コンバインの油圧制御回路
【課題】油圧制御回路を改良することで、過負荷の刈り取り作業中であっても刈取装置の昇降制御をスムースに行えるようにする。
【解決手段】刈取装置(10)を昇降する刈取昇降シリンダ(11)に送る圧油を制御する刈取昇降バルブ(12)に、刈取昇降シリンダ(11)からの戻り圧油を止めるパイロット逆止バルブ(65)を設けたコンバインの油圧制御回路において、パイロット逆止バルブ(65)を強制的に開放して逆止状態を解除する手動刈取降下手段(A)を設ける。また、パイロット逆止バルブ(65)への圧油供給を停止した後に、手動刈取降下手段(A)によってパイロット逆止バルブ(65)を開放して逆止状態を解除する構成とする。また、手動刈取降下手段(A)を、手動操作でパイロット逆止バルブ(65)のパイロット逆止バルブ(65)を開放する方向に押すプッシュピン(84)とする。
【解決手段】刈取装置(10)を昇降する刈取昇降シリンダ(11)に送る圧油を制御する刈取昇降バルブ(12)に、刈取昇降シリンダ(11)からの戻り圧油を止めるパイロット逆止バルブ(65)を設けたコンバインの油圧制御回路において、パイロット逆止バルブ(65)を強制的に開放して逆止状態を解除する手動刈取降下手段(A)を設ける。また、パイロット逆止バルブ(65)への圧油供給を停止した後に、手動刈取降下手段(A)によってパイロット逆止バルブ(65)を開放して逆止状態を解除する構成とする。また、手動刈取降下手段(A)を、手動操作でパイロット逆止バルブ(65)のパイロット逆止バルブ(65)を開放する方向に押すプッシュピン(84)とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの油圧制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、機体の前部に設ける刈取装置を圃場面から浮かせたフローテイング状態で刈り取り作業を行うが、この刈り取り作業中に刈取装置を適宜に昇降させて刈取高さを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−34192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のコンバインの刈取装置の昇降は、操縦席の近傍に設ける刈取昇降レバーの操作で制御し、刈取装置の降下は、方向制御弁からの送油によってチェックバルブを開いてリンダの圧油をタンクに戻す制御をおこなうが、コンバインの油圧駆動部の負荷が増加してオイルの圧力が低下すると、チェックバルブを開く圧が低下して滑らかな刈取装置の降下が行えなくなることがある。
【0005】
そこで、本発明では、コンバインの油圧制御回路を改良することで、過負荷の刈り取り作業中であっても刈取装置の昇降制御をスムーズに行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、刈取装置(10)を昇降する刈取昇降シリンダ(11)に送る圧油を制御する刈取昇降バルブ(12)に、刈取昇降シリンダ(11)からの戻り圧油を止めるパイロット逆止バルブ(65)を設けたコンバインの油圧制御回路において、前記パイロット逆止バルブ(65)を強制的に開放して逆止状態を解除する手動刈取降下手段(A)を設けたコンバインの油圧制御回路とする。
【0007】
この構成で、コンバインの油圧機器が過負荷状態になってパイロット逆止バルブ(65)が開き難くなった場合には、手動刈取降下手段(A)によって、パイロット逆止バルブ(65)を開放して刈取装置(10)の降下をスムーズに行える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記パイロット逆止バルブ(65)への圧油供給を停止した後に、手動刈取降下手段(A)によってパイロット逆止バルブ(65)を開放して逆止状態を解除する構成とした請求項1に記載のコンバインの油圧制御回路とする。
【0009】
この構成で、パイロット逆止バルブ(65)への圧油供給が停止した状態で手動刈取降下手段(A)によってパイロット逆止バルブ(65)を開放するので、手動刈取降下手段(A)の操作荷重が軽くなる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記手動刈取降下手段(A)を、手動操作でパイロット逆止バルブ(65)のパイロット逆止バルブ(65)を開放する方向に押すプッシュピン(84)とした請求項1または請求項2に記載のコンバインの油圧制御回路とする。
【0011】
この構成で、刈取装置(10)の降下が不安定になる前に手動操作でプッシュピン(84)を押してパイロット逆止バルブ(65)を開放して刈取装置(10)の降下をスムーズに行え、手動刈取降下手段(A)の構成が簡単である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記刈取昇降バルブ(12)を操作する昇降操作レバー(24)によって、前記プッシュピン(84)を押すように連動した請求項3に記載のコンバインの油圧制御回路路とする。
【0013】
この構成で、昇降操作レバー(24)を操作するだけで通常の刈取装置(10)の昇降とコンバインの過負荷作業時の刈取装置(10)の降下を行えて操作が単純になる。
請求項5に記載の発明は、前記昇降操作レバー(24)を通常の昇降操作範囲よりも大きく操作することで手動刈取降下手段(A)を作動させる構成とした請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバインの油圧制御回路とする。
【0014】
この構成で、昇降操作レバー(24)を複雑に操作することなく、簡単な操作でコンバインの過負荷作業時の刈取装置(10)の降下が行える。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、手動刈取降下手段(A)によって、パイロット逆止バルブ(65)を開放して刈取装置(10)の降下をスムーズに行える。
請求項2に記載の発明によれば、上記請求項1に記載の発明の効果を奏するうえに、手動刈取降下手段(A)の操作荷重が軽くなる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、上記請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加え、手動刈取降下手段(A)の構成を簡素化することができる。
請求項4に記載の発明によれば、上記請求項3に記載の発明の効果に加え、昇降操作レバー(24)を操作するだけで通常の刈取装置(10)の昇降とコンバインの過負荷作業時の刈取装置(10)の降下を行え、操作が容易になる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、上記請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明の効果に加え、昇降操作レバー(24)の簡単な操作でコンバインの過負荷作業時の刈取装置(10)の降下が行える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コンバインの全体右側面図である。
【図2】コンバインのミッションケースの平断面図である。
【図3】ミッションケース内の一部ギヤ伝導部の平断面図である。
【図4】コンバインの油圧回路図である。
【図5】一部の拡大油圧回路図である。
【図6】別実施例の一部の拡大油圧回路図である。
【図7】手動可変減圧バルブの拡大平断面図である。
【図8】別実施例の刈取昇降バルブの含んだ油圧ブロックの平断面図である。
【図9】キャビンの右ドア斜視図である。
【図10】別実施例のキャビンの右ドア斜視図である。
【図11】別実施例のキャビン右ドアを内側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
図1はコンバインの全体構成を示すもので、車台13の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ14を張設した走行装置15を配設すると共に、該車台13上に、フィードチェン16に挟持して搬送供給される穀稈を脱穀処理した穀粒を選別回収して一時貯留するグレンタンク17と、このグレンタンク17に貯留された穀粒を機外へ排出する排穀オーガ17aを備えた脱穀装置18を載置配設し、この脱穀装置18の後端部に排藁処理装置18aを装架構成させる。
【0020】
脱穀装置18の前方に、前端側から未刈穀稈を分草する分草体10aと、分草した穀稈を引き起こす引起部10bと、引き起こした穀稈を刈り取る刈刃部10cと、刈り取った穀稈を掻き込むと共に搬送途上において扱深さを調節して前記フィードチェン16へ引き継ぎを行う供給調節搬送部10d等を有する刈取装置10を、刈取昇降シリンダ11により土壌面に対して昇降自在なるよう車台13の前端部へ懸架配設して構成させる。100は、刈取装置10を浮かせた状態に保持するバランス機構である
刈取装置10の一側にコンバインの操作制御を行う操作装置19と、オペレータが搭乗するための操作席20を設け、この操作席20の下方側にエンジン21を搭載し、後方側に前記グレンタンク17を配置し、前記の走行装置15や脱穀装置18や刈取装置10や操作装置19やエンジン21等によって車体4を構成させる。
【0021】
操作席20において、オペレータの操作により車体4の前後進の切替え及び主変速伝動を行う主変速レバー23と、左右側への傾倒操作により直進時の左右操向作用及び各種旋回モードによる旋回作用を行わせるパワステレバー24とを各々操作装置19の一側に配設して構成させる。
【0022】
前記走行装置15は車台13の前部側に走行用ミッションケース1を装架しており、このミッションケース1のギヤ連動機構は、図2に示す如く、該ケース1の上部側に該エンジン21によって駆動される油圧式無段変速装置1aを連動可能に接続し、この無段変速装置1aの出力側へ第1軸としての入力軸25を連動連結して構成させる。
【0023】
該入力軸25に軸止した入力ギヤ25aから、第2軸としての入力中間軸26に軸止した入力中間ギヤ27を介して、第3軸としての変速駆動軸28の一端部に軸止した入力駆動ギヤ29に噛合連動させると共に、同変速駆動軸28にスプライン等により三連の変速駆動ギヤ30を摺動並びに軸回転可能に装着する。
【0024】
該変速駆動ギヤ30に設けるシフター溝に嵌入した副変速シフター31を、シフターステー32の三段クリックストップにより左右摺動させて変速駆動ギヤ30を高速,中速,低速の各位置に位置決め可能に支承して構成させる。なお、該変速駆動軸28の適宜位置に、前記刈取装置10へ送信する回転センサとしての刈取センサギヤ33を軸止して構成させる。
【0025】
前記変速駆動軸28に摺動する変速駆動ギヤ30と、第4軸としての変速伝動軸34に軸止する高速駆動ギヤ35,中速駆動ギヤ36,低速駆動ギヤ37とを各々噛合連動させることによって高速,中速,低速に変速する副変速部を形成させると共に、該変速伝動軸34の中速駆動ギヤ36と低速駆動ギヤ37との間に変速伝動ギヤ38を軸止して構成させる。
【0026】
変速伝動軸34の変速伝動ギヤ38と、第5軸としての操向軸39のセンターに軸止する二連の操向センタギヤ2の主ギヤ(大径ギヤ)2aとを噛合連動させるが、この操向センタギヤ2は、図3に示す如く、内径側の左右両面にクラッチ爪2cを設けた主ギヤ2aの一方側のクラッチ爪2cとその取付ベースの外周部Zに副ギヤ(小径ギヤ)2bの内周部を嵌入固着させると共に、該操向センタギヤ2の両側に各々左右のサイドクラッチ3を左右摺動可能に遊転軸承して構成させる。
【0027】
左右のサイドクラッチ3は、各々該操向センタギヤ2側に設けたクラッチ爪3aを、クラッチギヤ3bの外端部に設けたシフター溝3cに嵌入した左右のクラッチシフタ(図示なし)の作用により、該操向センタギヤ2のクラッチ爪2cに各々噛合接続して動力伝動を入・切して、この動力伝動切により操向及び旋回作用を行わせることができると共に、左右のサイドクラッチ3の接続復帰を補助する左右のリターンスプリング(図示なし)を各々外端部に内装して構成させる。
【0028】
