説明

コンデンサ電動機の負荷状態を表示する装置

【課題】 コンデンサラン型誘導電動機の実負荷状況を監視するための検出部および表示部の各素子を直列接続させ、進相コンデンサからの電流供給を最小限に抑えることができるコンデンサ電動機の負荷状態を表示する装置を提供する。
【解決手段】 主巻線と、この主巻線と電気角が異なる位置に設けられた補助巻線と、この補助巻線に接続された進相コンデンサCoとを有するコンデンサ電動機Mの負荷状態を表示する装置において、前記コンデンサ電動機Mの負荷状態を表示する表示部として、互いに直列接続した抵抗Rと複数の発光ダイオードLED〜LEDからなる直列回路を、前記進相コンデンサCoに接続し、電動機の負荷の増大に伴う前記進相コンデンサCoの電圧変化に応じて、前記発光ダイオードLED〜LEDの点灯数を増加させるように切り換える負荷表示切り換え部4を設けたことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ電動機の負荷状態を表示する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンデンサ電動機の負荷状態を表示する装置としては、例えば、特許文献1が知られている。特許文献1の技術としては、コンデンサラン型誘導電動機の負荷検出を行うもので、この場合、表示部として、コンデンサに、抵抗と発光ダイオード(LED)とツェナーダイオードからなる直列回路を互いに並列接続し、各ツェナーダイオードのツェナー電圧の違いによって前記発光ダイオードが各々異なる電圧で点灯するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−148022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に記載の先行技術によると、無負荷時の発光ダイオード点灯は全点灯で負荷が増加するにつれ発光ダイオードが消灯し、拘束時には発光ダイオード1個が点灯する表示内容である。
したがって、特許文献1によると、電圧検出部のツェナーダイオード、および表示部の発光ダイオードを、進相コンデンサと並列に接続することで回路構成を簡易にできる優位点はあるものの、各発光ダイオードが互いに並列接続であるため、発光ダイオード点灯のための電流消費が多くなり、小型モータにおいてはこの電流消費によりモータ振動が発生してしまう。
また、拘束時のアラーム出力についても、特許文献1に記載の先行技術によると、拘束時とその直前の2つの状態の監視によりアラーム出力を判別し、またその監視及び比較を行うため、外部電源(DC5V)が必要であった。
特に、小型モータにおいては、検出部への電流供給がモータ電流に比較し多く必要になる。このため、モータ振動などモータ特性に影響が出てしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、コンデンサラン型誘導電動機の実負荷状況を監視するための検出部および表示部の各素子を直列接続させ、進相コンデンサからの電流供給を最小限に抑えることができるコンデンサ電動機の負荷状態を表示する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、主巻線と、この主巻線と電気角が異なる位置に設けられた補助巻線と、この補助巻線に接続された進相コンデンサとを有するコンデンサ電動機の負荷状態を表示する装置において、前記コンデンサ電動機の負荷状態を表示する表示部として、互いに直列接続した抵抗と複数の発光ダイオードからなる直列回路を、前記進相コンデンサに接続し、電動機の負荷の増大に伴う前記進相コンデンサの電圧変化に応じて、前記発光ダイオードの点灯数を増加させるように切り換える負荷表示切り換え部を設けたことにある。
また、前記進相コンデンサの電圧を検出する検出部を設け、この検出部の検出電圧に基づいて前記発光ダイオードを順次点灯させるように前記負荷表示切り換え部を構成したことにある。
さらに、前記検出部を、抵抗、ツェナーダイオード、コンデンサの直列回路で構成したことにある。
またさらに、前記負荷表示切り換え部を、複数のダーリントン接続されたトランジスタ回路で構成し、前記トランジスタ回路を、ツェナーダイオードを通して流れるベース電圧によって作動させ、前記各発光ダイオードを順次点灯させるように構成したことにある。
【発明の効果】
【0007】
請求項1によれば、コンデンサラン型誘導電動機の負荷状況表示において、モータ特性に影響を与えることなく実現することができる。複数の発光ダイオードを直列に接続したので、消費電力を極力抑えることができる。
請求項2によれば、進相コンデンサの電圧は負荷が増えるごとに低くなり、検出部の電圧も負荷が増えるごとに低くなるので、負荷表示切り換え部で電流径路を切り換えることにより発光ダイオードの点灯数を調整することができる。
請求項3によれば、検出部を、抵抗、ツェナーダイオード、コンデンサの直列回路で構成したので簡単な回路構成で負荷電圧を検出することができる。また、前記ツェナーダイオードによって、前記コンデンサの耐圧電圧を小さくできるため、小さなコンデンサを使用でき、よって装置を小型化できる。
請求項4によれば、負荷表示切り換え部を、複数のダーリントン接続されたトランジスタ回路で構成し、前記トランジスタ回路を、ツェナーダイオードを通して流れるベース電圧によって作動させ、前記各発光ダイオードを順次点灯させるように構成したので、負荷変動に応じて発光ダイオードの点灯を自動で切り換えることができる。また、モータ特性に影響を与える検出部・切り換え部での消費電力を抑え、かつ発光ダイオードを確実に切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態によるコンデンサ電動機の負荷を表示する装置を示す回路図である。
【図2】本発明の他の実施の形態によるコンデンサ電動機の負荷を表示する装置を示す回路図である。
【図3】図2の動作説明をするための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図示の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1において、コンデンサラン型誘導電動機Mは、通常、主巻線Laと、この主巻線Laに対して電気角で90°ずらせて二相に配置した補助巻線Lbと、この補助巻線Lbに直列接続された進相コンデンサCoとで構成されている。このコンデンサラン型誘導電動機Mは、単相電源Qに接続されている。
【0010】
1は、進相コンデンサCoの両端に並列接続された検出表示装置である。検出表示装置1は、進相コンデンサCoに並列接続された負荷表示器2と、この負荷表示器2に並列接続された検出部3と、この検出部3の検出電圧に基づいて負荷表示器2を作動させる負荷表示切り換え部4と、負荷表示器2に直列接続されたアラーム出力部5とを備えている。
【0011】
前記負荷表示器2は、抵抗Rと、直列接続された複数の発光ダイオードLED〜LEDの直列回路で構成されている。この直列回路にアラーム出力部5が直列接続されている。前記検出部3は可変抵抗器R1と、この可変抵抗器R1に直列接続された抵抗器R2と、この抵抗器R2に直列接続されたツェナーダイオードZDと、該ツェナーダイオードZDに直列接続されたコンデンサCの直列回路で構成されている。進相コンデンサCoは一端を、ダイオードD1を介して前記抵抗Rと可変抵抗器R1に接続されており、進相コンデンサCoは他端を、アラーム出力部5とコンデンサCに接続されている。
【0012】
前記負荷表示切り換え部4は、それぞれトランジスタTRとトランジスタTRをダーリントン接続した複数のスイッチング回路S1〜S4で構成されている。スイッチング回路S1〜S4は、それぞれトランジスタTRのコレクタ側を各発光ダイオードLED〜LEDのカソード側に接続し、トランジスタTRのそれぞれエミッタ側を進相コンデンサCoの他端側に接続している。各発光ダイオードLED〜LEDは、例えば、赤色に発光し、進相コンデンサCoの電圧変化を知らせることができる。発光ダイオードLED〜LEDの色は、何色の発光ダイオードでも良く、発光ダイオードLED〜LEDの色は、発光ダイオードLED〜LEDの色をグリーンあるいは青にし、発光ダイオードLEDの色を黄色にし、発光ダイオードLEDの色を赤にすることもできる。アラーム出力部5は、フォトカプラを用いており、最終的に赤色に点灯、或いは点滅させて、または警報音とともに非常事態であることを知らせることができる。
【0013】
