説明

サッシ用気密材と、その製造方法

【課題】 本発明は、耐火性能を備えると共に、耐久性の高いサッシ用気密材とその製造方法を提供することにある。
【解決手段】 サッシの枠体13や障子4a,4bに取り付けられるサッシ用気密材9〜12において、サッシの気密材ホルダー3a,5a,5b,7bに嵌合される基部9a,12aと、基部9a,12aから気密材ホルダー5b,7b外に突出する突出部9b,12bとを備えており、基部9a,12aは、耐摩耗性や弾性を有する気密材成形樹脂からなり、突出部9b,12bは、気密材成形樹脂に熱膨張耐火成分を含有したものからなり、基部9a,12aと突出部9b,9bは一体成形してあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシに対して気密性や水密性を確保するためのサッシ用気密材と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
引違いサッシや嵌め殺しサッシ等の障子と枠体の隙間、あるいは、障子の召し合わせには、タイト材やシール材に代表される気密材が介在しており、サッシの気密性や水密性の向上を図っている。また、気密材のうち、シール材は、枠体の縦枠や上下枠の内周側に突設してあるホルダーに固定される基部と、その基部から障子側に突出するシール片とを有しており、戸当たりなどに使用されるタイト材についてもその一部をホルダーに固定される。そして、上記のようなシール材やタイト材は、引違い障子であれば、障子の召し合わせや、戸車収納部など、気密性や水密性が要求される箇所に隈なく配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−285791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような気密材は、サッシにおける気密性や水密性を確保する目的で取り付けてあることから、サッシに耐火性能を求める場合には、これとは別に、枠体と障子の間に生じる隙間等に膨張黒鉛等の熱膨張耐火成分を含有したテープを貼るといった対策が施されている。しかしながら、その対策を要する箇所の一つ一つにテープを隈なく貼る必要があり、効率的に取り付けることができず、生産性を落とす問題点があった。
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、耐火性能を備えると共に、耐久性の高いサッシ用気密材とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1記載の発明は、サッシの枠体や障子に取り付けられるサッシ用気密材において、サッシのホルダーに嵌合される基部と、基部からホルダー外に突出する突出部とを備えており、基部は、耐摩耗性や弾性を有する気密材成形樹脂からなり、突出部は、気密材成形樹脂に熱膨張耐火成分を含有したものからなり、基部と突出部は一体成形してあることを特徴とする。ここで気密材成形樹脂とは、サッシ用のシール材やタイト材に一般的に使用される塩化ビニル系樹脂や、シリコン系ゴムやエチレンプロピレンゴムなどが挙げられる。また、熱膨張耐火成分とは、火災時の熱により膨張する性質を有するものすべてを含み、その一例として膨張黒鉛などが挙げられる。
【0006】
本発明のうち請求項2記載の発明は、気密材成形樹脂溶剤と、気密材樹脂溶剤に熱膨張耐火成分を混合した混合樹脂溶剤とを共押出し成形機により、異種の樹脂成分を共押出しする押出し工程、押出し工程により得られた成形物を冷却して硬化させる冷却工程、冷却工程により得られた成形物を所定の長さや形状に加工する加工工程を経ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、耐摩耗性や弾性を有する気密材成形樹脂からなる基部と、その気密材成形樹脂に熱膨張耐火成分を含むものとからなる突出部が一体成形されたサッシ用気密材により、突出部では気密性や水密性を確保しつつ、突出部に含有する熱膨張耐火成分によって万一の火災時は膨張してサッシの隙間を塞ぐことになる。また、基部が熱膨張耐火成分を含まない耐摩耗性や弾性を有する気密材成形樹脂のみで成形してあることにより、突出部で風圧や衝撃などを受けたときに基部がサッシの気密材ホルダーに保持された状態にあっても、基部が脆くなって破損することなくサッシに耐火性能を付与することができる。また、請求項2記載の発明のように、異種の原料を共押出し成形することにより、サッシ用気密材の基部を気密材成形樹脂、突出部を熱膨張耐火成分を含有する気密材成形樹脂とする一体成形物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)は、図2中Aを拡大し示す本実施によるシール材(サッシ用気密材)の斜視図であり、(b)は、図3中Bを拡大して示すタイト材(サッシ用気密材)の斜視図である。
