説明

コアドリルの拡径穴穿設装置

【課題】 構成がシンプルで、且つ取扱が容易なコアドリルの拡径穴穿設装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 一端にドリル装置の駆動軸側に取着するシャンク1Aを有し他端にコアドリル4の基端とセンタードリル3の基端を同芯状に着脱自在に取着することができる着脱装置2を有するコアドリルの拡径穴穿設装置1において、着脱装置2の取着部に着脱可能な前記センタードリル3の基端に形成されている被取着部3Bと同じ構成の被取着部10Bを両端部に有する、センターシャフト10の一端の被取着部10Bを、前記着脱装置2の取着部に取着するとともに、該センターシャフト10の他端の被取着部10Bに、同一の構成を有する別の着脱装置102を取着し、この着脱装置102に既設貫通穴の穴径に等しい外径を有する位置決め用のコアドリル24を、介して取着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願にかかる発明は、所定厚さを有する板状等の素材に円筒状の貫通穴を形成するコアドリルの拡径穴穿設装置に関し、特に、一度穿設した貫通穴により大径の穴を同芯円状に穿設することができるコアドリルの拡径穴穿設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エアーコンディショナーの配管用の貫通穴を建屋の壁等に穿設する場合には、穿設効率の良いコアドリルが使用される。また、キッチンの排水管を床に貫通させるような場合に、床の穿設には、コアドリルが使用される。
【0003】
ところで、前述のように、コアドリルを使用して貫通穴を穿設する場合には、コアドリルの回転中心部に該コアドリルと同芯状で且つ該コアドリルの先端より先端がさらに突出して配設されている所謂センタードリルで、貫通穴の位置決めをしつつ、該コアドリルによってリング状の穿設がおこなわれる。
このように穿設した貫通穴が、前記配管を挿通するには径寸法が小さいときには、穿設しようとする壁等に既にセンタードリルより大径の貫通穴が穿設されていることから、もはやセンタードリルで位置決めをして既設のものよりさらに大径のコアドリルを用いて貫通穴を穿設することができない。従って、かかる場合には、他の刃物またはやすり等で穴径を拡大するような作業が強いられていた。
【0004】
しかし、かかる作業はコアドリルを使用した穿設作業に比べて効率が悪く、且つ、綺麗な円形状の貫通穴を形成することが難しい。
【0005】
このような状況に鑑みて、使用した小径のコアドリルを位置決めに利用して、該コアドリルに同芯状に大径のコアドリルを一体に取着して、所望の径の貫通穴を穿設することができるコアドリルの拡径穴穿設装置が提供されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許第6,881,017号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前述したコアドリルの拡径穴穿設装置の場合、装置の構造が複雑で、且つ、構成要素の交換等に手間のかかるものであった。つまり、コアドリルと同芯状に取着されている該センタードリルを、着脱装置の止めネジを緩めて、該着脱装置から一旦取り外し、その後に、アタッチメントを挿入して、前記着脱装置の横から止めネジを用いて該センタードリルを固定し、しかる後に、該アタッチメントの先端に鍔付きの固定金具を回転自在に挿通して、この固定金具に所望の径のコアドリルを挿通して後、さらに、ナットで固定金具にコアドリルを固定する必要があった。
【0007】
本願発明は、上述のような現況に鑑みおこなわれたもので、構成がシンプルで、且つ取扱が容易なコアドリルの拡径穴穿設装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1の発明にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置によれば、一端にドリル装置の駆動軸側に取着するシャンクを有する他端に、コアドリルの基端とセンタードリルの基端を同芯状に着脱自在に取着することが可能な着脱装置を有する、コアドリルの拡径穴穿設装置において、
前記着脱装置の取着部に着脱可能な前記センタードリルの基端に形成されている被取着部と同じ構成の被取着部を両端部に有する、センターシャフトの一端の被取着部を、前記着脱装置の取着部に取着するとともに、
該センターシャフトの他端の被取着部に、前記着脱装置と同一の構成を有する別の着脱装置を取着するとともに、この別の着脱装置に既設貫通穴の穴径に等しい外径を有する位置決め用コアドリルを取着したことを特徴とする。
【0009】
本第2の発明にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置は、一端にドリル装置の駆動軸側に取着するシャンクを有する他端に、コアドリルの基端とセンタードリルの基端を同芯状に着脱自在に取着することが可能な着脱装置を有する、コアドリルの拡径穴穿設装置において、
前記着脱装置の取着部に着脱可能な前記センタードリルの基端に形成されている被取着部と同じ構成の被取着部を一端部に有するとともに、他端部に前記コアドリルの被取着部に係合する係合手段を具備したセンターシャフトを具備することを特徴とする。
【0010】
本第3の発明にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置は、一端にドリル装置の駆動軸側に取着するシャンクを有する他端に、コアドリルの基端とセンタードリルの基端を、同芯状に着脱自在に取着することが可能な着脱装置を有する、コアドリルの拡径穴穿設装置において、
前記センタードリルを外覆するべく、基端に円筒状の凹部を具備し、
先端に既設貫通穴の穴径に等しい外径を有する位置決め用コアドリルの被取着部の貫通穴を貫通する位置決め用コアドリル取着軸部と該取着軸部の該貫通した部分の外周面に形成されたおねじとを具備した、位置決め用コアドリル取着部を備えたアタッチメントを有し、
前記アタッチメントの取着軸部に位置決め用コアドリルの取着用貫通穴を貫通させた状態において前記おねじに取着用ナットを螺着して、該アタッチメントに位置決め用コアドリルを取着し、該取着したアタッチメントの基端の円筒状の凹部を、前記センタードリルに被せることができるよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
しかして、本第1の発明にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置によれば、着脱装置の取着部に所望径のコアドリルを取着するとともに、センタードリルの被取着部と同じ構成の被取着部を基端に備えた互換性のあるセンターシャフトを、前記着脱装置の取着部に取着されているセンタードリルと取り替えるとともに、さらに該センターシャフトの先端側の被取着部に、前記着脱装置と同じ構成の着脱装置を取着するとともに、この着脱装置に、前記所望径のコアドリルの取着と同じ要領で、既設の貫通穴の穴径と等しい外径を有する位置決め用のコアドリルを取着すれば、簡単に位置決め用コアドリルとそれより大径の所望径のコアドリルをセンターシャフトを介して同芯に且つ一体にセットできる。そして、この位置決め用コアドリルを既設の貫通穴に位置させた状態でこの拡径穿設装置を回転させると、所望径のコアドリルによって、既設の貫通穴に対して同芯上に、所望径の貫通穴を穿設することが可能となる。
【0012】
また、本第2の発明にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置によれば、着脱装置の取着部に所望径のコアドリルを取着するとともに、センタードリルの被取着部と同じ構成の被取着部を一端部に備えた互換性のあるセンターシャフトを、前記着脱装置の取着部に取着されているセンタードリルと取り替えるとともに、さらに該センターシャフトの他端部の係合手段に、既設の貫通穴の穴径と等しい外径を有する位置決め用のコアドリルをその被取着部によって係合させれば、簡単に位置決め用コアドリルとそれより大径の所望径のコアドリルをセンターシャフトを介して同芯に且つ一体にセットできる。そして、この位置決め用コアドリルを既設の貫通穴に位置させた状態でこの拡径穿設装置を回転させると、所望径のコアドリルによって、既設の貫通穴に対して同芯上に、所望径の貫通穴を穿設することが可能となる。
【0013】
また、本第3の発明にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置によれば、既設の貫通穴の穴径と等しい外径を有する位置決め用コアドリルを一体に取着したアタッチメントを、所望径のコアドリルを取着した着脱装置に取着されたセンタードリルに被せるだけで、簡単に位置決め用コアドリルと所望径のコアドリルとを同芯に一体にセットでき、このようにセットされた拡径穴穿設装置を使用すれば、所望径の貫通穴を穿設することが可能となる。
【0014】
また 前記第1の発明にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置において、前記着脱装置の取着部とセンターシャフトの被取着部との着脱および該取着部と前記センタードリルの被取着部との着脱が、ワンタッチ式であると、より容易に交換が可能な構成となる。
【0015】
また、上記第1の発明にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置において、前記ワンタッチ式が、
前記センターシャフトあるいはセンタードリルの端面に接合し挿入方向に対して抗する弾性力を奏するバネが前記取着部の穴内に挿置されているとともに、
該穴にセンターシャフトの脱落を防止するための突起が内径方へ向けて突設されるとともに、該センターシャフトの被取着部に前記突起を通過するための通過凹部と該通過凹部に周方向に連続して該突起を軸方向に落下不能に収容する収容凹部とが形成されることによって、
構成されていると、実際上好ましい構成となる。
【0016】
このような構成に代えて、前記突起をセンターシャフトおよびセンタードリル側に形成するとともに、前記通過凹部と収容凹部を前記穴内周面に形成しても、同様の作用効果を奏することが可能となる。つまり、
上記第1の発明にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置において、前記ワンタッチ式が、
前記センターシャフトあるいはセンタードリルの端面に接合し挿入方向に対して抗する弾性力を奏するバネが前記取着部の穴内に挿置されており、且つ、
該センターシャフトの被取着部に、脱落を防止するための突起が外径方へ向けて突設されるとともに、該穴内周面に、前記突起を通過するための通過凹部と該通過凹部に周方向に連続して該突起を軸方向に落下不能に収容する収容凹部とが形成されることによって、
構成されていてもよい。
【0017】
また、前記第2の発明にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置において、前記コアドリルの被取着部が、内方に突出する突起によって構成されるとともに、
前記係合手段が、前記突起の通過を許容するべく、一端が外部に開放し軸方向に延びる挿入溝と、この挿入溝に連設され該挿入溝に対して交角を有するように形成された係止溝とを備えた係合溝によって構成されていると、突起と係合溝の係合によって、簡単にコアドリルをセンターシャフトの他端部に取着できる構成が実現できる。
【0018】
また、前記第2の発明にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置において、前記交角が、約90度であると、コアドリルの回転に際しても確実に係合でき、且つ軸方向にコアドリルが脱落することのない構成を実現できる。
【0019】
また、前記第3の発明にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置において、前記アタッチメントの円筒状の凹部に、内周面を取り巻くように自由状態(外力が作用しない状態)において取着しようとするセンタードリルの外径より内径が小さい寸法の弾性体からなるOリングが、配設されていると、使用前の状態において軸方向に該アタッチメントをセンタードリルに対し容易に仮固定できる点において、より好ましい構成となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施例1)
以下、本発明にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置の実施例について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0021】
図1は本第1の発明の一実施例にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置の全体の概略の構成を一部断面して示した全体側面図、図2は図1の着脱装置部分の構成を示す一部断面した部分拡大図である。
【0022】
図1に図示するように、本実施例にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置1は、一端に図示しないドリル装置(例えば、電動ドリル装置)の駆動軸側に取着するシャンク1Aを有し、他端には、着脱装置2を有する。この着脱装置2は、図3に図示するセンタードリル3の基端部に形成される被取着部3Bと図1あるいは図2に図示するコアドリル4の基端部に形成される被取着部4Bとを同芯状に着脱自在に取り付けることができる取着部2Cを有する。また、前記取着部2Cは、前記センタードリル3に代えて、センターシャフト10の端部を着脱自在に取着することができるよう構成されている。
また、前記センターシャフト10の両端部には、前記センタードリル3の被取着部3Bと同じ構成の被取着部10Bをそれぞれ具備して、前記着脱装置2および同じ構成からなる別の着脱装置102とを、該センターシャフト10と同芯状に着脱自在に取り付けることができるよう構成されている。
【0023】
前記着脱自在に取り付けるための前記取着部2C側の構成としては、センタードリル3あるいはそれに代えて取り付けられるセンターシャフト10を取着するために、該取着部2Cの軸芯部位に、先端方(図1,図2において下端方)に開放した円筒状の穴2Bが形成され、この穴2B内には、該穴2B内方(中心)に向かって突出した突起2aが形成されている。これに対して、前記取着部2Cに取着される、図3に図示するセンタードリル3および図4に図示するセンターシャフト10の被取着部(基端部)3B,10Bには、前記突起2aを穴長手方向(図3,図4において上下方向)に通過するための通過凹部3a,10aが形成されているとともに、この通過凹部3a,10aと連続して周方向に隣接して、該突起2aを軸方向に保持・収容する、収容凹部3b,10bが形成されている。これらの周方向に連続して形成されている通過凹部3a,10aと収容凹部3b,10bの構成を図面で表すと、90度づつ異なる角度から表した図5(a)〜(d)に図示するとおりである。
【0024】
ところで、前記穴2Bの奥方の小径穴2g内には、図2に図示する如く、該穴2B内に挿入され前記センタードリル3(あるいはセンターシャフト10)の基端面を先端方へ押圧付勢するコイルスプリング5が配設されている。
【0025】
前記構成により、センタードリル3あるいはセンターシャフト10を、前記コイルスプリング3を収縮させる状態まで、穴2B内にスプリング力に抗して挿入して後に、先端側(図5(a)〜(d)において下側)から見て時計方向(基端側(図5(e),(f)に図示する側)から見て反時計方向)に、回転させれば、前記突起2aは、センタードリル3あるいはセンターシャフト10の通過凹部3aあるいは10aを通過してその後に収容凹部3bあるいは10bへ移動して、該収容凹部3bあるいは10bの位置で、前記穴2Bの突起2aが相対的に軸方向に所定距離だけ遊動できる状態で係止・保持されることになる。
【0026】
また、前記コアドリル4を、取着部2Cへ着脱自在に取り付けるための該取着部2C側の構成としては、図2に図示するように、前記取着部2Cの円筒状の外周面2fに、周方向に適宜間隔、この実施例では、120度間隔で、先端方に溝端が開放された軸方向に延設された溝2d(図2において破線で表す)と該溝2dの基端部位に連設され周方向へ延びる収納凹部2e(内方への突起4pの紙面奥方の部分)とが設けられている。
そして、前記溝2d内には、その外周方に軸方向(図2の上下方向)に移動自在に配置された押圧爪14Cが配設され、上方から下方に向けてスプリング7によって、該押圧爪14C(スリーブ14)が押圧されている。また、この押圧爪14Cは、基端(上端)が円筒状になったスリーブ14の先端部(図2において下部)に、前記溝2dに対応して、つまり、この実施例では、120度毎に3箇所、周方向に互いに離間して、突設するよう形成されている。また、この押圧爪14Cの下端側部には、後述するコアドリル4側の突起4pの一部(この実施例では、上端および左側部の一部)を抱え込んで保持するための凹部14eが形成されている。
一方、コアドリル4の被取着部4Bの内周面から、内周方へ向けて突出し前記溝2d内を通過可能な半球状の突起4pが、前記溝2dに対応して周方向に120度間隔で3箇所に設けられている。また、この突起4pは、コアドリル4の基端(上端)から、少し先端(下端)方に偏位した位置に設けられている。
【0027】
前記構成により、コアドリル4の突起4pが、前記取着部2Cの溝2d内に入り込むように、該コアドリル4をシャンク1A側へ向けて押し込むことによって、該突起4pが前記収納凹部2eの側方に位置した状態で、前記押圧爪14Cが上方から突起4dの左肩部を押圧すると、該凹部14eにより周方向へ移動させる方向の分力が生じて、突起4dを前記収納凹部2e方へ押し込むことができ、且つ、この状態で前記収納凹部2eと押圧爪14Cでもってその位置で突起4pを固定することができる。このため、コアドリル4をワンタッチで着脱装置2に装着することができる。
【0028】
この結果、センタードリル3とコアドリル4とが、前記着脱装置2の取着部2Cに同芯状に着脱自在に配設されることになる。
【0029】
そして、このコアドリルの拡径穴穿設装置1では、例えば、所望の穴径に比べて小径の貫通穴を穿設する際に使用した、前記センタードリル3を単に押圧して且つ回転させることによって取り外して、前記穴2Bへ、図1,図3,図4に図示するセンターシャフト10を、押し込んで回転させることによってワンタッチで着脱することができるように構成されている。つまり、このセンターシャフト10の両端部には、前記センタードリル3の被取着部3Bと同じ構成の被取着部10Bが形成され、該センターシャフト10は、前記着脱装置2および着脱装置102にワンタッチで着脱することができる。
なお、前記センターシャフト10の取り外しは、前述したセンタードリル3の取り外しと同様に、取付時と逆の手順によって片手で簡単におこなうことができる。また、前記着脱装置2には、所望の径のコアドリル4が、前記要領ででワッタッチで取着される。
このような動作は、図3〜図5に図示する構成から容易に理解できるものである。
【0030】
そして、前記センターシャフト10の他端には、図1に図示するように、前記コアドリル4の外径(外径:φB)より相対的に外径(外径:φA)の小さい、つまり、既設の貫通穴の穴径(穴径φA)と等しい外径(外径φA)を有する、位置決め用のコアドリル24が、前記着脱装置2と同じ構成の着脱装置102を介して、前記同様に、ワンタッチで着脱することが可能になっている。
【0031】
このように構成されているため、例えば、図6,図7に図示するように、既に、壁55等に所望の外径(φB)より小さい外径(φA)のコアドリル24を用いて、貫通穴30を形成しているような場合にも、図1あるいは図7(a)に図示するように、前記着脱装置2に、所望の外径(φB)のコアドリル4をセットし、該着脱装置2にセンタードリル10を介して、もう一方の着脱装置102を取着し、該もう一方の着脱装置102に前記コアドリル24配置することによって、このコアドリル24を貫通穴30に挿入した状態で、電動ドリル装置等を用いて、一方の着脱装置2のシャンク1Aを回転させれば、図7(b)(c)に図示するように穿設が実施され、図7(d)に図示するように、所望の径(径:φB,正確にはφBよりやや大きい径)の貫通穴31を簡単に形成することができる。
【0032】
ところで、このような構成に代えて、図8に図示するように、前記突起10g,3gをセンターシャフト10およびセンタードリル3側に形成するとともに、前記通過凹部2kと収容凹部2jを前記穴2Bの内周面に形成しても、同様の作用効果を奏することが可能となる。つまり、前記センターシャフト10の被取着部10Bに突起10gが、あるいはセンタードリル3の被取着部3Bに突起3gが、それぞれ外径方へ向けて突設されるとともに、着脱装置2の取着部2Cの穴2Bの内周面に前記突起10gを通過するための通過凹部2kと該通過凹部2kに連続して該突起10g,3gを軸方向に落下不能に収容する収容凹部2jとが形成されていても、作用効果的に前述した実施例1と同じ作用効果を得ることができる。
(実施例2)
図9は本第2の発明の一実施例にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置の全体の概略の構成を一部断面して示した全体側面図およびセンターシャフトの構成を示す図である。
【0033】
前記実施例の変形実施例として、図9に図示するように、センターシャフト310の他端部(先端部)に、前記位置決め用のコアドリルの被取着部が係合可能な係合手段をを有する取着部310Bを形成し、該センターシャフト310の一端部(基端部)に、前記位置決め用のコアドリル24を取着するように構成してもよい。例えば、前記位置決め用のコアドリル24の被取着部が、内方への突起24pである場合には、前記取着部310Bの係合手段としては、側面視がL字状(この実施例では回転方向と同じく方向に延びたL字状)の、基端側に開放し前記突起24pが通過可能な挿入溝310fとこの挿入溝310fに交角を有し該挿入溝310fに連設された係止溝310gであると、極めてシンプルな構成となる。また、前記交角としては、90度であると好ましい構成となる。しかし、この交角としては、90度に限定されるものでなく、70度であっても、110度であっても、あるいは80度であっても、さらには100度であってもよい。また、この実施例では、側面視L字状になっているが、側面視T字状であってもよく、かかる場合には、コアドリルを時計方向および反時計方向の両方向に回転させようとする場合には好適な実施例となる。なお、センターシャフト310のもう一方の端部の構成およびその他の構成については、前述した図1〜図7に図示する実施例と同じ構成であるため、該同じ構成に図9に対応する参照符号を付して、説明を省略する。
【0034】
そして、このように構成された本実施例2にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置301の場合にも、基本的には、前記実施例1の場合と同様の作用効果を奏する。本実施例2特有の作用効果として、以下のような作用を奏する。つまり、コアドリル4を取着した着脱装置2の取着部2Cから図3に図示するセンタードリル3を取り外して、該取着部2Cに図9(b)に図示する前記センターシャフト310の一端(基端)の被取着部10Bを前記実施例1と同様の要領で取着する。そして、このセンターシャフト310の他端に形成されている前記取着部310Bの挿入溝310fに、前記位置決め用のコアドリル24の被取着部24Bに形成されている突起24pが入り込むように、該コアドリル24を前記取着部310Bに取着し、しかる後、コアドリル24を先端側から見て時計方向に回転させると、前記突起24pが係止溝310gに入り込み、図9(a)に図示するように、コアドリル24がセンターシャフト310の取着部310Bに一体的に取着することができる。そして、このように二つの異なる径のコアドリル4,24がセットされたコアドリルの拡径穴穿設装置301は、前記実施例1に説明したと同様に既設の穴と同芯状に拡径穴を穿設することが可能となる。
(実施例3)
前記実施例1,2と異なる構成にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置の実施例3について、図面(図10〜図13)を参照しながら、説明する。
【0035】
図10は本第3の発明の一実施例にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置の全体の概略の構成を一部断面し分離して示した全体側面図、図11は図1に示すコアドリルの拡径穴穿設装置を使用状態にセットした状態での一部断面した側面図である。
【0036】
つまり、このコアドリルの拡径穴穿設装置201は、一端に図示しないドリル装置(例えば、電動ドリル装置)の駆動軸側に取着するシャンク201Aを有し、他端には、着脱装置202を有する。そして、この着脱装置202は、図10,図11,図13に図示するセンタードリル203の基端部203Bとコアドリル204の基端部204Bを同芯状に着脱自在に取り付けることができる取着部202Cを有する。この取着部202Cは、前記実施例1と同じ構成にすることもできるが、この実施例2では、別の構成を備えている。つまり、この実施例2では、センタードリル203を取着するために、取着部202Cの軸芯部位に、先端方に開放した円筒状の穴202Bが形成され、この穴202Bの基端部には、該穴202Bの長手方向に直交する方向に止めネジ用の穴202Dが形成されている。また、この止めネジ用の穴202Dには止めネジ231が螺着されている。一方、センタードリル203の上端部には、前記止めネジ231の先端が係合するフラット面203dを有する凹部203Dが形成されている。
【0037】
従って、前記止めネジ231を緩めた状態でセンタードリル203の基端部を前記穴202B内に挿入して、この止めネジ231を締め込むことによって、センタードリル203を取着部202Cに固定することができる。
【0038】
また、前記取着部202Cの前記円筒状の穴202Bの先端方(図10,図13において下方)には、該穴202Bと同芯状で大径の穴202Eが形成されており、この穴202E内には、先端で巻きピッチが密になった(この実施例2では先端の3条の巻きピッチがスプリングの線径と等しくなった)コイルスプリング209が配設されており、該コイルスプリング209の基端(上端)は、該穴202Eに圧入(弾性的に嵌合)されることによって、該穴202Eに固定されている。
そして、前記穴202Eを有する取着部202Cの下端部は円筒状に形成されており、該下端部には、半径方向に向かって延びる施錠部材収容穴202Rが周方向にこの実施例では3箇所形成されている。そして、前記施錠部材収納穴202Rには、それぞれ球状の施錠部材241が径方向に移動自在に配置されており、該施錠部材241は、内径側で前記コイルスプリング209によって係止され、また外径側で円筒状のスリーブ243の内面によって、それぞれ接合されることによって、該施錠部材収納穴202R内に保持されている。
そして、前記スリーブ243は、コイルスプリング245によって回転方向において時計回りに付勢されている。そして、このスリーブ243の内面の下部には、前記施錠部材241と接触するカム面243Cが形成されており、このカム面243Cは図14に示すように周方向において変化し、つまり、図13に図示する状態において、施錠部材241が外径方に最も後退し、図11に図示する状態において、施錠部材241が内径方に最も突出している状態を形成することが可能になっている。換言すれば、前記スリーブ243のカム面243Cの、この着脱装置2の軸芯O1からの距離が、周方向において連続的に変化して、前述のように、施錠部材241の径方向の位置を変化させるよう構成されている。このカム面243Cの構成を前記取着部202Cの下端部の構成と共に図示すると、図14の如くである。
一方、前記コアドリル204の被取着部204Bの上部の外周面には、図13に示す如く、前記施錠部材241の内径面が当接する凹部204eが該施錠部材241に対応して周方向に3箇所形成され、この凹部204eに前記施錠部材241が接合して、軸方向および周方向に係止されるよう構成されている。
【0039】
また、このコアドリルの拡径穴穿設装置201は、図10〜図12に図示するように、前記センタードリル203の先端部を外覆することができるように、基端に円筒状の凹部251aを具備したアタッチメント251を有する。このアタッチメント251は、図12に単体で図示するように、先端に図10,図11に図示する位置決め用コアドリル(既設の貫通穴の形成に使用したコアドリル)224の被取着部224Bの取着用貫通穴224aを貫通する位置決め用コアドリル取着軸部251bと該取着軸部251bの該貫通した部分の外周面に形成されたおねじ251cとを具備している。
【0040】
そして、図11に図示するように、前記アタッチメント251の取着軸部251bに位置決め用コアドリル224の貫通穴224aを貫通させた状態において、前記おねじ251cに平ワッシャ257を介して取着用ナット225を螺着して、該アタッチメント251に、位置決め用コアドリル224を取着することができる。そして、このようにコアドリル224を一体に取着したアタッチメント224の基端の円筒状の凹部251aを、図11に図示するように、前記センタードリル203に被せることができるよう構成されている。
また、前記凹部251aの入口端近傍に、図12等に図示するように、ゴム製のOリング252が配設されている。このOリング252は、自由状態、つまり外力が作用しない状態において、その内径が、前記センタードリル203の外径より少し小さい寸法に設定されている。
【0041】
そして、前述のように構成された本コアドリルの拡径穴穿設装置201は、既に壁等に穿設した穴に対してより大径の穴を穿設したい場合には、前記位置決め用コアドリル224を一体に取着したアタッチメント224を、その凹部251aが、図11に図示するように、前記センタードリル203を外被するように挿入する。このように挿入されると、前記Oリング252が、センタードリル203を挟着して、該アタッチメント224をセンタードリル203に挟着させその状態に保持することができることになる。
そして、実施例1で説明したと同じように、前記位置決め用のコアドリル224を既に穿設した貫通穴に挿入して位置決めした状態で、前記着脱装置202のシャンク201Aを電動ドリル装置等で回転させれば、コアドリル204によって、既設の貫通穴と同芯状に、大径の穴を穿設することが可能となる。
【0042】
つまり、この実施例2にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置201の場合には、単に、センタードリル203にアタッチメント251を被せるだけで、壁等に、同芯状によりより大径の貫通穴を穿設することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置は、板状部材等の穿設等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本第1の発明の一実施例にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置の全体の概略の構成を一部断面して且つ分離して示した全体側面図。
【図2】図1の着脱装置部分の構成を示す一部断面した部分拡大図である。。
【図3】図1に示す着脱装置に取着されるセンタードリルの一部省略した全体側面図である。
【図4】図1に示すセンタードリルの一部中央部分を省略した全体側面図である。
【図5】図5(a)〜(d)は、図3に示すセンタードリルの基端部、および図4に示すセンターシャフトの両端部に形成されている被取着部分のを構成を示す部分拡大図および断面図であり、図5(e)は図5(b)のe−e矢視断面図であり、図5(f)は図5(b)のf−f矢視断面図である。
【図6】図1に図示する、径の異なる二つのコアドリルを各着脱装置2とセンターシャフトとを介して一体に連結した状態のコアドリルの拡径穴穿設装置の全体の構成と、既に小径の貫通穴が穿設された壁を、一部断面して示す図である。
【図7】図6に図示するコアドリルの拡径穴穿設装置を使用して、既に小径の貫通穴が穿設された壁に、大径の貫通穴を穿設する作業の各工程を示す図である。
【図8】突起がセンターシャフト側に形成され、該突起を通過させる通過凹部と軸方向に保持・収容する収納凹部がセンターシャフトを取着する穴側に形成されている図1に図示する実施例とは別の実施例(変形実施例)にかかる該突起と通過凹部および収納凹部の構成を示す図で、(a)は穴内周面の部分展開図、(b)は穴断面とシャフト断面を示す(a)のb−b矢視図、(c)は穴および収納凹部の断面とシャフト断面を示す(a)のc−c矢視図である。
【図9】別の実施例にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置を示す図で、(a)はコアドリルの拡径穴穿設装置の全体の概略の構成を一部断面した全体側面図、(b)は(a)に示すセンターシャフトを一部断面して示した図である。
【図10】本第2の発明の一実施例にかかるコアドリルの拡径穴穿設装置の全体の概略の構成を一部断面して且つ分離して示した全体側面図。
【図11】図10に示すコアドリルの拡径穴穿設装置を一体にセットした状態の全体側面図である。
【図12】図7,図11に示すアタッチメントの構成を分解して一部断面して示した側面図である。
【図13】図7,図11に示すアタッチメントを装着する前の状態の、一方の取着部と大径のコアドリルとセンタードリルの構成を示す一部断面した分解図である。
【図14】図10,図11,図13に示す着脱装置のカム面の構成を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
1…コアドリルの拡径穴穿設装置
2…着脱装置
3…センタードリル
3B…被取着部
4…コアドリル
10…センターシャフト
10B…被取着部
24…コアドリル
102…別の着脱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にドリル装置の駆動軸側に取着するシャンクを有する他端に、コアドリルの基端とセンタードリルの基端を同芯状に着脱自在に取着することが可能な着脱装置を有する、コアドリルの拡径穴穿設装置において、
前記着脱装置の取着部に着脱可能な前記センタードリルの基端に形成されている被取着部と同じ構成の被取着部を両端部に有する、センターシャフトの一端の被取着部を、前記着脱装置の取着部に取着するとともに、
該センターシャフトの他端の被取着部に、前記着脱装置と同一の構成を有する別の着脱装置を取着するとともに、この別の着脱装置に既設貫通穴の穴径に等しい外径を有する位置決め用コアドリルを取着したことを特徴とするコアドリルの拡径穴穿設装置。
【請求項2】
前記着脱装置の取着部とセンターシャフトの被取着部との着脱および該取着部と前記センタードリルの被取着部との着脱が、ワンタッチ式であることを特徴とする請求項1記載のコアドリルの拡径穴穿設装置。
【請求項3】
前記ワンタッチ式が、
前記センターシャフトあるいはセンタードリルの端面に接合し挿入方向に対して抗する弾性力を奏するバネが前記取着部の穴内に挿置されているとともに、
該穴にセンターシャフトの脱落を防止するための突起が内径方へ向けて突設されるとともに、該センターシャフトの被取着部に前記突起を通過するための通過凹部と該通過凹部に周方向に連続して該突起を軸方向に落下不能に収容する収容凹部とが形成されることによって、
構成されていることを特徴とする請求項2記載のコアドリルの拡径穴穿設装置。
【請求項4】
前記ワンタッチ式が、
前記センターシャフトあるいはセンタードリルの端面に接合し挿入方向に対して抗する弾性力を奏するバネが前記取着部の穴内に挿置されており、且つ、
該センターシャフトの被取着部に、脱落を防止するための突起が外径方へ向けて突設されるとともに、該穴内周面に、前記突起を通過するための通過凹部と該通過凹部に周方向に連続して該突起を軸方向に落下不能に収容する収容凹部とが形成されることによって、
構成されていることを特徴とする請求項2記載のコアドリルの拡径穴穿設装置。
【請求項5】
一端にドリル装置の駆動軸側に取着するシャンクを有する他端に、コアドリルの基端とセンタードリルの基端を同芯状に着脱自在に取着することが可能な着脱装置を有する、コアドリルの拡径穴穿設装置において、
前記着脱装置の取着部に着脱可能な前記センタードリルの基端に形成されている被取着部と同じ構成の被取着部を一端部に有するとともに、他端部に前記コアドリルの被取着部に係合する係合手段を具備したセンターシャフトを具備することを特徴とするコアドリルの拡径穴穿設装置。
【請求項6】
前記コアドリルの被取着部が、内方に突出する突起によって構成されるとともに、
前記係合手段が、前記突起の通過を許容するべく、一端が外部に開放し軸方向に延びる挿入溝と、この挿入溝に連設され該挿入溝に対して交角を有するように形成された係止溝とを備えた係合溝によって構成されていることを特徴とする請求項5記載のコアドリルの拡径穴穿設装置。
【請求項7】
前記交角が、約90度であることを特徴とする請求項6記載のコアドリルの拡径穴穿設装置。
【請求項8】
一端にドリル装置の駆動軸側に取着するシャンクを有する他端に、コアドリルの基端とセンタードリルの基端を、同芯状に着脱自在に取着することが可能な着脱装置を有する、コアドリルの拡径穴穿設装置において、
前記センタードリルを外覆するべく、基端に円筒状の凹部を具備し、
先端に既設貫通穴の穴径に等しい外径を有する位置決め用コアドリルの被取着部の貫通穴を貫通する位置決め用コアドリル取着軸部と該取着軸部の該貫通した部分の外周面に形成されたおねじとを具備した、位置決め用コアドリル取着部を備えたアタッチメントを有し、
前記アタッチメントの取着軸部に位置決め用コアドリルの取着用貫通穴を貫通させた状態において前記おねじに取着用ナットを螺着して、該アタッチメントに位置決め用コアドリルを取着し、該取着したアタッチメントの基端の円筒状の凹部を、前記センタードリルに被せることができるよう構成されていることを特徴とするコアドリルの拡径穴穿設装置。
【請求項9】
前記アタッチメントの円筒状の凹部に、内周面を取り巻くように自由状態において取着しようとするセンタードリルの外径より内径が小さい寸法の弾性体からなるOリングが、配設されていることを特徴とする請求項8記載のコアドリルの拡径穴穿設装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−38351(P2007−38351A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225797(P2005−225797)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000137845)株式会社ミヤナガ (20)
【Fターム(参考)】