前記スイッチング回路S1〜S4は、スイッチング回路S1のトランジスタTRのコレクタ側を発光ダイオードLEDのカソード側に接続し、スイッチング回路S2のトランジスタTRのコレクタ側を発光ダイオードLEDのカソード側に接続し、スイッチング回路S3のトランジスタTRのコレクタ側を発光ダイオードLEDのカソード側に接続し、スイッチング回路S4のトランジスタTRのコレクタ側を発光ダイオードLEDのカソード側に接続している。スイッチング回路S1〜S4のトランジスタTRのエミッタ側は共通接続して進相コンデンサCoの他端に接続している。一方、スイッチング回路S1〜S4のトランジスタTRは、コレクタ側をトランジスタTRのコレクタ側に共通接続し、エミッタ側をトランジスタTRのベースにそれぞれ接続している。このスイッチング回路S1〜S4のトランジスタTRのエミッタ側にはそれぞれ抵抗RB0が接続されてトランジスタTRのエミッタ側に接続されている。また、スイッチング回路S1〜S4のトランジスタTRのベース側には抵抗RB1が接続され、ツェナーダイオードZDとコンデンサCの接続点に接続されている。前記ツェナーダイオードZDとコンデンサCの接続点と抵抗RB1との間と、トランジスタTRのエミッタ側との間には抵抗RB2がそれぞれ接続されている。
【0014】
上記実施の形態の動作を説明する。
進相コンデンサCoの電圧は負荷が増える毎に低くなり、検出部3の電圧も負荷が増える毎に低くなる。コンデンサラン型誘導電動機Mが無負荷で運転されている場合、検出部3で検出される電圧は高い電圧となり、負荷表示切り換え部4のスイッチング回路S1が作動し、負荷表示器2の発光ダイオードLEDが例えば赤色に点灯する。
【0015】
次に、負荷が増加し、検出部3の電圧が低くなると、負荷表示切換え部4のスイッチング回路S1のトランジスタTRとトランジスタTRはOFFとなり、スイッチング回路S2のトランジスタTRとトランジスタTRがONとなる。そして、負荷表示器2の発光ダイオードLEDが発光ダイオードLEDと共に点灯する。
【0016】
さらに、負荷が増加し、検出部3の電圧が低くなると、負荷表示切換え部4のスイッチング回路S2のトランジスタTRとトランジスタTRはOFFとなり、スイッチング回路S3のトランジスタTRとトランジスタTRがONとなる。そして、負荷表示器2の発光ダイオードLEDが発光ダイオードLEDおよび発光ダイオードLEDと共に点灯する。
【0017】
そして、更に負荷が増加し、検出部3の電圧が低くなると、負荷表示切換え部4のスイッチング回路S3のトランジスタTRとトランジスタTRはOFFとなり、スイッチング回路S4のトランジスタTRとトランジスタTRがONとなる。そして、負荷表示器2の発光ダイオードLEDが、発光ダイオードLED、発光ダイオードLEDおよび発光ダイオードLEDと共に点灯する。
【0018】
更に負荷が増え過負荷(拘束)状態になると、検出部3の電圧が極端に低くなり、スイッチング回路S4のトランジスタTRとトランジスタTRがOFFになると、負荷表示器2の総ての発光ダイオードLED〜LEDが点灯し、アラーム出力部5を作動させる。
【0019】
このように、上記実施の形態では、コンデンサラン型誘導電動機Mの負荷状態により進相コンデンサCoの電圧が変化することから、直列に接続した発光ダイオードLED〜LEDを、負荷に応じ外部からの切換えスイッチ等の操作ではなく、自動で切換わるようにしている。そして、検出部3の電圧の高低(=負荷の大小)にて負荷表示切換え部4で電流経路を切換えることにより5個の発光ダイオードLED〜LEDの点灯数を調整する。こうして、無負荷時には、1個の発光ダイオードLEDを点灯させ、負荷が増加する毎に発光ダイオードの点灯数を増加させ、拘束時には、総ての5個の発光ダイオードLED〜LEDを点灯させる表示内容となり、負荷の増加と共に発光ダイオードLED〜LEDの数が増加するので、負荷状態を5個の発光ダイオードLED〜LEDの点灯によって容易に知らせることができ、負荷状況の判別がし易い表示方法になっている。また、表示部を構成する発光ダイオードLED〜LEDを直列接続したので、アラーム出力部5のフォトカプラをそのまま直列に接続するだけで、外部電源も不要で拘束時の信号を取り出すことができる。
【0020】
図2および図3は、負荷検出回路の他の実施の形態で、図1と同一部分は同符号を付してその説明を省略して説明する。
この場合、前記スイッチング回路S1〜S4に接続された抵抗RB2は、省略し、スイッチング回路S1〜S3に接続された抵抗RB1と、ツェナーダイオードZDとコンデンサCの接続点との間には、ツェナーダイオードZD、ZD、ZDが接続されている。ツェナーダイオードZD、ZD、ZDは、ツェナーダイオードZDとコンデンサCの接続点が各ツェナーダイオードZD、ZD、ZDのツェナー電圧になると導通するように設定されている。例えば、ツェナーダイオードZDは、6.2Vで作動するように設定されており、ツェナーダイオードZDは、4.7Vで作動するように設定されており、ツェナーダイオードZDは、3.3Vで作動するように設定されている。
