説明

サイドスラスター付き船体

【課題】サイドスラスターのトンネルによる航行時の抵抗を低減させ、燃料消費率の向上を図ることが可能になるサイドスラスター付き船体を提供すること。
【解決手段】サイドスラスターのトンネル9を開閉する蓋部17と、蓋部17に固定され、且つ船底7に回転自在に支持される軸部19Aと、軸部19Aの回転により、蓋部17を開閉する駆動装置と、を備え、軸部19Aの回転軸線L2は、トンネル9のトンネル軸線L1に対して直交する方向に延在し、かつトンネル軸線L1に対してずれており、トンネル9を開放したときの蓋部17の表面17aは、回転軸線L2がトンネル軸線L1に交差する場合に比べて、トンネル軸線L1に近くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドスラスターを備えた船体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船体の着岸や離岸を容易にするために、サイドスラスターを備えた船体が従来から知られている。サイドスラスターは、船底を横切るように貫通したトンネルと、トンネル内に配置されたスクリューと、を備える。通常、サイドスラスターは、船首側と船尾側とのそれぞれに設けられており、船体が横に進む際の推進力になっている。サイドスラスター付の船体によれば、着岸する際にタグボートなどが不要となり、操作性が向上する。
【0003】
サイドスラスターのトンネルは、船体の喫水下の水中にあり、船体の側面に形成されたトンネルの開口(出入口)は、航行の抵抗となり、航行速度及び操船に影響を及ぼし、燃料消費率を低下させる。そこで、例えば、トンネルの出入口を開閉する蓋構造を設け、通常の航行時にはトンネルを閉鎖して抵抗を低減する技術が開発されている(特許文献1参照)。この種の蓋構造は、バタフライ弁に似た構造からなり、トンネルの内周面の形状に対応した円形板と、円形板を回転させる軸部とを備えている。軸部の軸線(回転軸線)は、トンネルの中心線(トンネル軸線)に交差するように配置されており、軸部を回転させると円形板も回転する。円形板は、起立するとトンネルを塞ぎ、トンネルを閉鎖した状態になる。一方で、円形板が倒れて水平に横たわるとトンネルを全開した状態になる。サイドスラスターの作動は、トンネルが全開した状態で行われる。
【0004】
【特許文献1】特開昭59―45198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓋構造の円形板は、トンネルを閉鎖したときに外側を向く表面と内側を向く裏面とを有する。蓋構造の回転軸線はトンネル軸線に交差するが、円形板の表面と回転軸線とは実質的には離れているため、トンネルを開くために円形板を倒すと、円形板の表面はトンネル軸線よりも下側にずれる。そのため、トンネルには、このズレを許容する逃げを作る必要がある。この逃げの部分は、円形板が起立しても閉鎖できない隙間となり、航行の際の抵抗になる。しかしながら、従来のサイドスラスター付き船体では、トンネルを閉鎖する蓋部では、回転軸線をトンネル軸線に交差するようにするのが通常であり、特に、上述の隙間に起因した抵抗の発生については配慮されておらず、抵抗の低減による燃料消費率の向上という点では不十分であった。
【0006】
本発明は、サイドスラスターのトンネルによる航行時の抵抗を低減させ、燃料消費率の向上を図ることが可能になるサイドスラスター付き船体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、船底を貫通する円筒状のトンネルと前記トンネル内に配置されたスクリューとを有するサイドスラスター付き船体において、トンネルの出入口を開閉する蓋部と、蓋部に固定され、且つ船底に回転自在に支持される軸部と、軸部の回転により、蓋部を起立させてトンネルを閉鎖させ、また、蓋部を倒してトンネルを開放させる駆動部と、を備え、蓋部は、トンネルを閉鎖したときに、トンネルの外側を向く表面と前記トンネルの内側を向く裏面とを有し、軸部の回転軸線は、トンネルのトンネル軸線に対して直交する方向に延在し、かつトンネル軸線に対してずれており、トンネルを開放したときの蓋部の表面は、回転軸線がトンネル軸線に交差する場合に比べて、トンネル軸線に近くなることを特徴とする。
【0008】
本発明では、駆動部が軸部の回転させることにより、蓋部を起立させてトンネルを閉鎖させ、また、蓋部を倒してトンネルを開放させる。蓋部には実質的な厚みがあるため、軸部の回転軸線と蓋部の表面との間には、所定の距離がある。そのため、トンネルを開放するために蓋部を倒すと、蓋部の表面は回転軸線よりも例えば下側にずれてしまう。トンネルを閉鎖している場合、蓋部の表面のうち、最も幅の広い部分はトンネル軸線上に存在するが、蓋部を倒してトンネルを開放すると、この最も幅の広い部分は、トンネル軸線よりも下側に来る。従って、トンネルの出入口付近の内周面には、トンネルを開放したときの蓋部の表面との干渉を避けるために、逃げを形成する必要がある。従来の船体では、軸部の回転軸線とトンネル軸線とを交差させることが一般的であった。しかしながら、本発明では、軸部の回転軸線は、トンネル軸線に対して直交する方向に延在し、かつトンネル軸線に対してずれているため、トンネルを開放したときに、従来の一般的な船体、すなわち蓋部を開閉する軸部の回転軸線がトンネル軸線に交差する船体に比べて、蓋部の表面はトンネル軸線に近くなり、逃げとなる隙間の寸法を従来の船体に比べて小さくできる。蓋部を起立させてトンネルを閉鎖しても、逃げとなる隙間を蓋部でカバーすることはできないため、この逃げの隙間は通常の航行において抵抗になってしまう。従って、逃げを小さくできれば、トンネルを閉鎖したときにトンネルの内周面と蓋部との間に生じる隙間が小さくなることになり、航行時の抵抗が低減されて、燃料消費率の向上を図ることができる。
【0009】
さらに、船底のトンネルを設けた部分の幅は、上側よりも下側の方が狭くなっており、蓋部は、トンネルの出入口周りの船底の外周面に倣って斜めに起立してトンネルを閉鎖し、軸部の回転軸線は、トンネル軸線に対して上側にずれており、蓋部の表面のうち、回転軸線方向の幅が最も広い部分は、トンネルを開放したときに、回転軸線がトンネル軸線に交差する場合に比べて、トンネル軸に近くなると好適である。蓋部は、トンネルの出入口周りの船底の外周面に倣って斜めに起立してトンネルを閉鎖するために、トンネルの出入口を閉鎖して航行する際の抵抗を少なくできる。さらに、軸部の回転軸線は、トンネル軸線に対して上側にずれており、蓋部の表面のうち、軸部の軸線方向の幅が最も広い部分は、トンネルを開放したときに、軸部の軸線がトンネル軸線に交差する場合に比べて、トンネル軸線に近くなる。この最も幅の広い部分に合わせてトンネルの逃げを形成する必要がある。最も幅の広い部分がトンネル軸線に近くなることで、軸部の回転軸線がトンネル軸線に交差する場合に比べて確実に逃げを小さくでき、航行時の抵抗を低減でき、燃料消費率の向上を図ることができる。
【0010】
さらに、蓋部は、表面と裏面とが凸曲面である翼形状であると好適である。蓋部を倒してトンネルを開放し、その状態でスクリューを駆動させた際に、トンネル内を通過する流体の抵抗が少なくなり、燃料消費率の向上を図ることができる。
【0011】
さらに、蓋部に固定された軸部は、一対あり、一対の軸部は、蓋部の両側にそれぞれ独立して配置されていると好適である。一対の軸部は、それぞれ独立して設けられているため、一方の軸部の損傷などに伴う修理やメンテナンスが容易になる。
【0012】
さらに、駆動部は、油圧を利用して蓋部を開閉させると好適である。油圧を利用することで、小型でありながら大きな出力を得ることができ、さらに、摩擦損失が少なくて効率がよい。
【0013】
さらに、駆動部は、一対の軸部それぞれから突出し、かつ軸部の回転軸線に交差する方向に延在する一対のアーム部と、一対のアーム部それぞれに連結され、アーム部を傾動させて軸部を回転させる一対のシリンダ部と、一対のシリンダ部の双方に油圧をかける油圧ポンプと、を備えると好適である。シリンダ部が作用してアーム部が傾動し、アーム部の傾動によって軸部が回転して蓋部を開閉するため、少ない力で効率よく蓋部を開閉させることができる。
【0014】
さらに、駆動部は、シリンダ部に設けられ、かつ蓋部の開放位置及び閉鎖位置の少なくとも一方を検出して油圧ポンプの作動を停止させる検出部を更に有する好適である。検出部が蓋部の開放位置を検出する場合には、閉鎖位置から開放位置まで運動してくる蓋部を開放位置で確実に停止させることができる。また、検出部が蓋部の閉鎖位置を検出する場合には、開放位置から閉鎖位置まで運動してくる蓋部を閉鎖位置で確実に停止させることができる。
【0015】
さらに、蓋部がトンネルを閉鎖したときに、シリンダ部にかけた油圧を維持して蓋部を所定位置に保持するロッキング部を更に備えると好適である。蓋部を所定位置(例えば、閉鎖位置または開放位置)に保持できるので、蓋部のブレによる影響を排除してトンネルの出入口で生じ得る抵抗を安定して低減することができる。
【0016】
さらに、蓋部がトンネルの出入口を閉鎖している状態で、蓋部に外力の過負荷がかかると、ロッキング部による蓋部の保持を解除する過負荷防止部を更に備えると好適である。蓋部に外力の過負荷がかかった場合に、ロッキング部による蓋部の保持が解除されるので、過負荷による蓋部や駆動部の破損などが回避される。
【0017】
さらに、船底には、船首側の前部と船尾側の後部との両方に、サイドスラスターのトンネルが設けられ、蓋部は、少なくとも前部のトンネルの出入口を開閉すると好適である。通常の航行時には、船首側のサイドスラスターのトンネルの抵抗によって燃料消費率が低減し易いため、少なくとも前部のトンネルの出入口を蓋部によって開閉することで、燃料消費率の低減を効率よく抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、サイドスラスターのトンネルによる航行時の抵抗を低減させ、燃料消費率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るサイドスラスター付き船体の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、サイドスラスター付き船体(以下、「船体」という)1を概略的に示す図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【0020】
船体1には、船首1a側の前部と船尾1b側の後部との両方にサイドスラスター3,5が設けられている。船首1a側のサイドスラスター3は、通称、バウスラスター3と呼ばれ、船尾1b側のサイドスラスイター5は、通称、スターンスラスター5と呼ばれる。近年の大型客船などでは、バウスラスター3を3基、スターンスラスター5を3基備えているものも存在するが、本実施形態では、スターンスラスター5を1基及びバウスラスター3を1基備えた船体1を例示する。バウスラスター3及びスターンスラスター5を備えていると、岸壁に着岸する時にもタグボートなどの応援を呼ばなくても容易に操船できるので便利であり、その分、経済的でもある。
【0021】
図2は、図1のII−II線に沿った断面図であり、バウスラスター3を拡大して示す図であり、図3は、図2で示す蓋部の断面を拡大して示す図である。また、図4は蓋部を開閉する油圧シリンダを拡大して示す図であり、図5は、蓋部の平面図である。以下、図2〜図5を参照してサイドスラスターの説明を行うが、本実施形態では、バウスラスター3とスターンスラスター5とは実質的に同様の構成を備えているため、バウスラスター3を中心に説明し、スターンスラスター5の説明は省略する。
【0022】
船体1の船底7は、喫水時における水中の抵抗や操船性など、様々な要素を考慮して設計される。本実施形態に係る船底7は、航行時の流体抵抗を低減するために略流線型(図1(b)参照)になっている。船底7には、バウスラスター3のトンネル9が設けられている。トンネル9は、断面円形の円筒形状であり、前後方向に直交する左右方向に沿って船底7を貫通している。トンネル9の左右方向の略中央には、トンネル9内に海水などの流体を引き込んで吐出するためのスクリュー11が設けられている。スクリュー11は駆動モータ13の駆動によって回転し、駆動モータ13は、船底7内に設けられたチャンバ15内に配置されている。
【0023】
船底7は、トンネル9を設けた部分において、下側の幅B1が上側の幅B2よりも狭くなっている(図2参照)。そのため、トンネル9の左右の出入口9a周りにおける船底7の外周面7aは、トンネル9の中心線(トンネル軸線)L1に対して斜めに傾斜した凸状の曲面になっている。トンネル9の左右の出入口9aには、それぞれ出入口9aを開閉する蓋部17が設けられている。蓋部17は、軸部19A,19Bの回転によって開閉するバタフライ弁に似た構造であるが、蓋部17の平面視での形状は真円に近い円形状ではなく、むしろ楕円に近い卵型の形状になっている(図5参照)。この蓋部17の形状は、トンネル9の出入口9a周りにおける船底7の外周面7aの形状に倣ってトンネル9を斜めに切り欠いた場合に生ずる形状に対応している。
【0024】
蓋部17は、トンネル9の出入口9aを閉鎖したときに、トンネル9の外側を向く表面17aとトンネル9の内側を向く裏面17bとを有する。蓋部17は、表面17aと裏面17bとが凸曲面である翼形状であり、凸レンズ状になっている。なお、蓋部17は、翼形状の一枚のプレート体によってトンネル9の出入口9aを閉鎖可能になっている。
【0025】
図4に示されるように、蓋部17の両側(船体1の前後方向の両側)には、それぞれ独立した一対の軸部19A,19Bが設けられている。軸部19A,19Bは、トンネル9周りの船底7に溶接などによって固定されたボス部21に支持されている。ボス部21内には、軸部19A,19Bを回転自在に支える軸受部(図示せず)と、水密機構を構成するシールリング(図示せず)とが組み込まれている。一対の軸部19A,19Bは、蓋部17の両側それぞれで独立しているため、組み立てや分解などが容易であり、軸部19A,19Bをボス部21内に挿入したり、引き抜いたりする場合の外部スペースも、蓋部を横切る一本の軸部で蓋部を回転自在に支持する場合に比べて小さくて済む。
【0026】
一対の軸部19A,19Bのうち、一方の軸部19Aは、基端側で蓋部17に固定されている。軸部19Aの先端はボス部21から突き出しており、その先端には、軸部19Aの回転軸線L2に直交する方向に突き出して延在するアーム部23が固定されている。アーム部23は、油圧シリンダ25Aのピストンロッド25aにピンを介して連結されている。アーム部23は、ピストンロッド25aの往復動によって軸部19Aを中心にして傾動し、アーム部23の傾動に伴って軸部19Aは回転する。他方の軸部19Bも同様であり、船底7に固定されたボス部21に回転自在に支持され、アーム部23がピストンロッド25aに連結されている。アーム部23は、油圧シリンダ25Bのピストンロッド25aの往復動によって傾動し、アーム部23の傾動によって軸部19Bは回転する。なお、ピストンロッド25aが前進した場合の終端には、蓋部17の閉鎖位置に対応したストッパ部材(図示せず)が設けられており、ピストンロッド25aはストッパ部材に当接することで前進移動を規制される。
【0027】
両方の軸部19A,19Bそれぞれに連結された一対のピストンロッド25aは同期して往復動し、両方の軸部19A,19Bを同調させながら回転させる。軸部19A,19Bの回転に伴って蓋部17は開閉運動する。蓋部17は、トンネル9の出入口9a周りの船底7の外周面7aに倣って斜めに起立した状態ではトンネル9の出入口9aを閉鎖し、倒れて水平に横たわった状態ではトンネル9の出入口9aを全開する。
【0028】
蓋部17は、油圧を利用した駆動装置(駆動部)24によって開閉される。図6には、駆動装置24を構成する油圧回路が示されている。図6に示されるように、駆動装置24は、ピストンロッド25aを往復動させる油圧シリンダ(シリンダ部)25A,25Bを備える。油圧シリンダ25A,25Bは、蓋部17の各軸部19A,19Bに対応して一対設けられており、蓋部17を挟むようにして配置されている。
【0029】
駆動装置24の油圧回路には、油槽31から電磁方向切換弁41に連通する第1の油路51及び第2の油路52が設けられている。第1の油路51は、作動油を供給するためのラインであり、第2の油路52は、作動油を油槽31に戻すためのラインである。
【0030】
第1の油路51には、油圧ポンプ27が設けられている。油圧ポンプ27は、電動機29の起動によって作動し、油槽31から作動油を吸い込み、吐出ポート27aから吐出する。さらに、第1の油路51には、油圧ポンプ27の上流側、すなわち油槽31側に油圧ポンプ27を保護するためのフィルタ33が設けられている。さらに、第1の油路51には、油圧ポンプ27の下流側に逆止弁35及びストップ弁39が設けられている。
【0031】
また、第1の油路51には、逆止弁35とストップ弁39との間で分岐して第2の油路52に連通するバイパス路53が設けられており、バイパス路53には油圧回路内を定圧に保持するリリーフ弁37が設けられている。
【0032】
電磁方向切換弁41は、中立位置Pnから励磁されることで開位置Poまたは閉位置Pcのいずれか一方に切り替えられ、消磁されると中立位置Pnに戻る。開位置Poは、ピストンロッド25aを突き出させて(前進させて)、蓋部17を開方向に移動させるように作動油を供給する位置である。閉位置Pcは、ピストンロッド25aを引っ込めて(後退させて)、蓋部17を閉方向に移動させるように作動油を供給する位置である。中立位置Pnは、油圧シリンダ25への作動油の供給を停止する位置である。また、電磁方向切換弁41は、蓋閉鎖位置検出スイッチ47A,47B及び蓋開放位置検出スイッチ49A,49Bに電気的に接続されている。電磁方向切換弁41は、蓋閉鎖位置検出スイッチ47A,47Bまたは蓋開放位置検出スイッチ49A,49Bからの検出信号に基づいて開位置Po、中間位置Pnまたは閉位置Pcを切り替える。
【0033】
電磁方向切換弁41には、一対の油圧シリンダ25A,25Bそれぞれに連通する第3の油路54及び第4の油路55が接続されている。電磁方向切換弁41が開位置Poの場合、第1の油路51から供給された作動油は第3の油路54に供給され、第4の油路55から戻ってくる作動油は第2の油路52を介して油槽31に戻される。電磁方向切換弁41が閉位置Pcの場合、第1の油路51から供給された作動油は第4の油路55に供給され、第3の油路54から戻ってくる作動油は第2の油路52を介して油槽31に戻される。電磁方向切換弁41が中立位置Pnの場合には、第1の油路51から作動油が供給されても、第3の油路54及び第4の油路55に供給されることなく、第2の油路52を介して油槽31に戻される。
【0034】
第3の油路54は分岐しており、各分岐路は、一対の油圧シリンダ25A,25Bそれぞれに接続されている。また、第4の油路55は分岐しており、各分岐路は、一対の油圧シリンダ25A,25Bそれぞれに接続されている。一対の油圧シリンダ25A,25Bは同様の構成であるため、第3の油路54及び第4の油路55と油圧シリンダ25A,25Bとの接続については、一方の油圧シリンダ25Aを例にして説明する。油圧シリンダ25Aは複動シリンダであり、作動油を供給する二つのポート25c,25dがピストン25bを挟むようにして設けられている。第3の油路54はピストンロッド25aを前進させる側のポート25cに接続され、第4の油路55は、ピストンロッド25aを後退させる側のポート25dに接続されている。第3の油路54から作動油を供給する場合には、第4の油路55から作動油が排出され、第4の油路55から作動油を供給する場合には、第3の油路54から作動油が排出される。
【0035】
第3の油路54及び第4の油路55にはロッキング回路(ロッキング部)43が設けられている。ロッキング回路43は、第3の油路54及び第4の油路55のそれぞれに設けられたパイロットチェック弁43a,43bを備えている。第3の油路54に設けられたパイロットチェック弁43aは、電磁方向切換弁41側からの作動油の流れを許容し、油圧シリンダ25側からの作動油の流れを規制する。また、第4の油路55に設けられたパイロットチェック弁43bは、電磁方向切換弁41側からの作動油の流れを許容し、油圧シリンダ25側からの作動油の流れを規制する。ロッキング回路43は、蓋部17が開放位置または閉鎖位置に到達して電磁方向切換弁41が中立位置Pnに切り替えられた際に、油圧シリンダ25からの作動油の逆流を抑止してピストンロッド25aを所定位置に保持し、その結果として、蓋部17の運動を停止させて蓋部17を所定位置に保持する。
【0036】
また、第3の油路54に設けられたパイロットチェック弁43aは、電磁方向切換弁41側から作動油が供給されて油圧がかかると、第4の油路55に設けられたパイロットチェック弁43bを開く。その結果、第4の油路55では、油圧シリンダ25側からの作動油が電磁方向切換弁41側に向けて排出される。その結果として、第3の油路54から作動油を供給する際には、第4の油路55からの作動油がスムーズに排出される。また、第4の油路55に設けられたパイロットチェック弁43bは、電磁方向切換弁41側から作動油が供給されて油圧がかかると、第3の油路54に設けられたパイロットチェック弁43aを開く。その結果、第3の油路54では、油圧シリンダ25側からの作動油が電磁方向切換弁41側に向けて排出される。その結果として、第4の油路55から作動油を供給する際には、第3の油路54からの作動油がスムーズに排出される。
【0037】
また、第3の油路54及び第4の油路55にはロッキング回路43よりも油圧シリンダ25側に過負荷防止回路(過負荷防止部)45が設けられている。過負荷防止回路45には、第2の油路52に接続された戻り油路56が設けられている。戻り油路56には、安全弁(リリーフ弁)57が設けられている。戻り油路56における安全弁57よりも上流側、すなわちロッキング回路43に近い側には、第3の油路54に接続された第1のバイパス路56aと第4の油路55に接続された第2のバイパス路56bとが設けられている。さらに、戻り油路56における安全弁57よりも下流側には、第3の油路54に接続された第3のバイパス路56cと第4の油路55に接続された第4のバイパス路56dとが設けられている。第1のバイパス路56aには、第3の油路54から戻り油路56への流れを規制する逆止弁56eが設けられ、第2のバイパス路56bには、第4の油路55から戻り油路56への流れを規制する逆止弁56fが設けられている。また、第3のバイパス路56cには第3の油路54の高圧油を安全弁57に導く逆止弁56gが設けられ、第4のバイパス路56dには第4の油路55の高圧油を安全弁57に導く逆止弁56hが設けられている。逆止弁56gは第4の油路55から第3の油路54への流れを阻止する。また、逆止弁56hは第3の油路54から第4の油路55への流れを阻止する。
【0038】
過負荷防止回路45は、トンネル9を閉鎖している蓋部17に対して波浪力などの外的な過負荷がかかり、その結果として、ピストンロッド25a、第4の油路55及び逆止弁56hを介して所定圧以上の油圧が安全弁57にかかると安全弁57が開放され、作動油は逆止弁56eを介し第4の油路54に導かれる。同時に、油圧シリンダ25A,25Bのピストン25bの有効面積差により生じる油量の不足分は第2の油路52を介して油槽31から供給される。その結果、蓋部17は開方向に運動し、蓋部17や駆動装置24に過度の負荷をかけなくなり、損傷を防止することができる。なお、安全弁57は、リリーフ弁6に比べて高圧の設定になっている。
【0039】
また、駆動装置24には、ピストンロッド25aが後退して引っ込んだ状態、すなわち蓋部17がトンネル9の出入口9aを閉鎖している状態を検出する蓋閉鎖位置検出スイッチ47A,47Bと、ピストンロッド25aが前進して突き出した状態、すなわち蓋部17がトンネル9の出入口9aを開放(全開)している状態を検出する一対の蓋開放位置検出スイッチ49A,49Bと、が設けられている。蓋閉鎖位置検出スイッチ47A,47Bと蓋開放位置検出スイッチ49A,49Bとは、一対の油圧シリンダ25A,25Bそれぞれに設けられており、油圧シリンダ25A,25Bのピストンロッド25aの往復軌道の終端に近接する位置に配置されている。蓋閉鎖位置検出スイッチ47A,47B及び蓋開放位置検出スイッチ49A,49Bは、電動機29及び電磁方向切換弁41に電気的に接続されており、検出信号を伝える事が出来るようになっている。
【0040】
本実施形態に係る船体1では、蓋部17を開閉させる軸部19A,19Bの回転軸線L2は、トンネル軸線L1に直交する方向に延在し、トンネル軸線L1に対して上側にずれている。以下、軸部19A,19Bの回転軸線L2がトンネル軸線L1に対してずれていることで奏される作用及び効果について、図3、図7及び図8を参照して説明する。
【0041】
図7は、従来のサイドスラスターを例示するものであり、蓋部を中心に示す拡大断面図である。また、図8は、従来のサイドスラスターと本実施形態に係るサイドスラスターとを比較するために、蓋部を模式的に示す図であり、(a)は、本実施形態に係る蓋部の断面図、(b)は、本実施形態に係る蓋部の正面図であり、(a)と(b)とは対応関係にある。また、図8(c)は、従来例に係る蓋部の断面図、(d)は、従来例に係る蓋部の正面図であり、(c)と(d)とは対応関係にある。
【0042】
図8(c)、(d)に示されるように、従来例では、軸部119の回転軸線L3は、トンネル軸線L1に交差している。蓋部117には実質的な厚みがあるため、軸部119の回転軸線L3と蓋部117の表面117aとの間には、所定の距離がある。そのため、トンネル109を開放するために蓋部117を倒すと、蓋部117の表面117aは回転軸線L3よりも下側にずれてしまう。蓋部117がトンネル109を閉鎖している状態では、蓋部117の表面117aのうち、最も幅の広い部分Pbはトンネル軸線L1上に存在するが、蓋部117を倒すと、この最も幅の広い部分Pbは、トンネル軸線L1よりも下側に来る。従って、トンネル109の出入口付近の内周面には、トンネル109を開放したときの蓋部117の表面117aとの干渉を避けるために、逃げRbを形成する必要がある。蓋部117を起立させてトンネル9を閉鎖しても、逃げRbとなる隙間を蓋部117でカバーすることはできないため、この逃げRbの隙間は通常の航行において抵抗になってしまう。
【0043】
図8(a)、(b)に示されるように、本実施形態では、軸部19Aの回転軸線L2は、トンネル軸線L1に対して上側にずれている。従って、トンネル9を開放したときに、従来例に比べて、蓋部17の表面17a(最も幅の広くなる部分Pa)はトンネル軸線L1に近くなり、逃げRaとなる隙間の寸法を従来の船体に比べて小さくできる。そして、逃げRaを小さくできれば、トンネル9を閉鎖したときにトンネル9の内周面と蓋部17との間に生じる隙間が小さくなることになり、航行時の抵抗が低減されて、燃料消費率の向上を図ることができる。
【0044】
続いて、サイドスラスターの運転方法について、バウスラスター3のトンネル9を開閉する蓋部17の動作手順を中心に説明する。通常の航行が終了し、目的地の岸壁に着岸する場合には、操船を行う操作員は、開放スイッチを押して開放操作を行う。すると、電動機29が作動して油圧ポンプ27が作動する。電動機29が定格回転に達すると、電磁方向切換弁41が開位置Poに切り替わる。
【0045】
この状態で、第3の油路54を通る作動油は油圧シリンダ25A,25Bに供給され、一方で、第4の油路55を介して油圧シリンダ25からの作動油が排出される。すると、ピストンロッド25aが前進して軸部19A,19Bを回転させ、蓋部17が倒れてトンネル9の出入口9aを開き始める。蓋開放位置検出スイッチ49A,49Bがピストンロッド25aを検出すると、電磁方向切換弁41が消磁されて中立位置Pnに切り替わり、また、電動機29は停止して油圧ポンプ27の作動が停止する。ここで、ロッキング回路43が機能し、油圧シリンダ25A,25Bからの作動油の逆流を防止し、ピストンロッド25aを所定位置に保持する。その結果として蓋部17はトンネル9の出入口9aを全開した開放位置に保持される。
【0046】
トンネル9が開放されると、駆動モータ13が起動し、バウスラスター3のスクリュー11を回転させる。トンネル9内に配置されたスクリュー11が回転すると、船体1に対して横方向への推進力が働く。その結果、船体1はタグボート無しで横方向に移動し、着岸する。
【0047】
次に、蓋部17によってトンネル9の出入口9aを閉鎖する際の動作手順について説明する。操作員は、閉鎖スイッチを押して閉鎖操作を行う。すると、電動機29が作動して油圧ポンプ27が作動する。電動機29が定格回転に達すると、電磁方向切換弁41が励磁されて中立位置Pnから閉位置Pcに切り替わる。
【0048】
この状態で、第4の油路55を通る作動油は油圧シリンダ25A,25Bに供給され、一方で、油圧シリンダ25A,25Bから第3の油路54を通って作動油が排出される。すると、ピストンロッド25aが後退して軸部19A,19Bを回転させ、蓋部17が起立してトンネル9の出入口9aを閉じ始める。蓋開放位置検出スイッチ49A,49Bが解除され、蓋閉鎖位置検出スイッチ47A,47Bがピストンロッド25aを検出すると、電磁方向切換弁41が消磁されて中立位置Pnに切り替わり、また、電動機29は停止して油圧ポンプ27の作動が停止する。ここで、ロッキング回路43が機能し、油圧シリンダ25からの作動油の逆流を防止し、ピストンロッド25aを所定位置に保持する。その結果として蓋部17はトンネル9の出入口9aを閉鎖した閉鎖位置に保持される。
【0049】
次に、蓋部17がトンネル9の出入口9aを閉鎖している状態で、航行中、蓋部17に外的な過負荷が働いた場合のセーフティー機能について説明する。蓋部17に波浪力などの外的な過負荷が働き、蓋部17がトンネル9の出入口9aを開く方向に力を受けると、ピストンロッド25aには前進する方向に過度の力が作用することになる。すると、油圧シリンダ25内の作動油は、第4の油路55を介して過負荷防止回路45に所定圧以上の過度の油圧をかける。
【0050】
過負荷防止回路45では、第4の油路55及び第4のバイパス路56dを介して過度の油圧がかかると、安全弁57が開き、戻り油路56に排出される。一方で、第3の油路54には、過負荷防止回路45の第1のバイパス路56aを介して作動油が供給されると共に油圧シリンダ25A,25Bのピストン25bの有効面積差により生じる油量の不足分は第2の油路52を介して油槽31から供給される。その結果として、ピストンロッド25aは前進して突き出し、蓋部17を開放させて過負荷がかかる状態を解消する。
【0051】
ピストンロッド25aの前進により蓋閉鎖位置検出スイッチ47A,47Bのいずれかが非検出状態になると非検出信号を電動機26及び電磁方向切換弁41に通知する。蓋閉鎖位置検出スイッチ47A,47Bからの非検出信号を受け、電動機29は油圧ポンプ27を作動させ、電磁方向切換弁41は、中立位置Pnから閉位置Pcに切り替わり、一旦開いた蓋部17は、再び、トンネル9の出入口9aを閉鎖する方向に作動する。
【0052】
本実施形態に係る船体1による効果について説明する。蓋部17でトンネル9を閉鎖している場合、蓋部17の表面17aのうち、最も幅の広い部分Pa(図8(a)、(b)参照)はトンネル軸線L1上に存在するが、蓋部17を倒すと、この最も幅の広い部分Paは、トンネル軸線L1よりも下側に来る。この最も幅の広い部分Paとの干渉を避けるために、トンネル9の出入口9a付近の内周面には、逃げRaを形成する必要がある。船体1では、軸部19A,19Bの回転軸線L2は、トンネル軸線L1に対して直交する方向に延在し、かつトンネル軸線L1に対してずれているため、従来の一般的な船体(図7及び図8(c),(d)参照)、すなわち蓋部117を開閉する軸部119の回転軸線L3がトンネル軸線L1に交差する船体に比べて、蓋部17の表面17aはトンネル軸線L1に近くなり、逃げRaとなる隙間の寸法を従来の船体の逃げRbの寸法に比べて小さくできる。蓋部17を起立させてトンネル9を閉鎖しても、逃げRaとなる隙間を蓋部17でカバーすることはできないため、この逃げRaの隙間は通常の航行において抵抗になってしまう。しかしながら、船体1では、従来の船体に比べて、逃げRaを小さくできるので、トンネル9を閉鎖したときにトンネル9の内周面と蓋部17との間に生じる隙間が小さくなり、航行時の抵抗が低減されて、燃料消費率の向上を図ることが可能になる。特に、船体1では、蓋部17を倒した時に、最も幅の広い部分Paが、従来の船体に比べてトンネル軸線L1に近くなるため、確実に逃げRaを小さくでき、航行時の抵抗を低減でき、燃料消費率の向上を図ることができる。
【0053】
さらに、船体1では、船底7のトンネル9を設けた部分の幅は、上側の幅B2よりも下側の幅B1の方が狭くなっており、蓋部17は、トンネル9の出入口9a周りの船底7の外周面7aに倣って斜めに起立してトンネル9を閉鎖する。その結果として、船底7の外周面7aと蓋部17の表面17aとの間に段差などが生じ難くなり、航行する際の抵抗を少なくできる。
【0054】
さらに、本実施形態に係る蓋部17は、表面17aと裏面17bとが凸曲面である翼形状であるため、蓋部17を倒してトンネル9を開放し、その状態で、スクリュー11を駆動させた際に、トンネル9内を通過する海水などの流体の抵抗が少なくなり、燃料消費率の向上を図ることができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、蓋部17に固定された軸部19A,19Bは、一対あり、一対の軸部19A,19Bは、蓋部17の両側にそれぞれ独立して配置されているため、一方の軸部19A,19Bの損傷などに伴う修理やメンテナンスが容易になる。
【0056】
さらに、本実施形態に係る駆動装置24は、油圧を利用して蓋部17を開閉させているため、小型でありながら大きな出力を得ることができ、さらに、摩擦損失が少なくて効率がよい。
【0057】
特に、駆動装置24は、一対の軸部19A,19Bそれぞれから突出し、かつ軸部19A,19Bの回転軸線L2に交差する方向に延在する一対のアーム部23と、一対のアーム部23それぞれに連結され、アーム部23を傾動させて軸部19A,19Bを回転させる一対の油圧シリンダ25A,25Bと、一対の油圧シリンダ25A,25Bの双方に油圧をかける油圧ポンプ27と、を備えている。油圧シリンダ25A,25Bが作用してアーム部23が傾動し、アーム部23の傾動によって軸部19A,19Bが回転して蓋部17を開閉するため、少ない力で効率よく蓋部17を開閉させることができる。
【0058】
さらに、本実施形態では、蓋閉鎖位置検出スイッチ27A,27Bと蓋開放位置検出スイッチ29A,29Bとが設けられており、蓋開放位置検出スイッチ29A,29Bでピストンロッド25aが検出されると、油圧ポンプ27の作動が停止される。また、蓋開放位置検出スイッチ29A,29Bが解除されて蓋閉鎖位置検出スイッチ27A,27Bでピストンロッド25aが検出されると、油圧ポンプ27の作動が停止される。その結果、蓋部17を開放位置または閉鎖位置で確実に停止させることができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、ロッキング回路43(ロッキング部)を備えているので、蓋部17を所定位置、例えば、閉鎖位置または開放位置に保持できる。その結果として、蓋部17のぶれによる影響を排除してトンネル9の出入口9aで生じ得る抵抗を安定して低減することができる。特に、蓋部17を閉鎖位置で保持できるので航行中の蓋部17のぶれによる抵抗の発生を抑えることができ、また、蓋部17を開放位置で保持できるのでサイドスラスター3,5を作動させた際の蓋部17のぶれによる抵抗の発生を抑えることができる。
【0060】
さらに、本実施形態は過負荷防止回路45(過負荷防止部)を備え、蓋部17に外力の過負荷がかかった場合に、ロッキング回路43による蓋部17の保持が解除されるので、過負荷による蓋部17の破損などが回避される。
【0061】
さらに、船底7には、バウスラスター3とスターンスラスター5とが設けられ、バウスラスター3及びスターンスラスター5それぞれのトンネル9に蓋部17が設けられている。通常の航行時には、船首1a側のサイドスラスター(バウスラスター3)のトンネル9の抵抗によって燃料消費率が低減し易いが、バウスラスター3のトンネル9に蓋部17を設けているので、通常の航行時、少なくともバウスラスター3のトンネル9の出入口9aを蓋部17で閉塞することで、燃料消費率の低減を効率よく抑えることができる。
【0062】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、蓋部を倒したときに蓋部の表面がトンネル軸線よりも下側にくる場合を説明したが、上側にくる場合も同様である。この場合、蓋部の回転軸線をトンネル軸線よりも下側にずらすことで、回転軸線がトンネル軸線に交差する従来の船体に比べて蓋部を開放したときに、蓋部の表面がトンネル軸線に近くなる。
【0063】
また、上記実施形態では、翼形状の蓋部を例に説明したが、平板状の蓋部であってもよい。また、上記実施形態では、蓋部の開閉を行う駆動部として油圧を利用した駆動装置を例に説明したが、機械的な構造によって蓋部を開閉する装置であってもよい。また、上記実施形態では、蓋部の開放位置と閉鎖位置とをそれぞれ検出する二つのスイッチ(蓋閉鎖位置検出スイッチ、蓋開放位置検出スイッチ)を例に検出部を説明したが、開放位置を検出する検出部のみ、または閉鎖位置を検出する検出部のみを設ける形態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係るサイドスラスター付き船体を示す図であり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】油圧シリンダを拡大して示す側面図である。
【図4】蓋部がトンネルの出入り口を閉鎖している状態を示す正面図である。
【図5】蓋部の平面図である。
【図6】駆動装置の油圧回路を示す図である。
【図7】従来例に係る蓋部の断面図である。
【図8】本実施形態と従来例とを比較するための模式的な図であり、(a)は本実施形態に係る蓋部の断面図、(b)は本実施形態に係る蓋部の正面図、(c)は従来例に係る蓋部の断面図、(d)は従来例に係る蓋部の正面図である。
【符号の説明】
【0065】
1…船体(サイドスラスター付き船体)、3…バウスラスター(サイドスラスター)、5…スターンスラスター(サイドスラスター)、7…船底、9…トンネル、9a…トンネルの出入口、11…スクリュー、17…蓋部、17a…表面、17b…裏面、19A,19B…軸部、23…アーム部、24…駆動装置(駆動部)、25A,25B…油圧シリンダ(シリンダ部)、27…油圧ポンプ、43…ロッキング回路(ロッキング部)、45…過負荷防止回路(過負荷防止部)、47A,47B…蓋閉鎖位置検出スイッチ(検出部)、49A,49B…蓋開放位置検出スイッチ(検出部)、L1…トンネル軸線、L2…軸部の回転軸線、Pa…蓋部の表面の幅が最も広い部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船底を貫通する円筒状のトンネルと前記トンネル内に配置されたスクリューとを有するサイドスラスター付き船体において、
前記トンネルの出入口を開閉する蓋部と、
前記蓋部に固定され、且つ前記船底に回転自在に支持される軸部と、
前記軸部の回転により、前記蓋部を起立させて前記トンネルを閉鎖させ、また、前記蓋部を倒して前記トンネルを開放させる駆動部と、を備え、
前記蓋部は、前記トンネルを閉鎖したときに、前記トンネルの外側を向く表面と前記トンネルの内側を向く裏面とを有し、
前記軸部の回転軸線は、前記トンネルのトンネル軸線に対して直交する方向に延在し、かつ前記トンネル軸線に対してずれており、
前記トンネルを開放したときの前記蓋部の表面は、前記回転軸線が前記トンネル軸線に交差する場合に比べて、前記トンネル軸線に近くなることを特徴とするサイドスラスター付き船体。
【請求項2】
前記船底の前記トンネルを設けた部分の幅は、上側よりも下側の方が狭くなっており、
前記蓋部は、前記トンネルの出入口周りの前記船底の外周面に倣って斜めに起立して前記トンネルを閉鎖し、
前記軸部の回転軸線は、前記トンネル軸線に対して上側にずれており、
前記蓋部の表面のうち、前記回転軸線方向の幅が最も広い部分は、前記トンネルを開放したときに、前記回転軸線が前記トンネル軸線に交差する場合に比べて、前記トンネル軸に近くなることを特徴とする請求項1記載のサイドスラスター付き船体。
【請求項3】
前記蓋部は、表面と裏面とが凸曲面である翼形状であることを特徴とする請求項1または2記載のサイドスラスター付き船体。
【請求項4】
前記軸部は、一対あり、
一対の前記軸部は、前記蓋部の両側にそれぞれ独立して配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のサイドスラスター付き船体。
【請求項5】
前記駆動部は、油圧を利用して前記蓋部を開閉させることを特徴とする請求項4記載のサイドスラスター付き船体。
【請求項6】
前記駆動部は、
一対の前記軸部それぞれから突出し、かつ前記軸部の回転軸線に交差する方向に延在する一対のアーム部と、
一対の前記アーム部それぞれに連結され、前記アーム部を傾動させて前記軸部を回転させる一対のシリンダ部と、
一対の前記シリンダ部の双方に油圧をかける油圧ポンプと、
を備えることを特徴とする請求項5記載のサイドスラスター付き船体。
【請求項7】
前記駆動部は、前記シリンダ部に設けられ、かつ前記蓋部の開放位置及び閉鎖位置の少なくとも一方を検出して前記油圧ポンプの作動を停止させる検出部を更に有することを特徴とする請求項6記載のサイドスラスター付き船体。
【請求項8】
前記蓋部が前記トンネルを閉鎖したときに、前記シリンダ部にかけた油圧を維持して前記蓋部を所定位置に保持するロッキング部を更に備えることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項記載のサイドスラスター付き船体。
【請求項9】
前記蓋部が前記トンネルの出入口を閉鎖している状態で、前記蓋部に外力の過負荷がかかると、前記ロッキング部による前記蓋部の保持を解除する過負荷防止部を更に備えることを特徴とする請求項8記載のサイドスラスター付き船体。
【請求項10】
前記船底には、船首側の前部と船尾側の後部との両方に、前記サイドスラスターの前記トンネルが設けられ、
前記蓋部は、少なくとも前部の前記トンネルの出入口を開閉することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項記載のサイドスラスター付き船体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−83412(P2010−83412A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256817(P2008−256817)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【特許番号】特許第4275188号(P4275188)
【特許公報発行日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000002129)住友商事株式会社 (42)
【出願人】(390023179)日本プスネス株式会社 (1)