発明によるクリーンルームの実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態ではリターンエリア1Cにも空気清浄化装置10よりケミカル外気E0を導入したり、受け渡し口1Eを設ける構成としているが、このような構成は省略することも可能である。
【0029】
また、空気浄化装置10の構成は、本実施の形態に制限されることはない。つまり、ケーシング11内に配置されるファン14や冷却コイル15、有機除去ケミカルフィルタ19、或いは高性能フィルタ20等の構成、配列は適宜なものを設定することが可能である。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 クリーンルーム
1A 搬送路
1B 製品ストックエリア
1C リターンエリア
1D 天井チャンバー
1E 製品の受け渡し口
2 内壁
3 外壁
4 ケミカルフィルタユニット
5 搬送台車
6 ダクト
10 空気清浄化装置
E0 ケミカル外気(清浄空気)
R 室
S 加圧ゾーン(空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内を二重の壁体で覆うことで、それら壁体同士の間に空間を形成し、該空間を清浄空気で充満させる構成としたことを特徴とするクリーンルーム。
【請求項2】
前記空間の圧力を前記二重の壁体の外部の圧力より高くする構成としたことを特徴とする請求項1に記載のクリーンルーム。
【請求項3】
前記室には、ケミカルフィルタユニットが設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクリーンルーム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−50248(P2013−50248A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187528(P2011−187528)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】