説明

ゴム部材の搬送装置

【課題】ゴム部材の伸びを抑制可能なゴム部材の搬送装置を提供する。
【解決手段】連続帯状のゴム部材が巻取られた巻出手段(巻出ロール2)と、巻出手段より巻出されたゴム部材(ベルト部材7)が巻付けられる巻付手段(成型ドラム3)と、巻出手段より巻出されたゴム部材を巻付手段まで導く搬送路と、搬送路を振動させる振動付与手段6とを備えた。また、搬送路が、ゴム部材の張力を所定の適正値に調整するためのフェスツーン22と、フェスツーンと巻付手段との間に設けられたローラーコンベヤ装置23とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続帯状のゴム部材を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機と、押出機によって連続して押出された連続帯状のゴム部材を巻取る巻取装置と、押出機によって連続して押出された連続帯状のゴム部材を巻取装置に導く搬送路と、押出機の直後の位置又は恒温槽の直後の位置に設置されて搬送路の一部を構成するローラーと、当該ローラーを振動させる振動装置とを備え、ゴム部材にローラーを介して振動を与えることでゴム部材に屈曲運動を起こさせ、これにより、ゴム部材の収縮速度を早めてゴム部材の収縮量を小さくするようにしたゴム部材の搬送装置が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−244090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記搬送装置は、押出機によって連続して押出された連続帯状のゴム部材を巻取る構成であり、連続帯状のゴム部材が押出される構成なので、連続帯状のゴム部材が押出されて巻取られる過程において、ゴム部材に加わる連続帯状のゴム部材の長手方向に沿った方向の張力が小さい。このように長手方向に沿った方向の張力が小さい連続帯状のゴム部材にローラーを介して振動を伝えた場合、ローラーとゴム部材とが接触したままの状態でゴム部材がローラーで押されて上述した屈曲運動を起こし、当該屈曲運動によってゴム部材が伸びやすくなる可能性がある。
本発明は、ゴム部材の伸びを抑制可能なゴム部材の搬送装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るゴム部材の搬送装置は、連続帯状のゴム部材が巻取られた巻出手段と、巻出手段より巻出されたゴム部材が巻付けられる巻付手段と、巻出手段より巻出されたゴム部材を巻付手段まで導く搬送路と、搬送路を振動させる振動付与手段とを備えたので、巻出手段及び巻付手段によって連続帯状のゴム部材の両端が支持された状態でゴム部材にゴム部材の長手方向(搬送路に沿って連続する方向)に沿った方向の張力が加わりやすい条件を備えた搬送装置において、振動付与手段により搬送路が振動することで搬送路とゴム部材との接触を減らせ、搬送路とゴム部材との接触による摩擦を軽減できるので、ゴム部材の伸びを抑制できる。
搬送路が、ゴム部材の張力を所定の適正値に調整するためのフェスツーンと、フェスツーンと巻付手段との間に設けられたローラーコンベヤ装置とを備えたので、ゴム部材が巻付手段に巻付けられる際に、フェスツーン及び巻付手段によってローラーコンベヤ装置上に位置されるゴム部材の両端が支持された状態となって、ローラーコンベヤ装置上に位置されるゴム部材の他端側には巻付手段による牽引力が加わるとともにローラーコンベヤ装置上に位置されるゴム部材の一端側にはフェスツーンによる引張力が加わるため、ゴム部材にゴム部材の長手方向に沿った方向の張力が加わりやすい条件を備えた搬送装置となり、当該搬送装置において、振動付与手段を備えたことで、ローラーコンベヤ装置とゴム部材との接触を減らせ、ローラーコンベヤ装置とゴム部材との接触による摩擦を軽減できるので、ゴム部材の伸びを抑制できる。
ローラーコンベヤ装置の複数のローラーにより形成されるローラー搬送路が、フェスツーン側から巻付手段側に向けて上方に傾斜した上傾斜ローラー搬送路と、上傾斜ローラー搬送路の上至点から巻付手段側に向けて下方に傾斜する下傾斜ローラー搬送路とを備えたので、ゴム部材にゴム部材の長手方向に沿った方向の張力がより加わりやすい条件を備えた搬送装置となり、当該搬送装置において、振動付与手段を備えたことで、ローラーコンベヤ装置とゴム部材との接触を減らせ、ローラーコンベヤ装置とゴム部材との接触による摩擦を軽減できるので、ゴム部材の伸びを抑制できる。
振動付与手段は、搬送路をゴム部材の帯面に対して交差する方向に振動させる構成であり、搬送路をゴム部材の帯面に対して交差する方向に振動させる振動周波数が80Hz〜8000Hzの範囲であるので、ローラーコンベヤ装置を高速に振動させることができ、搬送路とゴム部材との接触をより効果的に抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】搬送装置を示す構成図(実施形態1)
【図2】ベルト部材を示す平面図(実施形態1)。
【図3】ローラーコンベヤ装置及び振動付与手段を示す斜視図(実施形態1)。
【図4】ベルト部材の巻付け工程を示す図(実施形態1及び比較例)。
【図5】比較例の搬送装置を用いた場合のベルト部材の伸び率及び幅変化率の結果を示す図。
【図6】実施形態1の搬送装置を用いた場合のベルト部材の伸び率及び幅変化率の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1に示すように、ゴム部材の搬送装置1は、巻出手段の一例としての巻出ロール2と、巻付手段の一例としての成型ドラム3と、搬送路4と、速度制御機構5と、振動付与手段6とを備える。
【0008】
巻出ロール2は、連続帯状のゴム部材の一例としてのベルト部材7が巻取軸2aにロール状に巻かれた構成である。
巻取軸2aは、床8に設置された支持部材9に回転可能に支持され、回転駆動源10からの回転駆動力を受けてベルト部材7を巻出す方向に回転する。
巻取軸2aに巻かれたベルト部材7は、カレンダー装置と呼ばれる押出圧延装置によってスチールコードや有機繊維コード等のコード11に生ゴムをコーティングして形成されたコード11内蔵のゴム部材であって、タイヤの構成部品となるものである。このベルト部材7は、生ゴム状態であるため伸びると塑性変形してしまう可能性がある。従って、ベルト部材7の伸びを抑制する必要性が高い。
図2に示すように、ベルト部材7の長手方向に沿った中心線7aと直交する直交線7bとコード11とのなす角度αはコード角と呼ばれ、タイヤの要求性能によって決められる。
【0009】
成型ドラム3は、巻出ロール2より巻き出されて搬送路4を経由して搬送されるベルト部材7がカーカス部材15を介して巻付けられる円周面16を有して円周面16の円の中心を回転中心として回転する断面円形状の回転体である。
成型ドラム3の円周面16には最初にタイヤの構成部品であるカーカス部材15が巻付けられ、このカーカス部材15の上にベルト部材7が巻付けられる。
尚、カーカス部材15やベルト部材7が、コード11としてスチールコードのような金属コードを内蔵したものである場合、成型ドラム3の円周面16には、当該円周面16上に巻付けられるカーカス部材15やベルト部材7のコード11を吸着してカーカス部材15やベルト部材7を円周面16上に張り付かせるための図外の磁石が設けられている。
成型ドラム3の回転中心軸3aは、床8に設置された支持部材17に回転可能に支持され、回転駆動源18からの回転駆動力を受けてベルト部材7を巻取る方向に回転する。
成型ドラム3の巻付け速度は、例えば、0.5rpmから30rpmの範囲内に設定される。
【0010】
搬送路4は、剥離手段21と、フェスツーン22と、ローラーコンベヤ装置23と、ベルト部材切断装置24とを備える。
【0011】
巻出ロール2から巻出されたベルト部材7の巻出端7tが、フェスツーン22、ローラーコンベヤ装置23を経由して成型ドラム3の巻付始端取付部3bに取り付けられた後、巻出ロール2の回転駆動源10及び成型ドラム3の回転駆動源18を起動させることによって、ベルト部材7が成型ドラム3の円周面16上に所定回数巻付けられる。
即ち、ベルト部材7は、連続帯状のベルト部材7の帯の長手方向と搬送方向とが一致するようにフェスツーン22、ローラーコンベヤ装置23を経由して巻出ロール2から成型ドラム3に搬送されて成型ドラム3に巻付けられる。
ベルト部材7のコード角αが0°に近いほど、ベルト部材7の巻付け工程において、ベルト部材7に長手方向に沿った方向の張力が加わるとベルト部材7が長手方向に伸びやすくなる。ベルト部材7が長手方向に伸びると、ベルト部材7のコード角αが初期値よりも大きくなり、図2に示すように、ベルト部材7が幅方向に縮んでベルト部材7の幅寸法が初期状態のW1からW2のように小さくなる。
