説明

ケーブル終端接続部

【課題】部品点数が少なく、簡易な構造で閃絡性能が向上したケーブル終端接続部を提供する。
【解決手段】ポリマー套管26とケーブル端末部28とから構成されている。
ポリマー套管26は、中心に導体引出棒12を有し、下端部にケーブル受容口14を有する硬質の絶縁筒16と、絶縁筒16の外周に設けられ、外周に多数の襞部18が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体20と、絶縁筒16の周面から外方に突出されたフランジ部22を有する支持金具24とを備えている。ケーブル端末部28は、絶縁筒16のケーブル受容口14に装着されている。ポリマー被覆体20は支持金具24よりも上位に位置され、ケーブル受容口14は支持金具24よりも下位に位置されている。支持金具24のフランジ部22は、外表面の角部30が曲面とされ、下面部32に、貫通しないねじ孔34が設けられたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルの気中終端に使用される、ポリマー套管を用いたケーブル終端接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリマー套管を用いたケーブル終端接続部としては、図3に示すような構成のものがある。同図において、従来のケーブル終端接続部は、後述するポリマー套管26と、このポリマー套管26に接合されたケーブル端末部28とを備えている。ポリマー套管26は、下端部に導体挿入孔12aを有する導体引出棒12と、導体引出棒12の外周に設けられ、下端部にケーブル端末部28を接合するケーブル受容口14を有する硬質の絶縁筒16と、絶縁筒16の外周に設けられるポリマー被覆体20とから構成されている。ケーブル端末部28は、絶縁筒16のケーブル受容口14に装着されるものである(特許文献1参照)。
【0003】
絶縁筒16は、機械的強度の高い材料、例えばエポキシ樹脂やFRPなどの硬質プラスチック樹脂で形成され、また、ポリマー被覆体20は、電気絶縁性能に優れる材料、例えばシリコンポリマーなどの高分子絶縁材料で形成されており、導体引出棒12、絶縁筒16およびポリマー被覆体20はモールドにより一体的に形成されている。
【0004】
絶縁筒16は、導体引出棒12の下位の外周部、すなわち導体挿入孔12aと対応する部分の外周部に設けられる大径絶縁筒16aと、この大径絶縁筒16aに連設され、導体引出棒12の先端部を除く部分の外周部に設けられる小径絶縁筒16bとを備えており、大径絶縁筒16aと小径絶縁筒16bの連設部分には支持金具24が配設されている。
【0005】
支持金具24は、絶縁筒16の下方部に導体引出棒1と同心状に埋設された筒状部23と、この筒状部23の下端部に連設され、絶縁筒16の周面から外方に突出されたフランジ部22とを有している。フランジ部22の外周縁部の下端面には底部金具40が取付ボルト42により固定されている。また、大径絶縁筒16aの下端部には後述するケーブル端末部28のストレスコーンを受容するコーン状のケーブル受容口14が設けられており、このケーブル受容口14は導体引出棒12の導体挿入孔12aと連通されている。
【0006】
ポリマー被覆体20は、小径絶縁筒16bの外周部に設けられ、その外周部には、多数個の襞部18がポリマー被覆体20の長手方向に沿って離間して形成されている。襞部18は、大径襞部と小径襞部とが交互に設けられている。なお、図中、符号46は、大径絶縁筒16aの外周部に配設され、上端部が支持金具24のフランジ部22の下面に取り付けられる保護金具を示している。
【0007】
上記したケーブル終端接続部は、次のようにして設置される。
先ず、ポリマー套管26を、底部金具40の下面に配設した支持碍子38を介して支持架台44に取り付ける。また、従来のケーブル端末部と同様に、ケーブル端末を段剥処理して露出させたケーブル絶縁体48の外周にストレスコーン50を装着するとともに、ケーブル導体52の先端部に周知の導体端子54を取り付ける。ストレスコーン50は、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)等のゴム状弾性を有するプレモールド絶縁体などからなり、このストレスコーン50の先端部にはケーブル受容口14の内壁面に装着される先細り状のコーン状部が設けられている。
【0008】
次に、ケーブル端末部28をケーブル受容口14に装着し、予めケーブル端末部側に配設した押圧装置53をケーブル受容口14側に向けて圧縮する。これにより、導体端子54が導体引出棒12の導体挿入孔12aにプラグイン接続されるとともに、ストレスコーン50のコーン状部がケーブル受容口14の内壁面に押し付けられる。従って、ケーブル受容口14の内壁面とコーン状部の外周面間における界面の絶縁性能が確保される。なお、図中、符号56はシール部、57は下部金具、58は中間金具、59は接地線をそれぞれ示している。
【0009】
このように構成されたケーブル終端接続部は、ケーブル受容口14がポリマー被覆体20よりも下位に配設されていることから、ポリマー套管26を従来のポリマー套管よりも細くすることができる。また、ポリマー套管26とケーブル端末部28との接続がポリマー被覆体20よりも下位で行われることから、ケーブル端末部28の段剥処理部の長さを短くできる。
【特許文献1】特開2003−304632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記の技術には、次のような解決すべき課題があった。
ポリマー被覆体20の襞部18の外径が小さいため、支持金具24に装着されている取付ボルト42が襞部18の周方向の外方に位置するようになる。従って、取付ボルト42の頭部が支持金具24の外表面からみて突起となるため、破壊時に取付ボルトの先端(頭部)に閃絡する。
【0011】
この閃絡を防止するため、図4に示す対策が考えられている。すなわち、図4に示すように、支持金具24のフランジ部22の外表面にシールドキャップ61を配設して、フランジ部22の外表面から突出している取付ボルト42の頭部を覆うようにするものである。
しかしながら、取付ボルトの頭部をシールドキャップ61で覆う構成は、部品点数が増え、組み立て工数の増加やコストアップ等につながるという難点がある。
【0012】
本発明は、上記課題を解消するためになされたもので、部品点数が少なく、簡易な構造で閃絡性能が向上したケーブル終端接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
中心に導体引出棒を有し、下端部にケーブル受容口を有する硬質の絶縁筒と、上記絶縁筒の外周に設けられ、外周に多数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体と、上記絶縁筒の周面から外方に突出されたフランジ部を有する支持金具とを含むポリマー套管と、上記絶縁筒のケーブル受容口に装着されたケーブル端末部とを備え、上記ポリマー被覆体は、上記支持金具よりも上位に位置され、上記ケーブル受容口は、上記支持金具よりも下位に位置され、上記支持金具のフランジ部は、外表面の角部が曲面とされ、下面部に、貫通しないねじ孔が設けられたものであることを特徴とするケーブル終端接続部。
【0014】
構成1のケーブル終端接続部を支持架台に設置するときは、支持架台と支持金具のフランジ部との間に複数個の支持碍子を介在させ、同フランジ部のねじ孔を利用し取付ボルトで固定する。同フランジ部のねじ孔は、同フランジ部を貫通しないものである。取付ボルトは、このねじ孔にフランジ部の下側から螺合され、同フランジ部の上面から突出しない。従って、支持金具のフランジ部の外表面の角部を曲面とし、同フランジ部の下面部に、貫通しないねじ孔を設けたことにより、フランジ部をシールドキャップで覆う必要がないから、部品点数が少なく、簡易構造で閃絡性能を向上させることが可能である。
さらに、構成1のケーブル終端接続部は次の効果を奏する。すなわち、ケーブル受容口が支持金具よりも下位に位置されてポリマー被覆体の下端よりも下方に位置することから、ポリマー套管を従来のポリマー套管よりも細くすることができる。また、ポリマー套管が細くなる結果、ポリマー套管の投影断面積が小さくなり、短尺のポリマー套管でも所定の汚損耐電圧特性を維持することができる。また、ポリマー被覆体が支持金具よりも上位に位置されて、導体引出棒とケーブル導体との接続がポリマー被覆体よりも下位で行われることから、ケーブル端末部の段剥処理部の長さを短くできる。
【0015】
〈構成2〉
構成1記載のケーブル終端接続部において、上記支持金具のフランジ部に、支持碍子を固定するための底部金具を、上記ねじ孔に螺合した取付ボルトにより取付けたことを特徴とするケーブル終端接続部。
【0016】
支持碍子は支持架台にケーブル終端接続部を設置する際に、支持架台と底部金具との間に複数個が配設される。
支持金具のフランジのねじ孔に、下側から螺合された取付ボルトは、同フランジ部の上面を貫通することがない。従って取付ボルトの先端への閃絡が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を実施例ごとに詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は実施例1のケーブル終端接続部を示す断面図、図2はその主要部の拡大断面図である。
これらの図に示される実施例1のケーブル終端接続部は、絶縁筒16の下部に設けられた支持金具24の構成部分を除いては図3に示した全体構造と同一である。従って図1と図2には、図3と同一部分に同一符号を付して、重複する詳細な説明は省略する。
【0019】
図1、図2において、実施例1のケーブル終端接続部は、中心に導体引出棒12を有し、下端部にケーブル受容口14を有する硬質の絶縁筒16と、絶縁筒16の外周に設けられ、外周に多数の襞部18が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体20と、絶縁筒16の周面から外方に突出されたフランジ部22を有する支持金具24とを含むポリマー套管26と、絶縁筒16のケーブル受容口14に装着されたケーブル端末部28とを備えている。
【0020】
支持金具24は、絶縁筒16の下方部に導体引出棒1と同心状に埋設された筒状部23と、この筒状部23の下端部に連設され、絶縁筒16の周面から外方に突出されたフランジ部22とを有している。
【0021】
ポリマー被覆体20は支持金具24よりも上位に位置し、ケーブル受容口14は支持金具24よりも下位に位置している。
支持金具24のフランジ部22は、図2(b)に示すように、外表面の角部30が曲面とされ、下面部32に、貫通しないねじ孔34、35が設けられている。ねじ孔34、35のうち、ねじ孔34は、底部金具40を取付けるときに使用するものであり、ねじ孔35は、中間金具58を固定するときに使用するものである。なお、貫通しないねじ孔とは、フランジ部22の上面を貫通しない盲孔に、ねじ溝を穿ったものである。
【0022】
ケーブル終端接続部を支持架台44に設置するときは、支持金具24のフランジ部22に底部金具40を取付ける。底部金具40は、同フランジ部22のねじ孔34に取付ボルト42を螺合して固定される。
支持架台44と底部金具40との間に、ポリマー套管26の周囲に4ないし6個程度の支持碍子38が配設されてケーブル終端接続部が支持架台に支承される。
【0023】
実施例1においては、支持金具24のフランジ部22の外表面の角部30を曲面とし、同フランジ部22の下面部に、貫通しないねじ孔34、35を設けたことにより、フランジ部22をシールドキャップ等で覆う必要がないから、部品点数が少なく閃絡性能を向上させることができる。
【0024】
本出願人は、本発明のケーブル終端接続部について閃絡試験を行い、その結果を検討したので、以下説明する。
(1)AC閃絡(商用周波閃絡)試験結果について
電界が最も高いシリコーンゴム製のポリマー被覆体の襞部先端においては、気中放電が発生した後、閃絡する。上部の金具類などに閃絡痕が残るが、ポリマー套管は、襞部の頂点が一部変色するのみで、カーボナイズはほとんどない。また、閃絡後の再課電において、閃絡値の低下は見られない。
(2)Imp閃絡(雷インパルス閃絡)試験結果について
上部の金具付近のポリマー被覆体表面および襞部表面上にストリーマの痕が見られるが、焼損はしていない。また、閃絡後の再課電において、閃絡値の低下は見られない。
【0025】
これらのことから、ケーブル終端接続部の閃絡は、襞部表面上の空気中にて起こることから、表面閃絡によるポリマー被覆体のシリコーンゴム部へのダメージが少ないことが確認できた。
なお、閃絡試験において取付ボルトを底部金具の下面から取付け、支持金具のフランジ部の上面に取付ボルトが突出しない構造としたことから、同フランジ部近傍には閃絡痕が生じないことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1のケーブル終端接続部を示す縦断面図である。
【図2】図1の主要部を拡大して示す縦断面図である。
【図3】従来のケーブル終端接続部を示す縦断面図である。
【図4】従来の他のケーブル終端接続部の要部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0027】
12 導体引出棒
14 ケーブル受容口
16 絶縁筒
18 襞部
20 ポリマー被覆体
22 フランジ部
23 筒状部
24 支持金具
26 ポリマー套管
28 ケーブル端末部
30 角部
32 下面部
34 ねじ孔
35 ねじ孔
38 支持碍子
40 底部金具
42 取付ボルト
44 支持架台
46 保護金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に導体引出棒を有し、下端部にケーブル受容口を有する硬質の絶縁筒と、前記絶縁筒の外周に設けられ、外周に多数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体と、前記絶縁筒の周面から外方に突出されたフランジ部を有する支持金具とを含むポリマー套管と、
前記絶縁筒のケーブル受容口に装着されたケーブル端末部とを備え、
前記ポリマー被覆体は、前記支持金具よりも上位に位置され、
前記ケーブル受容口は、前記支持金具よりも下位に位置され、
前記支持金具のフランジ部は、外表面の角部が曲面とされ、下面部に、貫通しないねじ孔が設けられたものであることを特徴とするケーブル終端接続部。
【請求項2】
請求項1記載のケーブル終端接続部において、
前記支持金具のフランジ部に、支持碍子を固定するための底部金具を、前記ねじ孔に螺合した取付ボルトにより取付けたことを特徴とするケーブル終端接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−33899(P2006−33899A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204196(P2004−204196)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】