説明

グアーガムを含むビスケット

本発明は、グアーガムを含むビスケットであって、前記グアーガムが0.25から8mmの間の長さ、0.18から2mmの間の幅および1.8から6の間の長さ対幅比の平均を有する天然のグアーガムであることを特徴とするビスケットに関する。
本発明は、健康な対象またはインスリン抵抗性もしくは糖尿病、特に2型糖尿病を患っている対象における血糖値の調節を促進するため、および/または健康な対象または心血管疾患の恐れのある対象について積極的に血中LDLコレステロール濃度を低下させるため、または正常な血中コレステロール濃度を維持するための前記ビスケットの使用にも関する。
本発明は、満腹感を増大させるため、および/または摂食量を減少させるため、および/または体重管理に寄与するための前記ビスケットの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の形態のグアーガムを含むビスケット、ならびにビスケットにおいてその血糖および/またはインスリン分泌指数を低下させるための前記グアーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Dr. David J. Jenkinsおよび同僚らによる、彼らの「Glycemic index of foods: a physiological basis for carbohydrate exchange」という表題の刊行物(非特許文献1)における血糖指数(GI)の概念の導入以来、血糖反応の低減につながる食事が、コレステロールなどの糖尿病または健康の指標に対して有利な影響を及ぼすという証拠が増加している(非特許文献2参照)。食事のGIを低下させることは、いくつかの健康上の利益、例えば、インスリン要求量の低下、血糖調節の改善および血中脂質濃度の低下などを有する。疫学研究から入手できる示唆的な証拠が、健康な対象において、低GI、高繊維分を有する炭水化物が豊富な食品に基づいた食事が糖尿病または心血管疾患の危険性を低減し得ることを示唆している(非特許文献3参照)。体重および満腹感に対して生じ得る影響も示唆されている(非特許文献3参照)。低GI食品の利益は、全体的な栄養的側面の悪化が見られない場合、つまり食品中の脂肪または飽和脂肪含量が制限されている場合にのみ期待される。
【0003】
この観点において、食品に関する栄養要件を満たすために、および摂食された場合に血液系におけるグルコースの一定の吸収および同化をもたらすために、良好な栄養的側面を有する(特に低脂肪および低飽和脂肪含量、低糖含量、および高繊維含有率を有する)ビスケットが最近開発されてきた。グルコースのこの安定した吸収は、糖尿病患者およびインスリン抵抗性の患者にとって特に有益であるが、健康な対象にとっても健康な食事の一環として等しく興味深いものである。
【0004】
多くの研究は、血糖およびインスリン反応を低減する繊維、特に粘性の可溶性繊維の利益を示してきた。このことは、最近、CL. DIKEMANおよびG.C. FAHEYによって「Viscosity as related to dietary fiber: review」という表題の彼らの論文(非特許文献4)において要約されており、その論文は、粘性繊維の血糖およびインスリン反応、ならびに血中脂質濃度(コレステロールおよびトリグリセリド)に対する効果を示している。
【0005】
様々な食品、例えば、ドレッシングおよびソース、乳製品、パン製品などにおいて低用量(通常0.05%から0.2%)で使用される、いくつかのよく知られている食品等級のテクスチャリング剤は、粘性の食物繊維として作用する。血糖およびインスリン反応に対するそれらの効果を考慮すると、栄養および機能特性を改善するために、特に消化の間に一定のグルコースを送達する製品を得るために、これらの粘性の食物繊維、例えばグアーガムを乾燥ビスケットに導入することが興味深くなる。
【0006】
しかし、グアーガムの乾燥ビスケットへの組込みにより、該ビスケットの大規模生産時に重要な問題が発生し、消費者にとって不快な口当たりが生じ、閉塞の危険性がもたらされる。
【0007】
実際に、グアーガムは、白色から黄色がかった細粉として利用できる。この細粉は、水に対して非常に高い親和性を有し、生地の混合の間に添加される水と強力に結合する傾向がある。これにより、その後の形成に好適な生地の形成が妨害される。この状態を正すために、生地の水和を著しく増大させることが試みられてきた。結果的に、生地は不安定となり、すなわち、その質感および表面特性(特に粘着性)が混合後に急速に変化し、その後の形成段階を困難なものとする。これにより、費用がかかって工場にとって実際的ではない、より多数の生地のより小さいバッチの製造が必要となり得る。
【0008】
生地の水和の増大により、ビスケットのベーキングパラメーターを適合させること、例えば、このカテゴリーの製品の長い貯蔵期間により必要とされる非常に低い含水率を有する完成品を得るためにベーキングの温度および/または時間を増大させることも必要となる。
【0009】
さらに、低GIビスケットの場合、生地水和の増大により、ベーキング時に、ビスケット中に含有されるデンプンの擬似結晶構造の、より無定形または膨潤した顆粒への変質が誘発される。より結晶性が低いデンプンは、より急速に消化できるようになり、血糖およびインスリン反応の上昇につながる。この結果、一定のグルコース供給量をもたらし、低GIを有するように開発された製品の健康上の利益が損なわれる。
【0010】
官能的な観点から、グアー粉のビスケットへの組込みは、最終製品の2〜3質量%などの低用量でさえ、ビスケットの口当たりも変質させる。咀嚼時に、唾液がグアーガムにより急速に捕捉され、グアーガムは口内で水和し、粘液状の口当たりがもたらされる。ビスケットは長時間咀嚼する必要があり、歯に固着するが、それは不快である。このことは、脂肪および/または糖含量を増大させることにより補正することができ、それにより溶解性が回復し、口内の食塊が滑らかとなろう。しかし、低脂肪および低糖含量の栄養製品の場合、グアー粉の組込みが口当たりを劇的に悪化させるため、これは実施することができない。
【0011】
最後に、市販のグアー粉の乾燥食品への導入により、乾燥物質の経口摂取の直後に膨潤プロセスが開始し、高い窒息の危険性につながるため、安全上の問題がもたらされる。このため、フランスのAFSSA(2002、n° 2002 SA−0070)などの公衆衛生当局は、摂取時に再水和することが意図されたグアー粉の乾燥食品における使用は不適であると見なしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,871,557号明細書
【特許文献2】フランス国特許出願第0857128号明細書
【特許文献3】欧州特許出願第1,545,221号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Dr. David J. Jenkins and colleagues, “Glycemic index of foods: a physiological basis for carbohydrate exchange” (Am J Clin Nutr, 1981, 34(3), 362-366)
【非特許文献2】“Low-Glycemic Index diet in the management of diets”, Brand Miller et al. 2003, Diabetes Care; 26:2261-2267
【非特許文献3】Riccardi et al. “Role of Glycemic Index and Glycemic load in the healthy state, in prediabetes, and in diabetes”, Am J Clin Nutr 2008; 87(1): 269S-274S
【非特許文献4】C.L. DIKEMAN and G.C. FAHEY, “Viscosity as related to dietary fiber: a review” (Critical Reviews in Food Science and nutrition, 2006, 46, 649-663,)
【非特許文献5】WHO and FAO, “Carbohydrates in human nutrition”, 1998
【非特許文献6】Brouns et al “Glycaemic index methodology” Nutrition Research Reviews(2005),18, 145-171
【非特許文献7】Dea, I. C. M. and Morrison, A., 1975, Advances in Carbohydrate Chemistry and Biochemistry, 31, 241
【非特許文献8】O’Connor,N, Tredger, J. and Morgan, L., Diabetologia, 1981, 612-615
【非特許文献9】Ellis, P.R. and Morris, E.R., Diabetic Medicine, 1991, 8, 378-381
【非特許文献10】Wang, Q., Ellis, P.R. and Ross-Murphy, S.B., Carbohydrate Polymers, 2006, 64, 239-246
【非特許文献11】Parvathy, K.S., Susheelamma, N.S. and Tharanathan, R., Food Hydrocolloids, 2007, 21, 630-637
【非特許文献12】Wang, Q., Ellis, P.R. and Ross-Murphy, S.B., Carbohydrate Polymers, 2003, 53, 75-83
【非特許文献13】Ghoos YF, Maes BD, Geypens BJ, Mys G, Hiele MI, Rutgeerts PJ, Vantrappen G. Measurement of Gastric-Emptying Rate of Solids by Means of A Carbon-Labeled Octanoic-Acid Breath Test. Gastroenterology. 1993; 104: 1640-1647.
【非特許文献14】Haycock GB, Schwartz GJ, Wisotsky DH. Geometric Method for Measuring Body-Surface Area - Height-Weight Formula Validated in Infants, Children, and Adults. Journal of Pediatrics. 1978; 93: 62-66.
【非特許文献15】Ellis, P. R., Kamalanathan, T., Dawoud, F. M., Strange, R.N. and Coultate, T.P., European Journal of Clinical Nutrition, 1988, 42, 425-435
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それ故、グアーガムを含有するビスケットの生産における課題は、製造プロセス、口当たり、および安全上の問題に関する上述の問題を克服して、グアーの臨床効果の利益を享受することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
特定の形態を有するグアーガムをビスケットなどの乾燥食品に導入することにより上述の問題を回避できることが予想外に見出された。
【0016】
実際に、本発明による特定のグアーの使用により、ビスケット加工の変更、感覚属性に対する負の影響および閉塞の危険性を全く生じることなく、グアーガムの乾燥食品への導入が可能となることが観察された。
【0017】
次に、本発明の特定のグアーの乾燥食品への導入は、良好な口当たりおよび感覚特性を維持しながら、ならびに閉塞の危険性について消費者にとって安全なままでありながら、良好な栄養的側面ならびに低血糖および/またはインスリン分泌指数を有するビスケットを得ることも可能にする。
【0018】
したがって、本発明の目的は、グアーガムを含むビスケットであって、前記グアーガムが0.25と8mmの間の長さ、0.18と2mmの間の幅および1.8と6の間の長さ対幅の平均比を有する天然のグアーガムであることを特徴とするビスケットである。
【0019】
本発明の別の目的は、血糖値の調節を支援するための、糖尿病、特に2型糖尿病またはインスリン抵抗性を患っている対象の食事における、55以下、好ましくは40未満、より好ましくは30未満、さらにより好ましくは25未満、好ましい実施形態においては20未満の血糖指数、および/または60以下、好ましくは40未満、より好ましくは30未満のインスリン分泌指数を有する前記ビスケットの使用である。
【0020】
本発明の第3の目的は、以下のステップ、
(a)ビスケットの成分を混合するステップであって、好ましくは
(i)最初に粉末状の成分を混合し、
(ii)次に液体成分を添加し、
(iii)場合により、より大きい固形成分、例えば、オート麦フレーク、フルーツドロップ、シリアルクリスプなどを添加する、ステップと、
(b)場合により生地を寝かせるステップと、
(c)ビスケットを形成し、得られた形成ビスケットをオーブンでベーキングするステップと、
を含む上記のビスケットの製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ビスケット中のグアーガム濃度に対する胃内容物排出半減時間を示す。
【図2】インビトロでの腸内粘度に対する胃内容物排出半減時間を示す。
【図3】時間に対する見かけ上の粘度を示す。
【図4】時間に対する粘度/プラトー粘度を示す。
【図5】粒子の長さに対する時間を示す。
【図6】粒子の幅に対する時間を示す。
【図7】グアー濃度に対する時間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明における「より大きい固形成分」という用語は、ビスケット製造技術において「包含物」としても知られており、例えば、オート麦フレーク、フルーツドロップ、シリアルクリスプを挙げることができる。
【0023】
「ビスケット」という用語は、「乾燥」した硬くて甘味または塩味のあるベーキング製品を意味することを意図したものである。特に、前記乾燥した硬くて甘味または塩味のあるベーキング製品は、小麦粉および穀物(例えば配合の20と80%の間)、脂肪(例えば配合の2%と40%の間)、および/または糖(例えば配合の1と50%の間)を主に含む。
【0024】
本発明における「ビスケット」を製造するための第1のステップとは、10℃と35℃の間の温度で各成分を混合して生地を得るステップ、ビスケットにその最終形状を付与するための形成ステップ、および0.5%と5%の間の残留水分を含むビスケットを得るための調理ステップである。
【0025】
したがって、本発明における「ビスケット」という用語には、そのようなプロセスにより得られるベーキング製品、例えば、General Millsにより販売されているNature ValleyまたはKellogg’sにより市販されているMini−breaksというブランドで知られている市販のベーキングバーも含まれる。要約すると、前記プロセスは、以下のステップを含む。
成分を混合する→生地を形成する→ベーキングする
【0026】