【0012】
剥離手段21は、巻出ロール2の巻取軸2aに巻取られたベルト部材7の帯面同士が互いに貼り付かないようにするためにベルト部材7の一方の帯面7fに剥離可能に貼り付けられた図外のポリエチレンフィルム等の面接触防止部材25を剥がすための手段である。
剥離手段21は、例えば、ベルト部材7の一方の帯面7fより面接触防止部材25を剥がす剥離部26と、ベルト部材7の一方の帯面7fから剥離部26によって一方の帯面7fより剥がされた面接触防止部材25を巻取る面接触防止部材巻取手段27とを備える。面接触防止部材巻取手段27は、連続帯状の面接触防止部材25の一端が連結されて面接触防止部材25を巻取る巻取軸27aと巻取軸27aの図外の回転駆動源とを備える。巻取軸27aは、床8に設置された支持部材29に回転可能に支持される。剥離部26は、例えば、支持部材29に連結された図外の支持部材により支持される。
【0013】
フェスツーン22は、ベルト部材7が巻出ロール2から巻出されて成型ドラム3に巻付けられる際に、巻出ロール2の巻出速度と成型ドラム3の巻取速度とに速度差が生じることによってベルト部材7に過大な引張力や過大な圧縮力が加わらないように、一端(巻取端)が巻出ロール2の巻取軸2aに取付けられて他端(巻付始端7s)が成型ドラム3に取付けられた両端支持のベルト部材7の張力を所定の適正値に調整するための機構である。
フェスツーン22は、床8に設置された支持部材31aに支持される搬入側駆動ロール31と、床8に設置された支持部材32aに支持される搬出側駆動ロール32とを備える。
尚、ベルト部材7が、コード11としてスチールコードのような金属コードを内蔵したものである場合、フェスツーン22は、磁石路33を備える。磁石路33は、例えば支持部材31aに設けられる入口側磁石路33aと支持部材32aに設けられる出口側磁石路33bとを備える。
【0014】
巻出ロール2から巻き出されたベルト部材7の巻出端7tが、搬入側駆動ロール31を通過して下方に移動した後に上方に移動して搬出側駆動ロール32を通過し、ローラーコンベヤ装置23のローラー40の上を通って成型ドラム3の巻付始端取付部3bに取付けられることによって、搬入側駆動ロール31と搬出側駆動ロール32との間でベルト部材7が垂れ下がった状態に設定される。
入口側磁石路33aは、搬入側駆動ロール31を通過して下方に垂れ下がるベルト部材7の内部のコード11としての金属コードを吸着してベルト部材7を安定に搬送させるための構成である。
出口側磁石路33bは、入口側磁石路33aと向かい合うように設けられて入口側磁石路33aを通過したベルト部材7の内部の金属コードを吸着してベルト部材7を搬出側駆動ロール32まで安定に搬送させるための構成である。
【0015】
巻出ロール2の巻出速度が成型ドラム3の巻取速度よりも速い場合は、搬入側駆動ロール31と搬出側駆動ロール32との間のベルト部材7の下端位置7eが下方に移動する。
巻出ロール2の巻出速度が成型ドラム3の巻取速度よりも遅い場合は、搬入側駆動ロール31と搬出側駆動ロール32との間のベルト部材7の下端位置7eが上方に移動する。
以上により、ベルト部材7は、フェスツーン22と成型ドラム3とに跨って位置されて一端がフェスツーン22により支持され他端が成型ドラム3により支持された状態となる。そして、フェスツーン22によって、ベルト部材7の長手方向に加わる張力が一定かつ小さくなるように調整されることになる。
【0016】
ローラーコンベヤ装置23は、フェスツーン22と成型ドラム3との間の搬送路を形成するものである。
図3に示すように、ローラーコンベヤ装置23は、複数のローラー40と、一対の支持側板41;41とを備える。
支持側板41は、床8に設置された支持部材42に支持される。
支持側板41は、フェスツーン22側から成型ドラム3側に向けて上方(天井側)に傾斜する上方傾斜部46を備えるとともに上方傾斜部46の最上位置46tから成型ドラム3側に向けて下方(床側)に傾斜する下方傾斜部47を備える。
ローラー40は、円筒又は円柱状のローラー本体51と、ローラー本体51の円形両端面の円の中心より突出する回転中心軸52とを備える。
面同士が平行に対向するように設けられた一対の支持側板41;41のそれぞれにローラー40の回転中心軸52の両端部が回転可能に支持される。
