説明

ゴム引布

【目的】ゴム薄膜中にフタル酸エステル系可塑剤が含まれていると粘着力が増大し易いため、例えばロール状に巻いたゴム引布を巻き出す際、ゴム引布同士がくっついて剥がれ難く、作業性が悪いという問題があった。そこで、本考案は、ゴム薄膜中にフタル酸エステル系可塑剤を添加しないにも拘わらず、柔軟性を付与することが出来、更には粘着力の低いゴム引布を提供することを目的とする。
【構成】本考案のゴム引布は、基布と、該基布の両面に積層一体化されたゴム薄膜とからなるゴム引布において、ゴム薄膜中に、アジピン酸ジエステル系可塑剤又はナフテン系可塑剤を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム引布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基布の両面にゴム薄膜を積層一体化してなるゴム引布は、特許文献1に記載されているようにゴムボート、雨衣、マット等の素材として広く利用されている。
【0003】
また、この種のゴム引布に柔軟性を付与するために、ゴム薄膜中に安価なフタル酸エステル系可塑剤を添加する方法が知られている。
【特許文献1】特開平05−338081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ゴム薄膜中にフタル酸エステル系可塑剤が含まれていると粘着力が増大し易いため、例えばロール状に巻いたゴム引布を巻き出す際、ゴム引布同士がくっついて剥がれ難く、作業性が悪いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は、ゴム薄膜中にフタル酸エステル系可塑剤を添加しないにも拘わらず、柔軟性を付与することが出来、更には粘着力の低いゴム引布を提供することを目的とする。
【0006】
即ち、本発明のゴム引布は、基布と、該基布の両面に積層一体化されたゴム薄膜とからなるゴム引布において、ゴム薄膜中に、アジピン酸ジエステル系可塑剤又はナフテン系可塑剤を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、ゴム薄膜中にフタル酸エステル系可塑剤を添加しないにも拘わらず、柔軟性を付与することが出来、更には粘着力の低いゴム引布を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のゴム引布における基布としては、通常のゴム引布の基布として用いられているものは全て使用できる。このような基布としては例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ビニロン、綿、麻等の布帛等が挙げられる。
【0009】
本発明においてゴム薄膜を形成する方法としては、従来から広く採用されている所謂カレンダートッピング法によって基布上にゴム薄膜を積層一体化する方法や、基布上に液状ゴムを直接塗布するか転写により積層する方法等が採用できる。なお、ゴム薄膜の厚みは、0.3〜1.5mmの範囲がよい。
【0010】
また、本発明においてゴム薄膜を形成するゴムは、基布と積層一体化が可能なものであればどのような組成のものであっても良い。例えば特公昭64−9941号公報に記載されている如く、室温で流動性を示し、分子末端にカルボキシル基、水酸基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミノ基、アジリジル基、エポキシ基等の如く、架橋が可能な官能基を持った、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等のテレキーリック液状ゴムと、ポリイソシアネートとを反応架橋せしめたゴム(以下、イソシアネート架橋ゴムと呼ぶ。)等を使用することができる。
【0011】
本発明においてゴム薄膜中に含有される可塑剤としては、アジピン酸ジエステル又はナフテン系化合物である。これら可塑剤であれば、柔軟性を付与することが出来ると共に粘着性の増大を防止することが出来る。また、柔軟性を付与することが出来ると共に粘着性の増大を防止することを阻害せず、しかもフタル酸エステル系可塑剤以外のものであれば他の可塑剤を添加してもよい。
【0012】
本発明のゴム引布のゴム薄膜中には、ゴム物性改良のために各種添加剤を添加することができる。この添加剤としては従来のゴム引布中に添加されていたもの全てが使用可能であり、例えば充填剤、吸水剤、老化防止剤、プロセスオイル、着色剤、帯電防止剤、溶媒等が挙げられる。
【0013】
上記充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、活性炭酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、亜鉛華、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ゴム粉末、木粉、コルク粉等が挙げられる。
【0014】
吸水剤としては、上記充填剤の吸水等の影響で製品に生じる発泡現象を防止するものであればよく、例えば、生石灰、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、モレキュラーシーブ、無水硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、活性アルミナ等が挙げられる。
【0015】
老化防止剤としては、一般の紫外線吸収剤、酸化防止剤が使用できる。例えばベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類、サリチル酸誘導体、モノフェノール類、ナフチルアミン類、フェニレンジアミン類、ポリフェノール類、カルバメート類等が挙げられる。これらはゴム100重量部当たり、20重量部以下、特に0.1〜10重量部の範囲で添加することが好ましい。
【0016】
プロセスオイルは軟化剤として添加するものであるが、トリアルコキシアルキルホスフェートや界面活性剤は軟化剤の役目も果たすものであるので、添加量は極力少なくするのが好ましい(一般的なプロセスオイルは帯電防止性能を低下させる可能性があるため使用しない方が良い)。ただし、ジオクチルアジペート等のように導電性付与軟化剤もしくは可塑剤と呼ばれるものは併用使用することが可能である。
【0017】
着色剤としては有機顔料、無機顔料のいずれも使用できる。
【0018】
帯電防止剤としては、トリアルコキシアルキルフォスフェートが好ましく用いられ、例えばトリブトキシエチルフォスフェート、トリエトキシエチルフォスフェート、トリメトキシエチルフォスフェート、トリブトキシメチルフォスフェート、トリエトキシメチルフォスフェート、トリブトキシプロピルフォスフェート、トリエトキシプロピルフォスフェート、トリブトキシブチルフォスフェート、トリエトキシブチルフォスフェート等を用いることができる。
【0019】
また、帯電防止剤としては、上記トリアルコキシアルキルフォスフェート以外の界面活性剤を併用してもよい。
【0020】
なお、上記帯電防止剤の添加量は、ゴム100重量部当たり5〜35重量部、好ましくは、20〜30重量部である。
【0021】
帯電防止剤として、トリアルコキシアルキルフォスフェートと併用される界面活性剤としては、従来より帯電防止剤として使用されているものであれば何れのものでも良いが、特にノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤としては、例えば以下のものが例示される。
【0022】
即ち、a)ポリオキシエチレン(又はプロピレン或いはエチレン・プロピレンブロック)アルキルエーテル、ポリオキシエチレン(又はプロピレン或いはエチレン・プロピレンブロック)アルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のエーテル型ノニオン系界面活性剤、b)ポリオキシエチレン(又はプロピレン或いはエチレン・プロピレンブロック)アルキルエステル、多価アルコールと脂肪酸の部分エステル等のエステル型ノニオン系界面活性剤、c)ポリオキシエチレン(又はプロピレン或いはエチレン・プロピレンブロック)アルキルアミン等のアミノエーテル型ノニオン系界面活性剤、d)ポリオキシエチレン(又はプロピレン或いはエチレン・プロピレンブロック)多価アルコール脂肪酸エステル等のエーテルエステル型ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
上記b)のエステル型ノニオン系界面活性剤のうち、多価アルコールと脂肪酸の部分エステルの具体例としては、例えばソルビタン、ソルビトール、マンニタン、マンニトール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと、アルキル基の炭素数が12〜22の脂肪酸との部分エステルが例示される。
【0024】
また上記d)のエーテルエステル型ノニオン系界面活性剤としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの付加モル数が1〜20、脂肪酸のアルキル基の炭素数が12〜22である、ポリオキシエチレン(又はプロピレン或いはエチレン・プロピレンブロック)ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(又はプロピレン或いはエチレン・プロピレンブロック)ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(又はプロピレン或いはエチレン・プロピレンブロック)マンニタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(又はプロピレン或いはエチレン・プロピレンブロック)グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(又はプロピレン或いはエチレン・プロピレンブロック)プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0025】
溶媒は、液状ゴムの粘度を調節して取扱い易さの向上や、各種添加剤との混合を容易にするために用いる。この溶媒としては、ブタン、ペンタン、ガソリン、石油スピリット、シクロヘキサン等の炭化水素系化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系化合物;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロルエタン、テトラクロルエタン、トリクロルモノフルオロメタン、ジクロルジフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素系化合物;クロルベンゼン、クロルトルエン、ブロムベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系化合物;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系化合物;アセトン、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル系化合物等が挙げられる。また水、アルコール類等も使用することができる。これらの溶媒の添加量は、ゴム100重量部当たり、100重量部以下、特に好ましくは1〜10重量部である。
【0026】
イソシアネート架橋ゴムの場合には、ゴムとポリイソシアネートとのウレタン化反応を促進させたり遅延させたりするために、液状ゴム中に、更に反応調節剤、架橋剤、ウレタン化触媒、ブレンドポリオール等を添加する。
【0027】
反応調節剤としては例えば、硫酸、塩酸、リン酸、シュウ酸、マレイン酸、等の酸類や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ類等が挙げられる。これら酸類、アルカリ類はそれぞれ2種以上を併用することができるが、酸類とアルカリ類との混合使用はできない。
【0028】
架橋剤は上記イソシアネート架橋ゴムの、ゴムとポリイソシアネートとのウレタン化反応の際の架橋剤となるものであり、この架橋剤としては、例えば1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、ジエタノールアミントリエタノールアミン、トリメチロールプロパン等の2官能以上の低分子ヒドロキシル化合物が使用できる。
【0029】
上記ウレタン化反応の触媒となるウレタン化触媒としては、例えばアミン類、有機錫類等が用いられ、これらは単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0030】
上記ブレンドポリオールとしては、ゴムとの相溶性のあるウレタン用ポリオールであればいずれでも良く、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等のいずれも使用可能である。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例1
下記表層配合の組成物を混合機にて混合し、これを混練ロールにて混練後カレンダーにて厚み0.5mmに分出し、基布(ポリエステル繊維)にトッピングし、加硫させて、基布上に表層(ゴム層)を形成した。
【0033】
[表層配合]
・アクリロニトリル−ブタジエンゴム(ゴム樹脂:NBR) 70重量部
・ポリ塩化ビニル(PVC) 30重量部
・硫黄(加硫剤) 1.56重量部
・亜鉛華(加硫助剤) 2.5重量部
・テトラメチルチウラム・ジスルフィド(促進剤) 1.5重量部
・トリブトキシエチルホスフェート(帯電防止剤:TBXP) 10重量部
・ノニオン系界面活性剤(帯電防止剤) 10重量部 ・アジピン酸エステル(可塑剤) 0.24重量部
・炭酸マグネシウム(充填剤) 90重量部
【0034】
次に、下記裏層配合の組成物を混合機にて混合し、これを混練ロールにて混練後カレンダーにて厚み1.0mmに分出し、前記基布の表層を形成していない側にトッピングし、加硫させて、基布を表層と裏層のゴム層でサンドイッチした本発明のゴム引布を得た。
【0035】
[裏層配合]
・スチレン−ブタジエンゴム(ゴム樹脂:SBR) 80重量部
・アクリロニトリル−ブタジエンゴム(ゴム樹脂:NBR) 20重量部
・硫黄(加硫剤) 0.5重量部
・亜鉛華(加硫助剤) 5重量部
・テトラメチルチウラム・ジスルフィド(促進剤) 1.25重量部
・テトラブチルチウラム・ジスルフィド(促進剤) 1重量部
・スルフェンアミド系(促進剤) 1重量部
・ナフテン系(可塑剤) 17重量部
・カーボンブラック SRF(帯電防止剤) 70重量部
【0036】
得られたゴム引布のべたつき評価試験を行った。その結果、実施例1のゴム引布は、接着強度が1N以下であったため○であった。尚、べたつきの評価方法・評価基準は以下の通りである。
【0037】
[べたつき]
得られたゴム引布をA4サイズにし、それを2枚用意した。その後、2枚のゴム引布の裏層同士を貼り付けて5kgの荷重を24時間かけた後、JIS−K−6404−5に準拠した方法により接着強度を測定し、べたつきの評価を行った。評価基準は以下の通りとした。
○:接着強度が1N以下であった。
×:接着強度が1Nを超えるものであった。
【0038】
実施例2
表層の可塑剤として、ナフテン系を用いた以外は、実施例1と同様にしてゴム引布を得た。得られたゴム引布について実施例1と同様の試験を行った。その結果、実施例2のゴム引布は、接着強度が1N以下であったため○であった。
【0039】
比較例1
表層及び裏層の可塑剤として、フタル酸ジオクチル(会社名:シージーエスター(株)製のDOP)を用いた以外は、実施例1と同様にしてゴム引布を得た。得られたゴム引布について実施例1と同様の試験を行った。その結果、比較例1のゴム引布は、接着強度が1Nを超えるものであったため×であった。
【0040】
実施例1および2は、可塑剤としてフタル酸ジオクチルを用いていなかったため、ベタつきが1N以下であり、ロールからの巻き出しが容易に出来た。それに対し、比較例1は、可塑剤としてフタル酸ジオクチルを用いていたため、ベタつきが1Nを超えるものであり、ロールからの巻き出しが困難であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布と、該基布の両面に積層一体化されたゴム薄膜とからなるゴム引布において、
ゴム薄膜中に、アジピン酸ジエステル系可塑剤又はナフテン系可塑剤を含有することを特徴とするゴム引布。

【公開番号】特開2010−69816(P2010−69816A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242122(P2008−242122)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】