説明

コンクリートの締固め位置表示装置及び締固め位置表示方法

【課題】 作業指示者や作業員の経験と勘に頼ることなく、適切なコンクリート締固め作業を行う。
【解決手段】 締固めを行うべき位置に設置された複数の発光装置51と、コンクリートの打設進行に応じて発光装置51の発光制御を行う発光制御手段13と、作業員により操作され、締固めが終了した際に発光している発光装置51の発光を停止させる発光停止スイッチ52とを備える。発光制御手段13は、発光停止スイッチ52により発光装置51の発光停止指示がなされた場合に、次に発光させるべき発光装置51を順次発光させる。また、設定された最低締固め時間が経過する以前に発光停止スイッチ52が操作された場合に、発光装置51を消灯させずに警告を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの締固め位置表示装置及び締固め位置表示方法に関するものであり、特に、コンクリートの打設時における締固め不足を防止することが可能なコンクリートの締固め位置表示装置及び締固め位置表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の施工において、設計通りの耐力や耐久性を発揮させるためには、型枠内に供給されたコンクリートに対して十分な締固め作業を行いながらコンクリートを打設しなければならない。
【0003】
一般的なコンクリートの打設作業においては、締固めに使用するバイブレータの直径や振動数等に応じて漠然と30cm乃至40cm間隔で締固めを行っているのが現状である。すなわち、従来のコンクリートの打設時における締固め作業では、作業指示者や作業員の経験と現場における判断により柔軟に対応していた。
【0004】
しかし、作業員の不注意や、コンクリートの供給と締固め作業との連携が悪いと、締固めが十分に行われないことがあった。コンクリートの締固めが不十分であると、コンクリート構造物にジャンカや空隙・空洞等の欠陥が生じて、構造物の耐力や耐久性を損なうことになる。
【0005】
このような不都合に対応するため、コンクリートの締固め位置を適正に管理するための技術が種々開発されている。例えば、トンネル覆工におけるコンクリートの締固め操作を容易にするためのコンクリート締固め方法に関する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1に記載された技術は、バイブレータ本体の上側に球状の浮きを取り付けたものである。そして、供給されたコンクリートによってコンクリートの表面が上昇すると、浮きの浮力によってバイブレータが浮上し、コンクリートの供給位置でコンクリートを締固めるようになっている。
【0007】
【特許文献1】特許第2918384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に記載された技術は、特にトンネル覆工作業においてコンクリートの打設高さに合わせて適正な締固めを行うための技術であり、この点において、人力によりバイブレータを縦方向に移動させる作業を自動化して、作業効率を高めるという優れた効果を発揮する。
【0009】
しかし、建築構造物等の鉄筋コンクリート構造物を施工するための一般的なコンクリート打設作業では、コンクリートの打設高さに合わせてバイブレータを縦方向に移動させるだけではなく、コンクリートの打設時に障害物を避けながらバイブレータを横方向に移動させながら締固め作業を行う。
【0010】
上述したように、従来のコンクリートの打設時における締固め作業は、作業指示者や作業員の経験と勘に頼って行われる場合が多い。コンクリート構造物の施工にあたっては、作業マニュアルの作成及び作業手順の周知や、コンクリート打設前の打ち合わせの徹底など様々な対策が施されている。しかし、作業指示者や作業員の判断ミスや思い違いにより、締固めが行われない箇所が発生する可能性がないとは言い切れない。また、締固め作業は非常に激しい重労働であるため作業員の負担も多大であり、意図せずに不適切な作業が行われてしまう場合もあった。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、作業指示者や作業員の経験と勘に頼ることなく、適切なコンクリート締固め作業を行うことが可能なコンクリートの締固め位置表示装置及び締固め位置表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のコンクリートの締固め位置表示装置及び締固め位置表示方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。
すなわち、本発明のコンクリートの締固め位置表示装置は、締固めを行うべき位置に設置された複数の発光装置を有する発光手段と、コンクリートの打設進行に応じて発光手段の発光制御を行う発光制御手段と、作業員により操作され、締固めが終了した際に発光している発光装置の発光を停止させる発光停止手段と、を備えている。そして、発光制御手段は、発光停止手段により発光装置の発光停止指示がなされた場合に、次に発光させるべき発光装置を順次発光させることを特徴とするものである。
【0013】
このような構成からなるコンクリートの締固め位置表示装置では、発光制御手段の制御に基づいて、まず最初に締固めを行うべき位置に配置した発光装置を発光させる。そして、作業員がバイブレータ等の締固め装置を操作して締固めを行い、適切な締固めが終了すると発光停止手段を操作し、現在発光している発光装置を停止させる。発光停止手段が操作されると、発光制御手段は、次に発光させるべき発光装置を発光させる制御を行う。このようにして、締固めを行うべき位置に設置された発光装置を順次発光させながら、締固め作業を行う。
【0014】
ここで、締固めに最低限必要な最低締固め時間を設定するタイマ手段と、タイマ手段に設定された最低締固め時間が経過する以前に発光停止手段が操作されると、発光装置を消灯させずに警告を行う締固め時間警告手段と、を備えることが好ましい。
【0015】
このような構成からなるコンクリートの締固め位置表示装置では、予めタイマ手段に設定された最低締固め時間が経過する以前に、次の締固め位置において締固めを行おうとすると、最低締固め時間警告手段により警告を発生して、締固めが適切に行われていない旨を知らせることにより、適切な締固め作業を行うことができる。
【0016】
また、発光手段は、所定間隔で複数の発光装置を並列して配設することにより構成され、コンクリート打設場所に設置された型枠や鉄筋等に対して発光手段を取り付けることにより、締固め位置に各発光装置を配置することが可能である。
【0017】
このような構成からなるコンクリートの締固め位置表示装置では、配筋状態等に応じて等間隔とはならない締固め位置に対して、ランプやLED等からなる発光装置を取り付けることにより、配筋状態等に応じて適切な位置に発光装置を配置することができる。
【0018】
また、発光手段は、所定間隔で複数の発光装置を並列して配設することにより構成され、コンクリート打設場所に設置された型枠や鉄筋等に対して発光手段を取り付けるとともに、複数の発光装置の中から、締固め位置に合致する発光装置のみを選択して発光させることが可能である
このような構成からなるコンクリートの締固め位置表示装置では、一般的な締固め間隔以下の間隔(例えば5cm〜10cm間隔)で発光装置を設けておく。そして、締固めを行うべき位置に対応した発光装置のみを選択して発光させることにより、配筋状態等に応じて適切な位置に発光装置を配置することができる。
【0019】
また、締固め位置を表示している発光装置と締固め装置との距離を検知する締固め装置位置検知手段と、締固め装置位置検知手段により、締固め位置を表示している発光装置と締固め装置との距離が許容範囲を超えたことが検知された場合に警告を行う締固め位置警告手段を備えることが好ましい。
【0020】
このような構成からなるコンクリートの締固め位置表示装置では、指示された位置とは異なる位置で締固め作業を行った場合に警告が行われるので、適切かつ確実な締固め作業を行うことができる。
【0021】
本発明のコンクリートの締固め位置表示方法は、コンクリートの打設場所における配筋状態や形状等の打設環境に応じて適切な締固め位置を決定する工程と、決定した締固め位置に発光装置を取り付ける工程と、コンクリートの打設進行に従って発光装置を順次点灯させる工程と、締固めが終了した際に発光装置の発光停止を指示する工程と、発光装置の発光停止指示がなされると、次に発光させるべき発光装置を順次発光させる工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0022】
ここで、予め締固めに最低限必要な最低締固め時間を設定する工程と、最低締固め時間が経過する以前に発光装置の発光停止が指示されると、発光装置を消灯させずに警告を行う工程と、を含むことが好ましい。
【0023】
また、発光装置が配置された位置から所定距離を超えて締固め装置を作動させた場合に警告を行う工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明のコンクリートの締固め位置表示装置及び締固め位置表示方法によれば、予め決定された締固め位置に発光装置を配置し、この発光装置を順次発光させながら、締固め位置を表示することにより、作業指示者や作業員の経験と勘に頼ることなく、適切かつ確実な締固め作業を行うことが可能となる。
【0025】
したがって、ジャンカや空隙・空洞等の欠陥がないコンクリート構造物を施工することができる。また、コンクリート打設に先立ち、事前に十分な検討を行った上で締固め位置を決定することができるので、必ず締固めを行わなければならない箇所において締固めを行わなかったり、締固めを行うことが好ましくない箇所で過剰な締固めを行ったりという、不適切な締固め作業を未然に防止することができる。
【0026】
また、締固めを行う作業員は、自らの判断により締固め位置を決定しなくてよいので、作業員の作業負担が軽減し、締固め作業に集中して適切かつ確実な締固め作業を行うことができる。
【0027】
また、コンクリート構造物に欠陥が生じることがないので、予定外の調査費用や補修費用が発生せず、施工費用の上昇を抑制するとともに、施工会社の信用を高めるという副次的効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明のコンクリートの締固め位置表示装置及び締固め位置表示方法の実施形態について説明する。
【0029】
<第1の実施形態>
図1〜図4は、本発明の第1の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置に関するもので、図1は締固め位置表示装置の概略構成を示す機能ブロック図、図2は発光手段の一例を示す説明図、図3は発光手段の他の例を示す説明図、図4は締固め位置表示装置の使用方法を示す説明図である。また、図5は、本発明の第1の実施形態に係る締固め位置表示方法の手順を示すフローチャートである。
【0030】
本発明の第1の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置10は、コンクリート打設時に締固め位置を的確に指示するための装置であり、図1に示すように、複数の発光装置11からなる発光手段、複数の発光停止手段12、及び発光制御手段13を主な構成要素としている。また、発光装置11や発光制御手段13等に電力を供給するための電源14を備えている。
【0031】
<発光手段>
発光手段は、複数の発光装置11を備えており、各発光装置11は、例えば、ランプやLED等により構成される(図2〜図4参照)。発光装置51の発光色や照度に制限はないが、日中の屋外で作業員が確実に視認可能となるような発光色及び照度であることが好ましい。発光手段の形態としては、種々のものが考えられるが、例えば以下に説明する形態とすることができる。
【0032】
発光手段の第1の例は、図2に示すように、可撓性を有する支持ケーブル53上に所定間隔で複数の発光装置51を並列して設けたものである。支持ケーブル53は、例えば電源ケーブルを兼用することができる。発光装置51の間隔は、一般的な締固め間隔に適合させればよく、例えば30cm〜40cmとすることが好ましい。
【0033】
このような構成からなる発光手段では、可撓性を有する支持ケーブル53上に複数の発光装置51を設けているため、支持ケーブル53を湾曲させることにより、30cm〜40cmの範囲内で隣り合う発光装置51の間隔を適宜変更することができる。また、支持ケーブル53が可撓性を有しているため、支持ケーブル53を容易に一纏めとすることができ、発光手段の運搬や保管を容易に行うことが可能となる。
【0034】
また、支持ケーブル53には、各発光装置51と同位置に、各発光装置51を個別に停止させるための発光停止スイッチ52がそれぞれ取り付けられている。なお、支持ケーブル53の長さや発光装置51の配置間隔は、コンクリート打設場所の状況等に応じて適宜変更して実施することができる。
【0035】
発光手段の第2の例は、図3に示すように、支持部材54上に所定間隔で複数の発光装置51を並列して設けたものである。支持部材54は、剛性を有する棒状の部材であってもよいし、上述した第1の例と同様に可撓性を有する電源ケーブル等を用いてもよい。
【0036】
剛性を有する棒状の部材としては、例えば塩化ビニルパイプを用いることができる。そして、塩化ビニルパイプの適宜箇所に発光装置51をそれぞれ取り付けるとともに、塩化ビニルパイプ内に電源ケーブルを挿通することにより、発光手段を構成することができる。このように、支持ケーブル53として剛性を有する塩化ビニルパイプ等を用いることにより、コンクリートの打設場所に塩化ビニルパイプを掛け渡すだけで、容易に発光装置11を配置することができる。また、塩化ビニルパイプ内に電源ケーブルを挿通することにより、電源ケーブルが保護されて、断線やショート等を防止することができる。
【0037】
発光装置51の間隔は、一般的な締固め間隔よりも狭い間隔となっており、例えば5cm〜10cmとされている。発光手段の第2の例では、図示しないが、各発光装置51毎に、各発光装置51を使用するか否かを選択するためのオン・オフスイッチが設けられている。なお、発光制御手段13において、発光させるべき発光装置51を選択するような構成としてもよい。この場合には、発光制御手段13において、複数の発光装置51の中から使用する発光装置51を選択するような制御機能を付加すればよい。
【0038】
このような構成からなる発光装置11では、一般的な締固め間隔よりも狭い間隔で複数の発光装置51が設けられているため、締固め位置に合致する発光装置51のみを選択することにより、隣り合う発光装置51の間隔を適宜変更することができる。
【0039】
また、支持部材54には、各発光装置51と同位置に、各発光装置51を個別に停止させるための発光停止スイッチ52がそれぞれ取り付けられている。なお、支持部材54の長さや発光装置51の配置間隔は、コンクリート打設場所の状況等に応じて適宜変更して実施することができる。
【0040】
発光手段の第3の例は、図示しないが、複数組の発光装置及び発光停止スイッチと、発光制御手段との間で無線通信を行うための無線通信手段を備えた構成とする。各組の発光装置及び発光停止スイッチには、例えばバッテリ等の電源が設けられている。そして、無線通信手段を介して、各発光装置及び各発光停止スイッチと発光制御手段との間で、点灯信号及び消灯信号を送受信することにより、各発光装置の発光制御を行うことができる。また、発光装置の取り付け間隔等は、上述した第1の例と同様にすればよい。なお、無線通信手段は、公知の無線通信装置を用いることができる。
【0041】
このような構成からなる発光手段では、一組の発光装置及び発光停止スイッチが、他の発光装置及び発光停止スイッチと別個に形成されているため、発光装置及び発光停止スイッチの取付位置を任意に選択することができる。したがって、コンクリート打設場所の状況等に柔軟に対応して、最も適切な位置に発光装置及び発光停止スイッチを配置することができる。また、ケーブル等を必要としないので、発光手段の運搬及び保管を容易に行うことができる。
【0042】
<発光制御手段>
発光制御手段13は、コンクリートの打設進行に応じて発光装置11の発光制御を行うための手段であり、発光停止手段12(発光停止スイッチ52)により発光装置11の発光停止指示がなされた場合に、次に発光させるべき発光装置11を順次発光させるような制御を行う。この発光制御手段13は、例えば、CPU、ROM、RAM等の機能を有するマイクロコンピュータ等からなる制御装置により構成され、ROMに記憶されたアプリケーションプログラムに従ってCPU等が動作することにより、発光制御手段13としての機能が発揮されるようになっている。
【0043】
なお、発光制御手段13、発光装置11、及び発光停止手段12(発光停止スイッチ52)は電源ケーブルにより電気的に接続されている。発光制御手段13と、発光装置11や発光停止手段12(発光停止スイッチ52)等との間における制御信号の授受は、専用の信号線を介して行ってもよいし、電源ケーブルに制御信号を重畳して行ってもよい。
【0044】
<発光停止手段>
発光停止手段12は、作業員が操作して、締固めが終了した際に発光している発光装置11の発光を停止させるための手段である。この発光停止手段12は、例えば、各発光装置51にそれぞれ併設された発光停止スイッチ52により構成することができる。なお、各発光装置51に対してそれぞれ発光停止スイッチ52を設けるのではなく、作業員が容易に操作できる位置であれば、電源ケーブル等の適宜箇所に発光停止スイッチ52を設けてもよい。
【0045】
<締固め位置表示方法>
次に、図4及び図5を参照して、第1の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置の具体的な使用方法について説明する。以下、上述した第1の例に係る発光手段を用いた場合について説明するが、上述した第2の例及び第3の例に係る発光手段を用いた場合にもほぼ同様の方法で使用することができる。
【0046】
第1の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置10は、図4に示すように、コンクリートの打設現場において、型枠55や鉄筋56等に複数の発光装置51を取り付けて使用するようになっている。具体的には、コンクリート打設場所に設置された鉄筋56に支持ケーブル53(例えば電源ケーブル)を巻き付けて、各締固め位置にそれぞれ発光装置51を配置する。この際、支持ケーブル53を湾曲させることにより、各発光装置51を取り付ける位置を調節することができる。
【0047】
第1の実施形態に係る締固め位置表示装置を用いて締固め作業を行うには、図5に示すように、まず、コンクリートの打設場所における配筋状態や形状等の打設環境に応じて適切な締固め位置を決定し(S1)、決定した締固め位置に発光装置を取り付ける(S2)。
【0048】
そして、コンクリートの打設が開始されると、発光制御手段(以下、制御装置と記す)の制御に基づいて、まず初めに締固めを行うべき場所に配置された発光装置を点灯させる(S3)。作業員は、点灯した発光装置の位置で、バイブレータ等の締固め装置を用いて締固め作業を行う(S4)。
【0049】
続いて、所定時間の締固めを行った後、作業員が発光停止スイッチを操作すると(S5)、各層における最後の締固め位置であるか否かを判断する(S6)。ここで、各層における最後の締固め位置でない場合には、制御装置の制御に基づいて、次に締固めを行うべき場所に配置された発光装置が点灯する(S3)。
【0050】
作業員は、点灯した発光装置の位置へ移動して、バイブレータ等の締固め装置を用いて締固め作業を行う(S4)。なお、各層における最後の締固め位置において発光停止スイッチが操作された場合には、制御装置をリセットし(S7)、最後の層における締固め作業が終了したか否か(発光停止スイッチ52が操作されたか否か)を判断する(S8)。
【0051】
ここで、最後の層における締固め作業が終了していない場合には、次の層におけるコンクリート打設作業に移行する(S3〜S8)。一方、最後の層における最後の締固め位置において発光停止スイッチが操作された場合には、コンクリートの締固め作業を終了する。
【0052】
このように、第1の実施形態では、コンクリートの打設作業の進行に従って、順次、発光装置を点灯させるとともに、当該締固め位置における締固め作業が終了して作業員が発光停止スイッチを操作する毎に、次に締固めを行うべき場所に配置された発光装置を点灯させることにより、作業指示者や作業員の経験と勘に頼ることなく、適切かつ確実な締固め作業を行うことができる。
【0053】
<第2の実施形態>
図6は、本発明の第2の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0054】
第2の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置は、上述した第1の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置の構成要素に対して、さらにタイマ手段及び締固め時間警告手段を付加した構成となっている。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0055】
すなわち、第2の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置は、図6に示すように、複数の発光装置11、複数の発光停止手段12、発光制御手段13、タイマ手段21、及び締固め時間警告手段22を主な構成要素としている。また、発光装置11や発光制御手段13等に電力を供給するための電源14を備えている。
【0056】
<タイマ手段>
タイマ手段21は、締固めに最低限必要な最低締固め時間を設定するための手段であり、周知のタイマ回路により構成することができる。このタイマ手段21は、コンクリート構造物の形状や打設するコンクリートの性状等の施工条件に応じて、最低締固め時間を変更して設定できることが好ましい。一般的な最低締固め時間としては、5〜15秒が設定される。なお、発光制御手段13の機能としてタイマ手段21を構成してもよい。
【0057】
<締固め時間警告手段>
締固め時間警告手段22は、タイマ手段21に設定された最低締固め時間が経過する以前に発光停止手段12が操作されると、発光装置11を消灯させずに警告を行うための手段であり、例えば警報音発生器や警告灯により構成される。警報音発生器や警告灯は、電源ケーブルに接続されており、作業員が警告灯を容易に視認したり、警報音を容易に聴き取ることできるようになっている。なお、締固め時間警告手段22は、警報音発生器及び警告灯の双方により構成してもよいし、いずれか一方のみにより構成してもよい。
【0058】
<締固め位置表示方法>
次に、図7を参照して、第2の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置の具体的な使用方法について説明する。図7は、本発明の第2の実施形態に係る締固め位置表示方法の手順を示すフローチャートである。
【0059】
第2の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置の使用方法は、上述した第1の実施形態とほぼ同様である。すなわち、第2の実施形態では、図7に示すように、締固め位置の決定(S11)を行うとともに、締固めに最低限必要な最低締固め時間をタイマ手段21に設定する(S12)。
【0060】
その後に行われる、発光装置の取り付け(S13)、発光装置の順次点灯(S14)、表示位置における締固め作業の実施(S15)、発光停止スイッチの操作(S16)は、上述した第1の実施形態(S2〜S5)と同様である。
【0061】
第2の実施形態では、発光停止スイッチが操作されると(S16)、最低締固め時間が経過しているか否かを判断する(S17)。ここで、最低締固め時間が経過する以前に、作業員により発光停止スイッチが操作されると、警報音発生器から警報音を発生したり、警告灯を点灯あるいは点滅させたりして警告を行う(S18)。この際、次に締固めを行うべき場所に配置された発光装置を点灯させずに、締固め位置を移動してはならないことを作業員に認識させることが好ましい。
【0062】
一方、最低締固め時間が経過した後に、作業員により発光停止スイッチが操作された場合には、各層における締固め位置の判断(S19)、制御装置のリセット(S20)、最後の層における締固め終了判断(S21)が、第1の実施形態(S6〜S8)と同様に行われる。
【0063】
第2の実施形態では、最低締固め時間が経過する以前に、次の締固め位置において締固めを行おうとすると、警告を行って締固めが適切に行われていない旨を報知することができる。また、警告が行われた場合には、次に締固めを行うべき場所に配置された発光装置が点灯しないので、不適切な締固め作業を防止することができる。
【0064】
なお、タイマ手段において適切な締固め時間の範囲を設定しておき、適切な締固め時間の範囲を超えた場合に、警告を行うような構成としてもよい。すなわち、最低締固め時間よりも早く締固めを終了した場合、あるいは最長締固め時間よりも長い時間にわたって締固めを行った場合に警告を行うことにより、さらに適切な締固め作業を行うことができる。
【0065】
<第3の実施形態>
図8は、本発明の第3の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置の概略構成を示す機能ブロック図である。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0066】
第3の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置は、上述した第1の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置の構成要素に対して、さらに締固め装置位置検知手段と締固め位置警告手段とを付加した構成となっている。
【0067】
すなわち、第3の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置は、図8に示すように、複数の発光装置11、複数の発光停止手段12、発光制御手段13、締固め装置位置検知手段31、締固め位置警告手段32を主な構成要素としている。また、発光装置11や発光制御手段13等に電力を供給するための電源14を備えている。
【0068】
<締固め装置位置検知手段>
締固め装置位置検知手段31は、締固め位置を表示している発光装置11と締固め装置との距離を検知するための手段である。この締固め装置位置検知手段31としては、種々のものが考えられるが、例えば以下に説明する形態とすることができる。
【0069】
締固め装置位置検知手段31の第1の例としては、締固め位置を表示している発光装置の取付位置と、バイブレータ等の締固め装置との間に掛け渡されたワイヤやロープを用いることができる。このワイヤやロープは、例えば2m程度の長さを有しており、締固め位置を表示している発光装置の取付位置と締固め装置とが所定距離以上離れることができないようになっている。
【0070】
締固め装置位置検知手段31の第2の例としては、発光装置の近傍と、バイブレータ等の締固め装置とにそれぞれ取り付けた一組の発信装置及び受信装置と、警告信号発生装置とを用いることができる。発信装置及び受信装置は、発光装置の近傍と、締固め装置のどちらに取り付けてもよい。そして、発信装置と受信装置とが例えば2m離れると、警告信号発生装置から警告信号を発生するような構成となっている。
【0071】
<締固め位置警告手段>
締固め位置警告手段32は、締固め装置位置検知手段31により、締固め位置を表示している発光装置と締固め装置との距離が許容範囲を超えたことが検知された場合に警告を行うための手段である。
【0072】
上述した第1の例に係る締固め装置位置検知手段31を用いた場合には、ワイヤやロープ等からなる締固め装置位置検知手段31が、締固め位置警告手段32としても機能する。すなわち、ワイヤやロープ等の長さが規定されているため、締固め位置を表示している発光装置の取付位置と締固め装置とが所定距離以上離れようとすると、ワイヤやロープ等に邪魔されて締固め装置を移動することができないため、作業員に警告を与えることができる。
【0073】
また、上述した第2の例に係る締固め装置位置検知手段31を用いた場合には、警告信号を受信して警告を行う警報音発生器や警告灯により、締固め位置警告手段32を構成することができる。
【0074】
<締固め位置表示方法>
次に、図9を参照して、第3の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置の具体的な使用方法について説明する。図9は、本発明の第3の実施形態に係る締固め位置表示方法の手順を示すフローチャートである。
【0075】
第3の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置の使用方法は、上述した第1の実施形態とほぼ同様である。すなわち、第3の実施形態では、図9に示すように、締固め位置の決定(S21)、発光装置の取り付け(S22)、発光装置の順次点灯(S23)、表示位置における締固め作業の実施(S24)は、上述した第1の実施形態(S1〜S4)と同様である。
【0076】
第3の実施形態では、表示位置における締固め作業を行っている際に、締固め位置を表示している発光装置と締固め装置との距離が適切であるか否かを判断する(S25)。ここで、締固め位置を表示している発光装置と締固め装置との距離が適切ではない場合には、警報音発生器から警報音を発生したり、警告灯を点灯あるいは点滅させたりして警告を行う(S26)。
【0077】
一方、適切な位置で締固め作業を行っている場合には、作業員により発光停止スイッチが操作されたか否かを判断する(S27)。ここで、作業員により発光停止スイッチが操作された場合には、各層における締固め位置の判断(S28)、制御装置のリセット(S29)、最後の層における締固め終了判断(S30)が、第1の実施形態(S6〜S8)と同様に行われる。
【0078】
第3の実施形態では、指示された位置とは異なる位置で締固め作業を行うことができず、あるいはこのような位置で締固め作業を行った場合に警告が行われるので、不適切な締固め作業を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る締固め位置表示装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る発光手段の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る発光手段の他の例を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る締固め位置表示装置の使用方法を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る締固め位置表示方法の手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る締固め位置表示方法の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るコンクリートの締固め位置表示装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る締固め位置表示方法の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
10、20、30 締固め位置表示装置
11 発光手段
12 発光停止手段
13 発光制御手段
14 電源
21 タイマ手段
22 締固め時間警告手段
31 締固め装置位置検知手段
32 締固め位置警告手段
51 発光装置
52 発光停止スイッチ
53 支持ケーブル
54 支持部材
55 型枠
56 鉄筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート打設時に締固め位置を表示するための締固め位置表示装置であって、
締固めを行うべき位置に設置された複数の発光装置を有する発光手段と、
コンクリートの打設進行に応じて前記発光手段の発光制御を行う発光制御手段と、
作業員により操作され、締固めが終了した際に発光している前記発光装置の発光を停止させる発光停止手段と、
を備え、
前記発光制御手段は、前記発光停止手段により前記発光装置の発光停止指示がなされた場合に、次に発光させるべき発光装置を順次発光させることを特徴とするコンクリートの締固め位置表示装置。
【請求項2】
締固めに最低限必要な最低締固め時間を設定するタイマ手段と、
前記タイマ手段に設定された最低締固め時間が経過する以前に前記発光停止手段が操作されると、前記発光装置を消灯させずに警告を行う締固め時間警告手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のコンクリートの締固め位置表示装置。
【請求項3】
前記発光手段は、所定間隔で複数の発光装置を並列して配設することにより構成され、
コンクリート打設場所に設置された型枠や鉄筋等に対して前記発光手段を取り付けることにより、締固め位置に前記各発光装置を配置することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリートの締固め位置表示装置。
【請求項4】
前記発光手段は、所定間隔で複数の発光装置を並列して配設することにより構成され、
コンクリート打設場所に設置された型枠や鉄筋等に対して前記発光手段を取り付けるとともに、複数の発光装置の中から、締固め位置に合致する発光装置のみを選択して発光させることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリートの締固め位置表示装置。
【請求項5】
締固め位置を表示している前記発光装置と締固め装置との距離を検知する締固め装置位置検知手段と、
前記締固め装置位置検知手段により、締固め位置を表示している前記発光装置と前記締固め装置との距離が許容範囲を超えたことが検知された場合に警告を行う締固め位置警告手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコンクリートの締固め位置表示装置。
【請求項6】
コンクリート打設時に締固め位置を表示するための締固め位置表示方法であって、
コンクリートの打設場所における配筋状態や形状等の打設環境に応じて適切な締固め位置を決定する工程と、
決定した締固め位置にそれぞれ発光装置を取り付ける工程と、
コンクリートの打設進行に従って前記発光装置を順次点灯させる工程と、
締固めが終了した際に前記発光装置の発光停止を指示する工程と、
前記発光装置の発光停止指示がなされると、次に発光させるべき発光装置を順次発光させる工程と、
を含むことを特徴とするコンクリートの締固め位置表示方法。
【請求項7】
締固めに最低限必要な最低締固め時間を設定する工程と、
前記最低締固め時間が経過する以前に前記発光装置の発光停止が指示されると、前記発光装置を消灯させずに警告を行う工程と、
を含むことを特徴とする請求項6に記載のコンクリートの締固め位置表示方法。
【請求項8】
発光装置が配置された位置から所定距離を超えて締固め装置を作動させた場合に警告を行う工程を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載のコンクリートの締固め位置表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−144384(P2008−144384A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330068(P2006−330068)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】