説明

グラウト注入工法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、瞬結性グラウトおよび緩結性グラウトを用い、あるいはこれらのほか強化用グラウトをも用いて、注入管を段階的にステップアップせつつ各ステップで、瞬結性グラウトの注入と緩結性グラウトの注入とを同時的に行うグラウト注入工法に関する。
【0002】
【従来の技術】固結時間が長い浸透性または緩結性グラウトの注入のほか、昭和50年代になって、固結時間が60秒以下のいわゆる瞬結性グラウトを注入することが行われるようになり、その有効性も確認されている。この場合、瞬結性グラウトは、通常は、水ガラスに対して反応剤を合流混合させて得ており、これを注入することにより、注入管の周りの間隙をパックしてグラウトの地上への流出を防止し、かつ地盤中の主に荒い間隙に注入してその間隙を荒詰めすることを目的としている。この際における注入態様は、通常は、脈状に注入される。
【0003】一方、同時期的に、溶液型の瞬結性グラウトと溶液型の浸透性グラウトとを併用することにより、瞬結性グラウトにより脈状に注入するとともに、この瞬結性グラウトでは注入できない細かい間隙に対して浸透性グラウトを注入する、いわゆる複合注入工法が提案され、その後実用化されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この複合注入工法は、第1工程として、予め瞬結性グラウトを先端または基端側の注入口から周辺地盤に注入した後、その位置で同一の注入口またはそれより先端側の注入口から緩結性グラウトを注入する。
【0005】次いで、第2工程として、先の緩結性グラウトの注入口が、先の瞬結性グラウトによる改良ゾーンより上方に位置するようにステップアップした後、改めて瞬結性グラウトを注入し、続いて緩結性グラウトを注入することを、繰り返す方法を採っている。
【0006】したがって、この複合注入工法では、注入管をステップアップするまでの時間内において、瞬結性グラウトの注入と緩結性グラウトの注入とが行われ、第1工程での改良ゾーンとステップアップした後の第2工程での改良ゾーンとに注入作業が跨がることはないものである。
【0007】しかし、これでは第1工程において、緩結性グラウトの注入が完了した後、ステップアップした上で、先に形成した瞬結性グラウトによる改良ゾーンの上方において、改めて第2工程として、瞬結性グラウトを注入する必要があるので、結果として、ステップアップごとの複合注入となり、能率性が高くない。
【0008】他方、いわゆる「サイマルジョン工法」は、長さ方向に複数の注入口を有する3重注入管を用い、上方の注入口から瞬結性グラウトを、下方の注入口から緩結性グラウトを注入する、いわば同時複合注入工法を提案しており、それなりに有効性を確認されている。
【0009】しかし、瞬結性グラウトによるパッカー効果が未だ十分に発揮していない状態で、緩結性グラウトの注入が行われるので、緩結性グラウトが未発達パッカーを容易に破ってまたはそれによるバリアー抵抗無しに地上または荒い間隙を通って遠くに逸走してしまう。その結果、大量のグラウトが必要になったり、目的の改良効果が得られないことがしばしばある。
【0010】したがって、本発明の主たる課題は、複合注入工法または後述する新規に提案する3相複合注入工法において作業能率を高めることにある。
【0011】第2の課題は、同時複合注入工法との対比の下では、瞬結性グラウトの注入によるパッカー効果を十分発揮させて、良好な地盤改良を行うことにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題は、少なくとも長さ方向に異なる2つの位置において、基端側注入口および先端側注入口を有する注入管を地盤中に挿入し、第1工程として、基端側注入口から固結時間が60秒以下の瞬結性グラウトを注入し、その後、第2工程として、注入管をステップアップして、先の第1工程で注入し固結させた瞬結性グラウトが存する第1パッカーゾーンよりも上方位置に臨む注入管の基端側注入口から瞬結性グラウトを注入するとともに、同時にまたはその後に注入管をステップアップさせることなく、前記第1パッカーゾーンよりも下方位置に臨ませた先端側注入口から、固結時間が前記瞬結性グラウトより長い緩結性グラウトを注入することによって当該第2工程の次の工程で利用する第2パッカーゾーンを形成するように、前記第1パッカーゾーンの上方に瞬結性グラウトを注入するとともに、当該第2工程に先だって形成されている前記第1パッカーゾーンを利用してそのパッカーゾーンの下方に緩結性グラウトを注入し、以降、この第2工程と同様の工程を繰り返し行う、ことで解決できる。
【0013】また、後に詳述する3相複合注入工法の場合には、少なくとも長さ方向に異なる3つの位置において、基端側注入口、先端側注入口およびこれらの間の中間注入口を有する注入管を地盤中に挿入し、第1工程として、基端側注入口から固結時間が60秒以下の瞬結性グラウトを注入するとともに、同時にまたはその後において注入管をステップアップさせることなく、この瞬結性グラウトを注入したゾーンそれより下方の位置に臨む中間注入口から、前記瞬結性グラウトより固結時間が長くかつホモゲル強度が大きい懸濁型の強化用グラウトを注入し、その後、第2工程として、注入管をステップアップして、先の第1工程で注入し固結させた瞬結性グラウトが存する第1パッカーゾーンよりも上方位置に臨む注入管の基端側注入口から瞬結性グラウトを注入するとともに、同時にまたはその後において注入管をステップアップさせることなく、当該第2工程で注入し固結させた瞬結性グラウトが存する第2パッカーゾーンよりも下方であって且つ前記第1パッカーゾーンよりも上方位置に臨む中間注入口から強化グラウトを注入し、同時にまたはその後において注入管をステップアップさせることなく、先の第1工程で注入し固結させた強化グラウトが存する第1強化ゾーンを含む、前記第1パッカーゾーンよりも下方の位置に臨む注入管の先端側注入口から緩結性グラウトを注入することによって当該第2工程の次の工程で利用する第2パッカーゾーンを形成するように、前記第1パッカーゾーンの上方に瞬結性グラウトを注入し、かつその第2パッカーゾーンと前記第1パッカーゾーンとの間の位置に当該第2工程よりも後の工程で利用する第2強化ゾーンを形成するように強化グラウトを注入するとともに、当該第2工程に先だって形成されている前記第1パッカーゾーンを利用してそのパッカーゾーンの下方に緩結性グラウトを注入し、以降、この第2工程と同様の工程を繰り返し行う、ことで解決できる。
【0014】
【作用】本発明では、下方の目的改良ゾーンに対する緩結性グラウトの注入と同時的に、それよりも一段以上ステップアップしたときに緩結性グラウトを注入する予定上方の(次の)目的改良ゾーンにおけるパッカ予定ゾーンに対して瞬結性グラウトを注入するので、注入管を上方にステップアップしたとき、直ちにまたは速やかに上方の改良ゾーンに対する緩結性グラウトの注入を行うことができる。したがって、注入作業時間としてきわめて能率性の高い注入を行うことができる。
【0015】この点を改めて考えてみるに、複合注入工法においては、瞬結性グラウトの液と緩結性グラウトの液の切り換えにかなりの時間を要する。また、瞬結とはいっても瞬結性グラウトのパッカー効果が発現するまでにもある程度の時間を要する。しかるに、本発明によれ、下方の目的改良ゾーンに対する瞬結性グラウトの注入段階から緩結性グラウトの移行段階のまでの間において、上方の目的改良ゾーンに対する瞬結性グラウトの注入プラント側での液の切り換え準備を済ませておくことができる。この段取りが済んだ状態で、下方の緩結性グラウトの注入と同時的に、上方の目的改良ゾーンにおけるパッカ予定ゾーンに対して瞬結性グラウトを注入するのであるから、注入作業時間が大幅に短縮できる。
【0016】しかも、下方の緩結性グラウトの注入が完了し、上方の緩結性グラウトの注入を行うべくステップアップした状態では、上方の瞬結性グラウトの注入によるパッカー効果が十分に発現していることになるので、注入管のステップアップ後、速やかに上方の目的改良ゾーンに対する緩結性グラウトの注入に移行できる。この面でも、注入作業時間が大幅に短縮する。
【0017】一方、主に前述の同時複合注入工法との対比の下では、本発明では上述の構成から当然に、ステップアップした後における緩結性グラウトの注入時点が、ステップアップする前の瞬結性グラウトの注入時点より後となるので、瞬結性グラウトの注入によるパッカー効果が先に十分に発現した状態で、緩結性グラウトを注入することになり、その緩結性グラウトの逸走を防止できる。もって、十分な改良を達成できる。
【0018】他方で、瞬結性グラウトおよび緩結性グラウトのみを用いる従来の代表的な複合グラウトは、一見地盤の改良の理想的な態様と映るが、特に砂礫層を含む透水
【0019】性の高い地盤あるいはきわめて複雑な地盤に対しては、必ずしも有効ではない。すなわち、砂礫層を含む透水性の高い地盤に対して、水ガラス系の溶液型瞬結性グラウトを注入したとしても、その砂礫層の間隙を十分に目詰めすることができず、かつ強度の向上が低い。さらに、改良ゾーンが小さい問題もある。
【0020】また、この状態で、浸透性グラウトを注入したとしても、未だ十分に地盤の荒い間隙が充填されていないので、その浸透性グラウトが逸走することが多く、効率的な改良を望めない。
【0021】したがって、砂礫層を含む透水性の高い地盤などにあっても改良効果が高く、特に改良後の強度が高く、かつ改良径を大きくするためには、地盤中に挿入した注入管を通してその先端部から固結時間が60秒以下の溶液型または懸濁型の瞬結性グラウトを注入した後、その注入位置またはそれより先端側から前記瞬結性グラウトより固結時間が長くかつホモゲル強度が大きい懸濁型の強化用グラウトを注入し、次いでこの強化用グラウトの注入位置またはそれより先端側から前記瞬結性グラウトより固結時間が長い溶液型の浸透性グラウトを注入することが好適である。以下の説明では、3種類のグラウトを用いる点で3相グラウト注入工法ともいう。
【0022】かかる3相グラウト注入工法に対しても、本発明のジャンプステップ注入方式を採用できる。
【0023】
【実施例】以下本発明を図面を参照しながら具体的に詳説する。
(複合グラウト注入工法に関する例)
図1〜図4は本発明法の瞬結性グラウトおよび緩結性グラウトのみを用いる、第1の例、すなわち2相(複合)グラウト注入工法の代表的概念図であり、まず、図1に示すように、削孔ロッドを兼用した注入管1により地盤中を削孔しながら、あるいは図示しないボーリングロッドまたはケーシングロッドにより削孔した孔中に注入管を挿入することにより、所定の深度に注入管1を挿入する。この注入管1の基端側には第1注入口2Aが、それより先端側には第2注入口2Cが形成されている。下端には下方に開口した削孔水吐出口2Dが形成されている。
【0024】次いで、図2に示すように、第1注入口2Aより瞬結性グラウトSを地盤中に注入する。この瞬結性グラウトとしては、固結時間が60秒以下の水ガラス系に代表される溶液型、あるいはセメント系もしくはセメントベントナイト系の懸濁型のものが用いられる。この瞬結性グラウトの注入により、注入管1の周囲の削孔壁との間隙を充填し、かつ地盤の荒い間隙に対して脈状の注入を行い、続くグラウトの地上側への流出を防止するためのパッカー効果と、大きい間隙に対しての荒詰めによる強度の向上とを図る。
【0025】その後、図3に示すように、注入管1を所定長さXステップアップし、基端側の第1注入口2Aから瞬結性グラウトSを注入するとともに、注入管1を移動させることなく、先に注入し固結した瞬結性グラウトSが存する第1パッカーゾーンの前方(下方)の位置に臨ませた先端側の第2注入口2Cから、前記瞬結性グラウトより固結時間が長い溶液型の浸透性に優れた緩結性グラウトLを注入する。
【0026】この溶液型の緩結性グラウトとしては、代表的に水ガラス系のものを用いることができる。この緩結性グラウトLは、材料が溶液型であること、固結時間が長いことによって、地盤中の細かい間隙中に浸透注入される。次いで、図4に示すように、注入管1を再度所定長さXステップアップし、基端側の第1注入口2Aから瞬結性グラウトSを注入するとともに、注入管1を移動させることなく、瞬結性グラウトSの第2パッカーゾーンより下方の位置に臨ませた先端側の第2注入口2Cから、前記瞬結性グラウトより固結時間が長い溶液型の緩結性グラウトLを注入する。この溶液型の緩結性グラウトとしては、代表的に水ガラス系のものを用いることができる。この緩結性グラウトLは、材料が溶液型であること、固結時間が長いことによって、地盤中の細かい間隙中に浸透注入される。以後、これらの注入を繰り返す。
【0027】この場合、ステップアップするまでの同一深さ範囲内では、たとえば図4に示す状態において、緩結性グラウトLの注入時点と、瞬結性グラウトSの注入時点とは、同時であっても、一方が早くてもよい。しかし、図3の状態から図4の状態にステップアップした後における緩結性グラウトLの注入時点は、ステップアップする前の瞬結性グラウトSの注入時点より後であることは必須である。
【0028】なお、最終の緩結性グラウトLの注入時において、その上方の瞬結性グラウトSの注入は必要ではない。また、図2の最深部の状態において、第2注入口2Cから緩結性グラウトLを注入してもよい。この場合は、その後、図3のように、再度緩結性グラウトLを注入してもよいし、この再度注入を省略して、図3の上方に対してのみ瞬結性グラウトSを注入した後、図4に示す状態に移行してもよい。
【0029】(3相グラウト工法に関する例)
一方、図5〜図8は3相グラウト工法の例を示したもので、注入管として、第1注入口2Aと第2注入口2Cとの中間に第3注入口2Bを形成した注入管10を用意し、この注入管10を前述のように地盤中に所定深度まで挿入した後、まず、図5に示すように、第1注入口2Aから瞬結性グラウトSを注入する。
【0030】次いで、この深度で図6に示すように、第3注入口2Bから前記瞬結性グラウトSより固結時間が長くかつホモゲル強度が大きい懸濁型の強化用グラウトRを注入する。この懸濁型のグラウトとしては、セメント系またはセメントベントナイト系のものを用いる。この強化用グラウトRの注入により、地盤中の大きな間隙が荒詰めされ、強度の増大が図られる。このとき、既に瞬結性グラウトSにより、注入口2Bの上方において、注入管10と削孔壁との間隙が充填され、かつ脈状注入が行われパッカーが形成されているために、この強化用グラウトRは地上側に逃げることなく、主に瞬結性グラウトSによる改良ゾーンの下方に注入される。また、一部は先の瞬結性グラウトSの脈状注入部分に入り込み、これを地盤間隙中に押し込み、あるいは注入不十分部分にも入り込み、地盤の強化を図る機能がある。強化用グラウトRは懸濁型であるために、材料コストの低減を図ることができる利点もある。
【0031】しかも、強化用グラウトRは懸濁型のものが用いられるために、単に溶液型の瞬結性グラウトを注入した場合に比較して強度の向上効果が大きい。また、瞬結性グラウトとして、懸濁型のものを用いることもできる。この場合において、瞬結性グラウトであるが故に、これは主に注入管10の近傍にのみ留まって固結されるために、ある程度遠くまで浸透することはない。しかるに、強化用グラウトRとして、固結時間が少なくとも瞬結性グラウトより長いものが用いると、この強化用グラウトRがより遠くまで浸透することとなり、改良径が大きくなる利点もある。
【0032】続いて、図7に示すように、注入管10を所定長さYステップアップして、第2注入口2Cから緩結性グラウトLを注入する。この緩結性グラウトLは、材料が溶液型であること、固結時間が長いことによって、地盤中の細かい間隙中に浸透注入される。また、先に形成された強化用グラウトRによる荒詰め強化ゾーン中にも浸透し、あるいはその強化ゾーンを通ってもしくは破ってさらに遠くにまで達して固結する。このようにして、瞬結性グラウトS、強化用グラウトRおよび緩結性グラウトLの固有の機能が相互に関連して、全体として、きわめて理想的な地盤の強化を図ることができる。
【0033】図7に示されているように、緩結性グラウトLの注入と同時的に、先の瞬結性グラウトSによる改良ゾーンの上方に、瞬結性グラウトSも第1注入口2Aから注入する。続いて、図示していないが、第3注入口2Bから強化用グラウトRも注入する。
【0034】その後、図8のように、再び注入管10をY長さ分ステップアップして、第1段階の瞬結改良ゾーンと第2段階の瞬結改良ゾーンとの間に、第2注入口2Cを位置させて、その第2注入口2Cから緩結性グラウトLを注入する。この緩結性グラウトLの注入と同時的に第3段階の瞬結性グラウトSの注入も行う。以後これらの作業が繰り返される。
【0035】瞬結性グラウトS、強化用グラウトRおよび緩結性グラウトLの注入に際しての注入量比としては、たとえばQ=(S+R+L)としたとき、S=Q×(5〜20%) 、S=Q×(15〜30%) とすることができる。瞬結性グラウトSの固結時間は好ましくは20秒以下である。強化用グラウトRの固結時間は好ましくは30秒〜5分である。緩結性グラウトLの固結時間は3分以上であることが望ましい。
【0036】(注入管の先端装置)
瞬結性グラウトS、強化用グラウトRおよび緩結性グラウトLの注入口の位置としては、少なくとも2種類のグラウトの注入に際して同一の深さ方向位置とすることができるが、望ましくは基部側から先端側にかけて、瞬結性グラウトS、強化用グラウトRおよび緩結性グラウトLの注入口が順に形成されているのがよい。
【0037】瞬結性グラウトS、強化用グラウトRおよび緩結性グラウトLの注入に際しては、注入管1(10)に入る前にもしくはその口元に設けたY字管で、主材と反応材とを合流混合させることの態様のほか、好ましくは注入管1(10)内の流路内での固結に伴う流路の詰まりを防止するために、注入管1(10)内、特にその先端部の管内で合流混合させる。
【0038】この管内合流混合用の先端装置の構造としては、従来公知の、いわゆるLAG工法、DDS工法、MT工法などの瞬結注入工法用の先端装置を転用できるとともに、バイモード工法などの複合注入工法用の先端装置も用いることができる。しかしながら、前述のように、注入口の位置が深さ方向に異なっているもの、そして基本的に管内流路中の材料の付着および固結防止のために流路が異なっているものが好適である。特に、瞬結性グラウトSの注入に際しては、合流混合部まで主材と反応材との流路が独立していることが望ましい。
【0039】この注入管の3相グラウト工法に適用できる第1の例を、図9〜図13に、第2の例を図14〜図1717に示した。まず、第1の例の構造と注入態様を説明すると、注入管の外管11内に案内体12を内装させて4つの流路13、14、15、16を形成したものである。第1流路13は案内体12の中心部を貫通しており、他の第2流路14、第3流路15、第4流路16は案内体12の凹部と外管11との間に形成されたものである。また、外管11の先端部の外壁部分には、前述の注入口2A、2B、2Cが形成され、先端は削孔水Wの吐出口2Dとなっている。さらに、外管1の先端には削孔ビット17が一体化されており、注入管を削孔ロッドとして利用するようになっている。
【0040】さらに、第1流路13の下部には、段部12aをもって外径が拡大したスプール弁室が形成され、このスプール弁室に中間が細径部19aを有する第1スプール弁19が内装されている。この第1スプール弁19の下部に対応して第1連通孔12bが案内体12に形成されており、第2流路14とスプール弁室とを連通している。さらに、第1スプール弁19の上部胴部と下部胴部に対応する位置に連通し、注入口2Aに連通する向流合流混合室12cが形成されている。
【0041】スプール弁室18内において第1スプール弁19の下方には、第2スプール弁20、第3スプール弁21および第4スプール22が順に内装されている。
【0042】円管状の第2スプール弁20には、その側壁に第2連通孔20aが形成されており、その非作動時において第3流路15と連通している。第3スプール弁21は逆有底筒状となっており、その側壁に第3連通孔21aが形成されており、その非作動時において第3流路16と連通しているとともに、上部が注入口2Bと連通する注出孔12dを塞いでいる。第4スプール弁22は円管状となっており、その上部が注入口2Cと連通する注出孔12eを塞いでいる。さらに、外管11の下端部内に上方に突出して逆止弁23が一体化され、第4スプール弁22が下降したとき、その下端開口を閉塞するようになっている。
【0043】このように構成された注入管10を用いて、まず前述の図1に示す削孔、挿入時には、4ポートスイベルのあるポートから、削孔水Wを第4流路16内に供給しながら(図9参照)、注入管10を公知の注入管設置機により周方向に回転させつつ削孔を行う。このとき、削孔水Wは、第4流路16から第3連通孔21aを通って第3スプール弁21内に入り込み、第4スプール弁22内を抜けて、吐出口2Dから吐出し、削孔を助ける。
【0044】次いで、瞬結性グラウトSを注入する場合には、図10に示すように、第1流路13に瞬結性グラウトSの反応材Bを、第2流路14に主材Aを、第1流路13に前述のスイベルを介して供給する。このとき、反応材Bの供給圧力により、第1スプール弁19が下降し、細径部19aが第1連通孔12bに一致する。このとき、第2スプール弁20、第3スプール弁21、および第4スプール弁22も下降する。かかる第1スプール弁19の下降に伴って、反応材Bが向流合流混合室12c(図9参照)内に流入するとともに、主材Aが第1連通孔12bを通って細径部19a(図9参照)の周囲を抜けて同様に向流合流混合室12c内に流入する。これらの流入により、主材Aおよび反応材Bは合流混合室12c内において向流的に合流混合しながら第1注入口2Aから吐出される。
【0045】その後、図11に示すように、第3流路15(図9参照)に強化用グラウトRを供給すると、その供給圧力により第1スプール弁19が上昇されるとともに、第3スプール弁21が下降され、その結果注出孔12dが開口され、強化用グラウトRがその注出孔12dから注入口2Bを通って周辺地盤中に注入される。
【0046】続いて、緩結性グラウトLの注入に際しては、図12に示すように、第4流路16(図9参照)に緩結性グラウトLを供給する。この供給圧力により、第3スプール弁21が上昇し、注出孔12eが開口され、緩結性グラウトLがその注出孔12eから注入口2Cを通って周辺地盤中に注入される。
【0047】他方、図10〜図12に示すように、各グラウトの注入時には、第4スプール弁22が逆止弁23と相対的に嵌合状態にあるので、グラウトの注入管10内への流入が防止される。
【0048】図14〜図17は第2の注入管30の先端装置の例で、外管31内に平行の3本の第1導管32、第2導管33、第3導管34が基部側から延在し、外管30の第1案内体35に連結されている。第1導管32、第2導管33、第3導管34の各内部およびこれらと外管31との間隙は、それぞれ流路となり、合計4つの流路が形成されている。この第1案内体35の下方には、間隔を置いて第2案内体36が設けられ、両者間には第4導管37が連結されている。第2案内体36の下方には間隔を置いて第3案内体38が内装されている。
【0049】第1導管32は第1案内体35に形成された第1流路35Aに連通しており、この第1流路35Aは最終的にリング状の流出口35aに連なっている。第2導管33は第1案内体35に形成された第2流路35Bに連通しており、この第2流路35Bは最終的にリング状の流出口35bに連なっている。一方、これら流出口35aおよび流出口35bの形成部分において、外管31は途切れて第1案内体35により連結されているとともに、上部外管31の下端および下部外管31の上端と第1案内体35の外周との間に、ゴムなどの可撓性材料で形成されたスカート状逆止弁41、42が基部を固定した状態で設けられており、それぞれ流出口35aおよび流出口35bを覆っている。さらに、図示のように、上部外管31の下端および下部外管31の上端の内面は、傾斜して面取りされており、この面取り部31a、31aにより図15に示すように、逆止弁41、42の変形を許容している。
【0050】かくして、たとえば瞬結性グラウトSの主材Aを第1導管32内に供給し、反応材Bを第2導管33に供給したとき、それぞれが流出口35aおよび流出口35bから流出するとき、その供給圧力により図15に示すように、逆止弁41、42を撓ませる。同時に、逆止弁41、42内で囲まれた小空間内において主材Aと反応材Bとが合流混合し、瞬結性グラウトSとして、外管31、31間の環状注入口2Aから周辺地盤中に注入される。
【0051】第3導管34内にはたとえば前述の強化用グラウトRが供給される。この強化用グラウトRは、第1案内体35の第3流路35Cから第4導管37内に抜け、
【0052】第2案内体36に形成された第5流路36Aおよび流出口36aから流出する。このとき、前記構造例と同様に、スカート状逆止弁43を撓ませながら第2注入口2Bから注入される。
【0053】緩結性グラウトLは、第1導管32、第2導管33、第3導管34と外管31との間隙に供給され、第1案内体35に形成された第6流路35Dを通りながら第2案内体36の第7流路36Bを通り、第3案内体38の第8流路38Aに到り、流出口38aから流出する。このとき、前記構造例と同様に、スカート状逆止弁44を撓ませながら第3注入口2Cから地盤中に注入される。
【0054】なお、かかる注入管30を削孔用ロッドとしても用いる場合、第2案内体36と第3案内体38を連結する外管31を、図17に示すように、削孔ビット40を下端に有する外管31’に代えることができる。この場合、削孔水Wまたは緩結性グラウトLは外管31’の下端の開口31’aから注出する。
【0055】ところで、図1〜図4に示す複合グラウト工法の場合には、グラウトの供給系統が2系統でグラウトの注入口が2つであるから、前記の先端装置において、グラウトの供給系統および注入口を一つ減らして先端装置を構成できることが明らかである。したがって、改めて図示しない。
【0056】本発明にいう溶液型グラウトとしては、水ガラス−反応材(硬化材)系、ウレタン系、アクリル系、尿素系などのものを、懸濁型グラウトとしては、セメントベントナイトなどのセメント−粘土系、粘土系、モルタル−セメントミルク系などの本来の懸濁型のもののほか、半懸濁型と分類できる水ガラス−セメント系、水ガラス−セメント−粘土系、水ガラス−粘土−反応材系などを含んでいう。水ガラスの反応材としては、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、硫酸バンド、アルミン酸ナトリウム、消石灰、硫酸銅、硫酸、重炭酸ナトリウム、ケイ弗化ナトリウム、グリオキザールなどの各種アルカリ、酸、アルコール、金属塩などを適宜選択できる。固結時間の調整には、反応材の量や、pH、材料の選択などによって行うことができる。
【0057】
【発明の効果】以上の通り、本発明によれば、複合注入工法または3相グラウト注入工法において作業能率を高めることができる。また、同時複合注入工法との対比の下では、瞬結性グラウトの注入によるパッカー効果を十分発揮させて、良好な地盤改良を行うことができるなどの利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合注入工法の代表例の概念的説明のための第1工程図である。
【図2】第2工程図である。
【図3】第3工程図である。
【図4】第4工程図である。
【図5】本発明の3相グラウト注入工法の場合の代表例の概念的説明のための第1工程図である。
【図6】その第2工程図である。
【図7】第3工程図である。
【図8】第4工程図である。
【図9】用いる注入管の先端装置の第1例の第1段階作動状態縦断面図である。
【図10】第2段階作動状態縦断面図である。
【図11】第3段階作動状態縦断面図である。
【図12】第4段階作動状態縦断面図である。
【図13】13−13線矢視図である。
【図14】用いる注入管の先端装置の第2例の縦断面図である。
【図15】瞬結性グラウトの注入状態要部縦断面図である。
【図16】16−16矢視図である。
【図17】先端外管の代替例の要部縦断面図である。
【符号の説明】
1…注入管、2A、2B、2C…注入口、10、30…注入管、S…瞬結性グラウト、R…強化用グラウト、L…緩結性グラウト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも長さ方向に異なる2つの位置において、基端側注入口および先端側注入口を有する注入管を地盤中に挿入し、第1工程として、基端側注入口から固結時間が60秒以下の瞬結性グラウトを注入し、その後、第2工程として、注入管をステップアップして、先の第1工程で注入し固結させた瞬結性グラウトが存する第1パッカーゾーンよりも上方位置に臨む注入管基端側注入口から瞬結性グラウトを注入するとともに、同時にまたはその後に注入管をステップアップさせることなく、前記第1パッカーゾーンよりも下方位置に臨ませた先端側注入口から、固結時間が前記瞬結性グラウトより長い緩結性グラウトを注入することによって当該第2工程の次の工程で利用する第2パッカーゾーンを形成するように、前記第1パッカーゾーンの上方に瞬結性グラウトを注入するとともに、当該第2工程に先だって形成されている前記第1パッカーゾーンを利用してそのパッカーゾーンの下方に緩結性グラウトを注入し、以降、この第2工程と同様の工程を繰り返し行う、ことを特徴とするグラウト注入工法。
【請求項2】少なくとも長さ方向に異なる3つの位置において、基端側注入口、先端側注入口およびこれらの間の中間注入口を有する注入管を地盤中に挿入し、第1工程として、基端側注入口から固結時間が60秒以下の瞬結性グラウトを注入するとともに、同時にまたはその後において注入管をステップアップさせることなく、この瞬結性グラウトを注入したゾーンそれより下方の位置に臨む中間注入口から、前記瞬結性グラウトより固結時間が長くかつホモゲル強度が大きい懸濁型の強化用グラウトを注入し、その後、第2工程として、注入管をステップアップして、先の第1工程で注入し固結させた瞬結性グラウトが存する第1パッカーゾーンよりも上方位置に臨む注入管基端側注入口から瞬結性グラウトを注入するとともに、同時にまたはその後において注入管をステップアッさせることなく、当該第2工程で注入し固結させた瞬結性グラウトが存する第2パッカーゾーンよりも下方であって且つ前記第1パッカーゾーンよりも上方位置に臨中間注入口から強化グラウトを注入し、同時にまたはその後において注入管をステップアップさせることなく、先の第1工程で注入し固結させた強化グラウトが存する第1強化ゾーンを含む、前記第1パッカーゾーンよりも下方の位置に臨む注入管の先端側注入口から緩結性グラウトを注入することによって当該第2工程の次の工程で利用する第2パッカーゾーンを形成するように、前記第1パッカーゾーンの上方に瞬結性グラウトを注入し、かつその第2パッカーゾーンと前記第1パッカーゾーンとの間の位置に当該第2工程よりも後の工程で利用する第2強化ゾーンを形成するように強化グラウトを注入するとともに、当該第2工程に先だって形成されている前記第1パッカーゾーンを利用してそのパッカーゾーンの下方に緩結性グラウトを注入し、以降、この第2工程と同様の工程を繰り返し行う、ことを特徴とするグラウト注入工法。

【図1】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【特許番号】第2937606号
【登録日】平成11年(1999)6月11日
【発行日】平成11年(1999)8月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−50844
【出願日】平成4年(1992)3月9日
【公開番号】特開平5−247926
【公開日】平成5年(1993)9月24日
【審査請求日】平成10年(1998)10月23日
【出願人】(000199337)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【出願人】(000149206)株式会社大阪防水建設社 (44)
【出願人】(592051693)柏山工業株式会社 (1)
【参考文献】
【文献】特開 平4−14514(JP,A)