説明

コード入りゴムシートの耳ゴム切断方法及び装置

【課題】 コード入りゴムシートの余分な耳ゴムを切除するときに、カッタの位置調整の誤り、位置ズレ、及びゴム部材のスウェルの変化にかかわらず、耳ゴムを所定の幅にする。
【解決手段】 図示されていない複数のボビンの各々からコードを繰り出し、それらを平行に引き揃えてコード配列体5とし、カレンダロール12,21間を通して、図示されていない巻き取りロールで巻き取る。コード配列体5は、カレンダロール12,21間を通るときに、両面にゴム3,4が被覆され、カッタ7で両側の余分な耳ゴムが切除されて、コード入りゴムシート6とされる。コード入りゴムシート6の幅が幅センサ8で検知され、それが目標幅となるように、図示されていないコントローラにより、ゴムシート6の幅方向に対するカッタ7の位置をフィードバック制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に延びる複数のコードが埋設されたコード入りゴムシートの両側端部の余分な耳ゴムを切断する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーカスやベルト等の製造には、長手方向に延びる複数のコードが埋設されたコード入りゴムシートが使用される。このコード入りゴムシートは、複数本のコードを平行に引き揃えて搬送するとともに、それらのコードの両面にカレンダロールなどでゴムを被覆して製造している。通常、カレンダロールなどから押し出されるゴムシートの左右の側端部には薄い耳ゴムが形成される。この耳ゴムは、左右の最も外側のコードの両側にはみ出したものであるが、そのはみ出し量(耳ゴムの幅)は一定しない。そこで、従来はカッタにより余分な耳ゴムを切除して、幅を一定にしている(特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、これらの従来技術では、帯状ゴムの幅方向に対するカッタの位置を固定しているため、その固定位置の調整を誤った場合、耳ゴムの幅(量)に過不足が生じる。そして、不足した場合はコードが露出するという問題があり、過多になった場合は、一旦巻き取り、成型のために巻き出すときに密着するという問題がある。また、位置調整が正確であったとしても、使用中に位置ズレが生じた場合には、同じ問題が発生する。さらに、ゴム物性の変動によりスウェル(膨張率)が変化した際には、一定にカットされた耳ゴムの幅が変動してしまうという問題もある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−322403号公報
【特許文献2】特開2004−122727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、コード入りゴムシートの余分な耳ゴムをカッタで切除して所定の幅にするときに、カッタの位置調整の誤り、カッタの位置ズレ、及びゴム部材のスウェルの変化にかかわらず、耳ゴムを所定の幅にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、長手方向に延びる複数のコードが埋設されたコード入りゴムシートの耳ゴムを切断する方法であって、前記耳ゴムの幅方向の切断位置を設定する工程と、コード入りゴムシートを搬送するともに、その耳ゴムを前記設定された切断位置で切断する工程と、該工程により耳ゴムが切除されたコード入りゴムシートの幅を検知する工程と、該検知された幅と目標幅との偏差を求める工程と、該偏差に応じて前記切断位置をフィードバック制御する工程とを有することを特徴とするコード入りゴムシートの耳ゴム切断方法である。
請求項2の発明は、長手方向に延びる複数のコードが埋設されたコード入りゴムシートの耳ゴムを切断する装置であって、前記コード入りゴムシートを搬送する手段と、前記コード入りゴムシートの幅方向に移動可能であり、前記耳ゴムを任意の幅方向位置で切断可能な切断手段と、該切断手段により耳ゴムが切除されたコード入りゴムシートの幅を検知する手段と、該検知された幅に応じて前記切断手段の前記幅方向位置を制御する手段とを有することを特徴とするコード入りゴムシートの耳ゴム切断装置である。
請求項3の発明は、請求項2記載のコード入りゴムシートの耳ゴム切断装置において、前記コード入りゴムシートの幅を検知する手段は、前記切断手段に対し、前記コード入りゴムシートの搬送方向の下流側に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コード入りゴムシートの余分な耳ゴムをカッタで切除して所要の幅にするときに、カッタの位置調整の誤り、カッタの位置ズレ、及びゴム部材のスウェルの変化にかかわらず、耳ゴムを所定の幅にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態のコード入りゴムシート切断装置の概略構成を示す図である。
【0009】
このコード入りゴムシート切断装置は、カレンダロール11,12からなる第1のカレンダロール対1と、カレンダロール21,22からなる第2のカレンダロール対2と、コード入りゴムシートの余分な耳ゴムを切除するためのカッタ7と、余分な耳ゴムが切除されたコード入りゴムシートの幅を検知するための幅センサ8とを有する。
【0010】
カレンダロール11,12、カレンダロール21,22は、それぞれ一定の間隙を保持した状態で対向しており、互いに逆方向に回転可能である。そして、第1のカレンダロール対1、第2のカレンダロール対2の各々の上側には、図示されていないゴム押出機などからゴム3、ゴム4が供給される。また、図示されていない搬送手段により、図示されていない複数のボビンの各々からコードを繰り出し、それらを平行に引き揃えてコード配列体5とし、それをカレンダロール12と21の間を通して、図示されていない巻き取りロールで巻き取る。ここで、コード配列体5は、カレンダロール12,21の間を通るときに、両面にゴム3,4が被覆され、カッタ7で両側の余分な耳ゴムが切除されて、コード配列体5が埋設されたコード入りゴムシート6とされる。そして、カッタ7に対してコード入りゴムシート6の搬送方向の下流側に配置された幅センサ8でコード入りゴムシート6の幅を検知し、図示されていないコントローラにより、幅センサ8で検知された幅と目標幅との偏差を求め、その偏差に応じて、搬送中のコード入りゴムシート6の幅方向に対するカッタ7の位置をフィードバック制御する。
【0011】
図2はカッタ7の構成を示す図である。カッタ7は、カレンダロール12の表面の幅方向の中心の両側の部位に対向する位置に1個ずつ配置される。2個のカッタ7は左右対称(勝手反対)に構成されている以外は同一であるため、ここでは左側のカッタのみ参照符号を付した。
【0012】
カッタ7は、フレーム70と、フレーム70に固定された油圧シリンダ71と、そのピストンロッド72に先端に固定された切断刃73と、後端が油圧シリンダ71の後端に取り付けられ、先端が切断刃73の基部に支持された伸縮自在な位置検知部材74とからなる。油圧シリンダ71に供給する油圧を増減することで、ピストンロッド72のシリンダからの露出長を増減させ、カレンダロール12の幅方向(軸線方向)に対する切断刃73の位置を変化させることができる。これにより、カレンダロール12の表面に沿って搬送される、耳ゴム切除前のコード入りゴムシート6から耳ゴムを切除する位置を変化させることができる。
【0013】
幅センサ8は、ラインイメージセンサや、レーザ発光素子と、それに対向する受光素子との組み合わせなどの公知の手段で構成されている。発光素子と受光素子との組み合わせを用いる場合、カッタ7により耳ゴムが切除されたコード入りゴムシート6の目標幅と等しい間隔で発光素子と受光素子との組み合わせを配置する。例えば、図3Aに示すように、コード入りゴムシート6のトリート幅Wの両側に耳ゴム部があり、この耳ゴム部をカッタ7により切除して、トリート幅W即ち耳ゴム部の幅が最小(≒0)のコード入りゴムシート6にする場合、つまり目標幅をトリート幅Wとした場合、図3Bに示すように、発光素子81と受光素子82との組み合わせをWの間隔で、カッタ7により耳ゴムが切除されたコード入りゴムシート6の両側端を挟むように配置する。そして、両側の受光素子82の出力信号に基づいて、カッタ7により耳ゴムが切除されたコード入りゴムシート6の幅検知信号を得ることができる。なお、図では、便宜上、耳ゴム部の厚さをトリート幅の部分と同じにした。
【0014】
図4は、幅センサ8の幅検知信号に基づいて、カッタ7の位置を制御するための制御手段を示す図である。この制御手段は、コントローラ21と、油圧ユニット22と、コントローラ21により制御される電気油圧サーボ弁23とを備えている。ここで、油圧ユニット22、電気油圧サーボ弁23、及びカッタ7は左側のみ図示したが、右側も同様に構成されている。
【0015】
コントローラ21には、幅センサ8から、コード入りゴムシート6の幅を検知した幅検知信号が入力され、コード入りゴムシート切断装置の全体の動作を制御するシーケンス制御装置(図示せず)から、コード入りゴムシート6の目標幅を示す目標幅信号が入力され、カッタ7の位置検知部材74から、切断刃73の位置を示す位置検知信号が入力される。電気油圧サーボ弁23は、コントローラ21からの制御信号に基づいて、油圧ユニット22から油圧シリンダ71に供給される油圧を制御する。この油圧の制御により、ピストンロッド72の露出長を変化させ、その先端に固定された切断刃73の位置を変化させることができる。
【0016】
図5は、図4に示す制御手段の動作を示すフローチャートである。このフローチャートに示す動作はコントローラ7の制御により実行される。コントローラ7は、前述したシーケンス制御装置に起動されて、動作を開始する。
【0017】
まずカッタ7の位置を初期設定する(ステップS1)。詳しくは、コード入りゴムシート6の目標幅を示す目標幅信号がコントローラ21に入力されると、コントローラ21は、左右のカッタの間隔が上記の目標幅となるように、電気油圧サーボ弁23に対し、制御信号を送出する。電気油圧サーボ弁23は、この制御信号に応じて、油圧ユニット22から油圧シリンダ71に供給される油圧を制御し、左右のカッタの間隔を例えば図3のWに初期設定する。
【0018】
次いで、カレンダロール対1、2の上にそれぞれゴム3、4を供給するとともに、図示されていない搬送手段により、図示されていない複数のボビンの各々からコードを繰り出し、それらを平行に引き揃えてコード配列体5とし、それをカレンダロール12と21の間を通して、図示されていない巻き取りロールで巻き取る。また、コード配列体5をカレンダロール12,21間を通すことで、コード配列体5の両面にゴムを被覆し、さらにカッタ7を初期設定した位置で動作させることにより、ゴムで被覆されたコード配列体から、両側の耳ゴムを切除して、コード入りゴムシート6を形成する(ステップS2)。
【0019】
次に、幅センサ8により、コード入りゴムシート6の幅を検知する(ステップS3)。幅センサ8は幅検知信号をコントローラ21に出力する。次いで、コントローラ7は、幅検知信号と目標幅信号とを比較するとともに、カッタ7からの位置検知信号をモニタしながら、幅検知信号と目標幅信号との偏差が所定の範囲(この範囲は適宜設定可能)になるようにカッタ7の位置を制御するための位置制御信号を生成して、電気油圧弁23に送出する(ステップS4)。ここでは、左右のカッタ7を反対向きに同じ距離移動させる。
【0020】
このように、コード入りゴムシート6の幅を実測し、それが目標幅となるように、カッタ7の位置をフィードバック制御することにより、カッタ7の初期設定位置の誤り、カッタ7の位置ズレ、ゴム部材のスウェルの変化にかかわらず、コード入りゴムシート6の幅を所要の目標幅(=トリート幅W)から所定の範囲内にすることができる。
【0021】
即ち、図3のWは略一定の既知の値であるから、左右のカッタ7の切断刃73の中間位置と、耳ゴム切除前のコード入りゴムシート6の幅方向(左右)の中心とを一致させ、かつ左右の切断刃73の間隔がWと略等しくなるように、左右のカッタ7の位置を初期設定しておき、以後、幅センサ8の出力に基づいてフィードバック制御を行う。
【0022】
このように本実施形態のコード入りゴムシート切断装置によれば、コード入りゴムシートの耳ゴムを所定の幅に自動制御することができるので、耳ゴムの幅(量)の不足によるコードの露出や、過多による成型巻き出し時の密着を防止することができる。
【0023】
なお、以上の実施形態では、油圧シリンダによりカッタの位置を設定しているが、モータと、ボールネジなどによりカッタの位置を設定するように構成してもよい。また、カレンダロール対に代えて、ゴム押出機を用いてもよい。さらに、回転刃を有するカッタを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態のコード入りゴムシートの耳ゴム切断装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1におけるカッタの構成を示す図である。
【図3】図1における幅センサの配置を説明するための図である。
【図4】図1の幅センサの検知信号に基づいてカッタの位置を制御するための制御手段を示す図である。
【図5】図4に示す制御手段の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
1,2・・・カレンダロール対、6・・・コード入り帯状部材、7・・・カッタ、8・・・幅センサ、21・・・コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる複数のコードが埋設されたコード入りゴムシートの耳ゴムを切断する方法であって、
前記耳ゴムの幅方向の切断位置を設定する工程と、コード入りゴムシートを搬送するとともに、その耳ゴムを前記設定された切断位置で切断する工程と、該工程により耳ゴムが切除されたコード入りゴムシートの幅を検知する工程と、該検知された幅と目標幅との偏差を求める工程と、該偏差に応じて前記切断位置をフィードバック制御する工程とを有することを特徴とするコード入りゴムシートの耳ゴム切断方法。
【請求項2】
長手方向に延びる複数のコードが埋設されたコード入りゴムシートの耳ゴムを切断する装置であって、
前記コード入りゴムシートを搬送する手段と、前記コード入りゴムシートの幅方向に移動可能であり、前記耳ゴムを任意の幅方向位置で切断可能な切断手段と、該切断手段により耳ゴムが切除されたコード入りゴムシートの幅を検知する手段と、該検知された幅に応じて前記切断手段の前記幅方向位置を制御する手段とを有することを特徴とするコード入りゴムシートの耳ゴム切断装置。
【請求項3】
請求項2記載のコード入りゴムシートの耳ゴム切断装置において、
前記コード入りゴムシートの幅を検知する手段は、前記切断手段に対し、前記コード入りゴムシートの搬送方向の下流側に配置されていることを特徴とするゴムシートの耳ゴム切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−172691(P2009−172691A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11634(P2008−11634)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】