説明

ゴルフクラブヘッドの改良打撃フェース

【課題】打撃フェースの性能が改善されたゴルフクラブヘッドを提供する。
【解決手段】クラウン、ソール、およびスカートを具備するゴルフクラブヘッドにおいて、ゴルフクラブヘッドの前面部分に配置されてゴルフボールを打撃するように適合化され、フェース周囲を伴う、打撃フェース302部分と、打撃フェース302部分の後方部分に結合された本体部分とを有し、打撃フェース302部分は、さらに、中央周囲を伴う厚肉の中央領域320と、遷移周囲を伴う遷移領域とを有し、中央周囲は、フェース周囲の幾何形状と実質的に類似した幾何形状を伴い、遷移領域は、打撃フェース302のクラウン部分において、遷移領域のソール部分より厚く、打撃フェース302の上方部分の近くで懸垂曲線を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はゴルフクラブヘッドの改良打撃フェースに関する。より具体的には、この発明は、厚肉の中央領域が内部および外部遷移領域により包囲され、この厚肉の中央領域がゴルフクラブヘッドの打撃フェースのフェース周囲の形状と実質的に類似した形状を持つ中央周囲を具備する、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフゲームは、つねに、ゲームプレイに使用される道具に密接に関連してきた。ゴルフの実際のゲームはスコットランドの草分け時の当初からそんなに変化していないけれども、ゴルフプレイに使用される道具が顕著に変化してきた。多くのゴルフ道具のなかでどれがゴルフの創設期からもっとも変化したかは議論があるところであるけれども、現状のメタルウッドタイプのゴルフクラブが、ゴルフゲームの当初において使用されていたパーシモンウッドから劇的に変貌を遂げたことには反論がない。
【0003】
メタルウッドクラブは、その固有のデザインから、空洞の金属製シェルを形成し、これにより、打撃フェースが衝撃時に変形することが可能になることにより、ゴルフクラブヘッドの反発係数を大幅に増大させ、パーシモンウッドタイプのゴルフクラブヘッドに対して性能を向上させる。反発係数を増大させるのに加えて、ゴルフクラブヘッドの慣性モーメントを増大させることにより、ゴルフクラブヘッドの衝撃時の安定性を維持させつつサイズを増大させ、メタルウッドタイプのゴルフクラブヘッドは平均的なゴルファーがゴルフゲームをより容易に行えるようにする。
【0004】
このような性能上の向上のすべてにかかわらず、ゴルフクラブ設計者は、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースのバックの厚さを変化させてさらに性能境界を前進させてきた。ゴルフクラブヘッドの打撃フェースのバック部分の厚さを変化させると、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースの曲げ剛性を調整して打撃フェースのスイートスポットのサイズおよび形状を劇的に改善でき、ここで、スイートスポットは大きな反発係数を実現できる打撃フェースの部分として定義される。
【0005】
米国特許第6,319,150号(特許文献1)は最小フェース質量でフェース強度を最大化させるようにフェース壁の厚さを変化させる試みの1つを説明する。米国特許第6,319,150号は、厚さを変化させて付加的な重量が節約でき、これを戦略的に代替的な位置に配置しゴルフクラブヘッドの慣性モーメントが大きくなるようにして使用可能なゴルフクラブヘッドの打撃フェースの最大サイズを増加させるゴルフクラブを実現する。
【0006】
ゴルフクラブヘッドの打撃フェースの厚さを調整するこれらの初期の試みはこのようなコンセプトが将来発展するための基礎を提供した点で称賛に値するけれども、これらの試みのほとんどは、打撃フェースのサイズ、形状、幾何特性に基づく、打撃フェースの後方における可変厚さプロフィールの寸法、形状、および幾何特性を最適化することにより実現できる性能上の利益を充分に達成しない。米国特許第6,652,391号(特許文献2)はゴルフクラブヘッド性能を向上させるためにその打撃フェースの寸法、形状、および幾何特性を可変させる試みの1つを示すけれども、それを打撃フェース自体の寸法、形状、および幾何特性に関係付けることに失敗している。より具体的には、米国特許第6,652,391号は、厚さを変化させ、その内側表面で厚さが増加する膨出領域を具備するフロント壁を開示している。厚さが増加する膨出領域はフロント壁から後方に伸びる全体としてリング状の塊を含む。全体として円錐上の塊もリング状の塊の中に配置されて良く、これもフロント壁から後方に伸びる。
【0007】
米国特許第6,997,820号(特許文献3)は打撃プレートの後方の厚さ幾何特性の寸法、形状、および幾何を調整して可変厚さフェースを具備するゴルフクラブの基本的なコンセプトをさらに改良する代替的な試みの他の例を提供する。そのような試みに際して、米国特許第6,997,820号は、厚肉の垂直ゾーンおよび薄肉の中央領域を具備するフェースプレートを開示する。垂直ソーンの上方延長部は薄肉の上部領域から離れた分岐セグメントを有する。
【0008】
米国特許第7,137,907号(特許文献4)は、ゴルフクラブヘッドの打撃プレートの性能を調整するために採用される他の完全に異なる幾何特性のさらなる例を提供する。より具体的には、米国特許第7,137,907号は、第1の厚さセクションと第2の厚さ領域を具備する内部表面を伴うフェースインサートを開示している。第1の厚さセクションは好ましくは第2の厚さ領域野厚さより少なくとも0.025インチ厚い。
【0009】
米国特許第6,623,377(特許文献5)号は、打撃フェースの厚さを変更することにより、ゴルフクラブヘッドの性能を調整する試みのさらに他の例を提供する。より具体的には、米国特許第6,623,377号は、中央領域が他の領域の厚さ範囲より厚い第1の厚さを有する可変厚さの領域を伴う打撃プレートを具備するゴルフクラブヘッドを開示する。各領域の厚さは中央から外側に行くにつれて減少する。
【0010】
ゴルフクラブヘッドの打撃フェースの背面のサイズ、形状、および幾何特性を調整する多くの試みにかかわらず、上述の特許のいずれも、打撃フェースの寸法、形状、および幾何特性の間の関係について検討しておらず、これは打撃フェース自体の前置あの幾何特性と関連する。寸法、形状、および幾何特性の点で最適化された打撃フェースを具備するゴルフクラブはゴルフクラブヘッドの反発係数を改善すると共にゴルフクラブヘッドのスイートスポットも増大させる。
【0011】
以上から理解できるように、ゴルフクラブ技術のすべての進展にもかかわらず、現在の技術は、打撃フェースの寸法、形状、および幾何特性の間の官憲を注意深く調べておらず、これは、打撃フェースの背後の可変厚さプロフィールの寸法、形状、および幾何特性と関係する。打撃フェースの厚さを可変させる多くの試みにかかわらず、現在の技術は、ランダムな幾何特性を採用して、打撃フェース自体と関連があるように、ゴルフクラブヘッドの性能を完全に最適化するのではなく、不十分である。究極的には、当業界において、可変厚さレベルの寸法、形状、および幾何特性を、ゴルフクラブヘッド自体の打撃フェースと関連するように最適化するゴルフクラブヘッドに対する要望があることは、上述から明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,319,150号明細書
【特許文献2】米国特許第6,652,391号明細書
【特許文献3】米国特許第6,997,820号明細書
【特許文献4】米国特許第7,137,907号明細書
【特許文献5】米国特許第6,623,377号明細書
【発明の開示】
【0013】
この発明の1側面は、クラウン、ソール、およびスカートを具備するゴルフクラブヘッドである。このゴルフクラブヘッドは、さらに、ゴルフクラブヘッドの前面部分に配置されてゴルフボールを打撃するように適合化された打撃フェース部分と、打撃フェース部分の後方部分に結合された本体部分とを有する。打撃フェースはフェース周囲を伴い、さらに、中央周囲を伴う厚肉の中央領域と、遷移周囲を伴う遷移領域とを有する。ゴルフクラブヘッドの中央周囲は、フェース周囲の幾何形状と実質的に類似した幾何形状を伴い、遷移領域は、打撃フェースのクラウン部分において、当該遷移領域のソール部分より厚く、打撃フェースの上方部分の近くで懸垂曲線を形成する。
【0014】
この発明の他の側面は、クラウン、ソール、およびスカートを具備するゴルフクラブヘッドである。このゴルフクラブヘッドは、さらに、ゴルフクラブヘッドの前面部分に配置されてゴルフボールを打撃するように適合化された打撃フェース部分と、打撃フェース部分の後方部分に結合された本体部分とを有する。打撃フェースはフェース周囲を伴い、さらに、中央周囲を伴う厚肉の中央領域と、遷移周囲を伴う遷移領域とを有する。ゴルフクラブヘッドの中央周囲は、フェース周囲の幾何形状と実質的に類似した幾何形状を伴い、中央周囲の全長を、フェース周囲の全長で割った比は約0.23より大きく、約0.32より小さい。
【0015】
この発明のさらに他の側面は、クラウン、ソール、およびスカートを具備するゴルフクラブヘッドである。このゴルフクラブヘッドは、さらに、ゴルフクラブヘッドの前面部分に配置されてゴルフボールを打撃するように適合化された打撃フェース部分と、打撃フェース部分の後方部分に結合された本体部分とを有する。打撃フェースはフェース周囲を伴い、さらに、中央周囲を伴う厚肉の中央領域と、遷移周囲を伴う遷移領域とを有する。中央周囲の全長を、フェース周囲の全長で割った比は約0.23より大きく、約0.32より小さい。
【0016】
この発明のこれらの、または他の特徴、側面、および利点は以下の図面、説明および特許請求の範囲を参照して理解されるであろう。
【0017】
この発明の、先の、または他の特徴および利点は、添付図面において図説される、この発明の以下の説明から明らかであろう。添付図面はここに組み入れて明細書の一部を構成し、この発明の原理を説明するのに役立ち、同業者がこの発明を実施することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【図2】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの正面図である。
【図3】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの、図2のA−A'断面線に沿う断面図である。
【図4】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの、図2のB−B'断面線に沿う断面図である。
【図5】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの、打撃フェースを図示する、切り開き図である。
【図6】この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドに関連する「スイートスポット」の説明図である。
【図7】従来のゴルフクラブヘッドの打撃フェースを示すゴルフクラブヘッドの切り開き図である。
【図8】従来のゴルフクラブヘッドに関連する「スイートスポット」の説明図である。
【図9】この発明の代替的な実施例に従う打撃フェースを図示する、切り開いたゴルフクラブの背面図である。
【図10】この発明の他の代替的な実施例に従う打撃フェースを図示する、切り開いたゴルフクラブの背面図である。
【図11】この発明のさらに他の代替的な実施例に従う打撃フェースを図示する、切り開いたゴルフクラブの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な説明は、この発明を現状で最も良く考えられた態様で実現するものである。この記載は限定的な意図で把握されるのでなく、単に、この発明の全体的な原理を説明する目的でなされ、この発明の範囲は添付の特許請求の範囲の記載により最も良く規定される。
【0020】
以下の説明される種々の発明の特徴は、各々、相互に独立して採用でき、また他の特徴と組みあわされて採用できる。ただし、いずれの1つの発明の特徴も上述した問題のいずれかまたはすべてに対処するものでなくともよく、上述した問題の1つに対処するものであってもよい。さらに上述の問題の1つまたはそれ以上が以下で説明されるいずれの特徴によっても充分に対処されなくとも良い。
【0021】
添付図面の図1は、この発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッド100の斜視図である。図1に示されるゴルフクラブヘッド100は、全般的には、ゴルフクラブヘッド100の前面部分に配置されてゴルフボール(図示しない)を打撃するように適合化された打撃フェース部分102と、打撃フェース部分102の後方部分に結合された本体部分104とを具備して良い。ゴルフクラブヘッド100の本体部分104は全般的にはクラウン部分106、ソール部分108、およびスカート部分110を具備してゴルフクラブヘッド100の種々の部品を構成して良い。外からは見えないけれども、ゴルフクラブヘッド100の打撃フェース部分102は全般的にはユニークな内部幾何構造を伴ってよく、これは打撃フェース部分102の厚さを打撃フェース部分102のそれ自体の寸法、形状および幾何特性に関係するように変化させる。
【0022】
打撃フェース部分102の内部幾何構造をより密接に検討するために、ゴルフクラブヘッド100の断面図が最初に定義される。添付図面の図2はゴルフクラブヘッド200の正面図であり、必要な断面図の定義の仕方を容易に実現する。より具体的には、図2は、打撃フェース202の幾何中心214を横切ってクラウンからソール方向に垂直に伸びる断面線A−A'を示す。上述に加えて、図2は、打撃フェース202の幾何中心214を横切ってヒールからトウ方向に水平に伸びる断面線B−B'を示す。打撃フェース202の幾何中心214は、一般的には、打撃フェース202の表面上の点であって、打撃フェース202内の中心点を示してよいことを述べるのは重要なことである。
【0023】
添付図面の図3は、図2において示される断面線A−A'に沿うゴルフクラブヘッド300の断面図を示す。図3に示されるゴルフクラブヘッド300の断面図によれば、打撃フェース302の後方の可変厚さ幾何構造が示される。より具体的には、打撃フェース302は、全般的には、厚肉の中央領域320、内部遷移領域322、および外部遷移領域324を伴って良い。厚肉の中央領域320は、現行の事例的な実施例において示されるように、全般的には、約3.00mm、より好ましくは、約3.30mm、最も好ましくは、約3.60mmより大きな厚さd1を伴って良い。内部遷移領域322は、現行の事例的な実施例において示されるように、全般的には、打撃フェース302の幾何中心314から遠ざかるに従って、その厚さを徐々に小さくして良い。ここで、この発明の現行の事例的な実施例においては、内部遷移領域322は垂直方向に対称でないことに留意されたい。実際、上側の内部遷移領域322aの厚さは全般的には下側の内部遷移領域322bの厚さより厚くて良い。より具体的には、上側内部遷移領域322aの厚さd2は打撃フェース302のクラウン部分の近くで約3.60mmから約2.90mmへと、より好ましくは約3.60mmから約2.80mmへと、最も好ましくは約3.60mmから約2.70mmへと徐々に減少して良い。下側内部遷移領域322bの厚さd3は打撃フェース302のソール部分の近くで約3.60mmから約2.80mmへと、より好ましくは約3.60mmから約2.70mmへと、最も好ましくは約3.60mmから約2.60mmへと徐々に減少して良い。
【0024】
内部遷移領域322と同様に、外部遷移領域324も垂直方向に対称でない。上側外部遷移領域324aは全般的には下側外部遷移領域324bより厚くてよい。より具体的には、上側外部遷移領域324aの厚さd4は打撃フェース302のクラウン部分の近くで全般的には約2.90mmから約2.93mmへ、より好ましくは約2.80mmから約2.83mmへ、最も好ましくは約2.97mmから約2.73mmへ遷移して良い。下側外部遷移領域324bの厚さd5は打撃フェース302のソール部分の近くで徐々に約2.80mmから約2.78mmへ、より好ましくは約2.70mmから約2.68mmへ、最も好ましくは約2.60mmから約2.58mmへ遷移して良い。上述の種々の厚さd1、d2、d3、d4、およびd5に基づいて、この発明の事例的な実施例に示される打撃フェース302は、厚い上方部分、薄い下方部分を、厚肉の中央領域320とともに伴ってゴルフクラブヘッド300の性能を最適化する幾何構造を形成することがわかる。換言すれば、上側内部遷移領域322aおよび上側外部遷移領域322bが相互に組合わされて打撃フェース302の上方部分の近くで懸垂曲線を形成し、他方、下側内部遷移領域322bおよび下側外部遷移領域324bが厚さをコンスタントに減少させる曲線を形成する。
【0025】
添付図面の図4はこの発明の事例的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの、図2の水平断面線B−B'に沿う断面図を示す。図3に示す先の断面図と同様に、図4は、厚肉の中央領域420、内部遷移領域422、および外部遷移領域424を伴うゴルフクラブヘッド400の打撃フェース402を示す。図3は、打撃フェース302のクラウン部分が打撃フェース302のソール部分より厚いことを示したが、同様の兆候はヒールからトウの方向に沿っては必ずしも明らかではない。したがって、内部遷移領域422の厚さd6、d7は、全般的には、約3.60mmから約2.70mmへ、より好ましくは約3.60mmから約2.65mmへ、最も好ましくは約3.60mmから約2.60mmへと減少して良い。これに応じて、外部遷移領域424の厚さd8、d9は、約2.70mmから約2.55mmへ、より好ましくは約2.65mmから約2.50mmへ、最も好ましくは約2.60mmから約2.450mmへと減少して良い。
【0026】
図3および図4において、ゴルフクラブヘッド300および400の断面図が打撃フェース302および402の厚さの厚肉な中央領域320および420から打撃フェース302および402の外側周囲へと徐々に遷移留守ことをしめしていることは重要である。現行の事例的な実施例において示されるような、打撃フェース302および402の厚さの漸次的な遷移は、内部遷移ゾーン322および422と外部遷移ゾーン324および424の双方の組み合わせによって実現される。ゴルフクラブヘッドの打撃フェース302および402の全体に渡って徐々に遷移するように構成しているので、ゴルフクラブヘッド300および400の性能上有益である。なぜならば、これによりストレスが増大する点が減少して、打撃フェース302および402を薄くしてゴルフクラブヘッド300および400から重量を節約できるからである。
