説明

コンバイン

【課題】格納設備のために大きなコスト負担を要することなく、作業者の作業環境の改善を図ることができる簡易な構成のコンバインを提供する。
【解決手段】コンバインは、機体外側に臨んで穀物を袋詰めするためのホッパー装置(4)と、このホッパー装置(4)の下方の部位から機体外側端に及ぶ範囲に形成した穀物袋詰め作業のための作業デッキ(5)とを備えるコンバインにおいて、上記ホッパー装置(4)の上部から作業デッキ(5)の上方を覆って機体外側方まで張出し可能に可撓性の遮光シート(14)を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体外側に臨むホッパー装置と、このホッパー装置の外側に張り出す袋詰用の作業デッキとを備えるコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホッパー装置と袋詰用の作業デッキとを備えるコンバインが知られている。このコンバインは、例えば特許文献1のごとく、機体外側に臨んで収穫穀物を袋詰めするためのホッパー装置と、このホッパー装置の外側に張り出す袋詰用の作業デッキとを備え、刈取、脱穀を行いつつ、脱穀された収穫穀物を作業デッキ上で袋詰めすることができ、この袋詰め作業に際して、作業デッキ上方に張出すように日除けを設けることにより、簡易な構成によって安定して作業者の作業環境の改善を図ることができる。
【特許文献1】実開平5−9236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記日除けは支柱に固定され、作業デッキの上方まで固定的に張出して構成されていることから、上記コンバインを車庫等の格納設備に格納する場合は広い空間を要するので、格納設備のために大きなコスト負担を強いられるという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、格納設備のために大きなコスト負担を要することなく、作業者の作業環境の改善を図ることができる簡易な構成のコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、機体外側に臨んで穀物を袋詰めするためのホッパー装置と、このホッパー装置の下方の部位から機体外側端に及ぶ範囲に形成した穀物袋詰め作業のための作業デッキとを備えるコンバインにおいて、上記ホッパー装置の上部から作業デッキの上方を覆って機体外側方まで張出し可能に可撓性の遮光シートを設けたことを特徴とする。
上記構成により、ホッパー上部から張出し可能な可撓性の日除シートは、作業デッキの外側端上方の張出し位置において作業デッキ上をカバーし、また、ホッパー装置の上部に戻すことによって日除シートの張出しが抑えられる。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記ホッパー装置の外側に沿って延びる作業者用の手摺を設け、この手摺に基部を軸支することによって揺動可能に可動フレームを設け、この可動フレームに前記遮光シートの外側端を取付けたことを特徴とする。
上記構成により、日除シートは、ホッパー装置の手摺に軸支した可動フレームによって展開、収納される。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2の構成において、前記ホッパー装置の外側方に張出し可能に袋詰め作業者用の背もたれ部材を設け、この背もたれ部材と前記可動フレームとの間を連結部材によって連動動作可能に連結したことを特徴とする。
上記構成により、背もたれ部材の展開と収納の操作に伴い、連結部材を介して日除シートが連動動作する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1のコンバインは、ホッパー装置の上部から張出し可能な簡易な構成の日除により、機体格納時はホッパー装置の上部に収納できるので、格納設備のために大きなコスト負担を要することなく、作業者の作業環境の改善を図ることができる。
【0009】
請求項2のコンバインは、請求項1の効果に加え、ホッパー装置の手摺に軸支した可動フレームによって日除シートの展開と収納ができるので、複雑な可動支持機構を要することなく、可動式の日除を簡易に構成することができる。
【0010】
請求項3のコンバインは、請求項2の効果に加え、背もたれ部材の展開、収納の操作に伴い、日除シートの操作を要することなく、一括操作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明の適用対象となるコンバイン1は、その側面図および平面図を図1,図2にそれぞれ示すように、主要構成として、圃場から穀稈を刈取る刈取装置2、刈取った穀稈を受けて脱穀選別する脱穀装置3、脱穀選別された穀粒を袋詰めするためのホッパー装置4、このホッパー装置4の外側に沿う作業デッキ5等の作業装置と、走行手段である左右のクローラ6,6と、上記作業装置および機体走行を操作するための操縦部7等を備える。また、機体内には、コンバインの原動部であるエンジンとその制御装置、HSTと略称されて上記クローラの動力を前後進無段変速する静油圧式無段変速機構を組み込んだ走行伝動装置等を備える。
【0012】
上記操縦部に構成した運転台には、オペレ―タの座席を中心に、モニターパネルおよびHSTレバーと略称される前後進変速操作用の主変速レバー、機体の左右旋回と刈取装置の昇降をワンレバーに構成したパワステレバー、各種作業機器の操作のための各種のスイッチや操作レバー等が配置されるほか、これら操作具による操作信号および機器のセンサー信号によってエンジンを含む諸機器を制御する制御装置を備える。
【0013】
(ホッパー装置)
ホッパー装置4について説明すると、ホッパー装置4は脱穀装置3と左右に並んで機体の片側に配置し、このホッパー装置4には機体外側に臨んで下端開口を形成した複数のホッパー4a…を備えて脱穀装置3から籾を受ける。これらホッパー4a…による袋詰め作業のために、ホッパー装置4の下部に作業デッキ5を形成し、ホッパー装置4の外側面には、手摺11を固定する。作業デッキ5の外側端には、機体から外側方に張り出し可能に補助デッキ12と背もたれ板13を設け、作業デッキ5の上方には、可撓性の遮光シート14を機体外側方まで張出し可能に設けて可動式の日除装置を構成する。
【0014】
作業デッキ5は、ホッパー4aの下部から機体外側端に及ぶ範囲に袋詰め作業のための作業床である。手摺11は、袋詰めの作業姿勢を補助するために、ホッパー装置4の外側面に沿ってその両脇に回り込むように設ける。補助デッキ12は、作業デッキ5の外側端に軸支し、張出し状態で袋詰め操作の作業スペースおよび袋詰めした穀物充填物等の搭載スペースを形成する。背もたれ板13は、作業者の背中を受ける受板であり、ホッパー装置4から後方に延びる機体側のフレーム15に軸支したL字状の支持フレーム16によってホッパー装置4に近接する収納位置まで揺動可能に支持する。
【0015】
遮光シート14は、所定の引っ張り強度を有する布やビニールフィルム等によって形成する。その可動支持機構は、その要部斜視図を図3に示すように、ホッパー装置4の上部に取付けた上部フレーム21と、ホッパー装置4の両脇に回り込むように延びる手摺11に基部を軸支した略U字状の可動フレーム22との間に遮光シート14を架設して可動式に構成する。
【0016】
上部フレーム21と可動フレーム22との間には、遮光シート14にテンションを作用する屈曲可能な突張りリンク23,23を架設する。この突張りリンク23,23は上下方向にも少し曲がるようにクリアランスを設ける。遮光シート14を閉じる際は、突張りリンク23,23の中間部を内方に押しながら閉じる。
【0017】
上部フレーム21には可動フレーム22を収納位置に保持するためのクリップ状のキャッチャ24を設ける。また、遮光シート14と背もたれ板13を連動動作させるために、遮光シート14を結着した可動フレーム22と背もたれ板13の支持フレーム16との間を連結部材25によって連結する。
【0018】
上記構成の遮光シート14による可動式の日除装置は、可動フレーム22を張出し位置に揺動操作することによって遮光シート14がホッパー装置4から機体外方に展開されて作業デッキ5の上方を覆うことから、ホッパー装置4による袋詰め作業範囲の日射を遮るとともに、脱穀装置3の近傍から湧き上がる埃を受け止めて作業環境を改善することができる。
【0019】
機体を格納する際は、可動フレーム22をホッパー装置4の上部の上部フレーム21の位置まで戻すことにより、キャッチャ24によって収納位置に保持されるので、機体幅がコンパクト化されて格納設備に収容することができる。また、連結部材25を介して可動フレーム22と連結する背もたれ板13を操作することによっても、遮光シート14を展開、収納することができる。
【0020】
(別構成例)
次に、日除装置の別の構成例について説明する。
コンバイン31は、その側面図および平面図を図4,図5にそれぞれ示すように、操縦部7とホッパー装置4との間の位置に支柱32を起設して操縦部7を覆う前部サンバイザ33と作業デッキ5を覆う後部サンバイザ34を取付ける。両サンバイザ33,34は、ホッパー装置4の上部に重なる位置まで回動可能に支柱32に支持し、支柱32は、両サンバイザ33,34がホッパー装置4の上面に載るように、伸縮可能に構成する。
【0021】
また、背もたれ板13は、両サンバイザ33,34と個別に操作できるように、ホッパー装置4から後方に延びる機体側のフレーム15に軸支したL字状の支持フレーム16によって可動式に構成する。そのほか、ホッパー装置4の外側面には、エンジン非常停止スイッチ35を備える。
【0022】
上記にように構成することにより、コンバイン31の2つのサンバイザ33,34は、操縦部7と作業デッキ5をカバーするとともに、それぞれについて特段の格納スペースを要することなく、コンパクトに格納することができる。
【0023】
(シャッター)
次に、ホッパーのシャッターについて説明する。
ホッパー4aのシャッター機構41は、その縦断側面図を図6に示すように、ホッパー4aの下端開口を開閉するための前後方向にスライド可能なシャッター板42に弾性部材43を押圧することにより、シャッター板42のスライド位置を保持するように構成する。弾性部材43は、部分拡大図および部分破断正面図をそれぞれ図7,図8に示すように、取付穴44を縦長に形成し、取付け位置を調節して弾性部材43の下端で適宜の押圧力をシャッター板42に作用させ、この状態で取付板45によってボルト固定する。
【0024】
上記弾性部材43の押圧力により、シャッター板42が自然に開くのを防止し、その押圧力は、取付穴44の範囲で調節できるので、一般に適用されるスプリングとスチールボールによる高コストの押圧機構を要することなく、簡易な構成によって適正なシャッター開き荷重を設定することができる。
【0025】
この場合において、取付板45はシャッター板42から所定の距離Aを空けて弾性部材43を片持状に保持することにより、弾性部材43の撓みによって生じるシャッター板42のコゼ等がなくなるので、開閉時の感触を向上することができる。
【0026】
また、閉鎖状態の部分拡大断面図を図9に示すように、シャッター板42を閉じる位置までスライドしたときに弾性部材43が嵌入するようにシャッター板42に受穴46を形成することにより、その位置でシャッター板42を確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】日除装置の要部斜視図
【図4】別構成のコンバインの側面図
【図5】図4のコンバインの平面図
【図6】ホッパーの縦断側面図
【図7】図6の部分拡大図
【図8】図7の部分破断正面図
【図9】閉鎖状態の部分拡大断面図
【符号の説明】
【0028】
1 コンバイン
3 脱穀装置
4 ホッパー装置
4a ホッパー
5 作業デッキ
11 手摺
12 補助デッキ
13 背もたれ板
14 遮光シート
15 フレーム
16 支持フレーム
21 上部フレーム
22 可動フレーム
25 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体外側に臨んで穀物を袋詰めするためのホッパー装置(4)と、このホッパー装置(4)の下方の部位から機体外側端に及ぶ範囲に形成した穀物袋詰め作業のための作業デッキ(5)とを備えるコンバインにおいて、
上記ホッパー装置(4)の上部から作業デッキ(5)の上方を覆って機体外側方まで張出し可能に可撓性の遮光シート(14)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記ホッパー装置(4)の外側に沿って延びる作業者用の手摺(11)を設け、この手摺(11)に基部を軸支することによって揺動可能に可動フレーム(22)を設け、この可動フレーム(22)に前記遮光シート(14)の外側端を取付けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記ホッパー装置(4)の外側方に張出し可能に袋詰め作業者用の背もたれ部材(13)を設け、この背もたれ部材(13)と前記可動フレーム(22)との間を連結部材(25)によって連動動作可能に連結したことを特徴とする請求項2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−94088(P2010−94088A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268730(P2008−268730)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】