説明

コーティング装置

【課題】コーティング装置において、通気板を介した回転ドラムの内部と外部との間での処理気体の流通を円滑にすること。
【解決手段】コーティング装置は、通気部5が設けられた回転ドラムを備える。通気部5は、貫通孔5aと、仕切部としてのドラムリブ5bと、通気板5cとから構成される。貫通孔5aは、回転方向に沿って配列される。ドラムリブ5bは、回転方向に沿って隣接すると共に貫通孔5aを仕切る。通気板5cは、貫通孔5aとドラムリブ5bを覆うように配設されると共に複数の通気孔を有する。ドラムリブ5bは、回転方向に相対向する2つの側面5e間の距離が外部側に向かって漸次増加する横断面形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、食品、農薬等の粉粒体のコーティング、混合、乾燥等を行うコーティング装置に関し、特に、軸線回りに回転駆動される回転ドラムを備えたコーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、食品、農薬等の錠剤、ソフトカプセル、ペレット、顆粒、その他これらに類するもの(以下、これらを総称して粉粒体という。)にフィルムコーティングや糖衣コーティング等を施すために、回転ドラムを備えたコーティング装置が使用されている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されているように、この種のコーティング装置では、回転ドラムは、その軸線回りに回転駆動され、回転ドラムの内部には、処理気体によって処理すべき粉粒体が収容される。また、回転ドラムの壁部には通気板が設けられている。そして、この通気板を介して回転ドラムの内部と外部との間で処理気体が流通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−148292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、コーティング装置に対して、更なるその処理効率の向上が要請されており、そのための手段の1つとして、通気板を介した回転ドラムの内部と外部との間での処理気体の流通を円滑にすることが挙げられる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、コーティング装置において、通気板を介した回転ドラムの内部と外部との間での処理気体の流通を円滑にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明のコーティング装置は、処理気体によって処理すべき粉粒体が内部に収容され、その軸線回りに回転駆動される回転ドラムを備え、前記回転ドラムの壁部には通気部が設けられ、該通気部が、回転方向に沿って配列された複数の貫通孔と、回転方向に沿って隣接すると共に前記貫通孔を仕切る仕切部と、前記貫通孔と仕切部を覆うように配設されると共に複数の通気孔を有する通気板とから構成され、該通気板を介して前記回転ドラムの内部と外部との間で前記処理気体が流通するコーティング装置において、前記仕切部は、回転方向に相対向する2つの側面間の距離が外部側に向かって漸次増加する横断面形状を有することを特徴とする。
【0008】
上記の構成であれば、仕切部が、回転方向に相対向する2つの側面間の距離が外部側に向かって漸次増加する横断面形状(すそ広がり形状)を有するので、次のような効果を享受できる。すなわち、仕切り部における回転方向に相対向する2つの側面間の距離が、回転ドラムの内部の側で減少する。このため、通気板において、より多くの通気孔を回転ドラムの内部側と外部側に対して開口させることができる。従って、通気板を介した回転ドラムの内部と外部との間での処理気体の流通を円滑にすることができる。これにより、処理気体流通時の圧力損失を低下させることができるため、通気のためのエネルギーを削減することができる。また、通気量を大きくすることができるため、コーティング操作の処理能力、具体的にはコーティング時の乾燥能力を大きくすることができる。これらの理由によって、コーティング装置の処理効率を向上させることが可能となる。
【0009】
仕切部は、通気板を保持する機能を有する。仕切部は、すそ広がり形状を有することで、通気板を保持する機能(構造的な強度)を保ったまま、貫通孔の回転ドラムの内部側端部(開口部)を広くすることができる。
【0010】
上記の構成において、前記回転ドラムの軸線が水平線に対して傾斜し、前記回転ドラムの傾斜下方側の端壁部に前記通気部が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コーティング装置において、通気板を介した回転ドラムの内部と外部との間での処理気体の流通を円滑にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るコーティング装置が備える回転ドラムの軸線方向断面図(図2のB−B線矢視断面図)である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】実施形態に係るコーティング装置が備える回転ドラムの背面図である。
【図4】図2の部分拡大図で、通気板1枚分の周辺図である。
【図5】図4のC線矢視断面図である。
【図6】本実施形態の効果を説明するための通気部における回転ドラムの回転方向に沿った断面を模式的に示す図で、(A)が本実施形態で、(B)が従来のものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0014】
本発明の実施形態に係るコーティング装置は、図1〜5に示す回転ドラム1を備える。
【0015】
回転ドラム1は、その軸線Oの回りに回転駆動される。本実施形態のコーティング装置では、回転ドラム1の軸線Oは、水平線に対して角度θで傾斜している。しかし、本発明は、これに限定されず、この軸線Oが水平線に沿っていてもよい(θ=0°)し、また、鉛直線に沿っていてもよい(θ=90°)。回転ドラム1の内部には、処理気体によって処理すべき粉粒体(図示省略)が収容される。
【0016】
回転ドラム1は、本実施形態では、軸線方向の一端が開口した壁部2で構成され、この壁部2は、回転方向に延在する周壁部3と、周壁部3における軸線方向の他端に形成された端壁部4とから成る。
【0017】
周壁部3は、気密な構造を保有し、収容される粉粒体の攪拌混合効果を高めるため、例えば、10角形の横断面形状を有すると共にその径が最大となる大径部3aと、開口側端部となる小径部3bと、大径部3aから小径部3bに向かって漸次縮径する第1縮径部3cと、大径部3aから端壁部4に向かって漸次縮径する第2縮径部3dとで構成される。
【0018】
端壁部4は、回転ドラム1の傾斜下方側に位置する。そして、端壁部4には、回転ドラム1の軸線Oを中心とする単一の円環形状に沿って通気部5が設けられている。また、端壁部4において、軸線O回りに回転ドラム1を回転させる図示省略の回転駆動機構が、その回転ドラム1外部側の中心部4aに連結される。
【0019】
通気部5は、回転ドラム1の内部と外部とを通気するものである。通気部5は、複数の貫通孔5aと、仕切部としてのドラムリブ5bと、通気板5cとから構成される。複数の貫通孔5aは回転方向に沿って配列される。ドラムリブ5bは、回転方向に沿って隣接すると共に貫通孔5aを仕切るものである。本実施形態では、ドラムリブ5bは、柱状で、軸線Oを中心として、放射状に設けられている。図4に示すように、通気板5cは、貫通孔5aとドラムリブ5bを覆うように配設される。通気板5cは、貫通孔からなる複数の通気孔5dを有し、例えばパンチングメタル等で成る多孔板で構成される。図4において、二点鎖線で囲まれた領域に通気孔5dは形成されている。
【0020】
通気板5cを介して回転ドラム1の内部と外部との間で処理気体が流通する。本実施形態では、例えば、回転ドラム1内のコーティング処理を施した粉粒体を、回転ドラム1を回転させて乾燥させる際に、この通気板5cを介して処理気体が流通する。すなわち、処理気体としての空気が、回転ドラム1の内部に開口部を介して給気され、この給気された回転ドラム1内部の空気が通気板5cを介して回転ドラム1の外部に排出される。
【0021】
本実施形態では、貫通孔5aは16個、ドラムリブ5bが16本である。全ての貫通孔5aに対して、4枚の通気板5cが、ドラムリブ5bにおける回転ドラム1の内部側に配設され、1枚の通気板5cで、4個の貫通孔5aを覆う。1枚の通気板5cにおける回転ドラム1外部側の面5hについて、回転ドラム1回転方向の両端部が、それぞれ、ドラムリブ5bにおける回転ドラム1内部側の端面5fに対向する(図5参照)。
【0022】
図5に示すように、ドラムリブ5bは、回転ドラム1の回転方向に相対向する2つの側面5e間の距離が、回転ドラム1外部側に向かって漸次増加する横断面形状を有する。本実施形態では、これらの側面5eは平面状で、軸線Oを含み回転ドラム1の径方向に沿った平面Pについて、相互に面対称となっている。また、ドラムリブ5bにおける軸線方向の両端面5f,5gは、相互に平行の平面となっており、ドラムリブ5bの横断面は台形状である。本実施形態では、ドラムリブ5bは中実としているが、中空としてもよい。なお、図示は省略するが、通気板5cおける回転ドラム1回転方向の中間部に対向するドラムリブ5bについても同様である。また、側面5eは、貫通孔5aの側面にもなっている。
【0023】
本実施形態では、ドラムリブ5bにおける回転ドラム1内部側の端面5fと、通気板5cにおける回転ドラム1外部側の面5hとは、点溶接Wで接合されている。また、相互に隣接する通気板5cにおける回転ドラム1回転方向の端面5iは、回転ドラム1内部側が線溶接(図示省略)で接合されている。しかし、ドラムリブ5bと通気板5cに対する固定方法、あるいは通気板5c同士の固定方法は、これに限定されず、固定できればよく、ボルトによる締結でもよいし、また、軽圧入等でもよい。なお、図5において、通気板5cにおける点線は、図4の二点鎖線に対応するものである。従って、通気板5cにおける点線で挟まれた領域Rには、通気孔5dは形成されていない(図5では通気孔5dは図示省略)。すなわち、通気板5cの面5hで、ドラムリブ5bの端面5fに対向する部位には、通気孔5dは形成されていない。
【0024】
本実施形態に係るコーティング装置における他の部分の構成は、上述した特許文献1に記載されたコーティング装置に準じるため、説明を省略する。
【0025】
上記のように構成されたコーティング装置の回転ドラム1の効果を、図6を使用して以下に説明する。
【0026】
図6は、通気部における回転ドラム1回転方向に沿った断面を模式的に示した図で、図6(A)が本実施形態の通気部5を示し、図6(B)が従来の通気部5’を示す。図6(B)に示すように、従来では通気部5’のドラムリブ5b’の横断面は矩形状であり、回転ドラム1回転方向に相対向する側面5e’は相互に平行である。なお、説明が理解し易いように、ドラムリブ5b,5b’における回転ドラム1外部側の端面5g,5g’について、面積は相互に同一で、回転ドラム1の回転方向(図での横方向)の長さも、相互に同一とする。
【0027】
上述したように、回転ドラム1内でコーティング処理を施した粉粒体を乾燥させる際に、回転ドラム1内部の空気が通気板5cを介して回転ドラム1の外部に排出される。図6(B)に示すように、従来では通気部5’のドラムリブ5b’の横断面は矩形状であるため、その回転ドラム1内部側の端面5f’は、回転ドラム1外部側の端面5g’と面積が同一である。従って、回転ドラム1内部側の端面5f’が通気板5c’を覆う面積も、回転ドラム1外部側の端面5g’と同一である。
【0028】
これに対して、図6(A)に示すように、本実施形態では、通気部5のドラムリブ5bの横断面は台形状であり、ドラムリブ5bの回転ドラム1内部側の端面5fは、回転ドラム外部側の端面5gより面積が小さい。従って、回転ドラム1内部側の端面5fが通気板5cを覆う面積も、回転ドラム1外部側の端面5gより面積が小さい。このことと、端面5g,5g’の面積が相互に同一であることから、本実施形態では、従来のものに比較して、回転ドラム1内部側の端面5fが通気板5cを覆う面積が小さい。これにより、本実施形態では、従来のものに比較して、通気板5cにおいて、回転ドラム1の内部と外部の両方に開口する通気孔5dを多くすることができる。よって、本実施形態では、従来のものに比較して、通気板5cを介した回転ドラム1の内部からの外部への空気の排出を、円滑にすることができる。
【0029】
この通気板5cを介した空気排出の円滑化の効果を確認するために、実験を行なったところ、次のような結果が得られた。通気板5cにおける圧力損失が2.4kPa時の通気風量(45℃)が、従来のコーティング装置では35m3/minであったのに対して、本実施形態のコーティング装置では50m3/minであった。このように、本実施形態のコーティング装置が従来の装置に対して有利な効果を明らかに有することを確認できた。
【0030】
ここでは、実施形態での乾燥動作に合わせて、通気板5cを介した回転ドラム1の内部からの外部への空気の排出について説明したが、処理気体の流れが逆の場合でも同様である。すなわち、通気板5cを介した回転ドラムの外部からの内部への空気の給気についても、円滑にすることができる。
【0031】
本発明は、以上の説明に限定されることなく、その技術的思想の範囲内であれば、様々な変形が可能である。例えば、上記形態では、ドラムリブ5bの横断面は台形であったが、ドラムリブ5bは、回転ドラム1の回転方向に相対向する2つの側面5e間の距離が外部側に向かって漸次増加する横断面形状を有すればよく、例えば側面5eは曲面であってもよい。また、相互の距離が外部側に向かって漸次増加する側面5eが、ドラムリブ5bにおける回転ドラム1内部側の端部のみに形成されていてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、回転ドラム1の軸線Oが水平線に対して傾斜し、回転ドラム1の傾斜下方側の端壁部4に通気部5が設けられたコーティング装置について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、回転ドラム1の軸線Oが水平線に沿っていると共に回転ドラム1の周壁部3における大径部3aに通気部5が設けられたコーティング装置に対しても、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 回転ドラム
2 壁部
3 周壁部
4 端壁部
5 通気部
5a 貫通孔
5b ドラムリブ(仕切部)
5c 通気板
5d 通気孔
5e 側面
O 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理気体によって処理すべき粉粒体が内部に収容され、その軸線回りに回転駆動される回転ドラムを備え、前記回転ドラムの壁部には通気部が設けられ、該通気部が、回転方向に沿って配列された複数の貫通孔と、回転方向に沿って隣接すると共に前記貫通孔を仕切る仕切部と、前記貫通孔と仕切部を覆うように配設されると共に複数の通気孔を有する通気板とから構成され、該通気板を介して前記回転ドラムの内部と外部との間で前記処理気体が流通するコーティング装置において、
前記仕切部は、回転方向に相対向する2つの側面間の距離が外部側に向かって漸次増加する横断面形状を有することを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
前記回転ドラムの軸線が水平線に対して傾斜し、前記回転ドラムの傾斜下方側の端壁部に前記通気部が設けられた請求項1に記載のコーティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−85996(P2013−85996A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226932(P2011−226932)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(591011384)株式会社パウレック (44)
【Fターム(参考)】