説明

ゴルフボール表面の凹凸パターン設計方法

【課題】空力的対称性に優れたゴルフボールの提供。
【解決手段】ゴルフボール2は、その表面にランド10と多数のディンプル8とからなる凹凸パターンを有する。この凹凸パターンの設計方法は、
(1)仮想球の表面の上に多数の母点をランダムに配置するステップ、
(2)上記母点に基づいて、仮想球の表面の上に多数のボロノイ領域が想定されるステップ、
(3)上記ボロノイ領域の輪郭の近傍にランドを割り当て、仮想球の表面のうちランド以外の部分にディンプルを割り当てるステップ
を含む。ディンプル8は、ランダムに配置されている。それぞれのディンプル8は、他のいずれのディンプル8とも異なる輪郭形状を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、ゴルフボール表面の凹凸パターン設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備えている。ディンプルは、飛行時のゴルフボール周りの空気の流れを乱し、乱流剥離を起こさせる。乱流剥離によって空気のゴルフボールからの剥離点が後方にシフトし、抗力が低減される。乱流剥離によってバックスピンに起因するゴルフボールの上側剥離点と下側剥離点とのズレが助長され、ゴルフボールに作用する揚力が高められる。抗力の低減及び揚力の向上は、「ディンプル効果」と称される。
【0003】
米国ゴルフ協会(USGA)は、ゴルフボールの対称性に関するルールを定めている。このルールでは、PH回転時の弾道とPOP回転時の弾道とが対比される。両者の差が大きいゴルフボールは、このルールに適合しない。換言すれば、空力的対称性が劣るゴルフボールは、このルールに適合しない。空力的対称性が劣るゴルフボールは、PH回転時の空力特性又はPOP回転時の空力特性が劣ることに起因して、飛距離に劣る。PH回転の回転軸は、ゴルフボールの両極を通過する。POP回転の回転軸は、PH回転の回転軸と直交する。
【0004】
ゴルフボールの仮想球に内接する正多面体が用いられて、ディンプルが配置されることがある。この配置方法では、多面体の辺が球面に投影されて得られる区画線によって仮想球の表面が複数のユニットに区画される。1つのユニットのディンプルパターンが、仮想球の全体に展開される。このディンプルパターンでは、正多面体の頂点を通過する線が回転軸である場合の空力特性が、この正多面体の面中心を通過する線が回転軸である場合の空力特性と異なる。このゴルフボールは、空力的対称性に劣る。
【0005】
特開昭50−8630公報には、改良されたディンプルパターンを有するゴルフボールが開示されている。このゴルフボールの表面は、仮想球に内接する二十面体によって区画されている。この区画に基づき、ゴルフボールの表面にディンプルが配置されている。このディンプルパターンでは、ディンプルと交差しない大円の数は、1である。この大円は、赤道と一致している。赤道の近傍は、特異な領域である。
【0006】
ゴルフボールは、上型及び下型からなるモールドによって成形される。このモールドは、パーティングラインを有する。このモールドによって得られたゴルフボールは、パーティングラインに相当する位置に、シームを有する。成形により、シームにはバリが生じる。バリは、切削され除去される。バリの切削により、シームの近傍のディンプルは変形する。さらに、シームの近傍には、ディンプルが整然と並ぶ傾向がある。シームは、赤道に位置する。赤道の近傍は、特異な領域である。
【0007】
凹凸状のパーティングラインを有するモールドが、用いられている。このモールドで得られたゴルフボールは、赤道上にディンプルを有する。赤道上のディンプルは、赤道の近傍の特異性解消に寄与する。しかし、特異性は、十分には解消されていない。このゴルフボールの空力的対称性は、十分ではない。
【0008】
特開昭61−284264号公報には、シーム近傍のディンプルの容積が極近傍のディンプルの容積よりも大きなゴルフボールが開示されている。容積の相違は、赤道近傍の特異性の解消に寄与する。このゴルフボールでは、ディンプルパターンに起因する不都合が、容積の相違によって解消されている。ディンプルパターンに起因する不都合が、ディンプルパターン自体の工夫で解消されているわけではない。このゴルフボールでは、ディンプルパターンが本来備えるポテンシャルが犠牲にされる。このゴルフボールの飛距離は、十分ではない。
【0009】
特開平9−164223号公報には、多数のディンプルがランダムに配置されたゴルフボールが開示されている。ランダムな配置は、空力的対称性を高める。特開2000−189542公報にも、多数のディンプルがランダムに配置されたゴルフボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭50−8630公報
【特許文献2】特開昭61−284264号公報
【特許文献3】特開平9−164223号公報
【特許文献4】特開2000−189542公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特開平9−164223号公報に開示された方法では、ディンプルパターンを得るのに、試行錯誤が繰り返される。特開2000−189542公報に開示された方法でも、ディンプルパターンを得るのに、試行錯誤が繰り返される。
【0012】
本発明の目的は、空力的対称性に優れたゴルフボールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るゴルフボール表面の凹凸パターン設計方法は、
(1)仮想球の表面の上に多数の点をランダムに配置するステップ、
(2)上記点に基づいて、仮想球の表面の上に多数の領域を想定するステップ、
(3)上記領域の輪郭に基づいて、仮想球の表面にディンプルとランドとを割り当てるステップ
を含む。
【0014】
好ましくは、ステップ(2)において、上記領域の1つに上記点が1つ含まれるように、仮想球の表面の上に多数の領域が想定される。好ましくは、ステップ(2)において、ボロノイ分割によって領域が想定される。
【0015】
好ましくは、ステップ(2)は、
(2.1)上記仮想球の表面の上に多数の微小なセルを想定するステップ、
(2.2)それぞれのセルに最も近い点を母点として選定するステップ、
(2.3)それぞれの母点に関し、この母点を最も近い母点とするセルの集合を想定するステップ、及び
(2.4)それぞれの集合を、ボロノイ分割によって得られる領域とみなすステップ
を含む。
【0016】
ステップ(2)において、1つの点と他の点とを線で結ぶことにより、仮想球の表面の上に多数の領域が想定されてもよい。好ましくは、ステップ(2)において、ドロネー三角分割によって領域が想定される。
【0017】
好ましくは、ステップ(3)において、それぞれの輪郭の近傍にランドが割り当てられ、仮想球の表面のうちランド以外の部分にディンプルが割り当てられる。
【0018】
好ましくは、上記ステップ(1)において、セル・オートマトン法に基づいて多数の点がランダムに配置される。
【0019】
好ましくは、ステップ(1)は、
(1.1)複数の状態が想定されるステップ、
(1.2)仮想球の表面の上に多数のセルが想定されるステップ、
(1.3)それぞれのセルに、いずれかの状態が付与されるステップ、
(1.4)上記セルの状態及びこのセルの近傍に位置する複数のセルの状態に基づいて、当該セルの属性として、インサイド、アウトサイド及び境界のいずれかが付与されるステップ、
(1.5)境界のセルが結ばれることによって、ループが想定されるステップ、並びに
(1.6)上記ループの中心点が決定されるステップ
を含む。
【0020】
本発明に係るゴルフボールは、その表面に多数のディンプルを備える。これらのディンプルは、ランダムに配置されている。それぞれのディンプルは、他のいずれのディンプルとも異なる輪郭形状を有している。
【0021】
好ましくは、下記ステップ(1)から(16)によって得られる変動幅Rh及び変動幅Roは、2.7mm以下である。
(1)ゴルフボールの両極を結ぶ線が、第一回転軸に想定されるステップ
(2)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、かつ上記第一回転軸と直交する大円が想定されるステップ
(3)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、上記第一回転軸と直交し、かつ上記大円との中心角の絶対値が30°である2つの小円が想定されるステップ
(4)これらの小円によりゴルフボールが区画され、このゴルフボールの表面のうちこれら小円に挟まれた領域が特定されるステップ
(5)上記領域に、軸方向において中心角度で3°刻みであり回転方向において中心角で0.25°刻みに、30240の点が決定されるステップ
(6)それぞれの点から上記第一回転軸に下ろした垂線の長さL1が算出されるステップ
(7)軸方向に並ぶ21個の垂線に基づいて算出された21個の長さL1が合計され、総長さL2が算出されるステップ
(8)回転方向に沿って算出される1440個の総長さL2から、最大値と最小値とが決定され、最大値から最小値が減じられた値である変動幅Rhが算出されるステップ
(9)上記ステップ(1)で想定された第一回転軸に直交する第二回転軸が想定されるステップ
(10)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、かつ上記第二回転軸と直交する大円が想定されるステップ
(11)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、上記第二回転軸と直交し、かつ上記大円との中心角の絶対値が30°である2つの小円が想定されるステップ
(12)これらの小円によりゴルフボールが区画され、ゴルフボールの表面のうちこれら小円に挟まれた領域が特定されるステップ
(13)上記領域に、軸方向において中心角度で3°刻みであり回転方向において中心角で0.25°刻みに、30240の点が決定されるステップ
(14)それぞれの点から上記第二回転軸に下ろした垂線の長さL1が算出されるステップ
(15)軸方向に並ぶ21個の垂線に基づいて算出された21個の長さL1が合計され、総長さL2が算出されるステップ
(16)回転方向に沿って算出される1440個の総長さL2から、最大値と最小値とが決定され、最大値から最小値が減じられた値である変動幅Roが算出されるステップ
【0022】
好ましくは、変動幅Rhと変動幅Roとの差dRの絶対値は、0.4mm以下である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る設計方法により、空力的対称性に優れたゴルフボールが容易に得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された模式的断面図である。
【図2】図2は、図1のゴルフボールが示された拡大正面図である。
【図3】図3は、図2のゴルフボールが示された平面図である。
【図4】図4は、ループのパターンの設計方法が示されたフローチャートである。
【図5】図5は、図4の設計方法に用いられるメッシュが示された正面図である。
【図6】図6は、図4の設計方法の規則が説明されるためのグラフである。
【図7】図7は、図5のメッシュの一部が示された拡大図である。
【図8】図8は、更新が完了した後のメッシュの一部が示された拡大図である。
【図9】図9は、第一ループを備えたパターンが示された正面図である。
【図10】図10は、属性の付与が完了した後のメッシュの一部が示された拡大図である。
【図11】図11は、第二ループを備えたパターンが示された正面図である。
【図12】図12は、第三ループを備えたパターンが示された正面図である。
【図13】図13は、第三ループが示された正面図である。
【図14】図14は、図13の第三ループのセルがスプライン曲線で結ばれて得られたループが示された正面図である。
【図15】図15は、3点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示された正面図である。
【図16】図16は、5点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示された正面図である。
【図17】図17には、7点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示された正面図である。
【図18】図18は、5点移動平均で得られた基準点が半分に間引かれて得られたループが示された正面図である。
【図19】図19は、5点移動平均で得られた基準点が1/3に間引かれて得られたループが示された正面図である。
【図20】図20は、図19のループを備えたパターンが示された正面図である。
【図21】図21は、図20のパターンが示された平面図である。
【図22】図22は、多数の母点が示された正面図である。
【図23】図23は、図22の母点がボロノイ領域と共に示された拡大図である。
【図24】図24は、簡便な方法で得られたボロノイ領域が示された正面図である。
【図25】図25は、図2のゴルフボールの評価方法が説明されるための模式図である。
【図26】図26は、図2のゴルフボールの評価方法が説明されるための模式図である。
【図27】図27は、図2のゴルフボールの評価方法が説明されるための模式図である。
【図28】図28は、本発明の他の実施形態に係るゴルフボールが示された拡大正面図である。
【図29】図29は、図28のゴルフボールが示された平面図である。
【図30】図30は、第一ループを備えたパターンが示された正面図である。
【図31】図31は、第二ループを備えたパターンが示された正面図である。
【図32】図32は、第三ループを備えたパターンが示された正面図である。
【図33】図33は、多数のループを有するパターンが示された正面図である。
【図34】図34は、図33のパターンが示された平面図である。
【図35】図35は、多数の母点が示された正面図である。
【図36】図36は、セルが属するドロネー領域の決定方法の説明図である。
【図37】図37は、簡便な方法で得られたドロネー領域が示された正面図である。である。
【図38】図38は、本発明の実施例1に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図39】図39は、本発明の実施例1に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図40】図40は、比較例1に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図41】図41は、比較例1に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図42】図42は、本発明の実施例2に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図43】図43は、本発明の実施例2に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図44】図44は、比較例2に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図45】図45は、比較例2に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図46】図46は、比較例3に係るゴルフボールが示された拡大正面図である。
【図47】図47は、図46のゴルフボールが示された平面図である。
【図48】図48は、比較例3に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【図49】図49は、比較例3に係るゴルフボールの評価結果が示されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0026】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、カバー6とを備えている。カバー6の表面には、多数のディンプル8が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル8以外の部分は、ランド10である。このゴルフボール2は、カバー6の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。コア4とカバー6との間に、中間層が設けられてもよい。
【0027】
このゴルフボール2の直径は、40mm以上45mm以下が好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0028】
コア4は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。ゴム組成物の基材ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。反発性能の観点からポリブタジエンが好ましく、特にハイシスポリブタジエンが好ましい。
【0029】
コア4の架橋には、共架橋剤が用いられうる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムである。ゴム組成物には、共架橋剤と共に有機過酸化物が配合されるのが好ましい。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。
