グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法
【課題】本発明は、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法に関するものである。
【解決手段】本発明のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法は、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する金属基材を提供する第一ステップと、前記金属基材の第一表面にグラフェン構造体を成長させる第二ステップと、自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体を提供して、前記グラフェン構造体の、前記基材に隣接する表面とは反対の表面に前記カーボンナノチューブ構造体を隣接させ、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第三ステップと、前記基材の少なくとも一部を除去し、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第四ステップと、を含む。
【解決手段】本発明のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法は、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する金属基材を提供する第一ステップと、前記金属基材の第一表面にグラフェン構造体を成長させる第二ステップと、自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体を提供して、前記グラフェン構造体の、前記基材に隣接する表面とは反対の表面に前記カーボンナノチューブ構造体を隣接させ、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第三ステップと、前記基材の少なくとも一部を除去し、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第四ステップと、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラフェンとは、六角形に並び網目状の面構造をした炭素原子が、層状に集まった結晶のことであり、優れた電気的特性及び熱的性質を有する。室温でその電子移動度が15000cm2V−1s−1であり、最大の熱伝導率が3000Wm−1K−1である(非特許文献1を参照)。カーボンナノチューブとは、基本的には一様な平面のグラファイトを丸めて円筒状にしたような構造体である。その長さが、数マイクロメートルから数ミリメートルであり、その直径が数ナノメートルから数十ナノメートルである。カーボンナノチューブとは、典型的な一次元ナノ材料であり、優れた機械的、電気的および化学的特性を有する。グラフェン及びカーボンナノチューブは、膜状構造体を形成することができる。
【0003】
しかしながら、グラフェン又はカーボンナノチューブのみからなる膜状構造体には、欠点が存在する。グラフェンは、高い導電性を有するが、グラフェンでグラフェン膜状構造体を製造する場合、その層数を精確に制御することができない。且つグラフェン膜状構造体における複数のフィルムのサイズ及び形状は異なる。グラフェン膜状構造体を製造する工程において、グラフェン膜状構造体における複数のフィルムは、相互に積層するかまたは脱離する現象がある。これにより、前記グラフェン膜状構造体の光透過性が低下し、その表面抵抗が増加する。カーボンナノチューブ膜状構造体は、複数のカーボンナノチューブからなるネットワーク構造体である。前記複数のカーボンナノチューブの間に間隙があるので、前記カーボンナノチューブ膜状構造体の光透過性が増加するが、その導電性が低下する。グラフェンとカーボンナノチューブとの構造及び性能は、相補性を有するので、グラフェン及びカーボンナノチューブからなる複合体の研究は、発展する傾向にある。
【0004】
グラフェン及びカーボンナノチューブからなる複合体の製造方法は、液相法でグラフェン断片及びカーボンナノチューブ粉末を、分散溶液の中で超音波処理して、グラフェン−カーボンナノチューブネットワーク構造体を形成する第一ステップと、複数のポリマー微粒子を前記分散溶液の中に添加して、超音波処理して、前記複数のポリマー微粒子の表面にグラフェン−カーボンナノチューブネットワーク構造体が被覆されて、混合物を形成する第二ステップと、前記溶液を除去した後、前記混合物を金型中に置いて熱および圧力を与え、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第三ステップと、を含むことは、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第101734650号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2008248235号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K.S.Novoselov,et al.Electric field effect in atomically thin carbon films.Science,2004,306(5696):666−669
【非特許文献2】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記方法で形成されたグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体は、グラフェンシートを含まず、複数のグラフェン断片で分散しているので、その強靭性及び導電性が低下する。前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体において、前記複数のカーボンナノチューブは、ランダムに分散しているので、該グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の光透過性を低下させる。
【0008】
従って、前記課題を解決するために、本発明はグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法を提供する。該製造方法によって得られたグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の光透過性及び導電性を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法は、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する金属基材を提供する第一ステップと、前記金属基材の第一表面にグラフェン構造体を成長させる第二ステップと、自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体を提供して、前記グラフェン構造体の、前記金属基材に隣接する表面とは反対の表面に前記カーボンナノチューブ構造体を隣接させて、前記グラフェン構造体を前記金属基材と前記カーボンナノチューブ構造体との間に設置して、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第三ステップと、前記金属基材の少なくとも一部を除去し、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第四ステップと、を含む。
【0010】
本発明のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法は、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する金属基材を提供する第一ステップと、前記金属基材の第一表面にグラフェン構造体を成長させる第二ステップと、自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体を提供して、前記グラフェン構造体の、前記金属基材に隣接する表面とは反対の表面に前記カーボンナノチューブ構造体を隣接させて、前記グラフェン構造体を前記金属基材と前記カーボンナノチューブ構造体との間に設置して、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第三ステップと、高分子材料層を前記カーボンナノチューブ構造体の、前記グラフェン構造体に隣接する表面とは反対の表面に被覆して、前記基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体と結合する第四ステップと、エッチングによって、前記金属基材をパターニングする第五ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
従来の技術と比べて、本発明のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法は、次の優れた点がある。第一に、金属基材の第一表面にグラフェン構造体を成長させるので、大面積を有するグラフェン構造体が得られる。第二に、エッチングによって、金属基材をパターニングするので、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の応用範囲が広くなる。第三に、本発明の製造方法を採用して形成したグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体は、優れた導電性、強靭性及び光透過性を有するグラフェン構造体及びカーボンナノチューブ構造体を含むので、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体は、優れた導電性、強靭性及び光透過性を有する。したがって、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を、タッチパネルまたは液晶表示装置に用いることができる。第四に、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体におけるグラフェン構造体及び前記カーボンナノチューブ構造体は、単位面積あたりの熱容量が小さく、放熱面積が大きいので、該グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を、音波発生器として熱音響装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程のフローチャートである。
【図2】本発明の実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程の各段階を示す図である。
【図3】実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体におけるグラフェン構造体の構造を示す図である。
【図4】実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体におけるカーボンナノチューブ構造体の構造を示す図である。
【図5】実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体におけるカーボンナノチューブ構造体の製造工程の一部を示す図である。
【図6】実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体におけるドローン構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】図6中のカーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図8】本発明の実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体において、少なくとも二枚の積層されたカーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブ構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明の実施例1に係る有機溶液で処理されたカーボンナノチューブ構造体の構造を示す図である。
【図10】本発明の実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体において、レーザーで処理されたカーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブ構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】本発明の実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体において、アルコールで処理されたカーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブ構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の構造を示す図である。
