説明

ゴルフボール用の注型ポリウレタンおよびポリウレアカバー

【課題】ゴルフボール製造における、ポリウレアおよびポリウレタンの熱安定性および耐久性を改善するための方法の提供を目的とする。
【解決手段】コアおよびカバーを含むゴルフボールの製造方法であって、以下の諸工程:
コアを用意する工程;
イソシアネートとアミン-末端を持つ成分との反応生成物を含むポリウレアプレポリマーを用意する工程;
該ポリウレアプレポリマーおよびアミン-末端を持つ硬化剤のブレンドを、金型内に流し込んで、該コア上にカバーを形成する工程、ここで該ゴルフボールカバーは、第一の架橋密度を有し;および
該カバーに、電子線、中性子線、プロトンビーム、γ-線、x-線、ヘリウム核由来の輻射線等を照射して、該第一の架橋密度よりも大きな第二の架橋密度を持つ、処理されたカバーを生成する工程、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性ポリウレタンおよび/またはポリウレアゴルフボールの後-成形処理に関するものである。特に、本発明の組成物は、熱安定性、耐久性、および耐擦り傷性を改善するための成形処理後に、更に架橋される。本発明の組成物は、ゴルフボールの任意の層、例えば外側カバー層または内側カバー層において使用することができ、あるいはゴルフボールの構造用外側層上に設けられる、被膜として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールの製造業者等は、ゴルフボールの全体的な性能および耐久性を改善し、また更にはその製造工程の更なる洗練をはかるために、多年に渡りゴルフボールの様々な材料およびその製法について実験を行っている。
例えば、過去数年に渡り、ゴルフボールの製造業者等は、イオノマー材料が耐久性、反発性、および耐擦り傷特性に優れることから、ゴルフボールカバー材料として該イオノマー樹脂を使用している。しかし、イオノマー樹脂は、他の型のゴルフボール層材料よりもかなり耐久性に富むが、耐久性をもたらす同様な諸特性が、硬い「感触」をももたらし、また該材料の硬さの故に、一般的により低いスピン速度をもたらし、また結果としてより低いコントロール性をもたらす。
【0003】
あるいはまた、ポリウレタン組成物は、「軟質」のカバーをもたらし、また典型的には、その高められたスピンのために、ゴルフボールをよりコントロールし易いものとしている。従来のポリウレタン製カバー材料は、典型的に芳香族成分から製造されているので、黄変に導く該材料の紫外線による劣化は、光安定性カバー材料、例えば脂肪族ポリウレタンおよびポリウレア材料の使用へと向かう、最近の傾向へと導いた。しかし、事実上芳香族または脂肪族何れであれ、該ポリウレタンおよびポリウレア材料の相対的に高い柔軟性は、耐久性の問題をもたらす。更に、脂肪族ポリウレア材料は、熱硬化性ポリウレタン材料よりも低い熱安定性を持つ傾向がある。
それ故、ゴルフボールの構成部品を形成するために使用される該ポリウレア材料の前記熱安定性および耐久性を改善すべきとの要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ゴルフボール製造における、ポリウレアおよびポリウレタンの熱安定性および耐久性を改善するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、コアおよびカバーを含むゴルフボールの製造方法の提供を目的とするものであって、該方法は、以下の諸工程:コアを用意する工程;イソシアネートとアミン-末端を持つ成分との反応生成物を含むポリウレアプレポリマーを用意する工程;該ポリウレアプレポリマーおよびアミン-末端を持つ硬化剤のブレンドを、金型内に流し込んで、該コア上にカバーを形成する工程、ここで該ゴルフボールカバーは、第一の架橋密度を有し;および該カバーに、電子線、中性子線、プロトンビーム、γ-線、x-線、ヘリウム核由来の放射線等を照射して、該第一の架橋密度よりも大きな第二の架橋密度を持つ、処理されたカバーを生成する工程を含む。
一態様において、前記カバーを照射する工程は、該カバーを、周囲温度にて、1メガラドを越える線量の輻射線による処理に付すことを含む。もう一つの態様において、前記カバーを照射する工程は、該カバーを、周囲温度にて、約4〜約8メガラドなる範囲の線量の輻射線による処理に付すことを含む。更に別の態様において、前記第二の架橋密度は、前記第一の架橋密度よりも少なくとも約10%大きい。例えば、該第二の架橋密度は、該第一の架橋密度よりも少なくとも約15%大きい。
【0006】
本発明は、またコアおよびカバーを含むゴルフボールの製造方法にも係り、該方法は、以下の諸工程:コアを用意する工程;第一のイソシアネート含有成分とイソシアネート-反応性成分との反応生成物を含むプレポリマーを用意する工程、ここで該プレポリマーは、第一の量の未反応アミンを含み;該プレポリマーおよびアミン-末端を持つ硬化剤を前記コアの回りで注型して、該第一の量の未反応アミンよりも少ない、第二の量の未反応アミンを含むカバーを形成する工程;および該カバーを第二のイソシアネート-含有成分で処理して、処理されたカバーを生成する工程を含み、ここで該処理されたカバーは、該第二の量の未反応アミンよりも少ない第三の量の未反応アミンを含む。
【0007】
一態様において、前記カバーを処理する工程は、該カバーを、前記第二のイソシアネート-含有成分で浸漬、塗り付け、ソーキング、ブラシ塗布または噴霧することを含む。他の態様において、該第二のイソシアネート-含有成分は、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニルジイソシアネート、1,4-ジイソシアネートベンゼン、フェニレン-1,4-ジイソシアネート、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4'-ジイソシアネート、p,p'-ジフェニルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、メタ-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、およびこれらの組合せからなる群から選択される。例えば、該第二のイソシアネート-含有成分は、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、およびこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0008】
本発明は、またコアおよびカバーを含むゴルフボールの製造方法にも係り、該方法は以下の諸工程:コアを用意する工程;イソシアネートとアミン-末端を持つ成分との反応生成物を含むポリウレアプレポリマーを用意する工程; 該ポリウレアプレポリマーとブロックイソシアネートまたはフリーラジカル開始剤とを混合して、中間体プレポリマーを生成する工程;該中間体プレポリマーとアミン-末端を持つ硬化剤ブレンドとを反応させて、第一の量の遊離アミンを含む組成物を製造する工程;該組成物を、前記コア上で成型して、成型されたカバーを作成する工程;および該成型されたカバーを、熱またはエネルギー源に暴露して、前記第一の量の遊離アミンよりも少ない、第二の量の遊離アミンを持つ生成物を得る工程を含む。
一態様において、前記混合工程は、パーオキサイドを含むフリーラジカル開始剤を選択することを含む。該パーオキサイドは、ジ-t-アミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンまたは1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジベンゾイルパーオキシヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,4-ジクロロ-ベンゾイルパーオキサイド、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0009】
もう一つの態様において、前記混合工程は過硫酸塩、アゾ化合物、ベンゾフェノン、ヒドラジド、またはこれらの組合せを含む、フリーラジカル開始剤を選択することを含む。更に別の態様において、前記成型されたカバーを暴露する工程は、該成型されたカバーを、電子線、中性子線、プロトンビーム、γ-線、x-線、ヘリウム核由来の輻射線等に暴露する工程を含む。
該成型されたカバーは、第一の架橋密度を持つことができ、かつ前記生成物は、該第一の架橋密度よりも大きな第二の架橋密度を持つ。一態様において、該第二の架橋密度は、該第一の架橋密度よりも少なくとも10%大きい。もう一つの態様において、該混合工程は、イソシアネートとブロッキング剤との反応生成物である、ブロックイソシアネートを製造する工程を含み、ここで該ブロッキング剤は、1,2,4-トリアゾール、2-ホルミルオキシエチルメタクリレート(FEMA)、カプロラクタム、ジエチルマロネート(DEM)、3,5-ジメチルピラゾール(DMP)、メチルエチルケトキシム(MEKO)、およびこれらの組合せから選択される。
【0010】
前記成型されたカバーを熱に暴露する工程は、成型温度を少なくとも約100℃(約212゜F)まで高める段階を含むことができる。一態様において、前記コア上で前記組成物を成形して、成型されたカバーを形成する工程は、第一の温度にて行われ、またここで該成型されたカバーを熱に暴露する工程は、該第一の温度よりも高い第二の温度にて行われる。もう一つの態様において、該第一の温度は、約93℃(約200゜F)未満であり得、またここで該第二の温度は、少なくとも約100℃(約212゜F)である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の更なる特徴並びに利点は、以下の詳細な説明から確認することができ、該詳細な説明は、以下に記載する図面との関連で与えられる。
【図1】図1は、ツー-ピースゴルフボールの断面図であり、そこで該ボールのカバーは、本発明の組成物から作られている。
【図2】図2は、多成分ゴルフボールの断面図であり、そこで該ボールの少なくとも一つの層は、本発明の組成物から作られている。
【図3】図3は、大きなコアを持つ多成分ゴルフボールの断面図であり、そこで該ボールの少なくとも一つの層は、本発明の組成物から作られている。
【図4】図4は、二重コアおよび二重カバーを持つ多成分ゴルフボールの断面図であり、そこで該ボールの少なくとも一つの層は、本発明の組成物から作られている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、熱硬化性ポリウレアおよびポリウレタン系に係り、該系は、注型することによりゴルフボール成分、好ましくは外側ゴルフボール成分とされ、また補助的な処理に掛けられて、該処理後に架橋密度が更に高まるように、該成分は更に架橋される。更に、本発明は、このような組成物の製法およびゴルフボールを探求するものであり、該ゴルフボールの一部分において、該ゴルフボールは本発明の組成物を用いて作られている。
本発明の組成物は、典型的には、大きなコアを持つボール上の外側カバーまたは比較的柔軟なカバーを備えた多層ボール上に設けられる内側カバーとして使用される、イオノマー等の熱可塑性材料に対する代替品を与える。事実、如何なる特定の理論にも拘泥するものではないが、該ゴルフボールの外側成分において使用する場合、該高い架橋密度は、改善された熱安定性を持つ、即ち耐水性および耐久性を持つゴルフボールを与える。
【0013】
本発明の組成物は、様々なゴルフボール構成と共に利用することができる。例えば、本発明の組成物は、大きなコアを持つツー-ピースボールにおけるカバー層として、比較的薄い内側カバー層を持つスリー-ピースボールにおける外側カバー層として、スリー-ピースボールにおける中間層として、または二重カバー層を持つゴルフボールにおける内側カバー層として使用することができる。更に、本発明の組成物は、ゴルフボール用の被覆を形成するために使用することもできる。該ゴルフボール部材、ゴルフボール構成部材、および層並びにボール特性は、以下において更に詳細に論じる。
特に、本発明は、電子線、中性子線、プロトンビーム、γ-線、x-線、ヘリウム核等で照射して、熱安定性を改善することのできる、ポリウレアまたはポリウレタンで作成した外側カバー層に関する。もう一つの態様において、該ポリウレアまたはポリウレタン製外側カバー層は、成型後、該層内の一部に侵入して過剰量のアミノ基と反応するイソシアネートで該層を処理することにより、更に架橋することができる。本発明の更に別の態様において、ポリウレアまたはポリウレタンプレポリマーは、アミン硬化剤と反応させる前に、ブロックイソシアネート(又はブロックトイソシアネート(blocked isocyanate))またはパーオキサイドまたは他のフリーラジカル開始剤の何れかと混合される。上記成形段階の完了後に、該未反応のブロックイソシアネートまたはパーオキサイドは、熱または他のエネルギーにより活性化され、該熱または他のエネルギーは、該ブロックイソシアネートと過剰量のアミンまたはヒドロキシル基との反応を可能とし、あるいはパーオキサイドの場合には、該パーオキサイドを分解して、該層を更に架橋する反応性フリーラジカルを生成する。
【0014】
本発明の組成物
本発明の組成物は、イソシアネート-含有成分とイソシアネート-反応性成分との反応生成物であるプレポリマーを含み、該プレポリマーは、硬化剤とフリーラジカル開始剤との組合せによって架橋される。特に、該イソシアネート-含有成分とイソシアネート-反応性成分との反応生成物は、ポリウレタン結合、ポリウレア結合、またはこれらの組合せを含むプレポリマーを生成する。該組成物の成分を、以下において論じる。
プレポリマー
本発明の組成物において使用する該プレポリマーは、ポリウレタン、ポリウレアまたはこれらの組合せを主成分とするものであり得る。例えば、該プレポリマーは、ウレタン結合(これを、ここにおいてはポリウレタンプレポリマーと呼ぶ)、ウレア結合(これを、ここにおいてはポリウレアプレポリマーと呼ぶ)、またはウレタンおよびウレア結合(これを、ここにおいてはハイブリッドプレポリマーと呼ぶ)を含むことができ、これら各々を、以下において詳細に論じる。
【0015】
ポリウレタンプレポリマー
ポリウレタンを主成分とする場合、該プレポリマーは、少なくとも1種のイソシアネートと少なくとも1種のヒドロキシ末端を持つ成分との間の反応により形成される生成物である。該ポリウレタンプレポリマーの成分は、芳香族、芳香族-脂肪族、または脂肪族であり得、これらは様々な度合いの光安定性を与える。ここで使用する用語「芳香族脂肪族化合物」とは、芳香族リングを含む化合物であって、ここでそのイソシアネート基が該リングとは直接結合していない化合物として理解すべきである。
経時と共に、芳香族組成物は、芳香族-脂肪族組成物よりも光安定性が低く、後者は、脂肪族組成物よりも光安定性が低い。例えば、本発明に従って作られた脂肪族組成物は、飽和成分、即ち実質的に不飽和炭素-炭素結合または芳香族基を含まない成分のみを含み、その使用は、経時に伴う黄変を防止する。ここで使用する該用語「飽和」とは、飽和脂肪族または飽和ポリマー主鎖を持つ、即ち炭素-炭素二重結合を全く含まない組成物を意味する。しかし、本発明に従って製造した芳香族組成物が、光安定性を改善するために、光安定剤を含むことができることを述べておくことは重要である。即ち、本特許出願の目的にとって、光安定性は様々な方法で達成することができる。
【0016】
上記ポリウレタンプレポリマーと共に使用するイソシアネートは、脂肪族、環式式脂肪族、芳香族脂肪族および芳香族化合物、これらの誘導体、および1分子当たり2またはそれ以上のイソシアネート基(NCO)を持つこれら化合物の組合せを含む。上で簡単に述べたように、該イソシアネートは、本発明の組成物の光安定性を改善するために、飽和イソシアネートであり得る。該イソシアネートは、有機ポリイソシアネート-末端を持つプリカーサ、低遊離イソシアネート含有プリカーサ、およびこれらの混合物であり得る。該イソシアネート成分は、また任意のイソシアネート官能基を含むモノマー、ダイマー、トライマー、またはこれらのマルチマー付加生成物、プリカーサ、擬似-プリカーサ、またはこれらの混合物を含むことができる。イソシアネート官能基を含む化合物は、モノ-イソシアネートまたは2またはそれ以上の任意のイソシアネート官能基を含む、ポリイソシアネートを含むこともできる。
適当なイソシアネート含有成分は、一般的な構造:O=C=N-R-N=C=O(ここで、Rは、好ましくは、約1〜20個の炭素原子を含む、環式または直鎖または分岐炭化水素部分である)を持つジイソシアネートを含む。該ジイソシアネートは、また1またはそれ以上の環式基を含むこともできる。複数の環式基が存在する場合、約1〜10個の炭素原子を含む直鎖および/または分岐炭化水素が、該環式基間にスペーサとして存在してもよい。幾つかの場合において、該環式基は、夫々2-、3-および/または4-位において置換されていてもよい。置換基は、ハロゲン原子、一級、二級または三級炭化水素基、またはこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0017】
上記ポリウレタンプリカーサにおいて使用することのできる飽和(脂肪族)ジイソシアネートの例は、エチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、HDIから調製したHDIビウレット、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカン-1,12-ジイソシアネート、シクロブタン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(HTDI)、2,4-メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,6-メチルシクロヘキサンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルジイソシアネート、2,4'-ジシクロヘキシルジイソシアネート、1,3,5-シクロヘキサントリイソシアネート、イソシアナトメチルシクロヘキサンイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン、イソシアナトエチルシクロヘキサンイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4'-ビス(イソシアナトメチル)-ジシクロヘキサン、2,4'-ビス(イソシアナトメチル)-ジシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、HDIのトリイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジイソシアネート(TMDI)のトリイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、2,4-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、芳香族脂肪族イソシアネート、例えば1,2-、1,3-および1,4-キシレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアネート(m-TMXDI)、p-テトラメチルキシレンジイソシアネート(p-TMXDI)、任意のポリイソシアネートのトライマー化イソシアヌレート、例えばトルエンジイソシアネートのイソシアヌレート、ジフェニルメタンジイソシアネートのトライマー、テトラメチルキシレンジイソシアネートのトライマー、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、およびこれらの混合物;任意のポリイソシアネートのダイマー化されたウレトジオン(uretdione)、例えばトルエンジイソシアネートのウレトジオン、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン、およびこれらの混合物;上記イソシアネートおよびポリイソシアネートから誘導される変性ポリイソシアネート;およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。一態様において、該飽和ジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、またはこれらの組合せを含む。
【0018】
簡単に論じたように、芳香族脂肪族イソシアネートは、また上記ポリウレタンプリカーサを製造するのに使用することもできる。芳香族脂肪族材料の使用は、純粋な脂肪族材料を含むものと比較して、得られる生成物に対して同一の程度の光安定性を付与するものではないが、これは、純粋な芳香族材料で作成したものと比較して、より高い程度の光安定性を与える。芳香族脂肪族イソシアネートの例は、1,2-、1,3-および1,4-キシレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアネート(m-TMXDI)、p-テトラメチルキシレンジイソシアネート(p-TMXDI)、任意のポリイソシアネートのトライマー化イソシアヌレート、例えばトルエンジイソシアネートのイソシアヌレート、ジフェニルメタンジイソシアネートのトライマー、テトラメチルキシレンジイソシアネートのトライマー、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、およびこれらの混合物;任意のポリイソシアネートのダイマー化されたウレトジオン、例えばトルエンジイソシアネートのウレトジオン、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン、およびこれらの混合物;上記イソシアネートおよびポリイソシアネートから誘導される変性ポリイソシアネート、およびこれらの混合物を含む。更に、該芳香族脂肪族イソシアネートは、本発明の目的にとって、上に列挙した任意の飽和イソシアネートと混合することもできる。
【0019】
不飽和ジイソシアネート、即ち芳香族化合物も、本発明で使用可能であるが、上記プリカーサにおける該不飽和化合物の使用と、以下において論じるような光安定剤または顔料の使用とを組合せることが好ましい。不飽和ジイソシアネートの例は、2,2'-、2,4'-、および4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含む置換および異性体混合物、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニルジイソシアネート(TODI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ポリマー型MDI(PMDI:約50%のメチレンジイソシアネートと、MDIのオリゴマーを含む残部とを含有する褐色液体)、カルボジイミド-変性液状4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、m-フェニレンジイソシアネート(MPDI)、トリフェニルメタン-4,4'-およびトリフェニルメタン-4,4B''-トリイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、2,4'-、4,4'-および2,2'-ビフェニルジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(PMDI)(ポリマー型PMDIとしても知られている)、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
イソシアネート基は、ヒドロキシ末端を持つ成分のヒドロキシル基と反応して、反復的ウレタン結合を持つ長いポリマー鎖を形成する。ここで、該ウレタン結合は、以下のような一般的な構造を持つ:
【0020】
【化1】

【0021】
ここで、xは鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、またRは、約1〜約20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基、およびこれらの混合物を含み、またR1は、約1〜約20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐炭化水素鎖である。
本発明で使用するのに適した該ヒドロキシ-末端を持つ成分は、実際には有機、変性有機、飽和、脂肪族、脂環式、不飽和、芳香脂肪族、芳香族、置換または無置換のものであり得る。該ヒドロキシ-末端を持つ成分は、ヒドロキシ-末端を持つポリ(炭化水素)であり得、該ポリ(炭化水素)は、ヒドロキシ-末端を持つポリブタジエン、ヒドロキシ-末端を持つポリイソプレン、ポリ(水添イソプレン)ポリオール、ポリ(水添ブタジエン)ポリオール、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
特に、該ヒドロキシ-末端を持つ成分は、好ましくは、1分子当たり2またはそれ以上の反応性水素原子、例えば一級または二級ヒドロキシ基、および少なくとも一つの共役ジエン結合を持つ炭化水素を含む。該共役ジエン結合を持つ炭化水素は、4〜約12個までの炭素原子を含む不飽和、2-置換、または2,3-ジ置換1,3-ジエンであり得る。一態様において、該ジエンは、6個までの炭素原子を持ち、またその2-または3-位における置換基は、H、アルキル基、好ましくは低級アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、およびこれらの混合物であり得る。該ジエンは、1,3-ブタジエン、イソプレン、2-シアノ-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-フェニル-1,3-ブタジエン等であり得る。
【0022】
該ヒドロキシ-末端を持つ成分は、また他のヒドロキシ-末端を持つ成分と混合することもでき、ここで該他のヒドロキシ-末端を持つ成分は、ヒドロキシ-末端を持つポリエステル、ヒドロキシ-末端を持つポリエーテル、ヒドロキシ-末端を持つポリカーボネート、ヒドロキシ-末端を持つポリカプロラクトン、ヒドロキシ-末端を持つポリ(炭化水素)、ヒドロキシ-末端を持つ酸官能性オリゴマーまたはポリマー(または有機または無機カチオンによる部分的または完全な中和により誘導される、そのイオノマー)を含むが、これらに限定されない。
当業者には公知である如く、該ポリウレタンプレポリマーは、幾分かの量の遊離イソシアネートモノマーを含む。従って、一態様において、該ポリウレタンプレポリマーは、遊離イソシアネートモノマーの抜取りが行われる。例えば、ストリッピング後、該プリカーサは、約1%またはそれ以下の遊離イソシアネートモノマーを含むことができる。もう一つの態様において、該プリカーサは、約0.5質量%またはそれ以下の遊離イソシアネートモノマーを含む。
【0023】
ポリウレアプレポリマー
該プレポリマーは、またウレア結合を主として含むものであり得、ここで該プレポリマーは、少なくとも1種のイソシアネート-含有成分と少なくとも1種のアミン-末端を持つ成分との反応によって生成される生成物である。本発明の目的にとって、該ポリウレアプレポリマーは、以下の一般的な構造を持ち、主としてウレア結合を有する長いポリマー鎖を含む:
【0024】
【化2】

【0025】
ここで、xは鎖長、即ち約1またはそれ以上であり、またRは、約1〜約20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐炭化水素鎖、フェニル基、およびこれらの混合物を含み、またR1は、約1〜約20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐炭化水素鎖である。
上で論じたポリウレタンプレポリマーと本章において論じるポリウレアプレポリマーとの間の主な差は、ヒドロキシ-末端を持つ成分のアミン-末端を持つ成分による置換である。従って、該ポリウレアプレポリマーに含めるのに適した該イソシアネートは、ポリウレタンプレポリマーについて上に列挙したものと同様である。後者を、ここにおいても参考として組入れる。また、上記の通り、飽和イソシアネートが好ましいが、芳香族脂肪族イソシアネートおよび芳香族イソシアネートを、本発明で使用することを意図する。
しかし、主としてウレア結合を含むプレポリマーは、ヒドロキシ-末端を持つ成分のアミン-末端を持つ成分による置換のために、主としてウレタン結合を含むプレポリマーとは、明確に異なる諸特性を持つことができることを理解すべきである。例えば、ポリウレアプレポリマーを使用した場合、得られる組成物は、ポリウレタンプレポリマーから製造した組成物とは異なる剪断、切断、レジリエンス、および接着特性を持つことができる。
この点に関連して、該アミン-末端を持つ成分は、好ましくは以下のような一般的な構造を持つ、少なくとも2つのアミノ基を有する成分であり得る:
【0026】
【化3】

【0027】
ここでRは、無置換または置換された直鎖または分岐脂肪族基、無置換または置換された芳香族基、またはこれらの混合物であり得、またR1およびR2は、夫々独立にアルキル基、アリール基、またはアラルキル基であり得る。
上記成分の非-限定的な例は、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,3-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-および/または2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,3-および/または1,4-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン、2,4-および/または2,6-ヘキサヒドロトルイレンジアミン、2,4'-および/または4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、および3,3'-ジアルキル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、例えば3,3'-ジメチル-4,4-ジアミノジシクロヘキシルメタンおよび3,3'-ジエチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン;芳香族ポリアミン、例えば2,4-および/または2,6-ジアミノトルエンおよび2,6-ジアミノトルエン、および2,4'-および/または4,4'-ジアミノジフェニルメタン;ポリオキシアルキレンポリアミン(ここでは、アミン-末端を持つポリエーテルとも呼ぶ);4,4'-ビス(sec-ブチルアミノ)ジシクロヘキシルメタン(クリアーリンク(ClearlinkTM) 1000);3,3'-ジメチル-4,4'-ビス(sec-ブチルアミノ)ジシクロヘキシルメタン(クリアーリンク(ClearlinkTM) 3000);4,4'-ビス(ブチルアミノ)ジシクロヘキシルメタン;3,3'-ジメチル-4,4'-ビス(ブチルアミノ)ジシクロヘキシルメタン;1,4-ビス(sec-ブチルアミノ)シクロヘキサン;1,2-ビス(sec-ブチルアミノ)シクロヘキサン;N,N'-ジアルキルアミノジシクロヘキシルメタン;N,N'-ジエチルマレエート-2-メチルペンタメチレンジアミン(デスモフェン(DesmophenTM)NH 1220);N,N'-ジ(エチルマレエート-アミノ)ジシクロヘキシルメタン(デスモフェン(DesmophenTM)NH 1420);N,N'-ジ(エチルマレエート-アミノ)ジメチルジシクロヘキシルメタン(デスモフェン(DesmophenTM)NH 1520);1,2-、1,3-、および1,4-ビス(sec-ブチルアミノ)キシレン;1,2-、1,3-、および1,4-ビス(sec-ブチルアミノメチル)シクロヘキサン;3-{[(5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキシル)メチル]アミノ}プロパンニトリル、N,N'-ジイソプロピルイソホロンジアミン(ジェフリンク(JEFFLINKTM) 754、ハンツマン社(Huntsman Corporation)から入手できる)、およびこれらの混合物を包含する。
【0028】
該アミン-末端を持つ成分は、他のアミン-末端を持つ成分と混合することができ、ここで該他のアミン-末端を持つ成分は、アミン-末端を持つ炭化水素、アミン-末端を持つポリエーテル、アミン-末端を持つポリエステル、アミン-末端を持つポリカーボネート、アミン-末端を持つポリカプロラクトン、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
ハイブリッドプレポリマー
該プレポリマーは、またウレタンおよびウレア結合両者を含むこともできる。このようなプレポリマーは、イソシアネートとヒドロキシ-末端を持つ成分のみを含むポリウレタンプレポリマー、またはイソシアネートとアミン-末端を持つ成分のみを含むポリウレアプレポリマーとは明確に異なっている。明確化のために、この型のセグメントは、本件特許出願全体を通してハイブリッドプレポリマーと呼ぶであろう。
例えば、一態様において、上記イソシアネート-反応性成分は、少なくとも一つの末端ヒドロキシル基および少なくとも一つの末端アミノ基を持つことができる。特に、該イソシアネート-反応性成分は、その一端において一級または二級アミノ基で終端しており、またその他端において一級または二級ヒドロキシル基で終端している、少なくとも一つの共役ジエン炭化水素を持つことができる。
この点に関連して、該ハイブリッドイソシアネート-反応性成分は、以下の一般式で示される一種の化合物を含むことができる:
【0029】
【化4】







【0030】
該一般式において、R、R1、およびR2は、夫々独立に、約1〜約20個の炭素原子、好ましくは約1〜約12個の炭素原子を持つ任意のアルキル基、フェニル基、環式基、またはこれらの混合物であり得る。Xは、4〜12個までの炭素原子を持つ無置換、2-置換、または2,3-ジ置換1,3-ジエンであり得、またnはその鎖長、即ち約1またはそれ以上の数値である。一態様において、該ジエンは、6個までの炭素原子を持ち、また上記2-位および/または3-位における置換基は、H、アルキル基、好ましくは低級アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、またはこれらの混合物であり得る。該ジエンは、1,3-ブタジエン、イソプレン、2-シアノ-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-フェニル-1,3-ブタジエン等であり得る。
ジイソシアネートを、本発明のハイブリッドイソシアネート-反応性成分と反応させる場合、ウレアおよびウレタン結合を持つ長いポリマー鎖が形成される。
【0031】
予備硬化添加剤
本発明の一局面において、後-成形処理は、上記硬化剤と反応させる前に、該ポリウレアまたはポリウレタンプレポリマーに予備硬化添加剤を添加する必要がある。特に、本発明の該プレポリマーは、ブロックイソシアネートまたはパーオキサイド等のフリーラジカル開始剤の何れかと混合することができる。該硬化および成型段階の完了に引続き、該ゴルフボールを、熱または他のエネルギーに暴露することができ、この処理は、a)該イソシアネート基がアンブロッキング処理され、かつ過剰量のアミンと反応できるものとされた後、またはb)該フリーラジカルが反応して、架橋を形成した後に、更なる架橋を可能とする。
この点に関連して、該プレポリマーは、米国特許第6,982,056号、同第6,932,720号、同第6,746,347号、同第6,166,164号、または同第6,123,628号に記載されている任意のブロックイソシアネートと混合することができる。これら米国特許を参考としてここに組入れる。当業者は、本発明のこの局面に従ってイソシアネートをブロッキングする適当な方法を承知しているであろう。例えば、上に列挙された任意のイソシアネートの遊離NCO含有率は、このイソシアネートをブロッキング剤の処理に付すことにより低下し、結果として該遊離NCO含有率は、≦5質量%、好ましくは≦3質量%、およびより好ましくは≦2質量%なる範囲にある。一態様において、該NCO基/ブロッキング剤比は、1:0.5〜1、好ましくは1:0.8〜1なる範囲にある。適当なブロッキング剤の非-限定的な例は、1,2,4-トリアゾール、2-ホルミルオキシエチルメタクリレート(FEMA)、カプロラクタム、ジエチルマロネート(DEM)、3,5-ジメチルピラゾール(DMP)、メチルエチルケトキシム(MEKO)、およびこれらの組合せを含む。脱ブロッキング処理に必要とされる温度は、約100℃〜約200℃なる範囲にある。
【0032】
他の態様において、該プレポリマーは、パーオキサイドまたは他のフリーラジカル開始剤と混合される。当業者にとって公知の任意のパーオキサイド並びに米国特許第6,303,704号に記載されているようなパーオキサイドを本発明において使用することができる。該米国特許の内容全体を参考としてここに組入れる。適当なパーオキサイドおよびフリーラジカル開始剤の非-限定的な例は、ジ-t-アミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンまたは1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-ベンゾイルパーオキシヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、およびこれらの混合物を含む。
【0033】
パーオキサイドが、異なる活性を持つ様々な形態で入手できることは周知である。この活性は、典型的には「活性酸素含有率」によって規定される。例えば、NJ州、ギブスタウンのGEOスペシャルティーケミカルズ(GEO Specialty Chemicals)社から市販品として入手できるDI-CUPTM 40Cは、40%活性である。該パーオキサイドは、典型的に、本発明の組成物100部当たり、約0.1部を越える量、好ましくは該組成物100部当たり約0.1〜約15部なる範囲の量、およびより好ましくは該組成物100部当たり約0.2〜約5部なる範囲の量で存在する。該パーオキサイドが純粋な状態で存在する場合、これは、該組成物100部当たり、好ましくは少なくとも約0.25 pphなる量、より好ましくは約0.35〜約2.5pphなる範囲の量、および最も好ましくは約0.5〜約2pphなる範囲の量で存在する。
パーオキサイドは、また上記の如く、様々な活性を持つことが周知である、濃縮物として入手することもできる。この場合において、本発明で濃厚パーオキサイドを使用する場合、当業者は、純パーオキサイドについて適した濃度が、その活性で割ることにより、濃厚パーオキサイドに対しても容易に調節されることを認識するであろう。例えば、2pphの純粋なパーオキサイドは、4pphの、50%活性を持つ濃厚なパーオキサイドに等価である(即ち、2÷0.5=4)。
【0034】
パーオキサイドに加えて、本発明で使用するのに適した、他のフリーラジカル開始剤は、過流酸塩、アゾ化合物、ベンゾフェノン、ヒドラジド、およびこれらの組合せを含み、これらを、上記ジポリマーに対する硬化系の一部として使用することが意図されている。本発明のこの局面において、該フリーラジカル開始剤の量は、該組成物100部当たり、約5pphまたはそれ以下、好ましくは約3 pphまたはそれ以下、より好ましくは約2.5pphまたはそれ以下、およびより一層好ましくは約2pphまたはそれ以下である。更に別の態様において、該フリーラジカル源の量は、該組成物100部当たり、約1pphまたはそれ以下、好ましくは約0.75pphまたはそれ以下である。
硬化剤
上で論じたプレポリマーは、幾つかの方法で硬化することができる。一態様において、該硬化工程は、該プレポリマーとアミン-末端を持つ硬化剤、ヒドロキシ-末端を持つ硬化剤、またはこれらの混合物との反応を含む。このような硬化剤の使用は、硬質セグメント、即ちイソシアネート基およびアミノおよび/またはヒドロキシル基の架橋を促進する。
【0035】
この点に関連して、本発明の該プレポリマーは、単一のアミン-末端を持つ硬化剤またはアミン-末端を持つ硬化剤の混合物を用いて硬化することができる。上に列挙したアミン-末端を持つ化合物の何れも適したものである。更に、該アミン-末端を持つ硬化剤は、他のアミン-末端を持つ硬化剤と混合することができ、該他のアミン-末端を持つ硬化剤の例は、アミン-末端を持つ炭化水素、アミン-末端を持つポリエーテル、アミン-末端を持つポリエステル、アミン-末端を持つポリカーボネート、アミン-末端を持つポリカプロラクトン、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0036】
適当なアミン-末端を持つ硬化剤は、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1-メチル-2,6-シクロヘキシルジアミン、2,2,4-および2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、4,4'-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタンおよびその誘導体、 1,4-ビス-(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン、1,2-ビス-(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサン-ビス(メチルアミン)、1,3-シクロヘキサン-ビス(メチルアミン)およびその異性体および混合物、ジエチレングリコールビス-(アミノプロピル)エーテル、2-メチルペンタメチレン-ジアミン、ジアミノシクロヘキサンおよびその異性体および混合物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、プロピレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、イミド-ビス(プロピルアミン)、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、イソホロンジアミン、4,4'-メチレンビス-(2-クロロアニリン)、3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,6-トルエンジアミン、3,5-ジエチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジエチルチオ-2,6-トルエンジアミン、4,4'-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ベンゼンおよびその誘導体、1,4-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ベンゼン、1,2-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ベンゼン、N,N'-ジアルキルアミノ-ジフェニルメタン、トリメチレングリコール-ジ-p-アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド-di-p-アミノベンゾエート、4,4'-メチレンビス-(3-クロロ-2,6-ジエチレンアニリン)、4,4'-メチレンビス-(2,6-ジエチレンアニリン)、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、N,N'-ジイソプロピル-イソホロンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、プロピレンオキシドを主成分とするトリアミン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノシクロヘキシルメタン、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。一態様において、該アミン-末端を持つ硬化剤は、4,4'-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタンである。
【0037】
該アミン-末端を持つ硬化剤は、約64またはそれ以上の分子量を持つことができる。一態様において、該アミン-硬化剤の分子量は、約2,000またはそれ以下である。更に、上記プレポリマーを製造するために、上記イソシアネート-反応性成分として使用するための、上に列挙したアミン-末端を持つ部分の何れも、該プレポリマーと反応させるための硬化剤として使用することができる。
上に列挙したものの中で、本発明で使用するのに適した該飽和状態にある、アミン-末端を持つ硬化剤は、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1-メチル-2,6-シクロヘキシルジアミン、2,2,4-および2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、4,4'-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタン、1,4-ビス-(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン、1,2-ビス-(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン、4,4'-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタンの誘導体、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサン-ビス(メチルアミン)、1,3-シクロヘキサン-ビス(メチルアミン)、ジエチレングリコールビス-(アミノプロピル)エーテル、2-メチルペンタメチレン-ジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、イミド-ビス-(プロピルアミン)、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソホロンジアミン、N,N'-ジイソプロピルイソホロンジアミンおよびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0038】
一態様において、上記プレポリマーと共に使用される該硬化剤は、3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,6-トルエンジアミン、4,4'-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジフェニルメタン、N,N'-ジイソプロピル-イソホロンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、 プロピレンオキサイドを主成分とするトリアミン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノシクロヘキシルメタン、およびこれらの混合物を含む。
アンヒンダード一級ジアミンは、イソシアネート基とアミノ基との間の迅速な反応をもたらすので、幾つかの場合において、ヒンダード二級ジアミンが、上記プレポリマーにおいて使用するのにより適している。如何なる特定の理論にも拘泥するものではないが、高レベルの立体障碍を持つアミン、例えば該アミンの窒素原子上のtert-ブチル基を持つアミンは、立体障碍のないまたは低レベルの立体障碍を持つアミンよりも低い反応速度を持つものと考えられている。例えば、4,4'-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタン[クリアリンク(Clearlink) 1000]は、イソシアネートとの組合せで使用して、本発明のポリウレアプレポリマーを製造するのに適したものであり得る。更に、ハンツマン社(Huntsman Corporation)から、ジェフリンク(Jefflink)なる商品名の下で入手できる、N,N'-ジイソプロピル-イソホロンジアミンは、該二級ジアミン硬化剤として使用することができる。
更には、架橋の改善を補助するために、またその結果として生成するポリウレアエラストマーの耐剪断性を更に改善するために、3-官能性硬化剤を使用することが可能である。一態様において、トリメチロールプロパン等のトリオールまたはN,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等のテトラオールを、上記処方物に添加することができる。
【0039】
本発明のプレポリマーは、また単一のヒドロキシ-末端を持つ硬化剤またはヒドロキシ-末端を持つ硬化剤の混合物を用いて硬化することもできる。適当なヒドロキシ-末端を持つ硬化剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、シクロヘキシルジメチロール、トリイソプロパノールアミン、N,N,N'N'-テトラ-(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ジエチレングリコールビス(アミノプロピル)エーテル、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ビス-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、1,4-シクロヘキシルジメチロール、1,3-ビス-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]シクロヘキサン、1,3-ビス-{2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}シクロヘキサン、好ましくは約250〜約3,900なる範囲の分子量を持つ、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、レゾルシノール-ジ-(β-ヒドロキシエチル)エーテルおよびその誘導体、ヒドロキノン-ジ-(β-ヒドロキシエチル)エーテルおよびその誘導体、1,3-ビス-(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3-ビス-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン、1,3-ビス-{2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}ベンゼン、N,N-ビス(β-ヒドロキシプロピル)アニリン、2-プロパノール-1,1'-フェニルアミノビス、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0040】
該ヒドロキシ-末端を持つ硬化剤は、少なくとも約50なる分子量を持つことができる。一態様において、該ヒドロキシ-末端を持つ硬化剤の分子量は、約2,000またはそれ以下である。更に別の態様において、該ヒドロキシ-末端を持つ硬化剤は、約250〜約3,900なる範囲の分子量を持つ。ここで使用する用語「分子量」とは、絶対重量平均分子量であるものと理解すべきであり、また当業者にはそのように理解されるであろう。
上記リストに含まれる、上記飽和状態にあるヒドロキシ-末端を持つ硬化剤が、光安定性組成物を作成する場合に好ましい。これらの飽和状態にあるヒドロキシ-末端を持つ硬化剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、シクロヘキシルジメチロール、トリイソプロパノールアミン、N,N,N',N'-テトラ-(2-ヒドロキシプロピル)-エチレンジアミン、ジエチレングリコールビス(アミノプロピル)エーテル、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ビス-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、1,4-シクロヘキシルジメチロール、1,3-ビス-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]シクロヘキサン、1,3-ビス-{2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}シクロヘキサン、約250〜約3,900なる範囲の分子量を持つポリテトラメチレンエーテルグリコール、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0041】
上記アミン-末端を持つおよびヒドロキシ-末端を持つ硬化剤は、ブレンドとして存在し得る。例えば、一態様において、該硬化剤ブレンドは、少なくとも1種のアミン-末端を持つ硬化剤および少なくとも1種のヒドロキシ-末端を持つ硬化剤およびフリーラジカル開始剤を含む。更に、該硬化剤ブレンドには、固化の発生を遅らせるために、凝固点降下剤を含めることができる。本発明のこの局面において使用するのに適した凝固点降下剤の例は、米国特許公開第2003/0212240号に記載されている。該米国特許公開の全内容を、参考としてここに組入れる。一態様において、該凝固点降下剤は、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジメチルアミノプロピルアミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-プロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の組成物の生成
本発明の組成物を処理するのに使用される、2つの基本的な技術がある:即ち、ワン-ショット法およびプレポリマー法である。該ワン-ショット法は、上記イソシアネート-含有成分、上記イソシアネート-反応性成分、および上記硬化剤または硬化剤ブレンドを一段階で反応させるものであり、一方該プレポリマー法は、該プレポリマーを製造するために、該イソシアネート-反応性成分とイソシアネートとの間の第一の反応、および該プレポリマーと硬化剤または硬化剤ブレンドとの間の、その後の反応を必要とする。何れの方法も、本発明の組成物を製造するのに使用できるが、該プレポリマー法が化学反応の良好な制御性、およびその結果として、生成するエラストマーに関してより均一な諸特性を与えることから、該プレポリマー法が好ましい。
特に、該硬化剤が、単一のアミン-末端を持つ硬化剤および/またはヒドロキシ-末端を持つ硬化剤であれ、アミン-末端を持つ硬化剤および/またはヒドロキシ-末端を持つ硬化剤の混合物であれ、あるいはアミン-末端を持つ硬化剤および/またはヒドロキシ-末端を持つ硬化剤とフリーラジカル開始剤とのブレンドであれ、一旦該プレポリマーとの反応に付された後には、そのイソシアネート基(NCO)は、該ヒドロキシル基またはアミノ基と反応して、該プレポリマーを架橋する。
【0043】
一態様において、該プレポリマー中のNCO含有率は、約4〜約11質量%なる範囲にある。他の態様において、該プレポリマー中のNCO含有率は、約4.5〜約10質量%なる範囲にある。更に別の態様において、該NCO含有率は、約5〜約9質量%なる範囲にある。
ゲル化時間は、好ましくは約10〜約200秒なる範囲にある。一態様において、該ゲル化時間は、約30〜約150秒なる範囲にある。もう一つの態様において、該ゲル化時間は、約40〜約130秒なる範囲にある。更に別の態様において、該ゲル化時間は、約45〜約120秒なる範囲にある。当業者は、該ゲル化時間が短いほど、NCO含有率が高いことに気付くはずである。例えば、約9%なるNCO含有率は、典型的により早い反応速度をもたらし、結果として約45秒なるゲル化時間を与える。
これらのNCO含有率およびゲル化時間において、該材料の硬さ(ボタンについて測定)は、好ましくは約45ショアD〜約85ショアDなる範囲内にある。一態様において、該ボタンの材料硬さは、約50ショアD〜約80ショアDなる範囲内にある。もう一つの態様において、該材料の硬さは、約55ショアDまたはそれ以上である。更に別の態様において、該材料の硬さは、約60ショアDまたはそれ以上である。
【0044】
ブレンド
本発明の組成物は、また他のポリマーと混合することもできる。特に、本発明の組成物は、好ましくは約1〜100%なる範囲の量の架橋されたポリウレタン/ポリウレアを含む。一態様において、該組成物は、約10〜約90%なる範囲の量の架橋されたポリウレタン/ポリウレア、好ましくは約10〜約75%なる範囲の量の架橋されたポリウレタン/ポリウレア、および約90〜約10%なる範囲の量、より好ましくは約90〜約25%なる範囲の量の第二のポリマー成分および/または以下に記載するような他の材料を含む。例えば、本発明によるブレンドは、約10〜約40%なる範囲の量の架橋されたポリウレタン/ポリウレア、および約60〜約90%なる範囲の量の他の熱可塑性ポリマー、例えば従来のイオノマーを含むことができる。もう一つの態様において、本発明によるブレンドは、約40〜約80%なる範囲の量の架橋されたポリウレタン/ポリウレア、および約20〜約60%なる範囲の量のもう一つの熱可塑性ポリマーを含むことができる。ここで特に述べない限り、全ての%は、対象とするゴルフボールの層の全組成物を基準とする、質量%で与えられている。
【0045】
例えば、本発明の組成物は、イオノマー型コポリマーまたはターポリマー、イオノマー型プリカーサ、熱可塑性樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、熱可塑性エラストマー、ポリブタジエンゴム、バラタ、グラフト化されたまたはグラフト化されていないメタロセン触媒を用いて得たポリマー、シングル-サイトポリマー、高結晶性酸性ポリマー、カチオン性ポリマー、カチオン性およびアニオン性ウレタンイオノマーおよびウレタンエポキシ樹脂、ポリウレタンイオノマー、ポリウレアイオノマー、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリアクリリン(polyacrylin)、シロキサン、およびこれらの混合物と共にブレンドとして存在し得る。
【0046】
適当なウレタンイオノマーの例は、米国特許第5,692,974号に記載されている。この特許の内容全体を、参考としてここに組入れる。適当なポリウレタンのその他の例は、米国特許第5,334,673号に記載されている。該特許の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。上に列挙したポリウレアイオノマーを製造するために使用される適当なポリウレアの例は、米国特許第5,484,870号に記載されている。特に、米国特許第5,484,870号に記載されているポリウレアは、ポリイソシアネートとポリアミン硬化剤とを反応させて、ポリウレアを生成することにより調製され、これは、ポリウレアプレポリマーと硬化剤とから製造される本発明のポリウレアとは別個のものである。エポキシ基-含有硬化剤を用いて硬化された適当なポリウレタンの例は、米国特許第5,908,358号に記載されている。この米国特許の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。
当業者は、これらのポリマー材料と有機化学的に変性された本発明のシリケートとをブレンドして、ゴルフボール層で使用するための組成物を製造する方法につき十分に承知しているはずである。
【0047】
添加剤
本発明の組成物は、様々な添加剤を含むことができる。例えば、本発明の組成物は、少なくとも1種の物理的または化学的な発泡剤または起泡剤を添加することにより発泡させることができる。発泡性ポリマーの使用は、ゴルフボールの角慣性モーメントおよび結果としてそのスピン速度および性能を調節するために、ゴルフボールデザイナーが、該ボールの密度または質量分布を調節することを可能とする。発泡性材料は、またポリマー材料の使用量を低減することから、可能なコストの節減をももたらす。
有用な発泡剤または起泡剤は、有機発泡剤、例えばアゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン、N,NジメチルN,Nジニトロソテレフタルアミド、N,Nジニトロソペンタメチレンテトラミン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼン-1,3-ジスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3-3、ジスルホニルヒドラジド、4,4'オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、バリウムアゾジカルボキシレート、ブチルアミンニトリル、ニトロウレア、トリヒドラジノトリアジン、フェニルメチルウランタン(uranthan)、pスルホンヒドラジド、パーオキサイド;および無機発泡剤、例えば重炭酸アンモニウムおよび重炭酸ナトリウムを含むが、これらに限定されない。空気、窒素、二酸化炭素等のガスを、該組成物の射出成型工程中に、これに吹き込むこともできる。
【0048】
付随的に、本発明の発泡性組成物は、該成型工程中またはその前の何れかにおいて、微小球と該組成物とを混合することにより製造することもできる。ポリマー、セラミックス、金属、およびガラス製微小球を、本発明において使用し、また該微小球は、中実または中空であり得、更に充填されていても、または充填されていなくてもよい。特に、約1,000μmまでの径を持つ微小球が有用である。更に、米国特許第6,386,992号(これを、参考としてここに組入れる)において記載されているように、発泡のための液体窒素の使用は、本発明において使用するための、著しく均一な発泡組成物の製造を可能とする。
フィラーを、本発明の組成物に添加して、そのレオロジーおよび混合特性、その比重(即ち、密度調節フィラー)、モジュラス、引裂強さ等に影響を与え、また強化等を行うことも可能である。該フィラーは、一般に無機フィラーであり、また適当なフィラーは、多数の金属、金属酸化物および塩、例えば酸化亜鉛および酸化スズ、並びに硫酸バリウム、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、クレー、タングステン、タングステンカーバイド、一群のシリカ、リグラインド(典型的には約30メッシュの粒径にまで粉砕された、リサイクルコア材料)、高ムーニー粘度ゴムリグラインド、およびこれらの混合物である。
【0049】
例えば、本発明の組成物は、当業者にとって公知の、広範囲に及ぶ密度-調節フィラー、例えばセラミックス、ガラス球(中実または中空の、および充填されたまたは充填されていないもの)、および繊維、無機粒子、および金属粒子、例えば金属フレーク、金属粉末、酸化物、およびこれらの誘導体等と混合することにより強化することができる。このようなフィラーの選択は、以下において更に一層詳しく説明されるように、所望のゴルフボールの型、即ちワン-ピース、ツー-ピース、多成分、または糸巻きボール等に依存する。一般に、該フィラーは、4 g/ccを越える密度を持つ無機物質であり、また問題とする層に含まれるポリマー成分の全質量を基準として、約5〜約65質量%なる範囲の量で存在するであろう。有用なフィラーの例は、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、およびシリカ、並びに他の公知の、これらの対応する塩および酸化物を含む。
本発明の組成物が、該ゴルフボールのコア層において使用される場合、フィラーは、また該コアの質量を変更して、特別仕様のボールを製造するために使用することも可能であり、例えば低質量のボールは、スイング速度の低い競技者にとって好ましいものである。
【0050】
従来、他のゴルフボール組成物に含められた追加の材料を、本発明の組成物に含めることもできる。例えば、酸化防止剤、安定剤、柔軟剤、内部および外部可塑剤を含む可塑剤、強化材料、および相溶化剤を、本発明の任意の組成物に添加することもできる。当業者は、これら添加剤の使用目的およびこれら目的を達成するために使用すべきその量を承知している。
ゴルフボールの構成
上で簡単に論じた如く、本発明の組成物は、ワン-ピース、ツー-ピース、スリー-ピース、およびフォー-ピース設計のゴルフボールを含むがこれらに限定されないあらゆる型のボール構成を持つ外側ゴルフボール成分、二重コア、二重カバー、中間層、多層コア、および/または多層カバーにおいて、該ボールに望まれる性能の型に応じて、使用することができる。ここで使用する用語「多層」とは、少なくとも2つの層を意味する。例えば、該コアは、ワン-ピースコアまたは多層コア、即ち最も内側の部材を、その上に設けられた追加のコア層または追加の複数のコア層を持つコアであり得る。ここで使用する用語「コア」および「中心」とは、一般的に、該ボールの最も内側の部材を表すために、互換性あるものとして使用される。しかし、幾つかの態様において、該用語「中心」とは、多数のコア層、即ち中心および外側コア層が存在する場合に使用される。
【0051】
本発明のゴルフボールが、1層以上を含むこともできる、中間層を含む場合、該中間層は、単層または多層カバー、単一または数個構成のコア、単層カバーとコアとの組合せ、または多層カバーと多層コアとの組合せと共に組込むことができる。該中間層は、また、ゴルフボールの内側カバー層または外側カバー層、あるいは該内側カバー層と該外側カバー層との間に配置された任意の他の層と呼ぶこともできる。
図1を参照すると、本発明のゴルフボール2は、中心4および該中心4を包囲するカバー6を含むことができる。寸法および材料については、以下において更に詳細に説明するが、本発明のゴルフボールは、大きなコア、例えば約3.94cm(約1.55インチ)〜約4.06cm(約1.60インチ)なる範囲の寸法を持つ大きなコア、および本発明の組成物から作成された、比較的柔軟な薄いカバーを含むことができる。
【0052】
図2を参照すると、本発明のゴルフボール8は、中心10、カバー14、および該カバーと該中心との間に配置された、少なくとも一つの中間層12を含むことができる。一態様において、該カバー14は、本発明の組成物から作られている。図1および2における該カバーおよび中心層各々は、1層以上を含むことができる。即ち、該ゴルフボールは、従来のスリー-ピース糸巻きボール、ツー-ピースボール、多層コアと1またはそれ以上の中間層とを含むボール等であり得る。
また、図3は、大きなコア18、カバー22、および内側カバー層20を含む、本発明のゴルフボール16を示すものである。一態様において、該コア18は、中心および外側コア層を含む。該内側カバー層20および/またはカバー22は、本発明の組成物から作ることができる。一態様において、該カバー22は、ポリウレタンまたはポリウレア材料から作られる。
【0053】
もう一つの態様においては、図4に示したように、本発明のゴルフボール24は、中心26を持つ大きなコアと、内側カバー層30および外側カバー層32を持つ二重カバーの下方に配置された中間層28とを含むことができる。該内側カバー層30および/または外側カバー層32は、本発明の組成物から作ることができる。更に、ここで詳細に説明した上記図の何れも、随意の糸巻き層が、該ゴルフボールの該中心と該コアとの間に設けられている態様を含むことができる。
本発明で使用することのできるボール構成の適当な型の、他の非-限定的な例は、米国特許第6,056,842号、同第5,688,191号、同第5,713,801号、同第5,803,831号、同第5,885,172号、同第5,919,100号、同第5,965,669号、同第5,981,654号、同第5,981,658号、および同第6,149,535号並びに米国特許出願公開第US2001/0009310 A1号、同第US2002/0025862号、および同第US2002/0028885号に記載されているものを含む。これら特許および公開特許出願の全開示事項を、参考としてここに組入れる。
【0054】
ゴルフボールコア層
本発明に従って製造したゴルフボールのコアは、中実、半-中実、中空、流体-充填または粉末-充填、ワン-ピースまたは多-部材コアであり得る。ここで使用する用語「流体」とは、液体、ペースト、ゲル、ガスまたはこれらの任意の組合せを含み、該用語「流体-充填」とは、中空中心またはコアを包含し、また「半-中実」とは、ペースト、ゲル等を意味する。
該コアは、約3.81cm(約1.5インチ)〜約4.11cm(約1.62インチ)なる範囲の径を持つことができ、また該カバー層の厚みは、約0.762mm(約0.03インチ)〜約1.52mm(約0.06インチ)なる範囲の値であり得る。該コアの圧縮荷重は、約30〜約120Attiなる範囲の値であることが好ましく、また該ボールの全体としての圧縮荷重は、約50〜約110 Attiなる範囲の値である。
【0055】
当業者には公知の任意のコア材料が、本発明のゴルフボールにおいて使用するのに適している。適当なコア材料は、熱硬化性材料、例えばゴム、スチレンブタジエン、ポリブタジエン、イソプレン、ポリイソプレン、trans-イソプレン、並びに熱可塑性樹脂、例えばイオノマー樹脂、ポリアミドまたはポリエステル、および熱可塑性かつ熱硬化性ポリウレタンエラストマーを含む。例えば、未硬化状態において、典型的に約20を越える、好ましくは約30を越える、およびより好ましくは約40を越えるムーニー粘度(ASTM D1646-99に従って測定)を持つブタジエンゴムを、本発明に従って製造したゴルフボールの1またはそれ以上のコア層において使用することができる。更に、本発明の組成物は、該コアに配合することができる。
【0056】
しばしばフリーラジカル開始剤とも呼ばれるフリーラジカル源を、特にポリマー成分が熱硬化性材料を含んでいる場合に、本発明によるゴルフボールの該コアまたは1またはそれ以上の層において、場合により使用することができる。該フリーラジカル源は、好ましくはパーオキサイドであり、より好ましくは有機パーオキサイドである。該パーオキサイドは、典型的には上記全ポリマー成分100部に対して、約0.1部を越える量、好ましくは該全ポリマー成分100部に対して、約0.1〜15部なる範囲の量、およびより好ましくは該全ポリマー成分100部に対して、約0.2〜5部なる範囲の量で存在する。当業者は、幾つかの成分の存在により、ここに記載した量を越える大量でのフリーラジカル源が必要とされる可能性のあることを理解すべきである。あるいはまた、更には付随的に、該フリーラジカル源は、電子ビーム、UVまたはγ-輻射線、x-線、またはフリーラジカルを発生し得る任意の他の高エネルギー輻射減の一種またはそれ以上であってもよい。更に、フリーラジカル開始剤としてパーオキサイドを使用した場合には、熱の使用が、しばしばフリーラジカルの発生開始を容易にすることをも理解すべきである。
【0057】
ゴルフボール中間層
本発明のゴルフボールが、中間層、例えば内側カバー層または外側コア層を含む場合、即ちゴルフボールの内側コアと外側カバーとの間に設けられた任意の層(1または複数)を含む場合、この層は、本発明の組成物で作ることができる。例えば、約0.381mm(約0.015インチ)〜約1.52mm(約0.06インチ)なる範囲の厚みを持つ中間層または内側カバー層を、コアの回りに配置することができる。本発明のこの局面において、約3.81cm (約1.5インチ)〜約4.04cm(約1.59インチ)なる範囲の径を持つ該コアは、本発明の組成物で作成でき、あるいは別法では、公知のゴム組成物から製造できる。該内側ボールは、注型性の熱硬化性材料または射出成形性熱可塑性材料または以下において論じる任意の他のカバー材料により覆うことができる。本発明のこの局面において、該カバーは、約0.508mm(約0.02インチ)〜約1.14mm(約0.045インチ)なる範囲、好ましくは約0.635 mm(約0.025インチ)〜約1.016mm(約0.04インチ)なる範囲の厚みを持つことができる。コア圧縮荷重は、約30〜約110Attiなる範囲、好ましくは約50〜約100Attiなる範囲内にあり、またゴルフボール全体としての圧縮荷重は、好ましくは約50〜約100Attiなる範囲にある。
【0058】
該中間層を本発明の組成物で作成しない場合、該中間層は、多数の熱可塑性および熱硬化性材料から作ることができる。例えば、該中間層は、少なくとも部分的に、1種またはそれ以上のホモポリマーまたはコポリマー材料、例えばイオノマー、主としてまたは完全に非-イオノマー性の熱可塑性材料、ビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリウレア、例えば米国特許第5,484,870号に記載されているもの、ポリアミド、アクリル系樹脂およびそのブレンド、オレフィン系熱可塑性ゴム、スチレンとブタジエンとのブロックコポリマー、イソプレンまたはエチレン-ブチレンゴム、コポリ(エーテルアミド)、例えばPA州、フィラデルフィアのアトフィナケミカル社(Atofina Chemicals, Inc.)により市販されているペバックス(PEBAX)、ポリフェニレンオキシド樹脂またはそのブレンド、および熱可塑性ポリエステルから作ることができる。
例えば、該中間層は、低酸性イオノマー、例えば米国特許第6,506,130号および同第6,503,156号に記載されているもの、高酸性イオノマー、高度に中和されたポリマー、例えば米国特許出願公開第2001/0018375号および同第2001/0019971号に記載されているもの、またはこれらの混合物で作成することができる。該中間層は、また米国特許第5,688,191号に記載されているような組成物で製造し得る。これら特許および特許出願公開の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。
【0059】
該中間層は、また張力を掛けた糸材料から作成した糸巻き層を含むことができる。該糸は、単層であり得、あるいは2またはそれ以上の層を含むこともできる。適当な糸材料は、繊維、ガラス、炭素、ポリエーテルウレア、ポリエーテルブロックコポリマー、ポリエステルウレア、ポリエステルブロックコポリマー、シンジオタクチック-またはアイソタクチック-ポリ(プロピレン)、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ(オキシメチレン)、ポリケトン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(アクリロニトリル)、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ドデカンジカルボン酸、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン/プロピレン/ジエンコポリマー、他の合成ゴム、またはブロック、グラフト、ランダム、交互、ブラシ型、マルチ-アームスター型、分岐型、または樹枝状コポリマー、またはこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。当業者は、本発明で使用するための糸材料の製法については承知しているはずである。
【0060】
ゴルフボールカバー層
該カバーは、該ボールとクラブとの界面を与える。該カバーに対して望ましい諸特性は、特に良好な成形性、高い耐摩耗性、高い耐衝撃性、高い引裂強さ、高いレジリエンス、および良好な離型性である。該カバー層は、少なくとも部分的に本発明の組成物から作成し得る。例えば、本発明は、ポリブタジエン製の大きなコアおよび本発明の組成物から作られた薄いカバーを含むゴルフボールを意図するものである。
しかし、本発明の組成物を、コアまたは中間層/内側カバー層に配合する場合、該カバーは、一種またはそれ以上の、該中間層に関して上の章で論じた如きホモポリマーまたはコポリマー材料から作ることができる。
層の形成
本発明のゴルフボールは、様々な適用技術、例えば圧縮成型法、フリップ成形法、射出成型法、格納式ピン射出成型法、反応式射出成型(RIM)法、液体射出成型法(LIM)、注型法、真空成型法、粉末塗布法、フローコーティング法、スピンコーティング法、浸漬法、噴霧法等を用いて製造することができる。従来においては、圧縮成型法および射出成型法が、熱可塑性材料に対して適用され、一方でRIM法、液体射出成型法、および注型法が、熱硬化性材料に対して利用されている。これらの、およびその他の製造方法は、米国特許第6,207,784号および同第5,484,870号に記載されている。これら特許の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。
【0061】
本発明のゴルフボールのコアは、当業者にとっては公知の任意の適当な方法で製造することができる。該コアを熱硬化性材料で作成する場合、圧縮成型法が、該コアを製造するのに特に適した方法である。他方、熱可塑性コア態様において、該コアは、射出成形することができる。更に、米国特許第6,180,040号および同第6,180,722号は、二重コアを持つゴルフボールの製法を開示している。これら特許の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。
該中間層および/またはカバー層は、当業者にとって公知の任意の適当な方法を用いて製造することも可能である。例えば、中間層は、吹込成形法で製造し、また射出成型法、圧縮成型法、注型法、真空成型法、粉末塗布法等によって形成される、ディンプルを持つカバー層で覆うことができる。
本発明の組成物から作成される該1または複数の層は、後-成形処理に付される。特に、一態様において、本発明の組成物から作成される該1または複数の層は、1種またはそれ以上のイソシアネートで処理して、該外側カバー層の耐擦り傷性を改善することができる。該イソシアネートは、更に該カバー材料を架橋して、該カバーの他の望ましい特徴、例えば柔軟性および感触を維持しつつ、付加的な耐擦り傷性をもたらす。該イソシアネートは、当分野において公知の任意の適当な方法により該外側カバー層に添加することができるが、該ゴルフボールを該イソシアネート中にまたは該イソシアネートで、浸漬、塗付け、ソーキング、ブラシ塗布、または噴霧することが好ましい。
【0062】
該カバー層に添加して、その耐擦り傷性を改善する該イソシアネートは、当分野において公知の任意の脂肪族または芳香族イソシアネートまたはジイソシアネートもしくはこれらのブレンドであり得る。適当なイソシアネートの例は、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-トルエンジイソシアネート(TDI)、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)、メチレンビス-(4-シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(NDI)、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニルジイソシアネート(TODI)、1,4-ジイソシアネートベンゼン(PPDI)、フェニレン-1,4-ジイソシアネート、および2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)を含むが、これらに限定されない。使用可能な追加のイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、ジフェニルエーテル-4,4'-ジイソシアネート、p,p'-ジフェニルジイソシアネート、リジンジイソシアネート(LDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(PMDI)、およびm-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)を含むが、これらに限定されない。一態様において、該ジイソシアネートはMDIである。
【0063】
もう一つの局面において、成型後に、本発明の組成物から作成される該1または複数の層は、電子線、中性子線、プロトンビーム、γ-線、x-線、ヘリウム核等で照射することができる。ここで使用する用語「照射」とは、1メガラドよりも著しく低い線量をもたらすであろう、単なる日光に対する暴露でなく寧ろ、電子ビーム等を用いた短期間の照射を意味する。この照射は、該カバー層の融点または変形温度以下の温度にて行われ、また便宜的には、周囲温度にて行うことが好ましく、該周囲温度とは、約15.6℃〜約29.4℃(約60〜約85゜F)なる範囲内の温度として定義される。該輻射線量は、該カバー材料を共有結合によって架橋するのに十分なものである。米国特許第6,274,679号、同第6,018,003号および同第6,274,679号は、ゴルフボールの照射方法を記載している。これら特許を参考としてここに組入れる。該カバー層は、該カバー材料を共有結合により架橋する目的で、約1メガラドまたはそれ以上の線量にて照射処理に付される。特に良好な結果は、該線量が2-12メガラドなる範囲にある場合に得られる。一態様においては、4-8メガラドなる範囲の線量が使用される。
【0064】
上記プレポリマーを、予備硬化された添加剤、例えばブロックイソシアネートおよび/またはフリーラジカル開始剤と混合する場合、金型の初期温度は、該フリーラジカルの発生を開始し、または該イソシアネートをアンブロッキングするのに要する温度以下である。例えば、該プレポリマーおよび硬化剤ブレンドを混合し、約37.8℃〜約121℃(約100゜F〜約250゜F)なる範囲の温度を持つ金型内に流込む。一態様において、該金型の温度は、約49℃〜約93℃(約120゜F〜約200゜F)なる範囲にある。もう一つの態様において、該金型の温度は、約60℃〜約82℃(約140゜F〜約180゜F)なる範囲にある。更に別の態様において、該金型の温度は、約66℃〜約77℃(約150゜F〜約170゜F)なる範囲にある。
所定期間の経過後、該金型の温度を高めて、該イソシアネートをアンブロッキングし、および/または該フリーラジカルの発生を開始する。一態様において、該温度を高める前の期間は、約1分〜約30分なる範囲にある。もう一つの態様において、該温度を高める前の期間は、約5分〜約20分なる範囲、好ましくは約8分〜約15分なる範囲にある。該温度を高めた後、約5分〜約25分なる範囲、好ましくは約8分〜約20分なる範囲およびより好ましくは約12分〜約18分なる範囲の付随的な期間に渡り、該材料を硬化させることができる。
【0065】
該高い温度とは、該イソシアネートをアンブロッキングし、および/または該フリーラジカルの発生を開始する任意の温度であり得る。例えば、該高い温度は、約93℃(約200゜F)を越え、好ましくは約100℃〜約204℃(約212゜F〜約400゜F)なる範囲にある。一態様において、該高い温度は、約121℃〜約191℃(約250゜F〜約375゜F)なる範囲であり得る。もう一つの態様において、該高い温度は、約135℃〜約177℃(約275゜F〜約350゜F)なる範囲であり得る。
上記3つの何れかの方法において、得られる成分は、(a) 照射、(b) 追加のイソシアネートによる処理、(c) ブロックイソシアネートをアンブロッキングし、または上記フリーラジカルを活性化する以前における架橋密度、または該(a)、(b)および(c)の任意の組合せ以前における架橋密度よりも大きな架橋密度を持つ。一態様において、該最終生成物の架橋密度は、上記照射前の架橋密度よりも少なくとも約10%高い。もう一つの態様において、該最終生成物の架橋密度は、該照射前の架橋密度よりも少なくとも約15%高い。更に別の態様において、該最終生成物の架橋密度は、該照射前の架橋密度よりも少なくとも約20%高い。
【0066】
この点に関連して、架橋密度は、1立方メートル当たりの有効な網状構造にある鎖のモル数として定義され、また該網状構造の膨潤パラメータから算出でき、またV. Sekkar, S. Gopalakrishnan, & K. Ambika Deviの文献:ヒドロキル末端を持つポリブタジエンを基本とするアロフォネート-ウレタンの網状構造に関する研究:網状構造の特性に及ぼすイソシアネートの型の効果(Studies on Allophonate-Urethane Networks Based on Hydroxyl Terminated Polybutadiene: Effect of Isocyanate Type on the Network Characteristics), European Polymer Journal, 2003, 39, pp.1281-1290に記載されている手順に従って測定し得る。例えば、テスト検体を、周囲条件下で、トルエン中に48時間入れておき、次いで該溶媒から該検体を取出し、該検体表面から該溶媒を穏やかに拭い取った後、該検体を秤量することができる。引続き、該膨潤した検体を真空炉内に、1,000℃にて2時間維持することにより、該検体により吸収された該溶媒を追出し、該解膨潤(乾燥)された検体の質量を測定することができる。該膨潤した検体および解膨潤された検体の質量、および該ポリマーおよび該溶媒の密度から、該膨潤した検体における該ポリマーの体積分率を計算することができる。該ポリマー網状構造の架橋密度は、フローリー-レナー(Flory-Rhener)の式を用いて得ることができる。
一態様において、本発明の組成物は、約10〜約300モル/m3(m3当たりの有効な網状構造にある鎖のモル数)なる範囲、および好ましくは約15〜約250モル/m3なる範囲の架橋密度を持つ。如何なる特定の理論にも拘泥するものではないが、架橋密度における増加は、少なくとも部分的には、上記イソシアネート-含有成分と上記イソシアネート-反応性成分との間の反応中に生成されたアロファネート結合によるものであると考えることができる。
【0067】
要するに、本発明の組成物は、上記の高い架橋密度の結果として、多くの有利な物理的特性並びに特徴を持つ。例えば、本発明の組成物の曲げ弾性率(ASTM D-790に従って測定)は、一般的に約68.9MPa〜約1034MPa(約10,000〜約150,000psi)なる範囲、好ましくは約103.4MPa〜約861.3MPa(約15,000〜約125,000psi)なる範囲、およびより好ましくは約124.0MPa〜約620.1MPa(約18,000〜約90,000psi)なる範囲内にある。更に、該組成物は、約100〜950%なる範囲、好ましくは125〜750%なる範囲、およびより好ましくは約200〜約650%なる範囲の破断点伸び(ASTM D-638に従って測定)、約6.89MPa〜約41.3MPa(約1,000〜約6,000psi)なる範囲、好ましくは約13.8MPa〜約34.5MPa(約2,000〜約5,000psi)なる範囲、およびより好ましくは約20.7MPa〜約31.0MPa(約3,000〜約4,500psi)なる範囲内の破断点引張強さ(ASTM D-638に従って測定)、および少なくとも10、好ましくは15〜破断点直前まで、およびより好ましくは20〜破断点直前までの範囲の、23℃において測定されたノッチ付きアイゾッド衝撃強さ(ASTM D-256に従って測定)を持つ。更に、該ゴルフボールの該カバー材料が、十分な耐熱性を持つことが重要であるので、例えば該カバー材料が軟化または溶融する場合には、該ボール表面におけるディンプルは、形状変化を起こし、また該ボールの空力的な諸特性に有害な影響を及ぼすので、本発明の組成物のビカー軟化点(ASTM D-1525-70に従って測定)は、好ましくは約60〜約180℃なる範囲、およびより好ましくは約75〜約150℃なる範囲内にある。更に、該組成物の密度(ASTM D-792に従って測定)は、約1.01〜約1.60なる範囲、好ましくは約1.02〜約1.50なる範囲、およびより好ましくは約1.03〜約1.30なる範囲にある。
【0068】
様々なディンプルパターンおよびプロフィールの使用は、ゴルフボールの空力的諸特性を改良するための比較的効果的な方法である。そこで、該ディンプルを、該ボールの表面上に配列する方法は、任意の利用可能な方法であり得る。例えば、該ボールは、米国特許第4,560,168号に記載されているような二十面体を基本とするパターン、または米国特許第4,960,281号に記載されているような八面体を基本とするパターンを持つことができる。更に、本発明に従って製造することにより得られた該ゴルフボールは、約60%を越える、好ましくは約65%を越える、およびより好ましくは約70%を越えるディンプル被覆率を持つであろう。
ゴルフボールの後-処理
本発明のゴルフボールは、更なる利益を得るために、彩色を施し、被覆し、または表面処理に付すことができる。例えば、ゴルフボールは、ウレタン、ウレタンハイブリッド、ウレア、ウレアハイブリッド、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル系樹脂、またはこれらの組合せで被覆して、極めて平滑な、非-粘着性の表面を得ることができる。所望により、2層以上の被覆層を使用することができる。該被覆層は、当業者には公知の任意の適当な方法で適用することができる。一態様において、該被覆層は、例えば米国特許第5,849,168号に記載されているような金型内被覆工程により、該ゴルフボールカバーに適用される。この米国特許の全内容を参考としてここに組入れる。
【0069】
該ゴルフボールの層の何れかも、吹付け処理、機械的研磨処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等、およびこれらの組合せを含む、公知の方法により表面処理することができる。事実、低表面エネルギー、または表面張力は、ポリシロキサンの主な特徴であるので、本発明の組成物で作成した層は、米国特許出願公開第2003/0199337号に従って表面処理することができる。この米国特許出願の全内容を参考としてここに組入れる。
ゴルフボールの諸特性
コア径、中間層およびカバー層の厚み、硬さ、および圧縮荷重等の特性は、本発明のゴルフボールのスピン、初期速度、および感触等の競技特性に影響することが分かっている。
【0070】
成分の寸法
ゴルフボール成分の大きさ、即ち厚みおよび径は、その所望の特性に依存して変えることができる。本発明の目的にとって、任意の層の厚みを使用することができる。例えば、本発明は、任意のサイズを持つゴルフボールに関連するが、該ゴルフボールは、好ましくはサイズおよび質量に関するUSGAの基準を満たす。USGAの「ゴルフルール」は、競技用ゴルフボールのサイズを、その径が約4.27cm(1.680インチ)を越えるものと限定しているが、レジャー用ゴルフ競技については、任意サイズのゴルフボールを使用することができる。該ゴルフボールの好ましい径は、約43mm(約1.680インチ)〜約46mm(約1.800インチ)なる範囲にある。より好ましいゴルフボールの径は、約4.27cm(1.680インチ) 〜約4.47cm(1.760インチ)なる範囲にある。約43mm〜約44mm(約1.680〜約1.740)なる範囲の径が、最も好ましいが、約4.32cm〜約4.95cm(1.700〜約1.950)なる範囲内にある径を使用することも可能である。
好ましくは、該コアおよび全ての中間層の全体としての径は、該完成されたゴルフボールの全径の、約80%〜約98%なる範囲にある。該コアは、約2.29mm〜約4.19cm(約0.09〜約1.65インチ)なる範囲の径を持つことができる。一態様において、本発明のゴルフボールのコアの径は、約3.05cm(1.2インチ)〜約4.14cm(1.630インチ)なる範囲にある。例えば、該コアが、本発明のツー-ピースボールの一部である場合、該コアは、約3.81cm(1.5インチ)〜約4.11cm(1.62インチ)なる範囲の径を持つことができる。もう一つの態様において、該コアの径は、約3.3cm(1.3インチ) 〜約4.1cm(1.6インチ)なる範囲内にあり、好ましくは約3.53cm(1.39インチ)〜約4.1cm(1.6インチ)なる範囲内にあり、およびより好ましくは約3.8cm(1.5インチ)〜約4.1cm(1.6インチ)なる範囲内にある。更に別の態様において、該コアは、約3.94cm(1.55インチ)〜約4.19cm (1.65インチ)なる範囲、好ましくは約3.94cm(1.55インチ)〜約4.06cm(1.60インチ)なる範囲内の径を持つ。一態様において、該コアの径は、約4.04cm(1.59インチ)またはそれ以上である。他の態様において、該コアの径は、約4.17cm(1.64インチ)またはそれ以下である。
【0071】
該コアが、内側コア層および外側コア層を含む場合、該内側コア層は、約1.27cm(約0.5インチ)またはそれ以上の厚みを持つことが好ましく、また該外側コア層は、約2.54mm(約0.1インチ)またはそれ以上の厚みを持つことが好ましい。例えば、中心が、本発明の多層ボールの一部を構成する場合において、該中心は、約1.27cm(約0.5インチ)〜約3.30cm(約1.30インチ)なる範囲の径を持つことができ、また該外側コア層は、約3.05mm(約0.12インチ)〜約1.27cm(約0.5インチ)なる範囲の径を持つことができる。一態様において、該内側コア層は、約2.29mm(約0.09インチ)〜約3.05cm(約1.2インと)なる範囲の径を持ち、また該外側コア層は、約2.54mm(約0.1インチ)〜約2.03cm(約0.8インチ)なる範囲の厚みを持つ。更に別の態様において、該内側コア層は、約2.29mm(約0.095インチ)〜約3.05cm(約1.1インチ)なる範囲の径を持ち、また該外側コア層は、約5.1mm(約0.20インチ)〜約0.76cm(約0.03インチ)なる範囲の厚みを持つ。
【0072】
該カバーは、典型的には、十分な強度、良好な性能特性、および耐久性を与える厚みを持つ。一態様において、該カバーの厚みは、約0.51mm〜約3.05mm(約0.02〜約0.12インチ)なる範囲、好ましくは約2.54mm(約0.1インチ)またはそれ以下である。例えば、該カバーが、本発明のツー-ピースボールの一部を構成する場合、該カバーは、約0.76mm〜約2.29mm(約0.03〜約0.09インチ)なる範囲の厚みを持つことができる。もう一つの態様において、該カバーの厚みは、約1.27mm(約0.05インチ)またはそれ以下、好ましくは約0.51mm〜約1.27mm(約0.02〜約0.05インチ)なる範囲、およびより好ましくは約0.51mm〜約1.14mm(約0.02〜約0.045インチ)なる範囲内にある。
【0073】
ゴルフボールの中間層に関する厚みの範囲は、中間層、即ち外側コア層、内側カバー層、または防水/防湿層としての層を用いる場合の、多大な可能性の故に広いものである。本発明のゴルフボールにおいて使用する場合、該中間層、または内側カバー層は、約7.62mm(約0.3インチ)またはそれ以下の厚みを持つことができる。一態様において、該中間層の厚みは、約0.051mm〜約2.54mm(約0.002〜約0.1インチ)なる範囲、好ましくは約0.254mm(約0.01インチ)またはそれ以上である。例えば、本発明のスリー-ピースボールまたは多層ボールの一部として使用する場合、該中間層および/または内側カバー層は、約0.381mm〜約1.52mm(約0.015〜約0.06インチ)なる範囲の厚みを持つことができる。もう一つの態様において、該中間層の厚みは、約1.27mm(約0.05インチ)またはそれ以下、より好ましくは約0.254mm〜約1.14mm(約0.01〜約0.045インチ)なる範囲内にある。
【0074】
硬さ
本発明の組成物は、ゴルフボールの任意の層において使用できるので、該ゴルフボールの構成、その物理的特性、および得られる性能は、本発明の組成物を含有する、該ボールの層に依存して大幅に変動する可能性がある。
本発明のゴルフボールに含まれる該コアは、特定のゴルフボールの構成に依存して変動する厚みを持つことができる。一態様において、該コアの硬さは、成型された球について測定した値として、少なくとも約15ショアA、好ましくは少なくとも約30ショアAである。もう一つの態様において、該コアは、約50ショアA〜約90ショアDなる範囲の硬さを持つ。更に別の態様において、該コアの硬さは、約80ショアDまたはそれ以下である。好ましくは、該コアは、約30〜約65ショアDなる範囲の硬さを持ち、またより好ましくは該コアは、約35〜約60ショアDなる範囲の硬さを持つ。
【0075】
本発明のゴルフボールの中間層の硬さは、また該ボールの特定の構成に依存して、変えることができる。一態様において、該中間層の硬さは、約30ショアDまたはそれ以上である。もう一つの態様において、該中間層の硬さは、約90ショアDまたはそれ以下、好ましくは約80ショアDまたはそれ以下、およびより好ましくは約70ショアDまたはそれ以下である。例えば、中間層が本発明の組成物で作成されている場合、該中間層の硬さは、約65ショアDまたはそれ以下、好ましくは約35ショアD〜約60ショアDなる範囲内の値であり得る。更に別の態様において、該中間層の硬さは、約50ショアDまたはそれ以上、好ましくは約55ショアDまたはそれ以上である。一態様において、該中間層の硬さは、約55ショアD〜約65ショアDなる範囲内にある。該中間層の硬さは、また約65ショアDまたはそれ以上であってもよい。例えば、本発明のゴルフボールは、約60ショアD〜約75ショアDなる範囲内の硬さを持つ内側カバーを含むことができる。
該コアおよび中間層と同様に、該カバーの硬さは、該ゴルフボールの構成および所望の諸特性に依存して変えることができる。該カバーの硬さ対該内側ボールの硬さの比は、ボールの空力特性、および特にボールのスピン特性を調節するのに使用される主な変数である。一般に、該内側ボールが硬いほど、ドライバーによるボールのスピンは大きくなり、しかも該カバーが柔軟であるほど、ドライバーによるボールのスピンは大きくなる。
【0076】
例えば、該中間層を、該ボールにおける最も硬い点、例えば約60ショアD〜約75ショアDなる範囲の硬さを持つ点にしたい場合には、該カバー材料は、そのスラブについて測定した値として、約20ショアDまたはそれ以上、好ましくは約25ショアDまたはそれ以上、およびより好ましくは約30ショアDまたはそれ以上の硬さを持つことができる。もう一つの態様において、該カバー自体は、約30ショアDまたはそれ以上の硬さを持つ。特に、該カバーの硬さは、約30ショアD〜約70ショアDなる範囲内であり得る。一態様において、該カバーは、約40ショアD〜約65ショアDなる範囲内の硬さを持ち、またもう一つの態様においては、約40ショアD〜約55ショアDなる範囲の硬さを持つ。本発明のもう一つの局面において、該カバーは、約45ショアD未満、好ましくは約40ショアD未満、およびより好ましくは約25ショアD〜約40ショアDなる範囲内の硬さを持つ。一態様において、該カバーは、約30ショアD〜約40ショアDなる範囲内の硬さを持つ。
【0077】
一態様において、該カバーの硬さは、約60ショアDまたはそれ以上である。もう一つの態様において、該カバーの硬さは、約62ショアDまたはそれ以上である。更に別の態様において、該カバーの硬さは、約64ショアDまたはそれ以上である。例えば、該カバーの硬さは、約55ショアD〜約85ショアDなる範囲内の値であり得る。もう一つの態様において、該カバーの硬さは、約60ショアD〜約80ショアDなる範囲内にある。この範囲内の硬さを、2-ピースボール、即ちコアおよびカバーを有するボール、並びに多層ボール、例えばコアとカバーとの間に設けられた1またはそれ以上の中間層を持つボールにおいて使用することができる。
圧縮荷重
圧縮荷重は、ゴルフボールの設計における重要なファクタの一つである。例えば、該コアの圧縮荷重は、ドライバーによる該ボールのスピン速度および感触に影響を及ぼす可能性がある。事実、本発明の組成物および方法は、最終的に全体としてより硬いボールを与える、剛性の内側ボールを与える。該ボール全体が硬いほど、打撃を受けた際に変形する度合いが低くなり、またゴルフクラブからの離脱がより速くなる。
【0078】
あらゆる他の名称による、ジェフダルトンの圧縮荷重、サイエンス&ゴルフIV、ゴルフに関する世界科学会議会報(Jeff Dalton's Compression by Any Other Name, Science and Golf IV, Proceedings of the World Scientific Congress of Golf)[エリックタイン(Eric Thain)編、ロートレッジ(Routledge), 2002](J. Dalton)に記載されているように、幾つかの異なる方法が、圧縮荷重を測定するのに使用でき、該圧縮荷重の例は、Atti圧縮荷重、リエール(Riehle)圧縮荷重、様々な固定負荷の印加時点およびこれを解除した際の、負荷/撓み測定、および有効モジュラスを含む。本発明の目的にとって、「圧縮荷重」とは、Atti圧縮荷重を意味し、またAtti圧縮荷重テストデバイスを使用して、公知の手順に従って測定され、該デバイスでは、ピストンを使用してボールをバネに押付ける。該ピストンの移動を固定し、また該バネの撓みを測定する。該バネの撓みの測定は、これが該ボールと接触した状態で開始するのではなく、寧ろ該バネの撓みには最初に約1.25mm(0.05インチ)なる偏りがある。極めて低い剛性を持つコアは、1.25mmを越えて該バネに撓みを生じることはなく、従ってゼロなる圧縮荷重の測定値を持つことになる。該Atti圧縮荷重テスターは、42.7mm(1.68インチ)なる径を持つ対象を測定するように設計されており、従ってより小型の対象、例えばゴルフボールコアは、正確な読みを得るために、全高さが42.7mmとなるように、詰め物(クサビ)を使用する必要がある。Atti圧縮荷重からリエール(コア)、リエール(ボール)、100kg撓み、130-10kg撓みまたは有効モジュラスへの換算は、J. Daltonの文献に与えられている式に従って行うことができる。
【0079】
本発明に従って製造したゴルフボールのコアまたは該コアの部分の該Atti圧縮荷重は、約60〜約120Atti、好ましくは約65〜約115Atti、および最も好ましくは70〜110Attiなる範囲内であり得る。一態様において、該コアの圧縮荷重は、約80Atti未満、好ましくは約75Atti未満である。
反発係数:
本発明は、約38.13m/秒(約125ft/秒)なる帰還速度において、約0.700〜約0.850なる範囲のCORを持つゴルフボールの提供を意図する。一態様において、該CORは、約0.750またはそれ以上、好ましくは約0.780またはそれ以上である。もう一つの態様において、該ボールは、約0.800またはそれ以上のCORを持つ。更に別の態様において、本発明の該ボールのCORは、約0.800〜約0.815なる範囲にある。
【0080】
あるいはまた、該ボールの最大CORは、該ゴルフボールが、USGA等の統制機関によって設定された初期速度要件を越えないようにする一つの要件である。ここで使用する用語「反発係数」(COR)とは、ゴルフボールが空気銃から撃ち出された際の入射速度により、ゴルフボールの跳ね返る速度を割ることにより計算される値である。このCORテストは、ある範囲の入射速度に渡り行われ、またその値は、約38.13m/秒(125ft/秒)なる帰還速度において決定される。このレジリエンスのもう一つの尺度は、「損失正接」、即ちtanδであり、これは、ある物体の動的剛性を測定する際に得られる。損失正接およびこのような動的特性に関連する用語は、典型的には、ASTM D4092-90に従って説明される。即ち、より低い損失正接は、より高いレジリエンスを表し、結果としてより高い反発能力を示す。低い損失正接は、ゴルフクラブからゴルフボールに付与されたエネルギーの殆どが、動的なエネルギー、即ち発射速度および結果としての大きな飛距離に変換されることを示す。ゴルフボールの剛性または圧縮剛性は、例えば上記動的剛性により決定することができる。より高い動的剛性は、より高い圧縮剛性を表す。所望の圧縮剛性を持つゴルフボールを製造するためには、上記の架橋された材料の持つ動的剛性を、-50℃において約50,000N/m未満なる値とすべきである。好ましくは、該動的剛性を、-50℃において約10,000〜40,000N/mなる範囲内の値とすべきであり、より好ましくは該動的剛性を、-50℃において約20,000〜30,000N/mなる範囲内の値とすべきである。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は、本発明の方法および本発明のゴルフボール組成物およびゴルフボールにおいて使用するための材料の単なる代表的な例であり、本発明の範囲を何ら限定するものであると解釈すべきではない。
本発明の広い範囲を示す上記数値範囲およびパラメータは、凡そのものであるにも拘らず、具体的な実施例において示された数値は、できる限り正確なものとして報告されている。しかし、任意の数値は、本質的に、各テストの測定値において見られる標準偏差から必然的に生じる誤差を含む。更に、変動する範囲の数値範囲がここに示された場合、それは、列挙された値を含むこれら数値のあらゆる組合せが、使用可能であることを意図している。
【0082】
本明細書に記載され、また特許請求された本発明は、ここに記載された特定の態様によって、その範囲が限定されるものではない。というのは、これらの態様は、本発明の幾つかの局面を例示することを意図したものであるからである。あらゆる等価な態様は、本発明の範囲内に入るものとする。例えば、本発明の組成物は、またゴルフ器具、例えばパター挿入物、ゴルフクラブヘッドおよびその一部、ゴルフシューズの一部、およびゴルフバッグの一部において使用することもできる。実際に、ここに示され、また説明された事項に加えて、本発明の様々な改良が、上記説明から、当業者には明らかとなるであろう。このような改良も、また添付した特許請求の範囲内に入るものとする。本明細書において引用したあらゆる特許および特許出願の全内容は、特に参考としてここに組入れるものとする。
【符号の説明】
【0083】
2、8、16、24・・ゴルフボール
4、10、26・・中心
6、14、22・・カバー
12、28・・中間層
18・・大きなコア
20・・内側カバー層
30・・内側カバー層
32・・外側カバー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアおよびカバーを含むゴルフボールの製造方法であって、以下の諸工程:
コアを用意する工程;
イソシアネートとアミン-末端を持つ成分との反応生成物を含むポリウレアプレポリマーを用意する工程;
該ポリウレアプレポリマーおよびアミン-末端を持つ硬化剤のブレンドを、金型内に流し込んで、該コア上にカバーを形成する工程、ここで該ゴルフボールカバーは、第一の架橋密度を有し;および
該カバーに、電子線、中性子線、プロトンビーム、γ-線、x-線、ヘリウム核由来の輻射線等を照射して、該第一の架橋密度よりも大きな第二の架橋密度を持つ、処理されたカバーを生成する工程、を含むことを特徴とする、前記ゴルフボールの製造方法。
【請求項2】
前記カバーに照射する工程が、該カバーを、周囲温度にて、1メガラドを越える輻射線による処理に付すことを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記カバーに照射する工程が、該カバーを、周囲温度にて、約4〜約8メガラドなる範囲の輻射線による処理に付すことを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第二の架橋密度が、前記第一の架橋密度よりも少なくとも約10%大きい、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記第二の架橋密度が、前記第一の架橋密度よりも少なくとも約15%大きい、請求項1記載の方法。
【請求項6】
コアおよびカバーを含むゴルフボールの製造方法であって、以下の諸工程:
コアを用意する工程;
第一のイソシアネート含有成分とイソシアネート-反応性成分との反応生成物を含むプレポリマーを用意する工程、ここで該プレポリマーは、第一の量の未反応アミンを含み;
該プレポリマーおよびアミン-末端を持つ硬化剤を前記コアの回りで注型して、該第一の量の未反応アミンよりも少ない、第二の量の未反応アミンを含むカバーを形成する工程;および
該カバーを第二のイソシアネート-含有成分で処理して、処理されたカバーを生成する工程、ここで該処理されたカバーは、該第二の量の未反応アミンよりも少ない第三の量の未反応アミンを含む、
を含むことを特徴とする、前記ゴルフボールの製造方法。
【請求項7】
前記カバーを処理する工程が、該カバーを、前記第二のイソシアネート-含有成分で浸漬、塗り付け、ソーキング、ブラシ塗布、または噴霧することを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記第二のイソシアネート-含有成分が、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニルジイソシアネート、1,4-ジイソシアネートベンゼン、フェニレン-1,4-ジイソシアネート、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4'-ジイソシアネート、p,p'-ジフェニルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、メタ-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記第二のイソシアネート-含有成分が、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
コアおよびカバーを含むゴルフボールの製造方法であって、以下の諸工程:
コアを用意する工程;
イソシアネートとアミン-末端を持つ成分との反応生成物を含むポリウレアプレポリマーを用意する工程;
該ポリウレアプレポリマーとブロックイソシアネートまたはフリーラジカル開始剤とを混合して、中間体プレポリマーを生成する工程;
該中間体プレポリマーとアミン-末端を持つ硬化剤ブレンドとを反応させて、第一の量の遊離アミンを含む組成物を用意する工程;
該組成物を、前記コア上で成形して、成型されたカバーを作成する工程;および
該成型されたカバーを、熱またはエネルギー源に暴露して、前記第一の量の遊離アミンよりも少ない、第二の量の遊離アミンを持つ生成物を得る工程、を含むことを特徴とする、前記ゴルフボールの製造方法。
【請求項11】
前記混合工程が、パーオキサイドを含むフリーラジカル開始剤を選択することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記パーオキサイドが、ジ-t-アミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンまたは1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジベンゾイルパーオキシヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,4-ジクロロ-ベンゾイルパーオキサイド、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記混合工程が、過硫酸塩、アゾ化合物、ベンゾフェノン、ヒドラジド、またはこれらの組合せを含む、フリーラジカル開始剤を選択することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記成型されたカバーを暴露する工程が、該成型されたカバーを、電子線、中性子線、プロトンビーム、γ-線、x-線、ヘリウム核由来の輻射線等に暴露する工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記成型されたカバーが、第一の架橋密度を有し、かつ前記生成物が、該第一の架橋密度よりも大きな第二の架橋密度を持つ、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記第二の架橋密度が、前記第一の架橋密度よりも少なくとも10%大きい、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記混合工程が、イソシアネートとブロッキング剤との反応生成物である、ブロックイソシアネートを製造する工程を含み、かつ該ブロッキング剤が、1,2,4-トリアゾール、2-ホルミルオキシエチルメタクリレート(FEMA)、カプロラクタム、ジエチルマロネート(DEM)、3,5-ジメチルピラゾール(DMP)、メチルエチルケトキシム(MEKO)、およびこれらの組合せから選択される、請求項10記載の方法。
【請求項18】
前記成型されたカバーを熱に暴露する工程が、成型温度を少なくとも約100℃(約212゜F)まで高めることを含む、請求項10記載の方法。
【請求項19】
前記コア上で前記組成物を成形して成型されたカバーを形成する工程が、第一の温度にて行われ、かつ前記成型されたカバーを熱に暴露する工程が、該第一の温度よりも高い第二の温度にて行われる、請求項10記載の方法。
【請求項20】
前記第一の温度が、約93℃(約200゜F)未満であり、かつ前記第二の温度が、少なくとも約100℃(約212゜F)である、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−75911(P2012−75911A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−230167(P2011−230167)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY