説明

コロイド結晶及びこれを用いた発光増幅器

【課題】大きな発光増強効果が得られ、発光物質の劣化・退色・流出が少なく、材料選択の自由度が大きく、濃度消光が生じにくく、熱的安定性の高いコロイド結晶及びこれを用いた発光増幅器を提供すること。
【解決手段】規則配列させた単分散球状メソポーラスシリカと、前記単分散球状メソポーラスシリカのメソ細孔内に導入された発光物質とを備え、前記発光物質は、発光性の有機色素、有機金属配位化合物、高分子発光材料、及び半導体ナノ粒子から選ばれるいずれか1以上からなるコロイド結晶、及びこれを用いた発光増幅器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイド結晶及びこれを用いた発光増幅器に関し、さらに詳しくは、発光物質から放出される蛍光を増強することが可能なコロイド結晶及びこれを用いた発光増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子径のばらつきが小さい(いわゆる、単分散な)コロイド粒子を溶媒に分散させ、溶媒を蒸発させると、コロイド粒子が規則的に配列して規則構造(コロイド結晶)を形成することが知られている。このようなコロイド結晶は、ブラッグ回折により、その格子定数に対応した波長の電磁波を反射することができる。
例えば、コロイド結晶がサブミクロンオーダーの粒子径を持つコロイド粒子からなる場合には、紫外光や可視光から赤外光までの範囲の波長をブラッグ反射することができる。可視光をブラッグ反射する場合、コロイド結晶は、構造色を呈する。このような特徴を利用して、コロイド結晶は、構造色を利用した色材、特定の波長の光を透過しない光フィルター、特定の光を反射するミラー、フォトニック結晶と呼ばれる新規な光機能材料、光スイッチ、光センサ等への応用が考えられている。
【0003】
コロイド結晶がブラッグ反射することは、コロイド結晶がストップバンドを持ち、透過できない波長の光が存在することを意味する。コロイド結晶内に発光体が存在し、かつストップバンドが発光体の発光波長と一致する場合、発光した光はコロイド結晶内に閉じ込められ、コロイド結晶面で反射を繰り返して共振し、発光増強、さらにはレーザー光の発振に至る。
【0004】
コロイド結晶を用いた光の増強については、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、
(1)ポリスチレン粒子を規則配列させてコロイド結晶とし、コロイド結晶の表面をポリジメチルシリコンゲルの前駆体ポリマーで覆い、前駆体ポリマーをゲル化させることによりコロイド結晶膜とし、
(2)2枚のコロイド結晶膜の間に、ローダミン及び光重合開始剤を溶解させたポリ(エチレングリコール)ジアクリレートを注入し、紫外光を照射して発光層を固定化する、
ことにより得られるレーザー発振装置が開示されている。
同文献には、
(a)レーザー光を得るためには、コロイド結晶薄膜の反射バンドが発光層の発光スペクトルと完全に重なっている必要がある点、
(b)励起光エネルギーが150nJ/pulseの時に、レーザー発振光を得ることができ、スペクトルの線幅(=半値幅)が1nm以下になる点、
(c)ローダミンを高分子で固定しない時は、装置を一昼夜放置すると、レーザー発振光を観察することができなくなるが、ローダミンを高分子で固定すると、装置を一週間以上放置した後でも、安定にレーザー発振光を励起できる点、及び、
(d)得られたレーザー発振装置は、通常のレーザー発振器よりも低いしきい値でレーザー発振する点、
が記載されている。
【0005】
また、非特許文献1には、単分散ポリ(スチレン−メチルメタクリレート−アクリル酸)球状粒子の分散液とローダミンBを溶解させた水溶液との混合溶液を用いて、垂直堆積法により作製したフォトニック結晶が開示されている。
同文献には、
(1)励起エネルギーを増加させることによって、発光強度が増大し、同時にスペクトル幅も狭くなる点、及び
(2)励起強度が最大に近づいた時に、発光ピークの半値幅が15nmになる点、
が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−287024号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Mingzhr Li et al., "Coherent control of spontaneous emission by photonic crystals", Chemical Physics Letters 444(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されたレーザー発振装置は、低いエネルギーで単一波長のレーザーを発振することができ、外部共振器が不要であるので装置を微少化できるとされている。
しかしながら、コロイド結晶の特性を発現させるためには、厚み及び構造の等しい二枚のコロイド結晶膜を作製し、しかも、コロイド結晶膜をゲル化により固定化する必要があるため、製造工程が煩雑である。
また、発光層に用いる有機色素は、劣化、退色しやすく、安定性に乏しい。このような有機色素をポリエチレングリコールなどの高分子材料で固化させると、色素の劣化をある程度抑制することはできる。しかしながら、そのためには有機色素の溶解度が高い高分子材料を用いる必要があり、材料選択の自由度が低い。また、高分子材料中に色素を均一に分散させることが難しく、安定で均質な発光層を得ることは困難である。
さらに、発光層とコロイド結晶層とを分離させ、3層構造とする必要があるので、装置の微少化には限界がある。また、コロイド粒子も含めて基本的には有機物からなる構造であるため、フレキシブルではあるが熱的安定性に乏しい。
【0009】
一方、非特許文献1に開示されたフォトニック結晶は、発光層である色素がコロイド粒子間に存在しており、コロイド層と発光層が一体の構造である。
しかしながら、コロイド粒子間に有機色素を導入するには、水溶性の有機色素を用いる必要がある。発光性の有機色素は水への溶解度が低いものも多く存在するため、使用可能な色素は限られる。また、コロイド結晶間に導入した有機色素が凝集し、発光量が低下する現象(濃度消光)を起こしやすいので、色素濃度の制御が煩雑である。さらに、有機色素は、特別な固化がされていないため、結晶外に流出しやすい。
さらに、フォトニック結晶は、有機物からなる構造であるため、熱的安定性に乏しい。また、励起光強度を上げることである程度の発光増強は認められるが、大きな増強効果は得られておらず、発光ピークの半値幅も15nm程度に留まっている。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、発光物質の劣化・退色・流出が少なく、材料選択の自由度が大きく、しかも濃度消光が生じにくいコロイド結晶及びこれを用いた発光増幅器を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、大きな発光増強効果が得られるコロイド結晶及びこれを用いた蛍光増幅器を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、熱的安定性の高いコロイド結晶及びこれを用いた発光増幅器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係るコロイド結晶は、
規則配列させた単分散球状メソポーラスシリカと、
前記単分散球状メソポーラスシリカのメソ細孔内に導入された発光物質とを備え、
前記発光物質は、発光性の有機色素、有機金属配位化合物、高分子発光材料、及び半導体ナノ粒子から選ばれるいずれか1以上からなることを要旨とする。
前記発光物質は、その発光スペクトルが前記コロイド結晶の反射スペクトルと重なりを持つものが好ましい。
さらに、本発明に係る発光増幅器は、本発明に係るコロイド結晶を用いたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
単分散球状メソポーラスシリカのメソ細孔内に発光物質を導入し、これをコロイド結晶化すると、発光物質の劣化、退色及び流出を抑制することができる。また、高濃度の発光物質を均一に導入することができ、濃度消光を生じさせるおそれが少ない。さらに、メソ細孔に導入可能な発光物質の制限が少なく、材料選択の自由度が大きい。しかも、シリカをベースとするので、熱的、機械的及び化学的安定性が高い。
さらに、発光物質の発光スペクトルとコロイド結晶の反射スペクトルとが重なりを持つ場合には、発光物質が励起されることにより発生した光がストップバンド内で共振、増強される。そのため、従来の発光増幅器と同等以上の発光増強効果が得られる。しかも、3層構造にする必要がないので、製造工程が簡略であり、装置をさらに小型化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るコロイド結晶の概略構成図である。
【図2】発光増強の原理を説明する図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、それぞれ、比較例1及び実施例1で得られた単分散球状メソポーラスシリカのSEM像である。
【図4】図4左図は、実施例2で得られた単分散球状メソポーラスシリカのSEM像であり、図4右図は、実施例2で得られたコロイド結晶のSEM像である。
【図5】コロイド結晶による光の増幅を測定するための実験装置の概略構成図である。
【図6】ローダミン610の発光スペクトルである。
【図7】Rh610−MMSS1から作製したコロイド結晶(比較例1)の角度分解反射スペクトルである。
【図8】Rh610−MMSS2から作製したコロイド結晶(実施例1)の角度分解反射スペクトルである。
【図9】Rh610−MMSS3から作製したコロイド結晶(実施例2)の角度分解反射スペクトルである。
【図10】Rh610−MMSS2から作製したコロイド結晶(実施例1)の発光スペクトルである。
【図11】実施例1及び比較例1で得られたコロイド結晶の発光スペクトルの励起強度と発光強度との関係を示す図である。
【図12】Rh610−MMSS3から作製したコロイド結晶(実施例2)の励起強度と発光強度及び半値幅との関係を示す図である。
【図13】実施例1で得られた粒子(Rh610−MMSS2)をイオン交換水に分散させたときの吸光度変化(1〜7時間)を示す図である。
【図14】実施例1で得られた粒子(Rh610−MMSS2)をクロロホルムに分散させたときの吸光度変化(1〜7時間)を示す図である。
【図15】ローダミン濃度の異なる2種類のクロロホルム溶液1、2及び実施例2で得られた粒子(Rh610−MMSS3)のクロロホルム分散液の吸光度変化を示す図である。
【図16】図16左図及び右図は、それぞれ、比較例3及び実施例3で得られたコロイド結晶の外観写真である。
【図17】図17(a)は、ローダミン610の励起・蛍光スペクトルであり、図17(b)は、実施例3で得られたコロイド結晶の垂直反射の反射スペクトルである。
【図18】図18(a)は、実施例3で得られたコロイド結晶の発光スペクトルであり、図18(b)は、その拡大図である。
【図19】実施例3で得られたコロイド結晶のピーク強度の励起光強度依存性を示す図である。
【図20】実施例3で得られたコロイド結晶のスペクトルのピーク位置の角度依存性(指向性)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. コロイド結晶]
本発明に係るコロイド結晶は、
規則配列させた単分散球状メソポーラスシリカと、
前記単分散球状メソポーラスシリカのメソ細孔内に導入された発光物質と、
を備えている。
【0015】
[1.1 単分散球状メソポーラスシリカ]
[1.1.1 組成]
単分散球状メソポーラスシリカは、シリカのみからなるものでも良く、あるいは、シリカを主成分とし、シリカ以外の金属元素Mの酸化物を含んでいても良い。金属元素Mは、特に限定されるものではないが、2価以上の金属アルコキシドを製造可能なものが好ましい。金属元素Mが2価以上の金属アルコキシドを製造可能なものである場合、金属元素Mの酸化物を含む球状粒子を容易に製造することができる。このような金属元素Mとしては、具体的には、Al、Ti、Mg、Zrなどがある。
単分散球状メソポーラスシリカ中のシリカの含有量は、50wt%以上が好ましく、さらに好ましくは、80wt%以上である。
【0016】
[1.1.2 形状]
単分散球状メソポーラスシリカは、単分散で、かつ球状の粒子からなる。単分散球状メソポーラスシリカは、中実粒子であっても良く、あるいは中空粒子であっても良い。
本発明において、「単分散」とは、(1)式で表される単分散度(CV値)が15%以下であることをいう。
単分散度=(粒子径の標準偏差)×100/(粒子径の平均値) ・・・(1)
単分散球状メソポーラスシリカ同士が接触しているコロイド結晶を作製するためには、単分散度は10%以下が好ましい。
一方、単分散球状メソポーラスシリカ同士が接触していないコロイド結晶を作製するためには、単分散度は15%以下が好ましい。
後述する方法を用いると、単分散度が10%以下、あるいは、5%以下である単分散球状メソポーラスシリカが得られる。
【0017】
「球状」とは、同一条件下で製造された複数個(好ましくは、20個以上)の粒子を顕微鏡観察した場合において、各粒子の真球度の平均値が、13%以下であることをいう。また、「真球度」とは、各粒子の外形の真円からのずれの程度を表す指標であって、粒子の表面に接する最小の外接円の半径(r)に対する、外接円と粒子表面の各点との半径方向の距離の最大値(Δrmax)の割合(=Δrmax×100/r(%))で表される値をいう。後述する方法を用いると、真球度が7%以下、あるいは、3%以下である単分散球状メソポーラスシリカが得られる。
【0018】
[1.1.3 メソ細孔]
単分散球状メソポーラスシリカは、メソ細孔を持つ。後述する方法を用いて単分散球状メソポーラスシリカを製造する場合において、界面活性剤の種類、添加量などを最適化すると、メソ細孔を規則配列させることができる。
また、メソ細孔の大きさは、界面活性剤の分子長を最適化することにより制御(1〜50nmまで)することができる。
単分散球状メソポーラスシリカは、メソ細孔を有するため、比表面積が極めて大きい。後述する方法を用いると、BET比表面積が800m2/g以上、あるいは、1000m2/g以上である単分散球状メソポーラスシリカが得られる。
後述する発光物質は、単分散球状メソポーラスシリカのメソ細孔内に導入される。単分散球状メソポーラスシリカが中空粒子である場合、発光物質は、少なくともメソ細孔内に導入されていれば良く、メソ細孔内と空洞内の双方に導入されていても良い。
【0019】
[1.1.4 平均粒子径及びシェル厚さ]
単分散球状メソポーラスシリカの平均粒子径は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。後述する方法を用いると、平均粒子径が0.1〜1.5μmである単分散球状メソポーラスシリカが得られる。
発光増強効果を得るためには、発光物質の発光スペクトルとコロイド結晶の反射スペクトルが重なりを持つように、単分散球状メソポーラスシリカの平均粒子径を選択するのが好ましい。大きな発光増強効果を得るためには、発光物質の発光スペクトルとコロイド結晶の反射スペクトルとの重なりが大きいほど良い。
さらに、単分散球状メソポーラスシリカが中空粒子である場合、シェルの厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択することができる。
【0020】
[1.2 規則配列体]
本発明に係るコロイド結晶は、メソ細孔内に発光物質が導入された単分散球状メソポーラスシリカを規則配列させたものからなる。規則配列体は、単分散球状メソポーラスシリカが規則配列していれば良く、その配列は、必ずしも最密充填である必要はない。
【0021】
[1.2.1 規則配列体の種類]
規則配列体としては、具体的には、
(1)単分散球状メソポーラスシリカを分散媒中に分散させ、分散媒を揮発させることにより得られるコロイド結晶(以下、これを「最密充填型コロイド結晶」という)、
(2)単分散球状メソポーラスシリカを分散媒中に分散させたまま、粒子を規則配列させることにより得られるコロイド結晶(以下、これを「溶液型コロイド結晶」という)、
(3)溶液型コロイド結晶の分散媒中にゲル化剤を添加し、粒子を規則配列させた状態でゲル化剤をゲル化させることにより得られるコロイド結晶(以下、これを「ゲル固定化コロイド結晶」という)、
などがある。
一般に、最密充填型コロイド結晶において、単分散球状メソポーラスシリカ粒子は、互いに接触している。一方、溶液型コロイド結晶及びゲル固定化コロイド結晶において、単分散球状メソポーラスシリカ粒子は、互いに接触することはなく、分散媒中又はゲル中において一定の間隔を隔てて規則配列している。
【0022】
溶液型コロイド結晶(水分散コロイド結晶)は、単分散球状メソポーラスシリカが浸透圧斥力によって規則配列したコロイド結晶である。分散媒には、通常、水が用いられるが、これに限定されるものではない。
コロイド粒子は、水中では表面の官能基の解離により電荷を帯びていることが多い。シリカコロイドの場合、粒子は、シラノール基の解離により負に帯電し、対イオンとして水素イオンを解離させる。対イオンや溶液中のカチオンは、粒子を取り巻くイオン雲となり、電気二重層を形成する。2つの粒子が近づくと、イオン雲同士に浸透圧斥力が働き、粒子間に反発力が発生する。この反発力(浸透圧斥力)は、一般に溶液中のイオン濃度が低いほど強くなることが知られている。
【0023】
溶液型コロイド結晶は、粒子間の浸透圧斥力によってコロイド粒子が規則的に配列したものであり、コロイド分散液のイオン濃度が極度に低い状態でのみ発生する。粒子径が数100nmのコロイド粒子を用いると、溶液型コロイド結晶の格子定数は可視光の波長程度の大きさとなり、可視光領域でのフォトニック結晶を作製できる。溶液型コロイド結晶は、粒子同士が離れているため、粒子が接触している最密充填型コロイド結晶と比較して、粒子径の単分散性(CV値)の影響を受けにくいという利点がある。溶液型コロイド結晶は、CV=15%程度であっても結晶作製が可能である。
【0024】
一方、溶液型コロイド結晶は結合力が弱く、流動によって結晶構造が崩壊するという欠点を持つ。そのため、実際に利用する際には、ゲルなどにより固定して用いるのが望ましい。
【0025】
ゲル固定化コロイド結晶は、溶液型コロイド結晶をゲルで固定化したものであり、機械的強度が強く、不純物による汚染に強いという特徴がある。ゲル固定化コロイド結晶は、乾燥させないために2枚の基板(例えば、石英ガラス板)の間にスペーサーを介して保持し、基板の間に分散媒を満たした状態で保存する。分散媒は、特に限定されるものではなく、水、エチレングリコール、グリセリン、DMSO、又はこれらの2種以上を含む混合液体などを用いることができる。後述するように、分散媒の屈折率を調節すると、ブラッグ反射波長を制御することができる。
粒子を固定するためのゲルには、種々の材料を用いることができる。ゲルとしては、具体的には、ポリアクリルアミド、ポリN,N−メチレンビスアクリルアミド、ゼラチン、寒天、ポリエチレングリコールなどの高分子ゲルがある。
【0026】
[1.2.2 ブラッグ条件]
一般に、粒径の良く揃ったコロイド粒子が周期的に配列した構造は、通常の結晶との類似性からコロイド結晶と定義され、ブラッグ反射に基づき、特定の波長の光を選択的に反射する。最密充填型コロイド結晶のブラッグ反射波長λは、(2)式で表される。
λ=2d/m(neff2−sin2θ)1/2 ・・・(2)
ここで、λは特定の反射波長、dは反射面間隔、mはブラッグ反射の次数、neffは有効屈折率、θは入射角度をそれぞれ表す。
【0027】
(2)式で示されるように、理論的にはブラッグ反射波長は、ある特定の1波長の光として定義される。しかしながら、実際のコロイド結晶中には、ひずみや欠陥も存在するために、その反射スペクトルは、1本の線ではなく、所定の幅を持つ。
また、発光物質の中でも励起準位の構造が複雑で細かいもの(例えば、有機色素)は、その発光スペクトルが数十nm程度の幅を持つ場合が多い。
この発光スペクトルの内、コロイド結晶の反射スペクトルと重なる部分の光は、コロイド結晶内に閉じこめられ、共振により増幅される。従って、発光スペクトルと反射スペクトルの重なりが大きくなるように、反射面間隔d(すなわち、単分散球状メソポーラスシリカの平均粒子径)を最適化すると、強い発光増強効果が得られる。
【0028】
一方、溶液型コロイド結晶及びゲル固定化コロイド結晶のブラッグ反射波長は、分散液の体積分率φに依存する。粒子径D、有効屈折率neffとすると、溶液型コロイド結晶及びゲル固定化コロイド結晶の垂直反射のブラッグ反射波長λは、(2')式で表される。
λ≒1.436Dneff/φ1/3 ・・・(2')
(2')式より、粒子径Dが同一であっても、分散液の体積分率φや有効屈折率neffを変えることにより、ブラッグ反射波長λを制御できることがわかる。
【0029】
発光スペクトルと反射スペクトルの重なりを最適化した場合において、励起エネルギーを増加させると、発光物質からの発光ピークが増大し、かつ、発光ピークの半値幅が減少する。発光スペクトルと反射スペクトルの重なりを最適化した場合において、励起エネルギーをある一定値以上に増加させると、発光ピークの半値幅は5nm以下となる。
【0030】
[1.3 発光物質]
[1.3.1 発光物質の種類]
発光物質は、少なくとも単分散球状メソポーラスシリカのメソ細孔内に導入される。発光物質は、発光効率が高く、メソ細孔内に導入可能で、かつメソ細孔内に導入された状態で単分散球状メソポーラスシリカがコロイド結晶を形成できるものであれば良い。
本発明において、発光物質は、発光性の有機色素、有機金属配位化合物、高分子発光材料、及び半導体ナノ粒子から選ばれるいずれか1以上からなる。
【0031】
発光性の有機色素とは、振動を介する緩和のような無輻射過程の起こる確率が小さく、量子収率が高いものをいう。強く発光するものである限り、蛍光及び燐光のいずれを示すものでも構わない。蛍光指示薬、色素レーザーや有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子として用いることができる程度の発光強度があれば良い。
発光性の有機色素としては、具体的には、ローダミン((a)式参照)、クマリン、フルオレセイン、ピレン、ダンシル酸、シアニン色素、メロシアニン色素、スチリル色素、ベンズスチリル色素、パイロメタン、オキサジン、キトンレッド、DCM、並びにこれらの誘導体などがある。
【0032】
有機金属配位化合物としては、フェニルピリジン骨格やフェナントロリン骨格などの分子の回転を抑制するような配位子を少なくとも一つ以上有し、発光時の失活を低減するものを用いることができる。有機金属配位化合物に含まれる金属は、配位化合物となった際に発光性を発現するものであれば特に限定されない。金属としては、例えば、イリジウム、白金、金、銀、銅、パラジウム、レニウム、アルミニウム、亜鉛、プラセオジウム、ルテニウムなどがある。
有機金属配位化合物としては、具体的には、
トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)、
トリス(8−ヒドロキシキノリナト)ガリウム(III)、
トリス(ジベンゾイルメタン)−モノ(4,7−ジフェニルフェナントロリン)ユーロピウム(III)、
トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム((c)式参照)、
トリス(2,2−ビピリジル)ルテニウム((d)式参照)、
ビス(8−ヒドロキシキノリナト)亜鉛、
並びにこれらの誘導体などがある。
【0033】
高分子発光材料としては、蛍光あるいは燐光を発することが可能な公知の高分子材料が用いられる。高分子発光材料としては、具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素等の低分子材料をドープして用いることもできる。細孔内でポリマーを形成可能な材料であれば、これらの材料に限定せずに用いることができる。
発光性高分子材料としては、具体的には、
テトラキス(4−カルボキシフェニル)ポルフィン((b)式参照)、
ポリ(1,4−フェニレンビニレン)、
並びにこれらの誘導体などがある。
【0034】
半導体ナノ粒子とは、ナノオーダーの粒子中に空間的に励起子を閉じ込め、いわゆる量子閉じ込め効果によりバルク以上の発光強度が得られる蛍光物質をいう。半導体ナノ粒子を構成する物質は特に限定されない。
半導体ナノ粒子としては、具体的には、
(1)CuCl等のI−VII族化合物半導体、
(2)ZnS、CdS、CdSe、CdTe、ZnSe等のII−VI族化合物半導体、
(3)GaAs、InAs等のIII−V族化合物半導体、
(4)Si、Ge等のIV族半導体、
などがある。
半導体ナノ粒子は、コアシェル構造を有していても良く,目的とする波長に応じて適宜選択可能である。
【0035】
これらの発光物質は、いずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、ローダミン及びその誘導体は、発光強度が大きいので、メソ細孔内に導入する発光物質として好適である。
【0036】
【化1】

【0037】
[1.3.2 発光物質の量]
発光物質の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択する。一般に、発光物質の含有量が多くなるほど、発光強度の高いコロイド結晶が得られる。一方、発光物質の含有量が過剰になると、濃度消光のために発光強度がかえって低下する。しかしながら、本発明においては、発光物質は、メソ細孔内に導入されるので、相対的に多量の発光物質を導入しても濃度消光は少ない。
【0038】
[2. コロイド結晶の製造方法(1)]
本発明の第1の実施の形態に係るコロイド結晶の製造方法は、単分散球状メソポーラスシリカ作製工程と、発光物質吸着工程と、配列工程とを備えている。
【0039】
[2.1 単分散球状メソポーラスシリカ作製工程]
単分散球状メソポーラスシリカ作製工程は、単分散球状メソポーラスシリカを作製する工程である。
単分散球状メソポーラスシリカは、
(1)シリカ原料と、界面活性剤とを含む原料を溶媒中で混合し、界面活性剤を含むシリカからなる前駆体粒子を作製し、
(2)前駆体粒子から界面活性剤を除去する、
ことにより得られる。
中空の単分散球状メソポーラスシリカは、前駆体粒子を作製する際に、溶液中に空洞形成用粒子を添加することにより得られる。
【0040】
[2.1.1 シリカ原料]
シリカ原料には、
(1) テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン(シラン化合物)、
(2) トリメトキシシラノール、トリエトキシシラノール、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン(シラン化合物)、
(3) ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン等のジアルコキシシラン(シラン化合物)、
(4) メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si25)、四ケイ酸ナトリウム(Na2Si49)、水ガラス(Na2O・nSiO2、n=2〜4)等のケイ酸ナトリウム、
(5) カネマイト(NaHSi25・3H2O)、二ケイ酸ナトリウム結晶(α、β、γ、δ−Na2Si25)、マカタイト(Na2Si49)、アイアライト(Na2Si817・xH2O)、マガディアイト(Na2Si1417・xH2O)、ケニヤイト(Na2Si2041・xH2O)等の層状シリケート、
(6) Ultrasil(Ultrasil社)、Cab−O−Sil(Cabot社)、HiSil(Pittsburgh Plate Glass社)等の沈降性シリカ、コロイダルシリカ、Aerosil(Degussa−Huls社)等のフュームドシリカ、
などを用いることができる。
【0041】
また、シリカ原料には、ヒドロキシアルコキシシランも用いることができる。ヒドロキシアルコキシシランとは、アルコキシシランのアルコキシ基の炭素原子にヒドロキシ基(−OH)がついたものをいう。ヒドロキシアルコキシシランとしては、ヒドロキシアルコキシ基を4個有するテトラキス(ヒドロキシアルコキシ)シラン、ヒドロキシアルコキシ基を3個有するトリス(ヒドロキシアルコキシ)シランを用いることができる。
ヒドロキシアルコキシ基の種類及びヒドロキシ基の数は特に制限されないが、2−ヒドロキシエトキシ基、3−ヒドロキシプロポキシ基、2−ヒドロキシプロポキシ基、2,3−ジヒドロキシプロキシ基等のように、ヒドロキシアルコキシ基中の炭素原子の数が比較的少ないもの(炭素数が1〜3程度のもの)が反応性の点から有利である。
【0042】
テトラキス(ヒドロキシアルコキシ)シランとしては、テトラキス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、テトラキス(3−ヒドロキシプロポキシ)シラン、テトラキス(2−ヒドロキシプロキシ)シラン、テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)シラン、などがある。
トリス(ヒドロキシアルコキシ)シランとしては、メチルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、エチルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、フェニルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−メルカプトプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−アミノプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−クロロプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、などがある。
これらのヒドロキシアルコキシシランは、アルコキシシランとエチレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールとを反応させることにより合成することができる(例えば、Doris Brandhuber et al., Chem.Mater. 2005, 17, 4262参照)。
【0043】
これらの中でも、テトラアルコキシシラン及びテトラキス(ヒドロキシアルコキシ)シランは、加水分解により生ずるシラノール結合の数が多くなり、強固な骨格を形成することができるので、シリカ原料として好適である。
なお、これらのシリカ原料は、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。但し、2種以上のシリカ原料を用いると、前駆体粒子の製造時の反応条件が複雑化する場合がある。このような場合には、シリカ原料は、単独で使用するのが好ましい。
【0044】
また、前駆体粒子がシリカ以外の金属元素Mの酸化物を含む場合には、シリカ原料に加えて金属元素M1を含む原料を用いる。
金属元素Mを含む原料には、
(1) アルミニウムブトキシド(Al(OC49)3)、アルミニウムエトキシド(Al(OC25)3)、アルミニウムイソプロポキシド(Al(OC37)3)等のAlを含むアルコキシド類、及び、アルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム等の塩類、
(2) チタンイソプロポキシド(Ti(Oi−C37)4)、チタンブトキシド(Ti(OC49)4)、チタンエトキシド(Ti(OC25)4)等のTiを含むアルコキシド、
(3) マグネシウムメトキシド(Mg(OCH3)2)、マグネシウムエトキシド(Mg(OC25)2)等のMgを含むアルコキシド、
(4) ジルコニウムイソプロポキシド(Zr(Oi−C37)4)、ジルコニウムブトキシド(Zr(OC49)4)、ジルコニウムエトキシド(Zr(OC25)4)等のZrを含むアルコキシド、
などを用いることができる。
【0045】
[2.1.2 界面活性剤]
界面活性剤は、粒子内にメソ細孔を形成するための鋳型となる。界面活性剤の種類は、特に限定されるものではなく、種々の界面活性剤を用いることができる。使用する界面活性剤の種類、添加量などに応じて、粒子内の細孔構造を制御することができる。
【0046】
界面活性剤は、特に、アルキル4級アンモニウム塩が好ましい。アルキル4級アンモニウム塩とは、次の(a)式で表されるものをいう。
CH3−(CH2)n−N+(R1)(R2)(R3)X- ・・・(a)
(a)式中、R1、R2、R3は、それぞれ、炭素数が1〜3のアルキル基を表す。R1、R2、及び、R3は、互いに同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。アルキル4級アンモニウム塩同士の凝集(ミセルの形成)を容易化するためには、R1、R2、及び、R3は、すべて同一であることが好ましい。さらに、R1、R2、及び、R3の少なくとも1つは、メチル基が好ましく、すべてがメチル基であることが好ましい。
(a)式中、Xはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子の種類は特に限定されないが、入手の容易さからXは、Cl又はBrが好ましい。
(a)式中、nは7〜21の整数を表す。一般に、nが小さくなるほど、メソ孔の中心細孔径が小さい球状シリカマトリックスが得られる。一方、nが大きくなるほど、中心細孔径は大きくなるが、nが大きくなりすぎると、アルキル4級アンモニウム塩の疎水性相互作用が過剰となる。その結果、層状の化合物が生成し、球状の多孔体が得られない。nは、好ましくは、9〜17、さらに好ましくは、13〜17である。
【0047】
(a)式で表されるものの中でも、アルキルトリメチルアンモニウムハライドが好ましい。アルキルトリメチルアンモニウムハライドとしては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、ノニルトリメチルアンモニウムハライド、デシルトリメチルアンモニウムハライド、ウンデシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライド等がある。
これらの中でも、特に、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド又はアルキルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
【0048】
シリカ粒子を合成する場合において、1種類のアルキル4級アンモニウム塩を用いても良く、あるいは、2種以上を用いても良い。しかしながら、アルキル4級アンモニウム塩は、シリカ粒子内にメソ孔を形成するためのテンプレートとなるので、その種類は、メソ孔の形状に大きな影響を与える。より均一なメソ孔を有するシリカ粒子を合成するためには、1種類のアルキル4級アンモニウム塩を用いるのが好ましい。
【0049】
[2.1.3 空洞形成用粒子]
空洞形成用粒子は、空洞を形成するための鋳型となるものであり、必要に応じて添加される。空洞形成用粒子は、その周囲にシリカを主成分とするシェルを形成することができ、かつ、シェル形成後に容易に除去できるものであれば良い。また、単分散球状の中空粒子を得るためには、空洞形成用粒子もまた単分散球状である必要がある。
空洞形成用粒子としては、例えば、
(1)焼成による分解又は有機溶媒による除去が可能なポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、メラミンホルムアルデヒドなどの高分子コロイド粒子、
(2)塩酸などの酸によって除去可能な炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの塩基性化合物粒子、
などがある。
空洞形成用粒子として高分子コロイド粒子を用いる場合、粒子表面に、シリカ原料の重縮合を促進する機能を有する塩基性の官能基(例えば、アミノ基)を備えたものを用いる。粒子表面にこのような官能基がない場合、粒子表面以外の領域においてシリカが単独で重縮合し、副生成物が得られる。これに対し、表面がこのような官能基で修飾された高分子コロイド粒子を用いると、粒子表面において優先的にシリカ原料の重縮合が進行してシェルとなり、副生成物の生成を抑制することができる。
【0050】
[2.1.4 溶媒]
溶媒には、水、アルコールなどの有機溶媒、水と有機溶媒の混合溶媒などを用いる。アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール、エチレングリコール等の2価のアルコール、グリセリン等の3価のアルコールのいずれでも良い。
水と有機溶媒の混合溶媒を用いる場合、混合溶媒中の有機溶媒の含有量は、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、溶媒中に適量の有機溶媒を添加すると、粒径や粒度分布の制御が容易化する。
【0051】
[2.1.5 配合比]
一般に、シリカ原料及び必要に応じて添加される金属元素M1を含む原料(以下、単に「シリカ源」という)の濃度が低すぎると、シリカ粒子を高収率で得ることができない。また、粒径及び粒度分布の制御が困難となり、粒径の均一性が低下する。従って、シリカ源の濃度は、0.005mol/L以上が好ましい。シリカ源の濃度は、さらに好ましくは、0.008mol/L以上である。
一方、シリカ源の濃度が高すぎると、メソ孔を形成するためのテンプレートとして機能する界面活性剤が相対的に不足し、規則配列したメソ孔が得られない。従って、シリカ源の濃度は、0.03mol/L以下が好ましい。シリカ源の濃度は、さらに好ましくは、0.015mol/L以下である。
【0052】
一般に、界面活性剤の濃度が低すぎると、メソ孔を形成するためのテンプレートが不足し、規則配列したメソ孔が得られない。従って、界面活性剤の濃度は、0.003mol/L以上が好ましい。界面活性剤の濃度は、さらに好ましくは、0.01mol/L以上である。
一方、界面活性剤の濃度が高すぎると、シリカ粒子を高収率で得ることができない。従って、界面活性剤の濃度は、0.03mol/L以下が好ましい。界面活性剤の濃度は、さらに好ましくは、0.02mol/L以下である。
【0053】
[2.1.6 反応条件]
シリカ原料として、アルコキシシラン、ヒドロキシアルコキシシラン等のシラン化合物を用いる場合には、これをそのまま出発原料として用いる。
一方、シリカ原料としてシラン化合物以外の化合物を用いる場合には、予め、水(又は、必要に応じてアルコールが添加されたアルコール水溶液)にシリカ原料を加えて、水酸化ナトリウム等の塩基性物質を加える。塩基性物質の添加量は、シリカ原料中のケイ素原子と等モル程度の量とするのが好ましい。シラン化合物以外のシリカ原料を含む溶液に塩基性物質を加えると、シリカ原料中に既に形成されているSi−(O−Si)4結合の一部が切断され、均一な溶液が得られる。溶液中に含まれる塩基性物質の量は、中空粒子の収量や気孔率に影響を及ぼすので、均一な溶液が得られた後、溶液に希薄酸溶液を加え、溶液中に存在する過剰の塩基性物質を中和させる。希薄酸溶液の添加量は、シリカ原料中のケイ素原子に対して1/2〜3/4倍モルに相当する量が好ましい。
【0054】
所定量の界面活性剤を含む溶媒中に、シリカ源を加え、加水分解及び重縮合を行う。これにより、界面活性剤がテンプレートとして機能し、シリカ及び界面活性剤を含む前駆体粒子が得られる。また、溶媒中に空洞形成用粒子が含まれる場合には、空洞形成用粒子の表面にシリカ及び界面活性剤を含むシェルが形成された前駆体粒子が得られる。
【0055】
反応条件は、シリカ原料の種類、前駆体粒子の粒径等に応じて、最適な条件を選択する。一般に、反応温度は、−20〜100℃が好ましい。反応温度は、さらに好ましくは、0〜80℃、さらに好ましくは、10〜40℃である。
【0056】
[2.1.7 界面活性剤の除去]
乾燥後、前駆体粒子から界面活性剤を除去すると、単分散球状メソポーラスシリカが得られる。界面活性剤の除去方法としては、
(1) 前駆体粒子を大気中又は不活性雰囲気下において、300〜1000℃(好ましくは、300〜600℃)で、30分以上(好ましくは、1時間以上)焼成する焼成方法、
(2) 前駆体粒子を界面活性剤の良溶媒(例えば、少量の塩酸を含むメタノール)中に浸漬し、所定の温度(例えば、50〜70℃)で加熱しながら攪拌し、薄膜中の界面活性剤を抽出するイオン交換法、
などがある。
また、前駆体粒子が空洞形成用粒子を含む場合において、空洞形成用粒子が高分子コロイド粒子からなるときには、空洞形成用粒子も、界面活性剤と同様の方法により除去することができる。あるいは、有機溶媒(トルエン、クロロホルム、ベンゼンなど)に浸漬することで除去することもできる。一方、空洞形成用粒子が塩基性化合物からなるときには、塩酸などの酸により空洞形成用粒子を除去することができる。
なお、発光物質の種類によっては、メソ細孔内に界面活性剤が残っている方が発光物質の吸着が容易になる場合がある。そのような場合には、界面活性剤の除去を省略しても良い。
【0057】
[2.2 発光物質吸着工程]
発光物質吸着工程は、単分散球状メソポーラスシリカのメソ細孔内に発光物質を吸着させる工程である。
メソ細孔内への発光物質の導入方法には、種々の方法があり、発光物質の種類に応じて最適な方法を選択することができる。
【0058】
通常、メソ細孔内に発光物質を導入する場合、発光物質を溶媒に溶解させ、溶液に単分散球状メソポーラスシリカを添加することにより吸着させることが多い。この際、(1)最適な溶媒の選択、(2)発光物質の修飾、(3)メソ細孔の修飾、などの方法により、効率よくメソ細孔内に物質を導入することができる。
例えば、発光物質を溶解させる溶媒には、通常、水を用いるが、水に溶解しにくい発光物質の場合、溶媒には、エタノール、アセトン、エチレングリコール、グリセリン、クロロホルムなどを用いることができる。
【0059】
また、有機EL素子発光層として用いられるAlq3錯体(トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム)は、エタノールなどのアルコールやクロロホルムなどに溶解する。同じ濃度でAlq3をエタノールとクロロホルムに溶解させて吸着実験を行った場合、クロロホルムに溶解させた方が多量のAlq3をメソ細孔内に導入することができる。これは、エタノール中のAlq3は、メソポーラスシリカのメソ細孔内よりも安定であるのに対し、クロロホルム中では、逆にメソ細孔内よりも不安定であるためである。そのため、クロロホルムを用いた場合には、より安定に存在できるメソ細孔中に多く導入されることになる。このように、最適な溶媒を選択することにより、容易にメソポーラスシリカ内に発光物質を多量に導入することができる。
【0060】
また、Ru(bby)3錯体(トリス(2,2−ビピリジル)ルテニウム)は、親水性が高く、エタノールやメタノールには容易に溶解するが、その状態では、メソ細孔内にはごく少量しか導入できない。一方、ビピリジル基末端へ長鎖アルキル基を導入すると、ベンゼンなどの疎水性溶媒に可溶となる。ベンゼンに溶解させたアルキル修飾Ru(bby)3錯体は、メソ細孔内に高濃度で吸着可能となる(30mg/100mg)。
【0061】
また、TCPP(テトラキス(4−カルボキシフェニル)ポルフィン)は、分子内に4つのカルボキシル基を持つポルフィリン誘導体の一種である。そのため、メソポーラスシリカのメソ細孔にアミノ基を導入すると、THFに溶解させたTCPPの吸着が非常に効率よく進行する。メソポーラスシリカへのアミノ基等の有機官能基導入については、既存の文献などを参照して行うことができる(例えば、Journal of Catalysis 251(2007)249-257、Chemistry Letters Vol.35, No.9(2006)1014-1015等参照)。
【0062】
さらに、半導体ナノ粒子の一種であるZnSナノ粒子は、例えば、
(1)単分散球状メソポーラスシリカの細孔壁をトリス(メトキシ)(メルカプトプロピルシラン)で有機修飾を行い、
(2)ZnSナノ粒子をビス(2−エチルヘキシル)スルホこはく酸ナトリウムの逆ミセル溶液中で合成し、
(3)ZnSの逆ミセル溶液に有機修飾単分散球状メソポーラスシリカを加えて数時間攪拌する、
ことによりメソ細孔内に導入することができる(例えば、J.Phys.Chem.B2004, 108, 11509-11513参照)。
また、ZnOナノ粒子は、例えば、
(1)(C25O)3Si(CH2)3NH(CH2)2NH2の無水トルエン溶液に単分散球状メソポーラスシリカを添加して還流し、細孔内壁をエチレンジアミノ基で修飾し、
(2)Znイオンをキレート化する手法でZnO結晶を細孔内で合成する、
ことによりメソ細孔内に導入することができる(例えば、Optical Materials 25(2004)79-84参照)。
また、CdSナノ粒子は、例えば、Cd(OAc)2・2H2O(酢酸カドミウム)のメタノール溶液に焼成前の単分散球状メソポーラスシリカを加えて60℃で3時間攪拌し、H2S処理を行うことによりメソ細孔内に導入することができる。酢酸カドミウムに代えて、Zn(OAc)2・2H2O(酢酸亜鉛)を前駆体に用いると、同様の合成手順により、メソ細孔内にZnSを導入することもできる。
【0063】
[2.3 配列工程]
配列工程は、単分散球状メソポーラスシリカを規則配列させる工程である。単分散球状メソポーラスシリカを規則配列させる方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。
【0064】
単分散球状メソポーラスシリカを規則配列させる方法としては、具体的には、
(1) 単分散球状メソポーラスシリカを分散させた分散液に電極を浸漬し、電極間に直流電解を印加する方法(電気泳動を利用した配列方法)、
(2) 一定の間隔を有する基板間に単分散球状メソポーラスシリカを分散させた分散液を注入し、単分散球状メソポーラスシリカを規則配列した状態で自己集積させる方法、
(3) 単分散球状メソポーラスシリカを分散させた分散液を基板表面にディップコート、スピンコート等を用いて塗布する方法、
(4) 単分散球状メソポーラスシリカ分散液中に、あらかじめ高分子モノマー(例えば、アクリルアミド)、架橋剤(例えば、メチレンビスアクリルアミド)、及び、光重合開始剤(例えば、カンファーキノン)を添加しておき、単分散球状メソポーラスシリカを液中において規則配列させた後、光照射することによりゲル化させる方法、
(5) イオン濃度を調節した分散媒に単分散球状メソポーラスシリカを分散させ、そのまま静置して分散媒中において粒子を規則配列させる方法、
などがある。
【0065】
分散媒中において粒子を規則配列させるためには、コロイド分散液中のイオン濃度を極度に低い状態にすることが必要である。さらに、コロイド結晶のストップバンドと発光物質の発光スペクトル波長を調整するためには、粒子濃度を制御してコロイド結晶の粒子間隔を調整する必要がある。
そのため、溶液型コロイド結晶を作製する場合には、単分散球状メソポーラスシリカの水分散液にイオン交換樹脂などを加えて、十分に分散液中のイオン濃度を低減し、さらに分散液を所望の粒子間隔となるように濃縮する必要がある。
また、ゲル固定化コロイド結晶を作製する場合には、イオン濃度の低減及び濃縮が行われた分散液にゲル化剤を加え、これをガラス基板などの基板上に塗布し、ゲルを硬化させる必要がある。間隔を適宜調整した基板の隙間にゲル化剤を含有する分散液を注入してゲル化させた場合には、フィルム状の均質な厚みを持つゲル固定化コロイド結晶を得ることができる。ゲル化方法は、特に限定されないが、紫外線硬化型のゲルを用いた場合には、紫外線ランプなどで紫外線を照射することで、容易にゲル化させることが可能である。
【0066】
[3. コロイド結晶の製造方法(2)]
本発明の第2の実施の形態に係るコロイド結晶の製造方法は、単分散球状メソポーラスシリカ作製工程と、配列工程と、発光物質吸着工程とを備えている。
【0067】
[3.1 単分散球状メソポーラスシリカ作製工程]
単分散球状メソポーラスシリカ作製工程は、単分散球状メソポーラスシリカを作製する工程である。単分散球状メソポーラスシリカ作製工程の詳細は、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0068】
[3.2 配列工程]
配列工程は、単分散球状メソポーラスシリカを規則配列させる工程である。本実施の形態において、メソ細孔内に発光物質を吸着させる前に粒子の規則配列を行う。この点が第1の実施の形態と異なる。
本実施の形態において、発光物質の吸着は粒子の規則配列後に行われるため、規則配列体は、最密充填型コロイド結晶又はゲル固定化コロイド結晶である必要がある。配列工程のその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
[3.3 発光物質吸着工程]
発光物質吸着工程は、規則配列体を構成する単分散球状メソポーラスシリカのメソ細孔内に発光物質を吸着させる工程である。すなわち、本実施の形態において、単分散球状メソポーラスシリカを規則配列させた後に、発光物質の吸着を行う。
例えば、発光物質がイオン的である場合(例えば、発光物質が有機色素や有機金属配位化合物である場合)、単分散球状メソポーラスシリカ粒子のメソ細孔内に発光物質を吸着させた後、分散媒に粒子を分散させると、分散媒中に発光物質のイオンが流出する場合がある。最密充填型コロイド結晶の場合、分散媒中に少量のイオンが流出しても規則配列化に支障を来すおそれは少ない。
しかしながら、ゲル固定化コロイド結晶の場合、粒子が規則配列する前に分散媒中にイオンが流出すると、流出量が僅かであっても粒子間隔の精密な制御が困難となる場合がある。従って、ゲル固定化コロイド結晶を作製する場合において、発光物質がイオン的であるときには、粒子を予めゲルで固定した後に発光物質を導入するのが好ましい。
発光物質の吸着は、発光物質を含む溶液をコロイド結晶に添加することにより行う。発光物質の吸着に際し、メソ細孔内壁を修飾する必要がある場合には、修飾は、単分散球状メソポーラスシリカ合成後又は規則配列後のいずれか適切なときに行う。発光物質吸着工程のその他の点は、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0070】
[4. 発光増幅器]
本発明に係る発光増幅器は、本発明に係るコロイド結晶を用いたことを特徴とする。
可視光領域における高品質・高効率な光増幅素子は、計測、加工、車載用通信分野等における応用が期待される。光を増幅する方法としては、光を一旦電気信号に変換して処理を行い、再度光に変換する方法もある。しかしながら、この方法は、煩雑でありエネルギー的にも無駄であり、さらに光のコヒーレンス性も失われてしまう。
一方、光を光で増幅する方法は、既に光ファイバー通信に利用されている。しかしながら、現在の光増幅器は、光ファイバー内にエルビウム(Er)イオンをドープしており、通信用の光波長(約1.5ミクロン)でしか増幅できず、また小型化も進んでいない。
これに対し、本発明によれば、可視光領域で小型の光増幅器を提供可能である。用途としては、光を増幅して使用する装置、例えば、表示素子、ディスプレイ、バックライト、照明光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア等の分野に好適に使用可能である。
【0071】
[5. コロイド結晶及び発光増幅器の作用]
図1に、本発明に係るコロイド結晶の概略図を示す。図1に示すように、メソ細孔内に発光物質を導入した単分散球状メソポーラスシリカを規則配列させ、これに図示しないポンプ源から励起光を照射すると、メソ細孔内の発光物質が発光する。
一方、ブラッグ式が成立するコロイド結晶では、ストップバンドの効果により光が存在できない領域を持つ。コロイド結晶と色素などの発光層が共存し、さらにストップバンドと発光層の発光スペクトルに重なりがある場合(特に、ストップバンドと発光スペクトルが一致する場合)において、コロイド結晶に励起光を照射すると、図2に示すように、発光層が励起されて発光した光がストップバンド内で共振、増強される。これは、発光スペクトルとストップバンドが重なりを持つコロイド結晶内において、励起された光が、ブラッグ条件を満たす方向に繰り返し反射されるためである。励起光強度が一定のしきい値以上の場合には、増幅された発光が一気に放出されるめ、発光層の自然発光は著しく増幅され、レーザーなどの強力な光を発するデバイスとして用いることができる。
【0072】
コロイド結晶を用いた従来の発光増幅器は、コロイド層と発光層が独立した形態が主流であり、鏡などの外部共振器を用いる場合よりも小型化できる。
しかしながら、従来の発光増幅器は、
(1) 製造工程が煩雑であり、小型化にも限界がある、
(2) 安定性に乏しい発光物質(例えば、色素などの有機物質)を用いたときには、光や酸素などにより容易に劣化、退色が進行する、
(3) 発光増幅器の構造によっては、発光物質が流出しやすく、導入可能な発光物質にも制限がある、
(4) 発光物質が凝集して濃度消光を起こしやすい、
(5) コロイド粒子に有機物を用いているので、熱的、機械的及び化学的な安定性に乏しい、
等の問題がある。
【0073】
これに対し、本発明においては、単分散球状メソポーラスシリカのメソ細孔内に発光物質を導入し、これをコロイド結晶化しているので、強い光を照射して使用する場合であっても、発光物質の劣化及び退色を抑制することができ、発光物質が流出するおそれも少ない。
また、単分散球状メソポーラスシリカは、高比表面積で細孔容積が大きく、修飾によってメソ細孔内の状態を自由に調節することができる。そのため、様々な発光物質を高分散、高濃度に内包させることが可能であり、材料選択の自由度が大きい。
また、発光物質はメソ細孔中に内包されるため、高濃度であっても分子は孤立しやすく、濃度消光を起こしにくい。メソ細孔内への発光物質の導入は、毛管凝縮により均質に進行するため、発光物質の分布が均質なコロイド結晶を作製することができる。しかも、本発明に係るコロイド結晶及びこれを用いた発光増幅器は、シリカをベースとするので、熱的、機械的及び化学的安定性が高い。
【0074】
さらに、発光物質の発光スペクトルとコロイド結晶の反射スペクトルとが重なりを持つ場合には、発光物質が励起されることにより発生した光がストップバンド内で共振、増強される。そのため、従来の発光増幅器と同等以上の発光増強効果が得られる。しかも、3層構造にする必要がないので、製造工程が簡略であり、装置をさらに小型化することもできる。
また、溶液型コロイド結晶及びゲル固定化コロイド結晶は、粒子間隔の制御が容易であるので、発光物質の発光スペクトルとコロイド結晶の反射スペクトルを一致させるのが容易である。そのため、発光増強効率の高いコロイド結晶を容易に製造することができる。
【実施例】
【0075】
(実施例1〜2、比較例1〜2)
[1. 試料の作製]
[1.1 発光波長とストップバンドが一致するコロイド結晶(実施例1)]
[1.1.1 粒子合成]
16TMACl(セチルトリメチルアンモニウムクロリド):7.04gを室温下、水:873.2g、メタノール:640g、エチレングリコール:80gの混合溶液に溶解させた。1規定の水酸化ナトリウム:6.84gを加えてさらに攪拌を続けた。予め混合したTMOS(テトラメチルオルトシリケート):5.02gと3−アミノプロピルメトキシシラン:0.31gを添加したところ、数分内に溶液が白色化して粒子が生成した。翌日に、ろ過、洗浄を繰り返し、乾燥後に550℃で6時間焼成することにより、球状粒子(MMSS2)を得た。
得られた粒子をSEMで観察したところ、粒子径320nmの非常に単分散性の高い球状粒子であることがわかった(図3(b))。
[1.1.2 色素吸着]
蛍光性色素には、ローダミン誘導体(Rh610)を用いた。Rh610を1mM濃度でエタノールに溶解し、溶液:4mLに対してMMSS2を200mgの割合で加えて、一晩攪拌し、シリカ細孔内への色素の吸着を行った。翌日、遠心分離により、上澄みを分離してローダミン導入メソポーラスシリカ粒子(Rh610−MMSS2)を得た。
導入した色素量を上澄みの吸光度から測定したところ、100mgのMMSS2に対して0.20mgであった。
[1.1.3 コロイド結晶作製]
得られたRh610−MMSS2を水に分散させて十分に超音波処理を行い、分散性の高いRh610−MMSS2分散液を調製した。隙間を30μmに調整した二枚の石英ガラス間に上記分散液を導入した。溶媒の蒸発に伴い、均一なピンク色の構造色を呈するコロイド結晶(サンプル2)が得られた。
【0076】
[1.2 発光波長とストップバンドが一致しないコロイド結晶(比較例1)]
[1.2.1 粒子合成]
16TMACl:7.04gを室温下、水:739.2gとメタノール:800gの混合溶液に溶解させた。1規定の水酸化ナトリウム:6.84gを加えてさらに攪拌を続けた。これにTMOS:5.28gを添加したところ、数分内に溶液が白色化して粒子が生成した。翌日に、ろ過、洗浄を繰り返し、乾燥後に550℃で6時間焼成することにより、球状粒子(MMSS1)を得た。
得られた粒子をSEMで観察したところ、粒子径560nmの非常に単分散性の高い球状粒子であることがわかった(図3(a))。
[1.2.2 色素吸着]
球状粒子としてMMSS1を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従い、ローダミン導入メソポーラスシリカ粒子(Rh610−MMSS1)を得た。
導入した色素量を上澄みの吸光度から測定したところ、100mgのMMSS1に対して0.19mgであった。
[1.2.3 コロイド結晶作製]
得られたRh610−MMSS1を水に分散させて十分に超音波処理を行い、分散性の高いRh610−MMSS1分散液を調製した。隙間を30μmに調整した二枚の石英ガラス間に上記分散液を導入した。溶媒の蒸発に伴い、均一なピンク色の構造色を呈するコロイド結晶(サンプル1)が得られた。
【0077】
[1.3 発光波長とストップバンドが一致するコロイド結晶(実施例2)]
[1.3.1 粒子合成]
16TMACl:35.2gを室温下、水:4366g、メタノール:3090g、エチレングリコール:480gの混合溶液に溶解させた。1規定の水酸化ナトリウム:34.2gを加えてさらに攪拌を続けた。予め混合したTMOS:25.08gと3−アミノプロピルメトキシシラン:1.55gを添加したところ、数分内に溶液が白色化して粒子が生成した。翌日に、ろ過、洗浄を繰り返し、乾燥後に550℃で6時間焼成することにより、球状粒子(MMSS3)を得た。
得られた粒子をSEMで観察したところ、粒子径370nmの非常に単分散性の高い球状粒子であることがわかった(図4左図)。
[1.3.2 色素吸着]
球状粒子としてMMSS3を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従い、ローダミン導入メソポーラスシリカ粒子(Rh610−MMSS3)を得た。
導入した色素量を上澄みの吸光度から測定したところ、100mgのMMSS3に対して0.19mgであった。
[1.3.3 コロイド結晶作製]
得られたRh610−MMSS3を水に分散させて十分に超音波処理を行い、分散性の高いRh610−MMSS3分散液を調製した。隙間を30μmに調整した二枚の石英ガラス間に上記分散液を導入した。溶媒の蒸発に伴い、均一なピンク色の構造色を呈するコロイド結晶(サンプル3)が得られた(図4右図)。
【0078】
[1.4 細孔のない球状シリカの隙間に色素を導入したコロイド結晶(比較例2)]
300nmの球状シリカコロイド粒子の水分散液を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従い、二枚の石英ガラスの間にコロイド結晶を作製した。得られたコロイド結晶を真空乾燥機で乾燥させ、粒子間隙の水を十分に取り除いた後、Rh610水溶液をガラス間に浸み込ませ、コロイド粒子の隙間への色素導入を試みた(サンプル4)。
【0079】
[2. 試験方法]
[2.1 ローダミンの発光スペクトルの測定]
ローダミンの発光スペクトルは、日本分光(株)製の分光蛍光光度計(FP−6500ST)を用いて測定した。励起光源には、タングステンランプを用いた。
[2.2 角度分解反射スペクトルの測定]
角度分解反射スペクトルは、(株)相馬光学製の反射/透過スペクトル測定装置を用いて測定した。光源には、ハロゲンランプ(スポット径:5mm)を用いた。
[2.3 コロイド結晶の発光スペクトルの測定]
図5に、実験装置の概略構成図を示す。Nd;YAGレーザーによりコロイド結晶に励起光(波長=532nm)を照射し、コロイド結晶中の発光層を励起して発光させた。発光した光をコロイド結晶に閉じこめて共振させ、増幅された光を分光器に導き、スペクトル分析した。
【0080】
[3. 結果]
[3.1 ローダミンの発光スペクトル]
図6に、本発明で用いた発光性有機色素(ローダミン誘導体(Rh610))の発光スペクトルを示す。ローダミンは、赤色系の色素であり、580nmに強い発光を示した。
【0081】
[3.2 コロイド結晶の角度分解スペクトル]
図7に、Rh610−MMSS1から作製したコロイド結晶(サンプル1、比較例1)の角度分解反射スペクトルを示す。図中の点線は、ローダミンの発光波長を示す。サンプル1の法線方向(入射角0°)での反射バンドは、コロイド結晶のブラッグ反射により1050nm付近に現れた。サンプル法線方向に対する光の入射角度(=検出角度)を増加させると、反射バンドは、低波長方向にシフトする。しかしながら、検出角度が90°付近になっても、反射バンドは、ローダミンの発光ピークと重なることはなかった。
【0082】
図8に、Rh610−MMSS2から作製したコロイド結晶(サンプル2、実施例1)の角度分解反射スペクトルを示す。図中の点線は、ローダミンの発光波長を示す。サンプル2の法線方向(入射角0°)での反射バンドは、コロイド結晶のブラッグ反射により610nm付近に現れた。サンプル法線方向に対する光の入射角度(=検出角度)の増加に伴い、反射バンドと発光ピークの重なりが大きくなり、検出角度が20°付近で重なりが最大になった。
【0083】
図9に、Rh610−MMSS3から作製したコロイド結晶(サンプル3、実施例2)の角度分解反射スペクトルを示す。図中の点線は、ローダミンの発光波長を示す。サンプル3の法線方向(入射角0°)での反射バンドは、コロイド結晶のブラッグ反射により715nm付近に現れた。サンプル法線方向に対する光の入射角度(=検出角度)の増加に伴い、反射バンドと発光ピークの重なりが大きくなり、検出角度が44°付近で重なりが最大になった。
【0084】
[3.3 発光ピークの増強及び狭線化]
図10に、図5に示す実験装置で測定したサンプル2(Rh610−MMSS2)の発光スペクトルを示す。検出角度θ=20°とした。
励起光エネルギーが0.02mJ/pulse以下では、ローダミン610の自然発光に基づいて半値幅が約30nmである幅広いピークが得られた。しかしながら、0.21mJ/pulse以上のエネルギーでは発光ピークが増加して、ピークの半値幅も狭くなった。励起エネルギーが2.1mJ/pulseでは、発光量140000、半値幅3.5nmとなり、発光ピークは著しく増強及び狭線化することがわかった。
同様な励起実験をサンプル1(Rh610−MMSS1)に対して行ったが、このような増強及び狭線化は観察されなかった。
【0085】
図11に、図5の実験装置で測定したサンプル1(Rh610−MMSS1)及びサンプル2(Rh610−MMSS2)の励起強度と発光強度との関係を示す。反射バンドがローダミンの発光波長と大きく重なるサンプル2では、励起エネルギー増加に伴い、発光ピークが著しく増強された。
一方、色素の発光ピークと反射バンドの重なりを持たないサンプル1では、全く増強がみられなかった。メソ細孔内に吸着したローダミン量はほぼ同じであることから、メソ細孔内に吸着した色素の発光が、コロイド結晶の反射バンドによって効率よく増強されることが明らかになった。
さらに、今回得られた値を非特許文献1と比較すると、同文献では、励起エネルギー10(MW/cm2)で24000まで発光が増強され、ピーク半値幅は15nmであった。サンプル2において、励起エネルギー10(MW/cm2)は0.8mJに相当する。この場合は、ピーク強度75000、半値幅3.7nmであり、非特許文献1に比べて発光増強及び狭線化が著しく向上していることがわかった。
【0086】
図12に、図5の実験装置で測定したサンプル3(Rh610−MMSS3)の励起強度と、発光強度及び半値幅との関係を示す。検出角度θ=44°とした。
励起光エネルギーが0.02mJ/pulse以下では、ローダミン610の自然発光に基づいて、半値幅が約20nmである幅広いピークが得られた。しかしかがら、0.04mJ/pulse以上のエネルギーでは発光ピークが増加し、ピークの線幅も急激に狭くなった。励起エネルギーが0.4mJ/pulseでは、発光量16000、半値幅1.5nmとなり、発光ピークは著しく増強及び狭線化することがわかった。さらに、励起光エネルギーを2.1mJ/pulseまで上げたところ、発光ピークは90000まで増強された。実施例2のコロイド結晶についても、反射バンドと発光ピークが重なることにより、発光の著しい増強とスペクトルの狭線化が観察されることがわかった。
【0087】
[3.4 発光物質の均一性]
実施例1及び実施例2で得られたコロイド結晶では、結晶全面が均一なピンク色を呈した。一方、比較例2で得られたコロイド結晶は、不均質で色むらが顕著に観察された。
さらに、紫外線を照射したところ、実施例1、2で得られたコロイド結晶では、全面がローダミンの発光に基づくオレンジ色を呈した。一方、比較例2で得られたコロイド結晶では、発光に濃淡が見られた。
メソ細孔内に色素を吸着させた球状シリカからコロイド結晶を作製する本発明の方法は、均質で大面積の結晶を簡便に作製でき、非常に有用性が高いことがわかった。
【0088】
[3.5 発光物質の安定性]
実施例1で得られた粒子(Rh610−MMSS2)をイオン交換水、及びクロロホルムに分散させた。分散液を攪拌した状態で1時間毎に上澄み液を分取して、吸光度変化を測定した(7時間まで)。図13に、イオン交換水に分散させたときの吸光度変化を示す。また、図14に、クロロホルムに分散させたときの吸光度変化を示す。なお、図13及び図14は、7時間分のデータを重ねたものである。
ローダミンの吸収ピークは、550nm前後である。ローダミンを吸着した球状粒子の水及びクロロホルム分散液では、いずれも、7時間攪拌を続けてもほとんどローダミン由来のピークは観察されなかった。ローダミンは、水及びクロロホルムには非常に溶解しやすいにもかかわらず、球状粒子のメソ細孔中に吸着したローダミンは、7時間攪拌しても溶媒中に溶出することはなかった。この結果から、メソ細孔中に吸着したローダミンは安定であることが示された。
【0089】
さらに、特に有機色素は、周囲の環境(水や光)などで容易に劣化しやすい。例えば、ローダミンにクロロホルムを加えると、ローダミンは容易に溶解して薄いピンク色を示す。しかしながら、その状態で室温に放置すると、分散液のピンク色はすぐに消失し、溶液は透明に変化した。
一方、ローダミンを吸着させた実施例2の粒子をクロロホルム溶液に分散させ、同様に室温に放置したところ、溶液は透明であるが、粒子はローダミン特有のピンク色を保持していた。
このような変化を定量的に把握するために、ローダミンのクロロホルム溶液、及び実施例2の粒子のクロロホルム分散液の吸光度変化を測定した。ローダミン溶液については、濃度を変えて2水準測定を行った。図15にその結果を示す。
測定した濃度では、クロロホルム溶液1、2中のローダミンの吸光度は、いずれの濃度においても急激に減少し、1時間以内にほぼゼロになった。
一方、実施例2の粒子のクロロホルム分散液の吸光度は、ほとんど変化せず、5時間後も同じ値であった。つまり、メソ細孔中に吸着したローダミンは、環境の影響を受けにくく、安定に存在することがわかった。
【0090】
(実施例3、比較例3)
[1. 試料の作製]
[1.1 粒子の作製]
テトラエトキシシランとエチレングリコールをモル比1:4で混合し、乾燥窒素気流中で140℃に加熱した。このとき、エステル交換反応で生成するエタノールを蒸留により取り除き、テトラキス(2−ヒドロキシエトキシ)シランを得た。
水478.9g、メタノール320gの混合溶媒に対して、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(界面活性剤)3.52g及び1規定水酸化ナトリウム水溶液1.14mLを添加した。これに室温でテトラキス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン(シリカ原料)2mLを添加した。8時間攪拌して一晩放置した後、ろ過と脱イオン水による洗浄を3回繰り返して白色粉末を得た。この白色粉末を550℃で6時間焼成することにより、粒子径197nm(CV値:13.8%)の単分散球状メソポーラスシリカを得た(実施例3)。
また、粒子径317nm(CV値:4.2%)の市販の球状シリカ(ストーバー粒子)((株)日本触媒製)をそのまま用いた(比較例3)。
得られた粒子をそれぞれ水に分散させ、イオン交換樹脂を用いて脱イオンを行い、コロイド分散液を得た。
【0091】
[1.2 ゲル固定化コロイド結晶の作製]
アクリルアミドモノマー、架橋剤(N,N−メチレンビスアクリルアミド)、開始剤(2,2'−アゾビス[2−メチル−N−N[2−ヒドロキシエチル]−プロピノアミド)を水に溶かしてゲル化剤とした。これを[1.1]で得られたコロイド分散液に混合した。粒子の体積分率ゲル濃度10vol%、モノマー中における架橋剤の割合=10%とした。
【0092】
2枚のガラス板をエタノールで洗浄後、蒸留水で十分洗浄し,片方のガラス板に150μm厚のスペーサーを貼り付け、もう片方のガラス板と重ね合わせて鋳型として用いた。スペーサーは、ポリプロピレン製両面テープの片側の剥離フィルムを付けたままの状態のものを用いた。重ね合わせたガラス板をチャック付きのビニール袋に入れ、ゲル化剤を混合した分散液をピペットを用いて2枚のガラス板の間に注入した。袋から空気を追い出し、チャックを閉めて、乾燥や埃の混入を防ぎ、結晶が十分に成長するまで5分〜10分、静置した。
アズワン製UVランプ(365nm、出力743μW/cm2)を用いて紫外線を分散液に照射し、重合を行った。ゲル固定化後のサンプルは、乾燥による収縮を防ぐため、水中で保存した。コロイド結晶の大きさは、1cm×2cm×150μmである。
【0093】
[1.3 色素の吸着]
ゲル固定化したサンプルを蛍光物質溶液に1時間浸漬し、細孔内又は粒子間に色素を吸着させた。蛍光物質溶液には、ローダミン610水溶液(10μM)を用いた。
【0094】
[2. 結果]
[2.1 外観]
図16左図及び右図に、それぞれ、比較例3及び実施例3で得られたコロイド結晶の外観写真を示す。比較例3の場合、ローダミン水溶液に1時間浸漬すると、コロイド結晶は全体が薄いピンク色となったが、色むらも認められた。ローダミン水溶液に1時間浸漬後、水洗浄を行うと、コロイド結晶はローダミン水溶液に浸漬する前の色に戻った。
一方、実施例3の場合、ローダミン水溶液に1時間浸漬すると、コロイド結晶は、全体が均一な濃いピンク色を呈した。ローダミン水溶液に1時間浸漬後、水洗浄を行っても、コロイド結晶はローダミン特有の色を保持していた。さらに、8日間洗浄後も、色は薄くなるが、ローダミン特有のピンク色を呈していた。図16より、メソ細孔内に吸着させたローダミンは、極めて安定であることがわかる。
【0095】
[2.2 垂直反射の反射スペクトル]
図17(a)に、ローダミン610の励起・蛍光スペクトルを示す。また、図17(b)に、実施例3で得られたコロイド結晶の垂直反射の反射スペクトルを示す。図17より、コロイド結晶の垂直反射の反射スペクトルのピークがローダミン610の蛍光スペクトルの最大値とほぼ一致していることがわかる。これは、コロイド粒子をゲル化させる際に粒子濃度を制御し、コロイド結晶の格子間隔を調整したためである。
【0096】
[2.3 コロイド結晶の発光スペクトル]
図5に示す装置を用いて、コロイド結晶の発光スペクトルを測定した。励起光強度は3.4mJ/pulseとし、NDフィルターを用いて励起光強度を11.2〜100%まで変化させた。スペクトルの測定角度は、サンプルの法線に対して5°とした。図18(a)に、実施例3で得られたコロイド結晶の発光スペクトルを示す。また、図18(b)に、その拡大図を示す。
図18より、色素の自然発光による広いスペクトルの他に、レーザー発振による非常に鋭いピークが数本観察された。レーザー発振のピーク(最強ピーク)の半値幅は0.5nm、ピーク間の波長間隔は約1nmであった。最強ピークの半値幅は、ローダミン610の通常の発光スペクトル及び発光増強時のスペクトルより狭く、1nm以下であり、レーザー発振が起きていることを示している。ピーク波長間隔は等間隔であり、これは縦モードのマルチ発振であることを示している。
【0097】
図19に、実施例3で得られたコロイド結晶のピーク強度の励起光強度依存性を示す。図19より、励起光強度が大きくなるほど、最強ピークのピーク強度が増大することがわかる。
また、図20に、実施例3で得られたコロイド結晶のスペクトルのピーク位置の角度依存性(指向性)を示す。測定角度は、5°〜30°とした。図20より、角度を大きくしていくと急速にピーク強度は減少し、指向性の強い光が発生していることがわかる。この結果も,レーザー発振が起きていることを支持している。
【0098】
(実施例4)
ローダミン610に代えて、他の有機色素(LDS750、ローダミン640、ナイルブルー690、クレシルバイオレット670、LDS698、オキサジン720、LDS722、LD700、LD800)、又は有機金属配位化合物(Alq3)を用いた以外は、実施例3と同様の手順に従い、ゲル固定化コロイド結晶を作製した。
いずれの発光物質であっても、メソ細孔内に導入することができた。また、いずれの発光物質とも、発光増強効果が認められた。
【0099】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明に係るコロイド結晶及び発光増幅器は、レーザー発振装置、微少光源、表示装置、ディスプレイ、バックライト、照明光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリアなどに使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則配列させた単分散球状メソポーラスシリカと、
前記単分散球状メソポーラスシリカのメソ細孔内に導入された発光物質とを備え、
前記発光物質は、発光性の有機色素、有機金属配位化合物、高分子発光材料、及び半導体ナノ粒子から選ばれるいずれか1以上からなるコロイド結晶。
【請求項2】
前記発光物質は、その発光スペクトルが前記コロイド結晶の反射スペクトルと重なりを持つ請求項1に記載のコロイド結晶。
【請求項3】
励起エネルギーを増加させることによって、前記発光物質からの発光ピークが増大し、前記発光ピークの半値幅が5nm以下となる請求項2に記載の発光増幅器。
【請求項4】
前記発光物質は、ローダミン又はその誘導体である請求項1から3までのいずれかに記載のコロイド結晶。
【請求項5】
請求項2から4までのいずれかに記載のコロイド結晶を用いた発光増幅器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2010−87489(P2010−87489A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200966(P2009−200966)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】