説明

ゲーム用カード及びカード作成方法

【課題】情報記憶部の視認性を低下させるとともに、当該情報記憶部に記憶されている情報の読み取りをより適正に行う。
【解決手段】カード本体1に形成されたバーコード21に記憶された各種情報が赤外線方式の読取装置により読取可能なゲーム用カード100であって、カード本体の表面には、赤外線を透過するインクを含んでなるインク層部22が形成され、バーコードは、インク層部の表面に形成され、赤外線を吸収するカーボンを含んでなるバー部分211を少なくとも一つ有し、インク層部は、ブラック(K)以外のシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のインクを略等しい割合で用いて形成された第1インク層部221と、ブラック(K)のインクを用いて形成された第2インク層部222とを具備することで、バーコードのバー部分とそれ以外の領域との濃度差を小さくしてバーコードの視認性の低下を図っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード表面に情報記憶部が設けられたゲーム用カード及びカード作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面に所定のキャラクタ等に係る各種情報を記憶するバーコードが設けられたゲーム用カードが知られている。そして、当該カードのバーコードをバーコード読取装置により検出・解読してキャラクタ情報を読み取ることで、遊技者は、各種キャラクタの収集ゲーム、キャラクタの収集度合いなどに応じて付与されるポイントを集積するゲーム、集積されたポイント数に応じてキャラクタを育成するゲーム等を行うようになっている。
【0003】
ところで、バーコードは記憶される情報の種類に応じてある程度パターン化されていることから、熟練した遊技者は、バーコードやその配列パターンを視認するだけで記憶内容をある程度理解することができ、遊技の興趣を低下させてしまうといった問題があった。
そこで、バーコードをそのバー部分とは赤外線吸収率の異なるインクで遮蔽することで、肉眼でのバーコード自体の視認を困難にするとともに、赤外線方式のバーコード読取装置により各種情報を読み取ることができるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−25988号公報
【特許文献2】特許第2880309号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献2のゲームカードにあっては、バーコードの各バー部分を赤外線を吸収するカーボンブラックを含むインキを用いて印刷し、バーコード全体を赤外線を透過する材料からなるシアン色(C)、マゼンタ色(M)及びイエロー色(Y)を調整した黒色により印刷することでバーコードを遮蔽している。
しかしながら、上記のようにしてバーコードを遮蔽しても、バー部分とバー部分以外の領域との間に濃度差が生じ、バーコードを視認可能なだけでなく、ゲーム用カードの表面に設けられたキャラクタの図形やキャラクタ名称その他の文字等の他の意匠との違和感を生じさせてしまうといった問題がある。
【0006】
また、バーコードが黒色のインクにより遮蔽されていると、当該バーコードの各バー部分に到達する赤外線やカード本体の表面にて反射する赤外線がインク内で散乱してしまうため、バーコードのバーコード読取装置による検出を適正に行うことができないといった問題もある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、情報記憶部の視認性をより低下させることができるとともに、当該情報記憶部に記憶されている情報の読み取りをより適正に行うことができるゲーム用カード及びカード作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
カード本体に各種情報を記憶する情報記憶部が設けられ、前記情報記憶部に記憶された各種情報が不可視光線方式の読取装置により読取可能なゲーム用カードであって、前記カード本体の表面には、所定波長の不可視光線を透過するインクを含んでなるインク層部が形成され、前記情報記憶部は、前記インク層部の表面に形成され、前記所定波長の不可視光線を吸収するカーボンを含んでなる所定形状のマークを少なくとも一つ有し、前記インク層部は、ブラック(K)以外の少なくとも一色のインクを用いて形成された第1インク層部と、ブラック(K)のインクを用いて形成された第2インク層部とを具備することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のゲーム用カードにおいて、
前記第2インク層部は、前記第1インク層部の上面に当該第1インク層部全体を被覆するように設けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のゲーム用カードにおいて、
前記第1インク層部は、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のインクが略等しい割合で前記マークと略等しい色となるように調整されてなることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のゲーム用カードにおいて、
前記インク層部を構成するインクは、カーボンを含有しない、或いは、前記マークよりもカーボンの含有率の低いインクであることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載のゲーム用カードにおいて、
前記マーク及び前記インク層部は、所定方式の印刷により形成されてなることを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載の発明は、
カード本体の情報記憶部に記憶された各種情報が不可視光線方式の読取装置により読取可能なゲーム用カードを作成するカード作成方法であって、前記情報記憶部は、所定波長の不可視光線を透過するインクを含んでなるインク層部の表面に形成され、前記所定波長の不可視光線を吸収するカーボンを含んでなる所定形状のマークを少なくとも一つ有し、前記カード本体の表面の情報記憶部形成領域に、前記インク層部を構成する第1インク層部をブラック(K)以外の少なくとも一色のインクを用いて形成する第1インク層部形成工程と、前記第1インク層部の表面に、前記インク層部を構成する第2インク層部をブラック(K)のインクを用いて形成する第2インク層部形成工程と、前記第2インク層部の表面に、前記マークを形成するマーク形成工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、カード本体の表面に、所定波長の不可視光線を透過するインクを含んでなるインク層部として、ブラック(K)以外の少なくとも一色のインクを用いて形成された第1インク層部と、ブラック(K)のインクを用いて形成された第2インク層部とが形成され、当該インク層部の表面に、所定波長の不可視光線を吸収するカーボンを含んでなる所定形状のマークを少なくとも一つ有する情報記憶部が形成されているので、情報記憶部のカーボンを含んでなるマークとインク層部の当該マークに隣合う部分との濃度差を小さくすることができる。即ち、情報記憶部のマークとインク層部のマークが形成されずに表側に露出された部分との濃度差を小さくすることができ、当該マークの肉眼での判別をし難くすることができる。従って、ゲーム用カードの表面に設けられた他の意匠との違和感を生じさせることなく情報記憶部の視認性をより低下させることができる。
さらに、情報記憶部のマークが表面側から所定波長の不可視光線を透過する他の部材により遮蔽されていないために、マークに到達する光線や反射する光線が遮蔽部材内で散乱してしまうといったことがなくなって、当該情報記憶部に記憶されている情報の読み取りをより適正に行うことができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、第1インク層部の上面に当該第1インク層部全体を被覆するように第2インク層部が設けられているので、インク層部のマークが形成されずに表側に露出された部分は全て第1インク層部と第2インク層部とが重なり合った状態とすることができ、当該インク層部のマークが形成されずに表側に露出された部分と情報記憶部のマークとの濃度差をより小さくすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のインクが略等しい割合でマークと略等しい色となるように調整されることで第1インク層部が形成されているので、情報記憶部のマークとインク層部のマークが形成されずに表側に露出された部分との濃度差をより小さくすることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、インク層部を構成するインクは、カーボンを含有しない、或いは、マークよりもカーボンの含有率の低いインクであるので、情報記憶部のカーボンを含んでなるマークとその裏面側に形成され(より具体的には、マークの側方にて一部分が露出され)ているインク層部とにおける所定波長の不可視光線の反射率を異ならせることができ、情報記憶部に記憶されている情報の読み取りをより適正に行うことができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4の何れか一項に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、情報記憶部のマーク及びインク層部は、所定方式の印刷により形成されているので、情報記憶部の視認性の低下、並びに、当該情報記憶部に記憶されている情報の読み取りの適正化を図るゲーム用カードの作成を公知の印刷技術によって簡便に行うことができ、当該ゲーム用カードのコストダウンを図ることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、カード本体の表面に、所定波長の不可視光線を透過するブラック(K)以外の少なくとも一色のインクを用いて第1インク層部を形成し、当該第1インク層部の表面に、所定波長の不可視光線を透過するブラック(K)のインクを用いて第2インク層部を形成することでインク層部を形成し、当該第2インク層部の表面に、所定波長の不可視光線を吸収するカーボンを含んでなる所定形状のマークを少なくとも一つ有する情報記憶部を形成しているので、情報記憶部のカーボンを含んでなるマークとインク層部の当該マークに隣合う部分との濃度差を小さくすることができる。即ち、情報記憶部のマークとインク層部のマークが形成されずに表側に露出された部分との濃度差を小さくすることができ、当該マークの肉眼での判別をし難くすることができる。従って、ゲーム用カードの表面に設けられた他の意匠との違和感を生じさせることなく情報記憶部の視認性をより低下させることができる。
さらに、情報記憶部のマークが表面側から所定波長の不可視光線を透過する他の部材により遮蔽されていないために、マークに到達する光線や反射する光線が遮蔽部材内で散乱してしまうといったことがなくなって、当該情報記憶部に記憶されている情報の読み取りをより適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した一実施形態のゲーム用カードを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
図1(a)は、本発明を適用した一実施形態のゲーム用カード100を模式的に示す正面図であり、図1(b)は、図1(a)のB−B線におけるゲーム用カード100の要部断面図である。
【0022】
本実施形態のゲーム用カード100は、カード本体1の表面のバーコード(情報記憶部)21に記憶された各種情報(例えば、キャラクタ情報等)が赤外線方式の読取装置(図示略)により読取可能となっている。そして、当該ゲーム用カード100を読み取ることで、各種キャラクタの収集ゲームや、キャラクタの収集度合いなどに応じて付与されるポイントを集積するゲーム等を実行可能となっている。
【0023】
具体的には、図1(a)に示すように、ゲーム用カード100は、カード本体1の所定位置に、読取装置により各種情報を読取可能なバーコード21が配置されたバーコード領域(情報記憶部形成領域)2が設けられている。
なお、読取装置は、バーコード21に記憶されている各種情報を赤外線方式により読取可能な装置であれば公知の如何なる構成の装置も適用することができ、その詳細な説明は省略する。
【0024】
カード本体1は、例えば、矩形の四隅が略円弧状に面取りされた所定厚の板状をなし、正面視にて下端よりの位置にバーコード領域2が左右方向に亘って形成されている。
なお、カード本体1の材料としては、紙(例えば、コートボール紙、コートカード紙等)やプラスチック等が挙げられるが、これらに限られるものではなく、適宜任意に変更可能となっている。また、カード本体1の材料として、紙を用いる場合には、例えば、当該ゲーム用カード100の所望の厚さに応じて所定枚数を貼り合わせるようにしても良い。
さらに、カード本体1におけるバーコード領域2の形成位置も一例であって、適宜任意に変更可能となっている。
【0025】
バーコード領域2は、所定のインクからなるインク層部22を有し、このインク層部22の表面にバーコード21を構成する少なくとも一つのバー部分211が形成されている。
インク層部22は、バーコード21のバー部分211と赤外線(所定波長の不可視光線)の吸収率の異なるインク、即ち、赤外線を透過するインクを用いて、所定方式の印刷により形成されている。具体的には、インク層部22は、例えば、カーボンを含有しない、或いは、バー部分211よりもカーボンの含有率の低いインクを用いて形成されている。
【0026】
また、インク層部22は、ブラック(K)以外の少なくとも一色のインクを用いて形成された第1インク層部221と、ブラック(K)のインクを用いて形成された第2インク層部222とを具備している。
【0027】
なお、インク層部22及び後述するバーコード21の印刷方式としては、公知の種々の方式を適用することができ、例えば、オフセット印刷方式、インクジェット印刷方式等が挙げられる。
また、インク層部22及びバーコード21の印刷方式は、互いに異ならせても良いし、同じであっても良い。さらに、インク層部22の第1インク層部221と第2インク層部222の印刷方式も、互いに異ならせても良いし、同じであっても良い。
【0028】
第1インク層部221は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の三原色のインクが略等しい割合で黒色、即ち、バー部分211と略等しい色となるように調整されている。
即ち、図1(b)に示すように、第1インク層部221は、例えば、バーコード領域2の上面全域にシアン(C)のインクを用いてシアン層部221cを形成し、このシアン層部221cの上面全域にマゼンダ(M)のインクを用いてマゼンダ層部221mを形成し、このマゼンダ層部221mの上面全域にイエロー(Y)のインクを用いてイエロー層部221yを形成することで黒色を表現している。
【0029】
なお、本実施形態にあっては、第1インク層部221を、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の各インクの層221c、221m、221yを重ね合わせるようにして形成するようにしたが、これに限られるものではなく、三原色のインクを略等しい割合で混合することでインクを調整し、当該混合した状態のインクを用いて形成しても良い。
また、第1インク層部221を構成するシアン層部221c、マゼンダ層部221m及びイエロー層部221yを形成する順序は一例であって、これに限られるものではなく、適宜任意に変更可能となっている。
【0030】
第2インク層部222は、ブラック(K)のインクを用いて形成され、図1(b)に示すように、第1インク層部221の上面全域に当該第1インク層部221全体を塗りつぶすように形成されている。
【0031】
このように、第1インク層部221は、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の三原色のインクを用いて形成され、第2インク層部222は、ブラック(K)のインクを用いて形成されることから、カード本体1に形成されるキャラクタの図形やキャラクタ名称その他の文字等の印刷の際に同時に形成されるのが好ましい。
【0032】
バーコード21は、第2インク層部222の上面に左右方向に亘って形成されている。また、バーコード21は、例えば、ITF(Interleaved Two of Five)コードであり、正面視にて上下方向に延在する複数のバー部分(マーク)211、…を有し、これらバー部分211、…が左右方向に隣合うものどうしの間に所定間隔を空けて配置されている。つまり、各バー部分211の側方にて、当該バーコード21の下側のインク層部22の一部分が露出された状態となっている。
また、バー部分211の正面視にて上下方向の長さは、インク層部22の上下方向の長さと略等しいか、或いは、これよりも短くされている。即ち、バー部分211がインク層部22の正面視における上下両端部からはみ出さないようになっている。
【0033】
バー部分211は、例えば、所定波長の不可視光線としての赤外線を吸収するカーボンブラック(不可視光線吸収材料)を含むインクを用いて、所定方式の印刷により形成されている。
これにより、読取装置から照射された赤外線は、バーコード21のバー部分211では吸収される一方で、バーコード21のバー部分211が配置されていない領域、即ち、当該バーコード21の下側に形成されたインク層部22における表側に露出された領域では透過してカード本体1の表面にて反射することとなる。
従って、バーコード21のバー部分211と、インク層部22のバーコード21のバー部分211が配置されずに表側に露出された領域とで読取装置から照射された赤外線の反射率が異なることとなり、バーコード21のバー部分211の配置によって赤外線の反射位置や反射時間等を異ならせることで当該バーコード21に異なる情報を記憶可能となっている。
【0034】
以下、本実施形態のゲーム用カードによる効果を比較例を用いて説明する。
【0035】
[比較例1]
(カードの構成)
本発明に係るカード本体と同じ材質のコートボール紙の表面に、シアン(C)のインクを用いて隙間なく100%ベタでオフセット方式により印刷し、次に、マゼンタ(M)のインクを用いて隙間なく100%ベタでオフセット方式により印刷し、次に、イエロー(Y)のインクを用いて隙間なく100%ベタでオフセット方式により印刷した。これにより、本発明に係る第1インク層部に相当するものが構成されている。
その後、第1インク層部(イエロー(Y)のインク層)の表面に、ブラック(K)のインクを用いて隙間なく100%ベタでオフセット方式により印刷した。これにより、本発明に係る第2インク層部に相当するものが構成されている。
そして、第2インク層部(ブラック(K)のインク層)の表面に、カーボンブラックのインクを用いて隙間なく100%ベタでオフセット方式により印刷した。これにより、本発明に係るバーコードのバー部分に相当するものが構成されている。
即ち、比較例1のカードは、本発明に係るバーコード領域のバーコードのバー部分の構成に相当するものである。
なお、印刷に用いた各インクについては後述する。
【0036】
[比較例2]
(カードの構成)
本発明に係るカード本体と同じ材質のコートボール紙の表面に、シアン(C)のインクを用いて隙間なく100%ベタでオフセット方式により印刷し、次に、マゼンタ(M)のインクを用いて隙間なく100%ベタでオフセット方式により印刷し、次に、イエロー(Y)のインクを用いて隙間なく100%ベタでオフセット方式により印刷した。これにより、本発明に係る第1インク層部に相当するものが構成されている。
その後、第1インク層部(イエロー(Y)のインク層)の表面に、ブラック(K)のインクを用いて隙間なく100%ベタでオフセット方式により印刷した。これにより、本発明に係る第2インク層部に相当するものが構成されている。
即ち、比較例2のカードは、本発明に係るバーコード領域のバーコードのバー部分が配置されていない領域の構成に相当するものである。
なお、印刷に用いた各インクについては後述する。
【0037】
[比較例3]
(カードの構成)
本発明に係るカード本体と同じ材質のコートボール紙の表面に、ブラック(K)のインクを用いて隙間なく100%ベタでオフセット方式により印刷した。これにより、本発明に係る第2インク層部に相当するものが構成されている。
なお、印刷に用いた各インクについては後述する。
【0038】
[比較例4]
(カードの構成)
本発明に係るカード本体と同じ材質のコートボール紙の表面に、シアン(C)のインクを用いて隙間なく100%ベタでオフセット方式により印刷し、次に、マゼンタ(M)のインクを用いて隙間なく100%ベタでオフセット方式により印刷し、次に、イエロー(Y)のインクを用いて隙間なく100%ベタでオフセット方式により印刷した。これにより、本発明に係る第1インク層部に相当するものが構成されている。
なお、印刷に用いた各インクについては後述する。
【0039】
(インク)
比較例1〜4にて用いたインクについて説明する。
シアン(C)のインクとして、「スペースカラー フュージョンG EZ藍(ベジタブルオイルインク)」(DIC株式会社製)を用いた。
また、マゼンタ(M)のインクとして、「スペースカラー フュージョンG EZ紅(ベジタブルオイルインク)」(DIC株式会社製)を用いた。
また、イエロー(Y)のインクとして、「スペースカラー フュージョンG 透明黄(ベジタブルオイルインク)」(DIC株式会社製)を用いた。
また、ブラック(K)のインクとして、「FINE INK ノンカーボン墨(ベジタブルオイルインク)」(DIC株式会社製)を用いた。
また、カーボンブラックのインクとして、「スペースカラー フュージョンG 墨(ベジタブルオイルインク)」(DIC株式会社製)を用いた。
【0040】
<濃度試験>
比較例1〜4の各カードを5枚ずつ作成し、各々のカード表面の濃度を、濃度計「D19C 47B/P」(Gretag Macbeth社製)を用いて測定した。
当該濃度試験の結果を表1に示す。
【表1】

表1には、比較例1〜4の各々について、5枚(試験番号1〜5)のカードの濃度測定結果とそれらの平均値を表した。
【0041】
[評価]
表1に示すように、本発明に係るバーコード領域のバーコードのバー部分の構成に相当するカード(比較例1)は、濃度の平均値が2.62ppmであった。
一方、本発明に係るバーコード領域のバーコードのバー部分が配置されていない領域の構成に相当するカード(比較例2)の濃度の平均値が2.05ppmであるのに対して、本発明に係る第1インク層部のみのカード(比較例4)の濃度の平均値は1.47ppm、また、本発明に係る第2インク層部のみのカード(比較例3)の濃度の平均値は1.52ppmであった。
つまり、比較例2のように第1インク層部と第2インク層部を重ねた構成のカードとすることで、比較例3や比較例4のカードよりも、カーボンブラックを含むインキを用いた比較例1のカードに近い濃度とすることができた。即ち、比較例1のカードに対して比較例2のカードが最も濃度差が小さく、比較例3や比較例4のカードよりも肉眼での判別がし難いと考えられる。
従って、カーボンブラックを含むインキを用いて形成されるバーコードのバー部分の視認性の低下を図る上では、バーコードのバー部分が配置されていない領域には、第1インク層部と第2インク層部を重ねた構成とするのが好ましいと考えられる。
【0042】
以上のように、本実施形態のゲーム用カード100によれば、カード本体1の表面に、赤外線を透過するインクを含んでなるインク層部22として、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のインクを用いて形成された第1インク層部221と、ブラック(K)のインクを用いて形成された第2インク層部222とが形成され、当該インク層部22の表面に、赤外線を吸収するカーボンを含んでなるバー部分211を複数有するバーコード21が形成されている。より具体的には、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のインクが略等しい割合でバー部分211と略等しい色となるように調整されることで第1インク層部221が形成され、当該第1インク層部221全体を被覆するように第2インク層部222が設けられている。
これにより、バーコード21のカーボンを含んでなるバー部分211とインク層部22の当該バー部分211に隣合う部分との濃度差を小さくすることができる。即ち、バーコード21のバー部分211とインク層部22のバー部分211が形成されずに表側に露出された部分との濃度差を小さくすることができ、当該バー部分211の肉眼での判別をし難くすることができる。従って、ゲーム用カード100の表面に設けられた他の意匠との違和感を生じさせることなくバーコード21の視認性をより低下させることができる。
さらに、バーコード21のバー部分211が、従来のように表面側から赤外線を透過する他の部材により遮蔽されていないために、遮蔽部材を透過してバー部分211に到達する光線や遮蔽部材を透過してカード本体1の表面にて反射する光線が当該遮蔽部材(インク層)内で散乱してしまうといったことがなくなって、当該バーコード21に記憶されている情報の読み取りをより適正に行うことができる。
【0043】
また、第1インク層部221の上面に当該第1インク層部221全体を被覆するように第2インク層部222が設けられているので、インク層部22のバー部分211が形成されずに表側に露出された部分は全て第1インク層部221と第2インク層部222とが重なり合った状態とすることができ、当該インク層部22のバー部分211が形成されずに表側に露出された部分とバーコード21のバー部分211との濃度差をより小さくすることができる。
さらに、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のインクが略等しい割合でバー部分211と略等しい色となるように調整されることで第1インク層部221が形成されているので、バーコード21のバー部分211とインク層部22のバー部分211が形成されずに表側に露出された部分との濃度差をより小さくすることができる。
【0044】
また、インク層部22を構成するインクは、カーボンを含有しない、或いは、バー部分211よりもカーボンの含有率の低いインクであるので、バーコード21のカーボンを含んでなるバー部分211とその裏面側に形成され(より具体的には、バー部分211の側方にて一部分が露出され)ているインク層部22とにおける赤外線の反射率を異ならせることができ、バーコード21に記憶されている情報の読み取りをより適正に行うことができる。
【0045】
さらに、バーコード21のバー部分211及びインク層部22は、所定方式の印刷により形成されているので、バーコード21の視認性の低下、並びに、当該バーコード21に記憶されている情報の読み取りの適正化を図るゲーム用カード100の作成を公知の印刷技術によって簡便に行うことができ、当該ゲーム用カード100のコストダウンを図ることができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、上記実施形態にあっては、第1インク層部221の上面に第2インク層部222を設けるようにしたが、これに限られるものではなく、カード本体1の表面に第2インク層部222を形成し、当該第2インク層部222の上面に第1インク層部221を形成するようにしても良い。
また、上記実施形態にあっては、第2インク層部222を第1インク層部221全体を被覆するように設けるようにしたが、これに限られるものではなく、第1インク層部221のバーコード21のバー部分211と重なる領域には第2インク層部222を形成せずに、バー部分211と重ならない領域にのみ第2インク層部222を形成するようにしても良い。
【0047】
さらに、上記実施形態にあっては、インク層部22を、カーボンを含有しない、或いは、バー部分211よりもカーボンの含有率の低いインクを用いて形成するようにしたが、これに限られるものではなく、所定波長の不可視光線(例えば、赤外線)を透過するインクであれば当該インク層部22を形成するインクの組成は適宜任意に変更可能となっている。
なお、インク層部22を形成するインクの所定波長の不可視光線(例えば、赤外線)の透過率は、必ずしも100%である必要はなく、バーコード21に記憶されている各種情報を読取装置により読取可能となるように、具体的には、バーコード21のバー部分211と、インク層部22のバーコード21のバー部分211が配置されずに表側に露出された領域とで所定波長の不可視光線の反射率を異ならせる程度に設定されていれば良い。
かかる点を考慮すると、インク層部22を形成するインクとして、仮に、所定波長の不可視光線(例えば、赤外線)を全く透過させずに全て反射するインクを用いたとしても、バーコード21のバー部分211と、インク層部22のバーコード21のバー部分211が配置されずに表側に露出された領域とで所定波長の不可視光線の反射率を異ならせることができ、バーコード21に記憶されている各種情報を読取装置に適正に読み取らせることができる。つまり、本願発明と技術的思想を同じくし、実質的に特許請求の範囲に記載された発明と同一であることから、本願発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏することができると解する。
【0048】
また、上記実施形態にあっては、当該ゲーム用カード100の表面の保護や光沢感の向上などを目的として、所定の接着剤を塗布することでフィルム(Poly-Propylene Film)を圧着させるPP(Poly-Propylene)加工を施すようにしても良い。このPP加工は、カード本体1にバーコード領域2を形成後に施しても良いし、バーコード領域2の形成前のカード本体1に施しても良い。
【0049】
加えて、上記実施形態にあっては、バーコード21として、所定の一方向(正面視にて左右方向)に沿って形成された一次元のバーコードを例示したが、バーコード21の種類はこれに限られるものではなく、例えば、異なる二つの方向に沿って形成された二次元のバーコード等であっても良い。
また、情報記憶部として、バーコード21を例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、各種情報を記憶可能なものであれば如何なるものであっても良い。
【符号の説明】
【0050】
100 ゲーム用カード
1 カード本体
2 バーコード領域(情報記憶部形成領域)
21 バーコード(情報記憶部)
211 バー部分(マーク)
22 インク層部
221 第1インク層部
221c シアン層部
221m マゼンダ層部
221y イエロー層部
222 第2インク層部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード本体に各種情報を記憶する情報記憶部が設けられ、前記情報記憶部に記憶された各種情報が不可視光線方式の読取装置により読取可能なゲーム用カードであって、
前記カード本体の表面には、所定波長の不可視光線を透過するインクを含んでなるインク層部が形成され、
前記情報記憶部は、
前記インク層部の表面に形成され、前記所定波長の不可視光線を吸収するカーボンを含んでなる所定形状のマークを少なくとも一つ有し、
前記インク層部は、
ブラック(K)以外の少なくとも一色のインクを用いて形成された第1インク層部と、ブラック(K)のインクを用いて形成された第2インク層部とを具備することを特徴とするゲーム用カード。
【請求項2】
前記第2インク層部は、前記第1インク層部の上面に当該第1インク層部全体を被覆するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のゲーム用カード。
【請求項3】
前記第1インク層部は、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のインクが略等しい割合で前記マークと略等しい色となるように調整されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のゲーム用カード。
【請求項4】
前記インク層部を構成するインクは、カーボンを含有しない、或いは、前記マークよりもカーボンの含有率の低いインクであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のゲーム用カード。
【請求項5】
前記マーク及び前記インク層部は、所定方式の印刷により形成されてなることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のゲーム用カード。
【請求項6】
カード本体の情報記憶部に記憶された各種情報が不可視光線方式の読取装置により読取可能なゲーム用カードを作成するカード作成方法であって、
前記情報記憶部は、
所定波長の不可視光線を透過するインクを含んでなるインク層部の表面に形成され、前記所定波長の不可視光線を吸収するカーボンを含んでなる所定形状のマークを少なくとも一つ有し、
前記カード本体の表面の情報記憶部形成領域に、前記インク層部を構成する第1インク層部をブラック(K)以外の少なくとも一色のインクを用いて形成する第1インク層部形成工程と、
前記第1インク層部の表面に、前記インク層部を構成する第2インク層部をブラック(K)のインクを用いて形成する第2インク層部形成工程と、
前記第2インク層部の表面に、前記マークを形成するマーク形成工程と、を備えることを特徴とするカード作成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−110308(P2011−110308A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271008(P2009−271008)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】