説明

ゴルフボールにおいて使用するための二重に硬化される流込み成形性ポリウレタン系

【課題】変性されたポリブタジエンを含む、ゴルフボール用組成物、該組成物を使用して得られるゴルフボールを提供する。
【解決手段】コアおよびカバーを含むゴルフボールであって、該カバーが、イソシアネート含有成分および第一のイソシアネート反応性成分の反応生成物を含むプレポリマーと、ここで該第一のイソシアネート反応性成分は、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む、共役ジエン炭化水素を含有し;少なくとも2つのヒドロキシル基を含む、第二のイソシアネート反応性成分および少なくとも1種の遊離基開始剤を含有する硬化剤ブレンドとを含む組成物から作成され、該組成物は、該炭化水素間に架橋を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性されたポリウレタンを含む、ゴルフボール用組成物に関するものである。特に、ウレタン結合を含むポリマー主鎖を含有する本発明の組成物は、その軟質および硬質セグメント両者において架橋されている。本発明の組成物は、ゴルフボールの任意の層、例えば外側カバー層または内側カバー層において使用でき、あるいはゴルフボールの構造的外側層上に配置すべき被覆として使用することも可能である。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールの製造業者は、長年に渡る、ゴルフボールの全体としての性能および耐久性を改善し、またその製造方法を更に洗練するための試みにおいて、様々なゴルフボール用の材料およびその製造方法に関して実験を行ってきた。
例えば、過去数年に渡り、ゴルフボールの製造業者等は、イオノマー樹脂が優れた耐久性、反発性、および耐擦り傷性を持つことから、ゴルフボールカバー材料として該イオノマー樹脂を使用してきた。しかし、イオノマー樹脂は、他の型のゴルフボール層材料よりも高い耐久性を持つが、耐久性をもたらすものと同様な特性が、硬い「感触」をももたらし、また該材料の硬さのために、一般的に低いスピン速度を、その結果としてより低い制御性をももたらす。
【0003】
あるいはまた、ポリウレタン組成物は、「ソフトな」カバーを生成し、また典型的に高いスピン性能のために、より高いコントロール性の獲得を可能とする。従来のポリウレタンカバー材料は、典型的に芳香族成分から作られているので、黄変へと導く該材料の紫外線劣化は、光安定性のカバー材料、例えば脂肪族ポリウレタンおよびポリウレア材料を指向する最近の傾向へと導く。しかし、特性上芳香族であれ脂肪族であれ、比較的軟質のポリウレタンおよびポリウレア材料は、耐久性の問題を提起する。
イオノマー製カバーを持つゴルフボールの該「硬い」感触、およびポリウレタン製カバーおよびポリウレア製カバーを持つゴルフボールに係る耐久性および接着性の問題を補償するための更なる試みは、硬質のイオノマー樹脂、即ち約60ショアDまたはそれ以上の硬度値を持つ樹脂と、比較的より柔軟なポリマー材料とのブレンドをもたらした。例えば、硬質イオノマーとポリウレタンとのブレンドが、ゴルフボールの中間層およびカバー層を製造するのに使用されている。しかし、このようなブレンドは、一般的にこれら成分の非-相溶性のために、ゴルフボールの製造におけるその使用と関連する加工上の問題点を有する。更に、これら非-相溶性の混合物から作成したゴルフボールは、低い耐久性、切断抵抗性等の、劣ったゴルフボール特性を持つであろう。
【0004】
故に、このゴルフボールの分野においては、ポリウレタンおよびポリウレアの性能上の利点を持ち、かつより高い硬さおよびより高い曲げ弾性率並びに改善された疎水性を持つ材料に対する需要が存在する。更に、少なくとも部分的にこのような組成物から作られた層を有するゴルフボールが有利であろう。本発明は、このような材料、該材料の製法およびこれらの材料から造られたゴルフボールの部分を提示する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、コアおよびカバーを含むゴルフボールを目的とするものであり、ここで該カバーは、以下の成分:イソシアネート含有成分および第一のイソシアネート反応性成分の反応生成物を含むプレポリマーと、ここで該第一のイソシアネート反応性成分は、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む、共役ジエン炭化水素を含有する;および少なくとも2つのヒドロキシル基を含む第二のイソシアネート反応性成分およびパーオキサイドであり得る、少なくとも1種の遊離基開始剤を含む硬化剤ブレンドとを含有する、組成物から作成され、該組成物は、該炭化水素間に架橋を含む。
一態様において、該イソシアネート含有成分は、少なくとも2つのイソシアネート基を含む。もう一つの態様において、該第一のイソシアネート反応性成分は、ヒドロキシ-末端を持つポリブタジエンを含む。例えば、該ヒドロキシ-末端を持つポリブタジエンは該ポリブタジエンの末端部分に第一ヒドロキシル基を含むことができる。別の態様において、該ヒドロキシ-末端を持つポリブタジエンは、該ポリブタジエンの末端において第二のヒドロキシル基を含むことができる。もう一つの態様において、該ヒドロキシ-末端を持つポリブタジエンは、第一のヒドロキシル基、第二のヒドロキシル基これらの組合せを、該ポリブタジエンの末端において含むことができる。
【0006】
本発明は、またコア、および以下の組成物から形成されたカバーを含むゴルフボールを目的とし、該組成物は、共役ジエンおよびウレタン結合を含むポリマー主鎖およびイソシアネート基を含む複数の末端を含有するプレポリマーと、イソシアネート反応性成分および遊離基開始剤を含む硬化剤ブレンドとを含み、ここで、該イソシアネート反応性成分は、該イソシアネート基と反応し得る、少なくとも2つの末端ヒドロキシル基を含み、また該遊離基開始剤は、該ポリマー主鎖を架橋することができる。一態様において、該ポリマー主鎖は、ポリブタジエンを含有する。もう一つの態様において、該遊離基開始剤は、パーオキサイドを含む。本発明のこの局面において、該イソシアネート反応性成分は、ヒドロキシ-末端を持つ成分を含むことができる。故に、該組成物は、本質的にウレタン結合を含む。
【0007】
本発明は、またコアおよびカバーを含むゴルフボールの製法にも係わり、該方法は、(1) コアを調製する工程;(2) ヒドロキシル基を含む複数の末端を含有する共役ジエンを調製する工程;(3) 該共役ジエンと、イソシアネート含有成分とを反応させて、ウレタン結合を含むプレポリマーを製造する工程;(4) ヒドロキシ-末端を持つ硬化剤、および有機パーオキサイドを含有する硬化剤ブレンドを製造する工程;(5) 該プレポリマーと硬化剤ブレンドとを反応させて、ウレタン結合および該炭化水素間の架橋を含む組成物を形成する工程;および(6) 該組成物から、該コアの周りにゴルフボールカバーを流込み成形する工程を含む。
該複数の末端は、第一のヒドロキシル基、第二のヒドロキシル基これらの組合せを含むことができる。一態様において、該イソシアネート含有成分は、少なくとも2つのイソシアネート基を含む。もう一つの態様において、該共役ジエンは、ヒドロキシ-末端を持つポリブタジエンを含む。
更なる本発明の特徴並びに利点は、以下に記載される図面との関連で与えられる、以下の詳細な説明から確認することができよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ツーピースゴルフボールの断面図であり、そのカバーは、本発明の組成物から作られている。
【図2】多成分ゴルフボールの断面図であり、その少なくとも一つの層は、本発明の組成物から作られている。
【図3】大きなコアを持つ多成分ゴルフボールの断面図であり、その少なくとも一つの層は、本発明の組成物から作られている。
【図4】二重コアおよび二重カバーを含む、多成分ゴルフボールの断面図であり、その少なくとも一つの層は、本発明の組成物から作られている。
【図5】4週間という期間に渡り水に浸漬した、本発明のゴルフボールの重量増加をグラフ表示した図である。
【図6】4週間水に浸漬した後の、本発明のゴルフボールの、COR損失をグラフ表示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
従来の流込み成形性で、反応性の液状材料の架橋は、硬質セグメント、即ちイソシアネート基に限定されているので、架橋度、即ち硬さを高める能力は制限されている。従って、本発明は、ポリマーの硬質および軟質セグメント両者において架橋されている、ポリウレタン系、ポリウレア系、およびこれらの混合物を含む、ゴルフボールにおいて使用するための組成物に係る。特に、本発明の組成物は、イソシアネート含有成分とイソシアネート反応性成分との反応生成物を含み、該生成物は硬化工程に付され、該硬化剤は、該ポリマー中の硬質セグメントを架橋する第一の硬化剤および該ポリマーの軟質セグメントを硬化する第二の硬化剤を含む。
【0010】
本発明の組成物は、典型的に大コアボールの外側カバーまたは比較的軟質のカバーを備えた多層ボールの内側カバーとして使用される、熱可塑性物質、例えばイオノマーに対する代替品を与える。事実、特定の理論には全く拘泥するものではないが、カバー層または中間層として本発明の組成物を含むゴルフボールは、改善された耐水性および耐久性を持つ。更に、本発明は、このような組成物の製造方法および一部分を該組成物を使用して作成した、ゴルフボールをも目的とする。
本発明の組成物は、様々なゴルフボールの構成について使用できる。例えば、本発明の組成物は、大きなコアを持つツーピースボールのカバー層、比較的薄いカバー層を持つスリーピースボールの外側カバー層、スリーピースボールの中間層、または二重カバー層を持つゴルフボールの内側カバー層として使用することができる。更に、本発明の組成物は、ゴルフボール用の被覆を形成するために使用できる。該組成物の成分、ゴルフボールの構成、および層およびボール特性について、以下に詳細に論じる。
【0011】
本発明の組成物
本発明の組成物は、イソシアネート含有成分とイソシアネート反応性成分との反応生成物であるプレポリマーを含み、これは、硬化剤と遊離基開始剤との組合せにより硬化される。特に、イソシアネート含有成分とイソシアネート反応性成分との反応生成物は、ポリウレタン結合、ポリウレア結合、またはこれらの組合せを含むプレポリマーを生成する。該組成物の成分について、以下に議論する。
プレポリマー:
本発明の組成物において使用する該プレポリマーは、ポリウレタン、ポリウレアまたはこれらの組合せを主成分とするものであり得る。例えば、該プレポリマーは、ウレタン結合(本発明においては、ポリウレタンプレポリマーと呼ぶ)、ウレア結合(本発明においては、ポリウレアプレポリマーを呼ぶ)、またはウレタンおよびウレア結合(本発明においては、ハイブリッドプレポリマーと呼ぶ)を含むことができ、これら各々を以下において詳しく論じる。
【0012】
ポリウレタンプレポリマー
ポリウレタンを主成分とする場合、該プレポリマーは、少なくとも1種のイソシアネートと少なくとも1種のヒドロキシ-末端を持つ成分との反応により生成される生成物である。該ポリウレタンプレポリマーの成分は、様々な程度の光り安定度を与える、芳香族、芳香族-脂肪族、または脂肪族化合物であり得る。ここで使用する芳香族-脂肪族化合物とは、芳香族リングを含み、該イソシアネート基が該リングに直接結合していないものと理解すべきである。
芳香族組成物は、芳香族-脂肪族組成物よりも光安定性が低く、後者は、脂肪族組成物よりも光安定性が低い。例えば、本発明により製造した脂肪族組成物は、飽和成分、即ち不飽和炭素-炭素結合または芳香族基を実質的に含まない成分のみを含み、その使用は、経時による黄変を防止する。ここで使用する該用語「飽和(した)」とは、飽和脂肪族および脂環式ポリマー主鎖を持つ、即ち炭素-炭素二重結合を全く含まない、組成物を意味する。しかし、本発明により製造した芳香族組成物が、光安定性を改善するために、光安定剤を含むことができることを述べておくことは重要である。従って、光安定性は、本特許出願の目的にとって、様々な方法で達成することができる。
【0013】
該ポリウレタンプレポリマーで使用するためのイソシアネートは、脂肪族、環式脂肪族、芳香族-脂肪族、芳香族、これらの誘導体、および1分子当たり2またはそれ以上のイソシアネート(NCO)基を持つ、これら化合物の組合せを含む。しかし、上において簡単に述べたように、該イソシアネートは、本発明の組成物の光安定性を改善するために、飽和状態にあってもよい。該イソシアネートは、有機ポリイソシアネート末端を持つプリカーサ、低遊離イソシアネートプリカーサ、およびこれらの混合物であり得る。該イソシアネート成分は、また任意のイソシアネート官能性モノマー、ダイマー、トライマー、またはマルチマー型のその付加生成物、プリカーサ、疑似-プロカーサ、またはこれらの混合物を含むことも可能である。イソシアネート官能性化合物は、2またはそれ以上の任意のイソシアネート官能基を含むことができる、モノイソシアネートまたはポリイソシアネートを含むことができる。
【0014】
適当なイソシアネート含有成分は、一般的な構造:O=C=N-R-N=C=Oを持つジイソシアネートを含み、該一般式において、Rは、好ましくは、約1〜20個の炭素原子を含む、環式、直鎖または分岐炭化水素部分である。該ジイソシアネートは、また1またはそれ以上の環式基を含むことができる。多数の環式基が存在する場合、約1〜10個の炭素原子を含む直鎖および/または分岐炭化水素鎖が、該環式基間にスペーサとして存在し得る。幾つかの場合において、該環式基は、夫々2-、3-および/または4-位において置換されていてもよい。置換基は、ハロゲン原子、第一、第二または第三炭化水素基、またはこれらの混合物を含むことができるが、これらに限定されない。
【0015】
該ポリウレタンプレポリマーにおいて使用することのできる飽和(脂肪族)ジイソシアネートの例は、エチレンジイソシアネート;プロピレン-1,2-ジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート;テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI);HDIから調製されたHDIビウレット;オクタメチレンジイソシアネート;デカメチレンジイソシアネート;2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;ドデカン-1,12-ジイソシアネート;シクロブタン-1,3-ジイソシアネート;シクロヘキサン-1,2-ジイソシアネート;シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート;シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート;メチルシクロへキシレンジイソシアネート(HTDI);2,4-メチルシクロヘキサンジイソシアネート;2,6-メチルシクロヘキサンジイソシアネート;4,4'-ジシクロヘキシルジイソシアネート;2,4'-ジシクロヘキシルジイソシアネート;1,3,5-シクロヘキサントリイソシアネート;イソシアナトメチルシクロヘキサンイソシアネート;1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン;イソシアナトエチルシクロヘキサンイソシアネート;ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサンジイソシアネート;4,4'-ビス(イソシアナトメチル)-ジシクロヘキサン;2,4'-ビス(イソシアナトメチル)-ジシクロヘキサン;イソホロンジイソシアネート(IPDI);HDIのトリイソシアネート;2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジイソシアネート(TMDI)のトリイソシアネート;4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI);2,4-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート;2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート;芳香族-脂肪族イソシアネート、例えば1,2-、1,3-、および1,4-キシレンジイソシアネート;m-テトラメチルキシレンジイソシアネート(m-TMXDI);p-テトラメチルキシレンジイソシアネート(p-TMXDI);任意のポリイソシアネートのトライマー化イソシアヌレート、例えばトルエンジイソシアネートのイソシアヌレート、ジフェニルメタンジイソシアネートのトライマー、テトラメチルキシレンジイソシアネートのトライマー、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、およびこれらの混合物;任意のポリイソシアネートのダイマー化ウレトジオン(uretdione)、例えばトルエンジイソシアネートのウレトジオン、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン、およびこれらの混合物;上記イソシアネートおよびポリイソシアネートから誘導される変性ポリイソシアネート;およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。一態様において、該飽和ジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)またはこれらの組合せを含む。
【0016】
以上簡単に論じた如く、芳香族-脂肪族イソシアネートを使用して、該ポリウレタンプリカーサを製造することができる。芳香族-脂肪族材料の使用は、得られる生成物に対して、純粋な脂肪族材料を含むものと比較して、同程度の光安定性を付与しないが、純粋な芳香族材料で作成したものと比較して、得られる生成物に対して、より高い光安定性を付与する。芳香族-脂肪族イソシアネートの例は、1,2-、1,3-および1,4-キシレンジイソシアネート;m-テトラメチルキシレンジイソシアネート(m-TMXDI);p-テトラメチルキシレンジイソシアネート(p-TMXDI);任意のポリイソシアネートのトライマー化イソシアヌレート、例えばトルエンジイソシアネートのイソシアヌレート、ジフェニルメタンジイソシアネートのトライマー、テトラメチルキシレンジイソシアネートのトライマー、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、およびこれらの混合物;任意のポリイソシアネートのダイマー化ウレトジオン、例えばトルエンジイソシアネートのウレトジオン、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン、およびこれらの混合物;上記イソシアネートおよびポリイソシアネートから誘導される変性ポリイソシアネート;およびこれらの混合物を含む。更に、該芳香族-脂肪族イソシアネートは、本発明の目的に対して上に列挙した任意の飽和イソシアネートと混合することができる。
【0017】
不飽和ジイソシアネート、即ち芳香族化合物も、本発明で使用することができるが、該プリカーサにおける不飽和化合物の使用は、以下で議論するような光安定剤または顔料の使用と組合せることが好ましい。不飽和ジイソシアネートの例は、2,2'-、2,4'-、および4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニルジイソシアネート(TODI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ポリマーMDI(PMDI、約50%のメチレンジイソシアネートと、MDIのオリゴマーを含む残部で構成される褐色の液体)、カルボジイミド-変性液状4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、m-フェニレンジイソシアネート(MPDI)、トリフェニルメタン-4,4'-およびトリフェニルメタン-4,4''-トリイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、2,4'-、4,4'-、および2,2'-ビフェニルジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(PMDI)(ポリマー型PMDIとしても知られている)、およびこれらの混合物を包含する、置換および異性体混合物を含むが、これらに限定されない。
イソシアネート基は、ヒドロキシ末端を持つ成分のヒドロキシル基と反応して、反復するウレタン結合を生成し、該結合は以下の一般的な構造を持つ:
【0018】
【化1】

