説明

コンバイン

【課題】植立穀稈に対するデバイダの相対的な位置関係を適正に設定して刈取作業を行えるコンバインを構成する。
【解決手段】刈取部3に備えたデバイダ10と植立穀稈との左右方向での相対的な位置関係を示す参照情報を表示する表示部Vをフロントパネル16の上面に備えた。参照情報は、植立穀稈とデバイダ10とを運転者が見た姿をシンボル化したイメージであり、表示部Vが、運転部の運転者が既刈側の右デバイダ10Rを直線的に見通す領域の下側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前端位置に複数のデバイダを有する刈取部が備えられ、走行機体の前部位置に運転部が備えられているコンバインに関し、詳しくは、作業時において刈取部のデバイダと植立穀稈との位置関係を適正に維持する操作を補助する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインで刈取作業を行う際には、刈取部を地面近くまで下降させ、複数のデバイダの中間位置に植立穀稈を導入するように走行機体の走行方向を決め、このように走行方向が決まった状態で刈取クラッチを入り操作して走行機体を開始している。
【0003】
特許文献1に記載されるコンバインでは、4つのデバイダ(文献では分草具)の中間に3条の茎稈導入経路が形成されているため、3条の植立穀稈(文献では茎稈)の刈取作業が可能となる。特に、このコンバインでは、既刈側のデバイダが既刈側に偏位した位置に配置され、この既刈側の端部のデバイダと、これに隣接するデバイダとの間の茎稈導入経路に対して2条の植立穀稈を導入することで、「中割作業」等を実現するために4条の植立穀稈の刈取作業も行えるようにも構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06‐22609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したようにコンバインで刈取作業を行う場合には、複数のデバイダと植立穀稈との相対的な位置関係を適正に設定する操作を必要とする。しかしながら、既刈側の端部のデバイダと、これに隣接するデバイダとの間の経路に対して2条の植立穀稈を導入することが可能なコンバインでは、この経路の中央位置に植立穀稈を導入することや、通常の刈取作業時(例えば、中割作業以外の作業時)に2条の植立穀稈を導入する等の誤った操作を行うこともあり改善の余地がある。
【0006】
この様な不都合を解消するために、デバイダと植立穀稈との相対的な位置関係を検出するセンサを備え、このセンサの検出結果に基づいてデバイダを適正な位置関係に導く制御装置を備えることも考えられるが、コンバインのコストの上昇を招くことになり改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、植立穀稈に対するデバイダの相対的な位置関係を適正に設定して刈取作業を行えるコンバインを合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、走行機体の前端位置に複数のデバイダを有する刈取部が備えられ、走行機体の前部位置に運転部が備えられているコンバインであって、
刈取時において植立穀稈に対する複数の前記デバイダの左右方向での位置を決める際に、運転者が前記デバイダと前記植立穀稈との左右方向での適正な位置関係を参照するための表示部が前記運転部に備えられている点にある。
【0009】
この構成によると、刈取作業を行う場合には、運転者が刈取部を地面近くまで下降させ、複数のデバイダと植立穀稈との左右方向での適正な位置関係を表示部で参照し、この参照に基づいて走行機体を操向制御して複数のデバイダと植立穀稈との左右方向での位置関係を最適に設定することが可能となる。つまり、表示部の表示に従って走行機体の走行方向を設定するので誤認識を排除して最適な位置関係で作業を開始でき、刈取作業を開始した後にも表示部の表示に従って最適な位置関係での作業を継続できる。また、表示のために穀稈の位置を検出するセンサ等を備えていないのでコストの上昇を招くこともない。
従って、植立穀稈に対するデバイダの相対的な位置関係を適正に設定して刈取作業を行えるコンバインが低コストで構成された。
【0010】
本発明は、前記表示部が、前記植立穀稈と前記デバイダとを運転者が視覚により見た姿をシンボル化したイメージで成る参照情報を表示しても良い。
【0011】
これによると、植立穀稈とデバイダとをシンボル化したイメージとして成る参照情報が表示されるので、運転者は、参照情報に基づいて植立穀稈とデバイダとの左右方向での位置関係を即座に認識して走行機体の操向制御が可能となる。
【0012】
本発明は、前記刈取部の複数の前記デバイダのうち、既刈側の端部に配置されたものを前記運転部から直線的に見通す領域の下側に前記表示部が配置されても良い。
【0013】
これによると、運転者が既刈側の端部のデバイダの位置を視覚で確認した状態で、視線を大きくそらせることなく、表示部の参照情報を即座に確認できる。
【0014】
本発明は、前記運転部の前部にフロントパネルが配置され、前記運転部の側部にサイドパネルが配置され、前記表示部が前記フロントパネル又は前記サイドパネルのうち走行用の変速レバーより前側位置に備えられても良い。
【0015】
これによると、フロントパネルとサイドパネルとの何れに表示部を形成した場合でも、運転者は前方に向かった姿勢のまま、視線を下方に向けるだけで表示部の情報を視覚により把握でき、参照のための体の動きを小さくできる。
【0016】
本発明は、前記フロントパネルの上面が、前記サイドパネルの上面より低い位置に設定されても良い。
【0017】
これによると、フロントパネルの上面をサイドパネルの上面より低い位置に設定することで前方への視界を良好にする。
【0018】
本発明は、前記フロントパネルにステアリングレバーが配置され、このステアリングレバーの左側に前記表示部が配置されても良く、これと同様に、ステアリングレバーの右側に表示部が配置されて良く、ステアリングレバーの後側に表示部が表示されて良い。
【0019】
ステアリングレバーの後方の近傍に運転者が位置する状態でステアリングレバーを操作するため、このステアリングレバーの右側と左側と後側との何れに表示部を配置した場合には、これらの表示部が運転者の前部に配置されることになるので、運転者が容易に表示部の情報を参照することが可能となる。
【0020】
本発明は、前記ステアリングレバーの後部位置に、前記ステアリングレバーのグリップを握った手又は腕を受け止める操作サポート部が配置されても良い。
【0021】
これによると、ステアリングレバーのグリップを運転者が握った場合に、その手や腕を操作サポート部に載せることにより、手や腕を持ち上げた状態に維持するための疲労をなくし楽な作業を実現する。
【0022】
本発明は、前記表示部として、前記参照情報をプリントしたプリントラベルを用い、このプリントラベルを貼着することによって前記表示部が構成されても良い。
【0023】
これによると、プリントラベルを貼着することで任意の位置に表示部を容易に形成できる。また、複数枚のプリントラベルを用いて複数箇所に表示部を形成することも可能となる。
【0024】
本発明は、前記表示部が、前記参照情報を前記運転部の前部位置の部材の上面にプリントして形成されても良い。
【0025】
これによると、運転部の部材の上面を利用して表示部を形成でき、ラベルを貼着するもののように剥がれることもない。
【0026】
本発明は、前記表示部が、電気的な制御で前記参照情報の表示が可能なディスプレイで構成されても良い。
【0027】
これによると、電気的な制御によりディスプレイに参照情報を表示できるので不要な場合には表示を行わないことや、必要な場合には参照情報を点滅させることや、参照情報の一部を拡大する等、必要に応じた表示形態を選択することで参照を行いやすくする。
【0028】
本発明は、前記ディスプレイが、作業時に必要な情報を表示する作業用メータと兼用されても良い。
【0029】
これによると、刈取作業を開始する場合のように植立穀稈とデバイダとの位置関係を適正に設定する場合には、ディスプレイに参照情報を表示し、路上を走行する場合のように参照情報を必要としない場合には、作業に必要な情報を表示することで、ディスプレイを有効に利用できる。
【0030】
本発明は、植立穀稈を収穫する作業形態を判別する作業形態判別手段を備え、この作業形態判別手段で判別された作業形態に対応する前記植立穀稈と前記デバイダとの左右方向での適正な位置関係を前記ディスプレイに表示する情報表示手段を備えても良い。
【0031】
これによると、例えば、廻り刈り作業のように刈取部に対して設定された条数の植立穀稈を導入する作業形態と、中割作業のように刈取部に対して廻り刈り作業よりも植立穀稈を1条多く導入する作業形態とのように、植立穀稈とデバイダとの位置関係とが異なる場合にも、作業形態判別手段で判別された作業形態に対応した参照情報を情報表示手段がディスプレイに表示することで適正な刈取作業を行える。
【0032】
本発明は、前記刈取部が、前記走行機体に対して横方向にスライド移動自在に支持されると共に、前記刈取部のスライド位置を判別するスライド位置判別手段を備え、このスライド位置判別手段で判別されたスライド位置に対応する前記植立穀稈と前記デバイダとの左右方向での適正な位置関係を前記ディスプレイに表示する情報表示手段を備えても良い。
【0033】
これによると、例えば、廻り刈り作業のスライド位置では刈取部に対して設定された条数の植立穀稈を導入し、中割作業では刈取部を運転部の方向のスライド端までスライドさせることで刈取部に植立穀稈を1条多く導入することになるため、スライド位置判別手段で判別されたスライド位置に対応した情報を情報表示手段がディスプレイに表示することで誤りのない刈取作業を行える。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】コンバインの右側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】フロントパネルとサイドパネルとを示す平面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図4のVI−VI線断面図である。
【図7】プリントラベルで構成された表示部を示す図である。
【図8】廻り刈り作業と中割作業とにおける刈取部と植立穀稈との位置関係を模式的に示す図である。
【図9】ディスプレイに表示される参照情報を示す図である。
【図10】制御構成を示すブロック回路図である。
【図11】操作サポート部の別実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構成〕
図1〜図3に示すように、左右一対のクローラ走行装置1によって走行する走行機体2の前端に刈取部3を昇降自在、かつ、左右方向にスライド移動自在に備えると共に、走行機体2の前部に運転者が搭乗する運転部4を備え、走行機体2の左側に刈取部3から刈取穀稈が供給される脱穀装置5と、この脱穀装置5から排出される排ワラの処理を行う排ワラ処理装置8とを備え、この脱穀装置5の右側部に穀粒を貯留する穀粒タンク6と、この穀粒タンク6に貯留されている穀粒の排出を行うアンローダ7とを備えて自脱型のコンバインが構成されている。
【0036】
刈取部3は、3つのデバイダ10と、植立穀稈を刈取姿勢に引起す左右一対の引起装置11と、この引起装置11で引起された植立穀稈の株元を切断するバリカン型の刈取装置12とを備えると共に、刈取装置12で刈り取られた刈取穀稈を脱穀装置5のフィードチェーン5Fに供給する供給搬送装置13を備えている。この刈取部3は、油圧シリンダ14の駆動により、横向き姿勢の軸芯pを中心にして揺動する形態で昇降し、電動型の刈取部スライドユニット(図示せず)の作動により左右方向にスライド移動自在に構成されている。図面には詳細を示していないが、供給搬送装置13は、刈取穀稈の株元を挟持搬送する搬送チェーンと、刈取穀稈の穂先を係止搬送する多数の係止爪とを有しており、引起装置11で起立姿勢に達した刈取穀稈を搬送に伴い横向き姿勢に変換し、穂先側を脱穀装置5に挿入する形態で脱穀装置5のフィードチェーン5Fに受け渡す搬送を行う。
【0037】
左右の引起装置11は、植立穀稈に当接して刈取に適した起立姿勢に引き上げるため上方に向けて循環作動する複数の引起爪11Aを備えている。特に、右側の引起装置11は、2条の植立穀稈の引起の行えるように、引起爪11Aが移動する経路のうち、地面に最も近い位置では地面に沿って左側から右側に引起爪11Aを移動させ、この後に上方に移動させるように循環作動経路が形成されている。
【0038】
運転部4には、運転者が着座する運転座席15が備えられると共に、この運転座席15の前部にフロントパネル16が配置され、運転座席15の左側部にサイドパネル17が配置されている。図1に示す如く、フロントパネル16の上面はサイドパネル17の上面よりレベル差Lだけ低い位置に設定され、これにより前方への視界を良好にしながら、サイドパネル17の上面のレバー類等の設定状態をレバーガイド等に記された情報から正確に把握できるものにしている。尚、フロントパネル16の上面は前部が高くなる姿勢で傾斜しており、サイドパネル17は前部が後部より高く、前部はフロントパネル16と同様に傾斜しており、前述したレベル差Lは、このフロントパネル16とサイドパネル17とのレベル差の平均値である。
【0039】
図4〜図5に示すように、フロントパネル16には縦向き姿勢のステアリングレバー18と、エンジンスタートスイッチ19と、エンジンの強制停止スイッチ20と、掻込スイッチ21と、刈取スライドスイッチ22とが備えられている。フロントパネル16の右側の端部から上方に立設されたサポートフレーム23の上端部分を水平姿勢に屈曲してステアリングレバー18の後方位置まで延出しており、この延出部分に操作サポート部24を備えている。
【0040】
操作サポート部24はゴムやスポンジ等の可撓性の性質を有する素材が用られ、ステアリングレバー18のグリップ18Gの後方位置にはグリップ18Gを握った手や腕を支持する位置に配置されている。また、この操作サポート部24は上面のサポート面24Sには幅方向に亘る領域で僅かに凹状に窪む平坦な凹状面を形成しており、この凹状面の幅方向の中央位置を、中立姿勢のステアリングレバー18の位置より少し右側に変位して形成している。このような構成から、作業時には、操作サポート部24のサポート面24Sの凹状面で運転者の手や腕を受け止める形態で支持することで運転者の手や腕を安定的に支持して運転者の疲労を軽減して快適な作業を実現する。
【0041】
特に、フロントパネル16の上面でステアリングレバー18の近傍左側には、刈取作業時において運転者が植立穀稈と、デバイダ10との位置関係を参照する表示部Vを備えている。この表示部Vの詳細については後述する。
【0042】
サイドパネル17の前端位置には作業メータとして機能する液晶型のディスプレイ26が備えられ、この後方位置には主変速レバー27、刈取クラッチレバー28等が配置されている。
【0043】
ステアリングレバー18は、非操作状態で略直立する中立姿勢を維持し、この中立姿勢を基準にして左右方向と前後方向とに揺動操作自在に支持されている。このステアリングレバー18を左右に揺動操作することにより走行機体2の操向・旋回を行い、前後方向に揺動操作することにより刈取部3の昇降が行われる。
【0044】
エンジンスタートスイッチ19は、キーを挿入して回転操作することでエンジンを始動する一般的な構成を有している。強制停止スイッチ20は、押し操作することでエンジンの強制的な停止を実現する。掻込スイッチ21は、刈取作業時に押し操作することで刈取クラッチを入り状態の維持したまま走行機体2の走行を停止させ刈取部3の刈取穀稈の脱穀装置5への搬送を促進させる。刈取スライドスイッチ22は非操作状態で上面が中立姿勢を維持し、上面の右端を押し操作することで刈取部3を右方向にスライドさせ、上面の左端を押し操作することで刈取部3を左方向にスライドさせる制御を実現する。
【0045】
主変速レバー27は、無段変速装置(図示せず)と連動することで走行速度の無段階の変速を行うものであり、走行機体2を停車させる停車状態と、前進走行速度を無段階に変速する状態と、後進走行速度を無段階に変速する状態とを現出する。刈取クラッチレバー28は刈取部3に伝えられる駆動力の断続を行う刈取クラッチ(図示せず)と、脱穀装置5に伝えられる駆動力の断続を行う脱穀クラッチ(図示せず)との操作を行い、前側の「作業」位置に設定されると刈取クラッチと脱穀クラッチとを入り操作し、後側の「移動」位置に設定されると刈取クラッチと脱穀クラッチとを切り操作する。
【0046】
このような構成から、このコンバインで刈取作業を行う場合には、刈取部3を地面近くまで下降させ、刈取部3と脱穀装置5とを駆動した状態(刈取クラッチレバー28を「作業」位置に設定した状態で)で走行機体2を前進させることにより、刈取部3で植立穀稈の刈り取りが行われ、刈り取られた刈取穀稈が供給搬送装置13で脱穀装置5に供給される。脱穀装置5ではフィードチェーン5Fによって刈取穀稈の搬送を行いながら脱穀処理が行われ、脱穀処理により得られた処理物から穀粒を選別して穀粒タンク6に貯留し、処理後の刈取穀稈は排ワラとして排ワラ処理装置8が処理を行い走行機体2の後方に排出する。
【0047】
〔刈取作業の形態〕
図2及び図8に示すように、刈取部3には、3つのデバイダ10として、左端の左デバイダ10Lと、右端の右デバイダ10Rと、中間位置の中間デバイダ10Mとを備えている。左デバイダ10Lの先端と、右デバイダ10Rの先端との間隔が全刈幅Wであり、この全刈幅Wが3条の植立穀稈の導入が可能な値に設定されている。また、左デバイダ10Lの先端と中間デバイダ10Mの先端との間隔が左刈幅W1であり、この左刈幅W1が1条の植立穀稈の導入が可能な値に設定されている。中間デバイダ10Mの先端と右デバイダ10Rの先端との間隔が右刈幅W2であり、この右刈幅W2が2条の植立穀稈の導入が可能な値に設定されている。
【0048】
図8(a)、(b)には、未刈状態の植立穀稈を○で示し、既刈株(既刈りの穀稈の株)を×で示しており、廻り刈り作業では、図8(a)に示すように、走行機体2の左側に未刈状態の植立穀稈が存在し、走行機体2の右側に既刈株が存在する状態で、左刈幅W1と右刈幅W2との領域に1条の植立穀稈を導入して2条の植立穀稈の刈取りが行われる。また、中割作業のように刈取時に走行機体2の左右両側に未刈状態の植立穀稈が存在する作業形態では、図8(b)に示すように、左刈幅W1に1条の植立穀稈を導入し、右刈幅W2に2条の植立穀稈を導入することで3条の植立穀稈の刈取りを行う。
【0049】
刈取部3のデバイダ10に対して植立穀稈を適正な位置関係に設定する操作を「条あわせ」と称しており、この「条あわせ」はステアリングレバー18の操作により行うのが基本であるが、刈取部3のスライド作動によっても補助的に行われる。特に、中割作業が行われる場合には、右側のクローラ走行装置1(クローラベルト)で未刈状態の植立穀稈を踏み付けないように、刈取部3を右端までスライドさせる状態が選択され、この状態では、左右のクローラ走行装置1の幅方向で中央位置に刈取部3が設定される。
【0050】
〔表示部〕
このコンバインでは、「条あわせ」により植立穀稈を3つのデバイダ10に対して最適な位置関係で導入することが重要となり、この導入を実現するために前述した表示部Vにおいて、植立穀稈とデバイダとの位置関係を参照するためのイメージで成る参照情報が示されている。表示部Vは、図4及び図7に示すように、フロントパネル16の上面においてステアリングレバー18の近傍の左側に貼着したプリントラベル31で構成され、このプリントラベル31には、参照情報として、植立穀稈イメージVsと、既刈株イメージVtと、3つのデバイダイメージV10とを運転者が視覚により見た姿をシンボル化したイメージとしてプリントされている。また、このように形成される表示部Vは、主変速レバー27より前部位置に配置される。このよう表示部Vを形成したためデバイダイメージV10と植立穀稈との相対的な位置関係を直感的に把握して適正な操作による「条あわせ」を可能にする。
【0051】
図7に示される参照情報は、廻り刈り作業における植立穀稈イメージVsと、既刈株イメージVtと、デバイダイメージV10との相対的な位置関係を示している。前述したように、ステアリングレバー18の近傍の左側の位置は、運転座席15に着座した運転者が右デバイダ10R(廻り刈り作業で既刈り側の端部に配置されたもの)を直線的に見通す領域の下側(視線の下側)であり、この位置に表示部Vを配置することで、「条あわせ」において視線を大きく動かすことなく表示部Vの参照情報を参照して誤りのない操向操作を行えるようにしている。
【0052】
本発明では、刈取部3が、廻り刈り作業で2条の植立穀稈の導入が可能に構成されるものに限るものではなく、廻り刈り作業において3条以上の所定数の植立穀稈を導入が可能な刈取部3を備え、中割作業では1条の植立穀稈を更に導入できるように構成されたコンバインに適用しても良い。このように構成されるコンバインでもデバイダ10と植立穀稈との左右方向での位置関係を参照するための表示部Vを備えることで、植立穀稈に対するデバイダの相対的な位置関係を適正に設定して刈取作業を行える。
【0053】
〔第1実施形態の別実施形態〕
図4に仮想線で示すように、表示部Vをステアリングレバー18の右側に配置して良く、ステアリングレバー18の後側に配置しても良い。尚、ステアリングレバー18の右側に表示部Vを配置する構成は、ステアリングレバー18が同図に示す位置より左側に偏位している場合や、右デバイダ10Rが更に右側に偏位している場合に対応するものであり、この配置によって運転者が表示部Vの参照情報を容易に把握できる。ステアリングレバー18の後側に表示部Vが配置する構成は、ステアリングレバー18の後方のフロントパネル16の広い空領域の有効利用が可能となり、大きいサイズの表示部Vを形成することが可能となる。
【0054】
更に、表示部Vをサイドパネル17の上面で、主変速レバー27より前方位置に形成しても良い。このようにサイドパネル17の上面に形成した場合に、サイドパネル17の上面がフロントパネル16の上面より高い位置に形成されているので、表示部Vの参照情報を視認しやすい状態となる。また、表示部Vをフロントパネル16とサイドパネル17との何れに形成する場合でも、表示部Vをパネル上面に対してプリント(印刷)により形成しても良い。これによりプリントラベルと用いた場合のように剥がれる不都合を招くことがない。更に、参照情報がプリントされたプリントラベル31を複数枚用いることで複数箇所に表示部Vを形成しても良い。
【0055】
図11に示すように、サポートフレーム23を下部フレーム23aと、この下部フレーム23aに対して上下にスライド移動自在に挿入される上部フレーム23bとで構成すると共に、スライド移動量を調節するクランプ51とクランプボルト52とを備える。この構成から、下部フレーム23aに対する上部フレーム23bのスライド量を設定しクランプボルト52で固定することで、操作サポート部24の高さを任意のレベルに設定することが可能となる。また、同図に示すように上部フレーム23bの上端の横フレーム部23cに対し、この横フレーム部23cの軸芯Xを中心にして回転自在に操作サポート部24を外嵌し、この操作サポート部24を任意の回転姿勢で固定するロックボルト53を備える。この構成から、操作サポート部24のサポート面24Sの軸芯Xを中心とする回転姿勢を設定し、ロックボルト53で固定することで、サポート面24Sの姿勢を任意に設定することが可能となる。この操作サポート部24の高さ調節と、サポート面24Sの揺動姿勢の調節とにより、運転者の体格や操作姿勢に対応した高さに操作サポート部24の高さを設定する、又は、角度を設定することで楽な姿勢での作業を実現する。
【0056】
〔第1実施形態の作用・効果〕
このように本発明によると、廻り刈り作業で「条あわせ」を行う場合には、複数のデバイダ10と植立穀稈との左右方向での適正な位置関係を表示部Vの参照情報から把握し、この参照に基づいて走行機体2を操向制御することや、刈取部3をスライドさせることにより、複数のデバイダ10と植立穀稈との左右方向での位置関係を最適に設定して刈取作業を行える。また、表示部Vの参照情報が、図7に示す如く、植立穀稈イメージVsと、既刈株イメージVtと、3つのデバイダイメージV10とを運転者が視覚により見た姿をシンボル化したイメージよって構成され、しかも、この表示部Vが運転座席15に着座した運転者が右デバイダ10Rを直線的に見通す領域の下側(視線の下側)に配置されているため、運転者が視線を大きく移動させることなく、デバイダ10と植立穀稈との相対的な位置関係を即座に把握して適正な操向操作を可能にする。
【0057】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
ディスプレイ26は、LCDや有機ELD等が使用されるものでありエンジンの回転速度や、冷却水温度や、オイルメータ等が表示される作業用メータとして用いられる。このディスプレイ26の電気的な制御により参照情報を表示することで、このディスプレイ26を表示部Vとして構成する。
【0058】
表示部Vを構成するため図10に示すように、刈取スライドスイッチ22と、表示切換スイッチ33と、作業情報を取得する作業情報取得系Sと、走行機体2の走行方向を判別するGPSユニット35とからの信号が入力する制御装置40を備え、この制御装置40から刈取部3のスライド作動を行う刈取部スライドユニット34と、ディスプレイ26とに制御信号を出力する信号系を構成している。作業情報取得系Sは、エンジン回転速度や冷却水の水温を検出する温度センサや、オイル圧力を検出する圧力センサ等からの情報を制御装置40に入力する。
【0059】
制御装置40は、マイクロプロセッサを備え、ソフトウエアで構成されるスライド制御手段41(スライド位置判別手段としての機能も有する)と、作業形態判別手段42と、情報表示手段43と、参照イメージ生成手段44とを備えている。尚、これらをハードウエアで構成して良く、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせにより構成しても良い。
【0060】
スライド制御手段41は、刈取スライドスイッチ22の操作に基づいて刈取部スライドユニット34を制御して刈取部3のスライド作動を実現し、刈取部3のスライド位置(走行機体2に対する横方向での位置)を判別するスライド位置判別手段として機能する。つまり、「条あわせ」を行う場合に、刈取スライドスイッチ22が押し操作されている場合にだけ刈取部スライドユニット34の作動を行い、押し操作が解除されると作動を停止するように制御形態が設定され、刈取部3のスライド位置を判別した判別情報を作業形態判別手段42に与える。また、刈取部3を右端にセットすることにより、中割作業が実現する。
【0061】
作業形態判別手段42は、刈取部3のスライド位置が右端にある場合に、中割作業であると判別し、右端以外の位置にある場合に廻り刈り作業であるとの判別を行う。情報表示手段43は、表示切換スイッチ33の押し操作により、ディスプレイ26に取得情報を表示するメータ表示モードと、ディスプレイ26に参照情報を表示する参照情報表示モードとの切換を行う。
【0062】
情報表示手段43は、(1)メータ表示モジュールと、(2)参照情報表示モジュールとを備えており、表示切換スイッチ33の操作でメータ表示モードが選択された場合には、メータ表示モジュールの情報をディスプレイ26に出力することでディスプレイ26を作業用メータとして機能させる。また、参照情報表示モードが選択された場合には、参照情報表示モジュールの情報をディスプレイ26に出力することでディスプレイ26を表示部Vとして機能させる。
【0063】
メータ表示モジュールは、作業情報取得系Sからの情報をディスプレイ26に表示し、参照情報表示モジュールは、図9に示す4種の参照情報のいずれか1つをディスプレイ26に表示する。また、この参照情報を表示する際には、スライド制御手段41(スライド位置判別手段)で判別されたスライド位置に対応する植立穀稈とデバイダ10との適正な位置関係をディスプレイ26に表示することになる。
【0064】
参照イメージ生成手段44は、図9に示す4種の参照情報を生成する。具体的には、図9(a)に示すように2条の植立穀稈を刈取部3に導入するための参照情報と、図9(b)に示すように3条の植立穀稈を刈取部3に導入するための参照情報と、図9(c)に示すように中割作業に対応して3条の植立穀稈を刈取部3に導入するための参照情報と、図9(d)に示すように1条の植立穀稈を刈取部3に導入するための参照情報とを生成し、これらの参照情報を情報表示手段43に与える。
【0065】
〔制御形態〕
このコンバインでは、表示切換スイッチ33の操作によってメータ表示モードを選択した場合には、作業情報取得系Sで取得した情報がディスプレイ26に表示され、参照情報表示モードを選択した場合には、作業形態判別手段42が判別した作業形態に対応した参照情報がディスプレイ26に表示される。つまり、表示切換スイッチ33の操作によって参照情報表示モードを選択したタイミングで、作業形態判別手段42が廻り刈り作業であることを判別した場合には、GPSユニット35が判別した走行方向に基づいて図9(a)(b)(d)に示す3種の参照情報の何れか1つがディスプレイ26に表示され、中割作業であることを判別した場合には、図9(c)に示す参照情報がディスプレイ26に表示される。特に、ディスプレイ26に表示される参照情報は点滅させる形態で表示することや、植立穀稈イメージVsと既刈株イメージVtとを走行機体2の走行速度と同期する速度で移動するようにアニメーション表示しても良い。
【0066】
尚、廻り刈り作業では、基本的に図9(a)の参照情報が表示されるが、GPSユニット35の判別に基づく走行機体2の走行方向により図9(b)に示す3条の植立穀稈、又は、図9(d)に示す1条の植立穀稈を刈取部3に導入する導入形態も採用される。尚、走行方向に基づいて3種の参照情報の何れか1つを表示する場合、走行方向と参照情報との関係が予めセットされるものであるが、作業開始時に運転者が走行方向と参照情報との関係付けを人為的に行うものでも良い。
【0067】
〔第2実施形態の別実施形態〕
この第2実施形態では、サイドパネル17の前部位置に配置したディスプレイ26を表示部Vに兼用していたが、液晶表示型のように電気的な制御で参照情報の表示が可能な表示部Vをフロントパネル16に形成しても良い。このようにフロントパネル16にディスプレイ26で構成される表示部Vを形成する場合に、ステアリングレバー18の左側、右側、後側の何れに配置しても良く、参照情報を専用に表示するように構成しても良い。
【0068】
廻り刈りを行う場合には、図9(a)(b)(d)の何れか1つを運転者が選択して表示するための選択スイッチを備えても良い。
【0069】
また、中割作業を設定する専用のスイッチを備え、このスイッチが操作された場合に、刈取部3を右端までスライドさせると共に、ディスプレイ26に対して図9(b)に示す如く、中割作業に対応して3条の植立穀稈を刈取部3に導入するための参照情報を表示するように制御装置40の制御形態を設定しても良い。
【0070】
〔第2実施形態の作用・効果〕
このように本発明によると、「条あわせ」を行う場合には、表示切換スイッチ33の操作で参照情報をディスプレイ26に表示することにより、このディスプレイ26には作業形態に対応した参照情報が表示される。廻り刈り作業では、3種の参照情報のうちの1つが自動的に選択され、植立穀稈を導入するための参照情報が表示され、中割作業では刈取部3に3条の植立穀稈を導入するための参照情報が表示されるため、運転者は、複数のデバイダ10と植立穀稈との左右方向での適正な位置関係を表示部Vで参照し、複数のデバイダ10と植立穀稈との左右方向での位置関係を最適に設定して刈取作業を行える。
【0071】
また、ディスプレイ26に表示される参照情報が、図9に示す如く、植立穀稈イメージVsと、既刈株イメージVtと、3つのデバイダイメージV10とを運転者が視覚により見た姿をシンボル化したイメージよって構成されているため、デバイダ10と植立穀稈との相対的な位置関係を即座に把握して適正な操作を可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、走行機体の前端位置に複数のデバイダを有する刈取部が備えられ、走行機体の前部位置に運転部が備えられているコンバイン全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
2 走行機体
3 刈取部
4 運転部
10 デバイダ
16 フロントパネル
17 サイドパネル
18 ステアリングレバー
18G グリップ
24 操作サポート部
26 ディスプレイ
27 変速レバー(主変速レバー)
31 プリントラベル
41 スライド位置判別手段(スライド制御手段)
42 作業形態判別手段
43 情報表示手段
V 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前端位置に複数のデバイダを有する刈取部が備えられ、走行機体の前部位置に運転部が備えられているコンバインであって、
刈取時において植立穀稈に対する複数の前記デバイダの左右方向での位置を決める際に、運転者が前記デバイダと前記植立穀稈との左右方向での適正な位置関係を参照するための表示部が前記運転部に備えられているコンバイン。
【請求項2】
前記表示部が、前記植立穀稈と前記デバイダとを運転者が視覚により見た姿をシンボル化したイメージで成る参照情報を表示している請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記刈取部の複数の前記デバイダのうち、既刈側の端部に配置されたものを前記運転部から直線的に見通す領域の下側に前記表示部が配置されている請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記運転部の前部にフロントパネルが配置され、前記運転部の側部にサイドパネルが配置され、前記表示部が前記フロントパネル又は前記サイドパネルのうち走行用の変速レバーより前側位置に備えられている請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記フロントパネルの上面が、前記サイドパネルの上面より低い位置に設定されている請求項4記載のコンバイン。
【請求項6】
前記フロントパネルにステアリングレバーが配置され、このステアリングレバーの左側に前記表示部が配置されている請求項4又は5記載のコンバイン。
【請求項7】
前記フロントパネルにステアリングレバーが配置され、このステアリングレバーの右側に前記表示部が配置されている請求項4又は5記載のコンバイン。
【請求項8】
前記フロントパネルにステアリングレバーが配置され、このステアリングレバーの後側に前記表示部が配置されている請求項4又は5記載のコンバイン。
【請求項9】
前記ステアリングレバーの後部位置に、前記ステアリングレバーのグリップを握った手又は腕を受け止める操作サポート部が配置されている請求項6〜8のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項10】
前記表示部として、前記参照情報をプリントしたプリントラベルを用い、このプリントラベルを貼着することによって前記表示部が構成されている請求項1〜9のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項11】
前記表示部が、前記参照情報を前記運転部の前部位置の部材の上面にプリントして形成されている請求項1〜9のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項12】
前記表示部が、電気的な制御で前記参照情報の表示が可能なディスプレイで構成されている請求項1〜9のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項13】
前記ディスプレイが、作業時に必要な情報を表示する作業用メータと兼用されている請求項12記載のコンバイン。
【請求項14】
植立穀稈を収穫する作業形態を判別する作業形態判別手段を備え、この作業形態判別手段で判別された作業形態に対応する前記植立穀稈と前記デバイダとの左右方向での適正な位置関係を前記ディスプレイに表示する情報表示手段を備えている請求項12又は13記載のコンバイン。
【請求項15】
前記刈取部が、前記走行機体に対して横方向にスライド移動自在に支持されると共に、前記刈取部のスライド位置を判別するスライド位置判別手段を備え、このスライド位置判別手段で判別されたスライド位置に対応する前記植立穀稈と前記デバイダとの左右方向での適正な位置関係を前記ディスプレイに表示する情報表示手段を備えている請求項12又は13記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−46585(P2013−46585A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186327(P2011−186327)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】