説明

ゴルフボール

【課題】識別性、高級感、耐候性及びペイント層の耐久性に優れたゴルフボール2の提供。
【解決手段】ゴルフボール2は、球状のコア4、このコア4の外側に位置するカバー6、マーク層8及びペイント層10を備えている。カバー6の樹脂組成物は、複合粒子を含んでいる。複合粒子は、核とコート層とからなる。核は、酸化アルミニウムからなる。コート層は、酸化チタンからなる。この複合粒子は、フレーク状である。複合粒子の量は、カバー6の基材樹脂100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下である。ペイント層10に、複合粒子が分散してもよい。ペイント層10における複合粒子の量は、ペイント層10の基材樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールには、マークが印刷されている。マークは、ブランド及びボール番号を含む。ゴルファーは、ブランドにより、自らのボールを他人のボールと識別することができる。ゴルファーは、ボール番号によっても、自らのボールを他人のボールと識別することができる。ゴルファーは、ボールに近づき、マークに基づいてボールを識別する。遠方からでは、マークに基づく識別は困難である。
【0003】
ゴルフボールは、コアとカバーとを備えている。一般的なゴルフボールは、ほぼ白色に着色されている。着色は、カバーに顔料が分散することで達成されている。カバーの表面に塗装が施されることで、着色が達成されることもある。
【0004】
ゴルフボールが、青色、赤色等に着色されることもある。これらのゴルフボールは、「カラーボール」と称されている。カラーボールでは、カバー又はペイント層に多量の顔料が分散している。カラーボールは、白色ボールと容易に識別されうる。しかし、カラーボールは高級感に欠ける。カラーボールは、ゴルファーに敬遠されている。
【0005】
カバーに金属粉末が分散したゴルフボールも存在する。金属粉末により、ゴルフボールに光輝性が付与される。金属粉末は、識別性に寄与する。しかし、金属粉末はゴルフボールの明度を損なう。金属粉末が用いられたゴルフボールは、高級感に劣る。
【0006】
特開平6−170013号公報には、カバー又はペイント層が複合粒子を含むゴルフボールが開示されている。この複合粒子は、雲母と、この雲母を被覆する酸化チタンとからなる。このゴルフボールは、光輝性を有し、かつ偏光性の外観を呈する。このゴルフボールは、通常のゴルフボールと識別されうる。
【0007】
特開2000−254251公報には、ペイント層に液晶ポリマーを含む顔料が分散したゴルフボールが開示されている。この顔料は、偏光性に寄与する。このゴルフボールの外観は、個性的である。このゴルフボールは、通常のゴルフボールと識別されうる。
【0008】
特開2004−166719公報には、ペイント層がガラスフレークを含むゴルフボールが開示されている。このゴルフボールは、光輝性に優れる。このゴルフボールは、通常のゴルフボールと識別されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−170013号公報
【特許文献2】特開2000−254251公報
【特許文献3】特開2004−166719公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
雲母は天然鉱物であり、不純物を多く含む。この不純物は、ゴルフボールの彩度を損ねる。雲母は半透明性なので、雲母の隠蔽力は弱い。従って、十分な光輝性は発揮されない。さらに、雲母は強度に劣るので、混練時に破損しやすい。破損により、偏光性が損なわれる。特開平6−170013号公報に開示されたゴルフボールは、高級感に劣る。
【0011】
液晶ポリマーを含む顔料は、使用によって著しく変色する。しかも、顔料の偏光性に起因して、変色が目立つ。特開2000−254251公報に開示されたゴルフボールは、耐候性に劣る。
【0012】
ガラスフレークの粒子は、大きい。このガラスフレークを含む塗料が塗布されると、ガラスフレークがペイント層の平滑性を損なう。このペイント層は、外観に劣る。さらに、ガラスフレークは、ペイント層の耐久性を阻害する。特開2004−166719公報に開示されたゴルフボールは、高級感及びペイント層の耐久性に劣る。
【0013】
本発明の目的は、識別性、高級感、耐候性及びペイント層の耐久性に優れたゴルフボールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るゴルフボールは、コアと、このコアを覆うカバーと、このカバーを覆うペイント層とを備える。このカバー又はペイント層は、核とこの核を被覆するコート層とを有する複合粒子を含む。核は、金属酸化物からなる。コート層は、酸化チタンを含有する。
【0015】
好ましくは、核は酸化アルミニウムからなる。好ましくは、複合粒子はフレーク状である。
【0016】
樹脂組成物からなるカバーが複合粒子を含む場合、複合粒子の好ましい量は、この樹脂組成物の基材樹脂100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下である。
【0017】
樹脂組成物からなるペイント層が複合粒子を含む場合、複合粒子の好ましい量は、この樹脂組成物の基材樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である。
【発明の効果】
【0018】
このゴルフボールでは、核における反射光とコート層における反射光とが干渉する。この干渉に起因して、ゴルフボールに光輝性が付与される。この光輝性により、識別性及び高級感が発揮される。核は金属酸化物からなるので、このゴルフボールは耐候性に優れる。この複合粒子がペイント層に用いられても、複合粒子がペイント層の耐久性を阻害しない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールの一部が示された断面図である。
【図2】図2は、図1のゴルフボールの一部が示された拡大断面図である。
【図3】図3は、図1のゴルフボールに配合される複合粒子が示された断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール2が示された模式的断面図である。図2は、図1のゴルフボール2の一部が示された拡大断面図である。このゴルフボール2は、球状のコア4、このコア4の外側に位置するカバー6、マーク層8及びペイント層10を備えている。このゴルフボール2は、その表面にディンプル12及びランド14を備えている。図1では、マーク層8及びペイント層10の図示が省略されている。ゴルフボール2が、カバー6とマーク層8との間に、他のペイント層を備えてもよい。
【0022】
コア4は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。ゴム組成物の基材ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。好ましくは、架橋には共架橋剤が用いられる。好ましくは、ゴム組成物は、有機過酸化物を含む。コア4が2以上の層から構成されてもよい。
【0023】
カバー6は、樹脂組成物からなる。熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が、カバー6に用いられうる。典型的な樹脂は、アイオノマー樹脂及びポリウレタンである。カバー6が、スチレンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー及びポリオレフィンエラストマーを含んでもよい。
【0024】
カバー6には、白色着色剤が添加されている。典型的な白色着色剤は、二酸化チタンである。二酸化チタンと他の顔料との併用により、所望の色を有するカバー6が得られてもよい。二酸化チタンの量は、基材樹脂100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0025】
カバー6の樹脂組成物は、複合粒子を含んでいる。図3は、この複合粒子16の断面斜視図である。この複合粒子16は、核18とコート層20とからなる。核18は、金属酸化物からなる。コート層20は、酸化チタンからなる。カバー6に浸入した光線の一部は、コート層20において反射する。カバー6に浸入した光線の一部は、コート層20を通過し、核18において反射する。コート層20における反射光は、核18における反射光と干渉する。この干渉により、ゴルフボール2に光輝性が付与される。光輝性を有するゴルフボール2の外観は、従来のゴルフボールの外観とは異なる。このゴルフボール2は、識別性に優れる。さらに、光輝性を有するゴルフボール2は、高級感に優れる。
【0026】
図3に示されるように、複合粒子16はフレーク状である。フレーク状の複合粒子16では、干渉作用に方向性がある。この複合粒子16の色目は、見る角度に応じて変動する。フレーク状の複合粒子16が分散することにより、ゴルフボール2に偏光性が付与される。この偏光性により、ゴルフボール2の識別性及び高級感が達成される。
【0027】
核18が金属酸化物からなる複合粒子16は、変色しにくい。この複合粒子16は、ゴルフボール2の耐候性を阻害しない。金属酸化物は強度に優れるので、この複合粒子16はペイント層10の耐久性を阻害しない。核18が金属酸化物からなる複合粒子16は、樹脂組成物の混練のときに破損しにくい。破損の抑制により、十分な偏光性がゴルフボール2に付与される。さらに、金属酸化物の隠蔽力は高いので、この複合粒子16によって識別性が高められる。
【0028】
核18の好ましい金属酸化物としては、酸化アルミニウム(Al)が例示される。酸化アルミニウムにより、アルミニウムが用いられた場合に比べ、十分な光輝性が付与される。酸化アルミニウムにより、ゴルフボール2の高級感が達成される。しかも、酸化アルミニウムは強度に優れる。
【0029】
酸化チタンからなるコート層20は、ゴルフボール2の光輝性に寄与する。典型的には、コート層20に二酸化チタンが用いられる。コート層20が、少量の顔料を含んでもよい。コート層20が酸化チタン以外の物質を含む場合、コート層20における酸化チタンの比率は90質量%以上、さらには95質量%以上である。コート層20の厚みは、0.1μm以上10μm以下が好ましい。
【0030】
複合粒子16の粒度は、5μm以上50μm以下が好ましい。粒度が5μm以上である複合粒子16により、光輝性及び偏光性が達成されうる。この観点から、粒度は10μm以上がより好ましい。粒度が50μm以下である複合粒子16が用いられることにより、カバー6のウェルドラインが目立ちにくい。この観点から、粒度は30μm以下がより好ましい。粒度は、株式会社堀場製作所の光散乱式粒子計数器「LA−910」によって測定された数平均値である。
【0031】
複合粒子16の量は、カバー6の基材樹脂100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下が好ましい。0.1質量部以上の複合粒子16がカバー6に分散することで、優れた光輝性が発揮される。この観点から、この量は0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が特に好ましい。この量が15質量部以下であるカバー6では、高い明度によって高級感が達成される。この観点から、この量は10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が特に好ましい。
【0032】
カバー6には、必要に応じ、硫酸バリウムのような充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が適量配合される。カバー6の厚みは、0.1mm以上3.5mm以下である。
【0033】
マーク層8は、インク組成物からなる。このインク組成物は、基材樹脂と顔料とを含む。基材樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール及びニトロセルロースが例示される。マーク層8の色は、カバー6の色とは異なる。マーク層8により、メーカー名、ブランド、ボール番号等が表示される。
【0034】
マーク層8は、カバー6の表面に印刷が施されることにより形成される。パッド印刷、刻印式印刷、インクジェット式印刷、転写フィルム式印刷等が、採用されうる。生産性の観点から、パッド印刷が好ましい。
【0035】
ペイント層10は、カバー6又はマーク層8を覆っている。ペイント層10により、マーク層8が保護される。ペイント層10は、塗料の塗布によって形成されている。静電塗装、スプレーガン塗装、刷毛塗り等が、採用されうる。塗料の基材樹脂としては、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、セルロース樹脂等が例示される。ペイント層10の耐久性の観点から、二液硬化型ポリウレタンが好ましい。
【0036】
二液硬化型ポリウレタンは、主剤と硬化剤との反応によって得られる。ポリオール成分を含有する主剤とポリイソシアネート(ポリイソシアネート誘導体を含む)を含有する硬化剤との反応によって得られる二液硬化型ポリウレタンが好ましい。
【0037】
主剤のポリオール成分としてウレタンポリオールが用いられることが、好ましい。ウレタンポリオールは、ウレタン結合と、少なくとも2以上のヒドロキシル基を有する。好ましくは、ウレタンポリオールは、その末端にヒドロキシル基を有する。ウレタンポリオールは、ポリオール成分のヒドロキシル基がポリイソシアネートのイソシアネート基に対してモル比で過剰になるような割合で、ポリオールとポリイソシアネートとが反応させられることによって得られうる。
【0038】
ウレタンポリオールの製造に使用されるポリオールは、複数のヒドロキシル基を有する。重量平均分子量が50以上2000以下、特には100以上1000以下のポリオールが好ましい。低分子量のポリオールとして、ジオール及びトリオールが挙げられる。ジオールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。トリオールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン及びヘキサントリオールが挙げられる。高分子量のポリオールとして、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)及びポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)のようなポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)のような縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートのようなポリカーボネートポリオール;並びにアクリルポリオールが挙げられる。2種以上のポリオールが併用されてもよい。
【0039】
ウレタンポリオールの製造に使用されるポリイソシアネートは、複数のイソシアネート基を有する。ポリイソシアネートの具体例としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びパラフェニレンジイソシアネート(PPDI)のような芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(HXDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)のような脂環式ポリイソシアネート;並びにヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のような脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。2以上のポリイソシアネートが併用されてもよい。耐候性の観点から、TMXDI、XDI、HDI、HXDI、IPDI及びH12MDIが好ましい。
【0040】
ウレタンポリオール生成のためのポリオールとポリイソシアネートとの反応では、既知の触媒が用いられうる。典型的な触媒は、ジブチル錫ジラウレートである。
【0041】
ウレタンポリオールに含まれるウレタン結合の比率は、0.1mmol/g以上5mmol/g以下が好ましい。この比率が0.1mmol/g以上であるウレタンポリオールにより、ペイント層10の耐擦傷性が達成されうる。この比率が5mmol/g以下であるウレタンポリオールにより、ペイント層10のカバー6への追従性が達成されうる。追従性に優れたペイント層10では、ゴルフボール2が繰り返し打撃されたときのクラックが生じにくい。原料となるポリオールの分子量の調整により、ウレタン結合の比率が上記範囲に設定されうる。ポリオールとポリイソシアネートとの配合比率の調整によっても、ウレタン結合の比率が上記範囲に設定されうる。
【0042】
主剤と硬化剤との反応に要する時間が短いとの観点から、ウレタンポリオールの重量平均分子量は4000以上が好ましく、4500以上がより好ましい。ペイント層10のカバー6との密着性の観点から、重量平均分子量は10000以下が好ましく、9000以下がより好ましい。
【0043】
ペイント層10のカバー6との密着性の観点から、ウレタンポリオールの水酸基価(mgKOH/g)は15以上が好ましく、73以上がより好ましい。主剤と硬化剤との反応に要する時間が短いとの観点及びクラックの抑制の観点から、水酸基価は130以下が好ましく、120以下がより好ましい。
【0044】
主剤が、ウレタンポリオールとともに、ウレタン結合を有さないポリオールを含有してもよい。ウレタンポリオールの原料である前述のポリオールが、主剤に用いられうる。ウレタンポリオールと相溶可能なポリオールが好ましい。主剤と硬化剤との反応に要する時間が短いとの観点から、主剤におけるウレタンポリオールの比率は、固形分換算で、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。理想的には、この比率は100質量%である。
【0045】
硬化剤は、ポリイソシアネート又はその誘導体を含有する。ウレタンポリオールの原料である前述のポリイソシアネートが、硬化剤に用いられうる。
【0046】
ペイント層10の塗料は、複合粒子16を含んでいる。この複合粒子16は、ペイント層10に分散している。カバー6に含まれる複合粒子16と同等のものが、ペイント層10に用いられうる。ペイント層10の複合粒子16により、ゴルフボール2に光輝性及び偏光性が付与される。この実施形態では、カバー6及びペイント層10の両方に、複合粒子16が配合されている。カバー6のみに複合粒子16が配合されてもよい。ペイント層10のみに複合粒子16が配合されてもよい。
【0047】
ペイント層10においても、複合粒子16の粒度は、5μm以上50μm以下が好ましい。粒度が5μm以上である複合粒子16により、光輝性及び偏光性が達成されうる。この観点から、粒度は10μm以上がより好ましい。粒度が50μm以下である複合粒子16により、ペイント層10の平滑性が達成されうる。この観点から、粒度は30μm以下がより好ましい。
【0048】
ペイント層10における複合粒子16の量は、ペイント層10の基材樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下が好ましい。1質量部以上の複合粒子16がペイント層10に分散することで、優れた光輝性が発揮される。この観点から、この量は3質量部以上がより好ましく、5質量部以上が特に好ましい。この量が30質量部以下であるペイント層10では、高い明度によって高級感が達成される。しかも、この量が30質量部以下であるペイント層10では、複合粒子16がペイント層10の耐久性を阻害しない。この観点から、この量は20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が特に好ましい。
【0049】
塗料には、必要に応じ、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等の添加剤が、適量配合される。ペイント層10の厚みは、3μm以上100μm以下である。ペイント層10の外側に、他のペイント層が設けられてもよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0051】
[実施例1]
100質量部のポリブタジエン(ジェイエスアール社の商品名「BR−730」)、25質量部のアクリル酸亜鉛、10質量部の酸化亜鉛、15質量部の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド(住友精化社)及び0.8質量部のジクミルパーオキサイド(日本油脂社)を混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃にて20分間加熱して、直径が38.9mmであるコアを得た。
【0052】
45質量部のナトリウム中和型アイオノマー樹脂(デュポン社の商品名「サーリン8945」)、45質量部の亜鉛中和型アイオノマー樹脂(デュポン社の商品名「サーリン9945」)、10質量部のスチレンブロック含有熱可塑性エラストマー(三菱化学社の商品名「ラバロンSR04」)及び3質量部の二酸化チタンを二軸混練押出機にて混練し、樹脂組成物を得た。上記コアを、内周面に多数のピンプルを備えたファイナル金型に投入し、コアの周囲に上記樹脂組成物を射出成形法により注入して、厚みが1.9mmであるカバーを成形した。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状のディンプルが多数形成された。カバーの色は、白であった。このカバーの表面に、研磨処理を行った。
【0053】
二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を、調製した。この塗料の主剤は、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリールとの混合物である。この主剤の水酸基価は、82mgKOH/gである。この塗料の硬化剤は、ヘキサメチレンジイソシアネートである。この塗料のNCO:OH等量比は、1.2:1.0である。この塗料は、核が酸化アルミニウムからなりコート層が酸化チタンからなる複合粒子(メルク社の商品名「Xirallic T60-20 WNT Sunbeam Gold」)を含んでいる。この複合粒子の量は、基材樹脂100質量部に対して10質量部である。この複合粒子はフレーク状であり、その粒度は20μmである。この塗料を、カバーにスプレーガンにて塗装した。この塗料を40℃の温度下で120分間乾燥させ、厚みが約10μmであるペイント層を得た。こうして、直径が42.7mmであり、質量が約45.4gである実施例1のゴルフボールを得た。
【0054】
[実施例2から5]
ペイント層における複合粒子の量を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2から5のゴルフボールを得た。
【0055】
[比較例1]
ペイント層に複合粒子を配合しなかった他は実施例1と同様にして、比較例1のゴルフボールを得た。
【0056】
[実施例6及び比較例2から5]
下記の表1に示される複合粒子をペイント層に配合した他は実施例1と同様にして、実施例6及び比較例2から5のゴルフボールを得た。それぞれの複合粒子の詳細は、以下の通りである。
T60-20
メルク社の商品名「Xirallic T60-20 WNT Sunbeam Gold」
核:酸化アルミニウム、コート層:酸化チタン、粒度:20μm、フレーク状
T60-25
メルク社の商品名「Xirallic T60-25 WNT Cosmic Turquoise」
核:酸化アルミニウム、コート層:酸化チタン、粒度:20μm、フレーク状
Iriodin 201
メルク社の商品名「Iriodin 201」
核:雲母、コート層:酸化チタン、粒度:15μm、フレーク状
HC Jade
ワッカーケミカル社の商品名「ヘリコーン HC Jade」
液晶ポリマー、粒度:30μm
MC1080RG
日本板硝子社の商品名「メタシャイン MC1080RG」
核:ガラスフレーク、コート層:酸化チタン、粒度:80μm
PM2010
ECKART社の商品名「ALOXAL PM2010」
アルミフレーク、粒度:20μm
【0057】
[実施例7]
カバーの二酸化チタンの量を0.2質量部とし、カバーに3質量部の複合粒子(前述の「Xirallic T60-20 WNT Sunbeam Gold」)を配合し、さらに、ペイント層に複合粒子を配合しなかった他は実施例1と同様にして、実施例7のゴルフボールを得た。
【0058】
[実施例8から11]
カバーにおける複合粒子の量を下記の表2に示される通りとした他は実施例7と同様にして、実施例8から11のゴルフボールを得た。
【0059】
[実施例12及び比較例6から9]
下記の表2に示される複合粒子をカバーに配合した他は実施例7と同様にして、実施例12及び比較例6から9のゴルフボールを得た。
【0060】
[実施例13]
10質量部の複合粒子(前述の「Xirallic T60-20 WNT Sunbeam Gold」)をペイント層に配合した他は実施例7と同様にして、実施例13のゴルフボールを得た。
【0061】
[識別性]
実施例1から13及び比較例2から9のゴルフボールを、それぞれ、比較例1のゴルフボールと共に芝生の上に置いた。このボールから5m離れた地点から、10名のゴルファーに目視観察をさせ、比較例1のゴルフボールとの識別が可能か否か、評価させた。識別できたゴルファーの人数に基づき、下記の格付けを行った。
A:9人以上
B:7人以上8人以下
C:4人以上6人以下
D:3人以下
この結果が、下記の表1及び2に示されている。
【0062】
[高級感]
各ゴルフボールの外観を、10名のゴルファーに評価させた。高級感があると評価したゴルファーの人数に基づき、下記の格付けを行った。
A:9人以上
B:7人以上8人以下
C:4人以上6人以下
D:3人以下
この結果が、下記の表1及び2に示されている。
【0063】
[耐候性]
色彩色差計(ミノルタ社の「CR−221」)により、各ゴルフボールのCIELAB表示系における指数L、a及びbを測定した。指数L、a及びbは、下記数式によって算出される。
= 116(Y/Yn)1/3 − 16
= 500((X/Xn)1/3 − (Y/Yn)1/3
= 200((Y/Yn)1/3 − (Z/Zn)1/3
これら数式において、X、Y及びZはXYZ表示系における三刺激値であり、Xn、Yn及びZnは完全拡散反射面の三刺激値である。CIELAB表示系は、国際照明委員会(CIE)によって1976年に決定された規格である。日本では、「JIS Z 8729」において、CIELAB表示系が採用されている。Lは、明度の指数である。a及びbは、色相及び彩度と相関する指数である。aのマイナス方向は緑方向であり、プラス方向は赤方向である。bのマイナス方向は青方向であり、プラス方向は黄方向である。ゴルフボールをサンシャインウェザーメーターに投入し、このゴルフボールに光線を120時間照射した。さらに、指数L、a及びbを測定した。下記数式に基づき、ΔEを算出した。
ΔE=((ΔL+(Δa+(Δb1/2
この結果が、下記の表1及び2に示されている。
【0064】
[ペイント層の耐久性]
スイングマシン(ツルテンパー社)に、ドライバーを装着した。ヘッド速度が45m/secである条件で、各ゴルフボールを150回ずつ打撃した。ゴルフボールを観察し、ペイント層の剥離面積率に基づき、下記の格付けを行った。
A:0%
B:1%以上5%未満
C:5%以上25%未満
D:25%以上
この結果が、下記の表1及び2に示されている。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
表1及び2に示されるように、実施例のゴルフボールは、全ての評価項目において優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、種々の構造のゴルフボールに適用されうる。
【符号の説明】
【0069】
2・・・ゴルフボール
4・・・コア
6・・・カバー
8・・・マーク層
10・・・ペイント層
16・・・複合粒子
18・・・核
20・・・コート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、このコアを覆うカバーと、このカバーを覆うペイント層とを備えており、
このカバーが、核とこの核を被覆するコート層とを有する複合粒子を含んでおり、
この核が金属酸化物からなり、このコート層が酸化チタンを含有し、
このカバーが樹脂組成物からなり、かつ、この樹脂組成物の基材樹脂100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下の複合粒子を含むゴルフボール。
【請求項2】
上記核が酸化アルミニウムからなる請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記複合粒子がフレーク状である請求項1又は2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記カバーの樹脂組成物が、基材樹脂100質量部に対して0.3質量部以上10質量部以下の複合粒子を含む請求項1から3のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記ペイント層が樹脂組成物からなり、かつ、この樹脂組成物の基材樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下の複合粒子を含む請求項4に記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記複合粒子の粒度が、5μm以上50μm以下である請求項1から5のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項7】
上記ペイント層の厚みが、3μm以上100μm以下である請求項1から6のいずれかに記載のゴルフボール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−17856(P2013−17856A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−238810(P2012−238810)
【出願日】平成24年10月30日(2012.10.30)
【分割の表示】特願2007−214224(P2007−214224)の分割
【原出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)