【0021】
そして、図3に示すように、コンデンサラン型誘導電動機Mの無負荷時には、進相コンデンサCoの電圧を検出する検出部3の電圧は高くなり、ツェナーダイオードZDが導通してスイッチング回路S1を構成するトランジスタTRとトランジスタTRが作動する。こうして図示矢印A1のように電流が流れ、発光ダイオードLEDがグリーン色に点灯する。
【0022】
次に、コンデンサラン型誘導電動機Mの50%負荷時には、進相コンデンサCoの電圧を検出する検出部3の電圧は低くなり、ツェナーダイオードZDが導通してスイッチング回路S2を構成するトランジスタTRとトランジスタTRが作動する。こうして図示矢印A2のように電流が流れ、発光ダイオードLEDがグリーン色に点灯する。
【0023】
そして、定格負荷時には、進相コンデンサCoの電圧を検出する検出部3の電圧は低くなり、ツェナーダイオードZDが導通してスイッチング回路S3を構成するトランジスタTRとトランジスタTRが作動し、発光ダイオードLEDがグリーン色に点灯する。
【0024】
また、120%負荷時には、進相コンデンサCoの電圧を検出する検出部3の電圧は低くなり、スイッチング回路S4を構成するトランジスタTRとトランジスタTRが作動し、発光ダイオードLEDが黄色に点灯する。
さらに、負荷が増大して拘束状態になると、発光ダイオードLED〜LEDが点灯して拘束状態であることを表示する。このとき、電流はA5のように流れ、発光ダイオードLEDは、赤色に点灯して警告を発することができる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、前記スイッチング回路S1〜S4には、トランジスタTRとトランジスタTRの回路を用いたがサイリスタ等の他の素子を用いることもできる。また、発光ダイオードLED〜LEDは、必ずしも5個に限定されるものではなく、検出・表示したい負荷状態に応じて増減させることができる。など、その他本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜、変更して実施することができるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0026】
1 検出表示装置
2 負荷表示器
3 検出部
4 負荷表示切り換え部
5 アラーム出力部
M コンデンサラン型誘導電動機
Co 進相コンデンサ
S1〜S4 スイッチング回路
LED〜LED 発光ダイオード
TR、TR トランジスタ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
主巻線と、この主巻線と電気角が異なる位置に設けられた補助巻線と、この補助巻線に接続された進相コンデンサとを有するコンデンサ電動機の負荷状態を表示する装置において、前記コンデンサ電動機の負荷状態を表示する表示部として、互いに直列接続した抵抗と複数の発光ダイオードからなる直列回路を、前記進相コンデンサに接続し、電動機の負荷の増大に伴う前記進相コンデンサの電圧変化に応じて、前記発光ダイオードの点灯数を増加させるように切り換える負荷表示切り換え部を設けたことを特徴とするコンデンサ電動機の負荷状態を表示する装置。
【請求項2】
前記進相コンデンサの電圧を検出する検出部を設け、この検出部の検出電圧に基づいて前記発光ダイオードを順次点灯させるように前記負荷表示切り換え部を構成した請求項1に記載のコンデンサ電動機の負荷を表示する装置。
【請求項3】
前記検出部を、抵抗、ツェナーダイオード、コンデンサの直列回路で構成した請求項2に記載のコンデンサ電動機の負荷を表示する装置。
【請求項4】
前記負荷表示切り換え部を、複数のダーリントン接続されたトランジスタ回路で構成し、前記トランジスタ回路を、ツェナーダイオードを通して流れるベース電圧によって作動させ、前記各発光ダイオードを順次点灯させるように構成した請求項3に記載のコンデンサ電動機の負荷を表示する装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−160498(P2011−160498A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17702(P2010−17702)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】