【0030】
コア4のゴム組成物には、硫黄、硫黄化合物、充填剤、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤が、必要に応じて適量配合される。ゴム組成物に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が配合されてもよい。
【0031】
コア4の直径は30.0mm以上、特には38.0mm以上である。コア4の直径は42.0mm以下、特には41.5mm以下である。コア4が2以上の層から構成されてもよい。コア4がその表面にリブを備えてもよい。
【0032】
カバー6に好適なポリマーは、アイオノマー樹脂である。好ましいアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい他のアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。
【0033】
アイオノマー樹脂に代えて、又はアイオノマー樹脂と共に、他のポリマーが用いられてもよい。他のポリマーとしては、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性スチレンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー及び熱可塑性ポリオレフィンエラストマーが例示される。スピン性能の観点から、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好ましい。
【0034】
カバー6には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が適量配合される。比重調整の目的で、カバー6にタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末が配合されてもよい。
【0035】
カバー6の厚みは0.1mm以上、特には0.3mm以上である。カバー6の厚みは2.5mm以下、特には2.2mm以下である。カバー6の比重は0.90以上、特には0.95以上である。カバー6の比重は1.10以下、特には1.05以下である。カバー6が2以上の層から構成されてもよい。
【0036】
図2は、このゴルフボール2が示された拡大正面図である。図3は、図2のゴルフボール2が示された平面図である。図2及び3から明らかなように、多数のディンプル8がランダムに配置されている。これらディンプル8とランド10とにより、ゴルフボール2の表面に凹凸パターンが形成されている。
【0037】
この凹凸パターンの設計方法には、ボロノイ分割(Voronoi tessellation)が用いられる。この設計方法では、多数の母点が仮想球14(図1参照)の表面の上にランダムに配置される。この母点に基づいて、ボロノイ分割により、仮想球14の表面の上に多数の領域が想定される。本願明細書では、この領域は、「ボロノイ領域」と称される。このボロノイ領域に基づいて、ディンプル8が割り当てられる。この設計方法は、効率の観点から、コンピュータとソフトウエアとが用いられて実施されることが好ましい。もちろん、手計算でも本発明は実施されうる。本発明の本質がコンピュータソフトウエアにあるわけではない。
【0038】
好ましくは、母点の配置には、セル・オートマトン(Cellular Automaton)法が用いられる。セル・オートマトン法により、仮想球14の表面の上に多数のループがランダムに配置されたパターンが得られる。これらループの中心点が、母点とされる。ループの配置がランダムなので、母点の配置もランダムである。
【0039】
セル・オートマトン法は、計算可能性理論、数学、理論生物学等の分野で、広く利用されている。セル・オートマトン法のモデルは、多数のセルと単純な規則とからなる。このモデルにより、生命現象、結晶の成長、乱流等の自然現象が模擬されうる。このモデルでは、それぞれのセルが状態を有する。この状態は、ステージの進行に応じ、他の状態に変化しうる。あるセルのステージ(t+1)における状態は、ステージ(t)における当該セルの状態及びこのセルの近傍にある複数のセルの状態によって決定される。決定は、ある規則に従ってなされる。全てのセルに、この規則が等しく適用される。
【0040】
この凹凸パターンの設計には、セル・オートマトン法の反応・拡散モデルが適している。このモデルは、獣、鳥、魚、昆虫等の体表面のループの模擬に用いられている。このモデルでは、複数の状態が想定される。状態の数は、通常は2以上8以下である。それぞれのセルにおいて、初期の状態が決定される。ステージの進行により、規則に基づいて、状態が更新される。更新により、その状態が変化するセルが存在する。更新により、状態が変化しないセルも存在する。セル・オートマトン法は、「セル・オートマトン法 複雑系の自己組織化と超並列処理(加藤泰義ら著、森北出版株式会社発行)」の第25−28頁に開示されている。
【0041】
本発明に係る設計方法の特徴は、セルの状態が、当該セルの近傍に位置する他のセルの影響下にて更新される点にある。この更新により、多数のループがランダムに配置されたパターンが得られる。この特徴が維持される限り、如何なるモデルも用いられうる。以下、セル・オートマトン法の反応拡散モデルを用いた設計方法が詳説される。
【0042】
図4は、ループのパターンの設計方法が示されたフローチャートである。図5は、図4の設計方法に用いられるメッシュ12が示された正面図である。このメッシュ12の形成には、球14が仮想される(STEP1)。この仮想球14の直径は、ゴルフボール2の直径と同一である。この仮想球14の表面が、多数の三角形に分割される(STEP2)。分割は、前進先端法(advancing front method)に基づいてなされている。前進先端法が、「大学院情報理工学3 計算力学(伊藤耿一編、講談社発行)」の第195−197頁に開示されている。このメッシュ12において、三角形の数は176528個であり、頂点の数は88266個である。それぞれの頂点は、セル(又はセルの中心)と定義される。このメッシュ12では、セルの数は88266個である。他の手法によって仮想球14が分割されてもよい。
【0043】
この設計方法では、分化及び未分化の、2つの状態が想定される。それぞれのセルにおいて、いずれかの状態(初期の状態)が決定される(STEP3)。決定は、好ましくは、無作為になされる。無作為な決定には、乱数と剰余系とが用いられる。状態の数が2なので、基数が2である剰余系が用いられる。具体的には、コンピュータによって0以上1未満であり、下5桁の乱数が発生させられる。この乱数に100000が乗され、この積がさらに2で除される。この商の余りは、「1」又は「0」である。この余りに基づいて、当該セルの状態が決定される。例えば、余りが「1」の場合に分化が選定され、余りが「0」の場合に未分化が選定される。全てのセルについて、決定がなされる。決定の後のメッシュ12は、ステージ1にある。
【0044】
それぞれのセルにおいて、状態の変更の要否が判定される(STEP4)。判定は、規則に従ってなされる。図6は、この規則が説明されるためのグラフである。このグラフにおいて、縦軸は濃度であり、横軸は指数半径である。指数半径は、当該セルからの距離が基準値で除された値である。この基準値は、当該セルに最も近いセルと、当該セルとの距離である。濃度Wは正であり、濃度Wは負である。濃度Wの絶対値は、濃度Wの絶対値よりも大きい。指数半径Rは、指数半径Rよりも大きい。指数半径が0を超えてR以下のエリアでは、濃度はWである。指数半径がRを超えてR以下のエリアでは、濃度はWである。
【0045】
図7は、図5のメッシュ12の一部が示された拡大図である。便宜上、図7では、メッシュ12が二次元で画かれている。図7の中心には、判定の対象であるセル16aが示されている。図7にはさらに、第一円18及び第二円20が示されている。第一円18は、セル16aを中心とする、指数半径がRである円である。第二円20は、セル16aを中心とする、指数半径がRである円である。塗りつぶされた円で示されているのは、第一円18に含まれる、セル16a以外のセル16である。塗りつぶされた四角形で示されているのは、第二円20に含まれ、第一円18に含まれないセル16である。塗りつぶされた三角形で示されているのは、第二円20に含まれないセル16である。
【0046】
この設計方法では、第一円18に含まれこの第一円18の中心に位置しない、特定の状態にあるセル16の数NR1がカウントされる。好ましい態様によれば、その状態が分化であるセル16の数がカウントされ、合計NR1が算出される。この設計方法ではさらに、第二円20に含まれ第一円18に含まれない、特定の状態にあるセル16の数NR1−R2がカウントされる。好ましい態様によれば、その状態が分化であるセル16の数がカウントされ、合計NR1−R2が算出される。この数NR1及びNR1−R2が下記数式(1)に代入され、値Eが算出される。この値Eに基づいて、セル16aの状態の変更の要否が決定される。
E = W * NR1 + W * NR1−R2 (1)
【0047】
この判定に基づき、セル16aの状態の更新がなされる(STEP5)。更新において、セル16a状態が変化することも、変化しないことも生じうる。好ましい態様によれば、値Eが正であるとき、セル16aの状態が分化であればこの状態が維持され、セル16aの状態が未分化であればこの状態が分化に変更される。この値Eがゼロであるとき、セル16aの状態が維持される。この値Eが負であるとき、セル16aの状態が分化であればこの状態が未分化に変更され、セル16aの状態が未分化であればこの状態が維持される。全てのセル16についての第一回目の更新が完了したメッシュ12は、ステージ2にある。
【0048】
以下に、判定及び更新の計算例が示される。
条件
第一濃度W:1.00
第二濃度W:−0.60
第一円18に含まれその状態が分化であるセル16の数(当該セル16aを除く):8
第二円20に含まれ第一円18に含まれない、その状態が分化であるセル16の数:13
計算例
E = 1.00 * 8 − 0.60 * 13
= 0.2
この場合、値Eが正なので、セル16aの状態が分化であればこの状態が維持され、セル16aの状態が未分化であればこの状態が分化に変更される。
【0049】
以下に、判定及び更新の他の計算例が示される。
条件
第一濃度W:1.00
第二濃度W:−0.60
第一円18に含まれその状態が分化であるセル16の数(当該セル16aを除く):5
第二円20に含まれ第一円18に含まれない、その状態が分化であるセル16の数:9
計算例
E = 1.00 * 5 − 0.60 * 9
= −0.4
この場合、値Eが負なので、セル16aの状態が分化であればこの状態が未分化に変更され、セル16aの状態が未分化であればこの状態が維持される。
【0050】
この判定と更新とが、繰り返される。図4のフローチャートでは、繰り返し数はMである。M回の繰り返しが完了した後のメッシュ12は、ステージ(M+1)にある。ステージの進行に伴い、更新によって状態が変化するセル16の数が減少する。繰り返し数が小さいステージでは、更新によるパーターンの変化が激しい。多数回の更新がなされることで、パターンが収束する。繰り返し数は3以上が好ましく、5以上がより好ましい。繰り返し数が過大であると、コンピュータへの負荷が大きい。この観点から、繰り返し数は30以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0051】
判定と更新とがM回繰り返されることにより、それぞれのセル16の状態が確定する。この確定は、セル16への「状態の付与」である。図8は、状態の付与が完了した後のメッシュ12の一部が示された拡大図である。図8において、円で示されているのは分化のセル16であり、四角形で示されているのは未分化のセル16である。この状態に基づき、セル16にiflagが付与される。まず暫定的に、全てのセル16にiflagとして「0」が付与される。次に、状態が分化であるセル16に関し、iflagが変更される。図8において符号16bで示されたセル16は、6個のセル16c−16hと隣接している。本発明では、一方のセル16を頂点とする三角形の他の頂点に他方のセル16が存在するとき、「一方のセル16が他方のセル16と隣接する」と称される。これらのセル16c−16hの状態は、分化である。隣接する全てのセル16c−16hの状態が分化であるとき、当該セル16bのiflagが「0」から「1」に変更される。図8において符号16nで示されたセル16は、6個のセル16h−16mと隣接している。セル16h、16i、16l、16mの状態は、分化である。セル16j、16kの状態は、未分化である。状態が未分化である1又は2以上のセル16と隣接するとき、当該セル16nのiflagが「0」から「2」に変更される。状態が分化である全てのセル16に関し、そのiflagが変更される。状態が未分化であるセル16のiflagは、変更されない。このiflagに基づき、全てのセル16に属性が付与される(STEP6)。属性の付与は、下記のルールに基づいてなされる。
iflag:0 属性:アウトサイド
iflag:1 属性:インサイド
iflag:2 属性:境界
属性の付与が完了したメッシュ12は、第一フェーズにある。属性が境界である複数のセル16を結ぶことにより、第一ループ21が完成する。図8において、第一ループ21が太線で示されている。
【0052】
多数の第一ループ21を有するパターンが、図9に示されている。このパターンは、以下のパラメータが用いられて得られたものである。
W1:1.0
W2:−0.6
R1:4.5
R2:8.0
【0053】
このパターンの占有率が算出される(STEP7)。この算出では、第一ループ21で囲まれた面積が算出される。全ての第一ループ21の面積が合計される。この合計の、仮想球14の表面積に対する比率が、占有率である。図5に示された多数の三角形が用いられ、占有率が近似的に算出されてもよい。近似的な算出では、第一ループ21に含まる三角形の合計面積が、全ての三角形の合計面積で除される。
【0054】
得られた占有率に基づき、判定がなされる(STEP8)。このステップでは、占有率が所定値以上であるか否かが判定される。図4に示された実施形態では、占有率Yが65%以上であるか否かが判定される。
【0055】
占有率Yが65%未満である場合、属性の更新がなされる(STEP9)。以下、この更新の方法が詳説される。図10は、属性の付与が完了した後のメッシュ12の一部が示された拡大図である。符号16nで示されたセル16は、第一ループ21の上に存在する。このセル16nには、6個のセル16hから16mが隣接している。セル16hのiflagは「1」であり、その属性はインサイドである。属性がインサイドであるセル16では、iflagの変更はなされない。セル16i、16l、16mのiflagは2であり、その属性は境界である。その属性が境界であり、かつ属性が境界である他のセル16と隣接するセル16では、iflagの変更はなされない。セル16j、16kのiflagは「0」であり、その属性はアウトサイドである。その属性がアウトサイドであり、かつ属性が境界である他のセル16と隣接するセル16では、iflagが「0」から「3」に変更される。第一ループ21の上に存在する全てのセル16に関し、このセル16と隣接するセル16のiflagが決定される。このiflagに基づき、属性の更新(STEP9)がなされる。属性の更新は、下記のルールに基づいてなされる。
iflag:0 属性:アウトサイド
iflag:1−2 属性:インサイド
iflag:3 属性:境界
属性の更新が1回なされた後のメッシュ12は、第二フェーズにある。
【0056】
属性が境界である複数のセル16を結ぶことにより、第二ループ28が得られる。第二ループ28は、第一ループ21の面積以上の面積を有する。換言すれば、属性の更新(STEP9)により、占有率が大きくなる。
【0057】
多数の第二ループ28を有するパターンが、図11に示されている。図9及び11の対比から明らかなように、図11のパターンの占有率は、図9のそれよりも大きい。このパターンの占有率が算出される(STEP7)。得られた占有率に基づき、判定がなされる(STEP8)。このステップでは、占有率が所定値以上であるか否かが判定される。図4に示された実施形態では、占有率Yが65%以上であるか否かが判定される。以下同様に、占有率Yが65%以上となるまで、属性の更新(STEP9)、占有率の算出(STEP8)及び判定(STEP9)が繰り返される。第N回目の属性更新に先立ち、その属性がアウトサイドであり、かつ属性が境界である他のセル16と隣接するセル16において、iflagが「0」から「N+2」に変更される。第N回目の属性更新は、下記のルールに基づいてなされる。
iflag:0 属性:アウトサイド
iflag:1からN+1まで 属性:インサイド
iflag:N+2 属性:境界
属性の更新がN回なされた後のメッシュ12は、第(N+1)フェーズにある。
【0058】
2回の属性の更新がなされて得られたパターンが、図12に示されている。このパターンのメッシュ12は、第三フェーズにある。このパターンは、多数の第三ループ29を備えている。第三ループ29は、第二ループ28の面積以上の面積を有する。図9、11及び12の対比から明らかなように、図12に示されたパターンの占有率は大きい。このパターンの占有率は、79%である。
【0059】
図13には、1つの第三ループ29が示されている。この第三ループ29は、属性が境界である25個のセル16を結ぶことにより得られている。この第三ループ29は、多数の頂点を有している。
【0060】
図14では、25個のセル16がスプライン曲線で結ばれている。スプライン曲線は、複数の点を通過するスムースな曲線である。スプライン曲線では、隣り合う2つのセル16の間の線が、多項式で定義される。一般的には、3次多項式が用いられる。図13と14との対比から明らかなように、スプライン曲線が用いられることにより、スムースなループが得られる。
【0061】
好ましくは、ループ上のセル16の座標にスムージングがなされ、このセル16に対応する基準点が得られる(STEP10)。多数の基準点がスプライン曲線で結ばれることにより、新たなループが想定される(STEP11)。
【0062】
典型的なスムージングは、移動平均である。図15には、3点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示されている。図16には、5点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示されている。図17には、7点移動平均によって得られた基準点がスプライン曲線で結ばれて得られたループが示されている。図14から17の対比より明らかなように、移動平均によって輪郭のスムースが達成されうる。
【0063】
3点移動平均では、下記の3つのセル16の座標が平均される。
(1)当該セル16
(2)ループの時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(3)ループの反時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
【0064】
5点移動平均では、下記の5つのセル16の座標が平均される。
(1)当該セル16
(2)ループの時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(3)ループの反時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(4)ループの時計回りにおいて当該セル16に2番目に近いセル16
(5)ループの反時計回りにおいて当該セル16に2番目に近いセル16
【0065】
7点移動平均では、下記の7つのセル16の座標が平均される。
(1)当該セル16
(2)ループの時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(3)ループの反時計回りにおいて当該セル16に最も近いセル16
(4)ループの時計回りにおいて当該セル16に2番目に近いセル16
(5)ループの反時計回りにおいて当該セル16に2番目に近いセル16
(6)ループの時計回りにおいて当該セル16に3番目に近いセル16
(7)ループの反時計回りにおいて当該セル16に3番目に近いセル16
【0066】
ループの形成のとき、基準点の一部が間引かれてスプライン曲線が画かれてもよい。図18には、5点移動平均で得られた基準点が半分(1点とばし)に間引かれて得られたループが示されている。図19には、5点移動平均で得られた基準点が1/3(2点とばし)に間引かれて得られたループが示されている。図19のループを備えたパターンが、図20及び21に示されている。このパターンは、多数のループ30を備えている。ループ30は、仮想球14の表面の上に、ランダムに配置されている。
【0067】
図20及び21に示されたループ30のパターンに基づき、ボロノイ分割により、ディンプルパターンが得られる。ボロノイ分割では、それぞれのループ30の中心点が求められる。中心点の座標は、ループ30の輪郭上のセル及び輪郭の内側に存在するセルの座標の平均値を求めることで得られる。中心点の座標が、ループ30の輪郭の内側に存在するセルのみの座標の平均値を求めることで得られてもよい。中心点の座標が、ループ30の輪郭上に存在するセルのみの座標の平均値を求めることで得られてもよい。以下、この中心点は、母点と称される。図22に、多数の母点32が示されている。ループ30がランダムに配置されているので、母点32も、仮想球14の表面の上にランダムに配置されている。
【0068】
図9に示された第一ループ21に基づいて、母点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の母点32が得られる。図11に示された第二ループ28に基づいて、母点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の母点32が得られる。図12に示された第三ループ29に基づいて、母点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の母点32が得られる。セル16がスプライン曲線で結ばれて得られるループ(図14参照)に基づいて、母点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の母点32が得られる。スムージングがなされて得られるループ(図15−17参照)に基づいて、母点32が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の母点32が得られる。
【0069】
これらの母点32に基づいて、多数のボロノイ領域が想定される。図23には、ボロノイ領域33が示されている。図23において、母点32aは6個の母点32bと隣接している。符号34で示されているのは、母点32aと母点32bとを結ぶ線分である。図23には、6本の線分34が示されている。符号36で示されているのは、それぞれの線分34の垂直二等分線である。母点32aは、6本の垂直二等分線36で囲まれている。図23において白抜き円で示されているのは、垂直二等分線36と他の垂直二等分線36との交点である。この交点は、球面多角形(例えば球面六角形)の頂点である。この球面多角形が、ボロノイ領域33である。それぞれの垂直二等分線36は、あるボロノイ領域33と、このボロノイ領域33に隣接するボロノイ領域33との境界である。この垂直二等分線36は、ボロノイ領域33の輪郭を画定する。
【0070】
垂直二等分線36の近傍のセル16にはランド10が割り当てられる。他のセル16には、ディンプル8が割り当てられる。これらの割り当てにより、ランド10とディンプル8とからなる凹凸パターンが得られる。垂直二等分線36の近傍のセル16にディンプルが割り当てられ、他のセル16にランドが割り当てられてもよい。
【0071】
垂直二等分線36に基づいてボロノイ領域33の輪郭を画定する計算は、複雑である。以下、簡便にボロノイ領域33が得られる方法が説明される。この方法では、それぞれのセル16における、このセル16と全ての母点32との距離が算出される。セル16毎に、母点32の数と同じ数の距離が算出される。これらの距離の中から、最も短い距離が選定される。この最も短い距離の対象となった母点32に、このセル16が関連づけされる。換言すれば、このセル16に最も近い母点32が選定される。なお、当該セル16からの距離が大きいことが明らかである母点32との距離の計算が、省略されてもよい。
【0072】
それぞれの母点32に関し、この母点32と関連づけされたセル16の集合が想定される。換言すれば、この母点32を最も近い母点32とするセル16の集合が想定される。この集合が、ボロノイ領域33とみなされる。こうして得られた多数のボロノイ領域33が、図24に示されている。図24では、当該セル16と隣接する他のセル16が、当該セル16が属するボロノイ領域33とは異なるボロノイ領域33に属する場合に、当該セルが黒く塗りつぶされている。
【0073】
図24から明らかなように、各ボロノイ領域33の輪郭は、ジグザグである。この輪郭に、セル・オートマトン法に関して前述されたスムージング及び間引きがなされ、スプライン曲線が画かれる。このスプライン曲線により、ループが得られる。ループの拡大又は縮小がなされて、新たなループが得られてもよい。このループの外部に、ランド10が割り当てられる。換言すれば、ボロノイ領域33の輪郭の近傍にランド10が割り当てられる。一方、ループの内部にディンプル8が割り当てられる。このようにして、図2及び3に示された凹凸パターンが得られる。
【0074】
ディンプル8の割り当て方法の一例が説明される。この方法では、最深点が決定される。好ましくは、ループの中心と仮想球14の中心とを結ぶ線上に、最深点が想定される。ループの中心の座標は、このループを画定する全ての基準点の座標の平均である。この最深点が、仮想球14の表面に投影される。この投影された点を通過し、その両端がループ上にある、仮想球14の表面の上にある円弧が想定される。この円弧の両端と最深点とを通過し、ゴルフボール2の半径方向内向きに凸な、滑らかな曲線が想定される。好ましくは、滑らかな曲線は、円弧である。この滑らかな曲線とループとが、滑らかな曲面で結ばれる。これにより、ディンプル8が得られる。最深点とループとが滑らかな曲面で結ばれることで、ディンプル8が得られてもよい。
【0075】
図2及び3に示された凹凸パターンでは、多数のディンプル8がランダムに配置されている。それぞれのディンプル8は、他のいずれのディンプル8とも異なる輪郭形状を有している。この凹凸パターンを備えたゴルフボール2は、空力的対称性に優れる。
【0076】
ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から、ディンプル8の深さは0.05mm以上が好ましく、0.08mm以上がより好ましく、0.10mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、この深さは0.60mm以下が好ましく、0.45mm以下がより好ましく、0.40mm以下が特に好ましい。深さは、ディンプル8の最深点と仮想球14の表面との距離である。
【0077】
本発明において「ディンプルの容積」とは、仮想球14の表面とディンプル8の表面とに囲まれた部分の容積を意味する。全てのディンプル8の容積の合計(総容積)は、ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から400mm以上が好ましく、450mm以上がより好ましく、500mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、この合計は750mm以下が好ましく、700mm以下がより好ましく、650mm以下が特に好ましい。
【0078】
飛行性能の観点から、ディンプル8の面積の合計の、仮想球14の表面積に対する比率(占有率)は、65%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0079】
実質的に球であるというゴルフボール2の本質が損なわれないとの観点から、ディンプル8の総数は250個以上が好ましく、300個以上が特に好ましい。それぞれのディンプル8が十分なディンプル効果を発揮するとの観点から、この総数は450個以下が好ましく、400個以下が特に好ましい。
【0080】
好ましくは、このゴルフボール2の差dRの絶対値は、0.50mm以下である。この絶対値は、ゴルフボール2の空力的対称性と相関するパラメータである。この絶対値が小さいほど、PH回転時の弾道とPOP回転時の弾道との差が小さい。この観点から、絶対値は0.45mm以下がより好ましく、0.40mm以下が特に好ましい。以下、差dRに基づく評価方法が説明される。
【0081】
図25は、この評価方法が説明されるための模式図である。この評価方法では、第一回転軸Ax1が想定される。この第一回転軸Ax1は、ゴルフボール2の2つの極点Poを通過する。それぞれの極点Poは、ゴルフボール2の成形に用いられるモールドの最深点である。一方の極点Poは上型の最深点であり、他方の極点Poは下型の最深点である。ゴルフボール2は、第一回転軸Ax1を中心として回転する。この回転は、PH回転である。
【0082】
このゴルフボール2の仮想球14の表面に存在し、かつ第一回転軸Ax1と直交する大円GCが想定される。ゴルフボール2の回転のとき、この大円GCの周速が最も速い。さらに、ゴルフボール2の仮想球14の表面に存在し、第一回転軸Ax1と直交する2つの小円C1、C2が想定される。図26には、図25のゴルフボール2の一部の断面が模式的に示されている。図26の左右方向は、軸方向である。図26に示されるように、小円C1と大円GCとの中心角の絶対値は、30°である。図示されていないが、小円C2と大円GCとの中心角の絶対値も、30°である。これらの小円C1、C2により上記仮想球14が区画され、ゴルフボール2の表面のうちこれら小円C1、C2に挟まれた領域が特定される。
【0083】
図26における点P(α)は、ゴルフボール2の表面に位置し、かつ大円GCとの中心角がα°(degree)である点である。点F(α)は、点P(α)から第一回転軸Ax1に下ろした垂線Pe(α)の足である。矢印L1(α)で示されているのは、垂線Pe(α)の長さである。換言すれば、長さL1(α)は、点P(α)と第一回転軸Ax1との距離である。1つの断面において、21個の点P(α)に関し、長さL1(α)が算出される。具体的には、−30°、−27°、−24°、−21°、−18°、−15°、−12°、−9°、−6°、−3°、0°、3°、6°、9°、12°、15°、18°、21°、24°、27°及び30°の角度αに関し、長さL1(α)が算出される。21個の長さL1(α)が合計され、総長さL2(mm)が得られる。総長さL2は、図26に示された断面における、表面の形状に依存するパラメータである。
【0084】
図27には、ゴルフボール2の一部の断面が示されている。図27において紙面垂直方向が、軸方向である。図27において符号βで示されているのは、ゴルフボール2の回転角度である。0°以上360°未満の範囲において、0.25°刻みに、回転角度βが設定される。それぞれの回転角度ごとに、総長さL2が算出される。この結果、回転方向に沿って1440の総長さL2が得られる。換言すれば、ゴルフボール2の1回転によって所定箇所に刻々と出現する表面の形状に依存するパラメータに関するデータ群が、算出される。このデータ群は、30240個の長さL1に基づいて算出されたものである。1440の総長さL2の最大値と最小値とが、決定される。この最大値から最小値が減じられ、変動幅Rhが算出される。変動幅Rhは、PH回転における空力特性を表す数値である。
【0085】
さらに、第一回転軸Ax1と直交する第二回転軸Ax2が決定される。第二回転軸Ax2を中心としたゴルフボール2の回転は、POP回転である。PH回転と同様、POP回転についても、大円GCと2つの小円C1、C2が想定される。小円C1と大円GCとの中心角の絶対値は、30°である。小円C2と大円GCとの中心角の絶対値も、30°である。ゴルフボール2の表面のうちこれら小円に挟まれた領域において、1440の総長さL2が算出される。換言すれば、ゴルフボール2の1回転によって所定箇所に刻々と出現する表面の形状に依存するパラメータに関するデータ群が、算出される。1440の総長さL2の最大値と最小値とが決定される。この最大値から最小値が減じられ、変動幅Roが算出される。変動幅Roは、POP回転における空力特性を表す数値である。
【0086】
第一回転軸Ax1と直交する直線は、無数に存在する。従って、大円GCも無数に存在する。ディンプル8に含まれる部分が最長である大円GCが選択され、変動幅Ro及び差dRが算出される。これに代えて、無作為に抽出された20個の大円GCに基づき、20個の変動幅が算出されてもよい。この場合、20個のデータの中の最大値が、Roとされる。
【0087】
変動幅Rhが小さいほど、PH回転時に大きな飛距離が得られうる。その理由は、変動幅Rhが小さいほど、乱流遷移が円滑に継続されるためであると推測される。この観点から、変動幅Rhは3.0mm以下が好ましく、2.7mm以下が特に好ましい。変動幅Roが小さいほど、POP回転時に大きな飛距離が得られうる。その理由は、変動幅Roが小さいほど、乱流遷移が円滑に継続されるためであると推測される。この観点から、変動幅Roは3.0mm以下が好ましく、2.7mm以下が特に好ましい。PH回転時及びPOP回転時のいずれにおいても大きな飛距離が得られうるとの観点から、変動幅Rh及び変動幅Roの両方が3.0mm以下であることが好ましく、2.7mm以下であることが特に好ましい。
【0088】
ボロノイ分割では、ボロノイ領域の1つに母点が1つ含まれるように、仮想球の表面の上に多数のボロノイ領域が想定される。ボロノイ分割以外の方法によって、領域の1つに点が1つ含まれるように、仮想球の表面の上に多数の領域が想定されてもよい。
【0089】
図28は、本発明の他の実施形態に係るゴルフボール102が示された拡大正面図である。図29は、図28のゴルフボール102が示された平面図である。図28び29から明らかなように、多数のディンプル108がランダムに配置されている。これらディンプル108とランド110とにより、ゴルフボール102の表面に凹凸パターンが形成されている。
【0090】
この凹凸パターンの設計方法には、ドロネー三角分割(Delaunay triangulation)が用いられる。この設計方法では、多数の母点が仮想球の表面の上にランダムに配置される。この母点に基づいて、ドロネー三角分割により、仮想球の表面の上に多数の領域が想定される。本願明細書では、この領域は、「ドロネー領域」と称される。このドロネー領域に基づいて、ディンプル108が割り当てられる。
【0091】
好ましくは、母点の配置には、セル・オートマトン(Cellular Automaton)法が用いられる。図2及び3に示されたディンプルパターンの設計に関して前述されたものと同様のセル・オートマトンが、用いられうる。セル・オートマトン法により、仮想球の表面の上に多数のループがランダムに配置されたパターンが得られる。これらループの中心点が、母点とされる。ループの配置がランダムなので、母点の配置もランダムである。
【0092】
セル・オートマトン法によって得られた多数の第一ループ121を有するパターンが、図30に示されている。このパターンは、以下のパラメータが用いられて得られたものである。
W1:1.0
W2:−0.6
R1:6.5
R2:11.3
セルの数:88266
【0093】
図30のパターンが更新されて、占有率が高められる。第一回の更新がなされた後のパターンが、図31に示されている。このパターンは、多数の第二ループ128を備えている。第二回の更新がなされた後のパターンが、図32に示されている。このパターンは、多数の第三ループ129を備えている。この第三ループ129に、前述のスムージングが施される。スムージング後のループの基準点が、スプライン曲線で結ばれて、新たなループが想定される。このループを備えたパターンが、図33及び34に示されている。
【0094】
図33及び34に示されたループ130のパターンに基づき、ドロネー三角分割により、ディンプルパターンが得られる。ドロネー三角分割では、それぞれのループ130の中心点が求められる。中心点の座標は、ループ130の輪郭上のセル及び輪郭の内側に存在するセルの座標の平均値を求めることで得られる。中心点の座標が、ループ130の輪郭の内側に存在するセルのみの座標の平均値を求めることで得られてもよい。中心点の座標が、ループ130の輪郭上に存在するセルのみの座標の平均値を求めることで得られてもよい。以下、この中心点は、母点と称される。図35に、多数の母点132が示されている。ループ130がランダムに配置されているので、母点132も、仮想球の表面の上にランダムに配置されている。
【0095】
図30に示された第一ループ121に基づいて、母点が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の母点が得られる。図31に示された第二ループ28に基づいて、母点が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の母点が得られる。図32に示された第三ループ129に基づいて、母点が決定されてもよい。この場合も、ランダムに配置された多数の母点が得られる。
【0096】
これらの母点132に基づいて、ドロネー三角分割により、仮想球の表面が多数の三角形(ドロネー領域)に分割される。以下、この分割の方法が説明される。
【0097】
この方法では、多数の母点132から、任意の3つの母点が選択される。これら3つの母点132を頂点とする三角形が、想定される。この三角形の外接円が、想定される。これら3つの母点以外の母点が、この外接円の中に含まれないとき、この三角形はドロネー領域と判定される。3つの母点の組み合わせの全てについて、判定がなされる。これにより、仮想球の表面の全体が、多数のドロネー領域に分割される。
【0098】
仮想球の表面のそれぞれのセルが属するドロネー領域に属するかが、決定される。以下、この決定方法が説明される。図36(a)に示された三角形P(ドロネー領域)において、ベクトルP、ベクトルP及びベクトルPは、反時計回りに連続している。従って、この三角形Pの、右手座標系における法線ベクトルは、紙面に垂直でかつ上向きである。図36(b)に示された三角形P(ドロネー領域)において、ベクトルP、ベクトルP及びベクトルPは、時計回りに連続している。従って、この三角形Pの、右手座標系における法線ベクトルは、紙面に垂直でかつ下向きである。法線ベクトルが下向きである三角形Pでは、第二頂点Pと第三頂点Pとが、入れ替えられる。換言すれば、三角形Pは、三角形Pと再定義される。法線ベクトルが下向きである全ての三角形について、再定義がなされる。この再定義がなされた後の仮想球の表面では、全ての三角形の法線ベクトルは、上向きである。
【0099】
図36(c)には、三角形PとセルSとが示されている。この例では、3つの外積ベクトル(P×P)、(P×P)及び(P×P)は、紙面に対して上向きである。3つの外積ベクトルの、紙面に対する方向が揃っているとき、当該セルSは、三角形Pに含まれる。
【0100】
図36(d)には、三角形PとセルSとが示されている。この例では、2つの外積ベクトル(P×P)及び(P×P)は、紙面に対して上向きである。一方、外積ベクトル(P×P)は、紙面に対して下向きである。3つの外積ベクトルの、紙面に対する方向が、揃っていないとき、当該セルSは、三角形Pに含まれない。
【0101】
全てのセルについて、属するドロネー領域が決定される。図37では、当該セル16と隣接する他のセル16が、当該セル16が属するドロネー領域133とは異なるドロネー領域133に属する場合に、当該セルが黒く塗りつぶされている。
【0102】
図37から明らかなように、各ドロネー領域133の輪郭は、ジグザグである。この輪郭に、セル・オートマトン法に関して前述されたスムージング及び間引きがなされ、スプライン曲線が画かれる。このスプライン曲線により、ループが得られる。ループの拡大又は縮小がなされて、新たなループが得られてもよい。このループの外部に、ランド110が割り当てられる。換言すれば、ドロネー領域133の輪郭の近傍にランド110が割り当てられる。一方、ループの内部にディンプル108が割り当てられる。このようにして、図28及び29に示された凹凸パターンが得られる。
【0103】
図28及び29に示された凹凸パターンでは、多数のディンプル108がランダムに配置されている。それぞれのディンプル108は、他のいずれのディンプル108とも異なる輪郭形状を有している。この凹凸パターンを備えたゴルフボール102は、空力的対称性に優れる。
【0104】
ゴルフボール102のホップが抑制されるとの観点から、ディンプル108の深さは0.05mm以上が好ましく、0.08mm以上がより好ましく、0.10mm以上が特に好ましい。ゴルフボール102のドロップが抑制されるとの観点から、この深さは0.60mm以下が好ましく、0.45mm以下がより好ましく、0.40mm以下が特に好ましい。深さは、ディンプル108の最深点と仮想球の表面との距離である。
【0105】
全てのディンプル108の容積の合計(総容積)は、ゴルフボール102のホップが抑制されるとの観点から400mm以上が好ましく、450mm以上がより好ましく、500mm以上が特に好ましい。ゴルフボール102のドロップが抑制されるとの観点から、この合計は750mm以下が好ましく、700mm以下がより好ましく、650mm以下が特に好ましい。
【0106】
飛行性能の観点から、ディンプル108の面積の合計の、仮想球の表面積に対する比率(占有率)は、65%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0107】
実質的に球であるというゴルフボール102の本質が損なわれないとの観点から、ディンプル108の総数は250個以上が好ましく、300個以上が特に好ましい。それぞれのディンプル108が十分なディンプル効果を発揮するとの観点から、この総数は450個以下が好ましく、400個以下が特に好ましい。
【0108】
好ましくは、このゴルフボール102の差dRの絶対値は、0.50mm以下である。この絶対値が小さいほど、PH回転時の弾道とPOP回転時の弾道との差が小さい。この観点から、絶対値は0.45mm以下がより好ましく、0.40mm以下が特に好ましい。
【0109】
変動幅Rhが小さいほど、PH回転時に大きな飛距離が得られうる。その理由は、変動幅Rhが小さいほど、乱流遷移が円滑に継続されるためであると推測される。この観点から、変動幅Rhは3.0mm以下が好ましく、2.7mm以下が特に好ましい。変動幅Roが小さいほど、POP回転時に大きな飛距離が得られうる。その理由は、変動幅Roが小さいほど、乱流遷移が円滑に継続されるためであると推測される。この観点から、変動幅Roは3.0mm以下が好ましく、2.7mm以下が特に好ましい。PH回転時及びPOP回転時のいずれにおいても大きな飛距離が得られうるとの観点から、変動幅Rh及び変動幅Roの両方が3.0mm以下であることが好ましく、2.7mm以下であることが特に好ましい。
【0110】
ドロネー三角分割では、1つの母点と他の母点とを線で結ぶことにより、仮想球の表面の上に多数のドロネー領域が想定される。ドロネー三角分割以外の方法であって、1つの点と他の点とを線で結ぶ方法により、仮想球の表面の上に多数の領域が想定されてもよい。
【実施例】
【0111】
[評価1]
【0112】
図2及び3に示された、実施例1のパターンを設計した。このパターンは、391個のディンプルを有している。
【0113】
さらに、図20及び21に示された、比較例1のパターンを設計した。このパターンは、391個のディンプルを有している。
【0114】
前述の方法により、それぞれのパターンの変動幅Ro及びRhを算出した。この結果が、下記の表1に示されている。
【0115】
【表1】

【0116】
表1に示されるように、実施例1のパターンの変動幅Ro及びRhは小さい。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【0117】
[評価2]
【0118】
図28及び29に示された、実施例2のパターンを設計した。このパターンは、312個のディンプルを有している。
【0119】
さらに、図33及び34に示された、比較例2のパターンを設計した。このパターンは、158個のディンプルを有している。
【0120】
さらに、図46及び47に示された、比較例3のパターンを設計した。このパターンは、392個のディンプルを有している。

【0121】
前述の方法により、それぞれのパターンの変動幅Ro及びRhを算出した。この結果が、下記の表2に示されている。
【0122】
【表2】

【0123】
表2に示されるように、実施例のパターンの変動幅Ro及びRhは小さい。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0124】
以上説明された凹凸パターンは、ツーピースゴルフボールのみならず、ワンピースゴルフボール、マルチピースゴルフボール及び糸巻きゴルフボールにも適用されうる。
【符号の説明】
【0125】
2、102・・・ゴルフボール
8、108・・・ディンプル
10、110・・・ランド
12・・・メッシュ
14・・・仮想球
16・・・セル
21、121・・・第一ループ
28、128・・・第二ループ
29、138・・・第三ループ
30、130・・・ループ
32、132・・・母点
33・・・ボロノイ領域
36・・・垂直二等分線
133・・・ドロネー領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)仮想球の表面の上に多数の点をランダムに配置するステップ、
(2)上記点に基づいて、仮想球の表面の上に多数の領域を想定するステップ、
(3)上記領域の輪郭に基づいて、仮想球の表面にディンプルとランドとを割り当てるステップ
を含む、ゴルフボール表面の凹凸パターン設計方法。
【請求項2】
上記ステップ(2)において、上記領域の1つに上記点が1つ含まれるように、仮想球の表面の上に多数の領域が想定される請求項1に記載の設計方法。
【請求項3】
上記ステップ(2)において、ボロノイ分割によって領域が想定される請求項2に記載の設計方法。
【請求項4】
上記ステップ(2)が、
(2.1)上記仮想球の表面の上に多数の微小なセルを想定するステップ、
(2.2)それぞれのセルに最も近い点を母点として選定するステップ、
(2.3)それぞれの母点に関し、この母点を最も近い母点とするセルの集合を想定するステップ、及び
(2.4)それぞれの集合を、ボロノイ分割によって得られる領域とみなすステップ
を含む請求項3に記載の設計方法。
【請求項5】
上記ステップ(2)において、1つの点と他の点とを線で結ぶことにより、仮想球の表面の上に多数の領域が想定される請求項1に記載の設計方法。
【請求項6】
上記ステップ(2)において、ドロネー三角分割によって領域が想定される請求項5に記載の設計方法。
【請求項7】
上記ステップ(3)において、それぞれの輪郭の近傍にランドが割り当てられ、仮想球の表面のうちランド以外の部分にディンプルが割り当てられる請求項1から6のいずれかに記載の設計方法。
【請求項8】
上記ステップ(1)において、セル・オートマトン法に基づいて多数の点がランダムに配置される請求項1から7のいずれかに記載の設計方法。
【請求項9】
上記ステップ(1)が、
(1.1)複数の状態が想定されるステップ、
(1.2)仮想球の表面の上に多数のセルが想定されるステップ、
(1.3)それぞれのセルに、いずれかの状態が付与されるステップ、
(1.4)上記セルの状態及びこのセルの近傍に位置する複数のセルの状態に基づいて、当該セルの属性として、インサイド、アウトサイド及び境界のいずれかが付与されるステップ、
(1.5)境界のセルが結ばれることによって、ループが想定されるステップ、並びに
(1.6)上記ループの中心点が決定されるステップ
を含む請求項8に記載の設計方法。
【請求項10】
その表面に多数のディンプルを備えており、
これらのディンプルがランダムに配置されており、
それぞれのディンプルが、他のいずれのディンプルとも異なる輪郭形状を有しているゴルフボール。
【請求項11】
上記ディンプルのパターンが請求項1から9のいずれかに記載の方法で設計された請求項10に記載のゴルフボール。
【請求項12】
下記ステップ(1)から(16)によって得られる変動幅Rh及び変動幅Roが、2.7mm以下である請求項10又は11に記載のゴルフボール。
(1)ゴルフボールの両極を結ぶ線が、第一回転軸に想定されるステップ
(2)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、かつ上記第一回転軸と直交する大円が想定されるステップ
(3)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、上記第一回転軸と直交し、かつ上記大円との中心角の絶対値が30°である2つの小円が想定されるステップ
(4)これらの小円によりゴルフボールが区画され、このゴルフボールの表面のうちこれら小円に挟まれた領域が特定されるステップ
(5)上記領域に、軸方向において中心角度で3°刻みであり回転方向において中心角で0.25°刻みに、30240の点が決定されるステップ
(6)それぞれの点から上記第一回転軸に下ろした垂線の長さL1が算出されるステップ
(7)軸方向に並ぶ21個の垂線に基づいて算出された21個の長さL1が合計され、総長さL2が算出されるステップ
(8)回転方向に沿って算出される1440個の総長さL2から、最大値と最小値とが決定され、最大値から最小値が減じられた値である変動幅Rhが算出されるステップ
(9)上記ステップ(1)で想定された第一回転軸に直交する第二回転軸が想定されるステップ
(10)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、かつ上記第二回転軸と直交する大円が想定されるステップ
(11)ゴルフボールの仮想球の表面に存在し、上記第二回転軸と直交し、かつ上記大円との中心角の絶対値が30°である2つの小円が想定されるステップ
(12)これらの小円によりゴルフボールが区画され、ゴルフボールの表面のうちこれら小円に挟まれた領域が特定されるステップ
(13)上記領域に、軸方向において中心角度で3°刻みであり回転方向において中心角で0.25°刻みに、30240の点が決定されるステップ
(14)それぞれの点から上記第二回転軸に下ろした垂線の長さL1が算出されるステップ
(15)軸方向に並ぶ21個の垂線に基づいて算出された21個の長さL1が合計され、総長さL2が算出されるステップ
(16)回転方向に沿って算出される1440個の総長さL2から、最大値と最小値とが決定され、最大値から最小値が減じられた値である変動幅Roが算出されるステップ
【請求項13】
上記変動幅Rhと上記変動幅Roとの差dRの絶対値が0.4mm以下である請求項12に記載のゴルフボール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【公開番号】特開2013−9906(P2013−9906A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145793(P2011−145793)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)