説明

コンバインの脱穀装置

【課題】扱室の上方を覆うカバー体を閉塞位置から開放位置に亘ってアクチュエータを介して自動的に回動させることができるようにする。
【解決手段】扱室24の上方を覆うカバー体23を閉塞位置から開放位置に亘って回動させるアクチュエータ35と、該アクチュエータ35を作動させる手動操作手段37,38と、カバー体23を閉塞位置で固定するロック手段44を備えるコンバイン11の脱穀装置13において、前記カバー体23が閉塞位置にある状態でアクチュエータ35の作動を可能にする融通手段34aと、アクチュエータ35とロック手段44とを連動させる連係手段45を設け、前記ロック手段44によるカバー体(23)の閉塞位置における固定と解除とを、前記融通手段34aに基づくアクチュエータ35の作動により連係手段45を介して行えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米麦等の穀稈を脱穀する扱室の上方を覆う開閉可能なカバー体を備えたコンバインの脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインにおいては、扱室の上部を形成すると共に扱胴を回転可能に支持する上部構造体を、扱胴の回転軸と平行な扱室の他部を形成する構造体の軸心周りに上昇開き位置と下降閉じ位置とに上下揺動自在に支持し、更に開閉スイッチや油圧シリンダ等を備える駆動機構を介して、当該上部構造体を上昇開き位置から下降閉じ位置の設定ストローク手前の開き位置まで開閉操作することができる脱穀装置が知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3542112号公報(第4−6頁、図4−図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来の脱穀装置では、上部構造体の上昇開き位置から下降閉じ位置の設定ストローク手前の開き位置までは駆動機構によって開閉操作されるものの、この開き位置から下降閉じ位置までの範囲は、脱穀装置の横外側に突出する前後のロック杆の遊端部を連結したハンドル杆に人為的な下降または上昇操作力を与えて、当該上部構造体の下降閉じ位置における固定または解除操作を行わなければならず面倒であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決することを目的として創案した請求項1の発明は、扱室の上方を覆うカバー体を閉塞位置から開放位置に亘って回動させるアクチュエータと、該アクチュエータを作動させる手動操作手段と、カバー体を閉塞位置で固定するロック手段を備えるコンバインの脱穀装置において、前記カバー体が閉塞位置にある状態でアクチュエータの作動を可能にする融通手段と、アクチュエータとロック手段とを連動させる連係手段を設け、前記ロック手段によるカバー体の閉塞位置における固定を、前記融通手段に基づくアクチュエータの作動により連係手段を介して解除可能に構成したことを特徴としている。
【0005】
また、請求項2の発明は、扱室の上方を覆うカバー体を閉塞位置から開放位置に亘って回動させるアクチュエータと、該アクチュエータを作動させる手動操作手段と、カバー体を閉塞位置で固定するロック手段を備えるコンバインの脱穀装置において、前記カバー体が閉塞位置にある状態でアクチュエータの作動を可能にする融通手段と、アクチュエータとロック手段とを連動させる連係手段を設け、前記ロック手段によるカバー体の閉塞位置における固定を、前記融通手段に基づくアクチュエータの作動により連係手段を介して行えるように構成したことを特徴としている。
【0006】
また、請求項3の発明は、扱室の上方を覆うカバー体を閉塞位置から開放位置に亘って回動させるアクチュエータと、該アクチュエータを作動させる手動操作手段と、カバー体を開放する方向へ付勢する付勢手段と、カバー体を閉塞位置で固定するロック手段を備えるコンバインの脱穀装置において、前記ロック手段をカバー体が閉塞位置になると自動的にロック作動する構成とし、前記カバー体の閉動作中における付勢手段の付勢力とカバー体の自重が均衡した状態で、アクチュエータのみの作動を可能にする融通手段と、前記アクチュエータとロック手段とを連動させる連係手段を設け、前記付勢手段の付勢力とカバー体の自重が均衡した状態での融通手段に基づくアクチュエータの作動によって、前記連係手段を介してロック手段が自動ロック可能な姿勢状態となるように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、扱室の上方を覆うカバー体を閉塞位置から開放位置に亘って回動させるアクチュエータと、このアクチュエータを作動させる手動操作手段と、閉塞位置におけるカバー体を固定するロック手段と、前記アクチュエータとロック手段とを連動させる連係手段と、カバー体が閉塞位置にある状態でアクチュエータの作動を可能にする融通手段とを設け、前記ロック手段によるカバー体の閉塞位置における固定を、前記融通手段に基づくアクチュエータの作動により連係手段を介して解除可能に構成したことによって、閉塞位置における前記カバー体の固定解除を従来のように人為的な操作力よらず自動的に行うことができるようになると共に、アクチュエータによって当該カバー体を開放位置から閉塞位置に亘って自動的に下降回動させることができるので作業性が向上する。
【0008】
また、請求項2の発明によれば、扱室の上方を覆うカバー体を閉塞位置から開放位置に亘って回動させるアクチュエータと、このアクチュエータを作動させる手動操作手段と、閉塞位置におけるカバー体を固定するロック手段と、前記アクチュエータとロック手段とを連動させる連係手段と、カバー体が閉塞位置にある状態でアクチュエータの作動を可能にする融通手段とを設け、前記ロック手段によるカバー体の閉塞位置における固定を、前記融通手段に基づくアクチュエータの作動により連係手段を介して行えるように構成したことによって、閉塞位置における前記カバー体の固定を従来のように人為的な操作力よらず自動的に行うことができるようになる。
【0009】
また、請求項3の発明によれば、扱室の上方を覆うカバー体を閉塞位置から開放位置に亘って回動させるアクチュエータと、該アクチュエータを作動させる手動操作手段と、カバー体を開放する方向へ付勢する付勢手段と、カバー体を閉塞位置で固定するロック手段を備えるコンバインの脱穀装置において、前記ロック手段をカバー体が閉塞位置になると自動的にロック作動する構成とし、前記カバー体の閉動作中における付勢手段の付勢力とカバー体の自重が均衡した状態で、アクチュエータのみの作動を可能にする融通手段と、前記アクチュエータとロック手段とを連動させる連係手段を設け、前記付勢手段の付勢力とカバー体の自重が均衡した状態での融通手段に基づくアクチュエータの作動によって、前記連係手段を介してロック手段が自動ロック可能な姿勢状態となるように構成したので、前記付勢手段によりカバー体の開放動作をスムーズに補助すると共に閉動作中におけるカバー体の振動を抑制し、且つ閉塞位置における当該カバー体の固定及び解除を従来のように人為的な操作力よらず自動的に行うことができるようになって作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示す側面図のように、コンバイン11は、穀稈を刈取る前処理部12と、刈取穀稈から穀粒を脱穀し、この穀粒を選別する脱穀装置13と、選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク14と、脱穀済みの排稈を排出処理する後処理部15と、各種の操作具が設けられる操作部16と、この操作部16を覆うキャビン17と、左右一対のクローラ走行装置18L,18R(右側のクローラ走行装置18Rは不図示)を備えている。
【0011】
そして、穀粒タンク14に貯留された穀粒は、穀粒タンク14の後面下端部に固設される固定パイプ(不図示)と、この固定パイプに回動可能に接続される縦パイプ19と、該縦パイプ19の上端に一体回動可能で、且つ、上下方向に起伏可能(上下昇降可能)に接続される穀粒排出オーガ21とを経由して機外に排出できるようになっている。
【0012】
また、脱穀装置13は、図2に示す開放姿勢状態の背面図のように、複数の扱歯22aを外周に植設した扱胴22を有しており、この扱胴22の上方をカバー体23で覆う一方、扱胴22の下方には図示しない受網を張設することにより扱室24を構成している。
【0013】
そして、カバー体23は、扱胴22の回転軸25と平行な軸心26周りに回動自在に支持してあって、当該カバー体23を閉塞位置から開放位置に亘って開閉(回動)することができるようになっている。また、扱胴22の回転軸25は、カバー体23と一体形成された扱室24の前側板(不図示)と後側板24aとに軸支してあり、カバー体23の開閉動作に伴って扱胴22と当該カバー体23とが一体に回動する構成になっている。
【0014】
更に詳しくは、カバー体23と一体形成された扱室24の前側板(不図示)と後側板24aの回動支点側(機体内方側)、即ち扱胴22の回転軸25と平行な軸心26であるパイプ軸には、機体の前後方向に一対の回動アーム31,31が固設してあり、この回動アーム31,31によって扱胴22とカバー体21及び排藁搬送装置32を回動可能に支持すると共に、両回動アーム31,31の前後方向略中間部に、詳細は後述するシリンダ42の終端部を連結するための連結アーム34を、前記パイプ軸(軸心)26に固設している。
【0015】
そして、扱室24の上方を覆うカバー体23を閉塞位置から開放位置に亘って回動させるアクチュエータとして昇降(電動)モータ35を備えており、この昇降モータ35は、機体左側のフィードチェンカバー36の略中央部に設けた手動操作手段としての上昇(開)スイッチ37、または下降(閉)スイッチ38を「ON」操作することにより正転または逆転作動する。
【0016】
即ち、上昇スイッチ37を「ON」操作することによって、扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32を開放位置まで上昇回動させることができる一方、下降スイッチ38を「ON」操作することによって、扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32を閉塞位置まで下降回動させることができるようになっている。尚、両スイッチ37,38は、誤操作防止用の安全カバー39で覆われている。
【0017】
また、昇降モータ35出力側には、その出力軸に連結して正逆回転するスクリュウシャフト41、及びこのスクリュウシャフト41に螺合して進退作動するシリンダ42を備えており、このシリンダ42の先端に固設したピン42bを連結アーム34の先端側の長孔34aに連結(挿通)すると共に、スクリュウシャフト41の基端部を機体内方側の扱室固定枠体40の上部に取付けることによって、上昇スイッチ37または下降スイッチ38の「ON」操作に応動する昇降モータ35、スクリュウシャフト41、及びシリンダ42を介して、扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32を一体的に上方回動または下方回動させることができるようになっている。
【0018】
そして、扱胴22と一体に回動するカバー体23及び排藁搬送装置32を閉塞位置で確実に固定するためのロック手段として、扱室24の後側板24aから突出する支点軸43を中心に回動可能なフック44が設けてあり、更にこのフック44に形成した長孔44aと、連結アーム34の先端側の長孔34aに連結してなるシリンダ42の先端に固設したピン42bとを連係手段であるロッド45を介して連結することによって、アクチュエータである昇降モータ35にロック手段であるフック44が連動して作動(回動)するように構成している。尚、上述した連係手段であるロッド45をワイヤで構成すると共に、当該ロッド45をフック44に形成した長孔44aを介さずに直接連結してもよい。
【0019】
また、図3に示すように、コンバイン11は、マイクロコンピュータ(CPU、ROM、RAM等を含む)を用いて構成された制御部51を備えている。そして、制御部51の入力側には、カバー体23と共に一体に上下回動する扱胴22の高さ位置を検出する扱胴位置検出ポテンショメータ52、穀粒排出オーガ21の旋回位置を検出するオーガ位置検出ポテンショメータ53、扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32を上昇回動させる上昇スイッチ37、扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32を下降回動させる下降スイッチ38、扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32が下降回動して閉塞位置にあることを検出するロック検出スイッチ54、昇降モータ35の出力側に設けたシリンダ42の縮作動を停止させる上限リミットスイッチ55、同じくシリンダ42の伸作動を停止させる下限リミットスイッチ56、穀粒排出オーガ21が折畳み式の場合、当該穀粒排出オーガ21の折畳み(折れ)状態を検出するオーガ折れ検出スイッチ57、及び作業機クラッチ(不図示)の断接を検出する作業機クラッチスイッチ58等を接続してある。
尚、本実施例では、前記上昇スイッチ37及び下降スイッチ38にオルタネイトスイッチを採用しているが、モーメンタリスイッチを採用する場合は、上限リミットスイッチ55及び下限リミットスイッチ56を設けなくてもよい。
【0020】
一方、出力側には、音による報知手段であるホーン61、前記上昇スイッチ37または下降スイッチ38に内装されたモニターランプである上昇ランプ37a及び下降ランプ38a、上昇スイッチ37または下降スイッチ38を「ON」操作することにより作動する昇降モータ35、及び燃料カットによりエンジンを停止させるエンジン停止用ソレノイドバルブ64等のアクチェータを接続してある。
【0021】
尚、上限リミットスイッチ55及び下限リミットスイッチ56は、スクリュウシャフト41上に併設したブラケット66に対向して取付けられると共に、スクリュウシャフト41に螺合して進退作動するシリンダ42の外周に固設したプレート42aが、両リミットスイッチ55,56の何れかに接当してON状態になると、扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の回動上昇限または回動下降限の何れかを検出することができるようになっている。
【0022】
以上説明した構成により、図2に示す如く開放姿勢状態(開放位置)にある扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32を下降回動させて、図4に示す閉塞姿勢状態(閉塞位置)にするには、先ず下降スイッチ38を「ON」操作して昇降モータ35を下降側に回転駆動させる。
【0023】
それに伴って図5に示すように、スクリュウシャフト41に螺合して進作動するシリンダ42の先端に固設したピン42bが、連結アーム34先端側の長孔34aの右端に接当した状態で図中A矢印方向に当該連結アーム34と共に移動する。即ち、徐々に扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の自重による下降作用力を受けながら、これら扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32とが閉塞位置まで下降回動する。
【0024】
そして、上述の如く扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32とが閉塞位置まで下降回動すると、図5に示すように、スクリュウシャフト41に螺合するシリンダ42の先端に固設したピン42bは、二点鎖線で示す状態から実線で示す状態まで連結アーム34の先端側に形成した長孔34aに沿って進作動し、それに伴ってシリンダ42の先端に固設したピン42bに連結してなるロッド45を介して、ロック手段であるフック44が連動しながら下方に回動する。つまり、前記長孔34aは、扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32が閉塞位置にある状態で昇降モータ35の作動を可能にする融通手段として作用する。
【0025】
この時、前記ロッド45が連結するフック44に形成した長孔44aに融通されながら、フック44の基端側に取り付けた弾発手段である引張スプリング72の付勢力がフック44に作用し、それによって当該フック44を扱室固定枠体40に設けた係合ピン71に係止させて、扱胴22と一体に回動するカバー体23及び排藁搬送装置32を閉塞位置において確実に固定することができると共に、昇降モータ35の出力側に設けたシリンダ42の伸作動を停止させる下限リミットスイッチ56がON状態となり、当該昇降モータ35の駆動が停止するようになっている。
【0026】
一方、図4に示す如く閉塞姿勢状態(閉塞位置)にある扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32を上昇回動させて、図2に示す開放姿勢状態(開放位置)にする際は、先ず上昇スイッチ37を「ON」操作して昇降モータ35を上昇側に回転駆動させる。それに伴ってスクリュウシャフト41に螺合して退作動するシリンダ42の先端に固設したピン42bに連結してなるロッド45を介して、閉塞姿勢状態にある扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32を固定するロック手段であるフック44が上方に回動し、フック44の基端側に取り付けた引張スプリング72の付勢力に抗して、当該フック44と扱室固定枠体40に設けた係合ピン71との係止が解除される。
【0027】
しかる後に、図2に示すように、スクリュウシャフト41に螺合して退作動するシリンダ42の先端に固設したピン42bが、連結アーム34先端側の長孔34aの右端に接当した状態で当該連結アーム34が図中B矢印方向に引かれ、扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の自重による下降作用力に抗して、これら扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32が上昇回動して開放位置となった状態、即ち上限リミットスイッチ55が、昇降モータ35の出力側に設けたシリンダ42の外周に固設したプレート42aと接当してON状態になると、当該扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の上昇回動が停止されるようになっている。
【0028】
尚、連結アーム34の先端側に形成した長孔34aは、扱胴22と一体に回動するカバー体23及び排藁搬送装置32が閉塞位置にある時、昇降モータ35の上昇側への回転駆動を可能にする融通手段としても作用するので、扱胴22と一体に回動するカバー体23及び排藁搬送装置32の閉塞位置における固定解除を、従来のように人為的な操作力よらず自動的に行うことができるようになると共に、当該昇降モータ35によって、扱胴22と一体に回動するカバー体23及び排藁搬送装置32を閉塞位置から開放位置に亘って自動的に回動させることができることから作業性が向上する。
【0029】
次に、上述した構成の脱穀装置13において、扱胴22と一体に回動するカバー体23及び排藁搬送装置32の上昇回動(開動作)をアシストすると共に、特に下降回動(閉動作)中における振動を抑制すべく、扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32を開放する方向へ付勢する付勢手段として、ガスシリンダ73(図6及び図7参照)を設けた場合の開閉動作について説明する。尚、ガスシリンダ73は図示するように、その基端側を扱室固定枠体40の下部に支持すると共に先端側を扱室24の後側板24aと連結してあって、前後バランスを考慮して扱室24の図示しない前側板側にも設けられている。
【0030】
上述の如く扱胴22と一体に回動するカバー体23及び排藁搬送装置32を開放する方向へ付勢する付勢手段としてガスシリンダ73を設けた場合、開放姿勢状態(開放位置)にある扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32を下降回動させて、閉塞姿勢状態(閉塞位置)にするには、先ず下降スイッチ38を「ON」操作して昇降モータ35を下降側に回転駆動させる。
【0031】
それに伴って図6に示すように、スクリュウシャフト41に螺合して進作動するシリンダ42の先端に固設したピン42bが、連結アーム34先端側の長孔34aの右端に接当した状態で図中A矢印方向に当該連結アーム34と共に移動する。そして、徐々に扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の自重による下降作用力を受けながら、これら扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の下降回動が開始されるが、その途中でガスシリンダ73による扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の開放方向への付勢力を受け、この付勢力と、扱胴22と一体に下降回動するカバー体23及び排藁搬送装置32の自重が均衡した状態になるとその下降回動が一端停止する。
【0032】
即ち、連結アーム34の先端側に形成した長孔34aは、ガスシリンダ73の付勢力と
扱胴22と一体に回動するカバー体23及び排藁搬送装置32の閉動作中における自重が均衡した状態のもとで、昇降モータ(アクチュエータ)35のみの作動を可能にする第一の融通手段として作用する。
【0033】
この時、スクリュウシャフト41に螺合するシリンダ42の先端に固設したピン42bが、実線で示す状態から二点鎖線で示す状態まで連結アーム34の先端側に形成した長孔34aに沿って更に進作動し、次いでピン42bが長孔34aの左端に接当した状態で、シリンダ42の終端部に連結したロッド45を介してロック手段であるフック44が連動して下方に回動すると共に、フック44の基端側に取り付けた引張スプリング72に付勢されて、当該フック44は二点鎖線で示す自動ロック可能な姿勢状態となる。
【0034】
そして、シリンダ42が更に進作動すると、ガスシリンダ73の付勢力に抗して扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32が下降回動し、遂には図7に二点鎖線で示すように、フック44先端の外側部分Cが、このフック44に形成した長孔44aに融通されながら扱室固定枠体40に設けた係合ピン71に接当して乗り上げ、扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32が閉塞位置まで下降回動すると、フック44の基端側に取り付けた引張スプリング72の付勢力によって、当該フック44が実線で示す如く扱室固定枠体40に設けた係合ピン71に自動的に係止されるようになっている。
【0035】
即ち、フック44に形成した長孔44aは、扱胴22と一体に回動するカバー体23及び排藁搬送装置32の閉動作中において、当該扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の閉塞位置におけるロック手段であるフック44の固定方向側への動作を許容する第二の融通手段として作用する。
【0036】
一方、閉塞姿勢状態(閉塞位置)にある扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32を上昇回動させて開放姿勢状態(開放位置)にするには、先ず上昇スイッチ37を「ON」操作して昇降モータ35を上昇側に回転駆動させる。それに伴ってスクリュウシャフト41に螺合して退作動するシリンダ42の先端に固設したピン42bに連結してなるロッド45を介して、閉塞姿勢状態にある扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32を固定するロック手段であるフック44が上方に回動し、フック44の基端側に取り付けた引張スプリング72の付勢力に抗して、当該フック44と扱室固定枠体40に設けた係合ピン71との係止が解除され、ガスシリンダ73による扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の開放方向への付勢力が発現されるようになっている。
【0037】
そして、スクリュウシャフト41に螺合して退作動するシリンダ42の先端に固設したピン42bが、連結アーム34先端側の長孔34aの右端に接当した状態で当該連結アーム34が図6に示すA矢印の逆方向に引かれ、扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の自重による下降作用力に抗して、これら扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32が上昇回動して開放位置となった状態、即ち上限リミットスイッチ55が、昇降モータ35の出力側に設けたシリンダ42の外周に固設したプレート42aと接当してON状態になると、当該扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の上昇回動が停止されるようになっている。
【0038】
以上説明したように、扱胴22と一体に回動するカバー体23及び排藁搬送装置32を閉塞位置から開放位置に亘って回動させるアクチュエータである昇降モータ35と、該昇降モータ35を作動させる手動操作手段である上昇スイッチ37及び下降スイッチ38と、扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32を開放する方向へ付勢する付勢手段であるガスシリンダ73と、扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32を閉塞位置で固定するロック手段であるフック44を備えるコンバイン11の脱穀装置13において、前記フック44を扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32が閉塞位置になると自動的にロック作動する構成とし、前記扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の閉動作中におけるガスシリンダ73の付勢力と扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の自重が均衡した状態で、昇降モータ35のみの作動を可能にする融通手段34aと、前記昇降モータ35とフック44とを連動させる連係手段であるロッド45を設け、前記ガスシリンダ73の付勢力と扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の自重が均衡した状態での融通手段34aに基づく昇降モータ35の作動によって、前記ロッド45を介してフック44が自動ロック可能な姿勢状態となるように構成したので、前記ガスシリンダ73により扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の開放動作をスムーズに補助すると共に、閉動作中における扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の振動を抑制し、且つ閉塞位置における当該扱胴22とカバー体23及び排藁搬送装置32の固定及び解除を従来のように人為的な操作力よらず自動的に行うことができるようになって作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】開放姿勢状態を示す脱穀装置の背面図(第一実施例)。
【図3】制御部のブロック図。
【図4】閉塞姿勢状態を示す脱穀装置の背面図(第一実施例)
【図5】ロック手段の構成を示す作動図(第一実施例)。
【図6】開放姿勢状態を示す脱穀装置の一部省略背面図(第二実施例)。
【図7】ロック手段の構成を示す作動図(第二実施例)。
【符号の説明】
【0040】
11 コンバイン
13 脱穀装置
23 カバー体
24 扱室
34a 融通手段
35 アクチュエータ
37 手動操作手段(上昇)
38 手動操作手段(下降)
44 ロック手段
45 連係手段
73 付勢手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(24)の上方を覆うカバー体(23)を閉塞位置から開放位置に亘って回動させるアクチュエータ(35)と、該アクチュエータ(35)を作動させる手動操作手段(37,38)と、カバー体(23)を閉塞位置で固定するロック手段(44)を備えるコンバイン(11)の脱穀装置(13)において、前記カバー体(23)が閉塞位置にある状態でアクチュエータ(35)の作動を可能にする融通手段(34a)と、アクチュエータ(35)とロック手段(44)とを連動させる連係手段(45)を設け、前記ロック手段(44)によるカバー体(23)の閉塞位置における固定を、前記融通手段(34a)に基づくアクチュエータ(35)の作動により連係手段(45)を介して解除可能に構成したことを特徴とするコンバインの脱穀装置。
【請求項2】
扱室(24)の上方を覆うカバー体(23)を閉塞位置から開放位置に亘って回動させるアクチュエータ(35)と、該アクチュエータ(35)を作動させる手動操作手段(37,38)と、カバー体(23)を閉塞位置で固定するロック手段(44)を備えるコンバイン(11)の脱穀装置(13)において、前記カバー体(23)が閉塞位置にある状態でアクチュエータ(35)の作動を可能にする融通手段(34a)と、アクチュエータ(35)とロック手段(44)とを連動させる連係手段(45)を設け、前記ロック手段(44)によるカバー体(23)の閉塞位置における固定を、前記融通手段(34a)に基づくアクチュエータ(35)の作動により連係手段(45)を介して行えるように構成したことを特徴とするコンバインの脱穀装置。
【請求項3】
扱室(24)の上方を覆うカバー体(23)を閉塞位置から開放位置に亘って回動させるアクチュエータ(35)と、該アクチュエータ(35)を作動させる手動操作手段(37,38)と、カバー体(23)を開放する方向へ付勢する付勢手段(73)と、カバー体(23)を閉塞位置で固定するロック手段(44)を備えるコンバイン(11)の脱穀装置(13)において、前記ロック手段(44)をカバー体(23)が閉塞位置になると自動的にロック作動する構成とし、前記カバー体(23)の閉動作中における付勢手段(73)の付勢力とカバー体(23)の自重が均衡した状態で、アクチュエータ(35)のみの作動を可能にする融通手段(34a)と、前記アクチュエータ(35)とロック手段(44)とを連動させる連係手段(45)を設け、前記付勢手段(73)の付勢力とカバー体(23)の自重が均衡した状態での融通手段(34a)に基づくアクチュエータ(35)の作動によって、前記連係手段(45)を介してロック手段(44)が自動ロック可能な姿勢状態となるように構成したことを特徴とするコンバインの脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−325476(P2006−325476A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153536(P2005−153536)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】