【図13】本発明の実施例2に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程のフローチャートである。
【図14】本発明の実施例2に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程の各段階を示す図である。
【図15】実施例2に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程における熱圧工程を示す図である。
【図16】実施例3に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の構造を示す図である。
【図17】本発明の実施例4に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程のフローチャートである。
【図18】本発明の実施例4に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程の各段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0014】
(実施例1)
図1及び図2を参照すると、本実施例のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体10の製造方法は、第一表面102及び該第一表面102に対向する第二表面104を有する金属基材100を提供するステップS11と、前記金属基材100の第一表面102にグラフェン構造体110を成長させるステップS12と、自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体14を提供して、前記グラフェン構造体110の、前記金属基材100に隣接する表面とは反対の表面に前記カーボンナノチューブ構造体14を隣接させて、前記グラフェン構造体110を前記金属基材100と前記カーボンナノチューブ構造体14との間に設置して、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成するステップS13と、前記金属基材の少なくとも一部を除去し、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成するステップS14と、を含む。
【0015】
前記ステップS11において、前記金属基材100は、一定の厚さを有する。前記金属基材100は、銅、ニッケルなどのような金属薄膜からなる。前記金属基材100の厚さは、100nm〜100μmであり、その寸法は制限されず、実際の応用に応じて選択することができる。例えば、反応炉の寸法によって、前記金属基材100の寸法を選択する。または、前記金属基材100を巻いて、反応炉内に置いて、前記反応炉のスペースの利用率を向上させ、グラフェン構造体110の寸法を増加させることも可能である。本実施例において、前記金属基材100は銅箔からなり、その厚さは25μmである。
【0016】
前記ステップS12において、化学気相成長法で前記金属基材100の第一表面102にグラフェン構造体110を成長させる。図2を参照すると、その製造方法は、前記金属基材100を反応室に置いて、前記金属基材100の第一表面102を高温処理するステップaと、前記反応室に炭素源ガスを導入し、前記金属基材100の第一表面102に前記グラフェン構造体110を成長させるステップbと、前記金属基材100を室温まで冷却した後、前記グラフェン構造体110が成長された前記金属基材100を前記反応室から取り出すステップcと、を含む。
【0017】
前記ステップaにおいて、前記反応室は、進気口及び排気口を有する密封チャンバーである。前記進気口から水素ガス及びメタンガスを導入することができる。前記排気口は、空気抽出装置と連通する。前記排気口によって、前記空気抽出装置は、前記反応室の真空度及び気圧を制御することができる。更に、前記反応室における前記金属基材100の温度を制御するために、前記反応室は、水冷裝置を含むこともできる。本実施例において、前記反応室は、石英管である。
【0018】
前記金属基材100の第一表面102を平らにするために、高温処理することができる。これにより、前記グラフェン構造体110の成長に役立つことができる。前記高温処理方法は、前記金属基材100を真空反応室に置くと同時に、前記進気口から該反応室に流量が2sccm〜35sccmの水素ガスを導入するステップa1と、前記反応室の温度を上昇させて、前記金属基材100の第一表面102を一時間高温処理するステップa2と、を含む。
【0019】
前記ステップa1において、前記水素ガスの流量は2sccmである。
【0020】
前記ステップa2において、前記反応室の温度は、800℃〜1500℃であり、その気圧は、10−1〜102Paである。本実施例において、前記反応室の気圧が13.3Paであり、その温度が1000℃であり、その昇温時間が40分であり、その温度保持時間が、20分である。
【0021】
前記ステップbにおいて、前記反応室に流量が2sccmの水素ガスを連続的に導入すると同時に、高温環境下で炭素源ガスを導入することによって、前記金属基材100の第一表面102に炭素原子が堆積して前記グラフェン構造体110が形成される。前記水素ガスと前記炭素源ガスとの導入量の比が、45:2〜15:2である。前記炭素源ガスは、メタン、エタン、エチレンまたはアセチレンである。前記反応室の温度は、800℃〜1500℃であり、その気圧は、10−1〜102Paである。その温度は、1000℃であり、温度保持時間は、10〜60分である。本実施例において、前記炭素源ガスは、流量が2sccmのメタンである。前記反応室の気圧が66.5Paであり、その温度が、1000℃であり、その温度保持時間が、30分である。
【0022】
前記ステップcにおいて、前記炭素源ガス及び水素ガスの流量が変わらないように、前記反応室に連続的に導入すると同時に、前記金属基材100を室温まで冷却する。本実施例において、前記金属基材100を冷却する工程において、前記反応室に流量が25sccmのメタンガス及び流量が2sccmの水素ガスを導入する。前記反応室の気圧は66.5Paで前記金属基材100を1時間冷却した後、前記反応室から取り出し、前記金属基材100の第一表面102に前記グラフェン構造体110を形成する。
【0023】
本実施例において、化学気相成長法で前記グラフェン構造体110を成長させる。前記金属基材100の寸法によって、前記グラフェン構造体110の寸法を調整する。本実施例において、前記グラフェン構造体110は、一定の面積を有する二次元の一体構造体である。ここで、一体構造体とは、前記グラフェン構造体110は、平面上で連続性を有するものである。前記グラフェン構造体110は、1〜5層のグラフェンからなるが、1層のグラフェンからなることが好ましい。前記グラフェン構造体110の厚さは、0.34nm〜10nmである。前記グラフェン構造体110は、複数のグラフェンシートからなる場合、前記複数のグラフェンシートは、並列して接続して、大きな面積のグラフェン構造体110を形成し、または、重ね合わせて、積層されたグラフェン構造体110を形成する。図3を参照すると、前記グラフェン構造体110におけるグラフェンは、1原子の厚さのsp2結合炭素原子のシートであり、炭素原子とその結合からできた蜂の巣のような六角形格子構造をとっている。単層のグラフェンの透光率は、97.7%に達するので、該単層グラフェンからなるグラフェン構造体110は、良好な透光性を有する。前記グラフェン構造体110は、非常に薄いので、その熱容量が小さい。例えば、単層グラフェンの熱容量は、5.57×10−4J/K・molである。前記グラフェン構造体110は、自立構造を有するものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記グラフェン構造体110を独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、前記グラフェン構造体110を対向する両側から支持して、前記グラフェン構造体110の構造を変化させずに、前記グラフェン構造体110を懸架させることができることを意味する。前記グラフェン構造体110の寸法は、1cm以上である。ここで、前記グラフェン構造体110の寸法は、前記グラフェン構造体110の一点から他点までの距離が最大となる時の距離である。前記グラフェン構造体110の正投影の面積は、1cm2以上である。前記グラフェン構造体110の寸法は、実際の応用に応じて選択する。本実施例において、前記グラフェン構造体110は、単層のグラフェンからなり、その形状は、辺長が4cmの正方形である。
【0024】
前記ステップS13において、前記カーボンナノチューブ構造体14は一枚または複数枚の積層されたカーボンナノチューブフィルム140を含むことができる。図4を参照すると、前記カーボンナノチューブ構造体14は、積層された複数のカーボンナノチューブフィルム140を含む場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム140は、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム140におけるカーボンナノチューブは、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。本実施例において、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム140におけるカーボンナノチューブ同士は、90°で交差している。
【0025】
図5を参照すると、本実施例において、前記カーボンナノチューブフィルム140は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)である。前記カーボンナノチューブフィルム140の製造方法は、超配列カーボンナノチューブアレイ146(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献2を参照)を提供するステップa11と、前記カーボンナノチューブアレイ146から、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばして、前記カーボンナノチューブフィルム140を得るステップa12と、を含む。
【0026】
前記テップa11において、前記超配列カーボンナノチューブアレイ146の製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該カーボンナノチューブアレイ146は、互いに平行し、基材に垂直に成長した複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合っている。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブであり、その直径は0.5nm〜50nmに設定される。本実施例において、前記カーボンナノチューブの長さは、100〜900μmである。
【0027】
前記ステップa12において、前記カーボンナノチューブフィルム140は、複数のカーボンナノチューブからなり、隣接する前記カーボンナノチューブの間に間隙がある。前記カーボンナノチューブフィルム140において、前記複数のカーボンナノチューブは、それぞれ前記複数のカーボンナノチューブフィルム140の表面に平行するように配列され、かつ相互に平行に配列されている。前記カーボンナノチューブフィルム140の引き伸ばす工程は、前記超配列カーボンナノチューブアレイ146における一定の幅を有するカーボンナノチューブセグメント142を選択するサブステップa121と、所定の速度で前記カーボンナノチューブセグメント142を引き出し、複数のカーボンナノチューブセグメント142からなる連続のカーボンナノチューブフィルム140を形成するサブステップa122と、を含む。
【0028】
前記サブステップa121において、接着テープ、プライヤー、ピンセットなどの工具を利用して、前記超配列カーボンナノチューブアレイ146から前記一定の幅を有するカーボンナノチューブセグメント142を選択する。前記カーボンナノチューブセグメント142は複数の相互に平行に配列されているカーボンナノチューブを含む。前記サブテップa122において、任意の方向に沿って、前記カーボンナノチューブセグメントを引き出すことができる。
【0029】
具体的に、前記複数のカーボンナノチューブセグメント142を引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブセグメント142がそれぞれ基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブセグメント142が端と端で接合され、連続のカーボンナノチューブフィルム140が形成される。前記カーボンナノチューブフィルム140は、自立構造を有するものである。該カーボンナノチューブフィルム140は一定の幅を有して、均一に配列されている。前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、特許文献2に掲載されている。