しかし、本発明における「ビスケット」という用語には、特許文献1に記載されているところの、Luにより市販されているGranny(登録商標)バーなどのグラノーラバーは含まれない。実際に、グラノーラバーの調製プロセスにおいては、水、糖および脂肪を含むつなぎを調製し、ベーキングし、次いで、穀物に混合して生地を得て、形成し、次いで、最終製品を得るために冷却する。このプロセスにおいては、本発明のビスケットの調製方法とは対照的に、混合成分からなる生地をベーキングしない。つなぎのみをベーキングする。要約すると、このプロセスは、以下のステップを含む。
つなぎを形成し加熱する→生地を形成する→冷却する
【0027】
本発明における「乾燥製品」とは、NF ISO 712に従ったオーブン乾燥により決定される、0.5%と5%の間、好ましくは1%と4%の間、より好ましくは1と3%の間の残留水分を有する製品であると理解されるべきである。この低水分により、室温で数カ月の貯蔵期間が確実となる。
【0028】
「ビスケットマトリックス」という用語は、ビスケットの成分からなるベースを示すのに使用する。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、前記ビスケットは、ビスケットの総重量に対して25重量%未満の糖、好ましくは2%から25重量%の糖、および/または20重量%未満の脂肪、好ましくは10%から16重量%の脂肪、好ましくはその両方を含む。
【0030】
より好ましい実施形態において、本発明によるビスケットは、良好な栄養的側面を有する、すなわち、
− 少量の糖、すなわち、25重量%未満、好ましくは20重量%未満、
− 少量の脂肪、すなわち、20重量%未満、好ましくは16重量%未満、
− 多量の穀物、すなわち、30重量%超、好ましくは40重量%超
− 多量の繊維、すなわち、6重量%超、より好ましくは12重量%超
を含むビスケットであり、
これらのパーセンテージはビスケットの総重量に対して重量換算で表している。
【0031】
より好ましくは、本発明のビスケットは、3種の異なる型の繊維の混合物を含むことができる。
− 不溶性繊維、例えば、全粒小麦、オート麦、大麦、ライ麦、米、特にこれらの穀物の糠、果実(リンゴ、柑橘類、プルーン、マンゴー、イチジクなど)、野菜(トマト、ニンジン、セロリなど)またはカカオ中に存在するものなど。
− 水溶液中で低い粘度を生じる可溶性繊維、通常「非粘性の可溶性繊維」と呼ばれるもの、例えば、フラクトオリゴ糖類、ガラクトオリゴ糖類、キシロオリゴ糖類、マンノオリゴ糖類、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、シクロデキストリン、アカシアガム、カラマツガムなど。
− 粘性の可溶性繊維、例えば、グアーガムおよび他のガラクトマンナン(イナゴ豆ガム、タラガム、コロハ)、グルコマンナンまたはコンニャク粉、サイリウム、キサンタン、アルギネート、高メトキシペクチン、オート麦または大麦由来のベータグルカン、小麦由来のアラビノキシラン、化学的に修飾されたセルロース誘導体など。
【0032】
血糖指数
血糖指数(GI)概念は、トロント大学でDr. David J. Jenkinsおよび同僚らにより、彼らの「Glycemic index of foods: a physiological basis for carbohydrate exchange.」という表題の刊行物(非特許文献1)における、糖尿病を患っている人々にとってどの食品が最良なのかを見出すための彼らの調査で発展された。それは、グルコース溶液などの基準食品の当量の炭水化物部分に対する反応のパーセンテージとして表される食後の血糖反応に基づいた食品の定量的評価である。低GIを有する食品は、顕著な健康上の利益を有することができ、糖尿病患者に特に好適である。
【0033】
ビスケットのGI値は、以下の方法に従って12人の対象について測定する。この方法は、以下のリンク、http://www.fao.org/docrep/W8079E/w8079e00.HTMによりインターネット上でアクセスできるWHOおよびFAOの共同報告(非特許文献5)で完全に開示されている。
【0034】
GI測定の品質を確実にするためのさらなる特定の方法論的助言が開示された(非特許文献6参照)。
【0035】
各対象に、基準食品(グルコース溶液)を3回、およびGIを測定するビスケットを1回摂食させる。各摂食ステップは、少なくとも1日の期間により別のステップと分離する。
【0036】
基準食品および試験食品の一食分は、いずれも50グラムの有効炭水化物を含有する。有効炭水化物は、「食物繊維を差し引いた総炭水化物」と定義されてきた(共同報告FAO/WHO)が、生理学的観点から繊維として作用する難消化性炭水化物(例えば、フラクトオリゴ糖類)を含むため、今では、それは誤りであると考えられている。主に考えられる有効炭水化物の源は、有効デンプン、マルトデキストリン、ラクトース、スクロース、マルトース、フルクトースおよびグルコースであり、承認された分析法により分析することができる(非特許文献6参照)。
【0037】
基準食品は、51.4グラムのグルコース粉末(Glucodin(登録商標)粉末、Boots Health Care Company、North Ryde、NSW、オーストラリア)を250mLの淡水に溶解することにより調製する。Glucodin(登録商標)粉末は、粉末100グラム当たり97.3グラムの有効炭水化物、すなわち、グルコースを含有する。
【0038】
試験食品の一食分を計算するために、最初に、ビスケットの総重量換算での全デンプン、単糖類、二糖類および糖アルコールを適切な分析的手順により求めなければならない。試験する炭水化物を同等の単糖類当量レベルに調整するのに換算係数を使用する。1gの有効デンプンは、加水分解プロセスの間の水和が原因で、消化の間に1.1gのグルコース単位を送達する。1gの有効デンプンは、1.05gのグルコース単位を送達する。ビスケットの総重量に対する有効炭水化物のパーセンテージは、以下の式により計算する。全デンプン×1.1+全二糖類×1.05+全単糖類−難消化性糖。次いで、基準食品の一食分を計算して、50グラム量の有効炭水化物を提供する。
【0039】
通常、1日目に、対象に基準食品を摂食させ、血糖値を測定する。少なくとも1日後、対象に再び基準食品を摂食させ、血糖値を再び測定する。少なくとも1日のさらなる中断を実施する。次いで、対象に、GIを測定するビスケットを摂食させ、血糖値を測定する。試験するビスケットの一食分と共に基準量250mLの淡水を対象に摂食させる。少なくとも1日の中断後、対象に再び基準食品を摂食させ、血糖値を再び測定する。
【0040】
いくつかの試験食品のGIを比較することは可能である。この場合、その方法は以下の通りであり得る。
【0041】
1日目に、対象に基準食品を摂食させ、血糖値を測定する。少なくとも1日の中断後、対象にGIを測定するビスケット(例えば、グアーを含まない試験ビスケット)を提供し、血糖値を測定する。次いで、対象に再び基準食品を摂食させ、血糖値を再び測定する。さらなる1日の中断を実施する。次いで、対象に(例えば本発明による)ビスケットを摂食させ、血糖値を測定する。2日間の中断後、対象に再び基準食品を摂食させ、血糖値を再び測定する。
【0042】
摂取後2時間の間に毎回血糖値を測定する。GIは、試験食品の摂取後の血糖の曲線下面積(AUC)を基準食品の摂取後の血糖のAUCで除算し100を乗算したものである。
【0043】
GIは、55以下で低いと見なす。好ましい実施形態において、ビスケットは、55未満、好ましくは40未満、より好ましくは30未満、さらにより好ましくは25未満、好ましい実施形態においては20未満の血糖指数を有する。
【0044】
特に、本発明のビスケットは、5から55、好ましくは5から40、より好ましくは10から30、さらにより好ましくは10から25、好ましい実施形態においては10から20の範囲の血糖指数を有する。
【0045】
インスリン分泌指数
インスリン分泌指数(II)は、様々な食品に対する典型的なインスリン反応を定量するのに使用する測定値である。IIはGIと類似しているが、血中インスリンレベルに基づいている。この測定値は、血糖指数と共に利用すると、低GIがIIの悪化を伴っていないことをチェックするのに有用である。実際に、いくつかの食品は、その炭水化物量に対して不均衡なインスリン反応を引き起こす恐れがある。そのような食品は低GIであり得るが、その高いインスリン反応が原因で有益ではない。
【0046】
II値は、GI測定について上記したのと同じ標準的方法により測定したGI値と共に測定する。
【0047】
IIは、試験食品の摂取後の血中インスリンレベルの曲線下面積(AUC)をグルコース溶液の摂取後の血中インスリンレベルのAUCで除算し100を乗算したものである。
【0048】
本発明において、インスリン分泌指数は、60以下の場合に低いと見なす。好ましい実施形態において、本発明のビスケットは、60以下、好ましくは40未満、より好ましくは30未満のインスリン分泌指数を有する。
【0049】
特に、本発明のビスケットは、5から60、好ましくは5から40、より好ましくは10から30の範囲のインスリン分泌指数を有する。
【0050】
より好ましい実施形態において、本発明によるビスケットは、55以下、好ましくは40未満、より好ましくは30未満、さらにより好ましくは25未満、好ましい実施形態においては20未満の血糖指数および/または60以下、好ましくは40未満、より好ましくは30未満のインスリン分泌指数を有する。
【0051】
特定の実施形態において、本発明によるビスケットのインスリン分泌指数の血糖指数に対する比は、1.0以下、好ましくは0.9未満、より好ましくは0.8未満、さらにより好ましくは0.7未満、好ましい実施形態においては0.6未満である。
【0052】
水分活性(Aw)
本発明によるビスケットは「乾燥製品」であり、すなわち、ビスケットの周囲の水蒸気の部分的圧力の、同じ温度での水の飽和蒸気圧の部分的圧力に関する比として定義される水分活性(Aw)0.4未満を有することが好ましい。
【0053】
好ましい実施形態において、本発明によるビスケットは、0.05と0.4の間、好ましくは約0.2の水分活性を有する。
【0054】
本発明のビスケットは、任意の好適な成分または充填物で満たすことができる。この場合、Aw値は、充填物を除いた最初のビスケットについて測定する。
【0055】
水(水分レベル)
本発明によるビスケットは、好ましくは、ビスケットの総重量に対して0.5から5重量%、より好ましくは1から4重量%の範囲の、完成品全体の中の水の量に相当する残留水分を有することができる。含水率は、NF ISO 712に従ったオーブン乾燥により決定される。
【0056】
グアーガム
本発明のビスケットは、少なくとも1種の天然のグアーガムを含む。
【0057】
特定の実施形態において、本発明のビスケットにおいて使用する天然のグアーガムは、棒状の形態である。
【0058】
グアーガムは、クラスタマメ(Cyamopsis tetragonolobus)と呼ばれるマメ科の植物の種子から得られる。世界中での食品テクスチャリング剤としてのグアーガムの消費は、約45000メートルトンである。グアーガムの繊維状態は、2002年のAFSSA(SA−0070)を含めて様々な公衆衛生当局により広く認識されてきた。
【0059】
本出願において、「グアーの種子」という用語は、クラスタマメに由来する種子を指す。グアーの種子には、外殻、胚芽、およびグアー薄皮または胚乳部分が含まれる。グアーの種子は、一般に、35から40重量%の胚乳、42から47重量%の胚芽、および14から17重量%の皮からなる。グアー薄皮は、約68から80%のガラクトマンナン、約10%の不溶性繊維、約5%から15%の水分および4から6重量%のタンパク質物質を含む。
【0060】
「天然のグアー」という用語は、グアーの胚乳(または薄皮)に由来するガラクトマンナン型巨大分子鎖を指し、化学的変質、例えば、部分的加水分解またはグラフト化などを経験していない。
【0061】
「天然のグアー」は、以下のよく知られているプロセスに従って得ることができる。
− グアー種子の脱穀、
− グアー薄皮を回収するための胚芽の除去、
− 薄皮の洗浄、
− 最終粒径への製粉。
【0062】
天然のグアーは、α−D−ガラクトースと結合したその6位からの分岐点を有する(1,4)−β−D−マンノピラノース骨格(すなわち、1,6−結合−α−D−ガラクトピラノース)からなり、それは、ガラクトマンナンとして化学的に記載されている(非特許文献7参照)。平均すると、各ガラクトース残基に2つのマンノース残基が存在する。
【0063】
「グアーガム」という用語は、グアーの胚乳から得られる、「グアー粉末」または「グアー粉」形態の主に天然のグアーからなる製品を指す。
【0064】
現在まで、乾燥状態のグアー粉の直接的使用は回避されている。実際に、グアーガム丸薬および錠剤について安全上の問題が観察されてきた。1980年代の中ごろ、グアーガム摂取による疑わしい有害反応、例えば、経口摂取後の食道閉塞、小腸閉塞、さらには死亡などの26の国内報告が、オーストラリアの医薬品副作用諮問委員会(Adverse Drug Reaction Advisory Committee)に、または米国の文献において食道閉塞の症例報告の形態で報告された。
【0065】
驚くべきことに、本発明によるグアーは、経口摂取の直後に膨潤せず、したがって、乾燥ビスケットに安全に導入することができる。
【0066】
さらに、特定のグアーのビスケットへの導入は、最終製品の口当たりまたは官能的特性に影響せず、加工パラメーターの変更を必要とするとしても、軽微な変更のみを必要とする。
【0067】
したがって、当技術分野において知られており、増粘剤として使用されるグアー粉は、本発明の特定のグアーとは非常に異なり、本発明のグアーに対する有効な代替物と見なすべきではない。
【0068】
同様に、本発明において使用する特定のグアー粒子は、微細なグアー粉(すなわち、天然のグアーを粉砕または混合して粉末にした結果生じる)粒子を圧縮または固着させることにより得られる凝集グアー粒子(特許文献1参照)とは異なる。実際に、凝集グアーは、まさにグアー粉の様に咀嚼時に口内で急速に溶解し、膨潤および閉塞問題を引き起こし、依然として乾燥食料品において高用量で使用できないであろう。
【0069】
好ましい実施形態において、本発明において使用するグアーは、高粘度(すなわち、高モル質量)のグアーガムであり得る。本発明のグアーのモル質量は、光散乱法および屈折率測定と組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。
【0070】
好ましい実施形態において、本発明において使用するグアーは、1.105と3.106g/molの間、好ましくは5.105と3.106g/molの間の範囲、より好ましくは約2.106g/molのモル質量を有する。
【0071】
そのようなモル質量は、天然のガラクトマンナンを含有するグアー、すなわち、天然のグアーガムに由来する特性である。
【0072】
本発明の文脈においては、グアーガムのモル質量が高いほど、GIおよび/またはIIが低いことが期待されている。
【0073】
「棒状の形態のグアーガム」という用語は、その幅より長い長さを有する微粒子形態のグアーガムを指す。
【0074】
得られた本発明の特定のグアーガムは、0.25と8mmの間の長さ、0.18と2mmの間の幅および1.8と6の間の長さ対幅の平均比を有する異方性粒子からなる。
【0075】
本発明のビスケットにおいて使用するグアーガムは、0.25と8mmの間の長さ、0.18と2mmの間の幅、および約2.8の長さ対幅の平均比を有することが好ましい。
【0076】
好ましい実施形態において、グアー粒子は、1.3および4.2mm、好ましくは1.7から3.2mmの範囲、より好ましくは約2.6mmの平均長さを有する。
【0077】
別の好ましい実施形態において、グアー粒子は、0.6から1.3mmの範囲、より好ましくは約0.9mmの平均幅を有する。
【0078】
別の好ましい実施形態において、グアー粒子は、2および5の範囲、好ましくは2.3および4の範囲、より好ましくは約2.8の長さ対幅の平均比を有する。
【0079】
これらの粒子は、有利なことに、標準的グアー粉とは対照的に強く異方性である。
【0080】
本発明によるグアーの粒径分布は、以下の方法に従って得ることができる。グアーの粒子を1枚の黒色の紙の上に置き、実体顕微鏡を使用して10枚の写真を撮影する。次いで、画像分析ソフトウェア(Visilog6.4)を使用して顕微鏡写真を分析する。各粒子を長方形に合わせ、以下のパラメーターを抽出する。長さ(L、ミクロン単位)、幅(Wミクロン単位)、および長さ対幅比(L/W)に相当し、等方性粒子と異方性粒子を区別することを可能にする球形度(単位なし)。この方法により分析するグアー粒子の平均数は、代表的な平均値を得るために、少なくとも500、好ましくは約750であるべきである。
【0081】
JMPソフトウェア(リリース6.0、SAS)を使用して長さ、幅および長さ対幅比の分布をさらに分析し、分布の分位点およびモーメント(平均および標準誤差)を得た。得られる平均値は数平均である。
【0082】
本発明による特定のグアーとの差異を示すために、細粉または顆粒の形態の知られているグアー粉末に同じ手順を適用した。しかし、実体顕微鏡は光学顕微鏡で代替し、黒色の紙は油で覆ったガラスブレードで代替した。4種の異なる型の知られているグアー粒子を測定し、分析した。微細なグアー粒子(Hindustan GumのHIGRAN−Fシリーズ)、標準的グアー粒子(DaniscoのM225)、粗いグアー粒子(Hindustan GumのHIGRAN−Cシリーズ)、およびGuarem(商標)、Orion Pharmaの粒状グアー(Espoo、フィンランド)。各表は、数平均値および標準誤差を示す。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
本発明のグアーは、以下のプロセスにより得る。
− グアー種子の脱穀、
− グアー薄皮を回収するための胚芽の除去、
− 薄皮の洗浄、
− 本発明によるサイズを有するグアー粒子を得るための、例えば2つのローラーの間での薄皮の圧延またはラミネート加工。
【0087】
本発明のビスケットにおいて使用するグアーガムは、例えば特許文献1で開示されているようにグアー種子を粉砕して粉末にすることによっては得られず、グアー種子の本来の形状を、0.25と8mmの間の長さ、0.18と2mmの間の幅および1.8と6の間の長さ対幅の平均比を有するグアーに改変することによりのみ得られる。
【0088】
本発明のビスケットは、ビスケットの総重量に対して1と20重量%の間、好ましくは3と18重量%の間、より好ましくは6と15重量%の間のグアーガムを含むことができる。
【0089】
さらなる繊維
食物繊維は、通常、水溶性であるか否かに従って分類される。いずれの型の繊維も、全ての植物食品中に存在し、それぞれの度合いは植物の特性に従って変動する。
【0090】
本発明によるビスケット中に含有されるグアーガムは粘性の可溶性繊維である。本発明のビスケットは、グアーガムの他に、他の粘性の可溶性繊維および場合により粘性の不溶性繊維、および/または非粘性の可溶性繊維を含み得る。
【0091】
好ましい実施形態において、ビスケットは、不溶性繊維、粘性の可溶性繊維および非粘性の可溶性繊維の混合物を含む。
【0092】
不溶性繊維は、水中で膨潤し、容積の増大、便の軟化および腸管を通る通過時間の短縮を促進するいくつかの水結合特性を示す。
【0093】
不溶性繊維の源としては、全粒小麦、オート麦、大麦、ライ麦、米、トウモロコシ、特にこれらの穀物の糠ならびに果実(リンゴ、柑橘類、プルーン、マンゴー、イチジク等)、野菜(トマト、ニンジン、セロリ等)またはカカオが挙げられる。
【0094】
本発明において、「可溶性繊維」とは、水溶性の食物繊維を意味する。十分な量の水中での溶解後に粘度の増大を生じないか、または粘度の増大が小さい可溶性繊維は、「非粘性の可溶性繊維」と呼ばれる。非粘性の可溶性繊維は、フラクトオリゴ糖類、ガラクトオリゴ糖類、キシロオリゴ糖類、マンノオリゴ糖類、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、シクロデキストリンのように3.104g/mol未満の平均モル質量Mw、またはアカシアガムのように高度に分岐しコンパクトな構造を有する(それ故流体力学的体積が小さい)場合はより高いモル質量を有することができる。
【0095】
また、いくつかの他の可溶性繊維は、適度な用量で水の粘度を著しく増大させることができ、「粘性の可溶性繊維」と呼ばれる。グアーガム以外の粘性の可溶性繊維としては、例えば、他のガラクトマンナン(イナゴ豆ガム、タラガム、コロハ)、グルコマンナンまたはコンニャク粉、サイリウム、キサンタン、アルギネート、ペクチン、オート麦または大麦由来のベータ−グルカン、小麦由来のアラビノキシラン、3.105と3.106g/molの間、より好ましくは5.105と2.106g/molの間のモル質量を有する化学的に修飾されたセルロース誘導体が挙げられる。粘度について相乗効果を有する各繊維のいくつかの特定の混合物(例えば、キサンタン/イナゴ豆ガム、キサンタン/グルコマンナン等)も、粘性の可溶性繊維として見なし得る。
【0096】
本発明の好ましい実施形態において、ビスケットは、ビスケットの総重量に対して6重量%超、好ましくは6から30重量%、より好ましくは6から25重量%、より好ましくは12から25重量%、さらにより好ましくは15から25%の繊維を含み、グアーガムは前記繊維中に含まれる。
【0097】
糖および糖誘導体
本発明のビスケットは、少量の糖および/または糖誘導体も含み得る。
【0098】
糖(複数可)という表現は、本発明において、任意の甘味を加える単糖類、例えば、グルコースまたはデキストロース、フルクトース、ガラクトース、マンノースなど、また二糖類、例えば、スクロース、ラクトース、マルトースなどを意味するものと理解される。
【0099】
本発明によるビスケットに導入する糖は、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、または転化糖、グルコースシロップ、ハチミツ中に存在する任意の単糖および二糖類ブレンド、またそれらの混合物の中から選択できることが好ましい。
【0100】
糖は、粉砂糖などの微細な粉末の形態で本発明のビスケットに添加することもできる。
【0101】
糖誘導体も本発明のビスケットに導入することができる。ポリオール、例えばマルチトール、ソルビトールおよびイソマルトなどはよく知られている糖誘導体であり、甘味特性および同等の技術的特性(束一性、粘度、結晶化等)を有するため、代用糖として食品において使用される場合が多い。
【0102】
好ましい実施形態において、本発明によるビスケットは、該組成物の総重量に対して25重量%未満、好ましくは2から25重量%、より好ましくは5から20重量%、さらにより好ましくは10から18重量%の糖または糖誘導体を含む。
【0103】
「フルクトース」という用語は、消化の間のスクロースの加水分解などの他の糖の化学的変質後に得られるフルクトースを除いた、ビスケットに導入するフルクトースを意味することを意図したものである。
【0104】
好ましい実施形態において、本発明のビスケットは、該組成物の総重量に対して25重量%未満、好ましくは2から25重量%、より好ましくは5から20重量%、さらにより好ましくは10から20重量%のフルクトースを含む。
【0105】
より好ましい実施形態において、本発明のビスケットは、ビスケットの総重量に対して25重量%未満、好ましくは10重量%未満のフルクトースおよび/またはビスケットの総重量に対して25重量%未満、好ましくは10重量%未満のポリオール、ならびにさらにより好ましくはその両方を含む。
【0106】
脂肪
本発明によるビスケットは、飽和でも不飽和でもよい脂肪をさらに含み得る。
【0107】
「脂肪」という用語は、本明細書において使用する場合、「脂質」という用語と同義である。好適な脂肪源の源としては、野菜、乳製品、動物および/または海洋性の脂肪源が挙げられる。本発明において有用なのは、食品、特にビスケットおよびシリアルスナックにおいて従来使用されている脂肪および油である。
【0108】
いかなる天然脂肪も飽和および不飽和脂肪酸のブレンドである。
【0109】
飽和脂肪酸は、鎖に沿った二重結合または他の官能基を全く含有しない。
【0110】
飽和脂肪酸は直鎖を形成し、結果的に、非常に密接に集まることができ、気泡安定化などの興味深い界面特性を有するクリスタリットを形成する。
【0111】
不飽和脂肪酸は、1つまたは複数のアルケニル官能基を含む脂肪酸であり、シスまたはトランス構造を有することができる。
【0112】
シス構造は、隣接する水素原子が二重結合の同じ側にあることを意味する。対照的に、トランス構造は、隣の2つの水素原子が二重結合の両側に結合していることを意味する。結果的に、トランス構造不飽和脂肪酸は、炭素鎖をあまり折り曲げず、その形状は直鎖飽和脂肪酸と類似している。
【0113】
脂肪、例えば、油および固形脂肪など、ならびにそのブレンドを本明細書において使用することができる。ビスケット産業において、特に有用な油としては、例えば、非硬化および/または部分硬化油、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油、カノーラ油、トウモロコシ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、ダイズ油、綿実油、亜麻仁油など、ならびにそれらの分画が挙げられる。
【0114】
乳製品(バター)、動物(例えば、豚脂、牛脂)および海洋性(例えば、魚油)の脂肪源は、一般にあまり望ましくないが、これら、特にバターも使用される。
【0115】
室温を超える融点を有する油は、一般に、一緒に加工するのにより好都合であり、大部分のビスケットの配合において使用される。
【0116】
好ましい実施形態において、脂肪は、菜種油、カノーラ油、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0117】
部分消化性および難消化性の合成トリグリセリドまたは天然脂質も、場合により使用することができる。
【0118】
人体にとって最も重要な脂肪酸は、オメガ−6およびオメガ−3脂肪酸シリーズの親化合物であるポリ不飽和脂肪酸である。ポリ不飽和脂肪酸は人体で合成されないため、ヒトの食事において必要不可欠である。ヒトは、オメガ−9位で二重結合を有する飽和脂肪酸またはモノ不飽和脂肪酸を容易に生成することができるが、オメガ−3位またはオメガ−6位で二重結合を導入するのに必要な酵素は有さない。
【0119】
オメガ−3脂肪酸は、炭素鎖の第1の二重結合が、メチル基の後に位置する3番目の炭素上に位置するポリ不飽和脂肪酸である。
【0120】
さらに、トランス脂肪酸(TFA)および飽和脂肪酸(SFA)が悪玉コレステロール(LDL)を上昇させ、善玉コレステロール(HDL)を低下させ、トリグリセリドおよびリポタンパク質(a)(Lp(a)とも呼ばれる)を増大させ得ることが知られている。
【0121】
このため、好ましい実施形態において、本発明によるビスケットは、該組成物の総重量に対して20重量%未満、好ましくは5から20重量%、好ましくは10から16重量%の脂肪を含む。
【0122】
別の好ましい実施形態において、本発明によるビスケット中のトランス脂肪酸および飽和脂肪酸の最大量は、ビスケットの総重量に対してそれぞれ0.1%および2重量%を超えるべきではない。
【0123】
好ましくは、ビスケット中のトランス脂肪酸と飽和脂肪酸との合計量は、ビスケットの総重量に対して5%、好ましくは3%、より好ましくは1.6重量%を超えるべきではない。
【0124】
より好ましい実施形態において、トランス脂肪および飽和脂肪酸の最大量は、ビスケット中に含有される脂肪の合計重量に対して1%および20重量%を超えるべきではない。
【0125】
さらにより好ましい実施形態において、ポリ不飽和脂肪酸、オメガ−3脂肪酸シリーズの親化合物の量は、該組成物の総重量に対して0.2および1重量%、好ましくは0.6から0.95重量%の範囲であり得る。
【0126】
穀物
本発明によるビスケットは、穀物を含むことができる。
【0127】
穀物粒は、日々必要とされる食物エネルギーの大部分を供給し、重要なタンパク質源でもある。
【0128】
穀物粒は、小麦、オート麦、大麦、ライ麦、スペルト小麦、トウモロコシ、米、モロコシ、雑穀、ライ小麦、ソバ、フォニオ、テフ、キノア、およびそれらの混合物の中から選択することができる。
【0129】
全粒穀物は、良好な食物繊維源、必須脂肪酸、および他の重要な栄養素の良好な源である。全粒穀物は、胚乳のみを保持する精製穀物とは対照的に、糠および胚芽ならびに胚乳を保持する穀物粒である。
【0130】
一般的な全粒製品としては、オートミール、ポップコーン、玄米、全粒小麦粉、発芽穀物、および全粒小麦パンが挙げられる。
【0131】
本発明による良好な栄養的側面のビスケットを得るために、穀物の量は、好ましくはビスケットの総重量に対して30重量%超、好ましくは30から70重量%、より好ましくは40から70重量%、さらにより好ましくは50から65重量%であるべきである。
【0132】
特に好ましい実施形態において、本発明によるビスケットは、ビスケットの総重量に対して40から70重量%の穀物、ビスケットの総重量に対して好ましくは40から80重量%の全粒穀物を含むことができる。
【0133】
穀粉
穀粉は、穀物の胚乳から抽出され、約80%のデンプン、10%のタンパク質および10%の水を含有する。穀粉はビスケットの主成分である。
【0134】
本発明の好ましい実施形態において、ビスケットは、デンプン、その天然の擬似結晶構造がわずかに破壊されているかまたは全く破壊されていないデンプンを含むことが好ましい。
【0135】
全ての植物種子および塊茎は、主に2種の多糖類、アミロースおよびアミロペクチンとして存在するデンプンを含有する。植物に応じて、デンプンは、0と70パーセントの間のアミロースおよび30から100パーセントのアミロペクチンを含有し得る。
【0136】
デンプンは白色の粉末であり、源に応じて、無味および無臭であり得る。
【0137】
デンプンは、穀物の主成分であるため、日々必要とされる食物エネルギーの大部分を供給する。市販のデンプンとしては、小麦デンプン、トウモロコシデンプン、クズウコン、ジャガイモデンプン、サゴおよびタピオカが挙げられる。
【0138】
デンプンは、その天然の状態で擬似結晶構造を有する。水の存在下で、ベーキングの間に発生するような熱処理と組み合わせると、その天然の擬似結晶構造が部分的に破壊される。
【0139】
低GIビスケットの特定の場合、水結合繊維の組込みにより通常必要とされる生地の水和の増大により、デンプン粉末の天然の擬似結晶構造の破壊が促進される。結果的に、デンプンは、小腸での消化の間にα−アミラーゼと容易に接触しやすくなり、生物体により急速に同化される。これにより、血糖指数およびインスリン分泌指数、ならびにそのような製品の臨床上の利益の損失の増大がもたらされる。
【0140】
驚くべきことに、本発明による特定のグアーガムの低GIビスケットへの導入が、13%未満で組み込んだ場合に生地の水和の増大を必要とせず、上記の限定的な増大のみを必要とすることが観察された。したがって、その天然の擬似結晶構造のグアーまたは擬似結晶構造がわずかに破壊されたグアーと、粘性の可溶性繊維またはグアーガムを同時に含有する低GIビスケットを得ることが可能である。前記ビスケットは、特定の低GI指数を示す。
【0141】

好ましい実施形態において、本発明による良好な栄養的側面のビスケットは、最終製品100g当たり500mg未満のナトリウムを含むことができる。
【0142】
さらなる成分
本発明による製品は、ビスケットの組成に必要な任意の他のよく知られているさらなる成分、例えば乳、卵、乳化剤、フルーツチップ、チョコレートドロップ、香料、着色剤、発酵剤、とりわけ炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、二リン酸ナトリウムなどを含み得る。
【0143】
溶解の反応速度
グアーガムの水中での溶解の反応速度は、水和プロセスの間接的指標として粘度を使用しながら、複数の研究で記載されてきた(非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11参照)。これらの研究の間には多数の類似点が存在する。
【0144】
(a)1%(w/wまたはw/v)の濃度で、好ましくは含水率を補正しながら(すなわち、1gの乾物)グアーガムを包括的に使用する、
(b)溶媒が水(蒸留水から水道水)である、
(c)溶解プロセスを外界温度(22℃から25℃)で実施する、
(d)グアーを最初に激しい泡立てにより分散させる(非特許文献8参照)か、または電磁撹拌機により生じる急速に旋回する渦の中で1から2分間分散させ(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11参照)、次いで、低剪断条件で水和させ、定期的な粘度測定により中断する。
【0145】
(e)ブルックフィールドSynchro−Lectric RVT粘度計、および20回転/分(非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10参照)または30回転/分(例えば、非特許文献11参照)のスピンドル4を使用して粘度を測定する。
【0146】
しかし、全く同じ水和プロトコルの再現を妨害する多数の障害が存在する。実際に、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10では、キングスカレッジ(London、UK)により作成され、実験温度の良好な調節を可能にするインキュベーターが内側に取り付けられた特定の混合器を使用した。グアー分散体を調製し、ねじぶた付きのガラスジャーに密封し、次いで、水和プロセスの間に予め設定した速度で転倒回転させた。その速度を、グアーガムの分散および水和を促進するのに必要な最低限度と推定し、試料に応じて6rpmから10rpmの間で変動させた。粘度測定のために、約2mlの一定分量をバッチ溶液から一定の間隔で採取した。そのような混合器は、本発明者らが知る限り、市販されていない。別の障害は、電磁撹拌機により生じる渦の中でのグアーの予備分散であり、非常に異なる水和速度を有する試料を使用する場合、各研究と全く同じ条件で、さらには完全に再現性のある様式で再現することがやはり困難である。別の限界は、低感度の装置であるブルックフィールド粘度計の使用であり、それにより、水和プロセスの開始をモニターすることが困難となる。使用するスピンドルは各研究で記載されていたが、容器の寸法および間隙の程度に応じて、剪断速度プロファイルは、著しく変動し得る。最後に、水和時間は、通常、約5時間に制限されるが、本発明のグアーにとっては短すぎる(数名の著者は、最終的な粘度測定を24時間後に実施するが、5時間と24時間の間の粘度の漸進的変化に関する情報がない)。
【0147】
本発明によるグアーガムまたは任意の市販のグアーガムの溶解の反応速度の測定方法。
【0148】
実験装置
本発明のグアーまたは任意の市販のグアーを特徴付けるために、特許文献2で詳細に記載されている方法を使用した。この出願は、胃および小腸において食品により生じる稠度の測定法に関する。この方法は、レオメーターと螺旋型撹拌子の組合せを使用して、胃または腸の食塊をモデルとした混合物を均質化し、同時にその粘度を測定する。
【0149】
グアーガムの溶解の反応速度を測定するために、以下の条件(非特許文献9でも記載されている)を使用して試験を実施した。
− 1%w/wのグアー(含水率に応じて約4.95gから5.1gのグアーに相当する)を25℃の一定温度で445mLの脱イオン水中で水和させる。
− 撹拌条件を本発明のグアーに適合させる(以下の通り)、
− 特許文献2の実施例1および2に記載の装置を以下の水和手順で使用する。
(a)定常の渦を発生させるために、水中で406rpmで1分間構造を回転させ、150s-1の平均剪断速度を生じる。
(b)406rpmでの螺旋撹拌子の回転により生じる、150s-1の平均剪断速度を生じる渦の中でグアーガムを2分間分散させる。
(c)10s-1の平均剪断速度を生じる一定の27rpmの回転によりグアーガムを15時間穏やかに水和させる。
(d)0.01s-1から150s-1の流量曲線を3分間実施し、その後、150s-1から0.01s-1の還流曲線を3分間実施する。
【0150】
この装置では混合および粘度測定を同時に実施し、一定分量の試料を採取するために混合を中断する必要がない。
【0151】
粘度測定を実施するのにオペレーターは必要なく、その結果、モニタリングを連続的に長期間(平均すると15時間であるが、いくつかの測定は40時間実施した)実施することができる。
【0152】
試験したグアー
本発明において使用するグアーガム(Hindustan GumのHIGRAN−Gシリーズ)を試験し、その上、2mm、1.25mm、1mm、0.8mm、0.63mmおよび0.4mmの篩にかけた。
【0153】
本発明のグアーガム(Hindustan GumのHIGRAN−Gシリーズ)を、一連の篩、2mm、1.25mm、1mm、0.8mm、0.63mmおよび0.4mmを備えたRETSCH AS 200 CONTROLを使用して篩にかけた。合計で8kgのHIGRAN Gを篩にかけて、以下の分布を得た。
【0154】
【表4】

【0155】
次いで、篩にかけた分画を、記載した手順を使用して画像分析により分析した。
【0156】
粘度測定
図Aは、本発明のグアーガム(Hindustan GumのHIGRAN−Gシリーズ)および様々な篩い分け後の同じグアーについて、段階(c)(すなわち、T=3分(段階(b)の終了時)から開始し、最大で16時間)の間の10s-1での見かけ上の粘度の漸進的変化を示す。
【0157】
図Aは、本発明のグアーの非常に漸進的な溶解を示す。試験の開始時の粘度の見せかけの増大は、粒子沈降が原因である。先行技術と比較できるように、粘度測定に低剪断速度を使用する。この低剪断速度が原因で、大きく高密度の粒子(約1.4から1.5kg/lの体積質量を有する)が最初に沈降し、螺旋構造の下部にあるバーとの間に生じる摩擦により粘度が増大した。しばらくすると粒子は膨潤し、最後にポンプにより溶液中に戻され、15時間後に非常に均質な溶液を形成した。いくつかの粒子または黒い点が依然として見られたが、粘度に対する影響はないように思われた。非特許文献9において使用されたUltra−Turraxミキサーによる溶液の均質化により、粘度は変化しなかった。
【0158】
結果:
HIGRAN Gグアーの粘度の漸進的変化を最初に48時間試験した。
【0159】
15時間後、粘度は、先に記載した装置(特許文献2に開示されているところの、胃または腸の食塊をモデルとした混合物を均質化するため、およびその粘度を同時に測定するためのレオメーターと螺旋型撹拌子の組合せ)を用いて測定すると3.081のプラトー値に達した。47時間と48時間の間に前記粘度はほとんど変化せず、最大で3.228Pa.sまで増大した。
【0160】
HIGRAN Gグアーの粘度の漸進的変化を二度目に15時間試験し、15時間で達したプラトー粘度値は3.077であり、良好な試験の再現性を示した。
【0161】
これは、15時間と48時間の間で1時間当たり約0.005Pa.sの粘度の増大に相当し、それにより、15時間の標準試験期間が、完全な水和(すなわち、粘度の完全な発生)を表すものであることが確認された。
【0162】
したがって、試験した他のグアーのプラトー粘度は、試験の終了時(すなわち、14時間と15時間の間)に得られる粘度値であった。
【0163】
時間t0.8は、プラトー粘度の80%に相当するV0.8粘度値に達するのに必要な水和時間である。
【0164】
このプラトー粘度の80%に相当するV0.8粘度値に達するのに必要な水和時間は、本発明においてグアーガムの溶解の反応速度を定量化するのに使用するパラメーターである。このパラメーターは、Wang, Q., Ellis, P.R. and Ross-Murphy, S.B.の論文(非特許文献12)で開示されている。換言すると、t0.8は、粘度V0.8(プラトー粘度の80%に相当する=0.8×プラトー粘度値)が得られる時間である。
【0165】
例えば、15時間後のHIGRAN Gグアー曲線のプラトー粘度値は3.08Pa.s)である。したがって、HIGRAN Gグアーのt0.8は、以下に記載の方法を用いて計算すると0.8×3.88=2.46Pa.sであり、292分後(t0.8に相当する)に得られる。
【0166】
したがって、本発明の別の目的は、130分から390分、好ましくは216から390分の範囲のt0.8(25℃で得られるプラトー粘度の80%に相当するV0.8粘度値に達するのに必要な水和時間)を有するグアーガムを含むビスケットである。
【0167】
この時間t0.8は、以下に記載の方法に従って計算する。
【0168】
より正確には、非特許文献10で提案された分析を使用して、t0.8を計算するのに必要な移動係数を得た。
【0169】
以下の手順により合成曲線を実施する。
【0170】
(a)時間の関数の粘度値を、15時間後に(または、試験したグアーの場合は違うが、15時間後に得られる粘度値が48時間後に代表的な粘度値ではない場合は15時間超で)得られるプラトー値で除算することにより、試験した各グアーの粘度を正規化し、
(b)基準曲線として選択した任意の曲線(本明細書においては、選択した基準曲線は、市販のHIGRAN Gグアーを用いて得られるものであった)に正規化した粘度曲線を重畳させるために、時間に移動係数を乗算することにより得られる正規化した粘度曲線を重畳させる。この場合、各曲線は互いに完全には重畳せず、粘度の増大に相当する曲線の一部が、全ての曲線に重畳する部分であるべきである。
【0171】
例えば、400ミクロンの篩にかけた試料については、時間に2.25(移動係数)を乗算することにより、その両方の曲線(市販のHIGRAN Gグアーおよび400ミクロンの篩にかけたグアー)を重畳させることが可能となる。
【0172】
このことは、水和プロセスが基本的に同じ様式に従うが、未分画試料(市販されているHIGRAN Gグアー)と比較してHIGRAN Gグアーを先に400ミクロンの篩にかけた場合、係数2.25により促進されることを示す。この重畳の結果生じる曲線は、図Bで例示するように合成曲線と呼ばれる。重層は、沈降が粘度値に対して人為現象を生じるような短時間でなければ正しい。
【0173】
移動係数を用いて、以下の等式1に従って、試験したグアーに関するt0.8値を計算した。
【0174】
【数1】

【0175】
移動係数、プラトー粘度およびt0.8の値は、全ての試験したグアーについて表Aに示しており、粒子の寸法(L、WおよびL/W)も同様に示している。
【0176】
【表5】

【0177】
より球状の形態を有する様々なグアーガム試料、HIGRAN F(微細なグアーガム)、HIGRAN C(粗いグアー)およびGUAREMについてこの手順を再現した。合成曲線を得ることがやはり可能であった。移動係数、プラトー粘度およびt0.8は、形態特性と共に表Bに示している。比較のためにHIGRAN Gに関する値も示している。
【0178】
【表6】

【0179】
HIGRAN G(未分画および篩にかけた)および他のグアーガムについて得られたt0.8の比較は図CおよびDに示している。これらのグアーの形態は非常に異なっていたため、水和速度に対する寸法の影響について結論を下す唯一の方法は、両方の粒子の寸法、すなわち、その長さL(図C)およびその幅W(図D)を比較することであった。
【0180】
時間t0.8は、指数法則=t0.8=aXb(Xは粒子の長さLまたは幅Wである)に従って変動するようである。
【0181】
先行技術は、グアーガムが、生理学的に有効であるように急速に水和しなければならないことを示している(非特許文献8参照)。3mmの厚さおよび4mmの直径を有するGlucotard小型錠剤が非常にゆっくりと水和することが示されており、このことが、臨床試験においてこの製品が血糖反応を改善できない場合が多い理由であり得ると示唆されている(非特許文献9参照)。本発明のグアーは、Glucotard小型錠剤に匹敵する巨視的寸法を有するが、代わりに血糖およびインスリン調節の顕著な改善を誘発することが示された。本発明者らが、血糖指数およびインスリン分泌指数の両方ならびに胃内容物排出が、その水和が遅いにもかかわらず、ビスケット中に含有される本発明のグアーガムにより良い影響を受け得ることを示しているため、本発明者らの発見は先行技術と対照をなす。
【0182】
図CおよびDに示している結果は、1つの可能な説明原理を示唆している。いかなる理論にも拘束されるものではないが、その特有の細長い形状が原因で、グアー粒子は、球状の粒子より水に曝される表面が比較的大きいと推定することができる。これにより、初期の水和の段階の間に、粒子の膨潤および軟化が促進され、それにより粒子の分解が促進され、したがって水和プロセス全体が促進される恐れがある。反対に、球状の粒子は、水に曝される表面がより小さく、主に浸食プロセスを介して水和するであろう(グアー鎖は粒の膨潤した表面を漸進的に離れる)。これにより、なぜ本発明のグアーが同じ寸法の球状の粒子より急速に水和するのか、また、なぜそのような徐々に溶解するグアーについて驚くほど強力な生理学的効果が観察されたのかが説明され得る。
【0183】
本発明によるビスケットまたは任意の市販のビスケットの溶解の反応速度の測定方法
実験装置
ビスケット中のグアーガムの溶解の反応速度をモニターするのに使用する方法が記載されている(特許文献2参照)。特許文献2は、胃および小腸において食品により生じる稠度のインビトロ測定法に関する。該方法は、3つのステップ、(a)咀嚼の間に実施される機械的分解を再現するために食品を粉砕するステップと、(b)レオメーターを備えた反応容器において、胃の消化に相当する時間、胃液をモデルとした溶液と撹拌しながら粉砕した食品を混合するステップと、(c)腸の消化条件をモデルとするために、腸の消化に相当する時間、反応混合物を撹拌しながら調整するステップとを含み、レオメーターは、混合物を均質化するのに使用する撹拌子を備え、同時にその粘度を測定する。以下の結果は、実施例1および2で定義する条件で得た。
【0184】
咀嚼の間の口内でのビスケットの機械的分解をシミュレートするために、キッチン用粉砕機を使用して、規定量のHindustan GumのHIGRAN−Gシリーズを含有するビスケットを最初に粉砕した。レーザー光粒度分析により測定した場合にそれぞれ約800および1400ミクロンのD50およびD90を有するビスケット粉末を得るために、混合条件を調整する。
【0185】
次いで、高剪断速度条件(150s−1)下で、4Nの塩化水素酸によりpH=2まで酸性化し、1gのペプシン(P7000、Sigma Aldrich)を含有する水400mLからなる胃液中に50gのビスケット粉末を分散させた。水和の20分後、pH値はわずかに増大し、塩化水素酸の添加により2に戻し、層流条件で粘度の漸進的変化をモニターするために剪断速度を10s-1に設定した。70分後、0.01s-1から開始して最大で150s-1まで3分間流量曲線を実施し、次いで、3分で0.01s-1に戻した。次いで、4Nの水酸化ナトリウムの添加により反応流体をpH6.3まで中和し、1.63gのブタパンクレアチン(P7545、Sigma Aldrich)および1.2gの胆汁塩(B8631、Sigma Aldrich)を添加した。この段階の間、良好な混合条件および正確なpH調節を実現するために剪断速度を150s-1に戻した。この混合段階の20分後、層流条件で粘度の漸進的変化を90分間モニターするために、前述と同じ条件で流量曲線を実施する前に剪断速度を再び10s-1に設定した。
【0186】
試験したビスケット
この試験において使用した4種のビスケットは、それぞれビスケットの総重量に対して重量換算で6%、13%、18%(それぞれ以下の実施例4のビスケット1、2および3)および20%(グアーの量が20%まで増大した実施例4のビスケット3に相当し、唯一の調整パラメーターは穀物である)の量でグアーを含有していた。
【0187】
結果
0.8を計算するのに使用した方法は、既にグアー粒子について記載たものと同じである。
a)この濃度で明白なプラトー値が得られたため、最大量(本明細書においては20%)のグアーを含有するビスケットの粘度を示す曲線を基準曲線として選択する。
b)試験の終了時に得られるプラトー粘度により、全ての粘度対時間曲線を正規化した。
c)次いで、基準曲線に重畳させるように他の試験したビスケットの正規化した粘度曲線を移動させることにより、合成曲線を得る(本明細書においては、図Bに示しているものなどの合成曲線を得るために、特定の移動係数を使用して、6%、13%および18%のグアーを含有するビスケットの粘度曲線を移動させて20%のグアーを含有するビスケットの曲線を重畳させた)。
c)次いで、等式1に従ってt0.8を計算する。
【0188】
図Fは、グアー濃度の関数の時間t0.8の漸進的変化を示し、やはり、結果を調整するのに指数法則モデルを使用することができる。
【0189】
時間t0.8は、Wang, Q., Ellis, P.R.およびRoss-Murphy, S.B.の論文(非特許文献12)で開示されている結果とは対照的に、グアー濃度と共に連続的に低下する。これらの著者らは、グアー濃度に関するt0.8の増大が1.2%、より大きいことを見出した。
【0190】
本発明のビスケットは、ビスケットの総重量に対して1と20重量%の間のグアーガムを含むことができる。したがって、一食分50gを一般的な朝食のように400mLの液体と共に摂食すると、食塊中のグアー濃度は、0.1%と2.2%の間であろう。上記の手順を使用するこのインビトロ試験に基づくと、t0.8は、61と1060分の間に含まれるであろう。
【0191】
好ましくは、本発明のビスケットは、ビスケットの総重量に対して3%から18重量%のグアーガムを含むことができ、それにより、68および370分の範囲のt0.8値がもたらされる。より好ましくは、ビスケットは、6%から15%のグアーガムを含むことができ、それにより、80および193分の範囲のt0.8値がもたらされる。
【0192】
したがって、本発明のさらなる目的は、61および1060分、好ましくは68から370分、より好ましくは80および193分の範囲のt0.8(25℃で得られるプラトー粘度の80%に相当するV0.8粘度値に達するのに必要な水和時間)を有するビスケットである。
【0193】
本発明のビスケットの使用
グアーガムなどの粘性の可溶性繊維の本発明によるビスケットへの導入により、生理学的効果、例えば、血糖および/またはインスリン反応の平板化、または血中コレステロールおよび他の血中脂質の低下などが生じる。
【0194】
それ故、本発明は、それを摂食する対象に対して低い血糖および/またはインスリン反応を生じるための、本明細書に記載のビスケットの使用について言及することもできる。
【0195】
本発明においては、ビスケットは、本発明によるビスケットの摂取後に測定する血糖が、同じ量の有効炭水化物を含有する一食分にグアーを含有しない同じビスケットにより得られる反応より低い場合、「摂取後に低血糖反応を誘発する」ものと見なす。
【0196】
本発明においては、ビスケットは、本発明によるビスケットの摂取後に測定する血中インスリンが、同じ量の有効炭水化物をもたらす一食分にグアーを含有しない同じビスケットで得られる反応より低い場合、「摂取後に低インスリン反応を誘発する」ものと見なす。
【0197】
本発明は、それを摂食する対象に対して低血糖および低インスリン反応を生じるための、本明細書に記載のビスケットの使用について言及することもでき、前記対象は、糖尿病、特に2型糖尿病またはインスリン抵抗性を患っている。
【0198】
インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)とも呼ばれる2型糖尿病は、主にインスリン抵抗性、相対的インスリン欠乏、および高血糖を特徴とする代謝異常である。結果的に膵臓のインスリンを産生するベータ細胞を永久的に破壊する自己免疫疾患である1型糖尿病とは対照的に、2型糖尿病は、運動量の増大および食事制限により管理される場合が多く、インスリン注射を必要としない。
【0199】
この疾患は主に40歳を超えた成人に見られてきたが、今では、小児および青年においても多く見られるようになり、その増大は、この年齢群における肥満の増加率と関連していると考えられている。
【0200】
本発明の別の目的は、ビスケット中のマトリックスに添加した場合にビスケットのインスリン分泌指数を低下させるため、および/またはビスケット中のマトリックスに添加した場合にビスケットの血糖指数を低下させるため、好ましくはその両方のための、0.25と8mmの間の長さ、0.18と2mmの間の幅、および1.8と6の間の長さ対幅の平均比を有するグアーガムの使用である。
【0201】
様々な可溶性繊維がLDLコレステロール濃度を低下させることもよく知られている。このことは、繊維の高い粘度が脂質乳化および脂質分解を変化させることが原因のコレステロール吸収の低下により説明することができる。
【0202】
したがって、胃内容物排出を増大させ、小腸において長期の吸収をもたらすグアーガムにより発生する粘度は、血中脂質プロファイルを改善する可能性が高い。
【0203】
したがって、本発明のビスケットは、その低血糖指数および高粘度の食塊の発生の両方を組み合わせることにより、健康な対象または心血管疾患の恐れのある対象におけるLDLコレステロールの低減および炎症性パラメーターの低減を通して、積極的に血中LDLコレステロール濃度を低下させるため、または正常な血中コレステロール濃度を維持するため、したがって心血管疾患の発生を阻止するために使用することもできる。
【0204】
したがって、本発明のさらなる目的は、健康な対象またはインスリン抵抗性もしくは糖尿病、特に2型糖尿病を患っている対象における血糖値の調節を促進するため、および/または健康な対象または心血管疾患の恐れのある対象について積極的に血中LDLコレステロール濃度を低下させるため、または正常な血中コレステロール濃度を維持するための、本発明によるビスケットの使用である。
【0205】
消化プロセスにおいて、いったん口咽頭腔を通過すると、栄養素は胃を満たし始める。消化のこの部分は、飽食感および満腹感の発生にとって重要である。このプロセスにおいて2種のキーパラメーター、すなわち、(主にその速度が原因で)胃内容物排出および胃において起こり得る様々な化学反応が同定されてきた。
【0206】
胃内容物排出の遅延は、胃から生じる満腹シグナルを増大または延長することができ、したがってより高い満腹感をもたらし得る。胃内容物排出の遅延は、小腸におけるより遅い栄養素吸収ももたらすことができ、したがって、小腸からの満腹ホルモンの分泌を延長することに寄与する。
【0207】
食塊について高レベルの粘度が得られた場合に胃内容物排出の遅延が観察された。
【0208】
さらに、胃内容物排出は、空腹感と関連があることも知られている。
【0209】
したがって、本発明のビスケットは、高粘度の食塊を提供することにより、胃内容物排出を遅延させ、したがって満腹感を増大させるために使用することができ、したがって、結果的に、特に肥満の対象において、減量までの体重維持に寄与し得る。
【0210】
本発明のさらなる目的は、胃内容物排出を遅延させるため、および/または満腹感を増大させるため、および/または摂食量を減少させるため、および/または体重管理に寄与するための、本発明によるビスケットの使用である。
【0211】
本発明のさらなる目的は、130分から390分、好ましくは216から390分の範囲のt0.8(25℃で得られるプラトー粘度の80%に相当するV0.8粘度値に達するのに必要な水和時間)を有するグアーガムを含むビスケットである。
【0212】
本発明の別の目的は、61および1060分、好ましくは68から370分、より好ましくは80および193分の範囲のt0.8(25℃で得られるプラトー粘度の80%に相当するV0.8粘度値に達するのに必要な水和時間)を有するビスケットである。
【0213】
本発明の別の目的は、25以下、より好ましくは20以下の血糖指数を有することを特徴とするビスケットである。
【0214】
ビスケットは、通常、全ての成分を混合して生地を得ること、(様々な技術、例えば、圧延切断、ラミネート加工、回転切断、ワイヤー切断などを使用して)生地を形成して、最終的に低い残留水分に達するまでベーキングする個々の断片(通常数グラム)にすることにより得られる。
【0215】
それ故、本発明の別の目的は、以下のステップ含む上記のビスケットの製造方法である。
(a)ビスケットの成分を混合するステップであって、好ましくは
(i)最初に粉末状の成分を混合し、
(ii)次に液体成分を添加し、
(iii)場合により、より大きい固形成分、ビスケット製造技術におけるいわゆる包含物、例えば、オート麦フレーク、フルーツドロップ、シリアルクリスプなどを添加する、ステップと、
(b)場合により生地を寝かせるステップと、
(c)ビスケットを形成し、得られた形成ビスケットをオーブンでベーキングするステップ。
【0216】
好ましい実施形態において、上記のビスケットの製造方法は、以下のステップを含むことができる。
(a)ビスケットの成分を、以下の
(i)脂肪、糖、乳化剤、香料、および0.25と8mmの間の長さ、0.18と2mmの間の幅および1.8と6の間の長さ対幅の平均比を有するグアー粒子を混合し、
(ii)その後、穀粉、糠、マルトデキストリン、非粘性の可溶性繊維、膨張剤、塩、水を混合しながら組み込み、
(iii)場合により、ビスケットの残りの成分、例えば、オート麦フレーク、フルーツドロップ、シリアルクリスプなどを組み込む
という順番で混合するステップと、
(b)ステップaで得られた生地を5分から1時間寝かせるステップと、
(c)ビスケットを形成し、得られた形成ビスケットをオーブンでベーキングするステップ。
【0217】
より好ましい実施形態において、各成分の混合は、容量20kgで3種の可変速度を備えたHobartミキサー中で実施することができる。
【0218】
混合後、該プロセスのステップ(b)で5分から1時間、例えば乾燥を回避するために密閉容器中で生地を寝かせることができる。
【0219】
混合の終了時の生地の温度は、約室温±5℃であることが好ましい。
【0220】
形成ステップ(c)は、パイロットスケールの回転切断装置(例えばDe Vurslaag)を使用して実施することができる。5と20gの間の重量の断片を得るために生地を切断することができる。
【0221】
ベーキングステップは、特定のパイロットスケールのオーブンにおいて操作することができる(特許文献3参照)。
【0222】
ベーキング時間の合計は、例えば、9gのビスケットについて約5分、および12gのビスケットについて7分30秒であり得る。
【0223】
ベーキング後、ビスケットは、例えばプロピレンフィルムでの包装前に15分間冷却することができる。
【0224】
本発明は、以下の実施例でより詳細に例示する。
【実施例1】
【0225】
以下の組成を有するビスケット生地を調製した。
【0226】
【表7−1】

