説明

ゴルフボール

【課題】ディンプルのデザインにより空力効率を加減し、空力特性の優れたゴルフボールの提供。
【解決手段】ゴルフボールは、全体として球形の表面にディンプルアレイを形成している。球形表面の非ディンプル部分はランド領域16である。少なくとも1つのディンプルが、境界線28、基部20およびこれらを連結する側壁22を有する。側壁22はボール表面12とエッジ角をなす。境界線28上の各点でのエッジ角は当該点に隣接するランド領域16の幅に比例する。ランド領域16の幅が広い場合にはエッジ角を大きくし、狭い場合には小さくする。非モザイクディンプルパターンにおけるランド領域16の幅は、隣接するディンプルの位置により決定されるので、エッジ角は境界線28に沿って循環的に変化する。サイクルの数は、隣接ディンプルの数に対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゴルフボールに関し、より具体的には、改善されたディンプルを具備するゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールは、一般に、球形外側面に複数のディンプルを形成している。従来のディンプルは円形の凹みであり抗力を減少させ揚力を増大させる。これらディンプルは外側表面から傾斜して凹みを形成する。
【0003】
抗力は、ゴルフボールの飛行方向に対向する空気抵抗である。ボールが大気中を移動するときに、ボールを包囲する空気の速度は異なっており、このため、圧力が異なる。空気はボールの前面の滞留点で最大圧力を作用させる。このため、空気は、ボールの表面を流れて速度を増大させて圧力を減少させる。ある分離点で、空気はボールの表面から離れて、ボールの公報に大きな乱流領域を生成する。この乱流領域は、伴流(wake)と呼ばれ、圧力が小さくなっている。ボールの前面の高圧力とボールの後方の低圧力との差により、ボールが減速する。これが、ボールに対する抗力の主たる源泉である。
【0004】
ゴルフボールのディンプルにより、ボールの外側面に隣接する空気の薄い境界層が乱流の態様で流れる。このため、この薄い境界層は乱流境界層と呼ばれる。乱流は境界層にエネルギーを与え、分離点を後方にずらすように働き、これにより、この層がさらにボールの外側面に沿って接触するようになる。この結果、伴流領域が減少してボールの後方の圧力が上昇し、実質的に抗力が小さくなる。ディンプル壁がボールの外側面から傾斜するのは、各ディンプルの周囲であり、これが実際に境界層の乱流を形成する。
【0005】
揚力は、ボールに働く上向きの力であり、ボールの頂部およびボールの底部の間の圧力の差により形成される。この圧力差は、ボールのバックスピンに起因する空気流の湾曲により形成される。バックスピンにより、ボールの頂部は空気流とともに移動し、空気分離点をさらに後方に遅らせる。逆に、ボールの底部は空気流と逆に移動して分離点を前方にシフトさせる。このように分離点が非対称なため、流れのパターンがアーチ状になり、ボールの頂部上を流れる空気はボールの底部下を流れる空気より速く移動する。この結果、ボールの上の空気はボールの舌の空気より低圧になる。この圧力差により全体の力が発生し、これが揚力と呼ばれ、ボールを上方へと作用させる。各ディンプルの周囲はこの流れの現象を最適化する上でも重要である。
【0006】
ほとんどすべてのゴルフボール製造業者は、ディンプルにより抗力を減少させ、また揚力を増大させて、ゴルフボールの飛距離を増大させている。ボールの性能を向上させるために、多数のディンプルを設けることが好ましく、それゆえに、多量のディンプル周囲が設けられ、これがボール外周に均等に分散される。ディンプルを配置する際には、ディンプル間のスペース(ここでは、「ランドエリア」と呼ぶ)を最小化するように試みられる。なぜならランドエリアはボールの空力特性を改善しないからである。実際的な観点からは、典型的には約0.100インチから約0.180インチの範囲の直径の通常寸法の円形のディンプルが300から500に相当する。
【0007】
ゴルフボールの空力特性を改善する1つの試みは、特許文献1に提案されており、ここでは、好ましい解決策は、ボールのランド表面すなわち非ディンプル表面を最小化してディンプル領域を最大化することである。ボールのディンプル領域を最大化する1つの手法は、特許文献2および特許文献3に開示されるように、種々の寸法の円形のディンプルを密に詰めることである。実際には、重なり合うディンプルを用いない場合円形ディンプルの領域は約85%が限界である。
【0008】
ディンプル領域を最大化させる他の試みは、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7および特許文献8を含む多くの特許文献で提案されているように、多面体表面すなわち複数の平面表面から成るディンプル表面を有する多角形のディンプルを利用するものである。理論的には、これら多角形のディンプルによってより広いディンプル領域がえられる。なぜならディンプルをモザイク状に配置でき、すなわち、ディンプルをタイルパターンに配置し全体として均一なランド幅がディンプルの間に配置されるからである。
【0009】
非モザイクのディンプル構造では、ランド領域の断面形状は、位置に応じて、規則性なく変化する。ランドの位置に関連してその幅およびエッジ角度は、意図を反映させることなく、単に、当該ランドを囲むディンプルにより決定してしまう。
【0010】
そのため、ゴルフボールの技術分野において、ディンプル領域を大きくし、空力特性を優れたものにするという要望が依然として存在する。
【特許文献1】米国特許第6162136号
【特許文献2】米国特許第5957786号
【特許文献3】米国特許第6358161号
【特許文献4】米国特許第6290615号
【特許文献5】米国特許第5338039号
【特許文献6】米国特許第5174578号
【特許文献7】米国特許第4830378号
【特許文献8】米国特許第4090716号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は上述の事情を考慮してなされたものであり、ディンプルのデザインによりゴルフボールの空力性能を加減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明によれば、上述の目的を達成するために、特許請求の範囲に記載のとおりの構成を採用している。
【0013】
さらにこの発明を説明する。
【0014】
この発明では、上述の目的を達成するために、全体として円形の境界線(長円形、楕円、卵形、その他の全体として丸い形状を含む)と、基部と、境界線および基部を連結する側壁とを有する、ゴルフボールのディンプルが提供される。側壁は、明確な角度で基部と結合しても良く、またスムーズに基部と一体化してもよい。境界線に沿って、側壁の接線およびボール仮想表面の接線が端部角度を形成する。エッジ角度は、ディンプルの境界線の周囲で循環的に変化する。また、エッジ角度は一群または一まとまりのディンプルの境界線の周囲で循環的に変化しても良い。
【0015】
また、全体的に球形のランド表面と、この表面に形成されたディンプルアレイとを含むゴルフボールが提供される。上記ディンプルの少なくとも1つが、境界線、基部、および隣接ランド領域とエッジ角度をなす側壁を含む。エッジ角度は、単一のディンプルの境界線の周囲または一まとまりのディンプルの境界線の周囲で循環的に変化する。境界線の個々の点のエッジ角度は、隣接ランド領域の幅に応じて変化する。好ましくは、エッジ角度は、隣接ランド領域の幅が広い場所で、大きくなり、一般に隣接ランド領域の幅が小さくなると、小さくなる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、ディンプルの境界線、基部および側壁のデザインにより空力性能を加減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】20面体パターンに円形のディンプルを配置した従来のゴルフボールの斜視図である。
【図1a】円形ディンプルの半分を示す模式的な断面図である
【図2】この発明のゴルフボールの外側表面の一部を拡大して示す斜視図である。
【図2a】図2のA−A線に沿う外側表面の断面図である。
【図2b】図2のB−B線に沿う外側表面の断面図である。
【図3】この発明の代替例のゴルフボールの外側表面の一部を拡大して示す斜視図である。
【図4】この発明の他の代替例のゴルフボールの外側表面の一部を拡大して示す斜視図である。