【0030】
図6に示すように、前記カーボンナノチューブフィルムはドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)143aである。前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されている。即ち、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で長軸方向端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。図6及び図7を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長手方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さは同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aの幅、厚さ、均一性及び形状は変更することができる。
【0031】
前記カーボンナノチューブ構造体14は、少なくとも二枚の積層された前記カーボンナノチューブフィルム140からなる場合、その製造方法は、一枚のカーボンナノチューブ140(ここで、第一カーボンナノチューブフィルムと定義される)の少なくとも二つの辺部を一つのフレーム(図示せず)に固定して、該第一カーボンナノチューブフィルムの他の部分を懸架させるステップa131と、もう一枚のカーボンナノチューブフィルム140(ここで、第二カーボンナノチューブフィルムと定義される)を前記第一カーボンナノチューブフィルム140に被覆させるステップa132と、を含む。前記第一カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが第一方向に沿って配列している。前記第二カーボンナノチューブフィルム140におけるカーボンナノチューブが第二方向に沿って配列している。且つ前記第一方向と前記第二方向とは0°〜90°で交差する。前記の製造方法によって、積層された複数のカーボンナノチューブフィルム140からなる前記カーボンナノチューブ構造体14が前記フレームに固定される。各々の前記カーボンナノチューブフィルム140におけるカーボンナノチューブは、異なる方向に沿って配列していることができる。前記カーボンナノチューブ構造体14は自立構造体である。
【0032】
図8を参照すると、前記カーボンナノチューブフィルム140は大きな比表面積を有するので高い接着性を有し、前記積層された複数のカーボンナノチューブフィルム140は、分子間力で相互に緊密に結合され、安定なカーボンナノチューブ構造体14を形成することができる。前記カーボンナノチューブ構造体14における前記カーボンナノチューブフィルム140の枚数は制限されない。本実施例において、前記カーボンナノチューブフィルムの枚数は2〜4枚であり、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム140におけるカーボンナノチューブは90°で交差する。
【0033】
更に、前記カーボンナノチューブ構造体14を有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブ構造体14の複数の微孔148を広げ、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム140を緊密に結合させる。前記有機溶剤は、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムなどのいずれか一種の揮発性有機溶剤である。本実施例において、前記有機溶剤は、エタノールである。該有機溶剤は、前記カーボンナノチューブ構造体14に対して良好な濡れ性を有する。具体的には、ドロッパーで有機溶剤を前記カーボンナノチューブ構造体14の表面に滴下し、該有機溶剤で前記カーボンナノチューブ構造体14を浸漬させる。又は、全て前記カーボンナノチューブ構造体14を有機溶剤の中に入れて浸漬させる。図9を参照すると、前記カーボンナノチューブ構造体14は少なくとも二枚の積層されたドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなる場合、前記有機溶剤で処理することにより、前記有機溶剤の表面張力によって、隣接する配列されたカーボンナノチューブの間の間隙がなくなり、前記複数のカーボンナノチューブは複数の間隔で分散された帯状カーボンナノチューブ構造体144に形成される。これにより、前記カーボンナノチューブ構造体14における複数の微孔148の寸法が大きくなる。前記カーボンナノチューブ構造体14における微孔148の寸法は、10μm〜1000μmであり、200μm〜600μmであることが好ましい。本実施例において、前記複数の帯状カーボンナノチューブ構造体144は、90°の角度で相互に交差している。前記カーボンナノチューブ構造体14を有機溶剤によって処理することにより、その接着性を低くさせることができる。前記カーボンナノチューブ構造体14における前記カーボンナノチューブフィルム140の枚数が多くなるほど、前記カーボンナノチューブ構造体14における微孔148の寸法はより小さくなる。従って、前記カーボンナノチューブ構造体14における前記カーボンナノチューブフィルムの枚数を調整することによって、要望の寸法の微孔148を得ることができる。
【0034】
更に、前記カーボンナノチューブ構造体100は、レーザーで処理された、少なくとも二枚の積層されたカーボンナノチューブフィルム106からなることもできる。前記カーボンナノチューブフィルム140をレーザによって処理することにより、該カーボンナノチューブフィルム140は、複数の間隔で分散された帯状カーボンナノチューブ構造体144に形成される。隣接する配列された前記帯状カーボンナノチューブ構造体144の間の間隙がある。前記レーザによって処理されたカーボンナノチューブフィルム140は、相互に積み重ねて、有機溶剤で処理した後、図10及び図11に示すような大きな微孔を有する前記カーボンナノチューブ構造体に形成される。詳しくは、レーザーによって処理したカーボンナノチューブ構造体の形成方法は、前記カーボンナノチューブアレイ146から、前記カーボンナノチューブフィルム140を引き伸ばするステップa141、前記カーボンナノチューブフィルム140を一つの支持体に固定するステップa142と、レーザーによって、前記カーボンナノチューブフィルム140における複数のカーボンナノチューブの配列方向に沿って、該カーボンナノチューブフィルム140を焼灼して、前記カーボンナノチューブフィルム140において、複数の間隔で分散された帯状カーボンナノチューブ構造体144を形成するステップa143と、少なくとも二つのレーザーによって処理された前記カーボンナノチューブフィルム140を、相互に積み重ねて、有機溶剤で処理した後、前記カーボンナノチューブ構造体14を形成するステップa144と、を含む。
【0035】
前記ステップa143において、レーザーのパワー、波長及びその移動速度を制御することによって、前記カーボンナノチューブフィルム140の一部を焼灼した後、該カーボンナノチューブフィルム140には、複数のカーボンナノチューブ帯状構造体144を形成することができる。
【0036】
前記ステップS13において、前記カーボンナノチューブフィルム140は、良好な接着性を有するので、複数の前記カーボンナノチューブフィルムを積層して設けられ、前記カーボンナノチューブ構造体14が形成される。この場合、前記カーボンナノチューブ構造体14は、直接前記グラフェン構造体110の、前記金属基材100に隣接する表面とは反対の表面に積層させることができる。具体的に、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブ構造体14を、前記グラフェン構造体110の、前記金属基材100に隣接する表面とは反対の表面に直接隣接させた後、有機溶液で前記カーボンナノチューブ構造体14を処理することにより、前記カーボンナノチューブ構造体14において、隣接する配列されたカーボンナノチューブの間の間隙がなくなり、前記複数のカーボンナノチューブは複数の間隔で分散された帯状カーボンナノチューブ構造体144に形成される。これにより、前記カーボンナノチューブ構造体14に複数の微孔148が形成される。
【0037】
前記ステップS13において、前記カーボンナノチューブ構造体14を前記グラフェン構造体110の、前記金属基材100に隣接する表面とは反対の表面に隣接させた後、機械力で前記カーボンナノチューブ構造体14及び前記金属基材100に成長されたグラフェン構造体110をプレスして、緊密に結合させる。この場合、グラフェン構造体110の、前記金属基材100に隣接する表面とは反対の表面に高分子材料層(図示せず)を被覆して、該高分子材料層が完全に固化していない状態で、前記カーボンナノチューブ構造体14を該高分子材料層の、前記グラフェン構造体110に隣接する表面とは反対の表面に接着する。これにより、前記カーボンナノチューブ構造体14と前記グラフェン構造体110との接着性を高めることができる。
【0038】
前記高分子材料層は、溶融状態の高分子材料又は高分子材料溶液からなる。前記高分子材料溶液は、高分子材料を揮発性有機溶液に溶解して形成される。前記溶融状態の高分子材料又は高分子材料溶液は一定の接着性を有し、好ましくは、その接着性が1Pa・s以上である。常温で前記高分子材料は一定の透明度を有する固体である。前記揮発性有機溶液は、アルコール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムの一種又は複数種である。前記高分子材料は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、テレフタレート、スチレン−シクロブテン又は環状オレフィンポリマーなどの材料である。本実施例において、前記高分子材料は、ポリメチルメタクリレートである。
【0039】
前記ステップS14において、前記金属基材100の少なくとも一部を除去する方法は、前記金属基材100の第二表面104に複数の帯状の溝124を有する犠牲層120を形成するステップS131と、複数の帯状の溝124に対応する前記金属基材100の部分をエッチングし、前記グラフェン構造体110の一部を露出させるステップS132と、前記複数の帯状の溝124を含む犠牲層120を除去するステップS133と、を含む。
【0040】
前記ステップS131において、前記金属基材100の第二表面104に犠牲層120を形成した後、エッチング方法で前記犠牲層120の一部をエッチングして、複数の帯状の溝124を有する犠牲層120を形成することができる。前記犠牲層120は、ポリマーからなる。前記ポリマーは、ポリメタクリル酸メチル、エポキシ、不飽和ポリエステル、シリコンエーテル樹脂などの熱硬化性樹脂である。
【0041】
前記ステップS132において、エッチング方法によって、前記金属基材100は複数の帯状電極106を形成する。前記複数の帯状電極106は、前記グラフェン構造体110に電気的に接続されている。
【0042】
前記エッチング方法は、ドライエッチングまたはウェットエッチングである。本実施例において、ドライエッチングを採用する。詳しくは、前記犠牲層120が被覆された金属基材100を誘導結合プラズマシステムに置いて、酸素ガス及び塩素ガスをエッチングガスとして、前記複数の帯状の溝124に対応する前記金属基材100の一部をエッチングすることにより、前記グラフェン構造体110の一部を露出させる。本実施例において、前記誘導結合プラズマシステムの電力は50ワットである。流量が24sccmの塩素ガス及び流量が24sccmの塩素ガスを前記誘導結合プラズマシステムに導入する。前記誘導結合プラズマシステムの気圧は、2Pa〜10Paである。前記金属基材100の第二表面104を40秒〜55秒間エッチングする。
【0043】
前記金属基材100は、銅箔である場合、ウェットエッチングで該銅箔をエッチングする。詳しくは、前記金属基材100を濃度が0.06mol/L〜0.25mol/Lの一定量の塩化第三鉄溶液の中に4分〜15分間浸漬した後、前記複数の帯状の溝124に対応する前記金属基材100の部分は前記犠牲層120で保護されないので、前記塩化第三鉄溶液で除去され、前記グラフェン構造体110の一部を露出させる。
【0044】
前記ステップS133において、有機溶液で前記犠牲層120を除去する。本実施例において、有機溶液は、アセトンである。
【0045】
