説明

コネクタ

【課題】端子10が過度に弾性変形されず、塑性変形を生じないコネクタを提供する。
【解決手段】弾性と導電性を有する略帯状板金からなる端子10の一端側を絶縁性のコネクタ本体14内に固定するとともに略U字状に折り曲げて前面14aより前方に突出させ、さらに他端側を同方向に折り曲げて当接部18を形成するとともに先端部20をコネクタ本体14内に前面14aから挿入する。被接続端子が前方側から接近する方向の相対移動で、端子10の当接部18に当接し、端子10が弾性変形してその先端部20がコネクタ本体14内にさらに挿入される。端子10の先端部20に先端側の幅が狭い段差部20aを形成し、コネクタ本体14の前面14a側に先端部20の幅の狭い先端側の挿入を許容するとともに段差部20aの挿入を許容しない規制部14bを設ける。段差部20aが規制部14bに当接して、端子10が過度に弾性変形されることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性を有する端子が過度に弾性変形されて、塑性変形を生じないようにしたコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、携帯電話機等の携帯用電子機器の本体裏面には、充電式電池からなるバッテリーユニットが着脱自在に配設され、バッテリーユニットの被接続端子に本体側に設けられたコネクタの端子が当接して電気的接続がなされ、もってバッテリーユニットと機器本体が電気的接続されるようになっている。
【0003】
かかるコネクタの従来構造の一例が、特開2004−265598号公報(以下、特許文献1と称する。)に示されている。この特許文献1に示された従来技術を図8および図9を参照して簡単に説明する。図8は、特許文献1に示された従来のコネクタの構造の外観斜視図である。図9は、特許文献1に示された従来のコネクタの構造の縦断面図である。
【0004】
図8および図9において、弾性と導電性を有する略帯状板金からなる端子10は、その一端側が板厚方向に略S字状に折り曲げられ、この略S字状に折り曲げられた部分のより端側にある一方の略U字状の折り曲げ部12が絶縁性のコネクタ本体14内に適宜に挿入されて固定されるとともに、略S字状に折り曲げられた部分の他方の固定されない略U字状の折り曲げにより弾性変形部16が形成される。そして、端子10は、弾性変形部16の固定されない側に連なる部分がコネクタ本体14の前面14aより前方に突出され、この突出された部分の途中が略U字状の弾性変形部16と同じ板厚方向に略「く」の字状に折り曲げられて当接部18が形成される。さらに、この当接部18に連なる他端側の先端部20が、コネクタ本体14内に前面14aから再び挿入し得るように形成される。そして、接続対象物としてのバッテリーユニットが機器本体に装着されることによって、バッテリーユニットは前面14aの前方側からコネクタ本体14に接近する方向に相対移動し、バッテリーユニットの被接続端子が端子10の当接部18に当接して電気的接続される。この際に、端子10は略U字状の弾性変形部16を中心としてこれの固定されない側に連なる部分が板厚方向に弾性変形されて、端子10の他端側の先端部20がコネクタ本体14内にさらに深く挿入される。なお、端子10の他端側の先端部20が、コネクタ本体14内に深く挿入できるように、コネクタ本体14内には大きな空間22が設けられている。
【特許文献1】特開2004−265598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、接続対象物としてのバッテリーユニットの構造は、バッテリーユニットが機器本体から取り外された状態で、被接続端子同士が簡単に電気的な短絡がなされて急激に放電されないように、被接続端子はユニット筐体の表面よりも少し内側に引っ込められた位置に設けられている。そこで、コネクタの端子10にあっては、バッテリーユニットが正しく機器本体に装着されて被接続端子が正しく当接した状態にあっても、被接続端子が表面から内側に引っ込められて設けられた深さだけ、コネクタ本体14の前面14aから前方に突出した状態でなければならない。しかるに、バッテリーユニットが正しく装着されない状態では、端子10が被接続端子以外の部分で押圧され、コネクタ本体14の前面14aと同じ位置まで弾性変形される虞がある。かかる場合には、過度の弾性変形により塑性変形を生じて、端子10が正しく弾性復帰できなくなる変形が生じ、電気的接続が不完全となるという不具合があった。
【0006】
そこで、端子10が過度に弾性変形されるのを阻止する第1の構造として、図10に示すごとき構造が提案されている。図10は、コネクタの端子が過度に弾性変形されるのを阻止する第1の構造の縦断面図である。図10に示す構造では、コネクタ本体24の裏面側に、端子10の先端部20が当接できる規制壁26が設けられている。そして、この規制壁26に端子10の先端部20が当接すると、それ以上の弾性変形が阻止される。しかるに、図9に示す構造のコネクタ本体14にあっては、コネクタ本体14を成形する際に、金型を図9で左と右および下に引き抜くことができる。これに対して、図10に示す構造のコネクタ本体24にあっては、コネクタ本体24を成形する際に、金型を図10で左および下にしか引き抜くことができず、それだけ製造が困難となる。
【0007】
さらに、端子10が過度に弾性変形されるのを阻止する第2の構造として、図11ないし図13に示すごとき構造も提案されている。図11は、コネクタの端子が過度に弾性変形されるのを阻止する第2の構造の外観斜視図である。図12は、コネクタの端子が過度に弾性変形されるのを阻止する第2の構造に対応させた接続対象物の被接続端子の部分の外観斜視図である。図13は、コネクタの端子が過度に弾性変形されるのを阻止する第2の構造の縦断面図である。図11に示すごとく、第2の構造では、コネクタ本体34の前面34aに、端子10の両側に前方に突なる凸部36、36…を設けたものである。そして、図12に示すごとく、接続対象物としてのバッテリーユニット40の被接続端子42、42…の周辺の筐体には、凸部36、36…が挿入し得る逃げ部44、44…が設けられている。かかる第2の構造では、端子10は、凸部36、36…の前端の位置までしか弾性変形されず、過度の弾性変形による塑性変形を生ずることがない。しかるに、端子10の両側に凸部36、36を設けるために、端子10、10間のピッチが大きくなり、または端子10の幅を狭くしなければならない、という不具合がある。
【0008】
本発明は、上述したごとき従来のコネクタの事情に鑑みてなされたもので、端子が過度に弾性変形されることがなく、塑性変形を生じる虞のないコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明のコネクタは、弾性と導電性を有する略帯状板金からなる端子の一端側を絶縁性のコネクタ本体内に固定するとともに、前記端子を略U字状に折り曲げて弾性変形部を形成するとともに前記コネクタ本体の前面より前方に突出させ、さらに前記端子の他端側を前記略U字状と同方向に折り曲げて当接部を形成するとともに前記他端側の先端部を前記コネクタ本体内に前記前面から挿入するようになし、前記端子に対して接続対象物が前記前面の前方側から前記コネクタ本体に接近する方向に相対移動することで、前記接続対象物の被接続端子が前記当接部に当接して電気的接続するとともに前記端子が前記弾性変形部を中心として弾性変形して前記端子の前記先端部が前記コネクタ本体内にさらに挿入されるコネクタにおいて、前記端子の前記先端部に先端側の幅が狭い段差部を形成し、前記コネクタ本体の前記前面側に前記先端部の幅の狭い先端側の挿入を許容するとともに前記段差部の挿入を許容しない規制部を設けて構成されている。
【0010】
そして、前記規制部を前記コネクタ本体の前記前面よりも内側位置に設けて構成しても良い。
【0011】
また、前記端子の前記先端部の側部に長手方向の切り込みを設け、前記側部を前記長手方向に折り返して前記段差部を形成して構成することもできる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のコネクタにあっては、端子の他端側の先端部に段差部を設け、コネクタ本体の前面側にこの段差部の挿入を規制する規制部を設けたので、誤って端子が被接続端子以外で押圧されても、段差部が規制部に当接すると、端子はそれ以上弾性変形できない。よって、端子は過度な弾性変形がなされず、塑性変形を生ずることがなく、被接続端子に対して確実な電気的接続が可能である。
【0013】
請求項2記載のコネクタにあっては、端子の先端部の段差部が当接することで、規制部には傷が付く虞があるが、規制部が前面よりも少し内側位置に設けられているので、その傷が目立つようなことがない。
【0014】
請求項3記載のコネクタにあっては、端子の先端部の側部を長手方向に折り返して段差部が形成されているので、段差部が規制部に当接した際に、規制部を傷付けることが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施例を図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本発明のコネクタの第1実施例の外観斜視図である。図2は、図1の第1実施例において端子が押圧されて弾性変形した状態の外観斜視図である。図3は、図1のコネクタに対応させた接続対象物の被接続端子の部分の外観斜視図である。図1ないし図3において、図8および図9に示す部材と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0016】
本発明のコネクタの第1実施例において、図8および図9に示す従来の構造と相違するところは、以下の点にある。まず、端子10、10…の他端側の先端部20、20…に、先端側の幅が狭い段差部20a、20a…がそれぞれに設けられている。そして、絶縁性のコネクタ本体14の前面14aの端子10、10…の先端部20、20…が挿入される位置には、端子10、10…の先端部20、20…の段差部20a、20a…より先端側の幅の狭い部分の挿入は許容するが段差部20a、20a…の挿入は規制する幅の規制部14b、14b…がそれぞれに設けられている。これらの規制部14b、14b…によって段差部20a、20a…の挿入が規制される状態にまで弾性変形された端子10、10…は、図2に示すごとく、当接部18、18…がコネクタ本体14の前面14aよりも所定寸法だけ前方に突出した状態にある。なお、図3に示す接続対象物としてのバッテリーユニット50には、被接続端子52、52…が筐体の表面より少し引っ込められた内側位置に配設されている。
【0017】
かかる構成おいて、バッテリーユニット50が機器本体に正しく装着されて被接続端子52、52…が端子10、10…の当接部18、18…にそれぞれに正しく当接する状態では、端子10、10…は段差部20a、20a…が規制部14b、14b…に当接して弾性変形が規制されるまでに到らず、被接続端子52、52…と端子10、10…が適宜な弾力で当接し、確実な電気的接続が得られる。もって、バッテリーユニット50と機器本体が確実に電気的接続される。そして、バッテリーユニット50が正しく装着されず、被接続端子52、52…以外の部分で端子10、10…の当接部18、18…が押圧され、端子10、10…の先端部20、20…に設けた段差部20a、20a…が規制部14b、14b…に当接するまで弾性変形されても、それ以上の弾性変形が阻止される。よって、端子10、10…は塑性変形されるような過度に弾性変形されるようなことがない。もって、確実な電気的接続が維持し得る。
【0018】
次に、本発明の第2実施例を図4ないし図6を参照して説明する。図4は、本発明のコネクタの第2実施例の外観斜視図である。図5は、図4の第2実施例において端子が押圧されて弾性変形した状態の外観斜視図である。図6は、図1のコネクタ本体の前面部分の外観斜視図である。図4ないし図6において、図1ないし図3に示す部材と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0019】
本発明のコネクタの第2実施例において、図1ないし図3に示す第1実施例の構造と相違するところは、コネクタ本体14の前面14a側に設けられて端子10、10…の先端部20、20…の段差部20a、20a…の挿入を規制する規制部14b、14b…が、前面14aよりも少し内側位置に設けられていることにある。段差部20a、20a…が当接することで規制部14b、14b…には傷が付く虞がある。しかし、規制部14b、14b…が前面14aよりも少し内側位置に設けられていることにより、その傷が目立ちにくい。
【0020】
さらに、本発明の第3実施例を図7を参照して説明する。図7は、本発明のコネクタの第3実施例の外観斜視図である。図7において、図1ないし図3に示す部材と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0021】
本発明のコネクタの第3実施例において、図1ないし図3に示す第1実施例の構造と相違するところは、端子10、10…の先端部20、20…の段差部20a、20a…を形成する構造にある。すなわち、第1実施例では、端子10、10…の先端部20、20…の両側を先端側の幅が狭くなるように階段状に切り欠いて段差部20a、20a…を形成しているが、第3実施例にあっては、端子10、10…の先端部20、20…の両側部に長手方向に切り込みを設け、中央部分を残して両側部を長手方向に折り返して段差部20a、20a…が形成されている。このように両側部を長手方向に折り返して段差部20a、20a…を形成することで、段差部20a、20a…が規制部14b、14b…に当接した際に、規制部14b、14b…を傷付けることが少ない。
【0022】
なお、上記実施例にあっては、段差部20a、20a…は、先端部20、20…の両側を先端側の幅が狭くなるように階段状に切り欠く等して形成しているが、これに限られず、先端部20、20…の片側のみを先端側の幅が狭くなるように階段状に切り欠く等して形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のコネクタの第1実施例の外観斜視図である。
【図2】図1の第1実施例において端子が押圧されて弾性変形した状態の外観斜視図である。
【図3】図1のコネクタに対応させた接続対象物の被接続端子の部分の外観斜視図である。
【図4】本発明のコネクタの第2実施例の外観斜視図である。
【図5】図4の第2実施例において端子が押圧されて弾性変形した状態の外観斜視図である。
【図6】図1のコネクタ本体の前面部分の外観斜視図である。
【図7】本発明のコネクタの第3実施例の外観斜視図である。
【図8】特許文献1に示された従来のコネクタの構造の外観斜視図である。
【図9】特許文献1に示された従来のコネクタの構造の縦断面図である。
【図10】コネクタの端子が過度に弾性変形されるのを阻止する第1の構造の縦断面図である。
【図11】コネクタの端子が過度に弾性変形されるのを阻止する第2の構造の外観斜視図である。
【図12】コネクタの端子が過度に弾性変形されるのを阻止する第2の構造に対応させた接続対象物の被接続端子の部分の外観斜視図である。
【図13】コネクタの端子が過度に弾性変形されるのを阻止する第2の構造の縦断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 端子
12 折り曲げ部
14、24、34 コネクタ本体
14a、34a 前面
14b 規制部
16 弾性変形部
18 当接部
20 先端部
20a 段差部
40、50 バッテリーユニット
42、52 被接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性と導電性を有する略帯状板金からなる端子の一端側を絶縁性のコネクタ本体内に固定するとともに、前記端子を略U字状に折り曲げて弾性変形部を形成するとともに前記コネクタ本体の前面より前方に突出させ、さらに前記端子の他端側を前記略U字状と同方向に折り曲げて当接部を形成するとともに前記他端側の先端部を前記コネクタ本体内に前記前面から挿入するようになし、前記端子に対して接続対象物が前記前面の前方側から前記コネクタ本体に接近する方向に相対移動することで、前記接続対象物の被接続端子が前記当接部に当接して電気的接続するとともに前記端子が前記弾性変形部を中心として弾性変形して前記端子の前記先端部が前記コネクタ本体内にさらに挿入されるコネクタにおいて、前記端子の前記先端部に先端側の幅が狭い段差部を形成し、前記コネクタ本体の前記前面側に前記先端部の幅の狭い先端側の挿入を許容するとともに前記段差部の挿入を許容しない規制部を設けて構成したことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタにおいて、前記規制部を前記コネクタ本体の前記前面よりも内側位置に設けて構成したことを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項1または2記載のコネクタにおいて、前記端子の前記先端部の側部に長手方向の切り込みを設け、前記側部を前記長手方向に折り返して前記段差部を形成して構成したことを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−280702(P2007−280702A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103844(P2006−103844)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】