【0019】
ここで、xは鎖の長さ、即ち約1またはそれ以上であり、またRは、約1〜約20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基およびこれらの組合せを含み、またR1は、約1〜約20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐炭化水素鎖である。
本発明にとって適した上記ヒドロキシ末端を持つ成分は、事実上、有機、変性有機、飽和、脂肪族、脂環式、不飽和、芳香-脂肪族、芳香族、置換、または無置換のものであり得る。該ヒドロキシ末端を持つ成分は、ヒドロキシ末端を持つポリ炭化水素であり得、その例はヒドロキシ末端を持つポリブタジエン、ヒドロキシ末端を持つポリイソプレン;ポリ(水添イソプレン)ポリオール;ポリ(水添ブタジエン)ポリオール;およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
特に、該ヒドロキシ末端を持つ成分は、一分子当たり2またはそれ以上の反応性水素基、例えば第一または第二ヒドロキシ基、および少なくとも一つの共役ジエン炭化水素を含む。該共役ジエン炭化水素は、4〜約12までの炭素原子を持つ、無置換、2-置換、または2,3-ジ置換1,3-ジエンであり得る。一態様において、該ジエンは、6個までの炭素原子を有し、またその2-および/または3-位における置換基は、H、アルキル基、好ましくは低級アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、およびこれらの組合せであり得る。該ジエンは、1,3-ブタジエン、イソプレン、2-シアノ-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-フェニル-1,3-ブタジエン等であり得る。
【0020】
一態様において、該ヒドロキシ末端を持つ成分は、ヒドロキシ末端を持つポリブタジエン(HTPB)を含み、ここで該官能性ヒドロキシ基は、第一ヒドロキシ基、第二ヒドロキシ基、またはこれらの組合せである。該HTPBは、鎖当たり約1.8〜約3なる範囲のヒドロキシル官能価を持つ。一態様において、該ヒドロキシル官能価は、鎖当たり約2〜約3なる範囲にある。別の態様において、該HTPBのヒドロキシル官能価は、鎖当たり約2.2〜約2.6なる範囲にある。該ヒドロキシル官能価は、プレポリマーの調製中にその粘度に影響を及ぼすので、一態様において、該HTPBのヒドロキシル官能価は、鎖当たり約2.0〜約2.3なる範囲内にある。事実、低いヒドロキシル官能価を持つHTPBの使用は、コストおよび取扱い上の問題を増大する、より多くのイソシアネートの必要性を緩和し、粘度を減じることを可能とする。
【0021】
当業者は、本発明において使用するためのHTPBを合成するのに適当な方法を認識しているであろう。例えば、ジエンモノマーおよび過酸化水素を、溶媒中で、過酸化水素を触媒として使用して、遊離基付加重合にかける。熟練者には認識されるように、ジエンポリマーにおいて起こるcis-1,4およびtrans-1,4-および1,2-ビニル不飽和の比、ヒドロキシル基の数およびその位置および該HTPBの分子量は、重合温度および該ポリマーを製造するのに使用する付加重合系の型の関数であり得る。
HTPBの更なる例およびHTPBの製造方法は、米国特許第3,652,520号に与えられている。この特許の開示事項を参考としてここに組入れる。HTPBは、またサルトマー(Sartomer)によって、Poly bdTM樹脂(Poly bdTM R-45HTLOおよびR-20LMを含む)、およびクラゾール(KrasolTM)LBH樹脂として市場から入手できる。
ジイソシアネートを、本発明のヒドロキシ末端を持つ成分と反応させる場合、長いポリマー鎖が形成される。ジイソシアネートと、本発明による第一ヒドロキシ基を有するヒドロキシ末端を持つ成分との、一般的な反応式は、以下の通りである:
【0022】
【化2】

【0023】
ここで、nは、鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、Rは、約1〜約20個の炭素原子を持つ、直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基またはこれらの組合せである。
更に、該ヒドロキシ末端を持つ成分が、第二ヒドロキシ基を含む場合、該反応式は以下の通りである:
【0024】
【化3】

【0025】
ここで、nは、鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、RおよびR1は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ、直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基またはこれらの組合せである。
更に、該ヒドロキシ末端を持つ成分が、第一および第二ヒドロキシ末端を持つ成分の混合物である場合、該反応式は以下の通りである:
【0026】
【化4】

【0027】
ここで、nは、鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、RおよびR1は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ、直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基またはこれらの組合せである。
該ヒドロキシ末端を持つ成分は、また他のヒドロキシ末端を持つ成分とブレンドすることができ、後者の例はヒドロキシ末端を持つポリエステル、ヒドロキシ末端を持つポリエーテル、ヒドロキシ末端を持つポリカーボネート、ヒドロキシ末端を持つポリカプロラクトン、ヒドロキシ末端を持つポリ炭化水素、ヒドロキシ末端を持つ酸官能性オリゴマーまたはポリマー(あるいは有機または無機カチオンによる部分的または完全な中和により誘導されるそのイオノマー)を含むが、これらに限定されない。
当業者には公知の如く、該ポリウレタンプレポリマーは、幾分かの量の遊離イソシアネートモノマーを含む。従って、一態様においては、該ポリウレタンプレポリマーは、遊離イソシアネートモノマーが除去されている。例えば、除去後に、該プリカーサは、約1%またはそれ以下の遊離イソシアネートモノマーを含むことができる。もう一つの態様によれば、該プリカーサは、約0.5質量%またはそれ以下の遊離イソシアネートモノマーを含む。
ポリウレアプレポリマー
該プレポリマーは、またウレア結合を主成分とするものであり得、ここで該プレポリマーは、少なくとも1種のイソシアネート含有成分と、少なくとも1種のアミン-末端を持つ成分との反応によって形成される生成物である。本発明の目的にとって、該ポリウレアプレポリマーは、以下の一般的な構造を持つ、第一ウレア結合を含む:
【0028】
【化5】

【0029】
ここで、xは、鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、Rは、約1〜約20個の炭素原子を持つ、直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基またはこれらの組合せであり、またR1は、約1〜約20個の炭素原子を持つ、直鎖または分岐炭化水素鎖である。
上で議論したポリウレタンプレポリマーとこの章で論じるポリウレアプレポリマーとの間の主な違いは、アミン-末端を持つ成分による該ヒドロキシ末端を持つ成分の置換にある(文頭のBecause(P.11, L.13)の存在する意味が不明です)。従って、該ポリウレアプレポリマーに含めるのに適した該イソシアネートは、該ポリウレタンプレポリマーに関連して上に列挙したものと同一であり、これらを参考としてここに組入れる。また上記と同様に、飽和イソシアネートが好ましいが、芳香族-脂肪族イソシアネートおよび芳香族イソシアネートも、本発明において使用することを意図している。
しかし、第一ウレア結合を含むプレポリマーは、該アミン-末端を持つ成分による該ヒドロキシ末端を持つ成分の置換のために、第一ウレタン結合を含むプレポリマーとは、明らかに異なる特性を持つことができることを理解すべきである。例えば、ポリウレアプレポリマーを使用する場合に、得られる組成物は、ポリウレタンプレポリマーから製造した組成物とは異なる剪断、切断、レジリエンス、および接着特性を持つことができる。
【0030】
本発明にとって適した該アミン-末端を持つ成分は、事実上、有機、変性有機、飽和、脂肪族、脂環式、不飽和、芳香-脂肪族、芳香族、置換、または無置換の、このような成分であり得る。本発明で使用する該アミン-末端を持つ成分の分子量は、約100〜約10,000なる範囲内であり得る。一態様において、該アミン-末端を持つ成分の分子量は、約500またはそれ以上、好ましくは約1000またはそれ以上、およびより一層好ましくは約2000またはそれ以上である。別の態様において、該アミン-末端を持つ成分の分子量は、約8000またはそれ以下、好ましくは約4000またはそれ以下、およびより一層好ましくは約3000またはそれ以下である。例えば、一態様において、該アミン-末端を持つ成分の分子量は、約1000〜約4000なる範囲内にある。低分子量のアミン-末端を持つ成分は、固体ポリウレアを形成する傾向をもつ可能性があるので、高分子量のオリゴマーは、固体生成物の生成を回避するのに利用することができる。
【0031】
該アミン-末端を持つ成分は、アミン-末端を持つポリ炭化水素、例えばアミン-末端を持つポリブタジエン、アミン-末端を持つポリイソプレン、ポリ(水添イソプレン)アミン、ポリ(水添ブタジエン)アミンおよびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。特に、該ヒドロキシ末端を持つ成分は、好ましくは1分子当たり2またはそれ以上の反応性アミノ基、例えば第一または第二アミノ基、および少なくとも一つの共役ジエン炭化水素を有する。該共役ジエン炭化水素は、4〜約12までの炭素原子を持つ、無置換、2-置換、または2,3-ジ置換1,3-ジエンであり得る。一態様において、該ジエンは、6個までの炭素原子を有し、またその2-および/または3-位における置換基は、H、アルキル基、好ましくは低級アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、およびこれらの組合せであり得る。該ジエンは、1,3-ブタジエン、イソプレン、2-シアノ-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-フェニル-1,3-ブタジエン等であり得る。
【0032】
一態様において、該アミン-末端を持つ成分は、アミン-末端を持つポリブタジエン(ATPB)であり、ここで該官能性アミノ基は、第一アミノ基、第二アミノ基、またはこれらの組合せである。該ATPBは、鎖当たり約1.8〜約3なる範囲内のアミノ官能価を持つことができる。一態様において、該アミノ官能価は、鎖当たり約2〜約3なる範囲にある。別の態様において、該ATPBのアミノ官能価は、鎖当たり約2.2〜約2.6なる範囲にある。該アミノ官能価は、プレポリマーの調製中に、その粘度に影響を及ぼすので、一態様において、該ATPBのアミノ官能価は、鎖当たり約2.0〜約2.3なる範囲内にある。事実、低いアミノ官能価を持つATPBの使用は、コストおよび取扱い上の問題を増大する、より多くのイソシアネートの必要性を緩和して、粘度を減じることを可能とする。
【0033】
当業者は、本発明において使用するための該アミン-末端を持つ成分を合成するのに適当な方法を認識しているであろう。例えば、ATPBは、官能化された開始剤とブタジエンモノマーとから合成することができ、あるいはヒドロキシ末端を持つポリブタジエン(HTPB)を、多段合成経路によりATPBに転化することによって合成できる。米国特許第4,658,062号(その全開示事項を、参考としてここに組入れる)は、このような方法を論じている。更に、米国特許第4,994,621号は、ヒドロキシル基1当たり数個のオキシラン単位と液状HTPBとを反応させて、エーテル結合を含む第二のヒドロキシル末端を持つポリマーを製造し、次に加圧下にある水素によって与えられる還元条件下で、アンモニアと該ヒドロキシル基とを反応させることにより、該結合をアミノ化することを記載している。更に、1または2個の末端アミノ基を持つATPBは、塩基の存在下で、アクリロニトリルのミカエル(Michael)付加によりヒドロキシ末端を持つポリブタジエンをシアノアルキル化し、ニトリル末端を形成し、次に触媒としての第VIII族金属の存在下で、水添することによって製造することができる。米国特許第6,831,136号(その全開示事項を、参考としてここに組入れる)は、このような方法を論じている。
ジイソシアネートを、本発明のアミン末端を持つ成分と反応させる場合、長いポリマー鎖が形成される。ジイソシアネートと、本発明による第一アミノ基を有するアミン末端を持つ成分との、一般的な反応式は、以下の通りである:
【0034】
【化6】

【0035】
ここで、nは、鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、RおよびR1は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ、直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基またはこれらの組合せである。
更に、該アミン末端を持つ成分が、第二アミノ基を含む場合、該反応式は以下の通りである:
【0036】
【化7】

【0037】
ここで、nは、鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、RおよびR1は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ、直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基またはこれらの組合せである。
更に、該アミン末端を持つ成分が、第一および第二アミン末端を持つ成分の混合物を含む場合、該反応式は以下の通りである:
【0038】
【化8】

【0039】
ここで、nは、鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、RおよびR1は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ、直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基またはこれらの組合せである。
該アミン-末端を持つ成分は、他のアミン-末端を持つ成分とブレンドすることができ、後者の例は、アミン-末端を持つ炭化水素、アミン-末端を持つポリエーテル、アミン-末端を持つポリエステル、アミン-末端を持つポリカーボネート、アミン-末端を持つポリカプロラクトン、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
ハイブリッドプレポリマー
該プレポリマーは、またウレタンおよびウレア結合両者を持つことができる。このようなプレポリマーは、イソシアネートおよびヒドロキシ末端を持つ成分のみを含有するポリウレタンプレポリマー、またはイソシアネートおよびアミン末端を持つ成分のみを含有するポリウレアプレポリマーとは異なる。明確化のために、この型のセグメントは、本特許出願明細書全体を通して、ハイブリッドプレポリマーと呼ぶことにする。
例えば、一態様において、該イソシアネート反応性成分は、少なくとも一つの末端ヒドロキシル基および少なくとも一つの末端アミノ基を持つことができる。特に、該イソシアネート反応性成分は、一端において第一または第二アミノ基で終端しており、かつ他端において第一または第二ヒドロキシル基で終端している、少なくとも一つの共役ジエン炭化水素を含むことができる。
この点に関連して、該ハイブリッドイソシアネート反応性成分は、以下に示される一般式の一つを持つことができる:
【0040】
【化9】

【0041】
ここで、R、R1およびR2は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子、好ましくは約1〜約12個の炭素原子を持つ任意のアルキル基、フェニル基、環式基、またはこれらの組合せであり得る。Xは、4〜約12までの炭素原子を持つ、無置換、2-置換、または2,3-ジ置換1,3-ジエンであり得、またnは、鎖長、即ち約1またはそれ以上である。一態様において、該ジエンは、6個までの炭素原子を有し、またその2-および/または3-位における置換基は、H、アルキル基、好ましくは低級アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、およびこれらの組合せであり得る。該ジエンは、1,3-ブタジエン、イソプレン、2-シアノ-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-フェニル-1,3-ブタジエン等であり得る。
ジイソシアネートを本発明のハイブリッドイソシアネート反応性成分と反応させる場合、長いポリマー鎖が形成される。ジイソシアネートと、第一ヒドロキシル基およびアミノ基を持つ、本発明に従うハイブリッドイソシアネート反応性成分との間の一般的な反応式は、以下の通りである:
【0042】
【化10】

【0043】
ここで、nは、鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、RおよびR1は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ、直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基またはこれらの組合せである。
更に、該ハイブリッドイソシアネート反応性成分が、第二ヒドロキシル基および第一アミノ基を含む場合、該反応式は、以下の通りである:
【0044】
【化11】

【0045】
ここで、nは、鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、RおよびR1は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ、直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基またはこれらの組合せである。
更に、該ハイブリッドイソシアネート反応性成分が、第一ヒドロキシル基および第二アミノ基を含む場合、該反応式は、以下の通りである:
【0046】
【化12】

【0047】
ここで、nは、鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、RおよびR1は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ、直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基またはこれらの組合せである。
更に、該ハイブリッドイソシアネート反応性成分が、第二ヒドロキシル基およびアミノ基を含む場合、該反応式は、以下の通りである:
【0048】
【化13】

【0049】
ここで、nは、鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、R、R1およびR2は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基、環式基、またはこれらの組合せであり得る。
硬化剤
上で議論した該プレポリマーは、幾つかの方法で硬化することができる。一態様において、該硬化方法は、該プレポリマーとアミン末端を持つ硬化剤、ヒドロキシ末端を持つ硬化剤、またはこれらの混合物との反応を含む。このような硬化剤の使用は、該硬質セグメント、即ち該イソシアネート基および該アミノおよび/またはヒドロキシル基の架橋を促進する。
該アミン末端を持つ硬化剤および/またはヒドロキシ末端を持つ硬化剤は、遊離基開始剤、例えば有機パーオキサイドと共に、硬化剤ブレンド中に存在でき、これは該プレポリマーの軟質セグメント、即ち該エラストマーの不飽和部分を架橋する。例えば、該硬化剤ブレンドは、該プレポリマーに添加され、また該軟質および硬質セグメントが架橋されるように、温度が高められる。
【0050】
アミン末端を持つ硬化剤
本発明のプレポリマーは、単一のアミン末端を持つ硬化剤またはアミン末端を持つ硬化剤の混合物で硬化することができる。適当なアミン末端を持つ硬化剤は、エチレンジアミン;ヘキサメチレンジアミン;1-メチル-2,6-シクロヘキシルジアミン;2,2,4-および2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン;4,4'-ビス(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタンおよびその誘導体;1,4-ビス(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン;1,2-ビス(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン;4,4'-ジシクロヘキシルメタンジアミン;1,4-シクロヘキサン-ビス(メチルアミン);1,3-シクロヘキサン-ビス(メチルアミン)、その異性体、およびその混合物;ジエチレングリコールビス(アミノプロピル)エーテル;2-メチルペンタメチレン-ジアミン;ジアミノシクロヘキサン、その異性体、およびその混合物;ジエチレントリアミン;トリエチレンテトラミン;テトラエチレンペンタミン;プロピレンジアミン;1,3-ジアミノプロパン;ジメチルアミノプロピルアミン;ジエチルアミノプロピルアミン;イミド-ビス(プロピルアミン);モノエタノールアミン、ジエタノールアミン;トリエタノールアミン;モノイソプロパノールアミン;ジイソプロパノールアミン;イソホロンジアミン;4,4'-メチレン-ビス(2-クロロアニリン);3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミン;3,5-ジメチルチオ-2,6-トルエンジアミン;3,5-ジエチルチオ-2,4-トルエンジアミン;3,5-ジエチルチオ-2,6-トルエンジアミン;4,4'-ビス(sec-ブチルアミノ)-ベンゼン;およびこれらの誘導体;1,4-ビス(sec-ブチルアミノ)-ベンゼン;1,2-ビス(sec-ブチルアミノ)-ベンゼン;N,N'-ジアルキルアミノ-ジフェニルメタン;トリメチレングリコール-ジ-p-アミノベンゾエート;ポリテトラメチレンオキサイド-ジ-p-アミノベンゾエート;4,4'-メチレン-ビス(3-クロロ-2,6-ジエチレンアニリン);4,4'-メチレン-ビス(2,6-ジエチルアニリン);m-フェニレンジアミン;p-フェニレンジアミン;N,N'-ジイソプロピル-イソホロンジアミン;ポリオキシプロピレンジアミン;プロピレンオキシドを主成分とするトリアミン;3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノシクロヘキシルメタン;およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。一態様において、該アミン末端を持つ硬化剤は、4,4'-ビス(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタンである。
【0051】
該アミン末端を持つ硬化剤は、約64またはそれ以上の分子量を持つことができる。一態様において、該アミン末端を持つ硬化剤の分子量は、約2000またはそれ以下である。更に、該プレポリマーを製造するための、該イソシアネート反応性成分として使用する、上に列挙された該アミン末端を持つ部分の何れかを硬化剤として使用して、該プレポリマーと反応させることができる。
上記列挙したものの中で、本発明で使用するのに適した該飽和状態のアミン末端を持つ硬化剤は、エチレンジアミン;ヘキサメチレンジアミン;1-メチル-2,6-シクロヘキシルジアミン;2,2,4-および2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン;4,4'-ビス(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタン;1,4-ビス(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン;1,2-ビス(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン;4,4'-ビス(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタンの誘導体;4,4'-ジシクロヘキシルメタンジアミン;1,4-シクロヘキサン-ビス(メチルアミン);1,3-シクロヘキサン-ビス(メチルアミン);ジエチレングリコールビス(アミノプロピル)エーテル;2-メチルペンタメチレン-ジアミン;ジアミノシクロヘキサン;ジエチレントリアミン;トリエチレンテトラミン;テトラエチレンペンタミン;プロピレンジアミン;ジプロピレントリアミン;1,3-ジアミノプロパン;ジメチルアミノプロピルアミン;ジエチルアミノプロピルアミン;イミド-ビス(プロピルアミン);モノエタノールアミン、ジエタノールアミン;トリエタノールアミン;モノイソプロパノールアミン;ジイソプロパノールアミン;トリイソプロパノールアミン;イソホロンジアミン;N,N'-ジイソプロピル-イソホロンジアミン;およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0052】
一態様において、該プレポリマーと共に使用される該硬化剤は、3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミン;3,5-ジメチルチオ-2,6-トルエンジアミン;4,4'-ビス(sec-ブチルアミノ)ジフェニルメタン;N,N'-ジイソプロピル-イソホロンジアミン;ポリオキシプロピレンジアミン;プロピレンオキシドを主成分とするトリアミン;3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノシクロヘキシルメタン;およびこれらの混合物を含む。
非-ヒンダード第一ジアミンは、該イソシアネート基と該アミノ基との間の迅速な反応をもたらすので、幾つかの例においては、ヒンダード第二ジアミンが、該プレポリマーにおいて使用するのにより適したものであり得る。如何なる特別な理論にも拘泥するつもりはないが、高レベルの立体障碍を持つアミン、例えば窒素原子上のtert-ブチル基は、立体障碍を持たないまたは低レベルの立体障碍を持つアミンよりも緩慢な反応速度を持つものと考えられる。例えば、4,4'-ビス(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタン[クリアーリンク(Clearlink) 1000]は、イソシアネートと組合せて使用して、該ポリウレアプレポリマーを製造するのに適したものであり得る。更に、ハンツマン社(Huntsman Corporation)から、ジェフリンク(Jefflink)なる商品名の下で入手できる、N,N'-ジイソプロピル-イソホロンジアミンを、該第二ジアミン硬化剤として用いることができる。
更に、三官能性硬化剤を用いて、架橋の改善を補助し、結果として得られるポリウレアエラストマーの耐剪断特性を、更に改善することができる。一態様において、トリオール、例えばトリメチロールプロパンまたはテトラオール、例えばN,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンを、該処方物に添加することができる。
【0053】
ヒドロキシ末端を持つ硬化剤
本発明のプレポリマーは、また単一のヒドロキシ末端を持つ硬化剤またはヒドロキシ末端を持つ硬化剤の混合物を用いて、硬化することも可能である。適当なヒドロキシ末端を持つ硬化剤は、エチレングリコール;ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;プロピレングリコール;2-メチル-1,3-プロパンジオール;2-メチル-1,4-ブタンジオール;ジプロピレングリコール;ポリプロピレングリコール;1,2-ブタンジオール;1,3-ブタンジオール;1,4-ブタンジオール;2,3-ブタンジオール;2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール;トリメチロールプロパン;シクロヘキシルジメチロール;トリイソプロパノールアミン;N,N,N',N'-テトラ-(2-ヒドロキシプロピル)-エチレンジアミン;ジエチレングリコールビス(アミノプロピル)エーテル;1,5-ペンタンジオール;1,6-ヘキサンジオール;1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン;1,4-シクロヘキシルジメチロール;1,3-ビス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]シクロヘキサン;1,3-ビス{2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}シクロヘキサン;好ましくは約250〜約3900なる範囲内の分子量を持つ、ポリテトラメチレンエーテルグリコール;レゾルシノール-ジ(β-ヒドロキシエチル)エーテルおよびその誘導体;ヒドロキノン-ジ(β-ヒドロキシエチル)エーテルおよびその誘導体;1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン;1,3-ビス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン;1,3-ビス{2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}ベンゼン;N,N-ビス(β-ヒドロキシプロピル)アニリン;2-プロパノール-1,1'-フェニルアミノビス;およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0054】
該ヒドロキシ末端を持つ硬化剤は、少なくとも約50なる分子量を持つことができる。一態様において、該ヒドロキシ末端を持つ硬化剤の分子量は、約2000またはそれ以下である。更に別の態様において、該ヒドロキシ末端を持つ硬化剤は、約250〜約3900なる範囲の分子量を持つ。ここで使用する分子量とは、絶対重量平均分子量であるものと理解すべきであり、また当業者にはそのものとして理解されよう。
上記リストに含められた、該飽和のヒドロキシ末端を持つ硬化剤は、光安定性組成物を製造する場合に好ましいものである。これら飽和のヒドロキシ末端を持つ硬化剤は、エチレングリコール;ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;プロピレングリコール;2-メチル-1,3-プロパンジオール;2-メチル-1,4-ブタンジオール;ジプロピレングリコール;ポリプロピレングリコール;1,2-ブタンジオール;1,3-ブタンジオール;1,4-ブタンジオール;2,3-ブタンジオール;2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール;トリメチロールプロパン;シクロヘキシルジメチロール;トリイソプロパノールアミン;N,N,N',N'-テトラ-(2-ヒドロキシプロピル)-エチレンジアミン;ジエチレングリコールビス(アミノプロピル)エーテル;1,5-ペンタンジオール;1,6-ヘキサンジオール;1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン;1,4-シクロヘキシルジメチロール;1,3-ビス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]シクロヘキサン;1,3-ビス{2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}シクロヘキサン;約250〜約3900なる範囲内の分子量を持つ、ポリテトラメチレンエーテルグリコール;およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0055】
遊離基開始剤
遊離基開始剤は、本発明のプレポリマーの不飽和セグメント、即ち該共役ジエン炭化水素の架橋を促進する。一態様において、該遊離基開始剤は、パーオキサイドを含む。しかし、該パーオキサイドは、特別に限定されるものではなく、該加硫工程において使用するのに適したパーオキサイドは、以下に列挙するものを含むが、これらに限定されるものではない:以下の構造式で表されるジクミルパーオキサイド、α,α-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン:
【0056】
【化14】

【0057】
およびこれらの混合物。更に、ジ-t-アミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンまたは1,1-ジ-(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-ベンゾイルパーオキシヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,4-ジクロロ-ベンゾイルパーオキサイド、およびこれらの混合物も、該プレポリマーにおける該不飽和の軟質セグメントを硬化する際に使用することを意図している。
【0058】
パーオキサイドが、異なる活性を持つ、様々な形態で入手できることは周知である。この活性は、典型的に「活性酸素含有率」によって定義される。例えば、NJ州、ギブスタウンのGEOスペシャルティーケミカルズ(GEO Specialty Chemicals)社から市販品として入手できるDI-CUPTM40Cは、40%活性を持つ。このパーオキサイドは、典型的に該組成物の約0.1pphを越える量、好ましくは該組成物の約0.1〜15pphなる範囲の量、およびより好ましくは該組成物の約0.2〜5pphなる範囲の量で存在する。該パーオキサイドが純粋な形で存在する場合、該組成物100部当たり、好ましくは少なくとも約0.25pph、より好ましくは約0.35pph〜約2.5pphなる範囲、および最も好ましくは約0.5pph〜約2pphなる範囲の量で存在する。パーオキサイドは、また濃縮された形態で入手することも可能であり、上述の如く、これらが様々な活性を持つことは周知である。この場合において、濃縮されたパーオキサイドを、本発明において使用する場合には、純パーオキサイドに適した濃度が、該活性で割ることにより、濃厚パーオキサイドについて容易に調節されることを、当業者は認識しているであろう。例えば、2pphの純パーオキサイドは、50%活性の濃厚パーオキサイド4pphに等価である(即ち、2÷0.5=4)。
パーオキサイドに加えて、本発明で使用するのに適した、他の遊離基源は、過硫酸、アゾ化合物、ベンゾフェノン、ヒドラジド、およびこれらの混合物を含み、その使用も、該ジポリマー用の硬化剤系として使用することを意図している。本発明のこの局面において、該遊離基源の量は、該組成物100部当たり、約5pphまたはそれ以下、好ましくは約3pphまたはそれ以下、より好ましくは約2.5pphまたはそれ以下、およびより一層好ましくは約2pphまたはそれ以下である。更なる態様において、該遊離基源の量は、該組成物100部当たり、約1pphまたはそれ以下、好ましくは約0.75pphまたはそれ以下である。
【0059】
硬化剤ブレンド
該アミン末端を持つおよびヒドロキシ末端を持つ硬化剤は、該遊離基開始剤とのブレンドとして存在し得る。例えば、一態様において、該硬化剤ブレンドは、少なくとも1種のアミン末端を持つ硬化剤および遊離基開始剤を含む。他の態様において、該硬化剤ブレンドは、少なくとも1種のヒドロキシ末端を持つ硬化剤と遊離基開始剤との混合物である。更に別の態様において、該硬化剤ブレンドは、少なくとも1種のヒドロキシ末端を持つ硬化剤と、少なくとも1種のアミン末端を持つ硬化剤と、遊離基開始剤とを含む。
更に、該硬化剤ブレンドは、固化の開始を遅らせるために、凝固点降下剤を含むことができる。本発明のこの局面において使用するのに適した、凝固点降下剤の例は、米国特許出願公開第2003/0212240号に記載されている。この特許出願の内容全体を、参考としてここに組入れる。一態様において、該凝固点降下剤は、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジメチルアミノプロピルアミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-プロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0060】
本発明の組成物の製造
本発明の組成物を製造するのに用いられる2種の基本的な技術がある。即ち、ワンショット法およびプレポリマー法である。該ワンショット法は、該イソシアネート含有成分、該イソシアネート反応性成分、および該硬化剤または硬化剤ブレンドを、一段階で反応させるものであり、一方該プレポリマー法では、該イソシアネート反応性成分とイソシアネートとを先ず反応させて、プレポリマーを生成し、引続き該プレポリマーと硬化剤または硬化剤ブレンドとを反応させる必要がある。何れの方法も、本発明の組成物製造のために利用できるが、該プレポリマー法が好ましい。というのは、この方法が、化学反応のより良好な制御性をもたらし、結果的に該エラストマーに関するより均一な特性をもたらすからである。
特に、該硬化剤が、単一のアミン末端を持つ硬化剤および/またはヒドロキシ末端を持つ硬化剤、アミン末端を持つ硬化剤および/またはヒドロキシ末端を持つ硬化剤の混合物またはアミン末端を持つ硬化剤および/またはヒドロキシ末端を持つ硬化剤および遊離基開始剤のブレンドの何れであるにしても、一旦該プレポリマーと反応すると、該イソシアネート基(NCO)は、ヒドロキシル基またはアミノ基と反応して、該プレポリマーを架橋する。
例えば、ウレタンプレポリマーを、ヒドロキシ末端を持つ成分を含む硬化剤ブレンドまたは硬化剤と反応させると、得られるポリマーは、以下の一般的な反応式に示すように、ウレタン結合を含む:
【0061】
【化15】

【0062】
ここで、nは鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、Xは、ヒドロキシ基を含む硬化剤ブレンドまたは硬化剤であり、RおよびR2は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基、またはこれらの組合せである。
ウレアプレポリマーを、アミン末端を持つ成分を含む硬化剤ブレンドまたは硬化剤と反応させると、得られるポリマーは、以下の一般的な反応式に示すように、ウレア結合を含む:
【0063】
【化16】

【0064】
ここで、nは鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、Xは、アミノ基を含む硬化剤ブレンドまたは硬化剤であり、RおよびR2は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基、またはこれらの組合せである。
ハイブリッドプレポリマーを、ヒドロキシ末端を持つ成分またはアミン末端を持つ成分を含む硬化剤ブレンドまたは硬化剤と反応させると、得られるポリマーは、以下の一般的な反応式に示すように、ウレア結合およびウレタン結合を含む:
【0065】
【化17】

【0066】
ここで、nは鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、Xは、ヒドロキシ基、アミノ基またはこれらの組合せを含む硬化剤ブレンドまたは硬化剤であり、RおよびR2は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基、またはこれらの組合せである。
当業者は、ウレタンプレポリマーとアミノ基を含む硬化剤ブレンドまたは硬化剤との反応、およびウレアプレポリマーとヒドロキシ基を含む硬化剤ブレンドまたは硬化剤との反応に関連する同様な一般的反応式を認識しているであろう。上で論じたように、ハイブリッドプレポリマーの使用により得られるポリマーと同様に、これらの反応により得られるポリマーも、ウレタン結合およびウレア結合両者を含むであろう。
【0067】
該硬化剤ブレンドが、遊離基開始剤を含む場合、該ポリマーの軟質および硬質セグメントが架橋される。一態様において、該プレポリマーおよび硬化剤ブレンドを混合し、金型内に流込む。該金型の温度は、好ましくは約37.8℃(約100°F)〜約121℃(約250°F)なる範囲内にある。一態様において、該金型の温度は、約49℃(約120°F)〜約93℃(約200°F)なる範囲にある。他の態様において、該金型の温度は、約60℃(約140°F)〜約82℃(約180°F)なる範囲内にある。更に別の態様において、該金型の温度は、約66℃(約150°F)〜約77℃(約170°F)なる範囲内にある。所定期間の経過後、該金型の温度を上げて、該遊離基の発生を開始させる。一態様において、該昇温前の経過時間は、約1分〜約30分なる範囲にある。別の態様において、該昇温前の経過時間は、約5分〜約20分なる範囲、好ましくは約8分〜約15分なる範囲内にある。昇温後、該材料を、更に約5分〜約25分なる範囲、好ましくは約8分〜約20分間、およびより一層好ましくは約12分〜約18分間硬化させることができる。
該昇温の温度は、遊離基の発生を開始させる任意の温度であり得る。例えば、該昇温温度は、約121℃(約250°F)〜約204℃(約400°F)なる範囲であり得る。一態様において、該昇温温度は、約135℃(約275°F)〜約177℃(約350°F)なる範囲であり得る。他の態様において、該昇温温度は、約149℃(約300°F)〜約166℃(約330°F)なる範囲であり得る。
ポリウレタンプレポリマー、ヒドロキシ基を含む硬化剤ブレンドおよび遊離基開始剤、例えば有機パーオキサイド間の反応式は、以下の通りである:
【0068】
【化18】

【0069】
ここで、nは鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、XPは、ヒドロキシ基を含む硬化剤ブレンドおよび有機パーオキサイドであり、RおよびR2は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基、またはこれらの組合せである。
ウレアプレポリマーを、アミノ基を含む硬化剤または硬化剤ブレンドおよび遊離基開始剤、例えば有機パーオキサイドと反応させる場合、得られるポリマーは、以下の一般的な反応式で示されるように、ウレア結合を含む:
【0070】
【化19】

【0071】
ここで、nは鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、XPは、アミノ基を含む硬化剤ブレンドおよび有機パーオキサイドであり、RおよびR2は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基、またはこれらの組合せである。
ハイブリッドプレポリマーを、ヒドロキシ末端を持つまたはアミン末端を持つ成分を含む硬化剤または硬化剤ブレンドと反応させる場合、得られるポリマーは、以下の一般的な反応式で示されるように、ウレアおよびウレタン結合を含む:
【0072】
【化20】