【0227】
【表7−2】

【0228】
以下のプロセスに従ってビスケットを調製した。
(a)容量20kgのHobartミキサー中で脂肪、糖、乳化剤、香気成分および本発明のグアー粒子を5分間混合し、
(b)その後、穀粉、糠、マルトデキストリン、非粘性の可溶性繊維、膨張剤、塩、水を2分間組み込み、
(c)巨視的包含物、例えば、オート麦フレーク、フルーツドロップ、シリアルクリスプなどを3分間組み込む。
【0229】
混合後、乾燥を回避するために密閉容器中で生地を15分間寝かせる。混合の終了時の生地の温度は27℃プラスマイナス2℃である。
【0230】
次いで、パイロットスケールの回転切断装置(De Vurslag)を使用して形成を実施する。生地を切断して重量約9gの断片を得る。
【0231】
次いで、特許文献3に記載の特定のパイロットスケールのオーブンでこれらの断片をベーキングする。該オーブンは6つのゾーンに分類され、各温度は以下の通りである。
頂部の熱:150℃、170℃、190℃、190℃、180℃、160℃
底部の熱:140℃、150℃、160℃、160℃、160℃、160℃。
ベーキング時間は5分である。103℃のオーブンで4時間後に測定するとベーキングの終了時の残留水分は3.5%である。
【0232】
次いで、プロピレンフィルム32M B777での包装前に、焼き網の上でビスケットを15分間冷却した。
【0233】
非特許文献6で推奨されているように、250mLのEvianミネラルウォーターと共に、50グラムの有効炭水化物を含有する一食分について、該食品を12人の対象で試験した。
【0234】
本明細書に開示の手順に従って対象のGIおよびIIを測定した。
【0235】
GIは、試験食品の血糖の曲線下面積(AUC)をグルコース溶液の摂取後の血糖のAUCで除算し100を乗算したものである。
【0236】
全ての試験食品を、絶食中の対象に朝、対象が通常朝食をとるのとほぼ同じ時間に摂食させた。
【0237】
以下に示す結果は、12人の試験した対象の間の平均GIおよびII値に相当する。
【0238】
【表8】

【0239】
本発明における実施例1、2および3から、グアー微粒子の量が多いほど、ビスケットのGIおよびIIが低いことを観察することができる。
【実施例2】
【0240】
(比較用)
以下の組成を有する3種のビスケット生地組成物を調製した。
【0241】
【表9】

【0242】
実施例1に記載のプロセスに従って3種のビスケットを調製した。
【0243】
本明細書に開示の手順に従って対象のGIおよびIIを測定し、結果は以下の通りである。
【0244】
【表10】

【0245】
本発明によるビスケットがグアーを含有しない基準ビスケット(既に低GIおよび低IIを有する)のGIおよびII値の減少をもたらすことが分かる。
【0246】
一方、粗いグアーを用いた比較用ビスケット組成物は、低GIおよび低IIを有しグアーを含有しない基準ビスケットと比較してGIおよびII値を増大させる。
【0247】
本発明によるグアー微粒子の使用により、それが導入されたビスケットのGIおよびIIの減少がもたらされる。
【実施例3】
【0248】
(比較実施例)
本発明によるグアー微粒子の、任意の他の形態のグアーの導入と比較したビスケットの調製プロセスへの導入の改善点を示すために、実施例1および2と同じ成分の組込みの順番および生地の混合順序を使用して、様々な形態(粗い、微細、および本発明)の様々な量、0から最大で18%のグアーガムを含有するビスケットを調製した。
【0249】
調整したパラメーターは、添加水量およびベーキング時間のみであった。各配合について、添加水量は、圧力をかけると粘着性となることができ、回転式成形機の回転の間に金型に固着し、回転サイクルの終了時に単一片としてベルト上に置かれる柔軟な生地を形成するのに必要とされる最低限度の水の添加量に相当する。
【0250】
本発明によるビスケット生地は以下の組成を有する。
【0251】
それを超えるともはや回転式成形技術を使用してビスケットを形成することができないグアーの最大量を求めた。
【0252】
【表11】

【0253】
グアー粉(Hindustan Gumの微細なグアーHIGRAN−Fシリーズ)および粗いグアー(Hindustan GumのHIGRAN−Cシリーズ)よりずっと多い量で本発明によるグアー微粒子をビスケットに導入できることが観察される。
【0254】
6%のグアーを含む組成物について、回転式成形技術に好適な生地を形成するのに必要とされる水の量も求めた。
【0255】
【表12】

【0256】
回転式成形技術に好適な生地を形成するのに必要とされる添加水量が、本発明によるグアー微粒子(Hindustan GumのHIGRAN−Gシリーズ)を含む組成物にとって、粗いグアー(Hindustan GumのHIGRAN−Cシリーズ)を含む組成物にとっての対応する量ほど重要ではなく、微細なグアー(Hindustan GumのHIGRAN−Fシリーズ)を含む組成物にとっての対応する量ほど重要でもないことが観察される。
【0257】
より多量の水を添加すると、ベーキングパラメーターに影響が及ぶ。例えば、このカテゴリーの製品の長い貯蔵期間により必要とされる非常に低い含水率を有する完成品を得るために、ベーキング時間の増大が必要となる。しかし、グアー濃度が高いと制約を調整することができず、製造されるビスケットはベーキングが不十分(色が薄い、十分にサクサクしていない)であり、湿気が多すぎ(4%超の水分)、ベーキング時間を顕著に増大させたとしても、最大で30%である。したがって、そのようなベーキング時間の増大により製造ラインの減速も必要となり、全体的な生産性が低下し、負の費用効果が生じる。
【0258】
それを超えるともはや低水分の完成品を得ることができない最大量のグアーを求めた。
【0259】
【表13】

【0260】
本発明によるグアー微粒子が、多量(18%)にビスケットに導入した場合でさえ、低水分の完成品をもたらすことができる一方、微細なグアー(Hindustan GumのHIGRAN−Fシリーズ)および粗いグアー(Hindustan GumのHIGRAN−Cシリーズ)は、それぞれ9%および13%未満の量で導入しなければならないことが観察される。
【0261】
必要であれば20重量%のグアーを含むビスケットを調製することができるが、重大な工業的問題が生じ、生産量が非常に低くなる。
【実施例4】
【0262】
本実施例は、本発明によるビスケットの胃内容物排出に対する効果を示すことを意図したものである。
【0263】
方法論
胃内容物排出速度(GER)は、専用の安定同位体13Cオクタン酸呼気試験技術を使用して測定してきた。13Cオクタン酸呼気試験は、元来、Ghoosらにより開発され(非特許文献13参照)、標準的試験食を使用する標準的なシンチグラフィーに対して実証されてきた。
【0264】
GERの測定のために、安定同位体標識物質13Cオクタン酸を試験食に組み込む。13Cオクタン酸は、胃において食事の固相に結合したままであり、食事と共に胃を離れる。十二指腸における食事の分解時に、13Cオクタン酸が放出され、急速に吸収され、肝臓に輸送され、13CO2に酸化される。13CO2が呼出された呼気に現れる速度は、胃内容物排出の速度の尺度である。呼気試料により、呼出された13CO2の採取が可能となる。
【0265】
試料における13C呼気含量は、同位体比質量分析を使用して求める。ヒトのCO2産生量は体表面積当たり300mmol/m2であると想定され、体表面積は、Haycockらの重量−高さ公式により計算する(非特許文献14参照)。次いで、非特許文献13に記載の非線形回帰により、胃内容物排出半減時間を計算する。
【0266】
臨床試験計画
低脂肪、低糖ビスケットに添加したグアーガムの胃内容物排出速度に対する影響を評価するために臨床試験を実施した。20人の健康なボランティアが対照、単一中心(monocentric)、二重盲検、および無作為化交差試験に参加した。
【0267】
この試験において、各ビスケットは、安定同位体を用いて特異的に製造した。各成分の混合の間に液体13Cオクタン酸を脂肪に添加して標識ビスケットを製造した。
【0268】
別々の試験日に、専用の呼気試験技術を使用して3種の異なるビスケットの胃内容物排出速度を評価した。一晩の絶食後、13Cオクタン酸により標識した70gのビスケットを摂食させ、その後、6時間にわたって摂取後呼気13CO2排出量を測定した。ボランティアはストローを通してガラス管に息を吹き込んで呼気試料を提供し、それをベースラインから最大で6時間(25回)15分毎に採取して呼出された13CO2を頻繁に測定した。
【0269】
試験製品
− ビスケット1:微粒子グアーガム6%を含有する低脂肪、低糖ビスケット
− ビスケット2:微粒子グアーガム13%を含有する低脂肪、低糖ビスケット
− ビスケット3:微粒子グアーガム18%を含有する低脂肪、低糖ビスケット
以下の組成を有する3種のビスケット生地組成物を調製した。
【0270】
【表14】

【0271】
これら3種のビスケットの栄養組成は以下の通りであった。
【0272】
【表15】

【0273】
結果
これら3種のビスケットについて胃内容物排出時間中央値(MGHET)を測定した。
【0274】
【表16】

【0275】
これらの結果は、固形食事に添加するグアーガムの用量を増大させた場合の、胃内容物排出半減時間の用量関連の増大を明らかに示した。
【0276】
図1は、グアーガム濃度の関数の胃内容物排出半減時間を示している。図1に示しているように、微粒子グアーガムの用量と胃内容物排出半減時間(ビスケット1、2、3に関する中央値値)の間に直線的相関が見られた。
【0277】
図2は、インビトロでの腸内粘度の関数の胃内容物排出半減時間を示している。調査した領域で粘度と胃内容物排出半減時間の間の直線関係がやはり見られた(図2)。
【実施例5】
【0278】
本実施例は、実施例4に記載のビスケットのGIおよびIIに関する結果を示すことを意図したものである。
【0279】
先に記載したビスケット1、2、および3について得られたGIおよびII値は以下の通りである
【0280】
【表17】

【0281】
最も高いレベルの粘度を有するビスケットが最も小さいGIおよびIIを得た。グアーガムの用量を増大させると、ビスケットにおける高濃度化によりGIおよびIIが減少した。
【0282】
計算した比II/GIは、ビスケットが少量のインスリンの分泌を誘発して血糖値を管理することを示している。消化管を含む腸からのグルコースの吸収量がより低いことが観察された。
【実施例6】
【0283】
本実施例は、本発明による特定のグアーの導入の、製品の器官感覚受容特性に対する効果を示すことを意図したものである。
【0284】
外部の企業Adriantが、ガイドラインISO 13299:2003「官能試験−方法論−官能プロファイルを確立するための一般的指針(Sensory analysis - Methodology - General guidance for establishing a sensory profile)」に従って官能検査を実施した。12人の訓練された専門家の群に、本発明のグアー13%を含有するビスケットの感覚属性を繊維分が低い対照ビスケットと比較するように依頼した。これらの専門家は、官能評価を毎週実施し、再現性があり特徴的であることが分かってきた。
【0285】
これら2種のビスケットの配合は以下の表で比較している。
【0286】
【表18】

【0287】
糖、脂肪およびタンパク質含量は同一であり、これらのビスケットの唯一の差異は、本発明のグアーガムによる部分的な穀物の代替(穀粉およびフレーク)であった。栄養組成は以下のものである。
【0288】
【表19】

【0289】
驚くべきことに、グアー13%(および合計で20%の繊維)を含有するビスケットは、繊維を5%しか含有しない対照ビスケットより「硬くない」と知覚された。平均硬度スコアは本発明のビスケットについては18.88±7.62であり、それに対して対照ビスケットについては22.25±9.66であった。この差異は統計的に顕著である(p=1.3%)。
【0290】
この結果は、ビスケットに小用量のグアーガムを添加するだけでその質感に顕著な変化が生じることを示している先行技術と一致しない。Ellisおよび共同研究者ら(非特許文献15参照)は、2%と6%の間のグアー用量を含有するショートブレッドビスケットを製造し、その嗜好性および生理学的効果を評価した。使用されたグアーは、標準的粒度分布を有する高粘度の市販のグアーであった。著者らにより、4%および6%のグアーガムを含有するビスケットの嗜好性が、対照ビスケットに対して顕著に低下したことが報告された。グアー濃度と嗜好スコアの間に直線関係が見られ、グアーガム13%を含有するビスケットについて非常に低い嗜好性が予期されるであろうことが示されている。ショートブレッドビスケットが、ビスケットの質感および味覚の向上剤として当業者に知られているより高いレベルの脂肪(本発明者らの場合の15%に対して25%超)および糖(本発明者らの場合の15%に対して21%超)を含有することに留意することも重要である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グアーガムを含むビスケットであって、
前記グアーガムが、0.25から8mmの間の長さ、0.18から2mmの間の幅、および1.8から6の間の長さ対幅の平均比を有する天然のグアーガムであることを特徴とするビスケット。
【請求項2】
前記グアーガムは、棒状の形態であることを特徴とする請求項1に記載のビスケット。
【請求項3】
前記ビスケットの総重量に対して1から20重量%の間、好ましくは3から18重量%の間、より好ましくは6から15重量%の間のグアーガムを含むことを特徴とする前記請求項1または2に記載のビスケット。
【請求項4】
前記グアーガムは、1.3から4.2mmの範囲の平均長さおよび0.6から1.3mmの範囲の平均幅を有し、好ましくは前記グアーガムは、約2.6mmの平均長さおよび約0.9mmの平均幅を有することを特徴とする前記請求項1から3のいずれか一項に記載のビスケット。
【請求項5】
前記グアーガムは、2から5、好ましくは2.3から4の範囲、より好ましくは約2.8の長さ対幅の平均比を有することを特徴とする前記請求項1から4のいずれか一項に記載のビスケット。
【請求項6】
前記ビスケットの総重量に対して25重量%未満の糖、好ましくは2%から25重量%の糖、および/または20重量%未満の脂肪、好ましくは10%から16重量%の脂肪を含むことを特徴とする前記請求項1から5のいずれか一項に記載のビスケット。
【請求項7】
前記ビスケットの総重量に対して40から70重量%の穀物、および、好ましくは前記ビスケットの総重量に対して40から80重量%の全粒を含むことを特徴とする前記請求項1から6のいずれか一項に記載のビスケット。
【請求項8】
6%超、好ましくは6から30%、より好ましくは12から25%、さらにより好ましくは15から25%の繊維を含み、グアーガムは前記繊維中に含まれ、前記パーセンテージはビスケットの総重量に対して重量換算で表されることを特徴とする前記請求項1から7のいずれか一項に記載のビスケット。
【請求項9】
前記繊維は、粘性の可溶性繊維を含み、
前記グアーガムは、粘性の可溶性繊維および場合により不溶性繊維および/または非粘性の可溶性繊維中に含まれ、好ましくは、
前記ビスケットは、不溶性繊維、粘性の可溶性繊維および非粘性の可溶性繊維の混合物を含むことを特徴とする請求項8に記載のビスケット。
【請求項10】
25%未満の糖、20%未満の脂肪、30%超の穀物、および6%超の不溶性繊維、粘性の可溶性繊維および非粘性の可溶性繊維の混合物である繊維を含み、これらのパーセンテージは前記ビスケットの総重量に対して重量換算で表されることを特徴とする前記請求項1から9のいずれか一項に記載のビスケット。
【請求項11】
0.05から0.4の間、好ましくは約0.2の水分活性(Aw)値を有することを特徴とする前記請求項1から10のいずれか一項に記載のビスケット。
【請求項12】
最終製品100g当たり500mg未満のナトリウムを含むことを特徴とする前記請求項1から11のいずれか一項に記載のビスケット。
【請求項13】
55以下、好ましくは40未満、より好ましくは30未満、さらにより好ましくは25未満、好ましい実施形態においては20未満の血糖指数、および/または60以下、好ましくは40未満、より好ましくは30未満のインスリン分泌指数、ならびにさらにより好ましくはその両方を有することを特徴とする前記請求項1から12のいずれか一項に記載のビスケット。
【請求項14】
25%未満のフルクトースおよび/または25%未満のポリオール、好ましくはその両方を含み、これらのパーセンテージはビスケットの総重量に対して重量換算で表されることを特徴とする前記請求項1から13のいずれか一項に記載のビスケット。
【請求項15】
61から1060分、好ましくは68から370分、より好ましくは80から193分の範囲のt0.8(25℃で得られるプラトー粘度の80%に相当する粘度値V0.8に達するのに必要な水和時間)を有するビスケット。
【請求項16】
25以下、より好ましくは20以下の血糖指数を有することを特徴とするビスケット。
【請求項17】
健康な対象またはインスリン抵抗性もしくは糖尿病、特に2型糖尿病を患っている対象の血糖値調節を促進するため、および/または健康な対象または心血管疾患の恐れのある対象について積極的に血中LDLコレステロール濃度を低下させるため、または正常な血中コレステロール濃度を維持するための、前記請求項1から16のいずれか一項に記載のビスケットの使用。
【請求項18】
満腹感の増大ため、および/または摂食量を減少させるため、および/または体重管理に寄与するための、前記請求項1から16のいずれか一項に記載のビスケットの使用。
【請求項19】
ビスケットマトリックスに添加された場合にビスケットのインスリン分泌指数を低下させるため、および/またはビスケットマトリックスに添加された場合にビスケットの血糖指数を低下させるため、好ましくはその両方のための、0.25から8mmの間の長さ、0.18から2mmの間の幅および1.8から6の間の長さ対幅の平均比を有するグアーガムの使用。
【請求項20】
前記ビスケットマトリックスは、55以下、好ましくは40未満、より好ましくは30未満、さらにより好ましくは25未満、好ましい実施形態においては20未満の血糖指数、および/または60以下、好ましくは40未満、より好ましくは30未満のインスリン分泌指数、ならびにさらにより好ましくはその両方を有することを特徴とする請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記請求項1から20のいずれか一項に記載のビスケットの製造方法であって、
以下のステップ、
(a)前記ビスケットの成分を混合するステップステップであって、好ましくは
(i)最初に粉末状の成分を混合し、
(ii)次に液体成分を添加し、
(iii)場合により、より大きい固形成分、例えば、オート麦フレーク、フルーツドロップ、シリアルクリスプなどを添加する、ステップと、
(b)場合により生地をねかせるステップと、
(c)ビスケットを形成し、得られた形成ビスケットをオーブンでベーキングするステップと、
を含むことを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−506249(P2012−506249A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532656(P2011−532656)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064022
【国際公開番号】WO2010/046492
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(300063895)
【Fターム(参考)】