【0027】
図5は、この発明の事例的な実施例に従う打撃フェース502の寸法、形状、および幾何特性を明確に定義するためのパズルの最後のピースを提供する。より具体的には、
添付図面の図5は、打撃フェース502の背面部分が示されるように切り開かれたゴルフクラブヘッドの背面図を示す。図5に示すように、打撃フェース502は、全体として、中央周囲521を伴う厚肉の中央領域520、内部遷移周囲523を伴う内部遷移領域522、および外部遷移周囲525を伴う外部遷移領域524を有して良い。打撃フェース502は打撃フェース502の周囲まで厚さを連続的に減少させているので、この発明の現行の事例的な実施例において示される外部遷移周囲525の長さは全般的には打撃フェース502の周囲の長さと等価であってよいことに留意されたい。したがって、この発明の範囲および内容から逸脱しないかぎり、この出願の文脈においては打撃フェース周囲525という用語は外部遷移周囲525と交換可能に用いられてよい。
【0028】
フェース周囲525の境界は、図5のこの発明の現行の実施例において示されるように、全体として、打撃フェース502の背面図から視覚的に定義することは困難であろう。したがって、ここで時間をとって、フェース周囲525の境界を明瞭に定義することは重要であり、これは打撃フェース502の厚肉の中央部分520の寸法、形状、および幾何特性を定義するのに役立つ。フェース周囲525は全般的には打撃フェース502の前面打撃部分の境界として定義でき、これは打撃フェース502の前面の平坦な打撃面から実質的に逸脱する曲面の半径によって定義できる。打撃フェース502のホーゼル部分は平坦打撃面から実質的に逸脱する曲面の半径を含まないから、フェース周囲525のこの部分は、全般的には、フェース周囲525の定義可能な終端を完結する滑らかな曲面によって補える。
【0029】
フェース周囲525の境界が確立されると、フェース周囲525と中央周囲521との間の関係がここで定義されてよい。先に述べたように、厚肉の中央領域520の寸法、形状、および幾何特性は、打撃フェース502の寸法、形状、および幾何特性と著しく似ており、それらの相互の関係は、ゴルフクラブの性能利得を数量化するのに役立つ。
厚肉の中央領域520と打撃フェース502との間の寸法、形状、および幾何特性の類似性に加えて、内部遷移領域522も打撃フェース502と実質的に類似の寸法、形状、および幾何特性を有して良い。この発明の現行の実施例において、中央周囲521の長さは、全般的に、約65mmより大きく、約80mmより小さく、より好ましくは、約70mmより大きく、約75mmより小さく、最も好ましくは約73mmであってよい。他方、フェース周囲525の長さは、全般的には、約250mmより大きく、約280mmより小さく、より好ましくは、約260mmより大きく、約270mmより小さく、最も好ましくは約265mmであってよい。
【0030】
上述の異なる周囲の長さの評価は中央周囲521とフェース周囲525との間の重要な関係を提供する。より具体的には、先の事柄を基にすれば、中央周囲521の長さをフェース周囲525の長さで割った比が全体的には約0.23より大きく約0.32より小さく、より好ましくは、約0.26より大きく約0.28より小さく、最も好ましくは約0.27であってよいと結論付けられる。中央周囲521をフェース周囲525で割って得たこの比は、ゴルフクラブヘッドの性能上重要である。なぜならば、これが厚肉の中央領域520の寸法を決定し、これがスイートスポットのサイズを決定するからである。
【0031】
上述の幾何特性上の関係に加えて、厚肉の中央領域520の寸法も、ゴルフクラブヘッドの打撃フェース502の性能に関して重要である。より具体的には、図5から理解できるように、一般的には、厚肉の中央領域520の寸法を、フェース周囲525で定義される打撃フェース502の全体の寸法より顕著に小さくすることが好ましい。厚肉の中央領域520の寸法は内部遷移領域522の長さにより定義され、一般的には、フェース周囲525の長さにより定義される打撃フェース502のサイズの約20%から約40%の間、より好ましくはフェース周囲525の約20%から約40%の間、最も好ましくはフェース周囲525の約30%であってよい。
【0032】
