説明

ゴミ収集ネット

【課題】カラスや小動物によるゴミ害を確実に防ぐことができる可動式で比較的安価なゴミ収集ネットであって、ゴミ袋から漏出した汚水を円滑に排出でき、ゴミ袋の投入・回収が容易なゴミ収集ネットを提供する。
【解決手段】ネットからなる袋本体10の上面部11及び周面部12、13、14、15のネットの網目を細かく設定して、カラスや小動物によるゴミ害を確実に防ぎ、また、底面部16のネットの網目を、上面部11及び周面部12、13、14、15よりも粗く設定して、汚水が円滑に排出されるようにする。また、袋本体10における開口部20を、左右の側面部14、15と上面部11にわたって大きく開放できるように形成する。更に、袋本体10の後面部をフェンス、電柱、樹木等の高さのある別体40に連結して支持させるため、複数の連結部材30を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴミ収集ネットに関し、更に詳しくは、家庭、飲食店等から出るゴミ袋をゴミ収集車で回収するために集約しておくゴミ収集ネットに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴミ収集車で一括的に回収してもらうために多数のゴミ袋を集約しておく共同ゴミ置き場においては、従前より、カラスや小動物(猫、犬等)がそこを荒らし、袋内のゴミをゴミ置き場周辺に飛散させるといった被害が生じており、これは、都心部・郊外を問わず大きな社会問題となっている。このようなゴミ害の対策として、新興住宅地では、共同ゴミ置き場を、四側面及び天井をコンクリートで覆って扉を付けたゴミステーションとして設計することを都市計画段階から盛り込んでいる。また、このようなゴミステーションを新たに付設できない既存の住宅地では、金属製の強固な籠内にゴミ袋を入れるような対策が講じられている。しかしながら、このようなゴミステーションや金属籠は固定式のため、一定のスペースを確保できない都市部等では設置できず、また、費用も高くなる。
【0003】
ゴミ害対策の別の簡易な方法として、多数のゴミ袋に対し上からネットを被せるものが知られているが、この場合、底からの小動物等の侵入を防ぐことができない。この点を改善するものとして、登録実用新案第3136948号公報は、ネットを袋状にしたゴミ収集袋を開示している。しかしながら、このゴミ収集袋は、ゴミ袋を出し入れする開口部が側面に設けられているため、ゴミ袋の投入・回収時にかがまなければならず、出し入れが面倒であり、また、ネットの網目をカラスのくちばしが入らないように細かくした場合、ゴミ袋から漏れた汚水が表面張力によって網目にトラップされ、不衛生である。
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3136948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の問題点に着目してなされたもので、その目的は、カラスや小動物によるゴミ害を確実に防ぐことができる可動式で比較的安価なゴミ収集ネットであって、ゴミ袋から漏出した汚水を円滑に排出でき、ゴミ袋の投入・回収が容易なゴミ収集ネットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明によれば、ゴミ袋を集約するための袋状のゴミ収集ネットであって、ネットからなる袋本体を備え、袋本体は、底面部と、底面部上に多数のゴミ袋を収容する空間を形成可能な上面部及び周面部と、前記上面部及び/又は周面部に設けた、ゴミ袋を出し入れするための開閉可能な開口部とを有し、前記上面部及び周面部のネットの網目を細かく設定し、前記底面部のネットの網目を、前記上面部及び周面部よりも粗く設定して成るゴミ収集ネットが提供される。袋本体の膨らんだ状態での形状は特に限定しないが、後述するように直方体とすることが好ましい。
【0007】
本発明では、袋本体の上面部及び周面部のネットの網目を細かくして、例えばカラスのくちばしが入らないようにすることにより、カラスのみならず小動物が袋本体内のゴミ袋を荒らすことを確実に防ぐことができる。本発明ではまた、底面部のネットの網目を上面部及び周面部よりも粗くする。これは、網目を細かくすると、ゴミ袋から漏出し得る汚水が表面張力によって網目にトラップされ、円滑に排出されず、衛生的に問題が生じる。そのため、底面部の網目を粗くして、汚水が円滑に排出されるようにするものである。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記袋本体は膨らんだ状態で直方体形状であり、前記周面部は、前面部と、後面部と、左右の側面部とを有し、前記開口部は、左右の側面部と上面部にわたって形成される。袋本体を直方体に形成することにより、上面部及び底面部及び前後左右の側面部がそれぞれ矩形面となり、開口部を左右側面部と上面部の3面にわたるように形成する。これにより、ゴミ袋の出し入れ時に開口を大きくとることができる。なお、開口部に二つのスライダーを有するファスナーを取り付けることが、開閉操作が容易になるため好ましい。
【0009】
本発明において、ゴミ収集ネットは、前記袋本体の少なくとも一部を高さのある別体に連結して支持させるための複数の連結部材を有することができる。ネットから成る袋本体は自力では内部空間を保てないため、フェンス、電柱、樹木等の高さの別体に連結部材を連結することにより、袋本体を、周面部が底面部から持ち上がるように該別体に支持させて、ゴミ袋を収容する空間の形状を少なくとも部分的に確保して、ゴミ袋の出し入れを円滑にすることができる。連結部材としては、上記別体に対し着脱が容易なファスナー付きストラップ等を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るゴミ収集ネットは、不使用時にはコンパクトにまとめて移動や保管ができる可動式であるため、既存の住宅街やスペースのない都市部でも容易に採用でき、コンクリートや金属フレーム等を使っていないため安価である。本発明ではまた、袋本体の上面部及び周面部のネットの網目を細かくしたため、カラスや小動物が内部のゴミを荒らすことができず、その一方、底面部のネットの網目を比較的粗くしたため、汚水がトラップされることなくスムーズに排出される。更に、開口部を大きく確保してゴミ袋の投入・回収作業を楽にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るゴミ収集ネットの好適な実施形態を図面に基づいて詳述する。図1及び2は、本発明の一実施形態に係るゴミ収集ネット1をそれぞれ上方及び下方から見た概略斜視図であり、ゴミ収集ネット1を膨らんだ状態で表している。ゴミ収集ネット1は、合成樹脂製等の丈夫なネットを袋状にした袋本体10から基本的に構成され、袋本体10は、上面部11と、周面部12、13、14、15と、底面部16を有している。図示例では、膨らんだ状態で直方体形(奥行寸法1m×長さ寸法2m×高さ寸法1m)となるように形成され、それぞれ矩形の上面部11と、前面部12、後面部13、左右の側面部14、15と、底面部16とを有する。袋本体10は、ゴミ袋の集約量に応じて各種サイズを用意しておけばよく、集約量が多い場合は、袋本体10の奥行寸法や長さ寸法を大きくすることが好ましい。袋本体10は上記形に限定されず、上面部と底面部とを円形とした円柱形となるように形成してもよい。袋本体10はまた、少なくともカラスの視覚にさらされる部分が黄色をベースとした色に着色されている。具体的には、袋本体10の上面部11と周面部12、13、14、15とが黄色をベースとした色に着色されている。底面部16についても、上面部及び周面部と同様に、黄色をベースとした色に着色されていてもよい。ゴミ収集ネット1は、後述する高さのある別体40(図4参照)に支持されていない場合、自重で底面部16上に潰れた状態となり、不使用時等には小さくまとめて簡単に移動したり保管することができる。
【0012】
ゴミ収集ネット1において、袋本体10の上面部11及び周面部12、13、14、15のネットは、網目が細かく設定され、例えばカラスのくちばしが入らないようにされる。具体例として、ナイロン糸をラッセル編みした繊維製ネットであって、210d(デニール)の糸で4×5(経糸の撚り本数×緯糸の撚り本数)、ネット幅50cm当たりの経糸本数を240本としたネットを用いたり、あるいは、ラッセルモジ編みしたネットであって、210dの糸で4×5(経糸の撚り本数×緯糸の撚り本数)、角目(網目)のサイズが1.7mm×1.7mm(経方向の寸法×緯方向の寸法)としたネットを用いており、網目の経寸法と緯寸法が3.0mm以下のネットを用いるのが好ましい。他方、底面部16のネットの網目は、汚水がトラップされずに排出され易いように、上面部11及び周面部12、13、14、15よりも粗く設定される。この例としては、ポリエチレン糸で形成した繊維製ネットであって、400d(デニール)の糸を24本撚った糸を用い、ネット長さ5寸(151.5mm)当たりの節数(経糸と緯糸とが交絡した部分の数)を12節としたネットを用いており、網目の経寸法と緯寸法が10mm以上のネットを用いるのが好ましい。
【0013】
袋本体10には、上面部11及び左右側面部14、15の3面にわたる開口部20が設けられている。より詳しくは、開口部20は、上面部11及び左右側面部14、15における前後方向中間部に対し、左側面部14の下端から上面部10を経て右側面部15の下端までを開閉可能とするスライドファスナー21を設けて成る。スライドファスナー21としては、図3に拡大して示すように、左右一対のファスナーテープ21’の対向側縁に沿ってファスナーエレメント23が取り付けられ、このファスナーエレメント23に沿って移動可能で、ファスナーエレメント23を噛合又は分離可能な二つのスライダー22を有している。二つのスライダー22は、各々が接近して付き合わされた状態で袋本体10の開口部20を閉鎖し、離間してスライドファスナー21の終端部に向けて移動した状態で開口部20を開放するように配置されており、一対のファスナーテープ21’間の一対のファスナーエレメント23を、例えば上面部11の中央から左右両側に対しそれぞれ別個に開閉できるため、開閉操作を容易にすることができる。ファスナーテープ21’は、上面部11及び左右側面部14、15に縫製によって固定されており、黄色をベースとした色に着色されている。
【0014】
ゴミ収集ネット1には、フェンス、電柱、樹木等の高さのある別体40(図4参照)に袋本体10の後面部13を支持させるため、後面部13における上辺の左右両端及びその中間部と底辺の左右両端に、別体40に連結固定するリング状の連結部材30が一例として計五つ設けられている。連結部材30を設ける位置は上記位置に限定されず、左右側面部の上辺における後面部寄りに設けてもよい。また、袋本体が円柱形である場合は、周面部の上辺において、周面部の円周方向に所定の間隔を空けて設けるのが好ましい。図4は、ゴミ収集ネット1の使用状態を示す概略斜視図であり、二つのスライダー22をスライドファスナー21の終端部、すなわち左右側面部14、15の下端まで別個に移動させて、開口部20が完全に開放されると共に、各連結部材30が別体40に紐41で結び付けられて、袋本体10の後面部13が別体40に支持されている。このとき、前面部12は倒れ込んだ姿勢に変位しているので、袋本体10の収容空間が大きく開放され、ゴミ袋を袋本体10の奥側である後面部13側の空間へ投入することが容易となり、ゴミ袋の投入が袋本体10の手前側である前面部12側に偏ることなく、収容空間の有効利用を図ることができる。なお、図4中の参照番号50は袋本体10内部に収容したゴミ袋を便宜的に表している。
【0015】
連結部材30のより好ましい例として、図5に拡大して示すように、一方に多数のフックを有し、他方に多数のループを有した二片一組の面ファスナー32付きストリップ31を用いることができ、この場合、各ストリップ31の面ファスナー32を係合させることで、ストリップ31をリング状にすることができ、上記紐41が不要となり、連結部材30の別体40に対する連結及びその解除を簡単にすることができる。連結部材30には、面ファスナー32に代えてバックル、スナップボタン等を用いてもよい。更に、連結部材の別の態様としては、図6に示すように、袋本体10から三角形状に突出する突出部33を設け、この突出部33に鳩目付きの孔34を設けたものを挙げることができ、この孔34に通した紐41’を別体40に結び付けるようにする。
【0016】
袋本体10の製造時において、周面部12、13、14、15と底面部16とを縫製によって直接接合すると、上述したように両者の網目の細かさが異なるため、周面部12、13、14、15らが収縮して、ネットに皺が発生する。これを防ぐため、図7に拡大して示すように、まず、周面部12、13、14、15の網目の細かいネットの下端に沿って、底面部16と同じ網目で、細幅の第2粗目ネット17を縫製によって接合し、このネット17に対して底面部16の第1粗目ネットを糸18で結び付けて接合する。これにより、ネットの収縮や皺は生じない。袋本体10は、第2粗目ネット17を、周面部12、13、14、15の一部として組み込むタイプや、底面部16の一部として組み込むタイプのいずれであってもよい。第2粗目ネット17が周面部の一部として組み込まれた場合は、ゴミ袋から漏れた汚水が底面部16から袋本体10外へ排出されるとともに、周面部12、13、14、15の下端部分からも排出させることができる。また、第2粗目ネット17が底面部16の一部として組み込まれた場合は、粗目ネット17が周面部12、13、14、15に露呈することが無く、カラスや小動物が袋本体10内のゴミを荒らすことを確実に防止できる。
【0017】
袋本体10は、図8に略示するように、底面部16のみを着脱自在に取り外すことができるように形成することができ、この場合、比較的汚れやすい底面部16の洗浄が容易になる等の利点がある。底面部16と周面部12、13、14、15との連結及びその解除には、一例として、図9に拡大して示すように、雄スナップ24及び雌スナップ25からなるスナップファスナーを用いることができる。この場合、雄スナップ24(又は雌スナップ25)は、底面部16の周縁に前後・左右所定間隔ごとに複数設けられ、雌スナップ25(又は雄スナップ24)は、周面部12、13、14、15の下端付近において底面部16の対応する雄スナップ24(又は雌スナップ25)に対向する位置に設けられる。図示例では、雄スナップ24は、底面部16の縁部に取り付けられたフラップ26に設けられており、雌スナップ25は、周面部12、13、14、15の下端縁近傍に設けられており、フラップ26を起立させて、雄スナップ24と雌スナップ25とを係合させる。
【0018】
以上のゴミ収集ネット1では、袋本体10の上面部11及び周面部12、13、14、15の網目を細かくすることにより、カラスや小動物からのゴミ害を確実に防ぐことができ、また、底面部16の網目を粗くしことで、汚水をスムーズに排出させることができる。更に、開口部20を上面11及び左右側面14、15にわたるように大きく確保したことにより、ゴミ袋の投入・回収作業を楽にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るゴミ収集ネット(膨らんだ状態)を上方から見た概略斜視図である。
【図2】図1のゴミ収集ネットを下方から見た概略斜視図である。
【図3】上面におけるスライドファスナー部分を拡大して示す破断平面図である。
【図4】図1のゴミ収集ネットの使用状態を示す概略斜視図である。
【図5】連結部材としての一組の面ファスナー付きストラップを拡大して示す破断斜視図である。
【図6】連結部材の別の態様である鳩目付きの孔を拡大して示す破断斜視図である。
【図7】周面部の下端部分と底面部を接合する状態を示す拡大して示す破断説明図である。
【図8】底面部を取り外した状態を示すゴミ収集ネットの概略斜視図である。
【図9】底面部の着脱をスナップファスナーで行う例を拡大して示す破断斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ゴミ収集ネット
10 袋本体
11 上面部
12 前面部
13 後面部
14 左側面部
15 右側面部
16 底面部
20 開口部
21 スライドファスナー
30 連結部材
40 別体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴミ袋を集約するための袋状のゴミ収集ネット(1)であって、
ネットからなる袋本体(10)を備え、
袋本体(10)は、底面部(16)と、底面部(16)上に多数のゴミ袋(50)を収容する空間を形成可能な上面部(11)及び周面部(12、13、14、15)と、前記上面部(11)及び/又は周面部(12、13、14、15)に設けた、ゴミ袋(50)を出し入れするための開閉可能な開口部(20)とを有し、
前記上面部(11)及び周面部(12、13、14、15)のネットの網目を細かく設定し、
前記底面部(16)のネットの網目を、前記上面部(11)及び周面部(12、13、14、15)よりも粗く設定して成るゴミ収集ネット。
【請求項2】
前記袋本体(10)は膨らんだ状態で直方体形状であり、上記周面部(12、13、14、15)は、前面部(12)と、後面部(13)と、左右の側面部(14、15)とを有し、前記開口部(20)は、左右の側面部(14、15)と上面部(11)にわたって形成される請求項1のゴミ収集ネット。
【請求項3】
前記袋本体(10)の少なくとも一部を高さのある別体(40)に連結して支持させるための複数の連結部材(30)を有する請求項1のゴミ収集ネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−52898(P2010−52898A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220071(P2008−220071)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】