【図2】本実施によるサッシ用気密材が適用されたサッシの縦断面図である。
【図3】本実施によるサッシ用気密材が適用されたサッシの横断面図である。
【図4】本実施によるサッシ用気密材(シール材)の製造手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面に基づいて本実施によるサッシ用気密材について説明する。
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施によるサッシ用気密材9〜12は、引違い窓サッシに適用されている。この引違い窓は、図2のように、上枠1と下枠2と左右の縦枠3を四周枠組みして構成した枠体13内に外障子4aと内障子4bを備えており、外障子4aと内障子4bは、上枠1と下枠2に設けたレール1a,2aに沿って左右に移動し、枠体13内で引違い式に開閉するものである。内外障子4a,4bの戸車収納部7a内周側の室外側部下端には気密材ホルダー7bが設けてあり、その気密材用ホルダー7bにシール材(サッシ用気密材)9が保持されている。これにより、上枠1の室外側内周部下端と、内外障子4a,4bの戸車収納部7a室外側壁部内周下端に気密材ホルダー7bで保持されるシール材9が、枠体13と外障子4aとの間の隙間や、あるいは、戸車収納部7aと戸車14との間の隙間から吹き込む風や雨水の吹き上げを制限している。また、図3のように、内外障子4a,4bの召し合わせ側の縦框5同士の間と、内外障子4a,4b戸先の縦枠3と当接する箇所、そして、下枠2と内外障子4a,4b下框7の間(図2もあわせて参照)、及び上枠1と内外障子4a,4b上框6との間には、それぞれにタイト材8,10,11,12が設けてある。これにより、内外障子4a,4bを閉じたときには、縦枠3と内外障子4a,4bの戸先の縦框5とがタイト材12を介在して当接するので、サッシの気密性と水密性が確保される。
【0011】
上述したとシール材9にタイト材8,10,11,12ついて、このうちの図1中Aで囲む位置に取り付けてあるシール材9と、図1中Bで囲む位置に取り付けてあるタイト材12について説明する。図1(a)に示すものは、図2もあわせて参照すれば、外障子4b下框7の戸車収納部7aの室外側壁部内周下端に設けてある気密材ホルダー7bに保持されるシール材9であり、気密材ホルダー7bに保持されるブロック状をなす基部9aと、その基部9aから戸車14に向けて突出するシール片(突出部)9bとからなっており、外障子4aの下框7の長手方向の全長に渡って配置されている。また、シール材9は、基部9aが塩化ビニル系樹脂からなり、また、シール片9bが塩化ビニル系樹脂に膨張黒鉛(熱膨張耐火成分)を含有したものからなり、基部9aとシール片9bが一体成形されている。
【0012】
図2(b)に示すものは、図3もあわせて参照すれば、内外障子4a,4bの戸先側の縦框5に保持されるタイト材12であり、縦框5の戸先に設けてある凹状をなす気密材ホルダー5aに保持されるブロック状の基部12aと、その基部12aから縦枠3内周に向けて突出する凸部(突出部)12bとからなっており、内外障子4a,4bの戸当たり側の縦框5長手方向の全長に渡って配置される。そしてタイト材12は、その基部12aがサッシ用のタイト材に一般的に使用されるシリコン系ゴムからなり、また、凸部12bがシリコン系ゴムに膨張黒鉛を含有したものからなり、基部12aと凸部12bが一体成形されている。そして、上記のシール材9やタイト材12及びその他、膨張黒鉛(熱膨張耐火成分)を含有したサッシ用気密材を、図2と図3もあわせて参照すれば、それぞれに対応する気密材ホルダー3a,5a,5b、7bに取り付けることで、枠体13と内外障子4a,4bの間隔や各形材間の隙間に膨張黒鉛(熱膨張耐火成分)が配置されるので、万一の火災時には、その膨張黒鉛が膨張して隙間や間隔を塞ぎ、炎や熱の侵入を防ぐことになる。