最後に、図5に示される打撃フェース502の背面図が厚肉の中央領域520および打撃フェース502の幾何形状の関係を示すことを理解することは重要である。より具体的には、添付図面の図5は厚肉の中央領域520および内部遷移領域522の双方がフェース周囲525の幾何特性と実質的に類似する幾何特性を有することを示す。換言すれば、中央周囲521および内部遷移周囲523はすべてフェース周囲525の幾何形状と実質的に類似する幾何形状を形成する。厚肉の中央領域520が打撃フェース502の全体の幾何特性と類似した形状を伴うことは、ゴルフクラブヘッドの性能の上で有利であることについてここで認識することは重要である。なぜならば、これにより、打撃フェース502をすべての方向に沿って寄り均一に変形させてより大きな「スイートスポット」を形成できるからである。「スイートスポット」はゴルフクラブの性能の好ましい刺傷としてゴルフ業界で広く使用されているけれども、容易に数値化できる態様で定義されることはめったにない。そこで、厚肉の中央領域520の改善されたそのような幾何特性による、この発明の性能上の利得を数値化するために、「スイートスポット」を、ゴルフボールとの生得によりもたらされる最大ボールスピードの98%を実現できる、打撃フェース502の部分として定義する。
【0033】
添付図面の図6は、ゴルフクラブヘッドのフェース中心614との関係でスイートスポット630を示す模式図である。図9から理解できるように、スイートスポット630で包囲される領域は全般的にはフェース中心614を包囲し、実質的に長円形状をしている。実質的に長円形状をしていることに加えて、スイートスポット630でカバーされる面積は、一般的には約45mmより大きく、より好ましくは、約46.5mmより大きく、最も好ましくは約48.0mmより大きくてよい。この大きなスイートスポットに光を当てることは重要である。なぜならば、厚肉の中央領域520の改善された寸法、形状、および幾何特性に帰することができるこの発明のゴルフクラブヘッドの性能利得を特設に数値化するからである。この大きなスイートスポットは好ましいものである。なぜならば、ゴルファーがゴルフボールを打撃して実質的に完全にゴルフボールを打撃したときと同じ結果をもたらす面積をより大きくするからである。
【0034】
添付図面の図7および図8は、比較を目的とし、従来のゴルフクラブヘッドの背面図、および、このような従来のゴルフクラブヘッドに関連するスイートスポットの模式図を示す。図7において、従来のゴルフクラブヘッドが厚肉の中央領域720を伴う打撃フェース702を具備するという事実にもかかわらず、中央領域721の任意の円形形状はフェース周囲725と適合せず、スイートスポットの寸法に悪影響を与える。したがって、図8を参照すると、この従来のゴルフクラブヘッドのスイートスポット830の寸法はこの発明のゴルフクラブヘッドのスイートスポットの寸法に対して顕著に小さくなっていることがわかる。実際、スイートスポット830の寸法は一般的には約35mmより小さく、より好ましくは約30mmより小さく、最も好ましくは約27mmより小さくてよい。
【0035】
添付図面の図9は、この発明の代替的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの背面図を示し、ここでは、厚肉の中央領域920が打撃フェース周囲925の幾何特性と顕著に類似する幾何形状を有する。図9に示されるこの発明の現行の事例的な実施例において、厚肉の中央領域920の中央周囲921の幾何特性が打撃フェース902のフェース周囲925と同一ではないけれども、この発明の範囲および内容から逸脱することなく、依然として実質的に類似していると考えることができる。より具体的には、「実質的に類似」という用語は、この発明で定義されるように100%の一致を要求するものでなく、相互に緩やかに類似することのみを要求する。
【0036】
添付図面の図10は、この発明の代替的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの打撃フェース1002の背面図を提供する。この実施例の厚肉の中央領域1020は先に示されたものより長円である異なる形状を取っているけれども、この形状は依然として顕著にフェース周囲1025の長円の幾何特性と類似している。先に検討したことと同様に、このゴルフクラブヘッドの打撃フェース1002の性能を最大化するために、厚肉の中央領域1020の幾何特性を、独立した形状でなく、それが打撃フェース1002の幾何特性と関係するように制御することが重要である。上述と同様に、中央周囲1021をフェース周囲1025で割って得た比は、この発明の範囲および内容から逸脱することなく、全般的には約0.23より大きく約0.32より小さく、より好ましくは、約0.26より大きく約0.28より小さく、最も好ましくは約0.27であってよい。
【0037】
添付図面の図11は、この発明の代替的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの打撃フェース1102の背面図を提供する。この実施例の厚肉の中央領域1120は先に示されたものより円形である異なる形状を取っているけれども、この形状は依然として顕著にフェース周囲1125の円形の幾何特性と類似している。先に検討したことと同様に、このゴルフクラブヘッドの打撃フェース1102の性能を最大化するために、厚肉の中央領域1120の幾何特性を、独立した形状でなく、それが打撃フェース1102の幾何特性と関係するように制御することが重要である。上述と同様に、中央周囲1021をフェース周囲1025で割って得た比は、この発明の範囲および内容から逸脱することなく、全般的には約0.23より大きく約0.32より小さく、より好ましくは、約0.26より大きく約0.28より小さく、最も好ましくは約0.27であってよい。
【0038】
作業例における他の事柄、または、とくに明言しなくとも、すべての数値範囲、量、値、百分率、例えば材料の量、慣性モーメント、重心位置、ロフト、ドラフト角、種々の性能比についてのこれら、および明細書中の他のものは、たとえ、その値、量または範囲に関連して用語「約」が表示されていなくとも、「約」がその前に配置されているように読むことができる。したがって、そうでないと示されていない限り、明細書および特許請求の範囲に表される数のパラメータは近似的であり、これは、この発明により得られることが企図される所望の特性に応じて変化する。最低限でも、もちろん均等論の適用を制約するものではないが、各数のパラメータは記録されている有効数字の数や通常の丸め処理に照らして解釈されるべきである。
【0039】
この発明の広範な範囲を示す数的範囲およびパラメータは近似的であるけれども、具体例において示された数値は可能な限り正確に記録した。任意の数値は、それでも、それぞれのテスト計測に見いだされる標準偏差に必然的に起因する誤差を含む。さらに、種々のスコープの数値範囲が示される場合には、例示された値を含めた値の任意の組み合わせが利用できると理解されたい。
【0040】
もちろん、先のものはこの発明の事例の実施例に関するものであり、特許請求の範囲に記載されたこの発明の趣旨および範囲から逸脱しない範囲で修正を行うことができることに留意されたい。
【符号の説明】
【0041】
100 ゴルフクラブヘッド
102 打撃フェース部分
104 本体部分
106 クラウン部分
108 ソール部分
110 スカート部分
200 ゴルフクラブヘッド
202 打撃フェース
214 幾何中心
300 ゴルフクラブヘッド
302 打撃フェース
314 幾何中心
320 中央領域
322 内部遷移領域
324 外部遷移領域
400 ゴルフクラブヘッド
402 打撃フェース
420 中央領域
422 内部遷移領域
424 外部遷移領域
502 打撃フェース
520 中央領域
521 中央周囲
522 内部遷移領域
523 内部遷移周囲
524 外部遷移領域
525 外部遷移周囲
614 フェース中心
630 スイートスポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウン、ソール、およびスカートを具備するゴルフクラブヘッドにおいて、
上記ゴルフクラブヘッドの前面部分に配置されてゴルフボールを打撃するように適合化され、フェース周囲を伴う、打撃フェース部分と、
打撃フェース部分の後方部分に結合された本体部分とを有し、
上記打撃フェース部分は、さらに、
中央周囲を伴う厚肉の中央領域と、
遷移周囲を伴う遷移領域とを有し、
上記中央周囲は、上記フェース周囲の幾何形状と実質的に類似した幾何形状を伴い、
上記遷移領域は、打撃フェースのクラウン部分において、当該遷移領域のソール部分より厚く、上記打撃フェースの上方部分の近くで懸垂曲線を形成することを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
上記中央周囲は上記フェース周囲の上記幾何形状と同一の幾何形状を伴う請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
上記中央周囲の全長を上記フェース周囲の全長で割った比は、約0.23より大きく、約0.32より小さい請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
上記中央周囲の全長を上記フェース周囲の全長で割った比は、約0.26より大きく、約0.28より小さい請求項3記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
上記中央周囲の全長を上記フェース周囲の全長で割った比は、約0.27である請求項4記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
上記中央周囲の上記全長は約65mmより大きく約80mmより小さい請求項3記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
上記中央周囲の上記全長は約70mmより大きく約75mmより小さい請求項6記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
上記中央周囲の上記全長は約73である請求項7記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
上記ゴルフクラブヘッドの上記打撃フェースのスイートスポットの寸法は約45mmより大きく、
上記スイートスポットは上記ゴルフボールとの衝撃から生じる最大ボール速度の98%を実現できる、上記打撃フェースの領域である請求項3記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
上記スイートスポットの上記寸法は約46.5mmより大きい請求項9記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
上記スイートスポットの上記寸法は約48mmより大きい請求項10記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
クラウン、ソール、およびスカートを具備するゴルフクラブヘッドにおいて、
上記ゴルフクラブヘッドの前面部分に配置されてゴルフボールを打撃するように適合化され、フェース周囲を伴う、打撃フェース部分と、
打撃フェース部分の後方部分に結合された本体部分とを有し、
上記打撃フェース部分は、さらに、
中央周囲を伴う厚肉の中央領域と、
遷移周囲を伴う遷移領域とを有し、
上記中央周囲は、上記フェース周囲の幾何形状と実質的に類似した幾何形状を伴い、
上記中央周囲の全長を上記フェース周囲の全長で割った比は、約0.23より大きく、約0.32より小さいことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
上記中央周囲の全長を上記フェース周囲の全長で割った比は、約0.26より大きく、約0.28より小さい請求項12記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
上記中央周囲の全長を上記フェース周囲の全長で割った比は、約0.27である請求項13記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
上記ゴルフクラブヘッドの上記打撃フェースのスイートスポットの寸法は約45mmより大きく、
上記スイートスポットは上記ゴルフボールとの衝撃から生じる最大ボール速度の98%を実現できる、上記打撃フェースの領域である請求項12記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
上記スイートスポットの上記寸法は約46.5mmより大きい請求項15記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項17】
上記スイートスポットの上記寸法は約48mmより大きい請求項16記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項18】
クラウン、ソール、およびスカートを具備するゴルフクラブヘッドにおいて、
上記ゴルフクラブヘッドの前面部分に配置されてゴルフボールを打撃するように適合化され、フェース周囲を伴う、打撃フェース部分と、
打撃フェース部分の後方部分に結合された本体部分とを有し、
上記打撃フェース部分は、さらに、
中央周囲を伴う厚肉の中央領域と、
遷移周囲を伴う遷移領域とを有し、
上記中央周囲の全長を上記フェース周囲の全長で割った比は、約0.23より大きく、約0.32より小さいことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項19】
上記遷移領域は、打撃フェースのクラウン部分において、当該遷移領域のソール部分より厚く、上記打撃フェースの上方部分の近くで懸垂曲線を形成する請求項18記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項20】
上記遷移領域の上記ソール部分は厚さをコンスタントに減少させる曲線を形成する請求項19記載のゴルフクラブヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−130693(P2012−130693A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−277817(P2011−277817)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY
【Fターム(参考)】