【0073】
ここで、nは鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、XPは、ヒドロキシ基、アミノ基またはこれらの組合せを含む硬化剤ブレンドおよび有機パーオキサイドであり、RおよびR2は、夫々独立に約1〜約20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基、またはこれらの組合せである。
ブレンド
本発明の組成物は、また他のポリマーとブレンドすることができる。特に、本発明の組成物は、好ましくは約1%〜約100%なる範囲内の該架橋されたポリウレタン/ポリウレアを含む。一態様において、該組成物は、約10%〜約90%なる範囲の該架橋されたポリウレタン/ポリウレア、好ましくは約10%〜約75%なる範囲の該架橋されたポリウレタン/ポリウレア、および約90%〜約10%なる範囲、より好ましくは約90%〜約25%なる範囲の第二のポリマー成分および/または以下に記載するような他の材料を含む。例えば、本発明によるブレンドは、約10%〜約40%なる範囲の該架橋されたポリウレタン/ポリウレアおよび約60%〜約90%なる範囲のもう一つの熱可塑性ポリマー、例えば従来のイオノマーを含むことができる。別の態様において、本発明によるブレンドは、約40%〜約80%なる範囲の該架橋されたポリウレタン/ポリウレアおよび約20%〜約60%なる範囲のもう一つの熱可塑性ポリマーを含むことができる。ここにおいて特に述べない限り、全ての%は、問題とするゴルフボール層用の全組成物の質量を基準とする、質量%単位で与えられている。
【0074】
例えば、本発明の組成物は、イオノマー型コポリマーまたはターポリマー、イオノマー型プリカーサ、熱可塑性物質、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、熱可塑性エラストマー、ポリブタジエンゴム、バラタ、グラフト化および非-グラフト化メタロセン触媒ポリマー、シングル-サイト(single-site)ポリマー、高結晶性酸性ポリマー、カチオン性ポリマー、カチオン性およびアニオン性ウレタンイオノマーおよびウレタンエポキシ樹脂、ポリウレタンイオノマー、ポリウレアイオノマー、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリアクリリン(polyacrylin)、シロキサン、およびこれらの混合物とのブレンドとして存在し得る。
適当なウレタンイオノマーの例は、米国特許第5,692,974号に記載されている。この特許の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。適当なポリウレタンの他の例は、米国特許第5,334,673号に記載されている。この特許の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。上に列挙したポリウレアイオノマーを製造するのに使用する適当なポリウレアの例は、米国特許第5,484,870号に記載されている。特に、米国特許第5,484,870号に記載のポリウレアは、ポリイソシアネートとポリアミン硬化剤とを反応させて、ポリウレアを生成することによって得られ、これは、ポリウレアプレポリマーと硬化剤とから製造される本発明のポリウレアとは異なるものである。エポキシ基含有硬化剤で硬化された適当なポリウレタンの例は、米国特許第5,908,358号に記載されている。この特許の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。
【0075】
当業者は、これらポリマー材料と本発明の有機的に変性されたシリケートとをブレンドして、ゴルフボール層において使用するための組成物を製造する方法について、十分に認識しているであろう。
添加剤
本発明の組成物は、様々な添加剤を含むことができる。例えば、本発明の組成物は、少なくとも1種の物理的または化学的な発泡剤または起泡剤の添加により、発泡させることが可能である。発砲ポリマーの使用は、ゴルフボールの設計者が、該ボールの角慣性モーメントおよびその結果としてそのスピン速度および性能を調節すべく、該ボールの密度または質量分布を調節することを可能とする。発泡材料は、またポリマー材料の使用量の節減により、可能なコストの節減をもたらす。
有用な発泡または起泡剤は、有機発泡剤、例えばアゾビスホルムアミド;アゾビスイソブチロニトリル;ジアゾアミノベンゼン;N,N-ジメチル-N,N-ジニトロソテレフタルアミド;N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン;ベンゼンスルホニルヒドラジド;ベンゼン-1,3-ジスルホニルヒドラジド;ジフェニルスルホン-3,3-ジスルホニルヒドラジド;4,4'-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド;p-トルエンスルホニルセミカルバジド;バリウムアゾジカルボキシレート;ブチルアミンニトリル;ニトロウレア;トリヒドラジノトリアジン;フェニルメチル-ウランタン(uranthan);p-スルホンヒドラジド;パーオキサイド;および無機発泡剤、例えば重炭酸アンモニウムおよび重炭酸ナトリウムを含むが、これらに限定されない。ガス、例えば空気、窒素、二酸化炭素等を、該組成物の射出成型工程中に、該組成物に注入することもできる。
【0076】
更に、本発明の発泡組成物を、その成型工程中またはその前に、微小球と該組成物とをブレンドすることにより、製造することができる。ポリマー、セラミック、金属およびガラス微小球が、本発明において有用であり、またこれらは、中実または中空、および充填されたまたは非-充填型のものであり得る。特に、径約1000μmまでの微小球が有用である。更に、米国特許第6,386,992号(これを参考としてここに組入れる)に記載されているように、発泡のための液体窒素の使用により、本発明において使用するための、著しく均一な発泡組成物を製造することができる。
フィラーをも、本発明の組成物に添加して、レオロジーおよび混合特性、比重(即ち、密度-改良フィラー)、モジュラス、引裂強さ、補強性等に影響を与えることができる。これらのフィラーは、一般的に無機物質であり、また適当なフィラーは、多くの金属、金属酸化物および塩、例えば酸化亜鉛および酸化スズ、並びに硫酸バリウム、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸亜塩、炭酸バリウム、クレー、タングステン、炭化タングステン、シリカアレイ、リグラインド(典型的に約30メッシュの粒子に粉砕された、再生コア材料)、高-ムーニー粘度ゴムリグラインド、およびこれらの混合物を包含する。
【0077】
例えば、本発明の組成物は、当業者には公知の如く、広範囲の密度-調節フィラー、例えばセラミックス、ガラス球(中実または中空、および充填または未充填)および繊維、無機粒子、および金属粒子、例えば金属フレーク、金属粉末、酸化物、およびその誘導体とブレンドすることによって強化することができる。このようなフィラーの選択は、以下においてより一層完全に説明されるように、ワン-ピース、ツー-ピース、多成分、または糸巻等の所望のゴルフボールの型に依存する。一般に、フィラーは、4g/ccを越える密度を持つ無機物質であり、また問題とする層中に含まれる該ポリマー成分の全質量を基準として、約5〜約65質量%なる範囲の量で存在するであろう。有用なフィラーの例は、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、およびシリカ、並びに他の公知の対応するこれらの塩および酸化物を含む。
本発明の組成物を、該ゴルフボールのコア層において使用する場合、フィラーも、該コアの質量を変更して、特製のボールを製造することができ、例えば低質量のボールは、低スイングスピードの競技者にとって好ましい。
他のゴルフボール用組成物において従来含まれている追加の材料も、本発明の組成物に含めることができる。また、例えば、酸化防止剤、安定剤、軟化剤、内部および外部可塑剤を含む可塑剤、強化材、および相溶化剤を、本発明の任意の組成物に添加することが可能である。当業者は、これら添加剤の使用目的および該目的を満たすために使用すべきその量を認識している。
【0078】
ゴルフボールの構成
上で簡単に論じた如く、本発明の組成物は、該ゴルフボールに望まれる性能の型に応じて、ワン-ピース、ツー-ピース、スリー-ピース、およびフォー-ピース設計、二重コア、二重カバー、中間層、多層コア、および/または多層カバー等を含むが、これらに限定されないボール構成の任意の型に対して使用することができる。即ち、本発明の組成物は、ゴルフボールのコア、中間層、および/またはカバーにおいて使用でき、これら各々は、単一の層または多重層構成を持つことができる。
ここで使用する用語「多(重)層」とは、少なくとも2層を意味する。例えば、該ゴルフボールコアは、ワン-ピースコアまたは多層コア、即ち最も内側の部材であって、その上に追加の1または複数のコア層を備えたコアであり得る。ここで使用する用語「コア」および「中心」とは、一般的にゴルフボールの最も内側の部材を言及する際に互換的に使用される。しかし、幾つかの態様において、該用語「中心」とは、多数のコア層、即ち中心および外側コア層が存在する場合に使用される。
【0079】
本発明のゴルフボールが、2層以上を含むことのできる中間層を含む場合、この層は、単一のまたは複数層のカバー、単一のまたはマルチピースコアと共に、あるいは単一層カバーおよびコア両者と共に、あるいは多層カバーおよび多層コア両者と共に組み立てることができる。該中間層は、また内側カバー層または外側コア層、あるいはゴルフボールの該内側コアと該外側カバーとの間に設けられた任意の他の層と呼ぶことができる。
図1を参照すると、本発明のゴルフボール2は、中心4および該中心4を包囲するカバー6を含むことができる。寸法及び材料については以下において更に詳細に論じるが、本発明のゴルフボールは、大きなコア、例えば約3.94cm(約1.55in)〜約4.06cm(約1.60in)なる範囲の大きなコア、および本発明の組成物で作成された比較的柔軟な、薄いカバーを含むことができる。
図2を参照すると、本発明のゴルフボール8は、中心10、カバー14、および該カバーと該中心との間に設けられた少なくとも一つの中間層12を含むことができる。一態様においては、該中間層12が、本発明の組成物で作られている。もう一つの態様によれば、該カバー14が、本発明の組成物で作られている。図1および2における該カバー層および中心層夫々は、2層以上を含むことができ、即ち該ゴルフボールは、従来のスリー-ピース糸巻きボール、ツー-ピースボール、多層コアおよび1またはそれ以上の中間層を含むゴルフボール等であり得る。
【0080】
また、図3は、大きなコア18、カバー22、および内側カバー層20を含む、本発明のゴルフボール16を示す。一態様において、該コア18は、中心および外側コア層を含む。該内側カバー層20および/またはカバー22は、本発明の組成物で作ることができる。一態様において、該内側カバー層20は、本発明の組成物で作られ、かつ該カバー層22は、ポリウレタンまたはポリウレア材料で作成される。
他の態様においては、図4に示したように、本発明のゴルフボール24は、中心26および内側カバー層30および外側カバー層32を含む二重カバーの下方に配置された中間層28を含むことができる。該内側カバー層30および/または外側カバー層32は、本発明の組成物で作られている。更に、ここにおいて詳細に説明される図面の何れも、随意の糸巻き層が、該ゴルフボールの該中心と該コアとの間に設けられた態様を、含むことができる。
本発明で使用することのできるボール構成の適当な型の他の非-限定的な例は、米国特許第6,056,842号、同第5,688,191号、同第5,713,801号、同第5.803,831号、同第5,885,172号、同第5,919,100号、同第5,965,669号、同第5,981,654号、同第5,981,658号および同第6,149,535号、並びに公開特許US2001/0009310A1、同US2002/0025862、および同US2002/0028885に記載されているものを含む。これら特許および公開特許出願の全開示事項を参考としてここに組入れる。
【0081】
ゴルフボールコア層
本発明によって作られたゴルフボールのコアは、中実、半-中実、中空、流体-充填または粉末-充填、ワン-ピースまたは多成分コアであり得る。ここで使用する用語「流体」とは、液体、ペースト、ゲル、ガス、またはこれらの任意の組合せを含み、該用語「流体-充填」とは、中空中心またはコアを含み、また該用語「半-中実」とは、ペースト、ゲル等を含む。
該コアは、約3.81cm(約1.5in)〜約4.11cm(約1.62in)なる範囲の径を持つことができ、また該カバー層の厚みは、約0.762mm(約0.03in)〜約1.52mm(約0.06in)なる範囲内の値であり得る。該コアの圧縮(率)は、好ましくは約30〜約120アッチ(atti)なる範囲内にあり、また該ゴルフボールの全体としての圧縮(率)は、約50〜約110なる範囲内にある。
【0082】
当業者には公知の任意のコア材料が、本発明のゴルフボールにおいて使用するのに適している。適当なコア材料は、熱硬化性物質、例えばゴム、スチレンブタジエン、ポリブタジエン、イソプレン、ポリイソプレン、trans-イソプレン、並びに熱可塑性物質、例えばイオノマー樹脂、ポリアミドまたはポリエステル、および熱可塑性および熱硬化性ポリウレタンエラストマーを含む。例えば、未硬化状態においては、典型的に約20を越える、好ましくは約30を越える、またより好ましくは約40を越えるムーニー粘度(ASTM D1646-99に従って測定)を持つブタジエンゴムを、本発明に従って製造したゴルフボールの、1またはそれ以上のコア層において使用することができる。更に、本発明の組成物は、該コアに配合することができる。
【0083】
しばしば遊離基開始剤とも呼ばれる、遊離基源は、特にポリマー成分が熱硬化性材料を含む場合には、本発明のゴルフボールの該コア、または1またはそれ以上の層において使用することができる。該遊離基源は、好ましくはパーオキサイド、より好ましくは有機パーオキサイドである。該パーオキサイドは、典型的には全ポリマー成分を基準として、約0.1pphを越える量、好ましくは全ポリマー成分の約0.1〜15pphなる範囲の量、およびより好ましくは全ポリマー成分の約0.2〜5pphなる範囲の量で存在する。当業者は、幾つかの成分の存在が、ここに記載する量を越える多量の遊離基源を必要とする可能性があることを理解すべきである。該遊離基源は、上記の代わりにあるいは付随的に、1またはそれ以上の電子ビーム、UVまたはガンマ輻射線、X-線、あるいは遊離基を発生し得る任意の他の高エネルギー輻射線であってもよい。更に、パーオキサイドを遊離基開始剤として使用する場合には、熱が遊離基発生の開始を容易にすることを理解すべきである。
【0084】
ゴルフボールの中間層
本発明のゴルフボールが、中間層、例えば内側カバー層または外側コア層、即ちゴルフボールの該内側コア層と該外側カバーとの間に配置された任意の層を含む場合、この層は、本発明の組成物で作成することができる。例えば、約0.381mm(約0.015in)〜約1.52mm(約0.06in)なる範囲の厚みを持つ中間層または内側カバー層を、コアの周りに配置することができる。本発明のこの局面において、約3.81cm(約1.5in)〜約4.04cm(約1.59in)なる範囲の径を持つ該コアも、本発明の組成物から、あるいは別の態様では、公知のゴム組成物から作成することができる。該内側ボールは、注型適性のある熱硬化性材料、または射出成型可能な熱可塑性材料または以下において論じる他のカバー材料の何れかで覆うことができる。本発明のこの局面において、該カバーは、約0.508mm(約0.02in)〜約1.14mm(約0.045in)なる範囲の、好ましくは約0.635mm(約0.025in)〜約1.02mm(約0.04in)なる範囲の厚みを持つことができる。該コアの圧縮率は、約30〜約110attiなる範囲、好ましくは約50〜約100attiなる範囲にあり、また全体としてのボールの圧縮率は、好ましくは約50〜約100attiなる範囲にある。
【0085】
本発明の組成物から製造されていない場合、該中間層は、多数の熱可塑性および熱硬化性材料から製造することができる。例えば、該中間層は、少なくとも部分的には、1またはそれ以上のホモポリマーまたはコポリマー材料、例えばイオノマー、主としてまたは完全に非-イオノマー性熱可塑性材料、ビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリウレア、例えば米国特許第5,484,870号に記載されているもの、ポリアミド、アクリル樹脂およびそのブレンド、オレフィン系熱可塑性ゴム、スチレンとブタジエンとのブロックコポリマー、イソプレンまたはエチレン-ブチレンゴム、コポリ(エーテルアミド)、例えばPA州、フィラデルフィアのアトフィナケミカルズ(Atofina Chemicals)社により市販されているPEBAX、ポリフェニレンオキサイド樹脂またはそのブレンド、および熱可塑性ポリエステルから製造することができる。
例えば、該中間層は、低酸性イオノマー、例えば米国特許第6,506,130号、および同第6,503,156号に記載されているもの、高酸性イオノマー、高度に中和されたポリマー、例えば米国特許公開2001/0018375および同2001/0019971に記載されているもの、およびこれらの混合物で作られたものであり得る。該中間層は、また米国特許第5,688,191号に記載されているような組成物から製造することもできる。これら特許および公開特許の全開示事項を、参考としてここに組入れる。
【0086】
該中間層は、また張力を掛けた糸材料から製造された糸巻き層を含むこともできる。この糸は、単層であり得、あるいは2またはそれ以上の層を含むことも可能である。適当な糸材料は、繊維、ガラス、炭素、ポリエーテルウレア、ポリエーテルブロックコポリマー、ポリエステルウレア、ポリエステルブロックコポリマー、シンジオタクチック-またはアイソタクチック-ポリ(プロピレン)、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ(オキシメチレン)、ポリケトン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(アクリロニトリル)、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ドデカンジカルボン酸、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン/プロピレン/ジエンコポリマー、その他の合成ゴム、またはブロック、グラフト、ランダム、交互、ブッシュ(bush)、マルチ-アームスター型、分岐、または樹枝状コポリマー、またはこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。当業者は、本発明で使用するための糸材料の製法を認識しているはずである。
【0087】
ゴルフボールのカバー層
該カバーは、該ボールとクラブとの間の界面を与える。該カバーにとって望ましい諸特性は、特に良好な成型性、高い耐摩耗性、高い耐衝撃性、高い引裂強さ、高いレジリエンス、および良好な離型性である。該カバー層は、少なくとも部分的に、本発明の組成物から製造することができる。例えば、本発明は、ポリブタジエン製の大きなコアと、本発明の組成物から作られた薄いカバーとを含むゴルフボールを意図する。
しかし、本発明の組成物が、コアまたは中間/内側カバー層に組込まれた場合には、該カバーは、1またはそれ以上の、該中間層に関連して上の章で議論したような、ホモポリマーまたはコポリマー材料で製造することができる。該カバーは、また少なくとも部分的に、該コアについて上で論じたように、ポリブタジエン反応生成物から作成することができる。本発明のゴルフボールは、また米国特許第6,835,794号において論じられているような、ポリウレタン、ポリウレア、およびポリブタジエン材料製のカバーを含むものとして製造することができる。
例えば、該カバーは、硬化剤により硬化されて、ポリウレタンを生成する、イソシアネートとヒドロキシ末端を持つ成分との反応生成物から製造することができる。他の態様において、該カバーは、硬化剤により硬化されて、ポリウレアを生成する、イソシアネートとアミン末端を持つ成分との反応生成物から製造することができる。
【0088】
層形成
本発明のゴルフボールは、圧縮成形、フリップ成形、射出成形、格納型ピン式射出成形、反応式射出成型(RIM)、液体射出成形(LIM)、注型、真空成型、粉末塗布法、フロー塗布、回転塗布、浸漬、噴霧等の様々な塗布技術を利用して製造することができる。従来は、圧縮成型および射出成型法が、熱可塑性材料に対して応用されており、一方でRIM、液体射出成形、および注型法が、熱硬化性材料に対して利用されていた。これらのおよび他の製造方法が、米国特許第6,207,784号および同第5,484,870号に記載されている。これら特許の全開示事項を参考としてここに組入れる。
本発明のゴルフボールのコアは、当業者には公知の任意の適当な方法で製造することができる。該コアを、熱硬化性材料から製造する場合、圧縮成形法が、該コアを製造するための特に適した方法である。他方、熱可塑性コアを持つ態様において、該コアは、射出成形することができる。更に、米国特許第6,180,040号および同第6,180,722号は、二重コアを備えたゴルフボールの製法を開示している。これら特許の全開示事項を参考としてここに組入れる。
【0089】
該中間層および/またはカバー層は、また当業者には公知の任意の適当な方法を利用して製造することができる。例えば、中間層は、吹込成形法により製造し、また射出成形、圧縮成形、注型、真空成型、粉末塗布等の方法により形成される、ディンプルを持つカバー層で覆うことができる。
様々なディンプルパターンおよびプロフィールの使用は、ゴルフボールの空力的な諸特性を調節するための、比較的効果的な方法を与える。故に、ゴルフボールの表面上に該ディンプルを配列させる方法は、任意の利用可能な方法であり得る。例えば、該ボールは、米国特許第4,560,168号に記載されている、正二十面体を基本とするパターン、または米国特許第4,960,281号に記載されているような、八面体を基本とするディンプルパターンを持つことができる。更に、本発明に従って得られるゴルフボールは、典型的に約60%を越える、好ましくは約65%を越える、およびより好ましくは約70%を越えるディンプル被覆率を持つであろう。
【0090】
ゴルフボールの後処理
本発明のゴルフボールは、更なる便宜のために塗装、被覆、または表面処理することができる。例えば、ゴルフボールは、極めて平滑な、粘着性を示さない表面を得るために、ウレタン、ウレタンハイブリッド、ウレア、ウレアハイブリッド、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、またはこれらの組合せを塗布することができる。所望により、2種以上の被覆層を使用することができる。該塗布(被覆)層は、当業者に公知の任意の適当な方法で適用することができる。一態様において、該塗布層は、金型内塗布法、例えば米国特許第5,849,168号に記載されているような方法で、該ゴルフボールカバーに適用することができる。この特許の全開示事項を参考としてここに組入れる。
全てのゴルフボール層は、吹付け、機械的研磨、コロナ放電、プラズマ処理法等、およびこれらの組合せを含む、公知の方法で表面処理することができる。事実、低表面エネルギーまたは表面張力は、ポリシロキサンの重要な特徴であるので、本発明の組成物から作成した層は、米国特許出願公開第2003/0199337号に従って表面処理することができる。この公開特許出願の全開示事項を参考としてここに組入れる。
【0091】
ゴルフボールの諸特性
コア径、中間層およびカバー層の厚み、硬さ、および圧縮率等の諸特性は、競技特性、例えば本発明のゴルフボールのスピン、初期速度および感触等に影響することが分かっている。
構成部品の寸法
ゴルフボールの構成部品の寸法、即ち厚みおよび径は、所望の特性に応じて変えることができる。本発明の目的にとって、任意の層の厚みを使用することができる。例えば、本発明は、任意のサイズを持つゴルフボールに関するが、該ゴルフボールは、好ましくはサイズおよび重量に関するUSGA基準を満たすことが好ましい。該USGAによる「ゴルフ規則(The Rules of Golf)」は、競技用ゴルフボールのサイズを、径において約4.27cm(1.680in)を越えるべきであるとの規格を記載しているが、レジャー用ゴルフ競技のためには、任意のサイズのゴルフボールを使用することができる。ゴルフボールの好ましい径は、約4.27cm(約1.680in)〜約2.03cm(約1.800in)なる範囲にある。より好ましい径は、約4.27cm(約1.680in)〜約4.47cm(約1.760in)なる範囲にある。最も好ましい径は、約43mm(約1.680in)〜約44mm(約1.740in)なる範囲内にあるが、約4.32cm(約1.700in)〜約4.95cm(1.950in)なる範囲内の何れかの径を使用することができる。
【0092】
好ましくは、該コアおよび全ての中間層の全体としての径は、完成されたボールの径全体の約80%〜約98%である。該コアは、約2.27mm(約0.09in)〜約4.19cm(約1.65in)なる範囲の径を持つことができる。一態様において、本発明のコアの径は、約3.05cm(約1.2in)〜約4.14cm(約1.630in)なる範囲内にある。例えば、本発明のツー-ピースボールの一部である、該コアは、約3.81cm(約1.5in)〜約4.11cm(約1.62in)なる範囲の径を持つことができる。もう一つの態様によれば、該コアの径は、約3.3cm(約1.3in)〜約4.06cm(約1.6in)なる範囲、好ましくは約3.53cm(約1.39in)〜約4.06cm(約1.6in)なる範囲、およびより好ましくは約3.81cm(約1.5in)〜約4.06cm(約1.6in)なる範囲内にある。更に別の態様において、該コアは、約3.94cm(約1.55in)〜約4.19cm(約1.65in)なる範囲、好ましくは約3.94cm(約1.55in)〜約4.06cm(約1.60in)なる範囲内の径を持つ。一態様において、該コアの径は、約4.04cm(約1.59in)またはそれ以上である。他の態様においては、該コアの径は、約4.17cm(約1.64in)またはそれ以下である。
【0093】
該コアが、内側コア層および外側コア層を持つ場合、該内側コア層は、好ましくは約1.27cm(約0.5in)またはそれ以上であり、また該外側コア層は、好ましくは約2.54mm(約0.1in)またはそれ以上の厚みを持つ。例えば、本発明による多層ボールの一部としての、該中心は、約1.27cm(約0.5in)〜約3.3cm(約1.30in)なる範囲の径を持つことができ、また該外側コア層は、約3.05mm(約0.12in)〜約1.27cm(約0.5in)なる範囲内の径を持つことができる。一態様において、該内側コア層は、約2.27mm(約0.09in)〜約3.05cm(約1.2in)なる範囲の径を有し、また該外側コア層は、約2.54mm(約0.1in)〜約2.03cm(約0.8in)なる範囲の厚みを持つ。更に別の態様において、該内側コア層の径は、約2.41mm(約0.095in)〜約2.79cm(約1.1in)なる範囲内にあり、また該外側コア層は、約5.08mm(約0.20in)〜約0.762mm(約0.03in)なる範囲の厚みを持つ。
該カバーは、典型的に十分な強度、良好な性能特性、および耐久性を与えるような厚みを持つ。一態様において、該カバーの厚みは、約0.508mm(約0.02in)〜約3.05mm(約0.12in)なる範囲、好ましくは約2.54mm(約0.1in)またはそれ以下である。例えば、本発明によるツー-ピースボールの一部としての、該カバーは、約0.762mm(約0.03in)〜約2.27mm(約0.09in)なる範囲の厚みを持つ。別の態様において、該カバーの厚みは、約1.27mm(約0.05in)またはそれ以下、好ましくは約0.508mm(約0.02in)〜約1.27mm(約0.05in)なる範囲、およびより好ましくは約0.508mm(約0.02in)〜約1.14mm(約0.045in)なる範囲内にある。
【0094】
ゴルフボールの中間層に関する厚みの範囲は、中間層、即ち外側コア層、内側カバー層、または水分/蒸気バリア層を用いた場合の多大な可能性の故に、大きい。本発明のゴルフボールにおいて使用した場合、該中間層、または内側カバー層は、約7.62mm(約0.3in)またはそれ以下の厚みを持つことができる。一態様において、該中間層の厚みは、約0.0508mm(約0.002in)〜約2.54mm(約0.1in)なる範囲、好ましくは約0.254mm(約0.01in)またはそれ以上である。例えば、本発明によるスリー-ピースボールまたは多層ボールの一部としての、該中間層および/または内側カバー層は、約0.381mm(約0.015in)〜約1.52mm(約0.06in)なる範囲内の厚みを持つことができる。もう一つの態様によれば、該中間層の厚みは、約1.27mm(約0.05in)またはそれ以下、より好ましくは約0.254mm(約0.01in)〜約1.14mm(約0.045in)なる範囲内にある。
【0095】
硬さ
本発明の組成物は、ゴルフボールの任意の層において使用できるので、該ゴルフボールの構成、物理的特性、および得られる性能は、本発明の組成物を含む、該ボールの層に依存して、大幅に変えることができる。
本発明のゴルフボールに含まれる該コアは、特定のゴルフボールの構成に依存して、変動する硬さを持つことができる。一態様において、該コアの硬さは、製造された球について測定した値として、少なくとも約15ショアA、好ましくは約30ショアAである。もう一つの態様において、該コアは、約50ショアA〜約90ショアDなる範囲の硬さを持つ。更に他の態様において、該コアの硬さは、約80ショアDまたはそれ以下である。好ましくは、該コアは、約30〜約65ショアDなる範囲の硬さを持ち、およびより好ましくは該コアは、約35〜約60ショアDなる範囲の硬さを持つ。例えば、コアが、本発明の組成物から作られている場合には、該コアは、約40〜約50ショアDなる範囲の硬さを持つ。
【0096】
本発明の中間層も、該ボールの特定の構成に依存して、硬さを変えることができる。一態様において、該中間層の硬さは、約30ショアDまたはそれ以上である。もう一つの態様において、該中間層の硬さは、約90ショアDまたはそれ以下、好ましくは約80ショアDまたはそれ以下、およびより好ましくは約70ショアDまたはそれ以下である。例えば、中間層が、本発明の組成物から作られている場合には、該中間層の硬さは、約65ショアDまたはそれ以下、好ましくは約35ショアD〜約60ショアDなる範囲内であり得る。更に別の態様において、該中間層の硬さは、約50ショアDまたはそれ以上、好ましくは約55またはそれ以上である。一態様において、該中間層の硬さは、約55ショアD〜約65ショアDなる範囲内にある。該中間層の硬さは、また約65ショアDまたはそれ以上であり得る。例えば、本発明のゴルフボールは、約60ショアD〜約75ショアDなる範囲内の硬さを持つ本発明のロジン-変性ポリマー組成物から製造された内側カバーを含むことができる。
【0097】
該コアおよび中間層と同様に、該カバーの硬さは、該ゴルフボールの構成および所望の特性に依存して、変えることができる。カバーの硬さ対内側ボールの硬さの比は、ゴルフボールの空力特性、特にボールのスピン特性を調節するのに使用される主な変数である。一般に、該内側ボールが硬いほど、ドライバースピンは大きくなり、しかも該カバーが柔軟であるほど、該ドライバースピンは大きくなる。
例えば、該中間層が、該ボールにおける最も硬い点、例えば約60ショアD〜約75ショアDなる範囲の硬さとしたい場合、該カバー材料は、スラブについて測定した値として、約20ショアDまたはそれ以上、好ましくは約25ショアDまたはそれ以上、およびより好ましくは約30ショアDまたはそれ以上の硬さを持つことができる。もう一つの態様において、該カバー自体は、約30ショアDまたはそれ以上の硬さを持つ。特に、該カバーの硬さは、約30ショアD〜約70ショアDなる範囲であり得る。一態様において、該カバーは、約40ショアD〜約65ショアDなる範囲、また他の態様において、約40ショアD〜約55ショアDなる範囲の硬さを持つ。本発明の他の局面において、該カバーは、約45ショアD未満、好ましくは約40ショアD未満、およびより好ましくは約25ショアD〜約40ショアDなる範囲の硬さを持つ。一態様において、該カバーは、約30ショアD〜約40ショアDなる範囲の硬さを持つ。
【0098】
圧縮率
圧縮率値は、測定すべき部品の径に依存する。本発明に従って製造したゴルフボールの該コアまたは該コアの一部分のアッチ圧縮率は、約30〜約110atti、好ましくは約50〜約100attiなる範囲内であり得る。一態様において、該コアのアッチ圧縮率は、約80atti未満、好ましくは約75atti未満である。ここで使用する用語「アッチ圧縮(率)」または「圧縮(率)」とは、NJ州、ユニオンシティーのアッチエンジニアリング社(Atti Engineering Corp.)から市販品として入手できる、アッチコンプレッションゲージ(Atti Compression Gauge)を用いて測定した、較正されたバネの撓みに対する、ある物体または材料の撓みとして定義される。アッチ圧縮率は、典型的にゴルフボールの圧縮率を測定するのに利用される。もう一つの態様において、該コアの圧縮率は、約40〜約80attiなる範囲、好ましくは約50〜約70attiなる範囲内にある。更に別の態様において、該コアの圧縮率は、好ましくは約50atti以下、およびより好ましくは約25atti以下である。
【0099】
別の低圧縮率態様において、該コアは、約20atti未満、より好ましくは約10atti未満、および最も好ましくは0である。しかし、当業者には公知の如く、本発明に従って製造したコアは、該アッチコンプレッションゲージの測定限界以下であり得る。
一態様において、本発明のゴルフボールは、好ましくは約55atti以上、好ましくは約60〜約120attiなる範囲のアッチ圧縮率を持つ。別の態様において、本発明のゴルフボールのアッチ圧縮率は、少なくとも約40atti、好ましくは約50〜120attiなる範囲、およびより好ましくは約50〜100attiなる範囲内にある。更に別の態様において、本発明のゴルフボールのアッチ圧縮率は、約75attiまたはそれ以上、および約95attiまたはそれ以下である。例えば、本発明の好ましいゴルフボールは、約80〜約95attiなる範囲内の圧縮率を持つことができる。
復元係数
本発明は、約38.1m/秒(約125ft/秒)なる帰還速度において、約0.700〜約0.850なる範囲のCORを持つゴルフボールを意図する。一態様において、該CORは、約0.750またはそれ以上、好ましくは約0.780またはそれ以上である。もう一つの態様において、該ボールは、約0.800またはそれ以上のCORを持つ。更に別の態様において、本発明のゴルフボールのCORは、約0.800〜約0.815なる範囲にある。
【0100】
あるいはまた、該ボールの最大のCORは、ゴルフボールが、取締り機関、例えばUSGAによって設定された初期速度要求値を越えない値である。ここで使用する用語「復元係数」(COR)とは、空気砲でゴルフボールを打出した際の、該ゴルフボールの反発速度を、その打出し速度で割ることにより算出される。該CORテストは、ある範囲の打出し速度に渡り行って、該CORは、約38.1m/秒(約125ft/秒)なる帰還速度において測定される。この復元のもう一つの尺度は、「損失正接」またはtanδであり、これはある物体の動力学剛性を測定する際に得られる。損失正接およびこのような動力学的特性に関連する用語は、典型的にASTM D4092-90に従って説明される。従って、より低い損失正接は、より高い復元性を示し、結果としてより高い反発能力を示す。低損失正接は、クラブからゴルフボールに与えられたエネルギーの殆どが、動力学的なエネルギー、即ち推進速度に変換されて、より長い飛距離を与えることを示す。ゴルフボールの剛性または圧縮剛性は、例えば動力学剛性によって測定することができる。より高い動力学剛性は、より高い圧縮剛性を示す。所定の圧縮剛性を持つゴルフボールを製造するためには、上記の架橋された材料の動力学剛性は、-50℃において約50,000N/m未満とすべきである。好ましくは、該動力学剛性は、-50℃において約10,000〜40,000N/mなる範囲とすべきであり、より好ましくは該動力学剛性は、-50℃において約20,000〜30,000N/mなる範囲とすべきである。
【0101】
水蒸気透過性
本発明の組成物から製造したゴルフボール部分の水蒸気透過率は、吸収、即ち特定条件下における所定期間に及ぶ重量増加またはサイズ増加、および透過率、例えばASTM E96-00に従う、水蒸気透過率(MVTR)によって表すことができる。MVTRは、特定の温度並びに湿度差の下で、単位面積当たり、かつ単位時間当たりの、所定の厚みを持つ材料内に拡散する、水蒸気の質量を意味する。例えば、100%相対湿度および約22.2℃(72°F)において、7週間に渡り追跡された、ゴルフボール部分の質量変化が、どのボールが良好な耐水性を示すかを立証するのに役立つ。
一態様において、本発明のゴルフボール部分は、38℃および90%なる相対湿度にて、約15g/645cm2(100in2)/日またはそれ以下の重量増加を示す。他の態様において、本発明のゴルフボールは、約12.5g/645cm2(100in2)/日またはそれ以下の重量増加を示す。更に別の態様において、本発明のゴルフボールの重量増加は、約7g/645cm2(100in2)/日またはそれ以下である。更に他の態様では、該重量増加は、約5g/645cm2(100in2)/日またはそれ以下である。本発明のゴルフボールは、好ましくは約3g/645cm2(100in2)/日またはそれ以下の重量増加を有する。
サイズ増加も、耐水性の指標として使用することができる。即ち、ゴルフボールがより多くの水を取込むほど、該ゴルフボール部分の最も外側の層の下部に封入された水のために、ゴルフボールは、より大きくなる。従って、本発明のゴルフボールは、好ましくは認識できるほどのサイズ増加を示さない。一態様において、本発明のゴルフボールの、7-週間なる浸漬期間後におけるサイズ増加は、約0.254mm(約0.001in)またはそれ以下である。
【実施例】
【0102】
以下の実施例は、本発明のゴルフボール組成物およびゴルフボールにおいて使用するための方法並びに材料の単なる例示であり、如何様にも本発明の範囲を制限するものと理解すべきではない。
実施例1:本発明の組成物で作成した疎水性カバー
疎水性組成物を、以下の表1に示したように本発明に従って製造した。特に、プレポリマーAは、ウレアプレポリマーであり、またプレポリマーBは、ウレタンプレポリマーである。該硬化剤は、極めて低分子量の三官能性カプロラクトンポリオールであり、そこで全てのヒドロキシル基は、第一ヒドロキシル基である。
【0103】
【表1】

1: プレポリマーAは、H12MDIとアミン-末端を持つポリブタジエンとの反応生成物であり、2000なる分子量および2.0なるアミン官能価を持つ;
2: プレポリマーBは、H12MDIとヒドロキシ末端を持つポリブタジエンとの反応生成物であり、2000なる分子量および2.0なるヒドロキシ官能価を持つ;
3: この硬化剤は、TMP開始ポリカプロラクトンであり、3.0なる官能価および300なる分子量を持つ(ソルベイ(Solvay)社から入手できるCAPATM3031)。
【0104】
これら処方物を、従来のポリブタジエンコア用カバーとして流込み成形した。特に、処方物#1は、本発明のボール#1の製造に使用し、また処方物#2は、本発明のボール#2の製造に使用した。コントロールボール#1は、ポリブタジエンコア、イオノマーケーシング層、およびポリウレタン外側カバー層を持つように製造し、ここでポリウレタンは、48ショアDなる材料硬さを有していた。コントロールボール#2は、大きなポリブタジエンコアおよびイオノマー製外側カバー層を持つように作成され、ここで該イオノマーの材料硬さは、
65ショアDであった。これらのボールを、復元係数、耐衝撃性、および耐久性につきテストした。結果を以下の表2に示す。
【0105】
【表2】

【0106】
また、これらボールを、疎水性または耐水性につきテストした。特に、各部類、即ち本発明#1、本発明#2、コントロール#1およびコントロール#2につき、各6個の成形したボールを、水で満たした約3.8L(1ガロン)容量のカン内に入れた。これらボールを、4-週間の期間に渡り浸漬状態に維持した。重量増加および復元係数損失の測定を、週1回行った。
図5および6に示したように、4-週間に渡る浸漬後、これら実験的処方物両者から製造した該ゴルフボールは、該コントロール#1に対して優れた疎水性を示し、かつコントロール#2に匹敵する疎水性を示した。更に、該実験的処方物から注型したカバーを持つゴルフボールは、該コントロールボール両者よりも小さなCOR損失を示した。
【0107】
実施例における以外、あるいは特別に述べない限り、全ての数値範囲、量、値および百分率(%)、例えば材料の量、反応時間および温度、量比、分子量の値(数平均分子量(Mn)または重量平均分子量(Mw)何れであれ)、および本明細書の以下の部分におけるその他の数値は、該値、量または範囲に、「約」なる用語がわざわざ付加されていないとしても、この「約」なる用語が先行するものとして読むことができる。従って、これに反することが述べられていない限り、以下の明細書および添付した特許請求の範囲に示された数値パラメータは、本発明によって得ようと考えている、所定の特性に依存して変えることのできる、凡その値である。極稀に、および特許請求の範囲に等価な教義の適用に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数値、および通常の丸め技術によって処理された数値に照らして解釈すべきである。
【0108】
本発明の広い範囲で示された数値範囲およびパラメータが、近似値であるとしても、特定の実施例に示された数値は、できる限り正確な数値として報告されている。しかし、あらゆる数値は、本来、各テストの測定値に見られる標準偏差に起因する幾分かの誤差を、必然的に含む。更に、変動する範囲に係る数値範囲が、本明細書に記載されている場合、列挙された値を含む、これら値の任意の組合せが、使用可能である。
ここに記載され、また特許請求された本発明は、ここに記載した特定の態様により、その範囲において限定されるものではない。というのは、これらの態様は、本発明の幾つかの局面を例示するためのものであるからである。あらゆる等価な態様が、本発明の範囲内に含まれるものとする。例えば、本発明の組成物は、パターのインサート、ゴルフクラブヘッドおよびその部分、ゴルフシューズの部分、およびゴルフバッグの部分等のゴルフ用具においても使用できる。事実、ここに提示され、また説明された事項に加えて、本発明の様々な改良が、上記説明から、当業者には明らかとなろう。このような改良も、本発明の添付した特許請求の範囲に含まれるものとする。以上本明細書において引用されたあらゆる特許および特許出願は、その全開示事項が、ここに明確に組み込まれているものとする。
【符号の説明】
【0109】
2、8、16、24・・ゴルフボール
4、10、26・・中心
6、14、22・・カバー
12、28・・中間層
18・・コア
20、30・・内側カバー層
32・・外側カバー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアおよびカバーを含むゴルフボールであって、該カバーが、
イソシアネート含有成分および第一のイソシアネート反応性成分の反応生成物を含むプレポリマーと、ここで該第一のイソシアネート反応性成分は、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む、共役ジエン炭化水素を含有し;
少なくとも2つのヒドロキシル基を含む、第二のイソシアネート反応性成分および少なくとも1種の遊離基開始剤を含有する硬化剤ブレンドと、
を含む組成物から作成され、該組成物が、該炭化水素間に架橋を含むことを特徴とする、前記ゴルフボール。
【請求項2】
前記イソシアネート含有成分が、少なくとも2つのイソシアネート基を含む、請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記第一のイソシアネート反応性成分が、ヒドロキシ-末端を持つポリブタジエンを含む、請求項1記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記ヒドロキシ-末端を持つポリブタジエンが、該ポリブタジエンの末端部に第一ヒドロキシル基を含む、請求項3記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記ヒドロキシ-末端を持つポリブタジエンが、該ポリブタジエンの末端部に第二ヒドロキシル基を含む、請求項3記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記ヒドロキシ-末端を持つポリブタジエンが、該ポリブタジエンの末端部に第一ヒドロキシル基、第二ヒドロキシル基またはこれらの組合せを含む、請求項3記載のゴルフボール。
【請求項7】
前記少なくとも一つの遊離基開始剤が、パーオキサイドを含む、請求項1記載のゴルフボール。
【請求項8】
コア;および
共役ジエンおよびウレタン結合を含むポリマー主鎖、およびイソシアネート基を含む複数の末端を含有するプレポリマー;およびイソシアネート反応性成分および遊離基開始剤を含む硬化剤ブレンドを含む組成物から作成されたカバー、
を含み、該イソシアネート反応性成分が、該イソシアネート基と反応し得る、少なくとも2つの末端ヒドロキシル基を含み、かつ該遊離基開始剤が、該ポリマー主鎖を架橋することができることを特徴とする、ゴルフボール。
【請求項9】
前記ポリマー主鎖が、ポリブタジエンを含む、請求項8記載のゴルフボール。
【請求項10】
前記遊離基開始剤が、パーオキサイドを含む、請求項8記載のゴルフボール。
【請求項11】
前記イソシアネート反応性成分が、ヒドロキシ-末端を持つ成分を含む、請求項8記載のゴルフボール。
【請求項12】
前記組成物が、本質的にウレタン結合からなる、請求項11記載のゴルフボール。
【請求項13】
前記プレポリマーが、本質的にウレタン結合からなる、請求項8記載のゴルフボール。
【請求項14】
コアおよびカバーを含むゴルフボールの製造方法であって、該方法が以下の諸工程:
コアを調製する工程;
ヒドロキシル基を含む複数の末端を含有する共役ジエンを調製する工程;
該共役ジエンと、イソシアネート含有成分とを反応させて、ウレタン結合を含むプレポリマーを製造する工程;
ヒドロキシ-末端を持つ硬化剤、および有機パーオキサイドを含有する硬化剤ブレンドを製造する工程;
前記プレポリマーと硬化剤ブレンドとを反応させて、ウレタン結合および前記炭化水素間の架橋を含む組成物を形成する工程;および
前記組成物から、前記コアの周りにゴルフボールカバーを流込み成形する工程、
を含むことを特徴とする、前記ゴルフボールの製造方法。
【請求項15】
前記複数の末端部が、第一ヒドロキシル基、第二ヒドロキシル基またはこれらの組合せを含む、請求項14記載のゴルフボール。
【請求項16】
前記イソシアネート含有成分が、少なくとも2つのイソシアネート基を含む、請求項14記載のゴルフボール。
【請求項17】
前記共役ジエンが、ヒドロキシ-末端を持つポリブタジエンを含む、請求項14記載のゴルフボール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−291619(P2009−291619A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−136682(P2009−136682)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY