説明

コンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法

【課題】コンクリート構造物の目地部の下方に平板状又は波板状の繊維強化樹脂(FRP)板に発泡体部材を介して当該コンクリート構造物の壁面に圧着・固定し、簡素な構造であって、止水性能及び目地周辺部のコンクリート片剥落防止を確保できる技術を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物22は、鉄道構造物の橋梁やカルバート、水路又は山岳トンネル、地下構造物等である。前記コンクリート構造物22、22の継ぎ目に形成された目地部23である。前記コンクリート構造物22の壁面22aに載置される発泡体部材24であり、所定幅を有した波板状繊維強化樹脂(FRP)板25はその表・裏面の全体が波状に成形している。そして、該波板状繊維強化樹脂(FRP)板25の前端部25aと後端部25bは当然に波形状であって、アンカーボルト27、27で発泡体部材24、24と共に押え板26、26を介して該壁面22a、22aに圧着・固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の目地部の下方に平板状又は波板状の繊維強化樹脂(FRP)板に発泡体部材を介して当該コンクリート構造物の壁面に圧着・固定し、簡素な構造であって、止水性能を確保でき併せて目地部周辺のコンクリート片剥落防止を行なうコンクリート構造物の繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導水樋工法の一つの例としての導水受板の保持具および導水樋装置について、特開2002−47900特許公開公報に開示した図12に示すものがある。これについて説明すれば、保持具1は、保持具本体2と、保持具本体2にたとえば接着剤による接着または両面粘着テープによる粘着などによって固定される一対の長尺のシール部材3a、3bと、保持具本体2に嵌着される長尺のカバー体4とを含む。前記保持具本体2は、硬質ポリ塩化ビニルなど熱可塑性合成樹脂から成る押出型材によって作成され、それは長尺材である。またシール部材3a、3bは、独立気泡の発泡合成樹脂と合成ゴムとの2層構造の複合材料から成る長尺材によって構成される。カバー体4は、たとえばアクリル樹脂と硬質ポリ塩化ビニルとが混合された耐候性および耐薬品性を有する合成樹脂から成る押出型材によって製作される。導水樋Aが設けられる構造物5は、道路トンネルの覆工コンクリートであって、その内周の壁面5aに、前記複数の保持具1および複数の導水受板6が設けられ、壁面5aと導水受板6との間に導水路7を形成し、前記道路軸線方向に隣接して複数列の導水樋Aが形成される。各導水路7に集水される壁面5aからの漏水は、路側帯に設けられる排水溝に導かれ、各排水溝から暗渠排水溝に落とし込まれて排水処理される。前記構造物5には、複数のアンカー体8が壁面5aの周方向に間隔をあけかつ道路軸線方向に前記間隔をあけて埋設される。各アンカー体8は、軸線方向一端部の外周部に外ねじ8aが刻設され、軸線方向他端部は周方向に分断されて複数の拡開部8bが形成されるアンカー軸8cと、拡開部8bに挿入される円錐台状の挿入片9とを有する。このようなアンカー体8は、構造物5にコンクリートドリルなどの穿孔工具によって予め穿孔して下穴を形成し、この下穴に前記アンカー体8を打ち込んで前記挿入片9が拡開部8bを拡開させ、固定する。この状態では、前記外ねじ8aが形成される軸線方向一端部は、壁面5aからほぼ垂直に突出し、この突出部分は保持具本体2の幅方向中間部2aを貫通し、幅方向中間部2aから突出部分に、座金10が装着され、ねじ部材であるナット11が螺着されて、保持具本体2が壁面5aに固定される。
【0003】
また、従来、導水樋工法の他の例としての漏水処理用導水樋について、登録実用新案第3024620号登録実用新案公報に開示した技術がある。これについて説明すれば、漏水処理用導水樋12は、一対の帯状ドレーンタイト13、13を備えている。上記ドレーンタイト13はポリプロピレンを用いて射出成形により形成されており、一端側の裏面に止水材把持用の突片14を連続的に備えており、他端側に溝状把持部15が長手方向に連続して形成されている。なお、把持部15の内面には、長手方向に複数の突条を連続的に一体成形する。また、ドレーンタイト13には所定間隔を置いて固定用の貫通孔が形成されている。ドレーンプレート16は、ドレーンタイト13と同様にポリプロピレンで形成された板材で、長手方向の両側部をドレーンタイト13の把持部15に挿入して接着剤で固定されている。なお、上述のように把持部15に突条を設けることによりドレーンプレート16の固定がより一層確実になる。止水材17はポリエチレン製独立発泡体からなり、ドレーンタイト13の裏面に接着剤で固定されている。また、この止水材17にはドレーンタイト16の貫通孔に連通する貫通孔が形成されている。上記構成からなる漏水処理用導水樋12は、図13に示すように、例えばトンネルの壁面18に発生したクラック19に沿って配置され、アンカーボルト20で固定される。この際、止水材17は、突片14によってドレーンタイト13の幅方向のずれが防止されるとともに、ポリエチレン発泡体で形成されているので壁面18に隙間無く密着する。このようにして、ドレーンタイト13、止水材17、ドレーンプレート16及び壁面18とで形成された空間を導水路21として、クラック18から発生した水を排出する。
【特許文献1】特開2002−47900号公開特許公報
【特許文献2】実用新案登録第3024620号登録実用新案公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、背景技術で述べたようなした構成、作用であるので次の課題が存在した。
すなわち、前述した従来の技術に於ける一つの例によれば、導水受板6が構造物5の壁面5aに装備するためには複雑な構造を有する保持具本体2を備える必要があり、導水樋装置を設置するに際し、施工工期が長くなるという隘路があった。また、シール部材3a、3bが該保持具本体2の凹陥部で単に押圧する構成であり、このシール部材3a、3bが該保持具本体2から離脱する惧れがあり、止水機能や品質が劣化するという問題点があった。
また、前述した従来の技術に於ける他の例によれば、漏水処理導水樋の構造であってドレーンプレート16をドレーンタイト13に接続するためにはその把持部15に該ドレーンプレート16を挿入しかつ接着剤で固定する構造である。これの組立工数、つまり施工工数が増大するうえに全体構造が複雑であり、止水機能が劣るという前記一つの例と同様に問題点があった。また、この種の導水樋工法は目地周辺コンクリート片の剥落防止を目的としていず、その配慮はされていない。
【0005】
さらに、従来の技術によれば繊維強化樹脂(FRP)板を導水樋として使用するに際し、その厚さが約6(mm)程度の平板状繊維強化樹脂(FRP)板を用いた場合にも曲げ剛性が不足し、複雑な形状を成形した剛性の高い受け部材を用いることが要請され、またシール部材を均一に圧着することができず、所期の止水性能を確保できないという問題点もあった。そして、目地部の排水処理をするうえで各種の構成部材やその形状が複雑化するのでシール材と構造物との間に別に接着剤を使用して止水性能を確保する必要があった。本発明が解決しようとする課題は、背景技術で述べた問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コンクリート構造物の目地部の下方に平板状又は波板状の繊維強化樹脂(FRP)板に発泡体部材を介して当該コンクリート構造物の壁面に圧着・固定し、簡素な構造であって、止水性能を確保できるコンクリート構造物の繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法兼目地部周辺のコンクリート片剥落防止を提供することを目的としたものであって、次の構成、手段から成立したものである。
【0007】
すなわち、請求項1記載の発明によれば、コンクリート構造物に形成された目地部からの排水及び目地周辺のコンクリート片の剥落防止を可能にする導水樋工法であって、該目地部を跨ぐ一方、他方のかつ上面が波形若しくは凹凸形状を有した断面略矩形状発泡体部材を該コンクリート構造物の下面に配置し、該発泡体部材の上面に圧着・係合した波形又は凹凸形状の前・後端部を備えた繊維強化樹脂(FRP)板を配置し、アンカーボルトにより押え板を介在させて前記繊維強化樹脂(FRP)板の前・後端部で前記発泡体部材を前記コンクリート構造物の壁面に圧着・固定することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、コンクリート構造物に形成された目地部からの排水及び目地周辺のコンクリート片の剥落防止を可能にする導水樋工法であって、該目地部を跨ぐ一方、他方のかつ上面が波形若しくは凹凸形状を有した断面略矩形状発泡体部材を該コンクリート構造物の下面に配置し、該発泡体部材の上面に圧着・係合した波形又は凹凸形状の前・後端部を備えた波板状繊維強化樹脂(FRP)板を配置し、アンカーボルトにより押え板を介在させて前記波板状繊維強化樹脂(FRP)板の前・後端部で前記発泡体部材を前記コンクリート構造物の壁面に圧着・固定することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、コンクリート構造物に形成された目地部からの排水及び目地周辺のコンクリート片の剥落防止を可能にする導水樋工法であって、該目地部を跨ぐ一方、他方のかつ上面が波形若しくは凹凸形状を有した断面略矩形状発泡体部材を該コンクリート構造物の下面に配置し、該発泡体部材の上面に圧着・係合した波形又は凹凸形状の前・後端部を備えた平板状繊維強化樹脂(FRP)板を配置し、アンカーボルトにより押え板を介在させて前記平板状繊維強化樹脂(FRP)板の前・後端部で前記発泡体部材を前記コンクリート構造物の壁面に圧着・固定することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明によれば、請求項1、2又は3記載の発明に於いて、前記押え板は金属製でなり、その前・後端部が水平位置から角度略45°下方に折曲形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法は、叙上の構成を有するので次の効果がある。
【0012】
すなわち、請求項1記載の発明によれば、コンクリート構造物に形成された目地部からの排水を可能にする導水樋工法であって、該目地部を跨ぐ一方、他方のかつ上面が波形若しくは凹凸形状を有した断面略矩形状発泡体部材を該コンクリート構造物の下面に配置し、該発泡体部材の上面に圧着・係合した波形又は凹凸形状の前・後端部を備えた繊維強化樹脂(FRP)板を配置し、アンカーボルトにより押え板を介在させて前記繊維強化樹脂(FRP)板の前・後端部で前記発泡体部材を前記コンクリート構造物の壁面に圧着・固定するコンクリート構造物の導水樋工法を提供する。
このような構成としたので、簡単な構成であって短期工期による導水樋工法兼目地部周辺のコンクリート片剥落防止を実現でき、波形又は凹凸形状の前・後端部を備えた繊維強化樹脂(FRP)板により目地部周辺のコンクリート片の落下を弾性的かつ強度的に受けることを可能としたことにより、止水性能と剥落防止効果を向上させる効果がある。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、コンクリート構造物に形成された目地部からの排水を可能にする導水樋工法であって、該目地部を跨ぐ一方、他方のかつ上面が波形若しくは凹凸形状を有した断面略矩形状発泡体部材を該コンクリート構造物の下面に配置し、該発泡体部材の上面に圧着・係合した波形又は凹凸形状の前・後端部を備えた波板状繊維強化樹脂(FRP)板を配置し、アンカーボルトにより押え板を介在させて前記波板状繊維強化樹脂(FRP)板の前・後端部で前記発泡体部材を前記コンクリート構造物の壁面に圧着・固定するコンクリート構造物の導水樋工法を提供する。
このような構成としたので、発泡体部材の上面に圧着・係合した波形又は凹凸形状の前・後端部を備えた波板状繊維強化樹脂(FRP)板により簡単な構成であって短期工期による導水樋工法兼目地部周辺のコンクリート片剥落防止を実現でき、波形又は凹凸形状の前・後端部を備えた波形繊維強化樹脂(FRP)板により目地部周辺のコンクリート片の落下を弾性的かつ強度的に受けることを可能としたことにより、止水性能と剥落防止効果を向上させる効果がある。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、コンクリート構造物に形成された目地部からの排水を可能にする導水樋工法であって、該目地部を跨ぐ一方、他方のかつ上面が波形若しくは凹凸形状を有した断面略矩形状発泡体部材を該コンクリート構造物の下面に配置し、該発泡体部材の上面に圧着・係合した波形又は凹凸形状の前・後端部を備えた平板状繊維強化樹脂(FRP)板を配置し、アンカーボルトにより押え板を介在させて前記平板状繊維強化樹脂(FRP)板の前・後端部で前記発泡体部材を前記コンクリート構造物の壁面に圧着・固定するコンクリート構造物の導水樋工法を提供する。
このような構成としたので、発泡体部材の上面に圧着・係合した波形又は凹凸形状の前・後端部を備えた平板状繊維強化樹脂(FRP)板により簡単な構成であって短期工期による導水樋工法兼目地部周辺のコンクリート片剥落防止を実現でき、波形又は凹凸形状の前・後端部を備えた平板繊維強化樹脂(FRP)板により目地部周辺のコンクリート片の落下を弾性的かつ強度的に受けることを可能としたことにより、止水性能と剥落防止効果を向上させる効果がある。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、前記押え板は金属製でなり、その前・後端部が水平位置から角度略45°下方に折曲形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のコンクリート構造物の導水樋工法を提供する。
このような構成としたので、上記請求項1、2又は3記載の発明の効果に加えて、アンカーボルトのナットを加締める時に、押え板が回転しないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法の実施の形態について添付図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法の実施の形態を示すものであって、目地部部分の垂直断面図である。
【0018】
22はコンクリート構造物であり、例えば、鉄道構造物の橋梁やカルバート、水路又は山岳トンネル、地下構造物等である。23は、前記コンクリート構造物22、22の継ぎ目に形成された目地部である。24は発泡体部材であり、前記コンクリート構造物22の壁面22aに載置される。25は、所定幅を有した波板状繊維強化樹脂(FRP)板であって、図1に示すものはその表・裏面の全体が波状に成形している。そして、該波板状繊維強化樹脂(FRP)板25の前端部25aと後端部25bは当然に波形状であって、アンカーボルト27、27で発泡体部材24、24と共に押え板26、26を介して該壁面22a、22aに圧着・固定される。そして、この固定部を波形にしたことによりコンクリート片が落下した時に弾性的にこれを受ける。
尚、該発泡体部材24、24の上面24a、24a、すなわち壁面22a、22aに固着する面と反対面は波形面又は凹凸面となっている。
【0019】
ここで、前記発泡体部材24、24は、止水機能を有し例えばポリエチレンフォームで形成され、難燃性、自己消火性や独立気泡の性質があって、例えば発泡倍率を25倍としている。該発泡体部材24、24は断面形状が例えば略矩形であり、前記目地部23が形成された方向に略平行でかつコンクリート構造物22の前・後に配置されている。
尚、図1に於いて28は目地部23から流出した水が流れ込む導水路である。この流出した水は例えばアーチ状のコンクリート構造物22の壁面22aを伝達し下端の排水口(図示せず)に流出する。
【0020】
因みに、当該発泡体部材24、24は、図2及び図3(a)、(b)に示す物性を備えた素材のものを適用すれば本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法の作用・効果を発揮する。そして、該発泡体部材24、24の一般物性としては、発泡倍率が低いものほど圧縮せずに硬くコンクリート構造物22に馴染み難くなる。そこで上述したように発泡倍率を25倍にすれば適度の圧縮応力を有しかつ圧縮永久歪みを確保したうえで、該コンクリート構造物22に馴染むこととなり最適倍率であることが判明した。
【0021】
次に、前記押え板26、26は図4(a)、(b)に示すように厚さが約1ないし2(mm)程度の金属製であって上面から全体を見れば略矩形板状で構成されている。図4(b)は図4(a)の矢視B−B線方向から見た側面図である。押え板26の前・後端部26a、26bは水平位置から角度略45°程度下方に折曲形成している。該押え板26の略中央部26cは平板状であり該略中央部26cの中心部分には貫通孔26dを穿孔し、この貫通孔26dにアンカーボルト27を挿通してナット27aを加締め、前記発泡体部材24及び前記波板状繊維強化樹脂(FRP)板25の前端部25aと後端部25bをコンクリート構造物22、22の壁面22a、22aに圧着・固定する。このとき、図6に示すように、前記押え板26の前端部26aと後端部26bが波形又は凹凸形状に形成された波板状繊維強化樹脂(FRP)板25の前端部25aと後端部25bの上面を抱え込むように保持するので、該前端部25a及び該後端部25bの各下面に掛る加重が略垂直方向であり、該発泡体部材24、24がコンクリート構造物22、22の壁面22a、22aに完全に吸着し、止水性を向上させる。
【0022】
次に、本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法の実施の形態について図5及び図6等に基づきその動作・作用を説明する。
上述したように、波板状繊維強化樹脂(FRP)板25の前端部25aと後端部25bはその表・裏面が波形又は凹凸形状である。そして、前記発泡体部材24、24をコンクリート構造物22、22の壁面22a、22aに圧着・固定する際、アンカーボルト27、27に螺合されたナット27a、27aを強く加締める。そこで、該波板状繊維強化樹脂(FRP)板25の前端部25a及び後端部25bが断面略矩形状の発泡体部材24、24の上面を押圧する。このとき、該発泡体部材24、24の上面が図5及び図6に示すように、予め側面から見れば波形若しくは凹凸形状を形成してある。この形状は恰も断面略三角形状の山が連設された形態である。そして、前記波板状繊維強化樹脂(FRP)板25の前端部25a及び後端部25bが図6に示すように三つの波形である場合、該発泡体部材24、24の上面の形状はこれに適合させ断面略三角形の山が三個連設した形態となる。実際には図5に示すように、前記発泡体部材24、24の上面と波板状繊維強化樹脂(FRP)板25の前端部25a及び後端部25bの下面と間には隙間S…が存在することとなる。この隙間S…が二次導水路又は二次排水路を形成することとなる。すなわち、目地部23から流出した水は一次導水路として機能する導水路28の中を矢印Cの方向に流出すると共に波板状繊維強化樹脂(FRP)板25の前端部25a及び後端部25bへの方向つまり矢印Dの方向に流水し、二次導水路としての隙間S…内を矢印E方向に流水する。この隙間S…が存在することにより止水性能が著しく向上することとなった。
【0023】
この波板状繊維強化樹脂(FRP)板25に代えて平板状繊維強化樹脂(FRP)板25Aを使用した場合も前記と同様に隙間Sが存在し、二次導水路又は二次排水路を形成し、同一の止水機能を備えることは言及するまでもない。
【0024】
ところで、前記押え板26、26により前記波板状繊維強化樹脂(FRP)板25の前端部25aと後端部25b及び発泡体部材24、24の上面を押圧するとき、該波板状繊維強化樹脂(FRP)板25はアンカーボルト27を挿通するための穿孔により、その部分が脆弱となり、波板状繊維強化樹脂(FRP)板25の前端部25a及び後端部25bの三つの波形、又は三つの凹凸部すなわち発泡体部材24の上面から見れば該アンカーボルト27の一本を締め付けるとき発生する支圧を三つの山で分散する構造とし、止水性を向上させた。また、押え板26、26の前・後端部26a、26bが水平位置から角度略45°程度下方に折曲させ、側面から見れば略L字状コ字形状を形成したのでアンカーボルト27のナット27aを加締める時に、該押え板26が回転しないように構成している。
尚、前記コンクリート構造物22、22の壁面22a、22aに発泡体部材24、24、波板状繊維強化樹脂(FRP)板25及び押え板26、26を圧着・固定するときの作用等は後述する実施例1と同一であるので、その説明を省略する。
【実施例1】
【0025】
次に、本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法の実施例1について説明する。
【0026】
図7は、本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法の実施例1を示すものであって、目地部部分の垂直断面図である。
大概すれば、前記実施例1の特異な構成としては、上述した図1に示す本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法の実施の形態に備えた波板状繊維強化樹脂(FRP)板25を平板状繊維強化樹脂(FRP)板25Aに代えた点である。当該実施例1に於けるほかの構成部材は上述した図1に示す実施の形態の構成部材と略同一であり、同一番号及び同一符号を付してその説明を省略する。
尚、前記平板状繊維強化樹脂(FRP)板25Aはその中央部25c、すなわち目地部23の下方部分が平板状に構成され、その中央部25cに連らなる前端部25a及び後端部25bは前述した図1に示す構成のものと同一であるように波形又は凹凸形状に形成されている。
【0027】
かくて、図8(a)、(b)に示すように、コンクリート構造物22、22の壁面22a、22aに発泡体部材24、24を載置し、この発泡体部材24、24の波形若しくは凹凸形状すなわち三つの山でなる上面に前記平板状繊維強化樹脂(FRP)板25Aの波形又は凹凸形状でなる前端部25a及び後端部25bを当接又は接合する。さらに、該平板状繊維強化樹脂(FRP)板25Aの波形又は凹凸形状でなる前端部25a及び後端部25bの上面(図8(a)に示す前端部25a、後端部25bの下方面)に押え板26、26を当てがう。このとき、押え板26、26の前端部26aは発泡体部材24、24の三つの山のうち最前方の山に相当する位置に於ける平板状繊維強化樹脂(FRP)板25Aの前端部25aを保持する。また、押え板26、26の後端部26bは該発泡体部材24、24の三つの山のうち最後方の山に相当する位置に於ける平板状繊維強化樹脂(FRP)板25Aの後端部25bを保持する。
【0028】
ここで前記発泡体部材24、24、平板状繊維強化樹脂(FRP)板25Aの前端部25a及び後端部25b並びに押え板26、26の略中央部26cのそれぞれの中心部垂直方向には予め前記アンカーボルト27、27を挿通する孔を穿孔(図示せず)してあり、該発泡体部材24、24、平板状繊維強化樹脂(FRP)板25A及び押え板26、26を順次重設・配置した際、各穿孔すなわち一連の貫通孔内にアンカーボルト27、27を挿通する。そして、前記押え板26、26の上面から該アンカーボルト27、27の軸に係入されたワッシャを介して又は介さずして押え板26、26の上面に配置されたナット27a、27aを締め付ける。
【0029】
このとき、当該ナット27a、27a及び押え板26、26には、図8(a)に示すように矢印P方向の加重がかかり、前記平板状繊維強化樹脂(FRP)板25Aの前端部25a及び後端部25bの波形部又は凹凸形状部や前記押え板26、26の前端部26a・後端部26bの働きにより該発泡体部材24、24を前・後方向に膨張させることなく、壁面22a、22aの垂直方向に圧縮させながら該発泡体部材24、24の上面を垂直方向に押圧することとなる。そして、該発泡体部材24、24の内部には矢印P1方向の分布荷重つまり、均等化された荷重がかかり、該発泡体部材24、24の下面(壁面22aとの接着面)は常にコンクリート構造部22、22の壁面22a、22aに均等化して接着し、密着性を高めて圧着・固定するので当該導水樋工法によれば目地部23から流出した水を漏水することなく止水機能を向上させることができる。
【実施例2】
【0030】
次に、本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法の実施例2について説明する。
【0031】
図9は、本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法の実施例2を示すものであって、目地部部分の垂直断面図である。
当実施例2の特異な構成としては、コンクリート構造物22Aが傾斜壁面22bや垂直壁面22cを有して構成した場合である。また、当実施例2に於いては、所定幅を有した波板状繊維強化樹脂(FRP)板25Bが長大であって一枚で構成した例である。当実施例2に於けるほかの構成部材は上述した図1に示す実施の形態の構成部材と略同一であり、同一番号及び同一符号を付してその説明を省略する。
【0032】
当実施例2に於いて図9から明らかなようにコンクリート構造物22Aの傾斜壁面22b及びこれに連なる垂直壁面22cに前記発泡体部材24、24を載置し、この発泡体部材24、24の上面に波板状繊維強化樹脂(FRP)板25Bを載せて接合する。さらに該波板状繊維強化樹脂(FRP)板25Bの所定間隙L1、L2、L3毎に該発泡体部材24、…を載置かつ配設し、該発泡体部材24、…を中継点としての機能を備え、目地部23からの排水を可能にする導水樋工法の施工方法の簡略化を図り、施工工期の短縮化を実現した。
また、上述の実施例2に於いては波板状繊維強化樹脂(FRP)板25Bに代えて、図7に示す平板状繊維強化樹脂(FRP)板25Aで構成してもよく、複数枚を前記中継点で接続する構成であってもよい。
【0033】
尚、前記コンクリート構造物22、22Aの壁面22a、22b、22cに発泡体部材24、24、波板状繊維強化樹脂(FRP)板25B及び押え板26、26を圧着・固定するときの作用等は後述する実施例1と同一であるので、その説明を省略する。
【0034】
次に、図10(a)に示すように例えば、R=3000(mm)を有する実物のコンクリート構造物としてのコンクリートアーチの供試体22Bについて試験を行った。そして、該コンクリートアーチの供試体22Bの壁面22aと繊維強化樹脂(FRP)板25Cの上面間の幅Wについて各測定点で測定した。これは発泡体部材24の厚みを測定することで、その止水機能も明白となる。
【0035】
上記コンクリートアーチの供試体22Bは図11(a)で示す試験体No.(1)ないし(5)であり、発泡体部材24の発泡倍率は20倍ないし25倍である。
【0036】
そして、試験体No.(1)の場合に於いては繊維強化樹脂(FRP)板25(以下図11(a)では単に「FRP」と表記する)25Cの厚さが0.8(mm)、該FRPの形状が波板状、発泡倍率が25倍であり、押え板26は使用しなかった。そして、測定点AないしMの13点でそのA点、C点、E点、G点、I点、K点及びM点は図10(b)に示すように、アンカーボルト27をコンクリートアーチの供試体22Bに打込んだ位置である。
【0037】
そして、ほかのB点、D点、F点、H点、J点及びL点はアンカーボルト27をコンクリートアーチの供試体22Bの打込んだ位置の中間位置である。そして、アンカーボルト27、27の相互間距離(間隙)S1は300(mm)である。図10(a)に示す発泡体部材24の圧着前に於ける壁面22aと該発泡体部材24の上面間の幅Wは20(mm)であった。そこで、試験体No.(1)によれば図11(a)、(b)に示すように、測定点AないしMの13点に於いて、該幅Wは19(mm)ないし18(mm)を計測し、比較的変動なく安定化しており、該発泡体部材24が壁面22aに均一に圧着し、止水性能が向上したことが分る。
【0038】
以下、各試験体No.(2)ないしNo.(5)についてもそれぞれ図11(a)、(b)に示すように各条件の下で試験を行なったが、概ね試験体No.(1)と同様に該発泡体部材24が壁面22aに均一に圧着し、止水性能が向上したことが分る。
【0039】
而して、試験の結果では、繊維強化樹脂(FRP)板25Cがその厚さを0.8(mm)とした場合にも発泡体部材24の上面に於ける繊維強化樹脂(FRP)板25Cの前端部25a、後端部25bが該繊維強化樹脂(FRP)板25Cの全体形状つまり波板状、平板状に拘らず波形又は凹凸形状にしたことによりその部分の剛性を高め、該発泡体部材24を均一に壁面22aに圧着し、止水性を発揮することが明白となった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法の実施の形態を示すものであって、目地部部分の垂直断面図である。
【図2】本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法に適用する発泡体部材の物性を示す図である。
【図3】本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法に適用する発泡体部材の物性を示すものであって、(a)は発泡倍率(倍)に対する見かけ密度(kg/m)の特性図、(b)は発泡倍率(倍)に対する圧縮応力(kPa)の特性図である。
【図4】本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法に適用する押え板の構成を示すものであって、(a)は平面図、(b)は(a)の矢視B−B線方向の側面図である。
【図5】本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法による止水作用等を説明するための底面図である。
【図6】本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法に適用した波板状繊維強化樹脂(FRP)板を発泡体部材の上面に接合した構造を示す垂直断面図である。
【図7】本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法の実施例1を示すものであって、目地部部分の垂直断面図である。
【図8】本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法の実施例1の作用等を示すものであって、(a)は垂直断面図、(b)は(a)の矢視F−F線方向の側面図である。
【図9】本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法の実施例2を示すものであって、目地部部分の垂直断面図である。
【図10】本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法に於いて、実物のコンクリート構造物としてのコンクリートアーチの供試体による試験例を示すものであって、(a)は当該コンクリートアーチの供試体の垂直断面図、(b)は(a)の矢視G−G線方向の側面図である。
【図11】本発明に係るコンクリート構造物に於ける繊維強化樹脂(FRP)板による導水樋工法に於いて、実物のコンクリート構造物としてのコンクリートアーチの供試体による試験例を示すものであって、(a)は各試験体の特性を示す図、(b)は各試験体に於ける各測定点に対する壁面から該発泡体部材の上面までの幅Wの値を示す特性図である。
【図12】従来の技術に於ける一つの例としての導水樋装置を示す垂直断面図である。
【図13】従来の技術に於ける他の例としての漏水処理用導水樋を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
22 コンクリート構造物
22a コンクリート構造物の壁面
22A コンクリート構造物
22b コンクリート構造物の傾斜壁面
22c コンクリート構造物の垂直壁面
22B コンクリートアーチの供試体
23 目地部
24 発泡体部材
24a 発泡体部材の上面(波形面又は凹凸面)
25 波板状繊維強化樹脂(FRP)板
25a 波板状繊維強化樹脂(FRP)板の前端部
25b 波板状繊維強化樹脂(FRP)板の後端部
25A 平板状繊維強化樹脂(FRP)板
25c 平板状繊維強化樹脂(FRP)板の中央部
25B 波板状繊維強化樹脂(FRP)板(実施例2)
25C 試験に適用した繊維強化樹脂(FRP)板
26 押え板
26a 押え板の前端部
26b 押え板の後端部
26c 押え板の略中央部
26d 押え板の貫通孔
27 アンカーボルト
27a アンカーボルトのナット
28 導水路
S 発泡体部材の上面と繊維強化樹脂(FRP)板の下面とで形成した隙間
S1 アンカーボルトの相互間距離(間隙)
W コンクリートアーチの供試体の壁面と発泡体部材の上面との幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物に形成された目地部からの排水を可能にする導水樋工法であって、、該目地部を跨ぐ一方、他方のかつ上面が波形若しくは凹凸形状を有した断面略矩形状発泡体部材を該コンクリート構造物の下面に配置し、該発泡体部材の上面に圧着・係合した波形又は凹凸形状の前・後端部を備えた繊維強化樹脂(FRP)板を配置し、アンカーボルトにより押え板を介在させて前記繊維強化樹脂(FRP)板の前・後端部で前記発泡体部材を前記コンクリート構造物の壁面に圧着・固定するコンクリート構造物の導水樋工法。
【請求項2】
コンクリート構造物に形成された目地部からの排水を可能にする導水樋工法であって、該目地部を跨ぐ一方、他方のかつ上面が波形若しくは凹凸形状を有した断面略矩形状発泡体部材を該コンクリート構造物の下面に配置し、該発泡体部材の上面に圧着・係合した波形又は凹凸形状の前・後端部を備えた波板状繊維強化樹脂(FRP)板を配置し、アンカーボルトにより押え板を介在させて前記波板状繊維強化樹脂(FRP)板の前・後端部で前記発泡体部材を前記コンクリート構造物の壁面に圧着・固定するコンクリート構造物の導水樋工法。
【請求項3】
コンクリート構造物に形成された目地部からの排水を可能にする導水樋工法であって、該目地部を跨ぐ一方、他方のかつ上面が波形若しくは凹凸形状を有した断面略矩形状発泡体部材を該コンクリート構造物の下面に配置し、該発泡体部材の上面に圧着・係合した波形又は凹凸形状の前・後端部を備えた平板状繊維強化樹脂(FRP)板を配置し、アンカーボルトにより押え板を介在させて前記平板状繊維強化樹脂(FRP)板の前・後端部で前記発泡体部材を前記コンクリート構造物の壁面に圧着・固定するコンクリート構造物の導水樋工法。
【請求項4】
前記押え板は金属製でなり、その前・後端部が水平位置から角度略45°下方に折曲形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のコンクリート構造物の導水樋工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−247162(P2007−247162A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68530(P2006−68530)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(000111823)バンポー工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】