説明

コーナーセンサ用面実装トランス

【課題】ポッティング樹脂で充填してもコアが破損したり、巻線の端末部が断線することがない、外部妨害磁束の影響が少ないコーナセンサを提供する。
【解決手段】第1の鍔13と第2の鍔15の間に巻軸11を有するドラムコア1と、第2の鍔の底面に固定され、巻線端末を接続する絡げ部31と外部端子32を形成する複数の金属端子3と、前記ドラムコアを収納し、外周にネジ部61を具えたキャップコア5と、前記キャップコアを収納し、前記キャップコアの前記ネジ部に螺合する内ネジ部を具えた金属製のシールドケース6からなるコーナーセンサ用面実装トランスにおいて、前記ドラムコアは前記第1の鍔と前記第2の鍔の間に第3の鍔14を具え、前記第1の鍔と前記第3の鍔の間の巻軸に複数のコイルを巻回し、前記ドラムコアと前記コイルと前記金属端子の一部を除く外周を外装樹脂4で覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーナーセンサに用いられている超音波センサ素子を駆動するためのコーナーセンサ用面実装トランスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の四隅に超音波センサを設置して、近接する障害物を検知するコーナーセンサにおいて、超音波センサ素子として圧電素子が用いられ、その圧電素子を駆動するために、コーナーセンサ用面実装トランスが用いられている。
【0003】
図7は、コーナーセンサの回路図である。図において、T1はコーナーセンサ用面実装トランス、X1は圧電素子である。
トランスT1の一次側コイルL1は、一方の端子を抵抗R1を介して電源Vccに接続され、コイルL1の一方の端子と接地GNDとの間にコンデンサC1が接続されている。
一次側コイルL1の他方の端子は、2つのnpnトランジスタがダーリントン接続されたトランジスタQ1の主電流路を介して接地GNDに接続されている。トランジスタQ1のベースは抵抗R2を介して信号源Vinに接続されている。
トランスT1の二次側コイルL2の一方の端子は接地GNDに接続され、二次側コイルL2の他方の端子と接地GND間に、コンデンサC2、抵抗R3、圧電素子X1が接続されている。
コイルL2と圧電素子X1の接続点は、増幅器OPの入力に接続され、増幅器OPの出力は検出回路101に接続される。
【0004】
信号源Vinに40〜60kHzの矩形波信号を加えると、圧電素子X1から超音波が送信される。信号源Vinを停止した後に、圧電素子X1が近接する障害物で反射した超音波を受信すると、圧電素子X1に微弱な電圧が生じる。この電圧を増幅器OPで増幅した信号が検出回路101によって、超音波を送信してから受信するまでの時間を計測して、距離を計算する。
【0005】
図8は、図7の回路に用いられているコーナーセンサ用面実装トランスの断面図である。図8に示すように、従来のコーナーセンサ用面実装トランスは、巻軸81の上端に第1の鍔83、下端に第2の鍔85を有するフェライトからなるドラムコア80に、絶縁被覆された導体からなる一次巻線23と二次巻線24が巻線され、一次巻線23と二次巻線24の端末部は第2の鍔85の下面に配置された金属性の金属端子30に設けられた絡げ部36に接続されている。基台40は、絡げ部36と外部端子部37の一部を除く金属端子30を埋設するように樹脂でインサート成形されて形成されている。そして、外部端子部37は基台40の側面に沿って下方に折り曲げられて、さらに底面に折り曲げられて、基台40の底面と平行な面接続部38が形成されている。
金属からなるシールドケース60は、フェライトからなるキャップコア90を内包し、さらにキャップコア90がドラムコア80を内包するように基台40に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−4905
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車載用に用いられるコーナーセンサは耐振動衝撃に強くするために、ユニット全体がポッティング樹脂で充填される。この際に、ポッティング樹脂がシールド内の一部まで入り込んでしまう。従来のコーナーセンサ用面実装コイルは、シールド内に侵入したポッティング樹脂と、ドラムコアおよび巻線の線膨張係数の違いにより、コアが破損したり、巻線の端末部が断線するという問題があった。さらにコーナーセンサは、外部妨害磁束の影響を受けないことが強く求められている。コーナーセンサ用面実装コイルの底面からの外部妨害磁束が大きいと、コーナーセンサが誤動作する虞がある。
本発明は、ポッティング耐性が強く、外部妨害磁束の影響の少ないコーナーセンサ用面実装トランスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコーナーセンサ用面実装トランスは、
第1の鍔と第2の鍔の間に巻軸を有するドラムコアと、
第2の鍔の底面に固定され、巻線端末を接続する絡げ部と外部端子を形成する複数の金属端子と、
前記ドラムコアを収納し、外周にネジ部を具えたキャップコアと、
前記キャップコアを収納し、前記キャップコアの前記ネジ部に螺合するネジ部を具えた金属製のシールドケース
からなるコーナーセンサ用面実装トランスにおいて、
前記ドラムコアは前記第1の鍔と前記第2の鍔の間に第3の鍔を具え、
前記第1の鍔と前記第3の鍔の間の巻軸に複数のコイルを巻回し、
前記ドラムコアと前記コイルと前記金属端子の一部を除く外周を外装樹脂で覆った
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のコイルを巻回したドラムコアと金属端子の絡げ部を樹脂で被覆したので、シールド内までポッティング樹脂が入り込んでも、ポッティング樹脂がドラムコアや巻線に直接接触しない。したがって、ポッティング樹脂の線膨張係数の違いによりコアが破損したり、巻線の端末部が断線することがない。また、第1の鍔と第2の鍔の間に第3の鍔を設けたので、外部妨害磁束の影響を小さくしたコーナーセンサ用面実装トランスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のコーナーセンサ用面実装トランスの断面図である。
【図2】本発明のコーナーセンサ用面実装トランスにショートリングを追加した他の実施例である。
【図3】本発明のコーナーセンサ用面実装トランスの外部妨害磁束に対する説明をする模型図である。
【図4】本発明のコーナーセンサ用面実装トランスに用いたフレームの平面図である。
【図5】外部妨害磁束の影響を測定する回路図である。
【図6】本発明のコーナーセンサ用面実装トランスの製造方法を説明する断面図である。
【図7】コーナーセンサの回路図である。
【図8】従来のコーナーセンサ用面実装トランスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明におけるコーナーセンサ用面実装トランスの実施の形態について説明する。
図1は、本発明のコーナーセンサ用面実装トランスの断面図を示す。図1に示すように、本発明のコーナーセンサ用面実装トランスは、フェライトからなるドラムコア1とキャップコア5、複数の金属端子3、絶縁被覆された導体からなる一次巻線21と二次巻線22、絶縁性の樹脂からなる外装樹脂4、金属製のシールドケース6からなる。
【0012】
ドラムコア1は、巻軸11の上端に第1の鍔13、下端に第2の鍔15を有し、第1の鍔13と第2の鍔15の間に第3の鍔14を有する。第1の鍔13、第2の鍔15、第3の鍔14の直径は等しくすることが好ましい。
金属端子3は絡げ部31と外部端子部32を有し、第2の鍔15の下面に複数配置される。
一次巻線21は一方の端末部を金属端子3の絡げ部31に絡げてから、第1の鍔13と第3の鍔14の間の巻軸11に巻線し、他方の端末部を別の金属端子3の絡げ部31に絡げる。同様に、二次巻線22は一方の端末部をさらに別の金属端子3の絡げ部31に絡げてから、一次巻線21の上に二次巻線22を巻線し、他方の端末部をさらにさらに別の金属端子3の絡げ部31に絡げる。
【0013】
外装樹脂4は、金属端子3の絡げ部31を埋設し、外部端子部32の一部を除き、ドラムコア1の上鍔、下鍔を含み、一次巻線21と二次巻線22を被覆するように、インサート成型される。
外装樹脂4から突出した外部端子部32は外装樹脂4の側面に沿って下方に折り曲げられて、さらに底面に折り曲げられて、平行な面接続部33が形成される。
シールドケース6は、対向する両側面にネジ部61を設け、前記ネジ部61に螺合するネジ部51を外周面に有するキャップコア5を内包する。
【0014】
キャップコア5は、ドラムコア1の少なくとも第1の鍔13と第3の鍔14をキャップコア5の内部に収納するように所定の長さとし、シールドケース6は、対向するネジ部61と異なる対向する両側面の下端部に、図示しない舌片を設けてあり、その舌片を外装樹脂4の底面に折り曲げで固定されている。
【0015】
さらに外部妨害磁束の影響を減らすために、ショートリングを用いてもよい。
図2は本発明のコーナーセンサ用面実装トランスにショートリングを追加した場合の別の実施例を示す。
【0016】
ショートリング25は、第3の鍔14と第2の鍔15の間の巻軸11に巻線を巻回し、巻線の両端部をショートする。ショートリング25の巻数は巻き数を増せばより大きな効果が得られる。両端部をショートするために、例えばあらかじめ接続して作製した2つの金属端子の絡げ部にそれぞれの端末部を絡げてもよいし、一箇所の絡げ部に巻線の両端を絡げてもよい。
このショートリング25により外部妨害磁束がトランス内部に侵入しにくくなり、外部妨害磁束の影響をさらに低減することができる。
【0017】
図3は、下から上方向への外部妨害磁束がどのようにコーナーセンサ用面実装トランスのコアを通るかを説明する図である。
従来のコーナーセンサ用面実装トランスでは、図3(a)に示すように、ドラムコア80の下面からの外部妨害磁束Lは、第2の鍔85、巻軸81、第1の鍔83、キャップコア底部92を通過する(図中Mで示す)。
【0018】
一方、本発明のコーナーセンサ用面実装トランスでは、図3(b)に示すように、ドラムコア1の下面からの外部妨害磁束Lは、
第2の鍔15、巻軸11、第1の鍔13とキャップコア底部52を通過する磁束Nと、
第2の鍔15、第2の鍔15と第3の鍔14と間の巻軸11、第3の鍔14、キャップコア外壁53、キャップコア底部52を通過する磁束Nに分かれる。
【0019】
したがって、本発明のコーナーセンサ用面実装トランスは、外部妨害磁束Lの一部の磁束Nが、巻線のある第3の鍔14と第1の鍔13の間の巻軸11を通過しないので、外部妨害磁束Lの影響を低減することができる。
【0020】
金属端子3は組み立ての容易性から、連続した薄い金属板のリードフレームに所定の端子形状をパンチングして金属端子3が形成されている。
図4は、連続したリードフレームの一部分を示す平面図を示す。金属端子3は、6つの外部端子3a〜3fと6つの絡げ部31a〜31fがリードフレーム300に連結された状態で形成されている。
図4に示すように、それぞれの金属端子3a〜3fは、絡げ部31a〜31fと外部端子部32a〜32fを有する。ドラムコアは、図中点線で示した所定の位置に接着される。図中一点鎖線で示した位置で金属端子3a〜3fがフレーム300から切り離された後に、絡げ部31a〜31fに巻線の端末が絡げられ、絡げ部と巻線の端末部が電気的に接続される。
【0021】
表1に、従来のコーナーセンサ用面実装トランス、本発明のコーナーセンサ用面実装トランスにおいて、ショートリングなし、ショートリング10ターン、ショートリング30ターンの外部妨害磁束に対する感度を直交する3方向で測定した結果を示す。
感度の測定方法は図5に示すように、二次巻線L2に並列に共振コンデンサC2と負荷抵抗R4=10[kΩ]を接続し、二次巻線L2の一方と一次巻線L1の一方を接地し、一次巻線L1の他方を開放した回路に、ホルムヘルツコイルで交番磁界を印加して測定した。一次巻線L1と二次巻線L2の巻き数比は1:5であり、二次巻線のインダクタンス値が0.84[mH]になるようにキャップコアの位置を調整し、共振周波数が66.7[kHz]になるように共振コンデンサを調整した。
なお、実装面において所定のY軸方向と直交する方向をX軸方向とし、実装面においてX軸方向と直交し、金属端子の外部端子部が対向する方向をY軸方向とし、X軸とY軸に直交する方向(基板の上下方向)をZ軸方向とする。表において値が大きいほど外部妨害磁束に対して弱い。
【0022】
【表1】

表1に示すように、従来のコーナーセンサ用面実装トランスは、基板の上下方向(Z軸方向)の磁束に対して特に感度が高いので、基板の上下方向の外部妨害磁束に対して非常に弱い。しかし、本発明のコーナーセンサ用面実装トランスは、基板の上下方向の外部妨害磁束に対する特性が改善している。また、ショートリングの巻き数を多くするほど、特性が改善している。
【0023】
図6は本発明のコーナーセンサ用面実装トランスの製造方法を説明する図である。図6(a)に示すように、ドラムコア1は、巻軸11の上端に第1の鍔13、下端に第2の鍔15、第1の鍔13と第2の鍔15の間に第3の鍔14を有する。そしてドラムコア1の第2の鍔の底面を、複数の金属端子が連結された状態で形成されたリードフレーム300の所定の位置に接着する。
【0024】
接着剤を硬化した後に、金属端子3をリードフレーム300から切り離し、一次巻線21の一方の端末部を金属端子3の絡げ部に絡げてから、第1の鍔13と第3の鍔14の間の巻軸に巻線し、他方の端末部を別の金属端子3の絡げ部に絡げる。同様に、二次巻線22の一方の端末部をさらに別の金属端子3の絡げ部に絡げてから、一次巻線21の上に二次巻線22を巻線し、他方の端末部をさらにさらに別の金属端子3の絡げ部に絡げる(図6(b))。そして、絡げ部をレーザー溶接すると、巻線の端末部の被覆が除去されるとともに端末部が絡げ部に溶接される。絡げ部と巻線の端末部の接続は溶接に限らず、半田付けしてもよい。
【0025】
そして、外装樹脂4を形成する。外装樹脂4は、金属端子3の絡げ部31を埋設し、外部端子部32の一部を除き、ドラムコア1の上鍔、下鍔を含むと一次巻線21と二次巻線22を被覆するように、金型400でインサート成型される(図6(c))。
【0026】
その後、外装樹脂4から突出した金属端子3の外部端子部32を、外装樹脂4の側面に沿って下方に折り曲げ、さらに底面に折り曲げられて、平行な面接続部33を形成する(図6(d))。
【0027】
そして、対向する両側面にネジ部61を設けたシールドケース6に、前記ネジ部61に螺合するネジ部51を外周面に有するキャップコア5を内包させて、さらにキャップコア5が樹脂で被覆されたドラムコア1を内包するように配置する(図6(e))。そして、シールドケース6の対向するネジ部61と異なる対向する両側面の下端部に設けられた図示しない舌片をその舌片を外装樹脂4の底面に折り曲げて、シールドケース6を外装樹脂4に固定する。
【0028】
以上述べたように、本発明のコーナーセンサ用面実装トランスは、ドラムコアと金属端子の絡げ部を樹脂で被覆したので、シールド内までポッティング樹脂が入り込んでも、ポッティング樹脂がドラムコアや巻線に直接接触しない。したがって、ポッティング樹脂で充填してもコアが破損したり、巻線の端末部が断線することがない。また、第1の鍔と第2の鍔の間に第3の鍔を設けたので、外部妨害磁束の影響が少ないコーナーセンサ用面実装トランスとすることができる。
【符号の説明】
【0029】
1、80 ドラムコア
11、81 巻軸
13、83 第1の鍔
15、85 第2の鍔
14 第3の鍔
21、23 一次巻線
22、24 二次巻線
25 ショートリング
3、3a〜3f、30 金属端子
31、31a〜31f、36 絡げ部
32、32a〜32d、37 外部端子部
33、38 面接続部
40 基台
4 外装樹脂
5、90 キャップコア
51、91、61、62 ネジ部
52、92 キャップコア底部
53 キャップコア外壁
6、60 シールドケース
300 リードフレーム
400 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の鍔と第2の鍔の間に巻軸を有するドラムコアと、
第2の鍔の底面に固定され、巻線端末を接続する絡げ部と外部端子を形成する複数の金属端子と、
前記ドラムコアを収納し、外周にネジ部を具えたキャップコアと、
前記キャップコアを収納し、前記キャップコアの前記ネジ部に螺合するネジ部を具えた金属製のシールドケース
からなるコーナーセンサ用面実装トランスにおいて、
前記ドラムコアは前記第1の鍔と前記第2の鍔の間に第3の鍔を具え、
前記第1の鍔と前記第3の鍔の間の巻軸に複数のコイルを巻回し、
前記ドラムコアと前記コイルと前記金属端子の一部を除く外周を外装樹脂で覆ったことを特徴とする
コーナーセンサ用面実装トランス。
【請求項2】
前記第2の鍔と前記第3の鍔の間にショートリングを具えたことを特徴とする、請求項1記載のコーナーセンサ用面実装トランス。
【請求項3】
前記キャップコアは前記第1の鍔と第2の鍔の間を内包することを特徴とする請求項1乃至2記載のコーナーセンサ用面実装トランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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