操向センタギヤ2の主ギヤ2aと、第6軸としてのクラッチ軸40に遊転軸承する長円筒メタル41の一端部に軸止した直進ギヤ42とを噛合連動させると共に、この長円筒メタル41の他端部に連動クラッチとしての直進用クラッチ43を固定して構成させる。
【0029】
該操向センタギヤ2の副ギヤ2bと、該長円筒メタル41の外周に重設して遊転軸承させる短円筒メタル44の一端部に軸止した旋回ギヤ45とを噛合連動させると共に、この短円筒メタル44の他端部に連動クラッチとしての旋回用クラッチ46を固定して構成させる。
【0030】
直進用クラッチ43と旋回用クラッチ46との間に、直進用クラッチ43を常時作動可能に押圧する押圧バネ47を配設し、該両クラッチ43,46の外枠リング48をクラッチ軸40の一方の軸端部に軸止して構成させる。
【0031】
クラッチ軸40の他方の軸端部に軸止した旋回駆動ギヤ49と、差動ギヤ装置においてデファレンシャルギヤ50を内装したデフケース51を回転駆動するデフケースギヤ52とを噛合連動させ、左右方向のデファレンシャルギヤ50を、第7軸としてのデフ支軸53に遊転軸承して構成させる。該左右方向のデファレンシャルギヤ50のボス部に各々設けた左右のデフ出力ギヤ54と、第8軸としての左右の中間車軸55に各々軸止した中間従動ギヤ56とを噛合連動させると同時に、この左右の中間従動ギヤ56に前記左右のサイドクラッチ3のクラッチギヤ3bを各々噛合連動して構成させる。
【0032】
中間車軸55の中間従動ギヤ56に隣接して各々軸止した中間駆動ギヤ57と、第9軸としての左右の車軸58の一端部に軸止した車軸ギヤ59とを各々噛合連動させると共に、該車軸58の外部他端部に前記走行クローラ14を駆動する左右の走行スプロケット60を各々軸止して構成させる。
【0033】
図4に示す如く、コンバインの油圧制御作用を行う油圧回路Hは、前記走行用ミッションケース1を作用させる走行系回路Rと、刈取装置10の昇降,脱穀装置18における排穀オーガ17aの昇降,車体4に対する走行クローラ14のローリング及びピッチング等を作用させる作業系回路Wとによって各々油圧駆動可能に接続構成させている。
【0034】
油タンク8から単一の油圧ポンプ5により供給される圧油を主リリーフバルブ61で設定圧力に保持して作業系回路Wに供給する。油圧ポンプ5の圧油は、旋回用クラッチシリンダ46aへの流れと分流バルブ80への流れの二方向に分岐する。
【0035】
旋回用クラッチシリンダ46aへの流れは、パワステレバー24で操作する手動可変減圧バルブ85とパワステレバー24の左右傾倒時に切り替わる電磁切替バルブ86を介して旋回用クラッチシリンダ46aへ流れる。
【0036】
分流バルブ80は、流量が少ない場合には固定絞り87側のみに圧油を流し、所定流量以上の場合にはリリーフバルブ81と電磁切替バルブ82で構成したアンロード回路Uへも余剰流を流すようになり、作業系回路Wへの圧油供給を増やして作業部の上昇速度を速くする。図6に示すように、分流バルブ80とアンロード回路Uの間に電磁バルブ83を設けてもよい。
【0037】
固定絞り87側の圧油は、サイドクラッチ3のプッシュシリンダ6を作動するサイドクラッチ電磁バルブ63a,63bに流している。
次に、作業系回路Wでは、主リリーフバルブ61を介して設定圧力(一次圧)に保持した圧油を、刈取装置10の昇降用として、パワステレバー24を経前に引くことで、4ポート3位置切替え電磁バルブによる刈取昇降バルブ12の切替え作用により、パイロット逆止バルブ65及び固定絞り66を経て刈取昇降シリンダ11へ送油可能に構成させる。
【0038】
脱穀装置18における排穀オーガ17aの昇降用として、4ポート3位置切替え電磁バルブによるオーガ昇降バルブ67の切替え作用により、パイロット逆止バルブ68及び固定絞り69を経てオーガ昇降シリンダ70へ送油可能に構成させる。
【0039】
車体4の水平制御作用を行う4ポート3位置切替え電磁バルブによる左右のローリング切替バルブ71の作用により、各パイロット逆止バルブ72及び逆止バルブ付き固定絞り73を経て左右のローリングシリンダ74へ各々送油可能に接続すると共に、4ポート3位置切替え電磁バルブによるピッチング切替バルブ75の作用により、パイロット逆止バルブ76及び固定絞り77を経てピッチングシリンダ78へ送油可能に接続して構成させる。
【0040】
図7は手動可変減圧バルブ85を示している。
バルブ本体88内のスプール89をロッドガイド93に挿入した作動ロッド91の端部との間に介装した圧縮バネ90で押圧している。ロッドガイド93に挿入した調整バネ92を作動ロッド91に外嵌した座金95と捻じ込んだナット94で受けて、作動ロッド91をバルブ本体88から突出するように保持している。
【0041】
従って、ロッドガイド93と端面と座金95の間隔Lがスプール89を動かすストロークとなって、ナット94の固定位置でストロークを調整する。
図8は、刈取昇降シリンダ11を昇降する刈取昇降バルブ12のバブル本体96を示し、パイロット逆止バルブ65を一体に組み込み、パワステレバー24を前後に倒して刈取昇降バルブ12のスプール作動ロッド12aをスライドして刈取昇降シリンダ11を伸縮させ、パワステレバー24を強く手前に引き操作してロック解除ピン97を押すとパイロットスプール98を介してパイロット逆止バルブ65の逆流停止を開放する。
【0042】
ロック解除ピン97は、スプール作動ロッド12aとリンク99で連動して、スプール作動ロッド12aを最下げ位置にしてリリーフ圧が作用しなくなってからロック解除ピン97を押してパイロット逆止バルブ65を開放する。
【0043】
なお、本実施例のように、一台の油圧ポンプ5で走行系回路Rと作業系回路Wを駆動している場合は、走行を停止した場合に、刈取装置10や排穀オーガ17aの上昇速度を低下させないために、走行系回路Rへの油路に電磁チェックバルブを設けて、走行停止時に該電磁チェックバルブで走行系回路Rへの給油を停止するようにすると良い。
【0044】
エンジン21からの動力を、油圧式無段変速装置1aによる主変速動力を入力軸25に入力し、この入力軸25の入力ギヤ25aから入力中間軸26の入力中間ギヤ27を経て変速駆動軸28の入力駆動ギヤ29に連動し、この変速駆動軸28の連動によって三連の変速駆動ギヤ30を副変速シフター31により摺動させ、高速駆動ギヤ35,中速駆動ギヤ36,低速駆動ギヤ37に各々連動させることにより高・中・低速による副変速駆動を行わせる。
【0045】
この副変速駆動による動力によって車体4を直進させるときは、変速伝動軸34の変速伝動ギヤ38から操向軸39の操向センタギヤ2の主ギヤ2aに連動し、この主ギヤ2a両面のクラッチ爪2cに左右のサイドクラッチ3のクラッチ爪3aを、左右のプッシュシリンダ6を同時に作用させて噛合接続させることにより、該左右のサイドクラッチ3のクラッチギヤ3bから左右の中間従動ギヤ56へ各々噛合連動し、左右の走行スプロケット60を同一回転により駆動し直進走行させる。
【0046】
一方、該操向軸39の操向センタギヤ2の主ギヤ2aから長円筒メタル41の直進ギヤ42に連動し、この直進ギヤ42から長円筒メタル41を介して押圧バネ47によって常時入りとしている直進用クラッチ43の作用によりクラッチ軸40を駆動させる。
【0047】
このクラッチ軸40の駆動により旋回駆動ギヤ49から差動ギヤ装置におけるデフケース51のデフケースギヤ52に連動すると共に、このデフケースギヤ52からデファレンシャルギヤ50の作用により差動連動される左右のデフ出力ギヤ54を、前記左右の中間従動ギヤ56の回転に対し各々同速回転となるよう組合せを行い直進走行可能に連動させる。この連動により該サイドクラッチ3の入切によるショックを緩和することができる。
【0048】
次に、車体4を旋回させるときは、該操向軸39の操向センタギヤ2の副ギヤ2bから短円筒メタル44の旋回ギヤ45へ連動し、この旋回ギヤ45から短円筒メタル44を介して旋回用クラッチ46を、比例減圧バルブ7にて調整した設定圧力の圧油により作用させることにより、該押圧バネ47の押圧を解除して直進用クラッチ43を切ると同時に旋回用クラッチ46を入りとし該クラッチ軸40を駆動させる。
【0049】
このクラッチ軸40の駆動により旋回駆動ギヤ49から差動ギヤ装置におけるデフケース51のデフケースギヤ52に連動すると共に、このデフケースギヤ52からデファレンシャルギヤ50の作用により差動連動される左右のデフ出力ギヤ54を駆動させる。
【0050】
この駆動により、例えば、左へ旋回するときは、前記パワステレバー24の左への傾動操作により、プッシュ切替バルブ63の切替え作用により左のプッシュシリンダ6を作動させて左のサイドクラッチ3を切ると同時に、旋回用クラッチ46を比例減圧バルブ7にて調整した設定圧力の圧油により作用させ、該クラッチ46の入りを半接続状態から完全接続状態まで変化させることにより、左のデフ出力ギヤ54により左の中間従動ギヤ56から中間駆動ギヤ57を経て左の車軸ギヤ59を、通常回転の右の車軸ギヤ59に対し減速変速させる。
【0051】
この右の車軸ギヤ59に対する左の車軸ギヤ59の減速変速により、緩やかに減速回転させるマイルド旋回,停止をさせるブレーキ旋回,1/4程度の逆回転をさせるスピン旋回の各旋回モードにより、車体4を停止させることなく無段で連続して円滑な旋回作用を実行させることができる。
【0052】
なお、直進走行時において、左右のサイドクラッチ3の切りに続いて各旋回モードの前段における操向微調整モードにより、該パワステレバー24の手動操作による左右の舵取りを行う操向作用を行わせることができる。
【0053】
図9は、操作装置19や操作席20を囲うキャビンを設けた場合のサイドドア101の構成を示している。このサイドドア101の上部前後にほぼ同一広さの前窓102と後窓103をヒンジで本体に取り付け、前窓102に前取手102aを設け、後窓103に後取手103aを設けて、後窓103を前窓102に重ねて前窓102の側方へ移動出来るようにする。前窓102と後窓103の上部には開き位置を保持する前ダンパ105と後ダンパ106をそれぞれ取り付けているが、後ダンパ106の保持力を前ダンパ105の保持力よりも強くして操作性を良くしている。
【0054】
なお、サイドドア101の外側で前窓102と後窓103を繋ぐ一個のダンパを設ける構成にすると制作コストを低くできる。
図10は、サイドドア101の別構成で、上部に前後一体のシール材104を張り付け、内側に補強部材を溶接し、その外側に前窓102と後窓103のヒンジを設ける。
【0055】
図11は、前窓102と後窓103を前後中央の枢支軸107にヒンジ108で取り付けてそれぞれ180°回動可能にし、該ヒンジ108の近くに板状のプレートとマジックからなるロック具109,110を設けた構成である。上下のヒンジ108の一方或いは両方と前取手102aと後取手103aにヒンジ108よりも弱いロック具110を設けて軽く開閉出来るようにする。
【0056】
前窓102と後窓103の一方にロック軸を設け、他方に該ロック軸に係合する板バネを設けて開口状態を保持するようにする。
キャビンの前天井に前のフロントガラス向けと後方のオペレータ向けに切り換え可能なエアーガイド板を設けて、適宜に冷却風の吹き出し方向を変更可能にする。
【符号の説明】
【0057】
A 手動刈取降下手段
9 昇降操作レバー
10 刈取装置
11 刈取昇降シリンダ
12 刈取昇降バルブ
65 パイロット逆止バルブ
84 プッシュピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの油圧制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、機体の前部に設ける刈取装置を圃場面から浮かせたフローテイング状態で刈り取り作業を行うが、この刈り取り作業中に刈取装置を適宜に昇降させて刈取高さを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−34192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のコンバインの刈取装置の昇降は、操縦席の近傍に設ける刈取昇降レバーの操作で制御し、刈取装置の降下は、方向制御弁からの送油によってチェックバルブを開いてリンダの圧油をタンクに戻す制御をおこなうが、コンバインの油圧駆動部の負荷が増加してオイルの圧力が低下すると、チェックバルブを開く圧が低下して滑らかな刈取装置の降下が行えなくなることがある。
【0005】
そこで、本発明では、コンバインの油圧制御回路を改良することで、過負荷の刈り取り作業中であっても刈取装置の昇降制御をスムーズに行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、刈取装置(10)を昇降する刈取昇降シリンダ(11)に送る圧油を制御する刈取昇降バルブ(12)に、刈取昇降シリンダ(11)からの戻り圧油を止めるパイロット逆止バルブ(65)を設けたコンバインの油圧制御回路において、前記パイロット逆止バルブ(65)を強制的に開放して逆止状態を解除する手動刈取降下手段(A)を設けたコンバインの油圧制御回路とする。
【0007】
この構成で、コンバインの油圧機器が過負荷状態になってパイロット逆止バルブ(65)が開き難くなった場合には、手動刈取降下手段(A)によって、パイロット逆止バルブ(65)を開放して刈取装置(10)の降下をスムーズに行える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記パイロット逆止バルブ(65)への圧油供給を停止した後に、手動刈取降下手段(A)によってパイロット逆止バルブ(65)を開放して逆止状態を解除する構成とした請求項1に記載のコンバインの油圧制御回路とする。
【0009】
この構成で、パイロット逆止バルブ(65)への圧油供給が停止した状態で手動刈取降下手段(A)によってパイロット逆止バルブ(65)を開放するので、手動刈取降下手段(A)の操作荷重が軽くなる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記手動刈取降下手段(A)を、手動操作でパイロット逆止バルブ(65)のパイロット逆止バルブ(65)を開放する方向に押すプッシュピン(84)とした請求項1または請求項2に記載のコンバインの油圧制御回路とする。
【0011】
この構成で、刈取装置(10)の降下が不安定になる前に手動操作でプッシュピン(84)を押してパイロット逆止バルブ(65)を開放して刈取装置(10)の降下をスムーズに行え、手動刈取降下手段(A)の構成が簡単である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記刈取昇降バルブ(12)を操作する昇降操作レバー(24)によって、前記プッシュピン(84)を押すように連動した請求項3に記載のコンバインの油圧制御回路路とする。
【0013】
この構成で、昇降操作レバー(24)を操作するだけで通常の刈取装置(10)の昇降とコンバインの過負荷作業時の刈取装置(10)の降下を行えて操作が単純になる。
請求項5に記載の発明は、前記昇降操作レバー(24)を通常の昇降操作範囲よりも大きく操作することで手動刈取降下手段(A)を作動させる構成とした請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバインの油圧制御回路とする。
【0014】
この構成で、昇降操作レバー(24)を複雑に操作することなく、簡単な操作でコンバインの過負荷作業時の刈取装置(10)の降下が行える。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、手動刈取降下手段(A)によって、パイロット逆止バルブ(65)を開放して刈取装置(10)の降下をスムーズに行える。
請求項2に記載の発明によれば、上記請求項1に記載の発明の効果を奏するうえに、手動刈取降下手段(A)の操作荷重が軽くなる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、上記請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加え、手動刈取降下手段(A)の構成を簡素化することができる。
請求項4に記載の発明によれば、上記請求項3に記載の発明の効果に加え、昇降操作レバー(24)を操作するだけで通常の刈取装置(10)の昇降とコンバインの過負荷作業時の刈取装置(10)の降下を行え、操作が容易になる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、上記請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明の効果に加え、昇降操作レバー(24)の簡単な操作でコンバインの過負荷作業時の刈取装置(10)の降下が行える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コンバインの全体右側面図である。
【図2】コンバインのミッションケースの平断面図である。
【図3】ミッションケース内の一部ギヤ伝導部の平断面図である。
【図4】コンバインの油圧回路図である。
【図5】一部の拡大油圧回路図である。
【図6】別実施例の一部の拡大油圧回路図である。
【図7】手動可変減圧バルブの拡大平断面図である。
【図8】別実施例の刈取昇降バルブの含んだ油圧ブロックの平断面図である。
【図9】キャビンの右ドア斜視図である。
【図10】別実施例のキャビンの右ドア斜視図である。
【図11】別実施例のキャビン右ドアを内側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
図1はコンバインの全体構成を示すもので、車台13の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ14を張設した走行装置15を配設すると共に、該車台13上に、フィードチェン16に挟持して搬送供給される穀稈を脱穀処理した穀粒を選別回収して一時貯留するグレンタンク17と、このグレンタンク17に貯留された穀粒を機外へ排出する排穀オーガ17aを備えた脱穀装置18を載置配設し、この脱穀装置18の後端部に排藁処理装置18aを装架構成させる。
【0020】
脱穀装置18の前方に、前端側から未刈穀稈を分草する分草体10aと、分草した穀稈を引き起こす引起部10bと、引き起こした穀稈を刈り取る刈刃部10cと、刈り取った穀稈を掻き込むと共に搬送途上において扱深さを調節して前記フィードチェン16へ引き継ぎを行う供給調節搬送部10d等を有する刈取装置10を、刈取昇降シリンダ11により土壌面に対して昇降自在なるよう車台13の前端部へ懸架配設して構成させる。100は、刈取装置10を浮かせた状態に保持するバランス機構である
刈取装置10の一側にコンバインの操作制御を行う操作装置19と、オペレータが搭乗するための操作席20を設け、この操作席20の下方側にエンジン21を搭載し、後方側に前記グレンタンク17を配置し、前記の走行装置15や脱穀装置18や刈取装置10や操作装置19やエンジン21等によって車体4を構成させる。
【0021】
操作席20において、オペレータの操作により車体4の前後進の切替え及び主変速伝動を行う主変速レバー23と、左右側への傾倒操作により直進時の左右操向作用及び各種旋回モードによる旋回作用を行わせるパワステレバー24とを各々操作装置19の一側に配設して構成させる。
【0022】
前記走行装置15は車台13の前部側に走行用ミッションケース1を装架しており、このミッションケース1のギヤ連動機構は、図2に示す如く、該ケース1の上部側に該エンジン21によって駆動される油圧式無段変速装置1aを連動可能に接続し、この無段変速装置1aの出力側へ第1軸としての入力軸25を連動連結して構成させる。
【0023】
該入力軸25に軸止した入力ギヤ25aから、第2軸としての入力中間軸26に軸止した入力中間ギヤ27を介して、第3軸としての変速駆動軸28の一端部に軸止した入力駆動ギヤ29に噛合連動させると共に、同変速駆動軸28にスプライン等により三連の変速駆動ギヤ30を摺動並びに軸回転可能に装着する。
【0024】
該変速駆動ギヤ30に設けるシフター溝に嵌入した副変速シフター31を、シフターステー32の三段クリックストップにより左右摺動させて変速駆動ギヤ30を高速,中速,低速の各位置に位置決め可能に支承して構成させる。なお、該変速駆動軸28の適宜位置に、前記刈取装置10へ送信する回転センサとしての刈取センサギヤ33を軸止して構成させる。
【0025】
前記変速駆動軸28に摺動する変速駆動ギヤ30と、第4軸としての変速伝動軸34に軸止する高速駆動ギヤ35,中速駆動ギヤ36,低速駆動ギヤ37とを各々噛合連動させることによって高速,中速,低速に変速する副変速部を形成させると共に、該変速伝動軸34の中速駆動ギヤ36と低速駆動ギヤ37との間に変速伝動ギヤ38を軸止して構成させる。
【0026】
変速伝動軸34の変速伝動ギヤ38と、第5軸としての操向軸39のセンターに軸止する二連の操向センタギヤ2の主ギヤ(大径ギヤ)2aとを噛合連動させるが、この操向センタギヤ2は、図3に示す如く、内径側の左右両面にクラッチ爪2cを設けた主ギヤ2aの一方側のクラッチ爪2cとその取付ベースの外周部Zに副ギヤ(小径ギヤ)2bの内周部を嵌入固着させると共に、該操向センタギヤ2の両側に各々左右のサイドクラッチ3を左右摺動可能に遊転軸承して構成させる。
【0027】
左右のサイドクラッチ3は、各々該操向センタギヤ2側に設けたクラッチ爪3aを、クラッチギヤ3bの外端部に設けたシフター溝3cに嵌入した左右のクラッチシフタ(図示なし)の作用により、該操向センタギヤ2のクラッチ爪2cに各々噛合接続して動力伝動を入・切して、この動力伝動切により操向及び旋回作用を行わせることができると共に、左右のサイドクラッチ3の接続復帰を補助する左右のリターンスプリング(図示なし)を各々外端部に内装して構成させる。
【0028】
操向センタギヤ2の主ギヤ2aと、第6軸としてのクラッチ軸40に遊転軸承する長円筒メタル41の一端部に軸止した直進ギヤ42とを噛合連動させると共に、この長円筒メタル41の他端部に連動クラッチとしての直進用クラッチ43を固定して構成させる。
【0029】
該操向センタギヤ2の副ギヤ2bと、該長円筒メタル41の外周に重設して遊転軸承させる短円筒メタル44の一端部に軸止した旋回ギヤ45とを噛合連動させると共に、この短円筒メタル44の他端部に連動クラッチとしての旋回用クラッチ46を固定して構成させる。
【0030】
直進用クラッチ43と旋回用クラッチ46との間に、直進用クラッチ43を常時作動可能に押圧する押圧バネ47を配設し、該両クラッチ43,46の外枠リング48をクラッチ軸40の一方の軸端部に軸止して構成させる。
【0031】
クラッチ軸40の他方の軸端部に軸止した旋回駆動ギヤ49と、差動ギヤ装置においてデファレンシャルギヤ50を内装したデフケース51を回転駆動するデフケースギヤ52とを噛合連動させ、左右方向のデファレンシャルギヤ50を、第7軸としてのデフ支軸53に遊転軸承して構成させる。該左右方向のデファレンシャルギヤ50のボス部に各々設けた左右のデフ出力ギヤ54と、第8軸としての左右の中間車軸55に各々軸止した中間従動ギヤ56とを噛合連動させると同時に、この左右の中間従動ギヤ56に前記左右のサイドクラッチ3のクラッチギヤ3bを各々噛合連動して構成させる。
【0032】
中間車軸55の中間従動ギヤ56に隣接して各々軸止した中間駆動ギヤ57と、第9軸としての左右の車軸58の一端部に軸止した車軸ギヤ59とを各々噛合連動させると共に、該車軸58の外部他端部に前記走行クローラ14を駆動する左右の走行スプロケット60を各々軸止して構成させる。
【0033】
図4に示す如く、コンバインの油圧制御作用を行う油圧回路Hは、前記走行用ミッションケース1を作用させる走行系回路Rと、刈取装置10の昇降,脱穀装置18における排穀オーガ17aの昇降,車体4に対する走行クローラ14のローリング及びピッチング等を作用させる作業系回路Wとによって各々油圧駆動可能に接続構成させている。
【0034】
油タンク8から単一の油圧ポンプ5により供給される圧油を主リリーフバルブ61で設定圧力に保持して作業系回路Wに供給する。油圧ポンプ5の圧油は、旋回用クラッチシリンダ46aへの流れと分流バルブ80への流れの二方向に分岐する。
【0035】
旋回用クラッチシリンダ46aへの流れは、パワステレバー24で操作する手動可変減圧バルブ85とパワステレバー24の左右傾倒時に切り替わる電磁切替バルブ86を介して旋回用クラッチシリンダ46aへ流れる。
【0036】
分流バルブ80は、流量が少ない場合には固定絞り87側のみに圧油を流し、所定流量以上の場合にはリリーフバルブ81と電磁切替バルブ82で構成したアンロード回路Uへも余剰流を流すようになり、作業系回路Wへの圧油供給を増やして作業部の上昇速度を速くする。図6に示すように、分流バルブ80とアンロード回路Uの間に電磁バルブ83を設けてもよい。
【0037】
固定絞り87側の圧油は、サイドクラッチ3のプッシュシリンダ6を作動するサイドクラッチ電磁バルブ63a,63bに流している。
次に、作業系回路Wでは、主リリーフバルブ61を介して設定圧力(一次圧)に保持した圧油を、刈取装置10の昇降用として、パワステレバー24を経前に引くことで、4ポート3位置切替え電磁バルブによる刈取昇降バルブ12の切替え作用により、パイロット逆止バルブ65及び固定絞り66を経て刈取昇降シリンダ11へ送油可能に構成させる。
【0038】
脱穀装置18における排穀オーガ17aの昇降用として、4ポート3位置切替え電磁バルブによるオーガ昇降バルブ67の切替え作用により、パイロット逆止バルブ68及び固定絞り69を経てオーガ昇降シリンダ70へ送油可能に構成させる。
【0039】
車体4の水平制御作用を行う4ポート3位置切替え電磁バルブによる左右のローリング切替バルブ71の作用により、各パイロット逆止バルブ72及び逆止バルブ付き固定絞り73を経て左右のローリングシリンダ74へ各々送油可能に接続すると共に、4ポート3位置切替え電磁バルブによるピッチング切替バルブ75の作用により、パイロット逆止バルブ76及び固定絞り77を経てピッチングシリンダ78へ送油可能に接続して構成させる。
【0040】
図7は手動可変減圧バルブ85を示している。
バルブ本体88内のスプール89をロッドガイド93に挿入した作動ロッド91の端部との間に介装した圧縮バネ90で押圧している。ロッドガイド93に挿入した調整バネ92を作動ロッド91に外嵌した座金95と捻じ込んだナット94で受けて、作動ロッド91をバルブ本体88から突出するように保持している。
【0041】
従って、ロッドガイド93と端面と座金95の間隔Lがスプール89を動かすストロークとなって、ナット94の固定位置でストロークを調整する。
図8は、刈取昇降シリンダ11を昇降する刈取昇降バルブ12のバブル本体96を示し、パイロット逆止バルブ65を一体に組み込み、パワステレバー24を前後に倒して刈取昇降バルブ12のスプール作動ロッド12aをスライドして刈取昇降シリンダ11を伸縮させ、パワステレバー24を強く手前に引き操作してロック解除ピン97を押すとパイロットスプール98を介してパイロット逆止バルブ65の逆流停止を開放する。
【0042】
ロック解除ピン97は、スプール作動ロッド12aとリンク99で連動して、スプール作動ロッド12aを最下げ位置にしてリリーフ圧が作用しなくなってからロック解除ピン97を押してパイロット逆止バルブ65を開放する。
【0043】
なお、本実施例のように、一台の油圧ポンプ5で走行系回路Rと作業系回路Wを駆動している場合は、走行を停止した場合に、刈取装置10や排穀オーガ17aの上昇速度を低下させないために、走行系回路Rへの油路に電磁チェックバルブを設けて、走行停止時に該電磁チェックバルブで走行系回路Rへの給油を停止するようにすると良い。
【0044】
エンジン21からの動力を、油圧式無段変速装置1aによる主変速動力を入力軸25に入力し、この入力軸25の入力ギヤ25aから入力中間軸26の入力中間ギヤ27を経て変速駆動軸28の入力駆動ギヤ29に連動し、この変速駆動軸28の連動によって三連の変速駆動ギヤ30を副変速シフター31により摺動させ、高速駆動ギヤ35,中速駆動ギヤ36,低速駆動ギヤ37に各々連動させることにより高・中・低速による副変速駆動を行わせる。
【0045】
この副変速駆動による動力によって車体4を直進させるときは、変速伝動軸34の変速伝動ギヤ38から操向軸39の操向センタギヤ2の主ギヤ2aに連動し、この主ギヤ2a両面のクラッチ爪2cに左右のサイドクラッチ3のクラッチ爪3aを、左右のプッシュシリンダ6を同時に作用させて噛合接続させることにより、該左右のサイドクラッチ3のクラッチギヤ3bから左右の中間従動ギヤ56へ各々噛合連動し、左右の走行スプロケット60を同一回転により駆動し直進走行させる。
【0046】
一方、該操向軸39の操向センタギヤ2の主ギヤ2aから長円筒メタル41の直進ギヤ42に連動し、この直進ギヤ42から長円筒メタル41を介して押圧バネ47によって常時入りとしている直進用クラッチ43の作用によりクラッチ軸40を駆動させる。
【0047】
このクラッチ軸40の駆動により旋回駆動ギヤ49から差動ギヤ装置におけるデフケース51のデフケースギヤ52に連動すると共に、このデフケースギヤ52からデファレンシャルギヤ50の作用により差動連動される左右のデフ出力ギヤ54を、前記左右の中間従動ギヤ56の回転に対し各々同速回転となるよう組合せを行い直進走行可能に連動させる。この連動により該サイドクラッチ3の入切によるショックを緩和することができる。
【0048】
次に、車体4を旋回させるときは、該操向軸39の操向センタギヤ2の副ギヤ2bから短円筒メタル44の旋回ギヤ45へ連動し、この旋回ギヤ45から短円筒メタル44を介して旋回用クラッチ46を、比例減圧バルブ7にて調整した設定圧力の圧油により作用させることにより、該押圧バネ47の押圧を解除して直進用クラッチ43を切ると同時に旋回用クラッチ46を入りとし該クラッチ軸40を駆動させる。
【0049】
このクラッチ軸40の駆動により旋回駆動ギヤ49から差動ギヤ装置におけるデフケース51のデフケースギヤ52に連動すると共に、このデフケースギヤ52からデファレンシャルギヤ50の作用により差動連動される左右のデフ出力ギヤ54を駆動させる。
【0050】
この駆動により、例えば、左へ旋回するときは、前記パワステレバー24の左への傾動操作により、プッシュ切替バルブ63の切替え作用により左のプッシュシリンダ6を作動させて左のサイドクラッチ3を切ると同時に、旋回用クラッチ46を比例減圧バルブ7にて調整した設定圧力の圧油により作用させ、該クラッチ46の入りを半接続状態から完全接続状態まで変化させることにより、左のデフ出力ギヤ54により左の中間従動ギヤ56から中間駆動ギヤ57を経て左の車軸ギヤ59を、通常回転の右の車軸ギヤ59に対し減速変速させる。
【0051】
この右の車軸ギヤ59に対する左の車軸ギヤ59の減速変速により、緩やかに減速回転させるマイルド旋回,停止をさせるブレーキ旋回,1/4程度の逆回転をさせるスピン旋回の各旋回モードにより、車体4を停止させることなく無段で連続して円滑な旋回作用を実行させることができる。
【0052】
なお、直進走行時において、左右のサイドクラッチ3の切りに続いて各旋回モードの前段における操向微調整モードにより、該パワステレバー24の手動操作による左右の舵取りを行う操向作用を行わせることができる。
【0053】
図9は、操作装置19や操作席20を囲うキャビンを設けた場合のサイドドア101の構成を示している。このサイドドア101の上部前後にほぼ同一広さの前窓102と後窓103をヒンジで本体に取り付け、前窓102に前取手102aを設け、後窓103に後取手103aを設けて、後窓103を前窓102に重ねて前窓102の側方へ移動出来るようにする。前窓102と後窓103の上部には開き位置を保持する前ダンパ105と後ダンパ106をそれぞれ取り付けているが、後ダンパ106の保持力を前ダンパ105の保持力よりも強くして操作性を良くしている。
【0054】
なお、サイドドア101の外側で前窓102と後窓103を繋ぐ一個のダンパを設ける構成にすると制作コストを低くできる。
図10は、サイドドア101の別構成で、上部に前後一体のシール材104を張り付け、内側に補強部材を溶接し、その外側に前窓102と後窓103のヒンジを設ける。
【0055】
図11は、前窓102と後窓103を前後中央の枢支軸107にヒンジ108で取り付けてそれぞれ180°回動可能にし、該ヒンジ108の近くに板状のプレートとマジックからなるロック具109,110を設けた構成である。上下のヒンジ108の一方或いは両方と前取手102aと後取手103aにヒンジ108よりも弱いロック具110を設けて軽く開閉出来るようにする。
【0056】
前窓102と後窓103の一方にロック軸を設け、他方に該ロック軸に係合する板バネを設けて開口状態を保持するようにする。
キャビンの前天井に前のフロントガラス向けと後方のオペレータ向けに切り換え可能なエアーガイド板を設けて、適宜に冷却風の吹き出し方向を変更可能にする。
【符号の説明】
【0057】
A 手動刈取降下手段
9 昇降操作レバー
10 刈取装置
11 刈取昇降シリンダ
12 刈取昇降バルブ
65 パイロット逆止バルブ
84 プッシュピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取装置(10)を昇降する刈取昇降シリンダ(11)に送る圧油を制御する刈取昇降バルブ(12)に、刈取昇降シリンダ(11)からの戻り圧油を止めるパイロット逆止バルブ(65)を設けたコンバインの油圧制御回路において、前記パイロット逆止バルブ(65)を強制的に開放して逆止状態を解除する手動刈取降下手段(A)を設けたコンバインの油圧制御回路。
【請求項2】
前記パイロット逆止バルブ(65)への圧油供給を停止した後に、手動刈取降下手段(A)によってパイロット逆止バルブ(65)を開放して逆止状態を解除する構成とした請求項1に記載のコンバインの油圧制御回路。
【請求項3】
前記手動刈取降下手段(A)を、手動操作でパイロット逆止バルブ(65)のパイロット逆止バルブ(65)を開放する方向に押すプッシュピン(84)とした請求項1または請求項2に記載のコンバインの油圧制御回路。
【請求項4】
前記刈取昇降バルブ(12)を操作する昇降操作レバー(24)によって、前記プッシュピン(84)を押すように連動した請求項3に記載のコンバインの油圧制御回路路。
【請求項5】
前記昇降操作レバー(24)を通常の昇降操作範囲よりも大きく操作することで手動刈取降下手段(A)を作動させる構成とした請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバインの油圧制御回路。
【請求項1】
刈取装置(10)を昇降する刈取昇降シリンダ(11)に送る圧油を制御する刈取昇降バルブ(12)に、刈取昇降シリンダ(11)からの戻り圧油を止めるパイロット逆止バルブ(65)を設けたコンバインの油圧制御回路において、前記パイロット逆止バルブ(65)を強制的に開放して逆止状態を解除する手動刈取降下手段(A)を設けたコンバインの油圧制御回路。
【請求項2】
前記パイロット逆止バルブ(65)への圧油供給を停止した後に、手動刈取降下手段(A)によってパイロット逆止バルブ(65)を開放して逆止状態を解除する構成とした請求項1に記載のコンバインの油圧制御回路。
【請求項3】
前記手動刈取降下手段(A)を、手動操作でパイロット逆止バルブ(65)のパイロット逆止バルブ(65)を開放する方向に押すプッシュピン(84)とした請求項1または請求項2に記載のコンバインの油圧制御回路。
【請求項4】
前記刈取昇降バルブ(12)を操作する昇降操作レバー(24)によって、前記プッシュピン(84)を押すように連動した請求項3に記載のコンバインの油圧制御回路路。
【請求項5】
前記昇降操作レバー(24)を通常の昇降操作範囲よりも大きく操作することで手動刈取降下手段(A)を作動させる構成とした請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバインの油圧制御回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−48602(P2013−48602A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189272(P2011−189272)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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