【0013】
そして、上述したシール材9及びタイト材12の成形については、共押出し成形法にて行われる。具体的に、シール材9を挙げて説明すれば、図4のように、共押出し成形機21を使用しており、その共押出し成形機21に配置された二つのタンク22,23のうちの一方のタンク22には、シール材9であれば塩化ビニル系樹脂の溶剤が充填されており、他方のタンク23には、前述の一方のタンク22に充填されている塩化ビニル系樹脂の溶剤に膨張黒鉛を含有した混合溶剤が充填されている。また、前述した混合溶剤の配合比率は、50〜80重量部に対して膨張黒鉛が20〜50重量部の範囲内で設定されている。また、共押出し成形機21には、任意形状及び断面サイズの成形物Pを得るのに対応した型24が具備されており、その型24に各タンク22,23から同時に溶剤が送り出されることで、異種の樹脂が一体成形された2色の成形物Pが成形される。そして、共押出し成形機21から送り出された成形物Pは、引取り機25で連続的に外に引き出されて冷却工程に移行される。冷却工程では、共押出し成形機21ら押し出された成形物Pに対し、水が満たされたプール26に通して冷却することにより、成形物Pの硬度を確保する。そして、切断工程・曲げ加工工程(加工工程)を行う加工機27では、共押出し成形機21から成形物Pが連続して供給されるため、サッシにおけるシール材9の適用箇所に対応して成形物Pを所定寸法に切断したり、あるいは、特殊枠体のアール部等に対応する曲げ加工などが行われるものである。以上の各工程を経て得られた成形物Pは、本実施のものであれば、塩化ビニル系樹脂からなる基部9aと、塩化ビニル系樹脂に膨張黒鉛を含んだ混合成分からなる突出部9bとを一体成形したシール材9となる。
【0014】
本発明のサッシ用気密材は、上記実施形態に限らず、サッシにおける気密材ホルダー3a,5a,5b,7bが設けてある箇所であれば、様々な形状のものに適用することができる。また、上記実施形態ではアルミ製サッシに本発明のサッシ用気密材を適用したものについて説明したが、樹脂製サッシのアルミ枠材やアルミ框材に取り付けることも可能である。また、本発明のサッシ用気密材の製造方法にて使用される共押出し成形機21やプール26、加工機27についても、その他、成形物Pを所望の形状、サイズに加工できる手段であれば、上記実施形態のものに限定するものではない。
【符号の説明】
【0015】
4a 外障子
4b 内障子
9 シール材(サッシ用気密材)
9a 基部
9b シール片(突出部)
12 タイト材(サッシ用気密材)
12a 基部
12b 凸部(突出部)
13 枠体
3a,5a,5b,7b 気密材ホルダー
P 成形物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サッシの枠体や障子に取り付けられるサッシ用気密材において、サッシのホルダーに嵌合される基部と、基部からホルダー外に突出する突出部とを備えており、基部は、耐摩耗性や弾性を有する気密材成形樹脂からなり、突出部は、気密材成形樹脂に熱膨張耐火成分を含有したものからなり、基部と突出部は一体成形してあることを特徴とするサッシ用気密材。
【請求項2】
気密材成形樹脂溶剤と、気密材樹脂溶剤に熱膨張耐火成分を混合した混合樹脂溶剤とを共押出し成形機により、異種の樹脂成分を共押出しする押出し工程、押出し工程により得られた成形物を冷却して硬化させる冷却工程、冷却工程により得られた成形物を所定の長さや形状に加工する加工工程を経ることを特徴とするサッシ用気密材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202190(P2012−202190A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70779(P2011−70779)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000112185)ビニフレーム工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】