説明

ゲル状食品およびその製造方法

【課題】外層部1の内方に内層部2を有するゲル状食品を製造する方法を提供する。
【解決手段】ゲル化剤、カルシウム、及び増粘剤を含む外層用原料液を容器内に充填し、次いで、ゲル化剤を含み、pHが5.0以下である内層用原料液を該容器内に充填する工程を有し、外層用原料液のゲル化剤が、寒天および/またはゼラチンを含み、内層用原料液のゲル化剤が、ローメトキシルペクチンを含み、20℃における、外層用原料液の比重をd、内層用原料液の比重をdとし、充填時の温度における外層用原料液の粘度をv[単位:mPa・s]、充填時の温度における内層用原料液の粘度をv[単位:mPa・s]とするとき、次の条件を満たすゲル状食品の製造方法。
1.0≦d≦1.5、0.012≦d−d≦0.024、100≦v≦400、かつ1000≦v≦3000。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器入りのゲル状食品の製造方法、および該製造方法で製造されるゲル状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
容器入りゲル状食品において、1つの製品中に、互いに異なる風味を有する2種以上のゲル状部を有する製品を製造する方法としては、下層部となる原料液を充填した後に、一旦ゲル化させ、その上に上層部を充填してゲル化させることによって、多層構造とする方法がある。
【0003】
また少ない工程数で効率よく製造する方法として、容器内に2種または3種の原料液を順次充填した後に、一括的にゲル化させて、多層構造を有するゲル状食品を製造する方法も提案されている
例えば特許文献1には、容器内に高粘度の下層部ミックスを充填し、続いて、これよりも低粘度の上層部ミックスを脈流させながら充填した後に冷却することにより、上層と下層との界面が明瞭に形成された多層食品を製造する方法が記載されている。
また特許文献2には、容器内に比重が大きい下層部ミックスを充填し、続いて、これよりも比重が小さい上層部ミックスを充填した後に冷却することにより、上層と下層との界面が明瞭に形成された多層食品を製造する方法が記載されている。
【0004】
特許文献3には、容器内に、まず特定の比重の上位層液を充填し、次いで特定の動的貯蔵弾性率と粘度と比重を有する下位層液を充填すると、該下位層液が上位層液を通り抜けて容器底面部に広がり、続いて特定の粘度と比重を有する中位層液を充填すると、該中位層液は上位層液を通り抜けるが下位層液は通り抜けずに、製品内部に留まり、この状態でゲル化させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4022558号公報
【特許文献2】特許第4417184号公報
【特許文献3】特許第4071739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、容器内に上方から充填された原料液は水平方向に広がる。したがって、特許文献1または2に記載の方法では、例えば図5または図6に示すような、下層11と上層12とが下から順に積層された2層の積層構造しか得られず、外層部の内方に内層部を有する形態のゲル状食品は得られない。図5、6の(a)は側断面図、(b)は上面図、(c)は下面図である。図中符号11は下層、12は上層、13は容器を示す。
特許文献3に記載の方法でも、上位層液を充填した後に充填された下位層液は水平方向に広がるため、2種の原料液が比重差によって積層した状態となる。この状態で中位層液を充填するため、下位層と中位層と上位層とが下から順に積層され、中位層が製品の内部に包含されている3層構造しか得られず、外層部の内方に内層部を有する形態のゲル状食品は得られない。
【0007】
このように、外層部の内方に内層部を有するゲル状食品を製造する方法はこれまでに知られていない。
したがって、例えば、プリン状またはゼリー状の外層部の内方に、とろみを有するソース状の内層部を有する容器入りデザート等の、ゲル状食品を製造することは困難であった。
【0008】
本発明は、外層部の内方に内層部を有するゲル状食品を製造する方法、および該方法で製造されるゲル状食品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のゲル状食品の製造方法は、ゲル化剤、カルシウム、及び増粘剤を含む外層用原料液を容器内に充填し、次いで、ゲル化剤を含み、pHが5.0以下である内層用原料液を該容器内に充填する工程を有し、前記外層用原料液のゲル化剤が、寒天および/またはゼラチンを含み、前記内層用原料液のゲル化剤が、ローメトキシルペクチンを含み、20℃における、外層用原料液の比重をd、内層用原料液の比重をdとし、充填時の温度における外層用原料液の粘度をv[単位:mPa・s]、充填時の温度における内層用原料液の粘度をv[単位:mPa・s]とするとき、下記a)〜d)の条件を満たすことを特徴とする。
a)1.0≦d≦1.5であり、
b)0.012≦d−d≦0.024であり、
c)100≦v≦400であり、かつ
d)1000≦v≦3000である。
【0010】
前記内層用原料液の充填時の温度が0〜15℃であることが好ましい。
前記外層用原料液の充填終了から前記内層用原料液の充填開始までの時間が0.1〜600秒であり、前記内層用原料液の充填開始から充填終了までの時間が0.5〜2秒であることが好ましい。
前記内層用原料液を、前記容器の回転中心軸上に充填することが好ましい。
前記外層用原料液におけるゲル化剤の含有量が0.1〜2.0質量%であり、該ゲル化剤のうち、寒天とゼラチンの合計が80質量%以上であることが好ましい。
前記内層用原料液のローメトキシルペクチンの、エステル化度を表すDE値が30%以上であることが好ましい。
前記内層用原料液におけるゲル化剤の含有量が0.1〜1.0質量%であり、該ゲル化剤のうち、ローメトキシルペクチンが90質量%以上であることが好ましい。
前記請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法により製造されるゲル状食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、容器に、外層用原料液を充填した後に内層用原料液を充填したときに、内層用原料液が水平方向に広がるのが抑えられ、外層部の内方に内層部を有するゲル状食品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造方法で得られるゲル状食品の製品形態の例を模式的に示したもので、(a)は側断面図、(b)は上面図、(c)は下面図である。
【図2】本発明の製造方法で得られるゲル状食品の製品形態の例を模式的に示したもので、(a)は側断面図、(b)は上面図、(c)は下面図である。
【図3】本発明の製造方法で得られるゲル状食品の製品形態の例を模式的に示したもので、(a)は側断面図、(b)は上面図、(c)は下面図である。
【図4】本発明の製造方法で得られるゲル状食品の製品形態の例を模式的に示したもので、(a)は側断面図、(b)は上面図、(c)は下面図である。
【図5】従来の製造方法で得られるゲル状食品の例を模式的に示したもので、(a)は側断面図、(b)は上面図、(c)は下面図である。
【図6】従来の製造方法で得られるゲル状食品の例を模式的に示したもので、(a)は側断面図、(b)は上面図、(c)は下面図である。
【図7】本発明の実施例にかかる外層用原料液の動的貯蔵弾性率G’、動的損失弾性率G’’、およびtanδの測定結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例にかかる内層用原料液の動的貯蔵弾性率G’、動的損失弾性率G’’、およびtanδの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における、各原料液の比重は20℃における値である。
本発明における、各原料液の粘度の値は、充填時の温度において、B型粘度計を用いて測定した値である。
【0014】
<外層用原料液>
[ゲル化剤]
外層用原料液はゲル化剤として寒天および/またはゼラチンを含む。寒天とゼラチンは、それぞれ単独で使用してもよく、任意の比率で併用してもよい。寒天およびゼラチンはいずれも比較的高温でゲル化を生じ、温度の低下に伴ってゲル化が進む。寒天は約40℃以下でゲル化を生じ、ゼラチンは約30℃以下でゲル化を生じる。
本発明において、外層用原料液中のゲル化剤として寒天および/またはゼラチンを用いることによって、外層用原料液を充填した後に、充填された内層用原料液が水平方向に広がるのが抑制されるとともに、外層部の良好な食感および良好な保形性が得られる。外層部の保形性が良好であると、輸送時の衝撃によって外層部が壊れにくいため好ましい。
【0015】
外層用原料液は、本発明の効果を損なわない範囲で、寒天またはゼラチン以外の他のゲル化剤を含んでもよい。他のゲル化剤としては、容器入りゲル状食品の分野で公知のゲル化剤を使用することが可能である。ただし、外層用原料液中のカルシウムと反応してゲル化するゲル化剤は、使用量を少量とするか、または使用しないことが好ましい。例えば、外層用原料液はローメトキシルペクチンを含まないことが好ましい。
他のゲル化剤として使用可能なゲル化剤の具体例としては、ジェランガム(ネイティブ型ジェランガム)、ローカストビーンガムとキサンタンガムの混合ゲル(例えば、三栄源FFI社製、ゲルアップ(登録商標)SA−3)等が挙げられる。この場合、外層用原料液に添加する使用量は、ジェランガムであれば0.1質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以下であり、ローカストビーンガムとキサンタンガムの混合ゲルであれば0.4質量%以下であることが好ましい。
【0016】
外層用原料液に配合するゲル化剤のうち、寒天とゼラチンの合計が占める割合が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上でがさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
外層用原料液におけるゲル化剤の含有量は0.1〜2.0質量%が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると、外層部の良好な保形性が得られやすく、上限値以下であると、内層部が外層部の中央部に内包された形態が得られやすい。
【0017】
[カルシウム]
外層用原料液はカルシウムを含む。カルシウムは、内層用原料液中のローメトキシルペクチンのゲル化を促進して、外層用原料液中に充填された内層用原料液が水平方向に広がるのを抑制する効果に寄与する。
具体的には、カルシウムを含む原料を外層用原料液に配合する。カルシウムを含む原料の具体例としては、生乳、牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳等の乳類;ホエイパウダー、チーズ、バター、クリーム等の乳類を原料とする乳製品;乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、水酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、硅酸カルシウム等のカルシウム塩;が挙げられる。
外層用原料液におけるカルシウムの含有量(合計量)は、所期の効果が充分に得られやすい点で、10mg/100g以上が好ましく、30mg/100g以上がより好ましい。該カルシウムの含有量の上限値は特に限定されない。食感や風味のからは300mg/100g以下が好ましく、200mg/100g以下がより好ましい。
【0018】
[増粘剤]
外層用原料液は増粘剤を含む。増粘剤としては、容器入りゲル状食品の分野で公知の増粘剤を使用することが可能である。酸性である内層用原料液と接触するため、酸性において反応して凝固物等を生成する増粘剤は、使用量を少量とするか、または使用しないことが好ましい。
外層用原料液に配合する好ましい増粘剤の具体例としては、ローカストビーンガム、タマリンドガム、カラヤガム、キサンタンガム、グァーガム、大豆多糖類等の増粘多糖類;加工デンプン;などが挙げられる。
外層用原料液における増粘剤の含有量は、外層用原料液の粘度が所定の範囲となるように調整される。
【0019】
[その他の成分]
外層用原料液は、上記の成分の他に、糖類、油脂、乳化剤、果汁、色素、調味料、香料、不溶性粒子、チョコレート等を、充填可能な液状となる範囲で適宜配合することができる。
【0020】
[外層用原料液のpH]
外層用原料液のpHは、外層用原料液に含まれる成分が凝集物を生じない範囲であればよく、特に限定されない。例えば、外層用原料液が乳類または乳製品に由来するカゼインタンパク質を含む場合、該カゼインタンパク質の酸凝固を防止するために、外層用原料液のpHは5.0以上であることが好ましく、6.0以上がより好ましい。
【0021】
<内層用原料液>
[ゲル化剤]
内層用原料液はゲル化剤としてローメトキシルペクチンを含む。ペクチンは、主にガラクチュロン酸とメチル化ガラクチュロン酸で構成される多糖類であり、メチル化ガラクチュロン酸が占める割合をエステル化度(DE値:Degree of esterification)として表す。メチル化ガラクチュロン酸の占める割合が50%以上のものをハイメトキシルペクチンとであり、50%未満のものをローメトキシルペクチンと呼ぶ。
ローメトキシルペクチンは単体ではゲル化しないが、カルシウムとの反応によりゲル化を生じる。ゲル化に適したpHは、低pH領域(pH3.5〜4.5程度)である。したがって、酸性の内層用原料液を外層用原料液中に充填したときに、内層用原料液中のローメトキシルペクチンが、外層用原料液中のカルシウムと反応して、速やかにゲル化を生じる。これにより充填された内層用原料液が水平方向に広がるのが抑制されて、外層部の内方に内層部を有する形態のゲル状食品が得られる。
一般的に、ローメトキシルペクチンのDE値が低くなるにしたがって、カルシウムとの反応性が高くなる傾向がある。内層用原料液に配合するローメトキシルペクチンのDE値は30%以上が好ましく、35%以上がより好ましい。該DE値の上限は実質的に50%未満であり、好ましくは45%以下である。該DE値が上記の範囲内であると、内層部が外層部の中央部に内包された形態が得られやすい。
【0022】
内層用原料液は、本発明の効果を損なわない範囲で、ローメトキシルペクチン以外の他のゲル化剤を含んでもよい。他のゲル化剤としては、容器入りゲル状食品の分野で公知のゲル化剤を使用することが可能である。ただし、酸性の液中で加熱された場合に加水分解を生じやすいゲル化剤は、使用量を少量とするか、または使用しないことが好ましい。例えば、内層用原料液は寒天またはゼラチンを含まないことが好ましい。
他のゲル化剤として使用可能なゲル化剤の具体例としては、脱アシルジェランガム等が挙げられる。
【0023】
内層用原料液に配合するゲル化剤のうち、ローメトキシルペクチンの占める割合が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
内層用原料液におけるゲル化剤の含有量は、0.1〜1.0質量%が好ましく、0.1〜0.5質量%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると、内層部の良好な保形性が得られやすく、上限値以下であると良好な食感が得られやすい。
【0024】
[その他の成分]
内層用原料液には、ゲル化剤の他に、酸成分、糖類、増粘剤、油脂、乳化剤、果汁、色素、調味料、香料、不溶性粒子、チョコレート等を、充填可能な液状となる範囲で適宜配合することができる。内層用原料液はカルシウムを含まないことが好ましい。
酸性分は、内層用原料液のpHが所定の範囲となるように、必要に応じて添加される。酸成分の具体例としては、クエン酸、クエン酸塩、リンゴ酸、乳酸、酒石酸等が挙げられる。
増粘剤は、内層用原料液の粘度が所定の範囲となるように、必要に応じて添加される。容器入りゲル状食品の分野で公知の増粘剤を使用することが可能である。内層用原料液は酸性であるため、酸性において反応して凝固物等を生成する増粘剤は、使用量を少量とするか、または使用しないことが好ましい。
内層用原料液に配合する好ましい増粘剤の具体例としては、ローカストビーンガム、タマリンドガム、カラヤガム、キサンタンガム、グァーガム、大豆多糖類等の増粘多糖類;加工デンプン;などが挙げられる。
【0025】
[内層用原料液のpH]
内層用原料液は酸性液である。内層用原料液のpHは5.0以下が好ましく、3.7〜5.0がより好ましく、3.7〜4.3が特に好ましい。
【0026】
[外層用原料液の比重d・内層用原料液の比重d
外層用原料液および内層用原料液はそれぞれ、含有させる成分を水に溶解または分散させて調製される。
外層用原料液の比重dは、1.0〜1.5の範囲内であり、1.0〜1.2の範囲内が好ましい。外層用原料液の比重dが、上記の範囲内であると、本発明の方法により、外層部の内方に内層部を有する製品形態が得られやすい。
なお食品科学便覧、共立出版(株)によると、容器入りデザートの原料としてよく使用される、牛乳の比重は1.032、乳脂の比重は0.90、グラニュー糖の比重は1.59である。
【0027】
内層用原料液の比重dは、外層用原料液の比重dよりも小さく、その差(d−d)は0.012〜0.024であり、0.016〜0.020がより好ましい。(d−d)の値が、上記範囲内であると、外層用原料液中に内層用原料液を充填したときに、内層用原料液が水平方向に広がるのが抑制されて、外層部の内方に内層部を有する製品形態が得られやすい。
(d−d)の値が上記範囲よりも小さいと、内層用原料液が外層用原料液を通り抜け、容器の底面に沿って水平方向に広がりやすくなる。一方、(d−d)の値が上記範囲よりも大きいと、内層用原料液が外層用原料液の上面に沿って水平方向に広がりやすくなる。
【0028】
[外層用原料液の粘度v・内層用原料液の粘度v
外層用原料液の粘度vは、100〜400mPa・sであり、150〜250mPa・sが好ましい。
内層用原料液の粘度vは、1000〜3000mPa・sであり、1500〜2500mPa・sが好ましい。
、vが上記の範囲内であると、外層用原料液中に内層用原料液を充填したときに、内層用原料液が水平方向に広がるのが抑制されて、外層部の内方に内層部を有する製品形態が得られやすい。
【0029】
<ゲル状食品の製造方法>
[外層用原料液の調製および充填]
予め、外層用原料液を調製し、必要に応じて加熱殺菌を施しておく。加熱殺菌は公知の手法により適宜行うことができる。これを容器の上部開口部から、容器内に所定の量だけ充填する。
外層用原料液を調製する際、成分を溶解するために必要であれば加温する。外層用原料液を充填するときの充填温度(液温)は、外層用原料液中のゲル化剤がゲル化を生じない温度とする。したがって、外層用原料液の充填温度は、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましい。
また、外層用原料液を高温で長時間保持すると、ゲル化剤の加水分解が促進されるおそれがあるため、充填温度は70℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましい。
【0030】
[内層用原料液の調製および充填]
予め、内層用原料液を調製し、必要に応じて加熱殺菌を施しておく。加熱殺菌は公知の手法により適宜行うことができる。これを、容器内に既に充填された外層用原料液中に、所定量だけ充填する。
内層用原料液を調製する際、成分を溶解するために必要であれば加温する。
内層用原料液は酸性であるため、ローメトキシルペクチンの加水分解や増粘剤の加水分解も抑えるために、内層用原料液を調製した後、または調製して加熱殺菌した後の、保持温度および充填温度は、凍結しない範囲で低温であることが好ましい。具体的に、内層用原料液の充填温度は0〜15℃が好ましく、0〜10℃がより好ましい。
【0031】
内層用原料液の充填は、外層用原料液の充填が終了した後に行う。外層用原料液の充填終了から内層用原料液の充填開始までの時間が0.1〜600秒であり、かつ内層用原料液の充填開始から充填終了までの時間が0.5〜2秒であることが好ましい。この範囲内であると、内層部が外層部の中央部に内包された形態が得られやすい。
内層用原料液は、容器の開口部の上方から、該開口部の中心付近に充填することが好ましい。より好ましくは、容器の回転中心軸上に充填する。本発明において、容器の回転中心軸上に充填する、とは、容器の開口部の上方から流下する液が、容器の回転中心軸を通りながら容器内に達することをいう。
【0032】
内層用原料液の充填量は、外層用原料液の充填量(100質量部)に対して10〜30質量部が好ましく、15〜25質量部がより好ましい。内層用原料液の充填量が上記の範囲内であると、外層部の内方に内層部を有する製品形態が得られやすい。
【0033】
[ゲル化工程]
容器内に充填された外層用原料液および内層用原料液を、外層用原料液および内層用原料液に含まれるゲル化剤がゲル化する温度範囲内に保持してゲル化させることにより、ゲル状食品が得られる。必要であれば冷却する。
外層用原料液中の寒天またはゼラチンは、例えば20℃程度の常温でもゲル化を生じるが、良好な保形性を得るために、10℃以下に冷却することが好ましい。冷却温度の下限値は、凍結しない温度であればよいが、0℃より高い温度が好ましく、既存の冷蔵設備を利用しやすい点で4℃以上がより好ましい。
一方、内層用原料液中のローメトキシルペクチンは、例えば20℃程度の常温であっても、外層用原料液中のカルシウムと反応してゲル化を生じるが、低温になるほどゲル化が進行して粘度が増す。充分にとろみを有する食感を得るためには、4〜10℃程度に冷却することが好ましい。
【0034】
本発明によれば、容器内に外層用原料液を充填した後に内層用原料液を充填すると、内層用原料液は水平方向に広がるのが抑制される、垂直方向に延びる縦層を形成する。この状態でゲル化させることにより、外層部の内方に内層部を有する、本発明のゲル状食品が得られる。
図1〜図4は、本発明のゲル状食品の製品形態の例を模式的に示したもので、各図の(a)は側断面図、(b)は上面図、(c)は下面図である。図中符号1は外層部、2は内層部、を3は容器をそれぞれ示す。また符号Oは容器の回転中心軸を示す。
【0035】
図1は、垂直方向(回転中心軸Oに沿う方向)において、外層部1の上面1aから容器3の底面3aの間の全部に内層部2が存在する形態の例である。
図2は、垂直方向において、外層部1の上面1a近傍および容器3の底面3a近傍に内層部2が存在せず、それらの間の中央部にのみ内層部2が存在する形態の例である。
図3は、垂直方向において、容器3の底面3a近傍に内層部2が存在せず、それより上方にのみ内層部2が存在する形態の例である。
図4は、垂直方向において、外層部1の上面1a近傍に内層部2が存在せず、それより下方にのみ内層部2が存在する形態の例である。
垂直方向において、外層部1の上面1aから容器3の底面3aまでを、全体の高さHとするとき、内層部2が存在する領域の高さhは、全体の高さHの50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、100%でもよい。
【0036】
いずれの形態においても、回転中心軸Oに垂直な任意の断面(水平断面)において、容器の径方向における内層部2の長さのうち最も大きい値を内層部の直径dとすると、dは該断面における容器の内径Dよりも小さい。すなわち、水平断面において、内層部2は外層部1に内包されている。内層部2が存在する水平断面のうち、内層部2の直径dが最も大きい水平断面Qにおいて、内層部2の直径dが、該水平断面Qにおける容器の内径Dの50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。
内層部2の直径dは垂直方向において均一でなくてもよい。製品の外観の点からは、製品を水平方向から見たときに、内層部2が、略円柱状、略球状、または略ラグビーボール状であることが好ましい。
【0037】
本発明の製造方法は、外層用原料液が寒天および/またはゼラチンを含み、内層用原料液がローメトキシルペクチンを含むため、プリン状、ゼリー状、ババロア状、またはムース状の外層部1中に、とろみを有するソース状の内層部2を有する容器入りゲル状食品を製造するのに好適であり、良好な食感および良好な保形性が得られる。
本発明の製造方法は、外層用原料液を充填した後に、これをゲル化させることなく、次の内層用原料液を充填できるため、少ない工程数で効率よくゲル状食品を製造できる。また機械化が容易であり、均一な製品を、連続的に生産することができる。
さらに製造工程の無菌化も可能であるため、日持ちのするゲル状食品を製造することができる。例えば、14日以上の日持ちがするチルドデザート類(ゼリー、プリン等)を製造することができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、外層用原料液または内層用原料液の比重は、平沼産業株式会社製、密度比重計DS−400を用い、液温20℃で測定した。
外層用原料液または内層用原料液の粘度は、東機株式会社製、B型粘度計RB−80Lを用い、回転数60rpm、ローターNo.3又は4を使用して、外層用原料液は液温50℃、内層用原料液は液温10℃で測定した。
【0039】
<試験例1>
本例では、外層用原料液中のゲル化剤の種類を変更して、ゲル状食品を製造した。
[外層用原料液の調製]
外層用原料液の、ゲル化剤以外の成分の配合は共通であり、表1に示す通りである。
ゲル化剤としては、表2に示すA〜Eの5種類を用い、各ゲル化剤の添加量は、表3に示す(1)〜(6)の6通りとした。すなわち、合計で30通りの外層用原料液を調製した。
まず、各成分を混合し、80℃に加温して溶解し、90℃10分の加熱殺菌を行った。続けてホモジナイザーにより15MPaの条件で均質化し、10℃以下に冷却した。
[内層用原料液の調製]
内層用原料液の配合は共通であり、表4に示す通りである。
ローメトキシルペクチン(表にはLMペクチンと記載する。)は、DE値が40であるものを用いた。
まず、各成分を混合し、80℃に加温して溶解し、90℃10分の加熱殺菌を行った。これを10℃以下に冷却した。
【0040】
[充填工程]
容器は、側面が上方に向かって拡径する略円筒状である、透明プラスチックカップ(商品名:PPカップ;大日本印刷社製)を用いた。底面の内径は50mm、上端の開口部の内径は80mmである。
まず、10℃以下に冷却されている外層用原料液を90℃に加温した後、50℃まで冷却したものを、充填機(トーワテクノ社製)にて充填した。充填量は100gとした。
外層用原料液を充填し終えた後、3秒後に、10℃に温度調整した内層用原料液を、充填機(トーワテクノ社製)にて充填した。内層用原料液充填は、1穴12mmノズルを使用し、液が容器の回転中心軸上を流下するように行った。内層用原料液の充填開始から充填終了までの時間は1秒、充填量は15gとした。
その後、10℃以下で12時間以上冷却してゲル状食品のサンプルを得た。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
[評価方法]
(製品形態の評価)
得られたサンプルについて、内層部が外層部に内包されているかどうかを観察し、内層部が水平方向に広がって容器の内壁にまで達している箇所があるものを×(不良)とした。
また、内層部が外層部に内包されているものについては、内層部が存在する水平断面のうち、内層部の直径dが最も大きい水平断面Qにおける内層部の直径d1および容器の内径D1を測定し、下記の基準で評価した。結果を表5に示す。
◎:d1はD1の50%以下であり、図1または図2のように、垂直方向において内部層の偏りが無い。
○:d1はD1の50%以下であり、図3または図4のように、垂直方向において内部層が上方または下方に偏って存在する。
△:d1はD1の50%より大きく、100%未満である。
×:内層部が水平方向に広がって容器の内壁にまで達している箇所がある。
【0046】
(ゲル状態の評価)
得られたサンプルの外層部のゲル状態について、下記の基準で評価した。結果を表6に示す。
○:外層部の食感(固すぎず、滑らかである)、ゲル状態の均一性(均一である)、および保形性(衝撃によって外層部が壊れにくい)のいずれも良好である。
△:外層部の食感、ゲル状態の均一性、および保形性のうちのいずれか1つが劣る。
×:外層部の食感、ゲル状態の均一性、および保形性のうちの2つ以上が劣る。
【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
表5、6に示されるように、ゲル化剤がAの寒天またはBのゼラチンであり、添加量が(2)〜(5)の0.1〜2.0質量%であるサンプルは、製品形態が良好であり、外層部の食感およびゲル状態の均一性が良好であり、かつ外層部の保形性も良好であった。
特に寒天(A)またはゼラチン(B)の添加量が0.1〜1.0質量%のサンプルは、内層用原料液の広がりが充分に抑えられて、優れた製品形態が得られた。
ゲル化剤がAの寒天またはBのゼラチンであり、添加量が(1)の0.05質量%であるサンプルは、製品形態は良好であり、食感およびゲル状態の均一性も良好であるが、外層部のゲル化能が低く、保形性が不充分である。
ゲル化剤がAの寒天またはBのゼラチンであり、添加量が(6)の2.5質量%であるサンプルは、ゲル化が早く進んでしまい、内層部は外層部に内包されているが、外層部の食感の滑らかさが劣る。
ゲル化剤がCのジェランガム(ネイティブジェランガム)であり、添加量が0.05〜0.1質量%であるサンプルは、外層部の食感は良く、ゲル状態は均一であったが外層部は衝撃で崩れやすい状態であり、製品形態もやや劣るものである。
ゲル化剤がCのジェランガムであり、添加量が1.0質量%以上のサンプルは、内層部が外層部に内包された形態が得られなかった。
ゲル化剤がDのローメトキシルペクチンであるサンプルは、外層用原料液を調製した段階で、カルシウムとローメトキシルペクチンとの反応によりゲル化が生じ又は増粘してしまい、さらにゲル化の状態も不均一であって、充填が困難な状態であった。このため製品形態およびゲル状態の評価は行わなかった。
ゲル化剤がEのカラギナンであるサンプルは、内層部が外層部に内包された形態が得られなかった。
【0050】
<試験例2>
本例では、外層用原料液および内層用原料液の比重を変更して、ゲル状食品を製造した。比重は、砂糖の含有量と水の含有量を変更することによって調整した。
表7に示す配合で、試験例1と同様の手順で、F〜Jの5種類の外層用原料液を調製した。表8に示す配合で、試験例1と同様の手順で、i〜vの5種類の内層用原料液を調製した。試験例1と同様にして容器に充填し、ゲル状食品のサンプルを得た。
本例では外層用原料液F〜Jと内層用原料液i〜vを組み合わせて合計25種類のサンプルを製造した。
【0051】
【表7】

【0052】
【表8】

【0053】
[評価方法]
(製品形態の評価)
試験例1と同様にして、製品形態の評価を行った。結果を表9に示す。表には外層用原料液と内層用原料液の比重差(d−d)の値を合わせて示す。
【0054】
【表9】

【0055】
表9の結果に示されるように、外層用原料液と内層用原料液の比重差(d−d)が0.012以上、0.024以下の範囲で良好な製品形態が得られた。特に比重差(d−d)が0.016以上、0.020以下の範囲では、内層用原料液の広がりが充分に抑えられて、優れた製品形態が得られた。
比重差(d−d)が0.008以下であるサンプルは、図5に示すように、外層用原料液からなる下層11の上に内層用原料液からなる上層12が広がっている形態となった。
比重差(d−d)が0.028以上であるサンプルは、図6に示すように、容器の底面上に内層用原料液からなる下層11が広がり、その上に外層用原料液からなる上層12が積層した形態となった。
【0056】
<試験例3>
本例では、外層用原料液および内層用原料液の粘度を変更して、ゲル状食品を製造した。粘度は、増粘剤の含有量と水の含有量を変更することによって調整した。
表10に示す配合で、試験例1と同様の手順で、K〜Oの5種類の外層用原料液を調製した。表11に示す配合で、試験例1と同様の手順で、xi〜xvの5種類の内層用原料液を調製した。試験例1と同様にして容器に充填し、ゲル状食品のサンプルを得た。
本例では外層用原料液K〜Oと内層用原料液xi〜xvを組み合わせて合計25種類のサンプルを製造した。
【0057】
【表10】

【0058】
【表11】

【0059】
[評価方法]
(製品形態の評価)
試験例1と同様にして、製品形態の評価を行った。結果を表12に示す。
【0060】
【表12】

【0061】
表12の結果に示されるように、外層用原料液の粘度(v)が100mPa・s以上、400mPa・s以下(L〜N)であり、かつ内層用原料液の粘度(v)が1000mPa・s以上、3000mPa・s以下(xii〜xiv)である範囲で、内層用原料液の広がりが抑えられて、良好な製品形態が得られた。
【0062】
<試験例4>
本例では、外層用原料液の充填終了から内層用原料液の充填開始までの時間、および内層用原料液の充填開始から充填終了までの時間を変更して、ゲル状食品を製造した。
外層用原料液は、試験例3の外層用原料液Mと同じものを使用した。内層用原料液は、試験例3の内層用原料液xiiiと同じものを使用した。
試験例1の充填工程において、外層用原料液の充填終了から内層用原料液の充填開始までの時間(表には「外層用原料液(100g)充填後の経過時間」と記載する。)、および内層用原料液の充填開始から充填終了までの時間(表には「内層用原料液(15g)の充填時間」と記載する。)を表13の通りに変更して、合計25種類のサンプルを製造した。
【0063】
[評価方法]
(製品形態の評価)
試験例1と同様にして、製品形態の評価を行った。結果を表13に示す。
【0064】
【表13】

【0065】
表13の結果に示されるように、特に、外層用原料液の充填終了から内層用原料液の充填開始までの時間が0.1〜600秒であり、かつ内層用原料液の充填開始から充填終了までの時間が0.5〜2.0秒である範囲で、内層用原料液の広がりが抑えられて、良好な製品形態が得られた。
【0066】
<試験例5>
本例では、内層用原料液中のローメトキシルペクチンの種類(DE値)を変更して、ゲル状食品を製造した。
外層用原料液は、試験例2の外層用原料液Hと同じものを使用した。
内層用原料液の、ローメトキシルペクチン以外の成分の配合は共通であり、表14に示す通りである。ローメトキシルペクチンとしては、表15示すP〜Tの5種類を用い、各ローメトキシルペクチンの添加量は、表16に示す(1)〜(5)の5通りとした。
試験例1と同様の手順で、合計25種類の内層用原料液を調製した。試験例1と同様にして容器に充填し、ゲル状食品のサンプルを得た。
【0067】
【表14】

【0068】
【表15】

【0069】
【表16】

【0070】
[評価方法]
(製品形態の評価)
試験例1と同様にして、製品形態の評価を行った。結果を表17に示す。
(ゲル状態の評価)
得られたサンプルの内層部のゲル状態について、下記の基準で評価した。結果を表18に示す。
○:内層部の食感(柔らかく、滑らかである)、および保形性(衝撃によって内層部が壊れにくい)のいずれも良好である。
△:内層部の食感は良好であるが、保形性が劣る。
×:内層部の食感が劣る。
【0071】
【表17】

【0072】
【表18】

【0073】
表17、18に示されるように、ローメトキシルペクチンのDE値が30%以上(R〜T)であり、添加量が(2)〜(4)の0.1〜1.0質量%であるサンプルは、製品形態が良好であり、内層部の食感、ゲル状態の均一性、および内層部の保形性がいずれも良好なゲル状食品であった。
特にローメトキシルペクチンのDE値が35%以上(S、T)であり、添加量が(2)〜(3)の0.1〜0.5質量%であるサンプルは、内層用原料液の広がりが充分に抑えられて、優れた製品形態が得られた。
ローメトキシルペクチンのDE値が25%以下(P、Q)と低いサンプルは、カルシウムとの反応速度が速いため、内層部は外層部に内包されているが、内層部のソースが不均一である、又は固すぎるといった点で食感が劣る。
ローメトキシルペクチンの添加量が0.05質量%であるサンプルは、冷蔵後に製品形状を維持できないゲル化能となってしまい、保形性が不十分である。
ローメトキシルペクチンの添加量が1.5質量%であるサンプルは、内層部の滑らかな食感の点で劣る。
【0074】
<参考例1>
[動的貯蔵弾性率G’、動的損失弾性率G’’の温度依存性]
外層用原料液および内層用原料液について、動的貯蔵弾性率G’、動的損失弾性率G’’の温度依存性を測定した。
本例では、動的貯蔵弾性率G’(ゲル状の性質の指標となる)、および動的損失弾性率G’’(液状の性質の指標となる)を、周波数、振幅を一定にし、温度を周期的に変化させて測定した。この測定方法によれば、温度変化による、各原料液の粘弾性挙動がわかる。
【0075】
具体的には、表1の外層用原料液においてゲル化剤が表2のBであるゼラチンを1.0質量%使用(表3の(3)に相当)したもの、および表4の内層用原料液について、原料液を冷却して凝固させるときの状態変化をシュミレーションするために、下記の測定条件で動的貯蔵弾性率G’、および動的損失弾性率G’’を測定した。またtanδ(G’’/G’の比)を求めた。結果を図7、8に示す。
[測定条件]
(外層部)
(1)測定開始時の温度:80℃、測定終了時の温度:20℃に設定。
(2)1分当たり3℃ずつ温度を低下させる。
(3)ひずみ強度:0.5%。
(内層部)
(1)測定開始時の温度:50℃、測定終了時の温度:5℃に設定。
(2)1分当たり3℃ずつ温度を低下させる。
(3)ひずみ強度:0.5%。
【0076】
図7は外層用原料液、図8は内層用原料液の結果である。横軸は温度(℃)、左縦軸はG’またはG’’、右縦軸はtanδ(G’’/G’)を示している。
図7の結果より、外層用原料液は、温度が下がるにしたがって、G’の値が大きくなっており、ゲル化している。また、G’’の値も大きくなっており、粘度が上昇しているが、tanδの値が低下していることから、増粘よりもゲル化の傾向が強いことがわかる。
図8の結果より、内層用原料液は、温度が下がるにしたがって、G’、G’’の値が両方とも増大しており、ゲル化および増粘が生じているが、tanδの値がほぼ一定となっていることから、液状の性質を維持しつつ粘度が上昇していることがわかる。したがって、冷却すると、とろみを有するソース状となり、温度が下がるほど粘度が増すことがわかる。
【0077】
<実施例1>
内方にブルーベリーソースを包含するフロマージュ(レアチーズ)様の、容器入りデザートを製造した。
[外層用原料液の調製]
表19の配合で各成分を混合し、80℃に加温して溶解した。次いでUIO殺菌機(インフュージョン式:森永乳業社製)にて、125℃15秒の条件で加熱殺菌を行い、冷却部で80℃まで冷却後、ホモジナイザーにより8MPaの条件で均質化した。これをタンクに入れて、10℃以下に冷却した。
[内層用原料液の調製]
表20の配合で、各成分を混合し、80℃に加温して溶解した。次いで、UJO殺菌機(チューブラ式:森永乳業社製)にて、120℃2秒の条件で加熱殺菌を行い、冷却部で30℃まで冷却した。これをタンクに入れて、10℃以下に冷却した。
【0078】
【表19】

【0079】
【表20】

【0080】
[充填工程]
容器は試験例1と同じものを用いた。
まず、10℃以下に冷却されている外層用原料液を90℃に加温した後、50℃まで冷却したものを、充填機(HAMBA社製)にて充填した。充填量は100gとした。50℃での粘度は300mPa・sであった。
外層用原料液を充填し終えた後、3秒後に、10℃に温度調整した内層用原料液を、充填機(HAMBA社製)にて充填した。内層用原料液充填は、1穴12mmノズルを使用し、液が容器の回転中心軸上を流下するように行った。内層用原料液の充填開始から充填終了までの時間は1秒、充填量は15gとした。10℃での粘度は2500mPa・sであった。
その後、連続式冷却機(HAMBA社製)で中心温度が20℃以下になるまで冷却し、容器の開口部をシールした後、再度10℃以下で12時間冷却して製品を得た。
【0081】
得られた製品は、外層部のフロマージュ部分の中心部に、内層部であるブルーベリーソースが略円柱状に内包されている。ブルーベリーソース部分は非常に緩やかにゲル化して、とろみを有し、なめらかな食感を有するとともに、保形性が良好で、流動しにくく形状が維持されている。
【符号の説明】
【0082】
1 外層部
1a 外層部の上面
2 内層部
3 容器
3a 容器の底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化剤、カルシウム、及び増粘剤を含む外層用原料液を容器内に充填し、次いで、ゲル化剤を含み、pHが5.0以下である内層用原料液を該容器内に充填する工程を有し、
前記外層用原料液のゲル化剤が、寒天および/またはゼラチンを含み、
前記内層用原料液のゲル化剤が、ローメトキシルペクチンを含み、
20℃における、外層用原料液の比重をd、内層用原料液の比重をdとし、充填時の温度における外層用原料液の粘度をv[単位:mPa・s]、充填時の温度における内層用原料液の粘度をv[単位:mPa・s]とするとき、下記a)〜d)の条件を満たすことを特徴とするゲル状食品の製造方法。
a)1.0≦d≦1.5であり、
b)0.012≦d−d≦0.024であり、
c)100≦v≦400であり、かつ
d)1000≦v≦3000である。
【請求項2】
前記内層用原料液の充填時の温度が0〜15℃である、請求項1に記載のゲル状食品の製造方法。
【請求項3】
前記外層用原料液の充填終了から前記内層用原料液の充填開始までの時間が0.1〜600秒であり、前記内層用原料液の充填開始から充填終了までの時間が0.5〜2秒である、請求項1又は2に記載のゲル状食品の製造方法。
【請求項4】
前記内層用原料液を、前記容器の回転中心軸上に充填する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル状食品の製造方法。
【請求項5】
前記外層用原料液におけるゲル化剤の含有量が0.1〜2.0質量%であり、該ゲル化剤のうち、寒天とゼラチンの合計が80質量%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のゲル状食品の製造方法。
【請求項6】
前記内層用原料液のローメトキシルペクチンの、エステル化度を表すDE値が30%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のゲル状食品の製造方法。
【請求項7】
前記内層用原料液におけるゲル化剤の含有量が0.1〜1.0質量%であり、該ゲル化剤のうち、ローメトキシルペクチンが90質量%以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のゲル状食品の製造方法。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法により製造されるゲル状食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate