説明

ケース付き鋏

【解決手段】鋏本体1は、ケース23に対する収容状態Dで両刀身2,3の刃体9,10が互いに閉じた閉状態になり、その収容状態Dで刃体9,10が閉状態のまま刃体9,10をケース23の口部29から突出させた突出途中状態Cを経て両刀身2,3が互いに開いた開状態に至る。
【効果】ケース23の口部29が開放されている場合でも、その口部29から物が入って刃体9,10の刃先部18やその尖端18aを傷付けたりその口部29から入った指を刃体9,10の刃先部18やその尖端18aにより傷付けたりするおそれが少なくなる。不使用時に刃体9,10がケース23から突出途中状態Cまで不用意に突出したり、使用時に刃体9,10をケース23から突出途中状態Cまで突出させたりしても、その刃体9,10の刃先部18やその尖端18aにより衣服や物を傷付けるおそれを少なくするとともに、使用者に視覚的な安心感を与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃体を有する一対の刀身を互いに開閉可能に支持した鋏本体をケースに収容した収容状態から両刀身の刃体をケースから突出させて使用することができるケース付き鋏に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1にかかるケース付き鋏では、両刀身の刃体をケースから突出させた突出状態ばかりでなく、鋏本体をケースに収容した収容状態でも、両刀身の刃体は常に最大に開いた開状態になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−40366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1にかかるケース付き鋏では、両刀身の刃体がケースに対する収容状態から最大突出状態にわたる全範囲で一定の最大開度になっているため、不使用時に両刀身の刃体がケースから不用意に若干突出しただけで、衣服のポケットなどに鋏を収容した際に刃体の刃先部やその尖端により衣服を傷付けたり、鋏の近辺にある物を刃体の刃先部やその尖端により傷付けたり、使用者に不安感を与えたりする問題があった。また、両刀身の刃体が出入するケースの口部が開放されている場合には、その口部から物が入って刃体の刃先部やその尖端を傷付けたり、その口部から入った指を刃体の刃先部やその尖端により傷付けたりする問題があった。
【0005】
この発明は、ケース付き鋏において、ケースに対する鋏本体の収容状態や突出状態で両刀身の刃体の開度に変化を持たせて、前述した問題を解消することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜4)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかるケース付き鋏は、刃体9,10を有する一対の刀身2,3を互いに開閉可能に支持した鋏本体1と、その鋏本体1を収容し得るケース23とを備え、鋏本体1をケース23に対し移動させた際に、鋏本体1をケース23に収容する収容状態Dと、両刀身2,3の刃体9,10をケース23から突出させた突出状態A,B,Cとを取り、その収容状態Dでは両刀身2,3の刃体9,10の開度を最大突出状態Aよりも小さくするように、鋏本体1を案内する案内手段16a,17,22,31,32を備えている。請求項1の発明では、収容状態Dで両刀身2,3の刃体9,10の開度が最大突出状態Aよりも小さいので、不使用時に両刀身2,3の刃体9,10がケース23から不用意に突出しても、衣服のポケットなどに鋏を収容した際に刃体9,10の刃先部18やその尖端18aにより衣服を傷付けたり、鋏の近辺にある物を刃体9,10の刃先部18やその尖端18aにより傷付けたりするおそれは少なくなるとともに、使用者に安心感を与えることができる。また、両刀身2,3の刃体9,10が出入するケース23の口部29が開放されている場合であっても、その口部29から物が入って刃体9,10の刃先部18やその尖端18aを傷付けたりその口部29から入った指を刃体9,10の刃先部18やその尖端18aにより傷付けたりするおそれも少なくなる。
【0007】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記案内手段は、鋏本体1に設けたガイド16a,17,22とケース23に設けたガイド31,32とを備え、鋏本体1に設けたガイド16a,17とケース23に設けたガイド31,32との相互作用によって鋏本体1をケース23に対し移動させるとともに両刀身2,3を互いに開閉させる。請求項2の発明では、鋏本体1に設けたガイド16a,17,22とケース23に設けたガイド31,32とにより案内手段を構成して、鋏本体1のケース23に対する移動と、鋏本体1の両刀身2,3の開閉とを行うことができる。
【0008】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、鋏本体1に設けたガイド22は、両刀身2,3を互いに回動可能に支持する開閉中心部4の回動中心線4aの方向の両側のうち少なくとも一方の側で少なくとも一方の刀身3に設けられている。請求項3の発明では、鋏本体1に設けたガイド22の構成を簡単にすることができる。
【0009】
請求項2または請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、鋏本体1をケース23に対し移動させるためにケース23に設けたガイド31,32と、両刀身2,3を互いに開閉させるためにケース23に設けたガイド31とを兼用している。請求項4の発明では、ケース23に設けたガイド31,32の構成を簡単にすることができる。
【0010】
請求項2または請求項3または請求項4の発明を前提とする請求項5の発明において、鋏本体1に設けたガイドは突条22である。請求項5の発明では、鋏本体1に設けたガイドの構成を簡単にすることができる。
【0011】
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項6の発明にかかる鋏本体1において、両刀身2,3を互いに回動可能に支持する開閉中心部4の回動中心線4aに対し直交する方向の両側のうち一方の側でケース23には、鋏本体1をケース23に対し移動させて両刀身2,3の刃体9,10をケース23の口部29から出入する操作摘み33を鋏本体1とともに移動可能に支持した。請求項6の発明では、ケース23を把持した手の親指を操作摘み33に当てがったまま操作摘み33を操作することができるので、鋏本体1のケース23に対する移動を行い易い。
【0012】
請求項1から請求項6のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項7の発明において、前記案内手段は、鋏本体1をケース23に対し移動させて両刀身2,3の刃体9,10をケース23の口部29から出入する際に、前記収容状態Dで両刀身2,3の刃体9,10が互いに閉じた閉状態のまま両刀身2,3の刃体9,10をケース23の口部29から突出させた突出途中状態Cを経て両刀身2,3が互いに開いた開状態に至るように、鋏本体1の両刀身2,3を案内する。請求項7の発明では、両刀身2,3の刃体9,10をケース23の口部29から突出させた突出途中状態Cまで、両刀身2,3の刃体9,10が閉状態を維持するので、不使用時に両刀身2,3の刃体9,10がケース23から突出途中状態Cまで不用意に突出したり、使用時に両刀身2,3の刃体9,10をケース23から突出途中状態Cまで突出させたりしても、鋏の近辺にある物を刃体9,10の刃先部18やその尖端18aにより傷付けたりするおそれを少なくするとともに、使用者に視覚的な安心感を与えることができる。なお、「閉状態」とは、両刃先部18の尖端18aが互いに重合してそれらの尖端18a間の間隔が生じない場合ばかりでなく、それらの尖端18a間の間隔を少し生じさせた場合も含む。
【0013】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項2から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする第8の発明において、ケース23に設けたガイドは、互いに間隔をあけて延設された一対の突条31,32である。第8の発明では、ケース23に設けたガイドの構成を簡単にすることができる。
【0014】
請求項2から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明、または第8の発明を前提とする第9の発明において、鋏本体1をケース23に対し移動させるために鋏本体1に設けたガイドは、両刀身2,3を互いに回動可能に支持する開閉中心部4に設けた突部16a,17である。第9の発明では、鋏本体1に設けたガイドの構成を簡単にすることができる。
【0015】
第9の発明を前提とする第10の発明において、前記開閉中心部4の突部は、両刀身2,3に挿着された軸14の端部16a,17である。第10の発明では、鋏本体1に設けたガイドの構成を簡単にすることができる。
【0016】
第10の発明を前提とする第11の発明において、前記開閉中心部4の軸14の端部16a,17は開閉中心部4の回動中心線4aの方向の両側に設けられ、一方の側でケース23のガイドとして互いに間隔W31をあけて延設された一対の突条31間に係合される一方の端部16aの係合寸法と、他方の側でケース23のガイドとして互いに間隔W32をあけて延設された一対の突条32間に係合される他方の端部17の係合寸法とが互いに異なり、一方の両突条31間に他方の端部17が係合不能であるか、または、他方の両突条32間に一方の端部16aが係合不能であるか、または、いずれも係合不能である。第11の発明では、ケース23に対する鋏本体1の位置関係を特定して、鋏本体1をケース23に収容することができる。
【0017】
請求項2から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明、または第8〜11の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第12の発明において、前記両刀身2,3を互いに回動可能に支持する開閉中心部4の回動中心線4aに対し直交する方向の両側のうち一方の側で一方の刀身2のケース23に対する回動が規制され、両刀身2,3を開閉させるために鋏本体1に設けたガイドは一方の刀身2とケース23とに対し開閉中心部4で回動し得る他方の刀身3に設けられている。第12の発明では、鋏本体1のケース23に対する移動と、鋏本体1の両刀身2,3の開閉とを容易に行うことができる。
【0018】
請求項6の発明を前提とする第13の発明において、前記操作摘み33は前記鋏本体1において両刀身2,3のうち一方の刀身2に設けられて一方の刀身2のケース23に対する回動を規制し、他方の刀身3は一方の刀身2とケース23とに対し開閉中心部4で回動し得る。第13の発明では、鋏本体1のケース23に対する移動と、鋏本体1の両刀身2,3の開閉とを容易に行うことができる。
【0019】
第13の発明を前提とする第14の発明において、前記操作摘み33は、ケース23に対する回動が規制された一方の刀身2に対し、ケース23に設けた案内孔30を通して挿着されている。第14の発明では、一方の刀身2に対する操作摘み33の挿着を簡単にすることができる。
【0020】
請求項1から請求項7のうちいずれか一つの請求項の発明、または第8〜14の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第15の発明において、前記鋏本体1は両刀身2,3を互いに開くように付勢する付勢手段19aを備えている。第15の発明では、両刀身2,3を容易に開くことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、ケース付き鋏において、ケース23に対する鋏本体1の収容状態Dや突出状態A,B,Cで両刀身2,3の刃体9,10の開度に変化を持たせて、不使用時にケース23から不用意に突出した両刀身2,3の刃体9,10の刃先部18やその尖端18aにより衣服や物を傷付けるおそれを少なくするとともに、使用者に安心感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本実施形態にかかるケース付き鋏の分解斜視図であり、(b)は(a)における下側の刀身の部分斜視図であり、(c)は(a)における鋏本体の組付け斜視図である。
【図2】(a)は図1(c)における鋏本体を図1(a)におけるケースに挿入した状態を示す斜視図であり、(b)は(a)におけるケース及び鋏本体に操作摘みを挿着して鋏本体を開状態でケースから突出させた最大突出状態を示す組付け斜視図であり、(c)は(b)の最大突出状態から鋏本体をケースに収容して閉状態にした収容状態を示す組付け斜視図である。
【図3】(a)(b)(c)(d)はそれぞれケース付き鋏において鋏本体をケースに対し移動させて最大突出状態と収容状態とそれらの間の突出途中状態を示す正面図である。
【図4】(a)は図3(a)におけるケースを正面側から破断して示す断面図であり、(b)は図3(a)におけるケースを背面側から破断して示す断面図であり、(c)は図3(c)におけるケースを正面側から破断して示す断面図であり、(d)は図3(d)におけるケースを正面側から破断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態にかかるケース付き鋏について図面を参照して説明する。
図1に示す鋏本体1においては、上下一対の刀身2,3が開閉中心部4で回動中心線4aを中心に互いに開閉可能に支持されている。上下両刀身2,3において、プラスチックにより成形されたハンドル5,6は、それぞれ、基端部7とその基端部7から延設された指掛腕部8とからなり、ハンドル5,6の成形時この指掛腕部8の内側に金属製の刃体9,10が一体的に取着される。
【0024】
開閉中心部4においては、上側のハンドル5の基端部7の内側に雌筒部11が形成され、下側のハンドル6の基端部7の内側に雄筒部12が形成されてこの雌筒部11に対し回動可能に挿嵌され、この雄筒部12に形成された支持孔13に支軸14が挿着されている。支軸14は、プラスチックにより成形され、一対の割り片16からなる軸部15と、軸部15よりも大径の頭部17とからなる。軸部15の両割り片16の先端には係止段部16aが形成されている。支軸14の軸部15が支持孔13に挿着された状態で、図4(b)に示すように支軸14の頭部17は雌筒部11の外側に形成された凹部11aに嵌め込まれて係止され、図4(a)に示すように軸部15の両割り片16の係止段部16aは雄筒部12の外側に形成された凹部12aに嵌め込まれて係止されて支持孔13からの支軸14の離脱を阻止している。
【0025】
上下両刀身2,3は支軸14を有する開閉中心部4の回動中心線4aを中心に相対回動する。上下両刃体9,10は、相対向する刃先部18を有し、その回動の際に互いに摺接する。上側のハンドル5の基端部7の内側には付勢手段としての金属製の板ばね19aが片持ち梁状に支持され、下側のハンドル6の基端部7の内側にはその板ばね19aが圧接される受圧部19bが形成され、上下両刀身2,3が板ばね19aの弾性力により互いに開くように付勢されている。上側のハンドル5の基端部7上と下側のハンドル6の基端部7上とにそれぞれ形成されたストッパ部20が互いに係止されて、上下両刀身2,3の開度である両刃先部18の尖端18a間の間隔が規制される。回動中心線4aに対し直交する方向の両側のうち一方の側である上側のハンドル5の基端部7上には係止孔21が形成されている。下側のハンドル6の基端部7の外側(回動中心線4aの方向の両側のうち一方の側)には突条22(案内手段としてのガイド)が形成されている。突条22は、前端部22cと、前端部22cの後端部に対し屈曲されて前側から後側へ向うに従い下側から上側へ延びる傾斜部22aと、傾斜部22aの後端部22bとからなる。
【0026】
図1に示すケース23は、プラスチックにより成形され、上壁24と下壁25と左側壁26と右側壁27とで筒状をなし、紐孔28aを有する後壁28に面する前側に形成された口部29で開放されている。上壁24には前後方向へ延びる案内孔30が形成されてケース23内と連通している。図4(a)(b)に示すように、左側壁26の内側には上下一対の突条31が互いに間隔W31(約5.5mm)をあけて前後方向へ平行に延設されているとともに、右側壁27の内側には上下一対の突条32が互いに間隔W32(約7mm)をあけて前後方向へ平行に延設され、上下両突条31の間隔W31が上下両突条32の間隔W32よりも小さく設定されている。支軸14の軸部15の両係止段部16aの最大径(係合寸法)は上下両突条31の間隔W31に合わせて設定され、支軸14の頭部17の最大径(係合寸法)は上下両突条32の間隔W32に合わせて設定されている。
【0027】
図2(a)に示すように鋏本体1の上下両刀身2,3の基端部7がケース23内に口部29から挿入され、図4(a)(b)に示すように、支軸14の軸部15の両係止段部16a(案内手段としてのガイド、軸の端部にある突部)が左側壁26の上下両突条31間に係入されるとともに、支軸14の頭部17(案内手段としてのガイド、軸の端部にある突部)が右側壁27の上下両突条32間に係入され、図2(b)に示すように上側のハンドル5の係止孔21に操作摘み33が上壁24の案内孔30を通して挿着されている。操作摘み33は、プラスチックにより成形され、一対の割り片34と、一対の割り片34よりも大きい指当部35とからなる。両割り片34の先端には係止段部34aが形成されている。操作摘み33の両割り片34の係止段部34aは係止孔21に係止されて係止孔21からの操作摘み33の離脱を阻止している。操作摘み33の指当部35は案内孔30の外側に露出している。操作摘み33により、上側の刀身2のケース23に対する回動を規制し、下側の刀身3は上側の刀身2とケース23とに対し開閉中心部4で回動し得る。
【0028】
下側のハンドル6の突条22はケース23の左側壁26の突条31に係合する。図2(b)(c)に示すように操作摘み33を案内孔30に沿って移動させると、支軸14の両係止段部16aが上下両突条31で案内されるとともに、支軸14の頭部17が上下両突条32で案内されながら、鋏本体1がケース23に対し操作摘み33とともに前後方向へ移動して図3に示す各種状態を取る。
【0029】
図3(a)及び図4(a)(b)に示すように鋏本体1をケース23から最大に突出させた最大突出状態Aから操作摘み33を案内孔30に沿って後方へ移動させると、図3(b)の突出途中状態Bや、図3(c)及び図4(c)の突出途中状態Cを経て、図3(d)及び図4(d)に示すように鋏本体1をケース23に収容させた収容状態Dに至る。逆に、その収容状態Dから操作摘み33を案内孔30に沿って前方へ移動させると、図4(c)の突出途中状態Cや図3(b)の突出途中状態Bを経て、図3(a)及び図4(a)(b)に示す最大突出状態Aに至る。
【0030】
図3(a)及び図4(a)(b)に示す最大突出状態Aでは、操作摘み33が案内孔30の前端部に凹凸部により係止されて保持され、下側のハンドル6の突条22において傾斜部22aの後端部22bが左側壁26の突条31の前端部に当接しているため、両刀身2,3の刃体9,10が板ばね19aの弾性力により最大に開かれた最大開状態となり、両刃先部18の尖端18a間の間隔L(約8mm)が最大に広がっている。
【0031】
図3(d)及び図4(d)に示す収容状態Dでは、操作摘み33が案内孔30の後端部に凹凸部により係止されて保持され、下側のハンドル6の突条22において前端部22cが左側壁26の突条31の中間部に乗り上げているため、両刀身2,3の刃体9,10が板ばね19aの弾性力に抗して閉じた閉状態となり、両刃先部18の尖端18aが互いに重合してそれらの尖端18a間の間隔が生じないようになっている。
【0032】
その収容状態Dから操作摘み33を案内孔30に沿って前方へ移動させると、図3(c)及び図4(c)の突出途中状態Cまでは、下側のハンドル6の突条22において前端部22cが左側壁26の突条31に乗り上げた状態を維持して鋏本体1がケース23に対し平行移動し、両刀身2,3の刃体9,10が板ばね19aの弾性力に抗して閉じた閉状態のままとなる。その突出途中状態Cで突条22の前端部22cが突条31の前端部に当接した後は、突条31の前端部が突条22の前端部22cからその後端部22bにわたり傾斜部22aに当接しながら、両刀身2,3の刃体9,10が板ばね19aの弾性力により次第に開かれる。なお、図3(b)の突出途中状態Bでは、最大突出状態Aと突出途中状態Cとの間で両刀身2,3の刃体9,10が少し開いた開状態となる。
【0033】
ちなみに、収容状態Dにおける鋏の前後方向全長が約68mm、最大突出状態Aにおける鋏の前後方向全長が約102mm、収容状態Dから最大突出状態Aにした際にケース23に対し鋏本体1が前後方向へ移動する全移動距離は約37mm、収容状態Dから突出途中状態Cにした際にケース23に対し鋏本体1が両刃体9,10の閉状態のままで前後方向へ移動する閉状態移動距離は約21.5mmに、それぞれ設定されている。その全移動距離(約37mm)に対しその閉状態移動距離(約21.5mm)が半分以上を占めるため、両刀身2,3の刃体9,10を互いに閉じた閉状態を長く維持したまま開くことができる。
【0034】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 鋏本体1は、ケース23に対する収容状態Dで両刀身2,3の刃体9,10が互いに閉じた閉状態になるので、ケース23の口部29が開放されている場合であっても、その口部29から物が入って刃体9,10の刃先部18やその尖端18aを傷付けたりその口部29から入った指を刃体9,10の刃先部18やその尖端18aにより傷付けたりするおそれが少なくなる。
【0035】
(2) 鋏本体1は、ケース23に対する収容状態Dで両刀身2,3の刃体9,10が互いに閉じて両刃先部18の尖端18aが互いに重合してそれらの尖端18a間の間隔が生じない閉状態のまま両刀身2,3の刃体9,10をケース23の口部29から突出させた突出途中状態Cを経て、両刀身2,3が互いに開いた開状態に至るので、不使用時に両刀身2,3の刃体9,10がケース23から突出途中状態Cまで不用意に突出したり、使用時に両刀身2,3の刃体9,10をケース23から突出途中状態Cまで突出させたりしても、鋏の近辺にある物を刃体9,10の刃先部18やその尖端18aにより傷付けたりするおそれを少なくするとともに、使用者に視覚的な安心感を与えることができる。
【0036】
(3) 鋏本体1の開閉中心部4で上下両刀身2,3を互いに回動可能に支持する支軸14の両端部の突部(頭部17と軸部15の係止段部16a)をケース23の突条31,32で案内するので、鋏本体1のケース23に対する移動を簡単な構成で容易に行うことができる。
【0037】
(4) 鋏本体1において下側の刀身3に形成した突条22をケース23の突条31で規制して上側の刀身2に対し下側の刀身3を開閉させるので、鋏本体1の両刀身2,3の開閉を簡単な構成で容易に行うことができる。
【0038】
(5) ケース23上の操作摘み33と上側の刀身2のハンドル5の指掛腕部8とは共に上側で前後方向に並んでいるので、使用時に収容状態Dから突出途中状態C,Bを経て最大突出状態Aに至る際、収容状態Dでケース23を把持した手の親指を操作摘み33に当てがったまま操作摘み33を操作することができる。さらに、その手の親指をそのまま操作摘み33から上側の刀身2のハンドル5の指掛腕部8に向けて前方へ移動させて上下両刀身2,3を互いに開閉させることができる。また、その手の親指をそのまま後方へ移動させて鋏本体1をケース23に収容することができる。従って、鋏本体1のケース23に対する移動を行い易い。
【0039】
(6) 支軸14の軸部15の両係止段部16aの最大径(係合寸法)はケース23の上下両突条31の間隔W31に合わせて設定され、支軸14の頭部17の最大径(係合寸法)はケース23の上下両突条32の間隔W32に合わせて設定され、一方の上下両突条31間に頭部17が係合不能であるので、ケース23に対する鋏本体1の位置関係を特定して、鋏本体1をケース23に収容することができ、鋏本体1をケース23に対し誤って上下反対に組み付けることができない。
【0040】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 前記実施形態では、両刃先部18の尖端18aが収容状態Dで互いに重合してそれらの尖端18a間の間隔が生じない閉状態になっているが、収容状態Dでそれらの尖端18a間の間隔を少し生じさせて両刀身2,3の刃体9,10の開度を最大突出状態Aや突出途中状態Bよりも小さくした閉状態にしてもよい。
【0041】
・ 前記実施形態では、収容状態Dから突出途中状態Cに至るまでは両刃先部18の尖端18a間の間隔が生じない閉状態になっているが、それらの尖端18a間の間隔が若干生じたまま両刀身2,3の刃体9,10をケース23から突出させてもよい。
【0042】
・ 前記実施形態では、上下両刀身2,3を有する鋏本体1がケース23に対し移動可能に支持され、上側の刀身2がケース23に対し回動不能に支持されているとともに、下側の刀身3がケース23及び上側の刀身2に対し回動可能に支持されているが、上下両刀身2,3を共にケース23に対し回動可能に支持してもよい。
【0043】
・ 前記実施形態では、下側のハンドル6の左側にのみ突条22を形成したが、下側のハンドル6の右側にも突条22を形成してもよい。また、上下両刀身2,3を共にケース23に対し回動可能に支持した場合には上側のハンドル5にも突条22を形成してもよい。
【0044】
・ 前記実施形態では、鋏本体1及びケース23に設けた案内手段としてのガイドとして突条22,31,32を設けたが、それらのガイドの形態を変更してもよく、例えば、一方を突部とし他方を溝部とし、それらを互いに嵌め合って案内するようにしてもよい。
【0045】
・ 収容状態Dから突出途中状態Cに至るまでは両刃体9,10を閉状態のままにし、突出途中状態Cを過ぎた直後に両刃体9,10を最大に開いた開状態にしてもよいが、前述した実施形態のように、突出途中状態Cから突出途中状態Bを経て最大突出状態Aに至るに従い両刃体9,10を次第に開くようにしてもよい。
【0046】
・ 前記実施形態では、開閉中心部4の回動中心線4aに対し直交する方向の片側でケース23に操作摘み33を配設したが、その回動中心線4aの方向の片側でケース23に操作摘み33を配設してもよい。
【0047】
・ ケース23の外側に滑り止め凹凸部を設けてもよい。例えば、その滑り止め凹凸部としてブランド名やロゴマークを表示することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1…鋏本体、2,3…刀身、4…開閉中心部、4a…回動中心線、9,10…刃体、14…支軸、16a…支軸の係止段部(案内手段としてのガイド、軸の端部にある突部)、17…支軸の頭部(案内手段としてのガイド、軸の端部にある突部)、18…刃先部、18a…尖端、19a…板ばね(付勢手段)、22…突条(案内手段としてのガイド)、23…ケース、29…口部、31,32…突条(案内手段としてのガイド)、33…操作摘み、A…最大突出状態、C…突出途中状態、D…収容状態。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃体を有する一対の刀身を互いに開閉可能に支持した鋏本体と、その鋏本体を収容し得るケースとを備えたケース付き鋏において、鋏本体をケースに対し移動させた際に、鋏本体をケースに収容する収容状態と、両刀身の刃体をケースから突出させた突出状態とを取り、その収容状態では両刀身の刃体の開度を最大突出状態よりも小さくするように、鋏本体を案内する案内手段を備えたことを特徴とするケース付き鋏。
【請求項2】
前記案内手段は、鋏本体に設けたガイドとケースに設けたガイドとを備え、鋏本体に設けたガイドとケースに設けたガイドとの相互作用によって鋏本体をケースに対し移動させるとともに両刀身を互いに開閉させることを特徴とする請求項1に記載のケース付き鋏。
【請求項3】
鋏本体に設けたガイドは、両刀身を互いに回動可能に支持する開閉中心部の回動中心線の方向の両側のうち少なくとも一方の側で少なくとも一方の刀身に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のケース付き鋏。
【請求項4】
鋏本体をケースに対し移動させるためにケースに設けたガイドと、両刀身を互いに開閉させるためにケースに設けたガイドとを兼用していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のケース付き鋏。
【請求項5】
鋏本体に設けたガイドは突条であることを特徴とする請求項2または請求項3または請求項4に記載のケース付き鋏。
【請求項6】
前記鋏本体において両刀身を互いに回動可能に支持する開閉中心部の回動中心線に対し直交する方向の両側のうち一方の側でケースには、鋏本体をケースに対し移動させて両刀身の刃体をケースの口部から出入する操作摘みを鋏本体とともに移動可能に支持したことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項に記載のケース付き鋏。
【請求項7】
前記案内手段は、鋏本体をケースに対し移動させて両刀身の刃体をケースの口部から出入する際に、前記収容状態で両刀身の刃体が互いに閉じた閉状態のまま両刀身の刃体をケースの口部から突出させた突出途中状態を経て両刀身が互いに開いた開状態に至るように、鋏本体の両刀身を案内することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一つの請求項に記載のケース付き鋏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−81059(P2012−81059A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229722(P2010−229722)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)
【Fターム(参考)】