説明

コンパクト型空気調和機

【課題】騒音自体を低減するとともに、定在波による異常騒音を低減し、かつ送風機性能を向上させることができるコンパク型空気調和機を提供する。
【解決手段】ケーシング100の給気通風路に送風機401を備え、送風機401が羽根回転軸廻りに吐出口404を有し、送風機の吐出口404に対向する壁面をなす閉鎖板403が羽根回転軸と直交する面に対して非垂直な傾斜面をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンパクト型空気調和機に関し、ケーシング内での異常騒音を低減する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機としては、例えば図6および図7に示すものがある。これはケーシング1の内部に、還気セクション2、コイルセクション3、給気セクション4を設けている。還気セクション2では、還気口21から還流する空気を例えば中性能フィルタ等のフィルタ22で濾過する。コイルセクション3では、還気セクション2からフィルタ22を通して吸込んだ空気の温度、湿度を冷水コイル31、温水コイル32および気化式加湿器33により調える。給気セクション4では、コイルセクション3から流入する空気を例えばプラグファン等の送風機41により給気口42から給気する。
【0003】
先行技術としては特許文献1に記載する空気調和機がある。これは、ケーシングの給気通風路にファン装置を備えるものであり、ファン装置のベースプレートそれ自体が給気通風路を仕切る隔壁をなしている。ベースプレートは緩衝手段を介して取付架台に支持されており、ベースプレートの外周縁に設けたシール手段が給気通風路の壁面との間を気密に封止し、かつ壁面に摺接して防振機能を発揮する。
【0004】
また、特許文献2に記載する送風装置では、送風ユニットケースが互いに対向する前後一対の短辺側壁面と左右一対の長辺側壁面を有しており、内部にチャンバを有するとともに、上部に吐出口を備えている。送風ユニットケースの内部にハウジングレスのターボファンを収容しており、このターボファンは空気取入口から吸込んだ空気を送風ユニットケースの内部に吐出するようになっている。送風ユニットケースの短辺側壁面の上下方向中間部と、吐出口の開口縁部との間に風案内板が配置されている。風案内板と壁面のなす角度は15°〜35°の範囲にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−271141号公報
【特許文献2】特開平6−281194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図8および図9に示すものでは、ケーシング1の給気セクション4において鉛直軸廻りで送風機41の周囲を囲む4つの壁面4a、4b、4c、4dは垂直面をなし、相対向する壁面4aと壁面4bまたは壁面4cと壁面4dが平行壁をなしている。
【0007】
このため、給気セクション4の平行壁間に発生する定在波は、平行壁の壁間距離、つまり相対向する壁面4aと壁面4bまたは壁面4cと壁面4dの壁間距離と、送風機41のファン羽根周波数から求められる送風機41で発生する騒音の波長が一致したときに大きな騒音が生じ易くなる。
【0008】
また、送風機41が周囲の壁面4a、4b、の距離が小さい場合に、送風抵抗が大4c、4dに向けて空気を吐出する構造にあって、送風機41と壁面4a、4b、4c、4dときくなって送風機性能が低下し、騒音レベルが増大する。
【0009】
本発明は上記した課題を解決するものであり、騒音自体を低減するとともに、定在波による異常騒音を低減し、かつ送風機性能を向上させることができるコンパクト型空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のコンパクト型空気調和機は、ケーシングの給気通風路に送風機が備えられ、給気通風路の壁面のうちで少なくとも1つの壁面が通風方向と直交する面に対して非垂直な面を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のコンパクト型空気調和機において、羽根回転軸廻りに吐出口を有した送風機が羽根回転軸を通風方向と平行となるように備えられ、給気通風路の壁面のうちで送風機の吐出口に対向し、かつ給気通風路とケーシング内の他の領域とを隔てる閉鎖板からなる壁面が羽根回転軸と直交する面に対して非垂直な傾斜面を有し、少なくとも送風機の吐出口に対向する部分がケーシング内の他の領域へ張り出すことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のコンパクト型空気調和機において、前記閉鎖板が下方から上方へ行くほどにケーシング内の他の領域へ張り出すように形成され、ケーシング内の他の領域から給気通風路へ空気を導くガイドをなすことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のコンパクト型空気調和機において、給気通風路が熱交換器を備えたケーシング内の他の領域と前記閉鎖板を介して隣接することを特徴とする。
また、本発明のコンパクト型空気調和機において、送風機の羽根回転軸廻りで吐出口に対向するケーシングの扉の内側面に羽根回転軸と直交する面に対して非垂直な傾斜面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、給気通風路の壁面のうちで少なくとも1つの壁面が通風方向と直交する面に対して非垂直な傾斜面を有し、または送風機の羽根回転軸廻りで吐出口に対向する壁面のうちで少なくとも1つの壁面が羽根回転軸と直交する面に対して非垂直な傾斜面を有することで、この非垂直な傾斜面への入射波と傾斜面からの反射波とによる定在波は発生しないので、定在波による異常騒音を低減することができる。
【0015】
また、給気通風路とケーシング内の他の領域とを隔てる閉鎖板からなる壁面が少なくとも送風機の吐出口に対向する部分において羽根回転軸と直交する面に対して非垂直な傾斜面を有してケーシング内の他の領域側へ張り出すことにより、ケーシングの外形寸法を大きくすることなく、給気通風路の容積を増加させることができるとともに、送風機の羽根回転軸廻りで吐出口に対向する壁面のうちで少なくとも1つの壁面と送風機の吐出口との距離を大きくすることができるので、騒音自体を低減するとともに、送風機性能を向上させることができる。
【0016】
閉鎖板が非垂直な傾斜面をなして下方から上方へ行くほどにケーシング内の他の領域側へ張り出すことで、閉鎖板はケーシング内の他の領域から給気通風路へ空気を導くガイドをなし、送風機への空気の吸込が円滑となる。
【0017】
また、本発明のコンパクト型空気調和機において、給気通風路が熱交換器を備えたケーシング内の他の領域と閉鎖板を介して隣接し、閉鎖板が熱交換器を備えたケーシング内の他の領域側へ張り出すことで、熱交換器を備えたケーシング内の他の領域におけるデッドスペースを利用して給気通風路を拡張することができ、騒音自体を低減するとともに、定在波による異常騒音を低減し、かつ送風機性能を向上させることができる。
【0018】
また、ケーシングの扉の内側面に羽根回転軸と直交する面に対して非垂直な傾斜面を形成することで定在波による異常騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態における空気調和機を示す正面図
【図2】同空気調和機の要部を示す図
【図3】同空気調和機を示す平面図
【図4】同空気調和機の要部を示す斜視図
【図5】同空気調和機の要部を示す斜視図
【図6】本発明の他の実施の形態における空気調和機を示す正面図
【図7】同空気調和機の要部を示す模式図
【図8】従来の空気調和機を示す平面図
【図9】同空気調和機を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1から図5において、空気調和機はケーシング100の外壁が固定したパネル体からなり、正面側のパネル体が後述する各セクションの開閉扉をなす。ケーシング100の内部には、還気セクション200、コイルセクション300、給気セクション400を設けている。
【0021】
還気セクション200は還気通風路を形成しており、天面に還気口201を有し、コイルセクション300との間に中性能フィルタ等のフィルタ202を備えている。フィルタ202はケーシング100の底面側に立設しており、還気セクション200は正面側に開閉扉203を有している。
【0022】
コイルセクション300は調整通風路を形成しており、内部に冷水コイル301、温水コイル302および気化式加湿器303を備えている。冷水コイル301、温水コイル302および気化式加湿器303はケーシング100の底面側に立設している。冷水コイル301は還気セクション200のフィルタ202に隣接して配置し、冷水コイル301の下流側に温水コイル302および気化式加湿器303を順次に配置している。コイルセクション300は正面側に開閉扉304を有している。
【0023】
給気セクション400は給気通風路を形成しており、ここでは内部にプラグファンの送風機401を備え、天面に給気口402を有している。給気セクション400は送風機401を境として下部領域側がコイルセクション300に連通し、送風機401を境とする上部領域側の給気通風路が閉鎖板403を介してコイルセクション300の調整通風路と隣接している。給気通風路の壁面のうちで少なくとも1つの壁面、ここでは閉鎖板403が給気通風路における流路軸心方向に沿った通風方向と直交する面に対して非垂直な面を有している。
【0024】
送風機401はハウジングのないプラグファンを用いており、羽根回転軸廻りに吐出口404を有している。送風機401は羽根回転軸を通風方向と平行となるように備えられ、給気セクション400において送風機401の吐出口404に対向する給気通風路の壁面のうちで少なくとも1つの壁面が羽根回転軸と直交する面に対して非垂直な傾斜面をなしており、本実施の形態では閉鎖板403が羽根回転軸と直交する面に対して非垂直な傾斜面を有している。
【0025】
すなわち、閉鎖板403を介して給気セクション400の上部領域がコイルセクション300の上部領域と隣接し、閉鎖板403が下方から上方へ行くほどにコイルセクション300の上部領域側へ張り出しており、少なくとも送風機401の吐出口404に対向する部分がケーシング内の他の領域へ張り出している。
【0026】
このように閉鎖板403が下方から上方へ行くほどにコイルセクション300の領域側へ張り出すことで、閉鎖板403がコイルセクション300の調整通風路から給気セクション400の給気通風路へ空気を導くガイドをなす。閉鎖板403の内面にはグラスウール等の吸音材405を設けている。
【0027】
また、給気セクション400は正面側に開閉扉406を有し、開閉扉406は送風機401の羽根回転軸廻りで吐出口404に対向しており、この開閉扉406の内面側に羽根回転軸と直交する面に対して非垂直な傾斜面を形成することも可能である。この傾斜面は開閉扉406とは別途の部材で形成することも可能であるし、開閉扉406それ自体に形成することも可能である。
【0028】
上記した構成において、空気調和機は送風機401の運転による送風により給気し、吸引により還気を行なう。運転時に負圧となる還気セクション200では、還気口201か吸込む空気が還流し、この空気をフィルタ202で濾過する。運転時に負圧となるコイルセクション300では、還気セクション200からフィルタ202を通して吸込んだ空気の温度、湿度を冷水コイル301、温水コイル302および気化式加湿器303により調える。運転時に正圧となる給気セクション400では、コイルセクション300から流入する空気を送風機401により給気口402から給気する。
【0029】
給気セクション400では、送風機401の羽根回転軸廻りで吐出口404に対向する壁面のうちで少なくとも1つの壁面、ここでは閉鎖板403が羽根回転軸と直交する面に対して非垂直な傾斜面をなすことで、この非垂直な傾斜面への入射波と傾斜面からの反射波とによる定在波は発生しないので、定在波による異常騒音を低減することができる。
【0030】
また、給気セクション400の給気通風路とケーシング100の内部の他の領域、ここではコイルセクション300とを隔てる閉鎖板403からなる壁面が羽根回転軸と直交する面に対して非垂直な傾斜面をなしてコイルセクション300の領域側へ張り出すことにより、コイルセクション300におけるデッドスペース、つまり冷水コイル301、温水コイル302、気化式加湿器303等の機器の上方領域を利用して給気通風路を拡張することができ、ケーシング100の外形寸法を大きくすることなく、給気セクション400の給気通風路の容積を増加させることができるとともに、送風機401の羽根回転軸廻りで吐出口404に対向する壁面のうちで少なくとも1つの壁面、ここでは閉鎖板403と送風機401の吐出口404との距離を大きくすることができるので、騒音自体を低減するとともに、送風機性能を向上させることができ、定在波による異常騒音を低減できる。また、送風機401の周りの空間容積を損なうことなく、吸音材405を配置することができる。
【0031】
閉鎖板403が非垂直な傾斜面をなして下方から上方へ行くほどにコイルセクション300の領域側へ張り出すことで、閉鎖板403はコイルセクション300の領域から給気通風路へ空気を導くガイドをなし、送風機への空気の吸込が円滑となる。
【0032】
開閉扉406の内面側に羽根回転軸と直交する面に対して非垂直な傾斜面を設けることでも、定在波による異常騒音を低減できる。
尚、上記各実施の形態では、閉鎖板403は下方から上方へ行くほどにケーシング内の他の領域側へ張り出していたが、図6に示すように、閉鎖板の中間部分から給気口402側へ向かうようにクの字状に折り曲げた形状であってもよい。この場合、閉鎖板の下方側はケーシング内の他の領域から給気通風路へ空気を導くガイドをなし、閉鎖板の上方側が給気通風路内の空気を給気口へ導くガイドとなるので、空気の流れが円滑となり、騒音を低減することができる。
【0033】
また、図7に示すように、閉鎖板403は傾斜面が連続する山形の形状でもよい。この場合、先端部は僅かに垂直面を有していてもよい。
【符号の説明】
【0034】
100 ケーシング
200 還気セクション
201 還気口
202 フィルタ
203 開閉扉
300 コイルセクション
301 冷水コイル
302 温水コイル
303 気化式加湿器
304 開閉扉
400 給気セクション
401 送風機
402 給気口
403 閉鎖板
404 吐出口
405 吸音材
406 開閉扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの給気通風路に送風機が備えられ、給気通風路の壁面のうちで少なくとも1つの壁面が通風方向と直交する面に対して非垂直な面を有することを特徴とするコンパクト型空気調和機。
【請求項2】
羽根回転軸廻りに吐出口を有した送風機が羽根回転軸を通風方向と平行となるように備えられ、給気通風路の壁面のうちで送風機の吐出口に対向し、かつ給気通風路とケーシング内の他の領域とを隔てる閉鎖板からなる壁面が羽根回転軸と直交する面に対して非垂直な傾斜面を有し、少なくとも送風機の吐出口に対向する部分がケーシング内の他の領域へ張り出すことを特徴とする請求項1に記載のコンパクト型空気調和機。
【請求項3】
前記閉鎖板が下方から上方へ行くほどにケーシング内の他の領域へ張り出すように形成され、ケーシング内の他の領域から給気通風路へ空気を導くガイドをなすことを特徴とする請求項2に記載のコンパクト型空気調和機。
【請求項4】
給気通風路が熱交換器を備えたケーシング内の他の領域と前記閉鎖板を介して隣接することを特徴とする請求項2または3に記載のコンパクト型空気調和機。
【請求項5】
送風機の羽根回転軸廻りで吐出口に対向するケーシングの扉の内側面に羽根回転軸と直交する面に対して非垂直な傾斜面を有することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のコンパクト型空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−236735(P2010−236735A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83836(P2009−83836)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(000104836)クボタ空調株式会社 (31)
【Fターム(参考)】