図12を参照すると、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体10は、カーボンナノチューブ構造体14と、グラフェン構造体110と、複数の帯状電極106と、を含む。前記複数の帯状電極106は、相互に平行して配列されて前記グラフェン構造体110の一つの表面に設置され、該グラフェン構造体110に電気的に接続されている。。前記カーボンナノチューブ構造体14は、前記グラフェン構造体110の、前記複数の帯状電極106に隣接する表面とは反対の表面に被覆されている。前記複数の帯状電極106は、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体10を保護することができる。前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体10は、タッチパネルに用いることができる。前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体10におけるグラフェン構造体110及び前記カーボンナノチューブ構造体14は、単位面積あたりの熱容量が小さく、放熱面積が大きいので、該グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体10を、音波発生器として熱音響装置に用いることができる。
【0046】
(実施例2)
図13及び図14を参照すると、本実施例のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体20の製造方法は、第一表面202及び該第一表面202に対向する第二表面204を有する金属基材200を提供するステップS21と、前記金属基材200の第一表面202にグラフェン構造体210を成長させるステップS22と、自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体24を提供して、前記グラフェン構造体210の、前記金属基材200に隣接する表面とは反対の表面に前記カーボンナノチューブ構造体24を隣接させて、前記グラフェン構造体210を前記金属基材200と前記カーボンナノチューブ構造体24との間に設置して、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成するステップS23と、高分子材料層230を前記カーボンナノチューブ構造体24の、前記グラフェン構造体210隣接する表面とは反対の表面に被覆して、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ−高分子材料複合構造体に形成するステップS24と、エッチングによって、前記金属基材200をパターニングするステップS25と、を含む。実施例1と比べると、本実施例において、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体20の製造方法の異なる点は、前記ステップS24において、前記カーボンナノチューブ構造体24の、前記グラフェン構造体210に隣接する表面とは反対の表面に高分子材料層230を被覆することである。
【0047】
前記ステップS24は、前記高分子材料層230を直接前記カーボンナノチューブ構造体24の、前記グラフェン構造体210に隣接する表面とは反対の表面に被覆するサブステップS241と、熱圧法によって、前記カーボンナノチューブ構造体24と、前記高分子材料層230と、前記グラフェン構造体210と、を結合させて、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ−高分子材料複合構造体に形成するサブステップS242と、を含む。
【0048】
前記高分子材料層は、溶融状態の高分子材料又は高分子材料溶液からなる。前記高分子材料溶液は、高分子材料を揮発性有機溶液に溶解して形成される。前記溶融状態の高分子材料又は高分子材料溶液は一定の接着性を有し、好ましくは、その接着性が1Pa・s以上である。常温で前記高分子材料は一定の透明度を有する固体である。前記揮発性有機溶液は、アルコール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムの一種又は複数種である。前記高分子材料は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、テレフタレート、スチレン−シクロブテン又は環状オレフィンポリマーなどの材料である。本実施例において、前記高分子材料は、ポリメチルメタクリレートである。前記高分子材料の溶液を直接前記カーボンナノチューブ24構造体の、前記グラフェン構造体210隣接する表面とは反対の表面に被覆することができる。
【0049】
熱圧法又は冷圧法の方法によって、機械力を加えることにより、前記カーボンナノチューブ構造体24及び前記金属基材200に成長されたグラフェン構造体210と、を緊密に結合させることができる。本実施例において、熱圧法を採用する。図15を参照すると、該熱圧法は、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ−高分子材料複合構造体を、加圧装置52を有する熱圧装置50の中に設置するステップb1と、前記加圧装置52を加熱するステップb2と、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ−高分子材料複合構造体を、均一な速度で前記加熱された加圧装置52を通過させると同時に、前記加圧装置52に所定の圧力を印加して、前記カーボンナノチューブ構造体24及び前記金属基材200に成長されたグラフェン構造体210と、を緊密に結合させるステップb3と、を含む。
【0050】
前記ステップb1において、前記グラフェン構造体210と、前記金属基材200の第一表面202と、を同時に接触させる。前記熱圧装置50は、加圧装置52と、加熱装置(図示せず)と、を含む。本実施例において、前記熱圧装置50は、熱圧機またはシールプレス機であり、前記加圧装置52は、二つの金属ローラーからなる。
【0051】
前記ステップb2において、前記熱圧装置50の加熱装置で前記金属ローラーを加熱する。前記ローラーの温度及び圧力は、実際の応用に応じて選択することができる。本実施例において、前記熱圧装置50によって、前記二つのローラーの加熱温度が110℃〜120℃であり、その圧力が49Pa〜196Paである。
【0052】
本実施例において、前記ステップb3において、前記基材−グラフェン−カーボンナノチューブ−高分子材料複合構造体を、1ミリメートル/分〜10メートル/分の速度で前記二つの加熱されたローラーの間を通過させると同時に、前記ローラーに一定の圧力を印加する。更に、前記熱圧工程において、前記高分子材料層を柔らかくする。従って、前記熱圧法によって前記カーボンナノチューブ構造体24及び前記金属基材200に成長されたグラフェン構造体210と、を緊密に結合させる。
【0053】
(実施例3)
図16を参照すると、実施例1と比べると、本実施例におけるグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体30の製造方法の異なる点は、金属基材200がエッチングによって形成された複数の帯状電極306が、相互に交差してネットワーク状構造体を形成することである。
【0054】
(実施例4)
図17及び図18を参照すると、本実施例のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体40の製造方法は、第一表面402及び該第一表面402に対向する第二表面404を有する金属基材400を、提供するステップS41と、前記金属基材400の第一表面402にグラフェン構造体410を成長させるステップS42と、高分子材料層430を前記グラフェン構造体410の、前記金属基材400に隣接する表面とは反対の表面に被覆するステップS43と、前記金属基材400をエッチングして、複数の帯状電極406に形成し、基材−グラフェン−高分子材料複合構造体450に形成するステップS44と、自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体44を提供して、前記高分子材料層の、前記グラフェン構造体410に隣接する表面とは反対の表面に被覆するステップS45と、含む。
【0055】
本実施例において、前記ステップS41及びステップS42は、実施例1のステップS11及びステップS12と同じである。前記ステップS43において、前記高分子材料層430の形成方法及び成分は、実施例2のステップS24における前記高分子材料層230の形成方法及び成分と同じである。
【0056】
前記ステップS45は、支持体460を提供し、前記カーボンナノチューブ構造体44を該支持体460の一つの表面に形成または設置するサブステップS451と、前記基材−グラフェン−高分子材料複合構造体450を、前記カーボンナノチューブ構造体44の、前記支持体460に隣接する表面とは反対の表面に被覆するサブステップS452と、機械力で前記基材−グラフェン−高分子材料複合構造体450と、前記支持体460の一つの表面に成長されたカーボンナノチューブ構造体44と、を緊密に結合させるサブステップS453と、を含む。
【0057】
前記サブステップS451において、前記カーボンナノチューブ構造体44の製造方法は、実施例1のカーボンナノチューブ構造体14の製造方法と同じである。本実施例において、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルム440からなるカーボンナノチューブ構造体44を、前記該支持体460の一つの表面に被覆する。前記支持体460は、前記カーボンナノチューブ構造体44を支持して、該カーボンナノチューブ構造体44と、基材−グラフェン−高分子材料複合構造体450と、を容易に結合させる。前記支持体460の材料は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート、テレフタレート、スチレン-シクロブテン及び環状オレフィンポリマーの一種または複数種である。前記支持体460は、良好な光透過度を有する透明な膜状構造体であることが好ましい。本実施例において、前記支持体460は、テレフタレートからなる透明な膜状構造体である。
【0058】
前記サブステップS452において、前記基材−グラフェン−高分子材料複合構造体450を、前記カーボンナノチューブ構造体44の、前記支持体460に隣接する表面とは反対の表面に直接被覆する。これにより、前記高分子材料層は、前記カーボンナノチューブ構造体44に隣接して接触する。
【0059】
前記サブステップS453において、熱圧法で前記基材−グラフェン−高分子材料複合構造体450と、前記支持体460の一つの表面に成長されたカーボンナノチューブ構造体44と、を緊密に結合させる。前記熱圧法は、実施例2のステップS22の熱圧法と同じである。
【符号の説明】
【0060】
10、20、30、40 グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体
14、24、34、44 カーボンナノチューブ構造体
100、200、400 金属基材
102、202、402 第一表面
104、204、404 第二表面
106、206、306、406 帯状電極
110、210、310、410 グラフェン構造体
120、220、420 犠牲層
124、424 溝
230、330、430 高分子材料層
140、340、143a カーボンナノチューブフィルム
142、143b カーボンナノチューブセグメント
144 帯状カーボンナノチューブ構造体
145 カーボンナノチューブ
146 超配列カーボンナノチューブアレイ
148、348 微孔
50 熱圧装置
52 加圧装置
460 支持体
450 基材−グラフェン−高分子材料複合構造体
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラフェンとは、六角形に並び網目状の面構造をした炭素原子が、層状に集まった結晶のことであり、優れた電気的特性及び熱的性質を有する。室温でその電子移動度が15000cm2V−1s−1であり、最大の熱伝導率が3000Wm−1K−1である(非特許文献1を参照)。カーボンナノチューブとは、基本的には一様な平面のグラファイトを丸めて円筒状にしたような構造体である。その長さが、数マイクロメートルから数ミリメートルであり、その直径が数ナノメートルから数十ナノメートルである。カーボンナノチューブとは、典型的な一次元ナノ材料であり、優れた機械的、電気的および化学的特性を有する。グラフェン及びカーボンナノチューブは、膜状構造体を形成することができる。
【0003】
しかしながら、グラフェン又はカーボンナノチューブのみからなる膜状構造体には、欠点が存在する。グラフェンは、高い導電性を有するが、グラフェンでグラフェン膜状構造体を製造する場合、その層数を精確に制御することができない。且つグラフェン膜状構造体における複数のフィルムのサイズ及び形状は異なる。グラフェン膜状構造体を製造する工程において、グラフェン膜状構造体における複数のフィルムは、相互に積層するかまたは脱離する現象がある。これにより、前記グラフェン膜状構造体の光透過性が低下し、その表面抵抗が増加する。カーボンナノチューブ膜状構造体は、複数のカーボンナノチューブからなるネットワーク構造体である。前記複数のカーボンナノチューブの間に間隙があるので、前記カーボンナノチューブ膜状構造体の光透過性が増加するが、その導電性が低下する。グラフェンとカーボンナノチューブとの構造及び性能は、相補性を有するので、グラフェン及びカーボンナノチューブからなる複合体の研究は、発展する傾向にある。