【図5】この発明のさらに他の代替例のゴルフボールの外側表面の一部を拡大して示す斜視図である。
【図6】この発明のさらに他の代替例のゴルフボールの外側表面の一部を拡大して示す斜視図である。
【図7】この発明のさらに他の代替例のゴルフボールの外側表面の一部を拡大して示す斜視図である。
【図8】この発明のさらに他の代替例のゴルフボールの外側表面の一部を拡大して示す斜視図である。
【図9】この発明のさらに他の代替例のゴルフボールの外側表面の一部を拡大して示す斜視図である。
【図10】この発明のさらに他の代替例のゴルフボールの外側表面の一部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、従来のゴルフボール10、すなわちTITLEIST NXT(商標)ゴルフボールを示す。この具体的なボールは一例を示すためのものにすぎない。この発明は、モザイク状でないパターンで配置された任意のゴルフボールに適用できる。ゴルフボール10は、実質的に球形な外側表面12を有し、これに複数のディンプル14が配置されている。好ましくは、ディンプル14は外側表面12に形成された凹みであるが、外側表面12から伸びた凸部でもよい。ディンプルは、カバー領域が最適な空力上の目的を実現するように選択されたディンプルパターンで外側表面12に配置される。典型的には、ディンプル14は緊密な態様で外側表面12上に配列される。ディンプル14を外側表面12に配列する多くのパターンが、当業界で知られており、採用されており、例えば、一般的には3つのプラトン立体、すなわち、20面体(20個の面を持った多面体)、12面体(12個の面を持った多面体)、おより8面体(8個の面を持った多面体)に基づくパターンを利用できる。図1に示されるパターンは20面体のパターンである。
【0019】
外側表面12の所定部分に対して、従来採用されている任意のディンプル詰め込みパターンはディンプル14のアレイを構成する。例えば、典型的な20面体に基づくレイアウトの場合には、ほとんどのディンプルは六角形のアレイに配列され、すなわち、各デンプルは6個の隣接するディンプル14を有し、わずかなディンプル14が5角形のアレイに配列され、すなわち、各ディンプル14が5個の隣接するディンプル14を有する。8面体に基づくレイアウトでは、通常、多くのディンプル14は4角形のアレイに配列される。他の配列しキー無ではこれらの例のように規則的、順序的でないが、各ディンプル14は3個から7個の接近隣接するディンプルを有する。
【0020】
図2は、この発明の好ましい実施例のディンプル14を含むゴルフボールの外側表面12の一部を示す。図2aおよび図2bはディンプル14の断面を示す。外側表面12の非ディンプル領域はランド領域16であり、ランド領域16がディンプル14間を分離する。
【0021】
各ディンプル14は境界線18を含み、この境界線が外側表面12の形状を規定する。境界線18は好ましくは円形または実質的な円形、例えば長円形、楕円形、または卵形である。境界線18の他の形状もこの実施例では採用できる。採用できる形状にはディンプル14のモザイクパターンを構成しない任意の形状が含まれる。多面体ディンプル表面を具備する多角形ディンプルは、カバー領域の改善に見合った性能向上を実現しないと考えられている。また、多角形ディンプルの線形のエッジや連結部のするどい頂点が円形ディンプルの湾曲したエッジより大きな抗力を生成すると考えられている。他の実施例では、モザイク配列をもたらす多角形ディンプルが適切である。
【0022】
実質的に円形なディンプル14をアレイに配列する場合、任意の2つのディンプルの間のランド領域幅24は不均一である。ディンプルの境界線18のある点のランド領域幅24は、その点と、隣接ディンプルの境界線18の第2の点との間の距離として定義され、第1のディンプルの重心からの径方向に沿って測定される。図2から理解されるように、ランド領域16は全体としてディンプル14の挟まれた3角形であり、ランド領域幅24は任意の2つのディンプルの間の種々の点で異なったものとなっている。
【0023】
