説明

コーティング装置

【課題】粉粒体を攪拌するバッフルの形状に工夫を施すことで、回転ドラム内に積層される粉粒体層の滞留層において、粉粒体の攪拌混合効果を向上させることで、コーティング処理の品質と効率を高めることが可能なコーティング装置を提供すること。
【解決手段】バッフル4が、第1周壁部5bの内面に固定された基辺部4cと、基辺部4cの下端部から第2周壁部5cの内面との間に所定の間隙Bを維持しつつ他端部3の側に延びた下辺部4aと、基辺部4cの上端部から下辺部4aとの間の距離を漸次縮小させつつ他端部3の側に延びた上辺部4bと、上辺部4bから回転ドラム1の回転方向前方に所定角度で傾斜して延びた傾斜部4dとを備えるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、食品、農薬等の粉粒体のコーティング、混合、乾燥等を行うコーティング装置に関し、特に、軸線回りに回転駆動される回転ドラムを備えたコーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、食品、農薬等の錠剤、ソフトカプセル、ペレット、顆粒、その他これらに類するもの(以下、これらを総称して粉粒体という。)にフィルムコーティングや糖衣コーティング等を施すために、回転ドラムを備えたコーティング装置が使用されている。
【0003】
この種のコーティング装置は、例えば下記の特許文献1、2に開示されている。
【0004】
特許文献1は、処理すべき粉粒体が内部に収容され、回転ドラムの軸線が、水平線に対して、所定角度θをなし、その軸線回りに回転駆動される回転ドラムを備えたコーティング装置を開示している。このコーティング装置において、回転ドラムは、その軸線方向に沿って、傾斜上方側に位置する一端部と、傾斜下方側に位置する他端部と、一端部と他端部とを連続させる周壁部とを有している。
【0005】
回転ドラムは、その軸線が水平線に対して傾斜した状態(0°<θ<90°)で配設され、運転される。軸線の傾斜角度θは20°≦θ≦70°、より好ましくは30°≦θ≦45°、特にθ=30°又はθ=45°に設定される。
【0006】
回転ドラムの軸線が水平線に対して所定角度θで傾斜していることにより、回転ドラムの内部で処理し得る粉粒体の容積量が多くなるので、1回当りの処理量が増大して、生産効率が向上する。また、回転ドラムが傾斜した軸線の回りに回転することにより、回転ドラムの内部に収容された粉粒体は、回転ドラムの回転に伴い、回転方向への動きと軸線方向への動きを伴った状態で流動するので、粉粒体層の攪拌混合効果が高く、例えば、回転ドラムの内部にいわゆるバッフル(攪拌羽根)を配設していない場合でも、従来の装置に比べると充分な攪拌混合効果が得られる。もちろん、バッフルを併用すれば、より高い攪拌混合効果を得ることができる。回転ドラムの軸線を傾斜させる場合、通常、回転ドラムの後端部を傾斜下方側に位置させる。
【0007】
特許文献2は、水平線と平行な回転軸を中心に回転可能に配置された中空の処理容器と、処理容器内に設置され、処理容器に収容された被処理物を混合撹拌するバッフルとを備えてなるパンコーティング装置を開示している。バッフルは、処理容器の回転方向に対して斜め方向に延びる形で処理容器の内壁に設けられ、隣り合うバッフル同士はドラム回転方向に対して互いに逆方向に傾斜した状態で配置されると共に、回転方向に向かって前傾状態に設けられた作用面を有する傾斜翼と、バッフルの回転方向前方側に作用面を含んで形成され、処理容器の回転時に被処理物を抱え込みつつ横方向へ移動させる抱持部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−148292号公報
【特許文献2】特開2011−31126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された傾斜方向の軸線回りに回転駆動される回転ドラムを備えたコーティング装置によれば、回転ドラムに収容される粉粒体は、ドラムの回転による回転方向への動きと、ドラムの傾斜による軸線方向への動きとを伴った状態で流動するため、水平方向の軸線回りに回転駆動される回転ドラムを備えたコーティング装置と比較して、粉粒体層の攪拌混合効果に優れている。しかしながら、依然下記のような問題を抱えていた。
【0010】
回転ドラムの回転に伴って、回転方向前方に持ち上げられた粉粒体層の粉粒体は、やがて自重によって回転方向後方側に落下して粉粒体層に戻る。そして、粉粒体層に戻った粉粒体は、ドラムの軸線が水平線に対して傾斜していることにより、図1に示す傾斜上方側の一端部2から傾斜下方側の他端部3の方向へと流動する。その際、粉粒体層Aの流動は、重力の影響により、傾斜上方側の一端部2の付近では表層部の流動が緩慢になり、傾斜下方側の他端部3の付近では表層部からある深さの領域の流動が緩慢になる。このため、粉粒体層Aには、図1(a)に符号Tで示すような滞留層Tが存在し、この滞留層Tにおける粉粒体層Aの攪拌混合効果を高め、コーティング処理における品質と効率を改善する必要があった。
【0011】
また、図1(b)に示すように、回転ドラム内に収容される粉粒体が少量である場合においても、上記の滞留層Tは同様に存在することが判明している。また、この場合、ドラム内に収容される粉粒体Aが少量であるが故に、例えば、コーティング処理のためのスプレー液SをスプレーノズルNから粉粒体層Aに向けて噴霧する場合、粉粒体層Aから露出したバッフルにスプレー液Sが付着してしまい、円滑なコーティング処理の妨げとなってしまうことがある。このため、少量の粉粒体層Aを攪拌する場合においても、滞留層Tの撹拌混合効果を高め、コーティング処理における品質と効率を改善すると共に、回転ドラム内にバッフルを設置する場合には、その形状に工夫を施す必要があった。
【0012】
上記事情に鑑み、本発明の課題は、水平線に対して傾斜した軸線回りに回転駆動される回転ドラム内の粉粒体層の滞留層に対しても、攪拌混合効果を向上させることで、コーティング処理の品質と効率を高めることが可能なコーティング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために創案された本発明は、処理すべき粉粒体が内部に収容され、水平線に対して傾斜した軸線回りに回転駆動される回転ドラムを備えたコーティング装置であって、回転ドラムは、その軸線方向に沿って、傾斜上方側に位置する一端部と、傾斜下方側に位置する他端部と、一端部と他端部とを連続させる周壁部とを有し、周壁部は、その径が最大となる大径部と、該大径部から一端部に向かって漸次縮径する第1周壁部と、大径部から他端部に向かって漸次縮径する第2周壁部とで構成され、周壁部の内面には、粉粒体を攪拌するバッフルが設けられており、バッフルは、第1周壁部の内面に固定された基辺部と、基辺部の下端部から、第2周壁部の内面との間に所定の間隙を維持しつつ、他端部の側に延びた下辺部と、基辺部の上端部から、下辺部との間の距離を漸次縮小させつつ、他端部の側に延びた上辺部と、上辺部から回転ドラムの回転方向前方に所定角度で傾斜して延びた傾斜部とを備えていることに特徴付けられる。
【0014】
このような構成によれば、バッフルの上辺部が、第2周壁部と所定の間隙を維持しつつ他端部の側に延びる下辺部との距離を漸次縮小させつつ、他端部の側に延びる形状を有することにより、回転ドラムの回転中において、上辺部は、回転ドラム内に積層される粉粒体層の滞留層を繰り返し通過することになる。さらに、上辺部には回転ドラムの回転方向前方に傾斜して延びた傾斜部が設けられている。このため、上辺部とこれに設けられた傾斜部によって、滞留層に存在する流動の緩慢な粉粒体を効率よく回転ドラムの回転方向前方に持ち上げることができる。そして、バッフルによって回転方向前方に持ち上げられた粉粒体は、自重により回転方向後方側に落下して、粉粒体層に戻る。このようにして、粉粒体層の滞留層に対しても、バッフルによる混合攪拌作用が十分に発揮されることにより、粉粒体層全体の攪拌混合効果が高められる。また、回転ドラム内に収容される粉粒体が少量である場合においても、バッフルの上辺部が上記のような形状を有することにより、スプレー液の噴霧領域において、上辺部が粉粒体層から露出することが少なくなり、スプレー液がバッフルに付着してコーティング処理の妨げになる事態を抑制することができる。さらに、バッフルの下辺部と第2周壁部との間に間隙が存在することにより、回転ドラムの回転に伴いバッフルによって回転方向前方に持ち上げられる粉粒体の流動と、バッフルの下辺部と第2周壁部との間の間隙を自重により回転方向後方に通過する粉粒体の流動という2つの異なる粉粒体の流れが生み出される。このため、さらなる粉粒体層の攪拌混合効果の向上が可能となり、コーティング処理の品質と効率を高めることができる。
【0015】
上記の構成において、バッフルの上辺部は、他端部の側に直線状に延びるように構成してもよいし、他端部の側に凹曲線状に延びるように構成してもよい。
【0016】
特に、回転ドラム内に収容される粉粒体が少量であるような場合に、バッフルの上辺部が他端部の側に凹曲線状に延びた形状を有していれば、滞留層に存在する粉粒体の攪拌混合効果を損なうことなく、スプレー液の噴霧領域において、粉粒体層からバッフルの上辺部が露出することを低減することができる。
【0017】
上記の構成において、回転ドラムの周壁部は多角形の横断面形状を有し、周壁部の各辺部にそれぞれ前記バッフルが設けられていることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、回転ドラムの回転時に、回転ドラム内に収容された粉粒体は、各辺面によっても回転方向前方に持ち上げられ、その後自重によって回転方向後方に戻るという動きを繰り返すことになる。このため、粉粒体層の攪拌混合効果をより一層高めることが可能となる。
【0019】
上記の構成において、バッフルは、回転ドラムの軸線に沿って設けられていてもよい。
【0020】
このようにすれば、回転ドラムの軸線が水平線に対して傾斜していることにより、回転ドラムの回転時において、バッフルによって回転方向前方に持ち上げられる粉粒体は、可及的に高い位置まで持ち上げられるものと、持ち上げ中に自重によってバッフルから他端部の方向へと落下するものとが存在することになる。この異なる粉粒体の流れの発生によって、より一層粉粒体の攪拌混合効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、水平線に対して傾斜した軸線回りに回転駆動される回転ドラム内の粉粒体層の滞留層に対しても、攪拌混合効果を向上させることができ、コーティング処理の品質と効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】回転ドラム内に積層される粉粒体層を示す図であり、図1(a)は、通常量の粉粒体がドラム内に収容される場合、図1(b)は、少量の粉粒体がドラム内に収容される場合を示す図である。
【図2】第1及び第2実施形態に係るコーティング装置に備えられた回転ドラムを示す断面図である。
【図3】第1及び第2実施形態に係るコーティング装置に備えられた回転ドラムの半分割体を内面側から見た状態を示す立体図である。
【図4】図4(a)は、第1実施形態に係るコーティング装置に備えられた回転ドラムに設けられるバッフルの正面図であり、図4(b)は、図中のZ方向からの側面図である。
【図5】図5(a)は、第2実施形態に係るコーティング装置に備えられた回転ドラムに設けられるバッフルの正面図であり、図5(b)は、図中のY方向からの側面図である。
【図6】第2実施形態に係るコーティング装置に備えられた回転ドラムの変形例を示す部分断面図である。
【図7】図7(a)は、回転ドラムにおけるマーカー錠剤投入位置を示す斜視図で、図7(b)は、回転ドラムにおけるサンプリング箇所を示す斜視図である。
【図8】混合性の実験結果を示すグラフで、マーカー錠剤の標準偏差の時間推移を示す。
【図9】色差の時間推移を示すグラフである。
【図10】色差の標準偏差の時間推移を示すグラフである。
【図11】オブロング錠について色差の標準偏差の時間推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係るコーティング装置について添付の図2〜図5を参照して説明する。本発明の実施形態について説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する構成要素については、同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略している。
【0024】
まず、本発明の第1実施形態に係るコーティング装置の構成について説明する。本実施形態に係るコーティング装置には、図2に示す回転ドラム1が備えられている。回転ドラム1の軸線Cは水平線に対して所定角度で傾斜しており、回転ドラム1は軸線Cに沿って傾斜上方側に位置する一端部2と、傾斜下方側に位置する他端部3と、一端部2と他端部3を連続させる周壁部5とを有している。一端部2及び他端部3にはそれぞれ通気口が設けられ、一端部2の通気口は、処理気体を外部から回転ドラム1の内部に供給するための給気口となり、他端部3の通気口は、処理気体を回転ドラム1の内部から外部に排出するための排気口となる。他端部3には、乾燥エア等の処理気体の通気を制御する通気機構が配備されており、給気口を介して回転ドラム1の内部に供給された処理気体が、回転ドラム1の内部の粉粒体層中を通過して排気口から排出される。また、他端部3には、軸線Cの周りに回転ドラム1を回転させる図示しない回転駆動機構が接続される。
【0025】
周壁部5は、気密な構造を保有し、収容される粉粒体の攪拌混合効果を高めるため、例えば、10角形の横断面形状を有すると共に、その径が最大となる大径部5aと、大径部5aから一端部2に向かって漸次縮径する第1周壁部5bと、大径部5aから他端部3に向かって漸次縮径する第2周壁部5cとで構成される。
【0026】
周壁部5の内面には、回転ドラム1内に収容される粉粒体を攪拌混合するためのバッフル4が設けられている。バッフル4は、その基辺部4cが第1周壁部5bに固定されると共に、基辺部4cの下端部から第2周壁部5cの内面との間に所定の間隙Bを維持しつつ他端部3の側に延びた下辺部4aと、基辺部4cの上端部から下辺部4aとの間の距離を漸次縮小させつつ他端部3の側に延びた上辺部4bと、上辺部4bから回転ドラム1の回転方向前方に所定角度で傾斜して延びた傾斜部4dとを備えており、下辺部4aと上辺部4bと基辺部4cとが略三角形となる形状を形成している。傾斜部4dの回転方向前方への傾斜角度αは、10°〜60°が好ましく、さらに好ましくは20°〜45°である。傾斜角度が60°より大きくなると、バッフル4が粉粒体層中を移動する際に、バッフル4によって粉粒体に作用する力が過大となり、摩損の問題が生じやすくなる。また、90°より大きくなると、上辺部4bと傾斜部4dとの接合部(屈曲部)において粉粒体がバッフル4に付着しやすくなる。さらに、10°より小さくなると、傾斜部4dによる攪拌混合効果が良好に機能しないため、好ましくない。なお、図3に示すように、バッフル4は八角形の横断面形状を有する周壁部5の各辺面に軸線Cに沿って設けられている。
【0027】
本実施形態に係るコーティング装置の他の部分の構成は、上述した特許文献1(特許文献2004−148292号公報)に記載されたコーティング装置に準じるため、重複する説明を省略する。
【0028】
次に、本実施形態に係るコーティング装置の作用効果について説明する。図示しない回転駆動機構により動力が伝達され、回転ドラム1が傾斜した軸線C回りに回転すると、回転ドラム1の内部の粉粒体層が周壁部5の内面に設けられたバッフル4によって攪拌混合される。その際、バッフル4の上辺部4bと、上辺部4bから回転方向前方に所定角度で傾斜して延びた傾斜部4dが上述した粉粒体層の滞留層を繰り返し通過することによって、滞留層に存在する粉粒体も効果的に攪拌混合される。
【0029】
また、バッフル4の下辺部4aと第2周壁部5cの内面との間に間隙Bが設けられていることにより、回転ドラム1の回転に伴いバッフル4によって回転方向前方に持ち上げられる粉粒体の流動と、バッフル4の下辺部4aと第2周壁部5cとの間の間隙Bを自重により回転方向後方に通過する粉粒体の流動という2つの異なる粉粒体の流れが生み出される。この異なる2つの粉粒体の流れが生み出されることで、より攪拌混合効果が高まる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態に係るコーティング装置について説明する。本実施形態に係るコーティング装置の構成は、第1実施形態に係るコーティング装置と実質的に同一であるため、第1実施形態に係るコーティング装置と差異のある構成についてのみ説明する。
【0031】
本発明の第1実施形態であるコーティング装置の周壁部5の内面には、図4に示すように、上辺部4bが、他端部3の側に直線状に延びる形状のバッフル4が設けられているが、本実施形態では、図5に示すように上辺部4bは、他端部3の側に凹曲線状に延びる形状を有している。
【0032】
このような形状を有するバッフル4は、回転ドラム1内に収容される粉粒体が少量である場合に用いるのが効果的である。バッフル4の上辺部4bが、他端部3の方向に凹曲線状に延びる形状のため、回転ドラム1の回転中に、上辺部4bがスプレー液の噴霧領域において粉粒体層から露出することが低減される。このため、粉粒体層に向けてコーティング処理のためのスプレー液を噴霧する際に、スプレー液がバッフル4に付着してコーティング処理の妨げになる事態を抑制することができる。
【0033】
ここで、第1及び第2実施形態では、バッフル4の下辺部4aと第2周壁部5cの内面との間の間隙Bは一定の間隔を維持(バッフル4の下辺部4aと第2周壁部5cの内面とが平行)しつつ、第2周壁部5cの内面に沿って広がっているが、この限りではなく、バッフル4の下辺部4aと第2周壁部5cの内面との間における間隙Bは一定でなくてもよい(バッフル4の下辺部4aと第2周壁部5cの内面とが平行でなくてもよい)。また、バッフル4の上辺部4bの形状もこの限りではなく、上辺部4bが下辺部4aとの距離を漸次縮小しつつ、他端部3の側に延びた形状であればよい。さらに、バッフル4は必ずしも軸線Cに沿って設ける必要はなく、軸線Cに対して傾斜させた状態で設けてもよい。この場合、全てのバッフル4は軸線Cに対して同方向に傾斜させ、また、バッフル4と軸線Cとがなす角は、0°〜30°の範囲であることが好ましい。また、回転ドラム1の周壁部5は、横断面形状は円形であってもよい。
【0034】
また、本発明のコーティング装置において、その周壁部5の内面に取り付けられるバッフルは、上述したバッフル4のみに限定されず、例えば、図6に示すように、従来の立体的な形状のバッフル6a,6bと併用してもよい。図6に例示したコーティング装置では、相互に形状や大きさの異なる従来のバッフル6aと6bが、図5に示す第2実施形態のバッフル4と共に、周壁部5の内面に取り付けられている。詳述すれば、2つの従来の大きなバッフル6aと2つの従来の小さなバッフル6bとが、周方向で交互に取り付けられている。そして、4つの第2実施形態のバッフル4が、相互に隣接するバッフル6aとバッフル6bとの間に、1つづつ取り付けられている。
【実施例1】
【0035】
本発明の実施例1として、株式会社パウレック製パウレックコーターPRC−150に上記第1実施形態の構成を適用したコーティング装置を作製した。この実施例1の基とした株式会社パウレック製パウレックコーターPRC−150を比較例1として、錠剤混合性の評価を行なった。
【0036】
錠剤混合性を評価するために、以下の手順で実験を行なった。図7(a)に示すように、有効容量150Lの回転ドラム1に錠剤100kg(図中にPで示す)を投入したドラム1内の手前側の領域に全体量の4%のマーカー錠剤(図中にM(クロスハッチング)で示す)を投入し、ドラム回転数6min-1にて回転ドラム1を回転させた。所定時間混合後、図7(b)に数字で示すドラム1内錠剤層表面の5点から250mL(約1000錠)サンプリングし、マーカー錠剤含量の割合を算出した。その結果を図8に示す。また。仕込量が36kgでも同様の実験を行ない、その結果も図8に示す。なお、今回の評価では、サンプリング5箇所でのマーカー錠剤割合の標準偏差が1%以下となった状態を、十分な混合がなされた状態とする。
【0037】
図8から理解できるように、実施例1の方が、混合開始後に短時間で標準偏差の値が低くなっている。また、比較例1での標準偏差が1%以下になるまでの時間に対して約50%の時間で実施例1での標準偏差が1%以下に達している。これらのことから実施例1は比較例1に比較して混合性が高いと判断できる。また、仕込量が36kgでも同様に、実施例1の高い混合性を確認できる。また、図示を省略するが、画像解析結果からも、短時間で錠剤が均一に混合出来ることを確認できた。
【実施例2】
【0038】
本発明の実施例2として、株式会社パウレック製パウレックコーターPRC−150に上記第1実施形態の構成を適用したコーティング装置を作製した。この実施例2の基とした株式会社パウレック製パウレックコーターPRC−150を比較例2として、コーティング性能の評価を行なった。
【0039】
コーティング性能を評価するために、表1に示す操作条件にて丸錠(φ7,150mg/T)のフィルムコーティング錠を製造した。
【0040】
【表1】

【0041】
コーティング錠剤の経時的な色差とその標準偏差をそれぞれ図9,10に示す。図9から分かるように、実施例2の方が、比較例2より色差ΔEが速く上昇する。つまり、実施例2の方が、比較例2よりコーティングを速く行なうことができる。一方で、図10から分かるように、実施例2の方が、比較例2より色差の標準偏差が速く低下する。換言すれば、実施例2の方が、比較例2より錠剤を速く均一に混合できる。従って、実施例2は短時間の操作でも比較例2と同等以上の製品品質のコーティング錠剤を製造可能と判断できる。この結果から、実施例2では、比較例2に比較して40%もの工程時間を短縮できると考えられる。従って、実施例2によって、コーティング錠剤の生産性の向上を実現可能であると言うことができる。
【0042】
さらに、コーティング性能を評価するために、同様の条件で、100kg仕込みと36kg仕込みでオブロング錠を製造した。オブロング錠の経時的な色差の標準偏差を図11に示す。図11から理解できるように、100kg仕込みで、実施例2の方が、比較例2より色差の標準偏差が速く低下している。また、36kgという少量の仕込みでも、実施例2の方が、比較例2より色差の標準偏差が速く低下している。従って、オブロング錠であっても、実施例2は、比較例2に対して同等の製品品質で工程時間を大幅に短縮可能であると判断できる。また、実施例2は、36kgという少量生産でも、良好なコーティングが可能であると判断できる。
【符号の説明】
【0043】
1 回転ドラム
2 一端部
3 他端部
4 バッフル
4a 下辺部
4b 上辺部
4c 基辺部
4d 傾斜部
5 周壁部
5a 大径部
5b 第1周壁部
5c 第2周壁部
6a,6b バッフル
A 粉粒体(粉粒体層)
B 間隙
C 軸線
S スプレー液
N スプレーノズル
T 滞留層
α 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理すべき粉粒体が内部に収容され、水平線に対して傾斜した軸線回りに回転駆動される回転ドラムを備えたコーティング装置であって、
前記回転ドラムは、その軸線方向に沿って、傾斜上方側に位置する一端部と、傾斜下方側に位置する他端部と、前記一端部と前記他端部とを連続させる周壁部とを有し、
前記周壁部は、その径が最大となる大径部と、該大径部から前記一端部に向かって漸次縮径する第1周壁部と、前記大径部から前記他端部に向かって漸次縮径する第2周壁部とで構成され、
前記周壁部の内面には、前記粉粒体を攪拌するバッフルが設けられており、
前記バッフルは、前記第1周壁部の内面に固定された基辺部と、該基辺部の下端部から、前記第2周壁部の内面との間に所定の間隙を維持しつつ、前記他端部の側に延びた下辺部と、前記基辺部の上端部から、前記下辺部との間の距離を漸次縮小させつつ、前記他端部の側に延びた上辺部と、該上辺部から前記回転ドラムの回転方向前方に所定角度で傾斜して延びた傾斜部とを備えていることを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
前記バッフルの前記上辺部は、前記他端部の側に直線状に延びていることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記バッフルの前記上辺部は、前記他端部の側に凹曲線状に延びていることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項4】
前記回転ドラムの前記周壁部は多角形の横断面形状を有し、該周壁部の各辺面にそれぞれ前記バッフルが設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のコーティング装置。
【請求項5】
前記バッフルは、前記回転ドラムの軸線に沿って設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のコーティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−75284(P2013−75284A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233884(P2011−233884)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(591011384)株式会社パウレック (44)
【Fターム(参考)】