説明

ケーブル鋼管の補修部材

【課題】 通信ケーブルの空中敷設部分を保護するケーブル鋼管の劣化部分を切取撤去した後の残留箇所の端縁が、その切取箇所の外周を覆うように接続管を配設することができない場合であっても、既設ケーブル鋼管の腐食箇所の取替え補修を確実かつ容易に行うことができるケーブル鋼管補修部材を提供する。
【解決手段】 劣化した空中敷設部分が切断除去された後の橋梁10に埋設されたケーブル鋼管2aの開口端の内径にほぼ等しい外径を有してケーブル鋼管2aの開口端の内部に挿入される一方の主管部32と、該主管部32の端部と反対側に連設されたより大径の突当て部31とを具えた、概略円筒形状部材を中心軸方向に沿って二分割して成る一対の鋼管補修ソケット3a,3bを含むようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内部に嵌挿された通信ケーブルと共に例えば、橋脚部分を挿通して空中敷設されたケーブル鋼管の補修部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電話線を含む多くの通信配線を束ねた通信ケーブルは美観上の配慮から、あるいは、耐久性の向上等のために、近年は特に都市部において、空中敷設から地下敷設へと切り替えられるようになった。かかる地下敷設ケーブルにあっても、建物内への引き込みや地中構造による必然的制約等のため、地中敷設ケーブルを止むなく部分的に空中敷設せざるを得ない場合がある。このように、地中から地上に引き出された通信ケーブルを外側から覆って保護するケーブル鋼管は風雨に曝され、あるいは温度変化により生じる物理的化学的劣化現象である風化作用により、地中埋設部分に較べて腐食がより早く進行する。
【0003】
そこで、腐食が進行した空中敷設箇所は切取撤去され、代わりに円筒を二分割した断面半円状の一対の半割鋼管に置き換えられ、それらの両端の接続部分は当該箇所を外側から覆うように、より大径の一対の半割接続鋼管で補強接続されていた。これらの一対の半割接続鋼管は軸方向に離れた2箇所を周回して締め付けるステンレスバンドで一体化されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、地中埋設ケーブルが河川を跨って敷設される場合は、橋梁間の空中敷設部分は上述のように、腐食が早く進行するが、特に橋梁に近い部分は自重や外力による応力が集中し易いため、当該部分での腐食劣化が著しい。この部分での劣化は橋梁に近い程顕著になるので、腐食した鋼管を取り替える場合は、橋梁の外壁に接近した箇所から切取撤去される。
【0005】
このように、腐食した既設の空中敷設鋼管を取り替える場合は、残存する既設鋼管は橋梁の外壁に接近した箇所が切断端となる。このため、地中埋設された既設鋼管またはこれに連なる既設ケーブル鋼管の一方の端縁は橋梁の外壁に極接近した箇所になるため、当該箇所を覆うように接続鋼管を取り付けることは極めて困難になり、事実上補修することができなかった。
【0006】
本発明は従来技術におけるかかる困難を克服すべく為されたものであり、通信ケーブルの空中敷設部分を保護するケーブル鋼管の劣化部分を切取撤去した後の残留箇所の端縁が、その切取箇所の外周を覆うように接続管を配設することができない場合であっても、既設ケーブル鋼管の腐食箇所の取替え補修を確実かつ容易に行うことができるケーブル鋼管補修部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のケーブル鋼管の補修部材は、劣化した空中敷設部分が切断除去された後の構造物埋設部に連なるケーブル鋼管の開口端の内径にほぼ等しい外径を有してケーブル鋼管の開口端の内部に挿入される一方の主管部と、該主管部の端部と反対側に連設されたより大径の突当て部とを具えた、概略円筒形状部材を中心軸方向に沿って二分割して成る一対の鋼管補修ソケットを含むようにしたものである。また、本発明のケーブル鋼管の補修部材が管補修ソケットの突当て部を挟んで一方の主管部と反対側に連設された他方の主管部に外挿され、円筒形状部材を中心軸方向に沿って二分割して成る一対の連結管を含むようにしても良く、さらに、補修部材がガラス繊維補強樹脂で構成されるようにしても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構造物埋設部に連なるケーブル鋼管の開口端の内側に、半割形状の一対の鋼管補修ソケットの一方の主管部を挿入すると共に前記開口端を鋼管補修ソケットの突当て部に突き当てて取り付けることにより、構造物埋設部に連なるケーブル鋼管の開口端の前記構造物壁面よりの突き出し距離が殆ど無いような場合でも、劣化したケーブル鋼管の補修を確実かつ容易に行うことができる。また、この補修に、突当て部を挟んで一方の主管部と反対側に連設された他方の主管部に外挿される連結管を用いれば、空中敷設部分の多くの部分が腐食劣化した場合でも、無難にケーブル鋼管を補修することができる。さらに、補修部材をガラス繊維補強樹脂で構成すれば、補修工事の労働負荷を軽減できると共に、補修により組み込まれた補修部材の耐久性や機械的強度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を橋梁間の空中敷設部分のケーブル鋼管の補修に適用した典型的な2つの具体例を実施例として説明する。
【実施例1】
【0010】
始めに、図面を参照して本発明の第1の実施例を詳細に説明する。本実施例では通信ケーブルは川を横断して架け渡された生活道路の下部に平行して一方の橋梁から対岸の橋梁の間に配設されている。図1、図2、図3、図4および図5はそれぞれ本発明の第1の実施例に係る組み付け工程を示す斜視図、半割の鋼管補修ソケットの正面図(a)と側面図(b)と背面図(c)、鋼管補修ソケットの組み付け状態を示す縦断面図、ケーブル鋼管補修工程完了状態を示す縦断面図およびその斜視図である。
【0011】
これらの図に示すように、一方が橋脚10中に埋設され、他方が空中に敷設された既設のケーブル鋼管2a,2bは空中敷設部分、特に橋脚10の外壁101に近い箇所の腐食が著しいため、一方は橋脚10の外壁101に接近した場所で、また、他方はそこから幾分離れた箇所で切断され、撤去される。図1はこの腐食部分撤去後の組み付け工程を示している。これらの既設のケーブル鋼管2a,2bの間には通常はこれらの内部を貫通する通信ケーブル1が配設されている。
【0012】
前述のように、ケーブル鋼管の、特に橋脚10の外壁101に近い箇所の腐食が著しいため、一方のケーブル鋼管2aの橋脚10から空中に露出した端縁は殆ど外壁101と面一と同じ状態になっている。本実施例ではケーブル鋼管2a,2bの間に設置されていた撤去されたケーブル鋼管の代わりに、通信ケーブル1の外側を囲むように覆って保護する主な部材として、半割のFRP(ガラス繊維補強樹脂)製で既設のケーブル鋼管2a,2bと同径の連結管4a,4bが用いられる。
【0013】
しかし、上述のように、この状態ではこれらの連結管4a,4bと橋脚10中に埋設されたケーブル鋼管2aとを接続することができない。そこで、本実施例では両者を接続するための部材として概略半割管状の一対の鋼管補修ソケット3a,3bを用いる。これらの鋼管補修ソケット3a,3bはケーブル鋼管2a,2bの内径とほぼ等しい外径を有した半割円筒状の主管部32と、この主管部32の軸方向中央部でリブ状に周方向に沿って外方に突出した突当て部31とから成っている。主管部32の両端の内周は軸方向外方に向かって径が大きくなるような湾曲面33形状を成している。一対の鋼管補修ソケット3a,3bが当接する切り出し面には小径部側に若干の糊代部を残してゴム止水34がそれぞれ接着されている(図2参照)。なお、ゴム止水は当接する一方の切り出し面だけに設けても良い。また、図示しないが、連結管4a,4bの切り出し面にもゴム止水がそれぞれ接着されている。
【0014】
次に、鋼管補修ソケット3a,3bを用いたケーブル鋼管補修工事の施工方法を説明する。まず、鋼管補修ソケット3a,3bの一方の主管部32の外周面に接着剤を塗布した後、中央の露出した通信ケーブル1部分を外側から取り囲むように主管部32の切り出し面を当接させて接着しつつ、接着剤を塗布した(左)側の主管部32をそれぞれ橋脚10中に埋設された既設のケーブル鋼管2a内に挿入し、突当て部31がケーブル鋼管2aの外壁101に近い端縁に突き当たった状態で据え付けを完了する。次に、露出した通信ケーブル1を外側から取り囲んで、一対の連結管4a,4bを互いの軸方向に沿った切り出し面が当接して円筒体を成すように組み付け、また同時に、一方の端縁が鋼管補修ソケット3a,3bの突当て部31に軸方向に平行に当接すると共に、他方の端縁が空中敷設された既設のケーブル鋼管2bの開口端縁に当接するように配設する。
【0015】
前述のように、連結管4a,4bの内外径はケーブル鋼管2a,2bと同径となるように形成されているから、鋼管補修ソケット3a,3bの他(右)方の主管部32の端面は連結管4a,4bの一(左)方の端面の全面に接触した状態で、また、連結管4a,4bの他方の端面は空中敷設された既設のケーブル鋼管2bの開口(左)側端面と完全に合致する状態で保持される。
【0016】
そこで、連結管4a,4bの他方の端面と既設のケーブル鋼管2bの開口端面との当接部との近傍を外側から覆うように、内径がほぼケーブル鋼管2a,2bの外径と同径の半割管状の一対のFRP製の接続管5a,5bを、それらの内周面に接着剤を塗布した後、それらの軸方向に沿った切り出し面が互いに当接するようにして組み付ける。そして、この連結管4a,4bと既設のケーブル鋼管2bのと接合部と、鋼管補修ソケット3a,3bの他(右)方の主管部32と連結管4a,4bの一(左)方の端部との接合部とにそれぞれ組み付けられた2対の接続管5a,5bの各々の外周面の離れた2箇所にステンレスバンド6a〜6cをそれぞれ巻き付け、周知の固定用具で締め付け固定する。これにより、鋼管補修ソケット3a,3bと連結管4a,4bはそれぞれの軸方向に沿った切り出し面がゴム止水(34)で密封されるから、これらの内部に雨水等が浸み込んで通信ケーブル1を腐食させる等の不具合の発生を防止できる。
【0017】
上述のように、本実施例では橋脚10中に埋設された既設のケーブル鋼管2aと空中敷設された既設のケーブル鋼管2bとを、撤去されたケーブル鋼管の代わりに配設される一対の鋼管補修ソケット3a,3bと、それらの他(右)方の端部に接する一対の連結管4a,4bと、それらの各当接部を連結して保護する一対の接続管5a,5bとで接続したから、橋脚10の外壁101から露出した既設のケーブル鋼管2aの外周を接続鋼管で覆って接続することができない場合であっても、橋脚10中に埋設された既設のケーブル鋼管2aと空中敷設された既設のケーブル鋼管2bとを確実かつ容易に接続することができる。
【0018】
また、既設のケーブル鋼管の補修部材として用いられる鋼管補修ソケット3a,3b、連結管4a,4b、接続管5a,5bを全てFRP製のもので構成したから、鋼管で構成したものに較べて重量が著しく軽いため極めて作業性が良く、海岸線に近い場所や寒冷地等腐食劣化が著しい環境であっても耐久性が良好であり、固定接続にステンレスバンド6a〜6cを用いてもイオン化傾向の違いによる腐食が生じ難い。
【0019】
また、これらの既設のケーブル鋼管の補修部材を全て一対の同形の半割管状のもので構成したから、間が切断された既設のケーブル鋼管2a,2bの間に通信ケーブル1が連通した儘の状態で既設のケーブル鋼管の補修作業を実施することができる。鋼管補修ソケット3a,3bの主管部32の軸方向中央部に径がより大きな突当て部31を設けたから、既設のケーブル鋼管の補修工事の後で通信ケーブル1を除去したり取り換えたりする工事を行う場合に、通信ケーブル1が鋼管補修ソケット3a,3bの他方の端縁に接触して、摩擦力により鋼管補修ソケット3a,3bを既設のケーブル鋼管2a内に引き込んでしまうような不具合の発生を防止できる。
【実施例2】
【0020】
次に、既設のケーブル鋼管の空中敷設部分の腐食の程度が比較的少なく、腐食箇所がほぼ橋脚10の外壁101に近い箇所に限定されるような場合に好適に適用される本発明の第2の実施例を詳細に説明する。図6、図7、図8および図9はそれぞれ本発明の第2の実施例に係る組み付け工程を示す斜視図、鋼管補修ソケットの正面図(a)と側面図(b)と背面図(c)、鋼管補修ソケットの組み付け状態を示す縦断面図およびケーブル鋼管補修工程完了状態を示す斜視図である。第1の実施例と同一または同等と見なせる箇所には同一の符号を、構造上若干の相違がある箇所には「´」を付してある。
【0021】
本実施例では既設のケーブル鋼管の空中敷設部分の腐食の程度が比較的少ないため、第1の実施例における連結管が省略されている。従って、図7に示すように、鋼管補修ソケット3a´,3b´の構造は上記実施例のものとは若干相違している。即ち、鋼管補修ソケット3a´,3b´の一方の主管部32はケーブル鋼管2aの内径とほぼ等しい外径を有しているが、他方の主管部35はその内外径がケーブル鋼管2bのものと同じになるように形成されている。他の構成は第1の実施例のものと変わらない。
【0022】
次に、本実施例のケーブル鋼管補修工事の施工方法を説明する。橋脚10中に埋設された既設のケーブル鋼管2aと鋼管補修ソケット3a´,3b´の一方の主管部32との接続方法は第1の実施例と同様である。一対の鋼管補修ソケット3a´,3b´の他方の主管部35と空中敷設部分の既設のケーブル鋼管2bとの接続は、内周面に接着剤を塗布した一対のFRP製の接続管5a,5bをそれらの軸方向に沿った切り出し面が当接するように保持し、鋼管補修ソケット3a´,3b´の他方の主管部35と既設のケーブル鋼管2bの当接部を外側から覆うように取り付けた後、それらの外周面にステンレスバンド6b,6cをそれぞれ巻き付け、周知の固定用具で締め付け固定する。
【0023】
上述のように、本実施例では他方の主管部35はその内外径が空中に敷設されたケーブル鋼管2bと同じになるように形成したが、外径をケーブル鋼管2a,2bの内径とほぼ等しく形成すると共に、既設のケーブル鋼管2bの開口端内部に挿入する構成としても良い。この場合は、突当て部31の軸方向幅をある程度長く設定する必要がある。本実施例によれば、必要最低限の点数のケーブル鋼管の補修部材を用いて既設のケーブル鋼管の補修工事を行うことができる。この外の効果は第1の実施例と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施例に係る組み付け工程を示す斜視図
【図2】同じく、半割鋼管補修ソケットの正面図(a)と側面図(b)と背面図(c)
【図3】同じく、半割鋼管補修ソケットの組み付け状態を示す縦断面図
【図4】同じく、ケーブル鋼管補修工程完了状態を示す縦断面図
【図5】同じく、図4の斜視図
【図6】本発明の第2の実施例に係る組み付け工程を示す斜視図
【図7】同じく、半割鋼管補修ソケットの正面図(a)と側面図(b)と背面図(c)
【図8】同じく、半割鋼管補修ソケットの組み付け状態を示す縦断面図
【図9】同じく、ケーブル鋼管補修工程完了状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0025】
1 通信ケーブル
2a,2b ケーブル鋼管
3a,3b,3a´,3b´ 鋼管補修ソケット
4a,4b 連結管
5a,5b 接続管
6a〜6c ステンレスバンド
31 突当て部
32,35 主管部
34 ゴム止水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中敷設部と構造物埋設部とを有し、内部に通信ケーブルが挿通されたケーブル鋼管における劣化した空中敷設部分の補修を行うためのケーブル鋼管の補修部材において、劣化した前記空中敷設部分の一部が切取除去された後の前記構造物埋設部またはこれに連なる既設の前記ケーブル鋼管の開口端の内径にほぼ等しい外径を有して前記開口端の内部に挿入される一方の主管部と、該主管部の開口側一端部と反対側に連設されたより大径の突当て部とを有した略円筒形状部材を中心軸方向に沿って二分割して成る一対の鋼管補修ソケットを含むことを特徴とするケーブル鋼管の補修部材。
【請求項2】
鋼管補修ソケットの突当て部を挟んで一方の主管部と反対側に連設された他方の主管部に外挿される円筒状体を中心軸方向に沿って二分割して成る一対の連結管体を含むことを特徴とする請求項1記載のケーブル鋼管の補修部材。
【請求項3】
補修部材はガラス繊維補強樹脂、塩化ビニール樹脂またはセラミックで構成されたことを特徴とする請求項1または2記載のケーブル鋼管の補修部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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