各ディンプル14は、また、基部20および側壁22を有している。側壁22は境界線18を基部20と連結する。側壁22は、好ましくは、まっすぐな断面形状を有するが、湾曲形状等の他の構造を採用しても良い。これは、基部20と、角度を持って交差しても良いし、基部20へとスムーズに一体化してもよい。基部20は、好ましくは平坦であるが、湾曲しても良く、例えば、外側表面の球形湾曲と同心の曲率を有しても良い。図2に示されるように、基部境界線28は非円形の形状をしており、この実施例では、6分葉形状である。境界線18が円形であり、基部境界線28が非円形であるので、側壁22が外側表面12となす角、すなわちエッジ角αは、境界線18に沿って変化する。
【0024】
エッジ角αは、正確に測定することが困難である。なぜなら、側壁22が境界線18とぶつかる点である、ディンプルエッジ15は、製造上の配慮や仕上げ塗料コートの影響でしばしば丸くなっているからである。検討の便宜上、エッジ角αは図1aに示すように定義する。ゴルフボール10は、最大外側径Rmaxと、深さDのディンプル14上に伸びる仮想外側表面12aとを有する。側壁接線3は、外側表面12より0.0030インチ下の第2径R.0030を規定する点7で側壁22と接する線である。エッジ15は、側壁接線3が仮想外側表面12aと交差する点として定義される。ディンプル径9はエッジ15から測定される。仮想外側表面接線5は、仮想外側表面12aのエッジ15における接線である。エッジ角αは、側壁接線3が仮想外側表面接線5と交差する点で測定される。
【0025】
エッジ角αはディンプル14の境界線18に沿って変化する。当技術分野では、全体としてディンプル間隔が大きなディンプルパターンでは、エッジ角が比較的大きければ、大きな飛距離が実現されることが知られている。ディンプル形状がそうであるようにランド領域の形状もゴルフボールの空力特性に影響するので、この点を制御することも有益である。全体のディンプル間隔が大きなディンプルパターンでは、一般的にエッジ角αを大きくすれば飛距離が増大するであろう。このコンセプトを個々のディンプルレベルに適用すると、境界線18に沿う任意の点において、エッジ角αは、当該点に隣接するランド領域幅24に比例する。例えば、図2に示すように、具体的なディンプル14aの境界線18に沿う点1は隣接する他のディンプル14bと最も遠い点であるが、この点において、ローカルなエッジ角α1は比較的大きい。同様に、ディンプル14aの境界線18に沿う点2は隣接するディンプル14bと最も近い点であるが、この点において、エッジ角度αは比較的小さい。他の例では、隣接ディンプルとの距離が大きな場所で、ローカルなエッジ角度が小さい。エッジ角α1およびα2の間の好ましい差は、約1度から約8度であり、より好ましくは、約3度から約6度であり、最も好ましくは、約4度から約5度である。エッジ各は、典型的には約12度から約18度の範囲であるが、いくつかの場合にはより小さくても良いし、またかなり大きくても良い。所望の軌道を実現しながらボールの飛行距離を最大化するように、通常、値が選択される。最適なエッジ角は、種々の要因、例えば、ボールのスピン特性、ディンプルにより占められるボール表面の量、ディンプルの深さ、およびディンプルの断面形状により左右される。
【0026】
エッジ角は、好ましくは、境界線18に沿って循環的であり、隣接ディンプルの数と同数の繰り返し(サイクル)数である。図2に示す実施例では、各ディンプルは6個の隣接ディンプル(すべてが図示されているわけではない)を有し、6サイクルである。同一のゴルフボール10の各ディンプル14内で、また他のディンプル14内で、ディンプル14および隣接ディンプルの間の空間的な関係に応じて、サイクルは波長や振幅を変化させてもよい。エッジ角αのローカルな最大値はランド領域幅24が最も大きな境界線18上であり、ローカルな最小値はランド領域幅が最も狭い場所に整合されている。この実施例においてエッジ角αのこのようなサイクルを実現するために、一例では、基部境界線28を、その分葉がランド領域16の最も広い部分を指すように設定している。換言すれば、基部境界線28の径が、ランド領域幅24の最長部分と整合するときに、最も大きくなり、最大エッジ角αを形成する。他の例では、エッジ角は、一まとまり(クラスタ)のディンプル例えば3個のディンプルのグループ8、5角形アレイ6または6角形アレイ4の境界(すなわちクラスタの境界)に沿って、変化する。これらアレイの例は図1に示すとおりである。
【0027】
図3は、ディンプル14の代替的な実施例を示す。この実施例は図2の実施例と類似しており、各ディンプル14は、ゴルフボール(全体は示さない)の外側表面12で円形の境界線18を有する。さらに、側壁22がディンプル境界線18を平坦な基部20に連結する。側壁22は、ディンプル14の回りでスムーズでも連続でもない。その代わり、側壁の平滑な凸部分が、曲折した谷部25で連結している。
【0028】
この実施例では、基部境界線28は異なった形状をしている。基部境界線28は、複数の丸いエッジ30を有し、これら端部が、図2に示される実施例の正弦波形状の丸い分葉と反対向きで谷部25の点で結合している。基部境界線28の形状の向きは、図2に示される実施例と類似である。すなわち、点32が、ランド領域16の最も広い部分に整合している。この結果、各ディンプル14のエッジ角は境界線18に沿って循環的に変化する。
【0029】
図4は、ディンプル14の他の代替的な実施例を示している。図2に示す実施例と同様に、各ディンプル14は、ゴルフボール(全体は示さない)の外側表面12で円形の境界線18を有する。さらに、側壁22がディンプル境界線18を平坦な基部20に連結する。側壁22は、ディンプル14の回りでスムーズでも連続でもない。その代わり、側壁22が、対をなす全体として平坦な部分26、27を谷部25の間に有する。平坦な部分26、27は尾根部29を形成する。尾根部29はランド領域の最も狭い部分に対応する。
【0030】
この実施例では、基部境界線28は全体として星形であり、複数の直線部分(30)が平坦な部分26、27の境界をなし、外側の点32および内側の点34で交差する。基部境界線28の形状の向きは、図2に示される実施例と類似である。すなわち、外側の点32が、谷部25およびランド領域16の最も広い部分に整合し、内側の点34が、尾根部29およびランド領域16の最も狭い部分に整合している。この結果、各ディンプル14のエッジ角は境界線18に沿って循環的に変化する。
【0031】
図5は、ディンプル14の他の代替的な実施例を示している。図2に示す実施例と同様に、各ディンプル14は、ゴルフボール(全体は示さない)の外側表面12で円形の境界線18を有する。さらに、側壁22がディンプル境界線18を平坦な基部20に連結する。ただし、この実施例では、基部境界線28が全体として星形であり、多数の直線部分(30)が湾曲した外側の点32および湾曲した内側の点34で連結する。こられ湾曲した点により、図4の鋭い谷部25および尾根部29がなくなっている。基部境界線28の形状の向きは図4に示す実施例と同様であり、湾曲した外側の点32がランド領域16の最も大きな部分に整合し、湾曲した内側の点34がランド領域16の最も狭い部分に整合する。この結果、各ディンプル14のエッジ角は境界線18に沿って循環的に変化し、サイクルの数は、隣接ディンプルの数、この実施例では6に等しい。
【0032】
図6は、ディンプル14の他の代替的な実施例を示している。他の実施例と同様に、各ディンプル14は円形の境界線18をゴルフボール(全体は示さない)の外側表面12に形成している。さらに、側壁22が境界線18を好ましくは平坦な基部20に連結する。この実施例では、側壁22はディンプル14のまわりで平滑でも連続でもない。側壁22の凹部が連結して尾根部29を形成する。
【0033】
この実施例では、基部境界線28は全体として花の形状をしており、複数の分葉36が内側の点34で連結する。基部境界線28の形状の向きは図2に示す実施例と同様であり、分葉36がランド領域16の最も大きな部分に整合し、内側の点34がランド領域16の最も狭い部分に整合する。この結果、各ディンプル14のエッジ角は境界線18に沿って循環的に変化し、サイクルの数は、隣接ディンプルの数、この実施例では6に等しい。
【0034】
図7は、この発明のディンプル14の他の実施例を示している。この実施例では、ディンプル14は全体として円形であり、ただし若干スカラップ状(帆立貝のように湾曲した)の境界線18を外側表面12に形成している。このタイプのディンプルは多重の凹みとして形成される。側壁22が境界線18を好ましくは平坦な基部20に連結する。この実施例では、側壁22はディンプル14のまわりで平滑でも連続でもない。側壁22の凹部が連結して尾根部29を形成する。
【0035】
基部境界線28の形状は、図6に示す基部境界線と類似しており、短い分葉36を形成し、こられが点34で連結する。側壁22は内側の点34と対向して外側の楔部23を有し、これらがランド領域の最も狭い部分に対応する。基部20の向きは図6の示す実施例と同様であり、短い分葉36がランド領域16の最も大きな部分に整合し、内側の点34および楔部23がランド領域16の最も狭い部分に整合する。この結果、各ディンプル14のエッジ角は境界線18に沿って循環的に変化し、サイクルの数は、隣接ディンプルの数、この実施例では6に等しい。
【0036】
図8は、この発明のディンプル14のさらに他の実施例を示している。この実施例では、図7に示す実施例と同様に、ディンプル14は全体として円形であり、ただし若干スカラップ上(帆立貝のように湾曲した)境界線18を外側表面12に形成している。側壁22が境界線18を基部20に連結する。
【0037】
基部20は好ましくは非平坦であり、複数の分葉36を有する。分葉36はディンプル境界線18へ伸び、最も大きなエッジ角αを形成する。側壁22は、この実施例では分断されており、不連続な、離間した楔部23を含む。楔部23は最小のエッジ角αに関連する。この結果、各ディンプル14のエッジ角は境界線18に沿って循環的に変化し、サイクルの数は、隣接ディンプルの数、この実施例では6に等しい。
【0038】
図9は、この発明のディンプル14のさらに他の実施例を示している。この実施例では、図7の実施例と同様に、ディンプル14は全体として円形であり、ただし若干スカラップ状(帆立貝のように湾曲した)の境界線18を外側表面12に形成している。側壁22が境界線18を好ましくは平坦な基部20に連結する。この実施例では、側壁22はディンプル14のまわりで平滑でも連続でもない。側壁22の凹多角形部分21が連結して尾根部29を形成する。さらに、隣接する多角形部分21の上方部分の間に楔部23が形成されている。楔部23はランド領域16の最も狭い部分に対応して配置されている。楔部23は、境界線18から、多角形部分21より浅い角度で分岐する。この結果、各ディンプル14のエッジ角は境界線18に沿って循環的に変化する。
【0039】
この実施例では、図3に示す実施例と同様に、基部境界線28が複数の湾曲したエッジ(30)を有し、図2に示す実施例の湾曲した正弦波形状の分葉と対向して点32で連結する。基部境界線28の形状の向きは、点32が楔部23およびランド領域16の最も狭い部分と整合するようなものである。
【0040】
さらに他の実施例においては、図10に示すように、ゴルフボール10は、ディンプル14のクラスタ40を含む表面組織を有している。仮想クラスタ境界線42は全体として円形である。ディンプル14はこの分野で知られている任意の形状・構造をとることができ、これに限定されないが、モザイク上の多角形、少なくとも一部がアーチ状のエッジの部分多角形、おより円形が含まれる。図示の例では、ディンプル14は、全体としてモザイクパターンで配置された多角形および部分多角形である。仮想クラスタ境界線42内で、ランド領域16の幅が、隣接する2つのディンプルの間で均一になっている。すなわち、一方のディンプル14Aのディンプル境界線18Aは、他方のディンプル14Bのディンプル境界線18Bと実質的に平行になっている。ただし、隣接するクラスタ40の間のクラスタ間ランド領域46はクラスタ境界線42の湾曲した形状に従って変化する。そのため、仮想クラスタ境界線42に沿って配置されるディンプル14のエッジ角αは、隣接するクラスタ間ランド領域46に応じて選定される。このため、エッジ角αは好ましくは仮想クラスタ境界線42に沿って変化する。ランド領域46の幅が小さい場合、エッジ角αは小さく、ランド領域46の幅が大きい場合、エッジ角αは大きい。
【0041】
当業者には容易に理解されるように、この発明は、大きなエッジ角を大きなランド領域に整合させて空力効率を増大させることに限定されない。最近のゴルフボールは、ゴルフボールの組成およびディンプル設計により空力性能が著しく改善されたものになっている。そのため、いくつかの構成なゴルフボール製品は、米国ゴルフ境界(USGA)により示されるように標準ドライバで160フィート/秒の速度で10度の角度で打ち出した場合に、実際に、最大距離の280ヤード+−6%を超えてしまう(「ゴルフボールの歴史的なフライト、新製品が距離および精度で歓迎されている」、L.Shapiro、ワシントンポスト、pp.D1、D4、2001年3月22日)。米国特許第5209485号に開示されるように、ゴルフボールの飛距離を減少させるために、非効率なディンプルパターンや低反発のポリマー組成が提案されている。このため、この発明は、空力効率を操作するために広く利用でき、増加するだけに限られない。空力効率を増大するには、上述したとおり、大きなエッジ角を大きなランド領域に整合させる。同様に、USGA性能標準に適合させるために空力効率を減少させるには、大きなエッジ角を小さなランド領域に整合させれば良い。
【0042】
この発明について種々説明してきたが、上述したこの発明の実施例の種々の特徴は単一でも組み合わせてもよいことを理解されたい。この発明のディンプルは、他のタイプの飛行オブジェクトに適用できる。さらに、上述したような素樹の構造の複数のディンプルを1つのゴルフボールに一体に利用しても良いことはもちろんである。この発明は実施例に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
3 側壁接線
5 仮想外側表面接線
9 ディンプル径
10 ゴルフボール
12 外側表面
12a 仮想外側表面
14 ディンプル
15 ディンプルエッジ
16 ランド領域
20 基部
21 凹多角形部分
22 側壁
23 楔部
24 ランド領域幅
25 谷部
26、27 平坦部分
28 基部境界線
29 尾根部
30 エッジ(直線部分)
36 分葉
40 クラスタ
42 クラスタ境界線
46 クラスタ間ランド領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体として円形の境界線と、
凹線分および凸線分の繰り返しを含む輪郭を有する平坦な、または湾曲した基部と、
上記境界線と上記基部の輪郭線とを連結する側壁とを有し、
側壁接線とボール仮想表面接線とがエッジ角を形成し、このエッジ角が上記境界線に沿って周期的に変化するようにしたことを特徴とするゴルフボールディンプル。
【請求項2】
上記基部は基部境界線に沿う分葉を有する請求項1記載のゴルフボールディンプル。
【請求項3】
ベース境界線が全体として正弦波形状である請求項1記載のゴルフボールディンプル。
【請求項4】
上記基部は星形である請求項1記載のゴルフボールディンプル。
【請求項5】
上記側壁に谷部および/または尾根部が形成される請求項1記載のゴルフボールディンプル。
【請求項6】
全体として球形の表面と、
上記表面上にランド領域により分離されて形成された複数のディンプルとを有し、
少なくとも1つのディンプルが、
境界線と、
基部と、
エッジ角を有し、上記境界線と上記基部の輪郭線とを連結する側壁とを有し、上記エッジ角が上記境界線に沿って周期的に変化することを特徴とするゴルフボール。
【請求項7】
エッジ角のサイクル数が隣接するディンプルの個数と等しい請求項6記載のゴルフボール。
【請求項8】
上記ランド領域の幅が比較的大きな場所における上記境界線上の点に形成される第1のエッジ角が、上記ランド領域の幅が比較的狭い場所における上記境界線上の点に形成される第2のエッジ角より大きい請求項6記載のゴルフボール。

【図1】
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【図1a】
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【図2】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−232170(P2012−232170A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171646(P2012−171646)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【分割の表示】特願2005−289484(P2005−289484)の分割
【原出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY