説明

サムターン

【課題】高齢者や幼児にとって操作しやすいサムターンの提供。
【解決手段】回転動作により錠の錠杆を出没して施錠、解錠するサムターン軸51を有する胴体4にツマミ2を移動出没可能に嵌装し、該ツマミ2は常時その突出方向に付勢されて突出状態に保持されると共に、ツマミ2をその付勢力に抗して押し込んだ時には、ツマミ2に一体的に枢支されたカム3が回動し、カム3の係止部が制御部材7の係止部に係合することにより、ツマミ2が胴体4内に収納された状態に保持され、その収納状態において、ツマミ2を更に押し込むと、カム3と制御部材7との係合が解除されて、ツマミ2が前記付勢手段の付勢力によって胴体4から突出して、再び元の突出状態に保持されるように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不正な解錠を防止できるサムターンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅やビルの玄関や入口扉の錠を不正に解錠する手口の一つとして、いわゆるサムターン回しが知られている。これは、扉と枠との隙間や、扉にあけた穴に針金や工具等を挿入し、室内側のサムターンのツマミを回して不正解錠するものである。
【0003】
この不正解錠の対応策として、本出願人は先に、特許文献1(特開2006−257840号公報)に示されたサムターンを提案した。
【0004】
このサムターンは、サムターンのツマミによりサムターン軸を回し、錠の錠杆を出没して施錠、解錠操作ができる通常状態(操作モード)と、ツマミを回してもツマミだけが空転してサムターン軸は回らず錠杆を作動させることができない空転状態(防犯モード)とに切り替えることができるようにしたものである。
【0005】
特許文献1のサムターンは、不正解錠を防ぐこの種のサムターンとしては非常に優れたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−257840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このサムターンはモードを切り替える手段としてクラッチ機構を採用しているが、そのクラッチ機構が複雑で部品点数も多く組立も時間がかかり全体として高価なものとなった。またモードの切り替えはツマミに設けた2個の押圧部材(ボタン)を2本の指で摘んで押し込みながら可動部材を押し込み、又は引き出してクラッチを入れる、または切るという操作が必要であるので、高齢者や幼児にとっては操作し難いという問題点もあった。
【0008】
更には、サムターンが操作モードであるか防犯モードであるかは、ツマミに設けられた可動部材とボタンの位置の変化により判断しなければならず、モード状態の視認は困難であるという問題点もあった。その他、ツマミにはモード切り替え用のボタンが突出しており、外観的に優れない等、未だ改良の余地が多くあった。
【0009】
そこで、本発明のサムターンは、上記特許文献1のサムターンの上記問題点を解決するために案出したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の問題点を解消するため、本発明の請求項1に記載のサムターンは、回転動作により錠の錠杆を出没して施錠、解錠するサムターン軸を有する胴体にツマミを出没可能に嵌装し、該ツマミは常時その突出方向に付勢されて突出状態に保持されると共に、ツマミをその付勢力に抗して胴体内に押し込んだ時には、ツマミに一体的に枢支されたカムが回動し、カムの係止部が制御部材の係止部に係合することにより、ツマミが胴体内に収納された状態に保持され、その収納状態において、ツマミを更に押し込むと、カムと制御部材との係合が解除されてツマミが前記付勢手段によって胴体から突出して、再び元の突出状態に保持されるように構成してあることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に記載のサムターンは、上記請求項1のサムターンにおいて、ツマミはその断面形状が略矩形の直方体であることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に記載のサムターンは、上記請求項1のサムターンにおいて、ツマミはその断面形状が円形の円筒体であることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に載のサムターンは、上記請求項1のサムターンにおいて、ツマミは
その断面形状が略十字形又は略菱形であることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に記載のサムターンは、上記請求項1から請求項4までのいずれか1つの請求項のサムターンにおいて、ツマミの付勢手段がツマミの先端部に磁石を設ける一方、胴体のツマミ嵌装穴で上記ツマミの磁石と対向する部分に磁石を設け、両磁石の反発力をツマミの付勢手段としてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のサムターンによれば、通常はツマミが胴体から突出した突出状態(操作モード)に保持されるので、該ツマミを操作して胴体に一体に設けられたサムターン軸を回して錠の錠杆を作動して施錠、解錠できる。そして、外出時等にはツマミをツマミの付勢手段に抗して単に押し込んで移動させることにより、ツマミがサムターンの胴体内に収納され操作不可能な状態(防犯モード)に保持されるので、針金などによる不正解錠を有効に防止することができる。また、在宅時には、収納状態(防犯モード)にあるツマミを更に押し込む方向への力を加えることにより、ツマミを突出状態(操作モード)に移動(復帰)させることができる。
【0016】
また、上記の通り防犯モードと操作モードとの切り替え操作は、ツマミを単に押し込む操作だけでできるので極めて簡単であると共に、ツマミがサムターンの胴体に収納された防犯モードであるか、ツマミが突出した操作モードであるかを視認することが容易である。
【0017】
なお、このサムターンのツマミは図1の施錠状態で横向きとなり、解錠状態で図2のように縦向きとなるように、錠に組み付けることにより、従来のサムターンと同様に、ツマミの向きによって施錠状態か解錠状態かを判別できる。
【0018】
さらに、防犯モードと操作モードとの切り替え手段の構成が極めて簡単であり、部品点数が少ないので、組立ても簡単で全体として製造コストが極めて安価なサムターンを提供できる。
【0019】
その他、サムターンのツマミにはモード切り替え用のボタン等も無く、外観にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るサムターン1を適用した錠を扉20に取り付けて室内側から見た施錠状態の正面図である。
【図2】サムターン1のツマミ2が突出した状態での組立状態図である。
【図3】図2のサムターン1のツマミ2を押し込んで胴体4内に収納した状態の組立状態図である。
【図4】本発明のサムターン1の分解状態を示す斜視図である。
【図5】制御部材7を図4の逆の方向から見た斜視図である。
【図6】カム3の拡大図である。
【図7】サムターン1の施錠状態で突出した状態を示す図2における水平断面図である。
【図8】図7のA−A’線における断面図である。
【図9】図8の要部横断底面図である。
【図10】図9の状態から、ツマミ2を押し込んだ状態を示した横断底面図である。
【図11】図10の状態から、ツマミ2を押し込む力を解除して、ツマミ2が胴体4内に収納されて保持された状態を示した横断底面図である。
【図12】図11の状態で、ツマミ2を距離xだけ押し込んだ状態を示した横断底面図である。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
本発明の実施例1を図1〜図12に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明に係るサムターン1を有する錠10を扉20に取り付けた状態を示すもので、この錠10は所謂公知のプッシュ・プル錠であり、錠杆11と該錠杆11を出没作動させる出没作動機構(図示せず)を内装した錠ケース12と、ラッチ13を作動させるハンドル14を有し、ハンドル14と一体的に設けられた座15にサムターン1が 設けられている。錠ケース12および座15は上下に設けられており、その上下の座15,15にサムターン1,1が設けられている。また、図示されていないが、室外側にも同様のハンドルと座が設けられ、その座にはシリンダーが設けられている。そしてサムターンの操作又はシリンダーの鍵による操作により錠杆を出没して施錠、解錠できる。
【0022】
図2および図3は、サムターン1の組立状態を示す斜視図で、図2はツマミ2が胴体4から突出した状態で、図3はツマミ2を胴体4内に押し込んだ状態を示す。図2のツマミ2が突出した状態ではツマミ2を操作することが可能で、ツマミ2の操作によりサムターン軸51を回転作動して錠10の錠杆11を出没して施錠、解錠する。なお、サムターン軸51は従来公知のサムターン軸と同様のものであり、先端部は十字形に形成されており、ツマミ2が縦向きでも横向きでも錠ケース12内の出没作動機構に係合できる。
【0023】
なお、図1ではサムターン1のツマミ2は横向きで、図2および図3では、ツマミ2が縦向きであるが、サムターン1を錠10に組み付ける時、図1の様に施錠状態でツマミ2が横向きとなるように組み付ければよい。
【0024】
サムターン1は、図4の分解斜視図に示すように、サムターン軸51を有する回転体5と座6とにより構成される胴体4と、ツマミ2および制御部材7とで構成されており、ツマミ2は回転体5に形成されたツマミ嵌装穴52に、サムターン軸51の軸方向に移動可能に嵌装されている。上記サムターン軸51は、その回転動作により錠10の錠杆11を出没して施錠、解錠するものである。すなわち、ツマミ2の操作により胴体4を回転することにより、回転体5のサムターン軸51を回転して施錠、解錠するものである。
【0025】
前記回転体5と座6とは図7に示すように、座6に突設したネジ柱62を回転体5に形成した穴53に挿入し、回転体5の後方からネジ9をネジ柱62のネジ穴63に螺入して固定して胴体4を形成している。なお、座6には、回転体5のツマミ嵌装穴52と同様に、ツマミ2を嵌挿するツマミ嵌装穴61が形成されていると共に、前面には凹部64が形成されている。
【0026】
前記ツマミ2は、図7および図9に示すように、バネ8により常時胴体4から突出する方向に付勢されているが、ツマミ2の段部23が制御部材7の鍔部77に形成されたツマミ挿通穴75の縁部に当接して、それ以上の突出が阻止され、図7および図9の突出状態に保持される。なお、バネ8は、その一端がツマミ2に形成した穴22に嵌装され、他端は図9に示すように、回転体5に突設した柱54に掛架されて保持される。
【0027】
前記ツマミ2には、図7および図8に示されるように、その片側の側面に形成された穴21にカム3の軸35が挿入され、カム3が回動自在に枢支され、ツマミ2と一体的に移動するように保持されている。
【0028】
また、前記サムターン1の胴体4内には、ツマミ2と一体的に移動するカム3をガイドするガイド部71を有する制御部材7が図7および図8に示すように、回転体5と座6との間に制御部材7の鍔部77が挟み込まれて固定されている。
【0029】
図2、図7および図9は、ツマミ2が胴体4から突出した状態を示し、この状態ではツマミ2を操作してサムターン軸51を回動して施錠、解錠することができる。なお、この突出状態(操作モード)では、カム3は図9に示されるように制御部材7のガイド部71のガイド溝74内でガイド溝74の天板78と底板79との間で水平状態に保持されている。その状態のカムを、図6の拡大図で示す。
【0030】
図10は、図9の状態からツマミ2をバネ8による付勢力に抗して胴体4内に押し込んだ状態を示し、この時カム3はその第一先端部31の斜面部31aが、ガイド部71の先端部に設けた第一係止部72に当接し、カム3は時計方向に回動し、図10の状態となる。
【0031】
次に、図10の状態でツマミ2から指を放して、ツマミ2を押し込む力を解除するとツマミ2はその付勢力により元の状態まで突出しようとするが、図11に示すように、ツマミ2が距離xだけ突出した時に、カム3が前記したように時計方向に回動した状態となっているので、カム3の第一後端部33がガイド部71に設けた第二係止部73に当接する。すると、カム3はツマミ2の突出方向への付勢力によりその第二後端部34がガイド部71の第二係止部73に押されて、カムはさらに時計方向に回動しようとするが、この時、カム3の第二後端部34がガイド溝74の底板79に当接して、カム3はそれ以上の回動が阻止されるので、図11のように、カム3の第二後端部34がガイド部71の第二係止部73に係合した係合状態が保持される。
従って、ツマミ2のそれ以上の突出は阻止され、この収納状態で保持される。即ち、この状態はツマミ2が胴体4内に完全に収納された状態でありツマミ2を操作することはできず、施錠、解錠することができない状態(防犯モード)である。
【0032】
次に、図11のツマミ2が胴体内に収納された状態(防犯モード)において、ツマミ2を付勢力に抗して押し込むと、ツマミ2は距離xだけ移動する。この時、図12に示すように、カム3の第二先端部32が前記ガイド部71に設けた第一係止部72に当接し、押し込む力によってカム3が時計方向に回動し、図12に示す状態となる。
【0033】
この図12の状態で、ツマミ2から指を離してツマミ2を押し込む力を解除すると、バネ8の付勢力によりツマミ2は突出し、カム3の第二後端部34がガイド部71の第二係止部73に当接し、カム3は反時計方向に回動する。この時、カム3の回動を阻止するものはなにもないので、ツマミ2は、図9に示す元の突出状態(操作モード)まで回動し、カム3も図9に示す水平状態まで回動し、ガイド溝74の天板78と底板79との間に収納されて保持される。
【0034】
なお、ツマミ2が図9の突出状態から図11の収納状態を経て元の図9の突出状態に復帰した時、カム3は180°回転され、図9ではカム3の左側に位置した第一及び第二先端部が右側の第一および第二後端部の位置に位置することになる。ところで、このカム3の先端部と後端部とは180°回転対称形に形成してあるので、第一先端部31と第二後端部33、第二先端部32と第二後端部34とは各々前記した同じ作用を果たす。従って、前記した突出状態から収納状態へ、又収納状態から突出状態へと繰り返して操作することができる。
【0035】
(その他の実施例)
前記実施例1の構成では、ツマミ2はその断面形状が略矩形の直方体であったが、ツマミ2の断面形状が円形の円筒体でもよく、また、断面形状が略十字形又は略菱形やその他の形状のものでもよく、ツマミ2がその突出状態で回動操作できるものであればよく、その形状は特に限定されるものではない。
【0036】
さらには、ツマミ2をその突出方向に付勢する付勢手段として、前記実施例1の構成では2個のコイルバネ8を使用したが、バネは引っ張りバネでも良いし、又、2個使用することなく1個でもよい。その他、バネに替えて磁石の反発力を使用した付勢手段を設けることもできる。
【0037】
その他、ツマミ2に枢支するカム3の位置は、実施例1のようにツマミ2の側面でも良いし、ツマミ2の上面や下面に枢支してもよい。
また、カム3は、実施例1のように1個でもよいが、よりスムーズに作動させるために、複数個設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
なお、図示の錠10は、本発明のサムターンが適用される一例としてのプッシュ・プル錠であるが、本発明のサムターンはケースロックや本締錠あるいは電気錠などにも適用可能である。
また、錠の施錠、解錠機構は、本実施例のように錠杆を出没作動させるものに限らず、サムターンやシリンダーの操作によって錠杆の出没作動を規制する規制部材を作動して施錠、解錠するようにしたものや、レバーハンドルやノブ等の回転を制御して、施錠、解錠するようにした錠にも適用できる。
さらには、本発明のサムターンは、建物用の錠のみならず、自動車の錠やその他閉鎖体の錠にも適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 サムターン
2 ツマミ
3 カム
4 胴体
5 回転体
51 サムターン軸
52 ツマミ嵌装穴
6 座
7 制御部材
71 ガイド部
72 第一係止部
73 第二係止部
74 ガイド溝
8 バネ
9 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転動作により、錠の錠杆を出没して施錠、解錠するサムターン軸を有する胴体に、ツマミをサムターン軸の軸方向に移動可能に嵌装し、そのツマミは付勢手段により常時その突出方向に付勢されており、ツマミをその突出状態において、付勢力に抗して押し込んだ時には、ツマミに一体的に枢支されたカムが、胴体内に設けられた制御部材の係止部に係合し、その係合によりツマミがカムを介して胴体内に収納された状態で保持され、その収納状態において、ツマミを更に押し込むと、カムと制御部材の係止部との係合が解除されて、ツマミが前記付勢手段の付勢力により胴体から突出して、元の突出状態に保持されるように構成してあることを特徴とするサムターン。
【請求項2】
ツマミの形状は、その断面形状が略矩形の直方体である請求項1に記載のサムターン。
【請求項3】
ツマミの形状は、その断面形状が円形の円筒体である請求項1に記載のサムターン。
【請求項4】
ツマミの形状は、その断面形状が略十字形又は略菱形である請求項1に記載のサムターン。
【請求項5】
ツマミの先端部に磁石を設ける一方、胴体のツマミ嵌装穴で上記ツマミの先端部に対向する部分に磁石を設け、両磁石は同極が対向するように設け、両磁石の反発力をツマミの付勢手段としてある請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載のサムターン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−197585(P2012−197585A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61846(P2011−61846)
【出願日】平成23年3月20日(2011.3.20)
【出願人】(000130433)株式会社ゴール (52)
【出願人】(000005005)不二サッシ株式会社 (118)