説明

コンバインの結束装置

【課題】煩雑な作業を必要とせずに、簡単な構造で、結束される排藁量を調節および排藁の結束を行うか否かの調節ができるコンバインの結束装置の提供。
【解決手段】排藁を集束空間S内に掻き込むパッカー51と、集束空間S内に所定量の排藁を保持するドア52と、所定量の排藁に結束紐54aを巻き付けるニードル53と、排藁に巻き付けた結束紐54aを結節する結節部55と、結束された排藁を放出する放出アーム56とを備える結束装置30において、前記ドア52の回動基部52aを筒状に構成し、該回動基部52aの内周断面形状を多角形または複数の溝を有すように形成し、該回動基部52aが外嵌するドア軸152の外周の一部を前記回動基部52aの内周断面形状に合わせた多角形または複数の突起型に形成し、ドア52とドア軸152の嵌合角度を変更可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの技術に関する。より詳細には、コンバインの後部に設けられ、排藁を結束紐により結束した後に排出する結束装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの脱穀装置により脱穀された後の排藁を、結束紐により結束する結束装置の技術は公知となっている。その結束装置の一つには、脱穀装置から搬送されてきた排藁を横倒れ姿勢で収容する結束空間の上側に結節部および放出アーム等を備えるとともに、前記結束空間の下側にパッカーおよび結束紐供給用のニードル等を備え、かつ、前記結束空間の出口側に排藁の収容圧感知用のドアを備えたものがある。
【0003】
一般的に、結束装置は、排藁切断装置の後方に配置される。前記排藁切断装置は、排藁を所定の長さに切断して排出する装置である。排藁は、切断切替カバーが開閉操作されることにより、前記結束装置または前記排藁切断装置のいずれか一方に供給される。排藁が前記結束装置に供給された場合は、当該排藁は結束された後に排出される。また、排藁が前記排藁切断装置に供給された場合は、当該排藁は所定の長さに切断された後に排出される。
【0004】
結束される排藁量を調節するのは、結束装置のドアの位置変更(角度変更)により、ドアの前側の空間を調節し、その空間に保持する排藁量を調節するものが一般的である。
ドアの前側空間を調節するには、ボルトおよびナット等の固定具によって取付けられたドアをドア軸より取り外す必要がある。つまり、ドアをドア軸に取付ける固定具は、工具等で一旦取り外し、ドアの角度変更を行い、再びドア軸に取付けることで、ドアの角度変更が行われ、空間に溜る排藁量を調節している。
【0005】
また、特許文献1に示すように、ノッタケース(結束ミッションケース)の一部に、上下に移動可能なスライド板を設け、該スライド板の内側に、ドア前面に集積する排稈結束束によるドア圧に対抗してドアを復帰せしめる付勢部材が配置される。その付勢部材の付勢力を前記スライド板の上下に移動により調節し、ドア圧の調節を行い、希望の排藁量の結束束を得ることができるコンバインの結束装置の技術は公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−150830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の如く結束装置の部品を取り外す(または配置を変更する)構成では、取り外し等の作業が煩雑であり、作業効率の低下を招く点で不利であった。そして、取り外した部品を紛失するおそれや、取り外した部品や結束装置を保管するためのスペースを確保する必要がある点で不利であった。
また、ドア圧の調節を行う装置を特別に設けた場合、部材点数が多くなり、結束機の構造が複雑になる点で不利であった。
【0008】
本発明は上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、煩雑な作業を必要とせずに、簡単な構造で、結束される排藁量を調節および排藁の結束を行うか否かの調節ができるコンバインの結束装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、排藁を集束空間内に掻き込むパッカーと、集束空間内に所定量の排藁を保持するドアと、所定量の排藁に結束紐を巻き付けるニードルと、排藁に巻き付けた結束紐を結節する結節部と、結束された排藁を放出する放出アームとを備える結束装置において、前記ドアの回動基部を筒状に構成し、該回動基部の内周断面形状を多角形に形成し、該回動基部が外嵌するドア軸の外周の一部を前記回動基部の内周断面形状に合わせた多角形に形成し、ドアとドア軸の嵌合角度を変更可能に構成したものである。
【0011】
請求項2においては、排藁を集束空間内に掻き込むパッカーと、集束空間内に所定量の排藁を保持するドアと、所定量の排藁に結束紐を巻き付けるニードルと、排藁に巻き付けた結束紐を結節する結節部と、結束された排藁を放出する放出アームとを備える結束装置において、前記ドアの回動基部を筒状に構成し、該回動基部の内周に軸方向の溝を複数形成し、該回動基部が外嵌するドア軸の外周の一部を前記回動基部の内周断面形状に合わせた突起型に形成し、ドアとドア軸の嵌合角度を変更可能に構成したものである。
【0012】
請求項3においては、前記ドアの回動基部において、内周軸方向一側に多角形または溝に形成した嵌合部を形成し、他側に該嵌合部よりも大径のバネ受部を形成するとともに、前記ドア軸上の一側に前記嵌合部と嵌合する駆動部を形成し、他側に径を小さくしたバネ外嵌部を形成し、前記バネ受部とバネ外嵌部内に付勢部材を内装し、ドアを嵌合方向に付勢する構成としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1の如く構成したので、ドアをドア軸に対して摺動させて嵌合を解除することにより容易に任意の角度に変更してセットできるようになり、結束する排藁量を変更できる。また、ドアを下方へ回動することにより、排藁を垂れ流しの状態にすることが可能となり、作業形態を容易に変更できる。また、ドアの角度調節を行うための構造も簡単にできる。
【0015】
請求項2の如く構成したので、ドアをドア軸に対して摺動させて嵌合を解除することにより容易に任意の角度に変更してセットできるようになり、結束する排藁量を変更できる。また、ドアを下方へ回動することにより、排藁を垂れ流しの状態にすることが可能となり、作業形態を容易に変更できる。また、ドアの角度調節を行うための構造も簡単にできる。
【0016】
請求項3の如く構成したので、工具等を用いること無く、ドアを回動させて角度調節ができる。これによって、多数の結束装置の部品の取り外しや、ドア自体の取り外し等の煩雑な作業を行うことなく、簡単な作業を行うだけで結束する排藁量が変更可能となり、また、部品の紛失等を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るコンバインの全体構成を示す側面図。
【図2】排藁処理装置の構成を示す平面模式図。
【図3】同じく側面図。
【図4】結束装置の構成を示す側面図。
【図5】ドア軸に取付けられたドアの状態を示す部分断面背面図。
【図6】図5における回動基部および駆動部の各種断面形状を示すB−B線端面図。
【図7】本発明に係るドアの角度調節を示した図、(a)排藁束が小束の場合、(b)排藁束が大束の場合、(c)排藁が結束されない場合。
【図8】(a)嵌合部と駆動部が嵌合した状態を示す図、(b)嵌合部が、駆動部から外れた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係るコンバインの実施の一形態であるコンバイン1について、図面を参照して説明する。
なお、説明上、図中の矢印Aの方向を「前方」と定義し、この前方に向かって左右及び後方を決定する。
【0019】
まず、図1および図2を用いてコンバイン1の概略構成について説明する。
コンバイン1は穀稈の収穫作業、より詳細には、圃場を走行しつつ圃場から穀稈を刈取り、穀粒を脱穀する。本実施形態のコンバイン1は、刈取られた穀稈のうち、穀粒の付いた穂先部のみを脱穀する自脱型のコンバインである。
コンバイン1は、主として刈取装置2、脱穀装置3、選別装置4、排藁処理装置5等を備える。
【0020】
刈取装置2は、コンバイン1の前部に配置され、主として引起し装置、下部搬送装置、穂先搬送装置、刈刃等を備える。刈取装置2は、圃場から穀稈を刈取り、その穀稈を脱穀装置3へと渡す。
【0021】
脱穀装置3は、刈取装置2の後方に配置され、主としてフィードチェーン3a、扱胴3b等を備える。脱穀装置3は、フィードチェーン3aにより、刈取装置2から受け取った穀稈を横に倒した状態で前方から後方へと搬送しながら、扱胴3bの回転により、穀稈から穀粒を分離(脱穀)する。
【0022】
選別装置4は、脱穀装置3の下方に配置され、脱穀装置3によって脱穀された穀粒に混じった藁屑や塵挨等を、風力選別や揺動選別により分離する。
【0023】
排藁処理装置5は、脱穀装置3の後方に配置され、フィードチェーン3aから受け取った脱穀された穀稈(以下、単に「排藁」と記す)を排藁搬送チェーン5aにより後方へ搬送し、所定の処理を施す。
【0024】
選別装置4により藁屑等と分離された精粒は、揚穀筒6を経て脱穀装置3の右方に設けられたグレンタンク7に搬入され、貯溜される。グレンタンク7には排出オーガ8が連通接続される。排出オーガ8を作動することにより、グレンタンク7に貯溜された精粒を、排出オーガ8を経てグレンタンク7の外部に搬出することが可能である。
グレンタンク7の前方には、オペレータがコンバイン1を運転するための運転部9が配置される。
【0025】
以下では、図2から図4を用いて排藁処理装置5の構成について説明する。排藁処理装置5は、主として排藁切断装置20、結束装置30、排藁放出装置70等を備える。
【0026】
排藁切断装置20は、排藁搬送チェーン5aにより搬送されてきた排藁を所定の長さに切断する。図2または図3に示すように、排藁切断装置20は、主として高速回転軸21、高速回転刃22、低速回転軸23、低速回転刃24、切断切替カバー25等を備える。
【0027】
高速回転軸21および低速回転軸23は、排藁搬送チェーン5aの終端部の下方に配置される。高速回転軸21および低速回転軸23は互いに平行に左右方向に横架される。高速回転軸21および低速回転軸23上には、それぞれ円板状の高速回転刃22・22・・・および低速回転刃24・24・・・が互いに交互に並ぶように固設される。
【0028】
高速回転軸21の左端部には、高速ギア21a、入力プーリ21b、出力プーリ21cを備える。入力プーリ21bには、コンバイン1のエンジンからの動力を伝達する入力ベルト21dが巻回される。低速回転軸23の左端部には、低速ギア23aが備えられ、高速ギア21aと歯合される。
高速回転軸21は、入力ベルト21dおよび入力プーリ21bを介して伝達されるコンバイン1のエンジンからの動力により、左側面視で反時計回りに回転される。低速回転軸23は、高速ギア21aおよび低速ギア23aを介して伝達される動力により、左側面視で時計回りに回転される。また、高速回転軸21は低速回転軸23よりも高速で回転されるよう構成される。
【0029】
切断切替カバー25は、高速回転刃22・22・・・および低速回転刃24・24・・・を上方から覆うように配置される。切断切替カバー25の後部は、左右方向に枢支された回動支点軸25aに固設される。
【0030】
回動支点軸25aは、図示しないアームやワイヤー等を介して、運転部9付近に設けた切替レバーと連結される。該切替レバーを操作することにより、切断切替カバー25を開閉することができる。切断切替カバー25が開放された場合、排藁は、排藁搬送チェーン5aとその下方に配置される図示せぬ挟扼杆とともに、それらの下流端まで搬送され、切断切替カバー25の下方へと投入される。また、切断切替カバー25が閉鎖された場合、排藁搬送チェーン5aにより搬送される排藁は、切断切替カバー25上部を経て、結束装置30へと搬入される。
切断切替カバー25が開放され、切断切替カバー25の下方へと搬入された排藁は、回転する高速回転刃22および低速回転刃24により所定の長さに切断され、排藁切断装置20の下方から圃場へと排出される。
【0031】
排藁切断装置20の切断切替カバー25が閉鎖されている、つまり、高速回転刃22・22・・・および低速回転刃24・24・・・を切断切替カバー25が上方から覆っている場合、排藁搬送チェーン5aにより搬送される排藁を、切断切替カバー25の上方を経て結束装置30の株元揃部60へと搬入することができる。
【0032】
以下、結束装置30について図2から図4を用いて説明する。
結束装置30は、排藁搬送チェーン5aにより搬送されてきた排藁を結束し、図2または図3に示すように、主として結束装置ケース31、動力伝達ケース32、結束駆動伝達部、株元揃部60、結束部50等を備える。株元揃部60および結束部50は、結束装置ケース31内に配置される。
【0033】
結束装置ケース31は、結束装置30全体を覆い、排藁切断装置20の後方に配置される。結束装置ケース31の左側部には、動力伝達ケース32が配置され、後述する結束駆動伝達部の一部等の動力伝達部が収容される。
【0034】
結束駆動伝達部は、株元揃部60や結束部50等に動力を伝達し、主として結束入力軸41、結束ミッションケース42、伝動ケース43・45、チェーンケース44等を備そなえる。
【0035】
結束入力軸41は左右方向に枢支され、その左端部は動力伝達ケース32内に延設される。結束入力軸41の左端部には、結束入力プーリ41aが配置される。結束入力プーリ41aと出力プーリ21cとの間に巻回される結束入力ベルト41bにより、コンバイン1のエンジンからの動力が結束入力軸41へと伝達される。
結束入力軸41の右端は、結束装置30の左右略中央に配置された結束ミッションケース42の左側に接続される。結束ミッションケース42の左側には、図2または図3に示すように、後述する結束部50(パッカー51、ニードル53、ドア52等)が配置される。結束ミッションケース42の右側には、左右方向を長手とする伝動ケース43の左端が固設される。該伝動ケース43の右端には、チェーンケース44が固設される。チェーンケース44の左上部には、伝動ケース45の一端が前記伝動ケース43と平行に固設される。伝動ケース45の他端は、前記結束ミッションケース42の上方に配置された結節部55や放出アーム56等が接続される。よって、各駆動部材を駆動することが可能となっている。
この結束ミッションケース42、結束部50、結節部55で囲まれた空間を集束空間Sとする(図4参照)。
【0036】
株元揃部60は、排藁搬送チェーン5aにより搬送された排藁を左右方向に向けたまま(横倒れ姿勢で)その株元端を揃える箇所であり、主として株元載台61、株元揃え板62、回動支点軸63等を備える。
【0037】
株元載台61は、前記集束空間Sの左方に配置され、排藁搬送チェーン5aにより搬送された排藁の株元を載せる台である。
株元載台61の後部上には、回動支点軸63が立設され、該回動支点軸63には、株元揃え板62の後端が枢支される。株元揃え板62の前端は、排藁切断装置20の後部付近まで延出される。株元揃え板62は、結束入力軸41により伝達される動力によって、図示しないリンク機構を介して回動支点軸63を中心に、左右方向に揺動駆動される。
よって、株元揃部60へと搬入された排藁は、揺動駆動される株元揃え板62によって排藁の株元端が叩かれて揃えられる。
【0038】
結束部50は、株元揃部60により株元が揃えられた排藁を所定量ずつ結束するものであり、図2から図4のいずれかに示すように、主としてパッカー51、ドア52、ニードル53、結束紐ケース54、結節部55、放出アーム56、ガイドプレート57等を備える。
【0039】
パッカー51は、結束部50の下部に配置され、前後往復回動するように作動され、排藁搬送チェーン5aにより搬送されてきた排藁を、一時的に収容するための集束空間Sに掻き込む。
【0040】
ドア52は、前記集束空間Sの出口(前記集束空間Sの後部)を閉鎖するように配置され、該ドア52の回動軸である後述するドア軸152がクラッチと連結されている。こうして、搬送されてきた排藁はドア52によって集束空間S内に収容するように受け止められ、所定量の排藁が前記集束空間Sに収容されると、ドア52は、排藁の収容圧を受け後方へと回動し、前記集束空間Sの出口を開放する。該ドア52の後方回動に伴って、図示しないクラッチが起動し、ニードル53が上方へと回動される。詳細については、後述する。
【0041】
ニードル53は、排藁を結束するための部材であって、パッカー51の近傍に配置される。ニードル53の先端は、結束紐54aを係止して収容された排藁の下方から上方へと回動移動し、結節部55の下部に配置された紐案内板55cのスリットを通過し、紐ホルダ55aに先端を保持される結束紐ケース54より供給される結束紐54aを、集束空間Sの排藁に前方から巻き付けながら結節部55へと供給する。
そして、ニードル53によって結束紐54aの供給に同調し、結節ビル55bによる結束紐54aの結節、紐ホルダ55aによる結束紐54aの切断および切断端の保持等が行われる。
【0042】
結束紐54aにより結束された排藁は、放出アーム56により前記集束空間Sの出口から掻き出され、結束紐54aが結節ビル55bから抜き出されることで結び目が形成される。さらに、放出アーム56の掻き出しによって、排藁放出装置70へと受け渡される。排藁を放出する際のドア52は、排藁を放出し易いように、下方に後退し集束空間Sの後部出口が開放される。
【0043】
結節部55で結節作動が行われ、結束紐54aの新たな切断端が紐ホルダ55aに保持されると、ニードル53は後退する。ニードル53が集束空間Sの下方の位置に戻った時点で、クラッチが切られ、ニードル53の駆動、結節部55の駆動、および、放出アーム56の駆動が停止される。加え、ドア52が集束空間Sの後端を塞ぐ収容位置に戻る。以上が一回の結束作動であり、引き続き、後続の排藁が同様に収容結束される。
【0044】
また、パッカー51、ドア52およびニードル53の左側部に、ガイドプレート57が前後方向を長手として水平に設けられる。ガイドプレート57よりドア52の左方にシャッター57a、パッカー51側部に戻り防止バネ57bがそれぞれ上方へ突出して、下方へ進退可能に設けている。
よって、パッカー51の回動による排藁の集束空間Sへの掻き込み時に、戻り防止バネ57bは、その付勢力によってガイドプレート57内(下方)へ退避して、排藁が集束空間Sへ入ると上方へ突出して、排藁搬送チェーン5a側へ戻らないように構成されている。
また、ドア52が回動して、ニードル53と結節部55による結節後に、放出アーム56の回動で結束された排藁を放出するときには、シャッター57aはバネの付勢力に抗して、ガイドプレート57内(下方)へ退避し、放出後には元の位置に戻る。
【0045】
排藁放出装置70は、結束装置30の後方に配置され、結束装置30により結束された排藁を外部(圃場)へと放出する。図2および図3に示すように、排藁放出装置70は、主として放出ガイド71、放出部72等を備える。
【0046】
放出部72は、放出ガイド71と対向するように放出ガイド71の略左右に配置される。
放出部72の前部および後部には、それぞれ図示しない放出駆動スプロケットおよび放出従動スプロケットを備える。前記放出駆動スプロケットおよび前記放出従動スプロケットの間には、図示しない放出チェーンが巻回される。前記放出チェーンの外周部には、放出タイン72a・72a・・・が支持される。コンバイン1のエンジンからの動力により前記放出駆動スプロケットが回転することにより、放出タイン72a・72a・・・は平面視反時計回りに回転される。
【0047】
結束装置30により結束された排藁は、放出ガイド71と放出部72とに挟持されるように排藁放出装置70へと受け渡される。該排藁は、回転する放出タイン72a・72a・・・に押されることにより、放出ガイド71に沿って後方へ搬送され、排藁放出装置70の後端から圃場へと放出される。
【0048】
以下では図4から図6を用いて、結束装置30のドア52の角度を切替えて、ドア52の前方の集束空間Sを調節し、排藁量を調節するための構成について説明する。
【0049】
前記ドア52は、後述するドア軸152に取付けるため、ドア52の一端の回動基部52aが筒状に形成され、軸心を左右水平方向に配設している。該回動基部52aの内周部の左右一側(本実施例では右側)は、断面視多角形(本実施例では六角形で図6の(a)参照)、または、複数の溝(図6の(b)のスプラインボス、図6の(c)のセレーションボス)に形成された嵌合部52bが設けられる。回動基部52aの左右他側は、嵌合部52bよりも大きい径で、後述する付勢部材153を収容するためのバネ受部52cが形成されている。つまり、嵌合部52bとバネ受部52cとの境界部分は段差が形成され、この段差に付勢部材153の一端が当接される。
【0050】
ドア軸152は、結束ミッションケース42の後上部より左方に突出するように配置される。結束ミッションケース42外に突出したドア軸152には、ドア52の回動基部52aが外嵌され、さらにその左方のドア軸152上には、ニードル53が外嵌される。ドア軸152の右端は、結束ミッションケース42内の図示しないクラッチ機構に接続され、排藁収容圧によるドア52の回転力を伝えることで、クラッチの入切を行う。
【0051】
前記ニードル53と結束ミッションケース42との間のドア軸152上に、ドア52と付勢部材153が外嵌されている。このドア軸152の左右一側の外周が前記断面視多角形、または、前記複数の溝(本実施例ではスプラインボス、またはセレーションボス)を有する嵌合部52bの形状に合わせた突起型(本実施例ではスプライン軸、またはセレーション軸)に形成した駆動部152aが設けられ、該駆動部152aは嵌合部52b上を軸方向に摺動自在に外嵌されている。ドア軸152の他側は、駆動部152aよりも径を小さくしたバネ外嵌部152bを形成して、バネ等で構成した付勢部材153を外嵌している。付勢部材153の他側は、リング等により受け止められている。
【0052】
こうして、バネ等の付勢部材153をドア軸152に外嵌し、該付勢部材153の一端をドア52の回動基部52aの内周の段差部に当接することにより、ドア52は結束ミッションケース42側へと付勢され、嵌合部52bと駆動部152aが嵌合した状態となり相対回転不能となる。つまり、ドア52が回動されるとドア軸152に動力が伝達されて回動される構成となる。
【0053】
上記構成において、図8に示すように、ドア52の取付角度の調節を行うには、まず、付勢部材153の付勢力に抗して、ドア52をニードル53側(左側、図8(a)の白矢印方向)に摺動移動させる。この摺動により嵌合部52bは、駆動部152aから外れて相対回転自在となり、この状態でドア52を前方に回動することにより集束空間Sは小さくなり(図7の(a)参照)、後方へ回動することにより集束空間Sを拡大することができる(図7の(b)参照)。そして、所定角度回転した状態で前記と逆方向(右方)にドア52を摺動することにより(図8の(b)の白矢印参照)、嵌合部52bは駆動部152aに嵌合することとなり、ドア52が所望角度に変更固定される。なお、嵌合部52bの内周と駆動部152aの外周は、セレーションで構成することによりさらに調節角度を小さくして結束量を細かく設定することが可能となる。
【0054】
よって、図7の(a)に示すように、ドア52の角度調節が行われ、ドア52が前方に位置し、集束空間Sが狭くなった場合は、集束される排藁量が少ないため、排藁束が小束に結束される。また、図7の(b)に示すように、ドア52が後方に位置し、集束空間Sが広くなった場合は、集束される排藁量が多くなるため、排藁束が大束に結束される。さらに図7の(c)に示すように、ドア52を下後方に回動して嵌合部52bを駆動部152aに嵌合した位置(図6参照)では、排藁はドア52により受け止められないため、クラッチが起動されることがなく、排藁が結束されず、そのまま外方へと放出される。
【0055】
以上の如く、本実施形態に係るコンバイン1の結束装置30は、排藁を集束空間S内に掻き込むパッカー51と、集束空間S内に所定量の排藁を保持するドア52と、所定量の排藁に結束紐54aを巻き付けるニードル53と、排藁に巻き付けた結束紐54aを結節する結節部55と、結束された排藁を放出する放出アーム56とを備える結束装置30において、前記ドア52の回動基部52aを筒状に構成し、該回動基部52aの内周断面形状を多角形に形成しまたは該回動基部52aの内周に軸方向の溝を複数形成し、該回動基部52aを外嵌するドア軸152の外周の一部を前記回動基部52aの内周断面形状に合わせた多角形または突起型に形成に形成し、ドア52とドア軸152の嵌合角度を変更可能に構成した。
【0056】
このように構成することにより、ドア52をドア軸152に対して摺動させて嵌合を解除することにより容易に任意の角度に変更してセットできるようになり、結束する排藁量を変更できる。また、ドア52を下方へ回動することにより、排藁を垂れ流しの状態にすることが可能となり、作業形態を容易に変更できる。また、ドア52の角度調節を行うための構造も簡単にできる。
【0057】
以上の如く、本実施形態に係るコンバイン1の結束装置30は、前記ドア52の回動基部52aにおいて、内周軸方向一側に多角形に形成した嵌合部52bを形成し、他側に該嵌合部52bよりも大径のバネ受部52cを形成するとともに、前記ドア軸152上の一側に前記嵌合部52bと嵌合する駆動部152aを形成し、他側に径を小さくしたバネ外嵌部152bを形成し、前記バネ受部52cとバネ外嵌部152b内に付勢部材153を内装し、ドア52を嵌合方向に付勢する構成とした。
【0058】
このように構成することにより、工具等を用いること無く、ドア52を回動させて角度調節ができる。これによって、多数の結束装置30の部品の取り外しや、ドア52自体の取り外し等の煩雑な作業を行うことなく、簡単な作業を行うだけで結束する排藁量が変更可能となり、また、部品の紛失等を防ぐことが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1 コンバイン
30 結束装置
51 パッカー
52 ドア
52a 回動基部
52b 嵌合部
52c バネ受部
53 ニードル
54a 結束紐
55 結節部
56 放出アーム
152 ドア軸
152a 駆動部
152b バネ外嵌部
153 付勢部材
S 集束空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排藁を集束空間内に掻き込むパッカーと、
集束空間内に所定量の排藁を保持するドアと、
所定量の排藁に結束紐を巻き付けるニードルと、
排藁に巻き付けた結束紐を結節する結節部と、
結束された排藁を放出する放出アームとを備える結束装置において、
前記ドアの回動基部を筒状に構成し、
該回動基部の内周断面形状を多角形に形成し、
該回動基部が外嵌するドア軸の外周の一部を前記回動基部の内周断面形状に合わせた多角形に形成し、
ドアとドア軸の嵌合角度を変更可能に構成したことを特徴とするコンバインの結束装置。
【請求項2】
排藁を集束空間内に掻き込むパッカーと、
集束空間内に所定量の排藁を保持するドアと、
所定量の排藁に結束紐を巻き付けるニードルと、
排藁に巻き付けた結束紐を結節する結節部と、
結束された排藁を放出する放出アームとを備える結束装置において、
前記ドアの回動基部を筒状に構成し、
該回動基部の内周に軸方向の溝を複数形成し、
該回動基部が外嵌するドア軸の外周の一部を前記回動基部の内周断面形状に合わせた突起型に形成し、
ドアとドア軸の嵌合角度を変更可能に構成したことを特徴とするコンバインの結束装置。
【請求項3】
前記ドアの回動基部において、
内周軸方向一側に多角形または溝に形成した嵌合部を形成し、
他側に該嵌合部よりも大径のバネ受部を形成するとともに、
前記ドア軸上の一側に前記嵌合部と嵌合する駆動部を形成し、他側に径を小さくしたバネ外嵌部を形成し、前記バネ受部とバネ外嵌部内に付勢部材を内装し、ドアを嵌合方向に付勢する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバインの結束装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−246433(P2010−246433A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97358(P2009−97358)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】