【0004】
グラフェン及びカーボンナノチューブからなる複合体の製造方法は、液相法でグラフェン断片及びカーボンナノチューブ粉末を、分散溶液の中で超音波処理して、グラフェン−カーボンナノチューブネットワーク構造体を形成する第一ステップと、複数のポリマー微粒子を前記分散溶液の中に添加して、超音波処理して、前記複数のポリマー微粒子の表面にグラフェン−カーボンナノチューブネットワーク構造体が被覆されて、混合物を形成する第二ステップと、前記溶液を除去した後、前記混合物を金型中に置いて熱および圧力を与え、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第三ステップと、を含むことは、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第101734650号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2008248235号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K.S.Novoselov,et al.Electric field effect in atomically thin carbon films.Science,2004,306(5696):666−669
【非特許文献2】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記方法で形成されたグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体は、グラフェンシートを含まず、複数のグラフェン断片で分散しているので、その強靭性及び導電性が低下する。前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体において、前記複数のカーボンナノチューブは、ランダムに分散しているので、該グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の光透過性を低下させる。
【0008】
従って、前記課題を解決するために、本発明はグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法を提供する。該製造方法によって得られたグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の光透過性及び導電性を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法は、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する金属基材を提供する第一ステップと、前記金属基材の第一表面にグラフェン構造体を成長させる第二ステップと、自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体を提供して、前記グラフェン構造体の、前記金属基材に隣接する表面とは反対の表面に前記カーボンナノチューブ構造体を隣接させて、前記グラフェン構造体を前記金属基材と前記カーボンナノチューブ構造体との間に設置して、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第三ステップと、前記金属基材の少なくとも一部を除去し、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第四ステップと、を含む。
【0010】
本発明のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法は、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する金属基材を提供する第一ステップと、前記金属基材の第一表面にグラフェン構造体を成長させる第二ステップと、自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体を提供して、前記グラフェン構造体の、前記金属基材に隣接する表面とは反対の表面に前記カーボンナノチューブ構造体を隣接させて、前記グラフェン構造体を前記金属基材と前記カーボンナノチューブ構造体との間に設置して、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第三ステップと、高分子材料層を前記カーボンナノチューブ構造体の、前記グラフェン構造体に隣接する表面とは反対の表面に被覆して、前記基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体と結合する第四ステップと、エッチングによって、前記金属基材をパターニングする第五ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
従来の技術と比べて、本発明のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法は、次の優れた点がある。第一に、金属基材の第一表面にグラフェン構造体を成長させるので、大面積を有するグラフェン構造体が得られる。第二に、エッチングによって、金属基材をパターニングするので、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の応用範囲が広くなる。第三に、本発明の製造方法を採用して形成したグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体は、優れた導電性、強靭性及び光透過性を有するグラフェン構造体及びカーボンナノチューブ構造体を含むので、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体は、優れた導電性、強靭性及び光透過性を有する。したがって、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を、タッチパネルまたは液晶表示装置に用いることができる。第四に、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体におけるグラフェン構造体及び前記カーボンナノチューブ構造体は、単位面積あたりの熱容量が小さく、放熱面積が大きいので、該グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を、音波発生器として熱音響装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程のフローチャートである。
【図2】本発明の実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程の各段階を示す図である。
【図3】実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体におけるグラフェン構造体の構造を示す図である。
【図4】実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体におけるカーボンナノチューブ構造体の構造を示す図である。
【図5】実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体におけるカーボンナノチューブ構造体の製造工程の一部を示す図である。
【図6】実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体におけるドローン構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】図6中のカーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図8】本発明の実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体において、少なくとも二枚の積層されたカーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブ構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明の実施例1に係る有機溶液で処理されたカーボンナノチューブ構造体の構造を示す図である。
【図10】本発明の実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体において、レーザーで処理されたカーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブ構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】本発明の実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体において、アルコールで処理されたカーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブ構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の構造を示す図である。
【図13】本発明の実施例2に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程のフローチャートである。
【図14】本発明の実施例2に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程の各段階を示す図である。
【図15】実施例2に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程における熱圧工程を示す図である。
【図16】実施例3に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の構造を示す図である。
【図17】本発明の実施例4に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程のフローチャートである。
【図18】本発明の実施例4に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程の各段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0014】
(実施例1)
図1及び図2を参照すると、本実施例のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体10の製造方法は、第一表面102及び該第一表面102に対向する第二表面104を有する金属基材100を提供するステップS11と、前記金属基材100の第一表面102にグラフェン構造体110を成長させるステップS12と、自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体14を提供して、前記グラフェン構造体110の、前記金属基材100に隣接する表面とは反対の表面に前記カーボンナノチューブ構造体14を隣接させて、前記グラフェン構造体110を前記金属基材100と前記カーボンナノチューブ構造体14との間に設置して、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成するステップS13と、前記金属基材の少なくとも一部を除去し、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成するステップS14と、を含む。
【0015】
前記ステップS11において、前記金属基材100は、一定の厚さを有する。前記金属基材100は、銅、ニッケルなどのような金属薄膜からなる。前記金属基材100の厚さは、100nm〜100μmであり、その寸法は制限されず、実際の応用に応じて選択することができる。例えば、反応炉の寸法によって、前記金属基材100の寸法を選択する。または、前記金属基材100を巻いて、反応炉内に置いて、前記反応炉のスペースの利用率を向上させ、グラフェン構造体110の寸法を増加させることも可能である。本実施例において、前記金属基材100は銅箔からなり、その厚さは25μmである。
【0016】
前記ステップS12において、化学気相成長法で前記金属基材100の第一表面102にグラフェン構造体110を成長させる。図2を参照すると、その製造方法は、前記金属基材100を反応室に置いて、前記金属基材100の第一表面102を高温処理するステップaと、前記反応室に炭素源ガスを導入し、前記金属基材100の第一表面102に前記グラフェン構造体110を成長させるステップbと、前記金属基材100を室温まで冷却した後、前記グラフェン構造体110が成長された前記金属基材100を前記反応室から取り出すステップcと、を含む。
【0017】
前記ステップaにおいて、前記反応室は、進気口及び排気口を有する密封チャンバーである。前記進気口から水素ガス及びメタンガスを導入することができる。前記排気口は、空気抽出装置と連通する。前記排気口によって、前記空気抽出装置は、前記反応室の真空度及び気圧を制御することができる。更に、前記反応室における前記金属基材100の温度を制御するために、前記反応室は、水冷裝置を含むこともできる。本実施例において、前記反応室は、石英管である。
【0018】
前記金属基材100の第一表面102を平らにするために、高温処理することができる。これにより、前記グラフェン構造体110の成長に役立つことができる。前記高温処理方法は、前記金属基材100を真空反応室に置くと同時に、前記進気口から該反応室に流量が2sccm〜35sccmの水素ガスを導入するステップa1と、前記反応室の温度を上昇させて、前記金属基材100の第一表面102を一時間高温処理するステップa2と、を含む。
【0019】
前記ステップa1において、前記水素ガスの流量は2sccmである。
【0020】
前記ステップa2において、前記反応室の温度は、800℃〜1500℃であり、その気圧は、10−1〜102Paである。本実施例において、前記反応室の気圧が13.3Paであり、その温度が1000℃であり、その昇温時間が40分であり、その温度保持時間が、20分である。
【0021】
前記ステップbにおいて、前記反応室に流量が2sccmの水素ガスを連続的に導入すると同時に、高温環境下で炭素源ガスを導入することによって、前記金属基材100の第一表面102に炭素原子が堆積して前記グラフェン構造体110が形成される。前記水素ガスと前記炭素源ガスとの導入量の比が、45:2〜15:2である。前記炭素源ガスは、メタン、エタン、エチレンまたはアセチレンである。前記反応室の温度は、800℃〜1500℃であり、その気圧は、10−1〜102Paである。その温度は、1000℃であり、温度保持時間は、10〜60分である。本実施例において、前記炭素源ガスは、流量が2sccmのメタンである。前記反応室の気圧が66.5Paであり、その温度が、1000℃であり、その温度保持時間が、30分である。
【0022】
前記ステップcにおいて、前記炭素源ガス及び水素ガスの流量が変わらないように、前記反応室に連続的に導入すると同時に、前記金属基材100を室温まで冷却する。本実施例において、前記金属基材100を冷却する工程において、前記反応室に流量が25sccmのメタンガス及び流量が2sccmの水素ガスを導入する。前記反応室の気圧は66.5Paで前記金属基材100を1時間冷却した後、前記反応室から取り出し、前記金属基材100の第一表面102に前記グラフェン構造体110を形成する。
【0023】
本実施例において、化学気相成長法で前記グラフェン構造体110を成長させる。前記金属基材100の寸法によって、前記グラフェン構造体110の寸法を調整する。本実施例において、前記グラフェン構造体110は、一定の面積を有する二次元の一体構造体である。ここで、一体構造体とは、前記グラフェン構造体110は、平面上で連続性を有するものである。前記グラフェン構造体110は、1〜5層のグラフェンからなるが、1層のグラフェンからなることが好ましい。前記グラフェン構造体110の厚さは、0.34nm〜10nmである。前記グラフェン構造体110は、複数のグラフェンシートからなる場合、前記複数のグラフェンシートは、並列して接続して、大きな面積のグラフェン構造体110を形成し、または、重ね合わせて、積層されたグラフェン構造体110を形成する。図3を参照すると、前記グラフェン構造体110におけるグラフェンは、1原子の厚さのsp2結合炭素原子のシートであり、炭素原子とその結合からできた蜂の巣のような六角形格子構造をとっている。単層のグラフェンの透光率は、97.7%に達するので、該単層グラフェンからなるグラフェン構造体110は、良好な透光性を有する。前記グラフェン構造体110は、非常に薄いので、その熱容量が小さい。例えば、単層グラフェンの熱容量は、5.57×10−4J/K・molである。前記グラフェン構造体110は、自立構造を有するものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記グラフェン構造体110を独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、前記グラフェン構造体110を対向する両側から支持して、前記グラフェン構造体110の構造を変化させずに、前記グラフェン構造体110を懸架させることができることを意味する。前記グラフェン構造体110の寸法は、1cm以上である。ここで、前記グラフェン構造体110の寸法は、前記グラフェン構造体110の一点から他点までの距離が最大となる時の距離である。前記グラフェン構造体110の正投影の面積は、1cm2以上である。前記グラフェン構造体110の寸法は、実際の応用に応じて選択する。本実施例において、前記グラフェン構造体110は、単層のグラフェンからなり、その形状は、辺長が4cmの正方形である。
【0024】
前記ステップS13において、前記カーボンナノチューブ構造体14は一枚または複数枚の積層されたカーボンナノチューブフィルム140を含むことができる。図4を参照すると、前記カーボンナノチューブ構造体14は、積層された複数のカーボンナノチューブフィルム140を含む場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム140は、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム140におけるカーボンナノチューブは、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。本実施例において、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム140におけるカーボンナノチューブ同士は、90°で交差している。
【0025】
図5を参照すると、本実施例において、前記カーボンナノチューブフィルム140は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)である。前記カーボンナノチューブフィルム140の製造方法は、超配列カーボンナノチューブアレイ146(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献2を参照)を提供するステップa11と、前記カーボンナノチューブアレイ146から、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばして、前記カーボンナノチューブフィルム140を得るステップa12と、を含む。
【0026】
前記テップa11において、前記超配列カーボンナノチューブアレイ146の製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該カーボンナノチューブアレイ146は、互いに平行し、基材に垂直に成長した複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合っている。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブであり、その直径は0.5nm〜50nmに設定される。本実施例において、前記カーボンナノチューブの長さは、100〜900μmである。
【0027】
前記ステップa12において、前記カーボンナノチューブフィルム140は、複数のカーボンナノチューブからなり、隣接する前記カーボンナノチューブの間に間隙がある。前記カーボンナノチューブフィルム140において、前記複数のカーボンナノチューブは、それぞれ前記複数のカーボンナノチューブフィルム140の表面に平行するように配列され、かつ相互に平行に配列されている。前記カーボンナノチューブフィルム140の引き伸ばす工程は、前記超配列カーボンナノチューブアレイ146における一定の幅を有するカーボンナノチューブセグメント142を選択するサブステップa121と、所定の速度で前記カーボンナノチューブセグメント142を引き出し、複数のカーボンナノチューブセグメント142からなる連続のカーボンナノチューブフィルム140を形成するサブステップa122と、を含む。
【0028】
前記サブステップa121において、接着テープ、プライヤー、ピンセットなどの工具を利用して、前記超配列カーボンナノチューブアレイ146から前記一定の幅を有するカーボンナノチューブセグメント142を選択する。前記カーボンナノチューブセグメント142は複数の相互に平行に配列されているカーボンナノチューブを含む。前記サブテップa122において、任意の方向に沿って、前記カーボンナノチューブセグメントを引き出すことができる。
【0029】
具体的に、前記複数のカーボンナノチューブセグメント142を引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブセグメント142がそれぞれ基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブセグメント142が端と端で接合され、連続のカーボンナノチューブフィルム140が形成される。前記カーボンナノチューブフィルム140は、自立構造を有するものである。該カーボンナノチューブフィルム140は一定の幅を有して、均一に配列されている。前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、特許文献2に掲載されている。
【0030】
図6に示すように、前記カーボンナノチューブフィルムはドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)143aである。前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されている。即ち、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で長軸方向端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。図6及び図7を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長手方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さは同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aの幅、厚さ、均一性及び形状は変更することができる。
【0031】
前記カーボンナノチューブ構造体14は、少なくとも二枚の積層された前記カーボンナノチューブフィルム140からなる場合、その製造方法は、一枚のカーボンナノチューブ140(ここで、第一カーボンナノチューブフィルムと定義される)の少なくとも二つの辺部を一つのフレーム(図示せず)に固定して、該第一カーボンナノチューブフィルムの他の部分を懸架させるステップa131と、もう一枚のカーボンナノチューブフィルム140(ここで、第二カーボンナノチューブフィルムと定義される)を前記第一カーボンナノチューブフィルム140に被覆させるステップa132と、を含む。前記第一カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが第一方向に沿って配列している。前記第二カーボンナノチューブフィルム140におけるカーボンナノチューブが第二方向に沿って配列している。且つ前記第一方向と前記第二方向とは0°〜90°で交差する。前記の製造方法によって、積層された複数のカーボンナノチューブフィルム140からなる前記カーボンナノチューブ構造体14が前記フレームに固定される。各々の前記カーボンナノチューブフィルム140におけるカーボンナノチューブは、異なる方向に沿って配列していることができる。前記カーボンナノチューブ構造体14は自立構造体である。
【0032】
図8を参照すると、前記カーボンナノチューブフィルム140は大きな比表面積を有するので高い接着性を有し、前記積層された複数のカーボンナノチューブフィルム140は、分子間力で相互に緊密に結合され、安定なカーボンナノチューブ構造体14を形成することができる。前記カーボンナノチューブ構造体14における前記カーボンナノチューブフィルム140の枚数は制限されない。本実施例において、前記カーボンナノチューブフィルムの枚数は2〜4枚であり、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム140におけるカーボンナノチューブは90°で交差する。
【0033】
更に、前記カーボンナノチューブ構造体14を有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブ構造体14の複数の微孔148を広げ、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム140を緊密に結合させる。前記有機溶剤は、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムなどのいずれか一種の揮発性有機溶剤である。本実施例において、前記有機溶剤は、エタノールである。該有機溶剤は、前記カーボンナノチューブ構造体14に対して良好な濡れ性を有する。具体的には、ドロッパーで有機溶剤を前記カーボンナノチューブ構造体14の表面に滴下し、該有機溶剤で前記カーボンナノチューブ構造体14を浸漬させる。又は、全て前記カーボンナノチューブ構造体14を有機溶剤の中に入れて浸漬させる。図9を参照すると、前記カーボンナノチューブ構造体14は少なくとも二枚の積層されたドローン構造カーボンナノチューブフィルムからなる場合、前記有機溶剤で処理することにより、前記有機溶剤の表面張力によって、隣接する配列されたカーボンナノチューブの間の間隙がなくなり、前記複数のカーボンナノチューブは複数の間隔で分散された帯状カーボンナノチューブ構造体144に形成される。これにより、前記カーボンナノチューブ構造体14における複数の微孔148の寸法が大きくなる。前記カーボンナノチューブ構造体14における微孔148の寸法は、10μm〜1000μmであり、200μm〜600μmであることが好ましい。本実施例において、前記複数の帯状カーボンナノチューブ構造体144は、90°の角度で相互に交差している。前記カーボンナノチューブ構造体14を有機溶剤によって処理することにより、その接着性を低くさせることができる。前記カーボンナノチューブ構造体14における前記カーボンナノチューブフィルム140の枚数が多くなるほど、前記カーボンナノチューブ構造体14における微孔148の寸法はより小さくなる。従って、前記カーボンナノチューブ構造体14における前記カーボンナノチューブフィルムの枚数を調整することによって、要望の寸法の微孔148を得ることができる。
【0034】
更に、前記カーボンナノチューブ構造体100は、レーザーで処理された、少なくとも二枚の積層されたカーボンナノチューブフィルム106からなることもできる。前記カーボンナノチューブフィルム140をレーザによって処理することにより、該カーボンナノチューブフィルム140は、複数の間隔で分散された帯状カーボンナノチューブ構造体144に形成される。隣接する配列された前記帯状カーボンナノチューブ構造体144の間の間隙がある。前記レーザによって処理されたカーボンナノチューブフィルム140は、相互に積み重ねて、有機溶剤で処理した後、図10及び図11に示すような大きな微孔を有する前記カーボンナノチューブ構造体に形成される。詳しくは、レーザーによって処理したカーボンナノチューブ構造体の形成方法は、前記カーボンナノチューブアレイ146から、前記カーボンナノチューブフィルム140を引き伸ばするステップa141、前記カーボンナノチューブフィルム140を一つの支持体に固定するステップa142と、レーザーによって、前記カーボンナノチューブフィルム140における複数のカーボンナノチューブの配列方向に沿って、該カーボンナノチューブフィルム140を焼灼して、前記カーボンナノチューブフィルム140において、複数の間隔で分散された帯状カーボンナノチューブ構造体144を形成するステップa143と、少なくとも二つのレーザーによって処理された前記カーボンナノチューブフィルム140を、相互に積み重ねて、有機溶剤で処理した後、前記カーボンナノチューブ構造体14を形成するステップa144と、を含む。
【0035】
前記ステップa143において、レーザーのパワー、波長及びその移動速度を制御することによって、前記カーボンナノチューブフィルム140の一部を焼灼した後、該カーボンナノチューブフィルム140には、複数のカーボンナノチューブ帯状構造体144を形成することができる。
【0036】
前記ステップS13において、前記カーボンナノチューブフィルム140は、良好な接着性を有するので、複数の前記カーボンナノチューブフィルムを積層して設けられ、前記カーボンナノチューブ構造体14が形成される。この場合、前記カーボンナノチューブ構造体14は、直接前記グラフェン構造体110の、前記金属基材100に隣接する表面とは反対の表面に積層させることができる。具体的に、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルムからなるカーボンナノチューブ構造体14を、前記グラフェン構造体110の、前記金属基材100に隣接する表面とは反対の表面に直接隣接させた後、有機溶液で前記カーボンナノチューブ構造体14を処理することにより、前記カーボンナノチューブ構造体14において、隣接する配列されたカーボンナノチューブの間の間隙がなくなり、前記複数のカーボンナノチューブは複数の間隔で分散された帯状カーボンナノチューブ構造体144に形成される。これにより、前記カーボンナノチューブ構造体14に複数の微孔148が形成される。
【0037】
前記ステップS13において、前記カーボンナノチューブ構造体14を前記グラフェン構造体110の、前記金属基材100に隣接する表面とは反対の表面に隣接させた後、機械力で前記カーボンナノチューブ構造体14及び前記金属基材100に成長されたグラフェン構造体110をプレスして、緊密に結合させる。この場合、グラフェン構造体110の、前記金属基材100に隣接する表面とは反対の表面に高分子材料層(図示せず)を被覆して、該高分子材料層が完全に固化していない状態で、前記カーボンナノチューブ構造体14を該高分子材料層の、前記グラフェン構造体110に隣接する表面とは反対の表面に接着する。これにより、前記カーボンナノチューブ構造体14と前記グラフェン構造体110との接着性を高めることができる。
【0038】
前記高分子材料層は、溶融状態の高分子材料又は高分子材料溶液からなる。前記高分子材料溶液は、高分子材料を揮発性有機溶液に溶解して形成される。前記溶融状態の高分子材料又は高分子材料溶液は一定の接着性を有し、好ましくは、その接着性が1Pa・s以上である。常温で前記高分子材料は一定の透明度を有する固体である。前記揮発性有機溶液は、アルコール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムの一種又は複数種である。前記高分子材料は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、テレフタレート、スチレン−シクロブテン又は環状オレフィンポリマーなどの材料である。本実施例において、前記高分子材料は、ポリメチルメタクリレートである。
【0039】
前記ステップS14において、前記金属基材100の少なくとも一部を除去する方法は、前記金属基材100の第二表面104に複数の帯状の溝124を有する犠牲層120を形成するステップS131と、複数の帯状の溝124に対応する前記金属基材100の部分をエッチングし、前記グラフェン構造体110の一部を露出させるステップS132と、前記複数の帯状の溝124を含む犠牲層120を除去するステップS133と、を含む。
【0040】
前記ステップS131において、前記金属基材100の第二表面104に犠牲層120を形成した後、エッチング方法で前記犠牲層120の一部をエッチングして、複数の帯状の溝124を有する犠牲層120を形成することができる。前記犠牲層120は、ポリマーからなる。前記ポリマーは、ポリメタクリル酸メチル、エポキシ、不飽和ポリエステル、シリコンエーテル樹脂などの熱硬化性樹脂である。
【0041】
前記ステップS132において、エッチング方法によって、前記金属基材100は複数の帯状電極106を形成する。前記複数の帯状電極106は、前記グラフェン構造体110に電気的に接続されている。
【0042】
前記エッチング方法は、ドライエッチングまたはウェットエッチングである。本実施例において、ドライエッチングを採用する。詳しくは、前記犠牲層120が被覆された金属基材100を誘導結合プラズマシステムに置いて、酸素ガス及び塩素ガスをエッチングガスとして、前記複数の帯状の溝124に対応する前記金属基材100の一部をエッチングすることにより、前記グラフェン構造体110の一部を露出させる。本実施例において、前記誘導結合プラズマシステムの電力は50ワットである。流量が24sccmの塩素ガス及び流量が24sccmの塩素ガスを前記誘導結合プラズマシステムに導入する。前記誘導結合プラズマシステムの気圧は、2Pa〜10Paである。前記金属基材100の第二表面104を40秒〜55秒間エッチングする。
【0043】
前記金属基材100は、銅箔である場合、ウェットエッチングで該銅箔をエッチングする。詳しくは、前記金属基材100を濃度が0.06mol/L〜0.25mol/Lの一定量の塩化第三鉄溶液の中に4分〜15分間浸漬した後、前記複数の帯状の溝124に対応する前記金属基材100の部分は前記犠牲層120で保護されないので、前記塩化第三鉄溶液で除去され、前記グラフェン構造体110の一部を露出させる。
【0044】
前記ステップS133において、有機溶液で前記犠牲層120を除去する。本実施例において、有機溶液は、アセトンである。
【0045】
図12を参照すると、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体10は、カーボンナノチューブ構造体14と、グラフェン構造体110と、複数の帯状電極106と、を含む。前記複数の帯状電極106は、相互に平行して配列されて前記グラフェン構造体110の一つの表面に設置され、該グラフェン構造体110に電気的に接続されている。。前記カーボンナノチューブ構造体14は、前記グラフェン構造体110の、前記複数の帯状電極106に隣接する表面とは反対の表面に被覆されている。前記複数の帯状電極106は、前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体10を保護することができる。前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体10は、タッチパネルに用いることができる。前記グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体10におけるグラフェン構造体110及び前記カーボンナノチューブ構造体14は、単位面積あたりの熱容量が小さく、放熱面積が大きいので、該グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体10を、音波発生器として熱音響装置に用いることができる。
【0046】
(実施例2)
図13及び図14を参照すると、本実施例のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体20の製造方法は、第一表面202及び該第一表面202に対向する第二表面204を有する金属基材200を提供するステップS21と、前記金属基材200の第一表面202にグラフェン構造体210を成長させるステップS22と、自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体24を提供して、前記グラフェン構造体210の、前記金属基材200に隣接する表面とは反対の表面に前記カーボンナノチューブ構造体24を隣接させて、前記グラフェン構造体210を前記金属基材200と前記カーボンナノチューブ構造体24との間に設置して、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成するステップS23と、高分子材料層230を前記カーボンナノチューブ構造体24の、前記グラフェン構造体210隣接する表面とは反対の表面に被覆して、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ−高分子材料複合構造体に形成するステップS24と、エッチングによって、前記金属基材200をパターニングするステップS25と、を含む。実施例1と比べると、本実施例において、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体20の製造方法の異なる点は、前記ステップS24において、前記カーボンナノチューブ構造体24の、前記グラフェン構造体210に隣接する表面とは反対の表面に高分子材料層230を被覆することである。
【0047】
前記ステップS24は、前記高分子材料層230を直接前記カーボンナノチューブ構造体24の、前記グラフェン構造体210に隣接する表面とは反対の表面に被覆するサブステップS241と、熱圧法によって、前記カーボンナノチューブ構造体24と、前記高分子材料層230と、前記グラフェン構造体210と、を結合させて、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ−高分子材料複合構造体に形成するサブステップS242と、を含む。
【0048】
前記高分子材料層は、溶融状態の高分子材料又は高分子材料溶液からなる。前記高分子材料溶液は、高分子材料を揮発性有機溶液に溶解して形成される。前記溶融状態の高分子材料又は高分子材料溶液は一定の接着性を有し、好ましくは、その接着性が1Pa・s以上である。常温で前記高分子材料は一定の透明度を有する固体である。前記揮発性有機溶液は、アルコール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムの一種又は複数種である。前記高分子材料は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、テレフタレート、スチレン−シクロブテン又は環状オレフィンポリマーなどの材料である。本実施例において、前記高分子材料は、ポリメチルメタクリレートである。前記高分子材料の溶液を直接前記カーボンナノチューブ24構造体の、前記グラフェン構造体210隣接する表面とは反対の表面に被覆することができる。
【0049】
熱圧法又は冷圧法の方法によって、機械力を加えることにより、前記カーボンナノチューブ構造体24及び前記金属基材200に成長されたグラフェン構造体210と、を緊密に結合させることができる。本実施例において、熱圧法を採用する。図15を参照すると、該熱圧法は、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ−高分子材料複合構造体を、加圧装置52を有する熱圧装置50の中に設置するステップb1と、前記加圧装置52を加熱するステップb2と、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ−高分子材料複合構造体を、均一な速度で前記加熱された加圧装置52を通過させると同時に、前記加圧装置52に所定の圧力を印加して、前記カーボンナノチューブ構造体24及び前記金属基材200に成長されたグラフェン構造体210と、を緊密に結合させるステップb3と、を含む。
【0050】
前記ステップb1において、前記グラフェン構造体210と、前記金属基材200の第一表面202と、を同時に接触させる。前記熱圧装置50は、加圧装置52と、加熱装置(図示せず)と、を含む。本実施例において、前記熱圧装置50は、熱圧機またはシールプレス機であり、前記加圧装置52は、二つの金属ローラーからなる。
【0051】
前記ステップb2において、前記熱圧装置50の加熱装置で前記金属ローラーを加熱する。前記ローラーの温度及び圧力は、実際の応用に応じて選択することができる。本実施例において、前記熱圧装置50によって、前記二つのローラーの加熱温度が110℃〜120℃であり、その圧力が49Pa〜196Paである。
【0052】
本実施例において、前記ステップb3において、前記基材−グラフェン−カーボンナノチューブ−高分子材料複合構造体を、1ミリメートル/分〜10メートル/分の速度で前記二つの加熱されたローラーの間を通過させると同時に、前記ローラーに一定の圧力を印加する。更に、前記熱圧工程において、前記高分子材料層を柔らかくする。従って、前記熱圧法によって前記カーボンナノチューブ構造体24及び前記金属基材200に成長されたグラフェン構造体210と、を緊密に結合させる。
【0053】
(実施例3)
図16を参照すると、実施例1と比べると、本実施例におけるグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体30の製造方法の異なる点は、金属基材200がエッチングによって形成された複数の帯状電極306が、相互に交差してネットワーク状構造体を形成することである。
【0054】
(実施例4)
図17及び図18を参照すると、本実施例のグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体40の製造方法は、第一表面402及び該第一表面402に対向する第二表面404を有する金属基材400を、提供するステップS41と、前記金属基材400の第一表面402にグラフェン構造体410を成長させるステップS42と、高分子材料層430を前記グラフェン構造体410の、前記金属基材400に隣接する表面とは反対の表面に被覆するステップS43と、前記金属基材400をエッチングして、複数の帯状電極406に形成し、基材−グラフェン−高分子材料複合構造体450に形成するステップS44と、自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体44を提供して、前記高分子材料層の、前記グラフェン構造体410に隣接する表面とは反対の表面に被覆するステップS45と、含む。
【0055】
本実施例において、前記ステップS41及びステップS42は、実施例1のステップS11及びステップS12と同じである。前記ステップS43において、前記高分子材料層430の形成方法及び成分は、実施例2のステップS24における前記高分子材料層230の形成方法及び成分と同じである。
【0056】
前記ステップS45は、支持体460を提供し、前記カーボンナノチューブ構造体44を該支持体460の一つの表面に形成または設置するサブステップS451と、前記基材−グラフェン−高分子材料複合構造体450を、前記カーボンナノチューブ構造体44の、前記支持体460に隣接する表面とは反対の表面に被覆するサブステップS452と、機械力で前記基材−グラフェン−高分子材料複合構造体450と、前記支持体460の一つの表面に成長されたカーボンナノチューブ構造体44と、を緊密に結合させるサブステップS453と、を含む。
【0057】
前記サブステップS451において、前記カーボンナノチューブ構造体44の製造方法は、実施例1のカーボンナノチューブ構造体14の製造方法と同じである。本実施例において、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルム440からなるカーボンナノチューブ構造体44を、前記該支持体460の一つの表面に被覆する。前記支持体460は、前記カーボンナノチューブ構造体44を支持して、該カーボンナノチューブ構造体44と、基材−グラフェン−高分子材料複合構造体450と、を容易に結合させる。前記支持体460の材料は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート、テレフタレート、スチレン-シクロブテン及び環状オレフィンポリマーの一種または複数種である。前記支持体460は、良好な光透過度を有する透明な膜状構造体であることが好ましい。本実施例において、前記支持体460は、テレフタレートからなる透明な膜状構造体である。
【0058】
前記サブステップS452において、前記基材−グラフェン−高分子材料複合構造体450を、前記カーボンナノチューブ構造体44の、前記支持体460に隣接する表面とは反対の表面に直接被覆する。これにより、前記高分子材料層は、前記カーボンナノチューブ構造体44に隣接して接触する。
【0059】
前記サブステップS453において、熱圧法で前記基材−グラフェン−高分子材料複合構造体450と、前記支持体460の一つの表面に成長されたカーボンナノチューブ構造体44と、を緊密に結合させる。前記熱圧法は、実施例2のステップS22の熱圧法と同じである。
【符号の説明】
【0060】
10、20、30、40 グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体
14、24、34、44 カーボンナノチューブ構造体
100、200、400 金属基材
102、202、402 第一表面
104、204、404 第二表面
106、206、306、406 帯状電極
110、210、310、410 グラフェン構造体
120、220、420 犠牲層
124、424 溝
230、330、430 高分子材料層
140、340、143a カーボンナノチューブフィルム
142、143b カーボンナノチューブセグメント
144 帯状カーボンナノチューブ構造体
145 カーボンナノチューブ
146 超配列カーボンナノチューブアレイ
148、348 微孔
50 熱圧装置
52 加圧装置
460 支持体
450 基材−グラフェン−高分子材料複合構造体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する金属基材を提供する第一ステップと、
前記金属基材の第一表面にグラフェン構造体を成長させる第二ステップと、
自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体を提供して、前記グラフェン構造体の、前記属基材に隣接する表面とは反対の表面に前記カーボンナノチューブ構造体を隣接させて、前記グラフェン構造体を前記基材と前記カーボンナノチューブ構造体との間に設置して、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第三ステップと、
前記基材の少なくとも一部を除去し、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第四ステップと、
を含むことを特徴とするグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法。
【請求項2】
第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する金属基材を提供する第一ステップと、
前記金属基材の第一表面にグラフェン構造体を成長させる第二ステップと、
自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体を提供して、前記グラフェン構造体の、前記基材に隣接する表面とは反対の表面に前記カーボンナノチューブ構造体を隣接させて、前記グラフェン構造体を前記基材と前記カーボンナノチューブ構造体との間に設置して、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第三ステップと、
高分子材料層を前記カーボンナノチューブ構造体の、前記グラフェン構造体に隣接する表面とは反対の表面に被覆して、前記基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体と結合する第四ステップと、
エッチングによって、前記金属基材をパターニングする第五ステップと、
を含むことを特徴とするグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法。
【請求項1】
第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する金属基材を提供する第一ステップと、
前記金属基材の第一表面にグラフェン構造体を成長させる第二ステップと、
自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体を提供して、前記グラフェン構造体の、前記属基材に隣接する表面とは反対の表面に前記カーボンナノチューブ構造体を隣接させて、前記グラフェン構造体を前記基材と前記カーボンナノチューブ構造体との間に設置して、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第三ステップと、
前記基材の少なくとも一部を除去し、グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第四ステップと、
を含むことを特徴とするグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法。
【請求項2】
第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する金属基材を提供する第一ステップと、
前記金属基材の第一表面にグラフェン構造体を成長させる第二ステップと、
自立構造を有するカーボンナノチューブ構造体を提供して、前記グラフェン構造体の、前記基材に隣接する表面とは反対の表面に前記カーボンナノチューブ構造体を隣接させて、前記グラフェン構造体を前記基材と前記カーボンナノチューブ構造体との間に設置して、基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体を形成する第三ステップと、
高分子材料層を前記カーボンナノチューブ構造体の、前記グラフェン構造体に隣接する表面とは反対の表面に被覆して、前記基材−グラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体と結合する第四ステップと、
エッチングによって、前記金属基材をパターニングする第五ステップと、
を含むことを特徴とするグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−246210(P2012−246210A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190458(P2011−190458)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】
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