複数のローラー40が、一対の支持側板41;41の長手方向に沿って一定間隔毎に配置される。これにより、複数のローラー40により構成されるローラー搬送路49が、フェスツーン22側から成型ドラム3側に向けて上方(天井側)に傾斜する上傾斜ローラー搬送路49aと、上傾斜ローラー搬送路49aの上至点から成型ドラム3側に向けて下方(床側)に傾斜する下傾斜ローラー搬送路49bとを備えた構成となる。
ローラー40は、ベルト部材7の帯面が複数のローラー40のローラー本体51の円周面に接触しながらベルト部材が成型ドラム3側に搬送されることによってローラー本体51が回転中心軸52を回転中心として回転可能なように、回転中心軸52が支持側板41に回転可能に支持される。
ローラー本体51は、摩擦係数の小さい材料により形成され、かつ、円周面が滑らかな面に形成される。
【0017】
ベルト部材切断装置24は、成型ドラム3の円周面16に巻付けられたカーカス部材15の上にベルト部材7が巻付けられる毎に、巻付けられた分のベルト部材7を搬送路側のベルト部材7より分離するためにベルト部材7を切断する装置である。ベルト部材切断装置24は、床8に設置された図外の支持部材に支持される。
【0018】
速度制御機構5は、巻出ロール2の巻出速度を検出する巻出速度検出器56と、成型ドラム3の巻取速度を検出する巻取速度検出器57と、巻出速度検出器56及び巻取速度検出器57で検出された速度値を入力して巻出ロール2の巻出速度と成型ドラム3の巻取速度とが同じとなるように回転駆動源10;18を制御する制御装置58とを備える。
【0019】
振動付与手段6は、ローラーコンベヤ装置23に振動を生じさせるものであり、一例として、支持側板41又はローラー本体51に周期的に接触する接触体61と、接触体61が支持側板41又はローラー本体51に周期的に接触するように接触体61を駆動する駆動手段62とを備える。
振動付与手段6は、例えば、駆動手段62としてのモーター62aと、モーター62aの出力軸62bに偏心して回転可能に設けられた接触体61としての回転円板61aとを備える。当該振動付与手段6は、モーター62aの出力軸62bを回転させることによって回転円板61aの外周面61bが支持側板41又はローラー本体51に周期的に衝突するように構成され、これにより、支持側板41又はローラー本体51に周期的な振動を付与できる。例えば、支持側板41の下面41aに回転円板61aの外周面61bを周期的に接触させてローラーコンベヤ装置23のローラー本体51をベルト部材7の帯面7fに対して交差する方向に振動させるようにした。尚、振動付与手段6の設置個数は自由である。
【0020】
そして、ローラー本体51の振動周波数が例えば80Hz〜8000Hzの範囲になるように、回転円板61aの径、回転円板61aの偏心中心、モーター62aの回転数などを調整した。尚、モーター62aのケーシングは、例えば支持側板41を支持する支持部材42に固定すればよい。
【0021】
以上のように構成された搬送装置1において、巻出ロール2から巻出したベルト部材7の巻出端7tを、フェスツーン22、ローラーコンベヤ装置23経由で成型ドラム3の巻付始端取付部3bに取り付けた後に、巻出ロール2及び成型ドラム3の回転駆動源10;18を起動させてベルト部材7を成型ドラム3の円周面16上に巻付ける際に、振動付与手段6の駆動手段62を駆動して、ローラーコンベヤ装置23の各ローラー本体51を振動させることにより、ローラー本体51の円周面とベルト部材7との接触による摩擦が軽減し、ベルト部材7が伸び難くなる。
【0022】
実施形態1においては、搬送路4にフェスツーン22を備えたことにより、ベルト部材7が成型ドラム3に巻付けられる際に、フェスツーン22及び成型ドラム3によってローラーコンベヤ装置23上に位置されるベルト部材7の両端部が支持された状態となって、ローラーコンベヤ装置23上に位置されるベルト部材7の他端側には成型ドラムの回転力による牽引力が加わることにより、ローラーコンベヤ装置23上に位置されるベルト部材7の一端側にはフェスツーン22による引張力が加わり、ベルト部材7にベルト部材7の長手方向に沿った方向の張力が加わりやすい条件を備えた搬送装置1となる。
このような搬送装置1において、振動付与手段6を備えたので、振動付与手段6によってローラーコンベヤ装置23の各ローラー本体51を振動させることにより、ローラー本体51とベルト部材7との接触による摩擦を軽減でき、ベルト部材7の伸びを抑制できるようになる。よって、ベルト部材7の伸びのばらつきが少なくなり、ベルト部材7の幅寸法のばらつきを少なくできるので、タイヤ1本内でのベルト部材7の幅寸法のばらつきが少なくなり、高品質のタイヤを製造できるようになる。
【0023】
実施形態1の搬送装置1によれば、ローラーコンベヤ装置23の複数のローラー40により形成されるローラー搬送路49は、フェスツーン22側から成型ドラム3側に向けて上方に傾斜した後に成型ドラム3側に向けて下方に傾斜する構成、即ち、上傾斜ローラー搬送路49aと下傾斜ローラー搬送路49bとを備えた構成であるため、ベルト部材7にベルト部材7の長手方向に沿った方向の張力がより加わりやすくなるという条件を備えた搬送装置1となり、当該搬送装置1において、振動付与手段6を備えたので、振動付与手段6によってローラーコンベヤ装置23の各ローラー本体51を振動させることにより、ローラー本体51とベルト部材7との接触による摩擦を軽減でき、ベルト部材7の伸びを抑制できるようになる。
【0024】
特に、振動付与手段6により、ローラー本体51をベルト部材7の帯面7fに対して交差する方向に振動させるようにしたので、ローラー本体51とベルト部材7との接触をより効果的に抑止できるようになるので、ローラー本体51とベルト部材7との接触による摩擦をより軽減できるようになり、ベルト部材7の伸びを抑制できる。
【0025】
ローラー本体51の振動周波数を80Hz〜8000Hzとし、ローラー本体51を高速に振動させたので、ローラー本体51とベルト部材7との接触をより効果的に抑止できるようになる。
【0026】
また、ベルト部材7が金属性のコード11を内蔵している場合、磁石路33を備えるために、ベルト部材7に張力が加わりやすくなるが、この場合でも、ローラー本体51とベルト部材7との接触による摩擦を軽減できることにより、ベルト部材7の伸びを抑制できるようになる。
また、ベルト部材7のコード角αが0°に近いほど、ベルト部材7に張力が加わりやすくなるが、この場合でも、ローラー本体51とベルト部材7との接触による摩擦を軽減でき、ベルト部材7の伸びを抑制できる。
【0027】
また、巻出ロール2の巻出速度と成型ドラム3の巻取速度とが同じとなるように制御する制御装置58と、ベルト部材7の長手方向に加わる張力が一定になるように調整するフェスツーン22とを備えるので、ベルト部材7の長手方向に加わる張力を小さくかつ一定にでき、ベルト部材7の伸びを抑制できる。
【0028】
実施例
以下の条件を満たした搬送装置1においてベルト部材7の伸びを観測した。
(1)ベルト部材7;幅寸法390mm、ローラーコンベヤ装置23上での搬送角度β(図1参照)=38°。
(2)成型ドラム3;円周面の周長2500mm、巻付速度16.6rpm、加速度5000msec、減速度3000msec。
(3)振動付与手段6;振動周波数5000Hz、振幅1mm、振動付与手段6の設置位置;成型ドラム3から1500mmの位置及びフェスツーン22から1500mmの位置に設置。
上記条件においてベルト部材7が図4に示すように成型ドラム3に巻付けられる過程において、ベルト部材7が成型ドラムの巻付けられたカーカス部材15上に乗り移る乗移部分でベルト部材7の状態をサンプリングし、各サンプリングデータとベルト部材7の基準状態データと比較してベルト部材7の伸び率及び幅変化率を求めた。図5;6の横軸は、成型機上位置a(巻付始端7sから乗移部分までの距離a(図4(b)参照))、縦軸は伸び率及び幅変化率を示す。図5;6のデータは、例えば、ベルト部材7の巻付始端7sが乗移部分から100mmずつ離れる毎にその時の乗移部分でベルト部材7の状態をカメラで撮影し、その撮影データとベルト部材7の基準状態データとをコンピュータに入力し、専用の演算プログラムを用いて算出した伸び率及び幅変化率を示したグラフである。
図5は実施形態1の搬送装置と比較して振動付与手段6を備えない比較例の搬送装置を用いてベルト部材7の伸び率及び幅変化率を測定した結果を示し、図6は実施形態1の搬送装置を用いてベルト部材7の伸び率及び幅変化率を測定した結果を示す。尚、幅変化率1、2、伸び率1、2は、巻付けられたベルト部材7のサンプル番号を示す。
図5;6からわかるように、振動付与手段6でベルト部材7に振動を与える実施形態1の搬送装置1の場合、振動付与手段6でベルト部材7に振動を与えない比較例の搬送装置と比べて、伸び率の最大値が13.8%から5%に改善され、幅変化率の最大値が5.3%から1.7%に改善された。
また、伸び率のばらつきが10%以内程度から2%以内程度に改善され、幅変化率のばらつきが3%以内程度から1%以内程度に改善された。
即ち、振動付与手段6でベルト部材7に振動を与える実施形態1の搬送装置1の場合、比較例の搬送装置と比べて、ベルト部材7の伸びを抑制でき、しかもベルト部材7の伸びのばらつきも少なくなることが確認できた。
【0029】
尚、振動付与手段6としては、上述した構成のものに限らず、例えば、油圧シリンダ装置を用いてピストンで支持側板41又はローラー本体51に打撃振動を付与するようにした構成のもの、あるいは、その他の振動体を用いてもよい。
また、振動付与手段6を、ローラー40の回転中心軸52に回転力を付与してローラー40を回転させるモーターとしてもよい。
【0030】
本発明においては、水平なローラー搬送路を備えた搬送装置に適用しても効果が得られる。
【0031】
本発明の搬送装置は、フェスツーン22を備えておらず、連続帯状のゴム部材の一端が巻出手段に取り付けられゴム部材の他端が巻付手段に取り付けられて、巻出手段と巻付手段との間に搬送路が設けられ、ゴム部材と搬送路との接触による摩擦によってゴム部材に伸びが発生するような搬送装置において、搬送路に振動を付与する振動付与手段6を備えた構成であってもよい。
この場合、巻出手段及び巻付手段によって連続帯状のゴム部材の両端が支持された状態でゴム部材にゴム部材の長手方向に沿った方向の張力が加わりやすい条件を備えた搬送装置1となり、当該搬送装置1において、振動付与手段6により搬送路が振動することで搬送路とゴム部材との接触を減らせ、搬送路とゴム部材との接触による摩擦を軽減できるので、ゴム部材の伸びを抑制できる。
【0032】
本発明の搬送装置による搬送対象は、連続帯状のゴム部材であればよい。例えば、タイヤを構成するカーカス部材やトレッド部材、その他の連続帯状のゴム部材でもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 搬送装置、2 巻出ロール(巻出手段)、3 成型ドラム(巻付手段)、
4 搬送路、6 振動付与手段、7 ベルト部材(ゴム部材)、7f 帯面、
22 フェスツーン、23 ローラーコンベヤ装置、40 ローラー、
49 ローラー搬送路、49a 上傾斜ローラー搬送路、
49b 下傾斜ローラー搬送路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続帯状のゴム部材が巻取られた巻出手段と、巻出手段より巻出されたゴム部材が巻付けられる巻付手段と、巻出手段より巻出されたゴム部材を巻付手段まで導く搬送路と、搬送路を振動させる振動付与手段とを備えたことを特徴とするゴム部材の搬送装置。
【請求項2】
搬送路が、ゴム部材の張力を所定の適正値に調整するためのフェスツーンと、フェスツーンと巻付手段との間に設けられたローラーコンベヤ装置とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のゴム部材の搬送装置。
【請求項3】
ローラーコンベヤ装置の複数のローラーにより形成されるローラー搬送路が、フェスツーン側から巻付手段側に向けて上方に傾斜した上傾斜ローラー搬送路と、上傾斜ローラー搬送路の上至点から巻付手段側に向けて下方に傾斜する下傾斜ローラー搬送路とを備えた構成であることを特徴とする請求項2に記載のゴム部材の搬送装置。
【請求項4】
振動付与手段は、搬送路をゴム部材の帯面に対して交差する方向に振動させる構成であり、搬送路をゴム部材の帯面に対して交差する方向に振動させる振動周波数が80Hz〜8000Hzの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のゴム部材の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−161975(P2012−161975A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23601(P2011−23601)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】