説明

サンルーフ装置

【課題】ルーフ開口を塞ぐフロントパネルとリヤパネルとを備えたサンルーフ装置において、フロントパネルを作動させるフロントスライダと、リヤパネルを作動させるリヤスライダとを連動連結するスライダ連結機構が、部品点数が少なく、シンプルでコンパクトなサンルーフ装置を提供する。
【解決手段】リヤスライダ74に連結アーム75を揺動自在に枢支し、連結アーム75に、ガイドレール13に形成した係止孔101に嵌ることによりリヤスライダ74の前後移動を規制するストッパ100を設け、フロントスライダ30に連結ピン71を設け、連結アーム75に連結カム溝96を設け、フロントスライダ30が後方移動して連結ピン71と連結カム溝96とが係合することにより、連結アーム75が揺動してストッパ100が係止孔101から外れてリヤスライダ74がフロントスライダ30に連動して前後移動するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のルーフに設けられるサンルーフ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のルーフに形成されたルーフ開口の前部を開閉自在に閉鎖するフロントパネルと、前記ルーフ開口の後部を開閉自在に閉鎖するリヤパネルと、前後移動させることでフロントパネルを作動させるフロントスライダと、前後移動させることでリヤパネルを作動させるリヤスライダと、これらフロントスライダ及びリヤスライダを前後方向移動自在に案内するガイドレールとを備えたサンルーフ装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
このサンルーフ装置にあっては、フロントスライダを後方移動させることにより、フロントパネルの後部がルーフ開口の前部でチルトアップした後、該フロントパネルがチルトアップした状態で後方移動する。そして、フロントスライダがリヤスライダに接近して該リヤスライダに連結した後、リヤスライダがフロントスライダと連動して前後移動するように構成されており、これによって、1つの駆動モータによって、フロントパネルとリヤパネルとを作動させることができるようにしている。
【0004】
このサンルーフ装置のフロントスライダとリヤスライダとを連動連結するスライダ連結機構は、以下のように構成されている。
フロントスライダの後部には連結カム溝を備えた連結片が後方突出状に設けられ、前記連結カム溝の後部は後方に向けて開放状とされ、前部は前下がり傾斜状に形成されている。
【0005】
リヤスライダの前部には延長部が前方突出状に設けられていると共に連結アームが前方突出状に設けられている。
連結アームは後部が枢支されていて前部側が上下揺動自在とされており、該連結アームの前端側には連結ピンが左右方向貫通状に設けられ、延長部の前端側には連結アームの上下揺動範囲を規制する長孔が形成され、該長孔を前記連結ピンが挿通している。また、連結アームはバネによって上方に付勢されている。
【0006】
連結アームの前部側方には、ガイドレールに固定されたアーム係止部材が配置され、このアーム係止部材の側面には連結ピンが挿入された係止溝が形成されている。この係止溝は上下方向の縦溝部と、この縦溝部の後方で且つ下方に位置する前後方向の横溝部と、これら縦溝部と横溝部とを連結する湾曲溝部とから形成されている。
このスライダ連結機構にあっては、フロントスライダの連結片が連結ピンの前方側に位置している状態(連結解除状態)では、連結ピンは長孔の上端に位置していると共に、該連結ピンは係止溝の縦溝部に嵌っている。連結ピンが係止溝の縦溝部に嵌っていることにより、リヤスライダの前後移動が規制されている。
【0007】
この状態から、フロントスライダが後方移動して、連結カム溝が連結ピンに嵌合すると、連結ピンが連結カム溝に案内されてバネの付勢力に抗して引き下げられ、連結ピンが延長部の長孔の下端側に移動すると共に係止溝の横溝部の前端側に移動する。
連結ピンが連結カム溝の前部に嵌合すると、フロントスライダとリヤスライダとが連結状態となってリヤスライダがフロントスライダと連動して前後移動可能となり、また、連結ピンがアーム係止部材の係止溝の横溝部の前端側に移動すると、リヤスライダの前後方向の移動規制が解除されてリヤスライダが前後移動自在となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2009−113680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記従来のサンルーフ装置におけるフロントスライダとリヤスライダとを連動連結するスライダ連結機構は、フロントスライダに設けられていて連結カム溝を有する連結片と、リヤスライダに上下揺動自在に設けた連結アームと、この連結アームの上下揺動範囲を規
制する長孔を有する延長部と、連結アームに設けた連結ピンと、連結アームを上方に付勢するバネと、連結ピンが挿入される係止溝を有するアーム係止部材とから構成されており、該スライダ連結機構が、部品点数が多く、構造が複雑で、機構の大きさが大きいものであるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、フロントスライダとリヤスライダとを連動連結するスライダ連結機構が、部品点数が少なく、シンプルでコンパクトなサンルーフ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、車両のルーフに形成されたルーフ開口の前部を開閉自在に閉鎖するフロントパネルと、前記ルーフ開口の後部を開閉自在に閉鎖するリヤパネルとを備え、
前後移動させることでフロントパネルを作動させるフロントスライダと、前後移動させることでリヤパネルを作動させるリヤスライダとを備えると共に、これらフロントスライダ及びリヤスライダを前後方向移動自在に案内するガイドレールを備え、
フロントスライダを後方移動させてリヤスライダに連結させることにより、リヤスライダがフロントスライダに連動して前後移動するようにしたサンルーフ装置において、
リヤスライダの前部に連結アームを揺動自在に枢支し、この連結アームに、前記ガイドレールに形成された係止孔に嵌ることによりリヤスライダの前後移動を規制するストッパを設け、
前記フロントスライダ又は連結アームの一方に連結ピンを設け、他方に該連結ピンが係合することでフロントスライダと連結アームとを連動連結する連結カム溝を設け、
フロントスライダが後方移動して連結ピンと連結カム溝とが係合することにより、連結アームが揺動してストッパが係止孔から外れてリヤスライダがフロントスライダに連動して前後移動するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、前記連結アームはリヤスライダに上下揺動自在に枢支され、前記係止孔はガイドレールの底壁に形成され、連結ピンと連結カム溝とが係合した際に連結アームが上方揺動することでストッパが係止孔から外れると共に、ストッパが係止孔から外れてリヤスライダが係止孔より後方を前後移動する際に該ストッパがガイドレールの底壁上を摺動するように構成されているのがよい。
【0013】
また、前記フロントスライダに前記連結ピンを設け、前記連結アームに前記連結カム溝を設けるのがよい。
また、前記ストッパを係止孔に嵌る方向に付勢するスプリングを設けるのがよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フロントスライダとリヤスライダとを連動連結するスライダ連結機構が、リヤスライダに設けた連結アームと、フロントスライダ又は連結アームの一方に設けた連結ピン及び他方に設けた連結カム溝と、連結アームに設けたストッパと、ガイドレールに形成した係止孔とから構成されているので、該スライダ連結機構を、部品点数が少なく、シンプルでコンパクトな機構に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】車両の平面図である。
【図2】(a)はフロントパネル及びリヤパネルがルーフ開口を閉鎖する全閉状態のサンルーフ装置の側面図、(b)はフロントパネルがフルチルトアップした状態を示すサンルーフ装置の側面図である。
【図3】(a)はフロントパネルがフルチルトアップ状態で後方移動してフロントスライダがリヤスライダに連結した状態のサンルーフ装置の側面図である。
【図4】(a)はフロントパネルが全閉状態のサンルーフ装置の側面図、(b)はリヤパネルが全閉状態のサンルーフ装置の側面図である。
【図5】左側のフロントパネル駆動装置の分解斜視図である。
【図6】左側のリヤパネル駆動装置の分解斜視図である。
【図7】(a)は左側のフロントスライダの後スライダの分解斜視図、(b)は左側のリヤスライダの分解斜視である。
【図8】(a)は全閉状態におけるフロントパネル駆動装置の前部の側面図、(b)は全閉状態におけるフロントリフタ後部からリヤリフタ前部にわたる側面図である。
【図9】(a)はフルチルトアップ状態のフロントパネル駆動装置の前部の側面図、(b)はフルチルトアップ状態におけるフロントリフタ後部からリヤリフタ前部にわたる側面図である。
【図10】フロントタイミング部材の動作を示す側面図である。
【図11】リヤリフタの下降動作を示す側面図である。
【図12】フロントスライダとリヤスライダとの連結動作示す側面図である。
【図13】リヤタイミング部材の動作を示す側面図である。
【図14】(a)はガイドレールの断面図、(b)は図4のA−A線矢示断面図である。
【図15】(a)は図4のB−B線矢示断面図、(b)は図4のC−C線矢示断面図である。
【図16】(a)は図4のD−D線矢示断面図、(b)は図4のE−E線矢示断面図である。
【図17】(a)は図4のF−F線矢示断面図、(b)は図1のG−G線矢示断面図、(c)は図13のH−H線矢示断面図、(d)は図13のJ−J線矢示断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1はサンルーフ装置2を備えた車両1の平面図を示しており、該車両1のルーフ3には矩形状のルーフ開口4が形成されている。
以下の説明において、前後・左右・上下は運転席に着座した運転者から見た方向に従う。また、左右方向内方とは車両1の左右方向の端部から左右方向中央部に向かう方向をいい、左右方向外方とは車両1の左右方向中央部から左右方向の端部に向かう方向をいう。したがって、車両1の左右方向の側部に設けられている部材において、左右方向内側とは車両1の左右方向中央側をいい、左右方向外側とは車両1の左右方向中央側とは反対側をいう。
【0017】
サンルーフ装置2は、図1、図2、図3に示すように、ルーフ開口4の前部を開閉自在に閉鎖するフロントパネル6と、ルーフ開口4の後部を開閉自在に閉鎖するリヤパネル7と、ルーフ3の下面側に取付固定されたフレーム8と、フロントパネル6を開閉作動させるフロントパネル作動装置9と、リヤパネル7を開閉作動させるリヤパネル作動装置10と、これらパネル作動装置9,10を駆動する駆動モータ11と、この駆動モータ11の動力を前後のパネル作動装置9,10に伝達する駆動ケーブル12とを備えている。
【0018】
このサンルーフ装置2は、1つの駆動モータ11によって、フロントパネル作動装置9(フロントパネル6)とリヤパネル作動装置10(リヤパネル7)とを駆動するタイプのサンルーフ装置2である。
図1に示すように、フレーム8は、前後方向に延びる左右一対のガイドレール13と、左右ガイドレール13の前端側を連結する前枠材14と、左右ガイドレール13の前後方向中間部を連結する後枠材15とを備えており、前後枠材14,15間がフレーム開口16とされている。
【0019】
左右のガイドレール13の前部はルーフ開口4の左右側縁部の下方に位置し、前枠材14はルーフ開口4の前縁部の下方に位置し、後枠材15はルーフ開口4の後縁部の下方に位置している。したがって、フレーム開口16は、ルーフ開口4の下方に対応する位置に位置しており、該フレーム開口16は図示省略のサンシェードによって開閉自在とされる。
【0020】
駆動モータ11は前枠材14に取り付けられ、該駆動モータ11の近傍には、該駆動モータ11によって回転駆動される駆動ギヤ17が設けられ、この駆動ギヤ17に前記駆動ケーブル12が咬み合っており、駆動モータ11によって駆動ギヤ17を回転駆動することにより、駆動ケーブル12が長手方向に押し引きされるよう構成されている。
フロントパネル作動装置9とリヤパネル作動装置10は左右一対設けられ、フロントパネル作動装置9はフロントパネル6の左右の縁部側の下方に配置され(フロントパネル6とガイドレール13との間に設けられ)、リヤパネル作動装置10はリヤパネル7の左右の縁部側の下方に配置されている(リヤパネル7とガイドレール13との間に設けられている)。
【0021】
また、駆動ケーブル12もフロント、リヤのパネル作動装置9,10に対応して一対設けられている。
前記ガイドレール13は押出形材によって上方に凸となる緩やかな湾曲状に形成されており、図14(a)に示すように、パネルガイド部18と、このパネルガイド部18の左右方向内側方に設けられたサンシェードガイド部19と、パネルガイド部18の左右方向外側方に設けられた樋部21とを有する。
【0022】
パネルガイド部18には、ガイドレール13の底壁22上面を摺動面とした左右方向内外一対のスライドガイド溝23と、内側のスライドガイド溝23の上方に位置するタイミングガイド溝24と、外側のスライドガイド溝23の左右方向外側方に位置するケーブルガイド溝25と、タイミングガイド溝24の上方に位置する取付用溝26と、タイミングガイド溝24に左右方向で対向する規制壁27とがガイドレール13の長手方向に沿って形成されている。
【0023】
内側のスライドガイド溝23は左右方向外方に向けて開口するコ字形に形成され、外側のスライドガイド溝23は左右方向内方に向けて開口するコ字形に形成され、これらスライドガイド溝23は左右方向で対向状とされている。また、パネルガイド部18の左右方向内外のスライドガイド溝23の間は上方開放状とされている。
タイミングガイド溝24及び取付用溝26は左右方向外方に向けて開口するコ字形に形成されている。
【0024】
ケーブルガイド溝25は外側のスライドガイド溝23に連通していると共に前方から駆動ケーブル12が挿入されている。
フロントパネル作動装置9は、図4、図5、図8に示すように、フロントリフタ28、タイミングアーム29、フロントスライダ30を有する。
フロントリフタ28は、フロントパネル6の略前端部から後部にわたる長さに形成され、パネルガイド部18の内外スライドガイド溝23の間に前後移動可能に位置している。このフロントリフタ28は、図15に示すように、取付ブラケット31を介してフロントパネル6の左右方向の側縁側に取り付けられている。
【0025】
このフロントリフタ28の前端側にはフロントブラケット32が枢軸33を介して左右軸回りに回動自在に枢支連結され、このフロントブラケット32には、内外各スライドガイド溝23に長手方向摺動自在に嵌合されたスライドシュー34が取り付けられている。
また、フロントリフタ28の前部側には、チルトガイド溝36(カム溝)と、このチルトガイド溝36の前方側に位置するピン挿通溝37とが左右方向貫通状に形成されている。
【0026】
チルトガイド溝36は、後方に向けて下り勾配となる傾斜状に形成されている。
ピン挿通溝37は、中途部から上部にかけては後傾状に形成された後傾溝38とされ、下部が下方側に向けて形成された下向き溝39とされている。
また、フロントリフタ28の後端側には、シャッティングカム40が取付固定され、このシャッティングカム40にはシャッティングカム溝41が左右両側面に形成されている。
【0027】
このシャッティングカム溝41は、前端が閉鎖状とされ、前部がガイドレール13の長手方向に沿った直線状とされ、後部が後方に向けて下り勾配となる傾斜状に形成され、後端が斜め後下方向けて開放状とされている。
タイミングアーム29はフロントリフタ28の前部側の左右方向内側方に配置されている。該タイミングアーム29の前部側には、ガイドレール13の長手方向に沿って長い長孔状の軸挿通孔42が左右方向に貫通形成され、この軸挿通孔42に、フロントリフタ28前端側とフロントブラケット32とを枢支連結する前記枢軸33が挿通されている。
【0028】
このタイミングアーム29の後部の上部には、フロントリフタ28のピン挿通溝37に長手方向移動自在に挿通されたピン43が設けられている。
また、タイミングアーム29の後部の下部には、係合突部44が左右方向内方に突出状に設けられ、この係合突部44にはフロントタイミング部材45が左右方向内方に突出状に設けられている。
【0029】
フロントパネル6がルーフ開口4の前部を閉鎖する位置において、タイミングアーム29の左右方向内側方にはフロントタイミング部材43を係止することでフロントリフタ28の前後移動を規制するフロント係止部材46が配置されている。図10に示すように、このフロント係止部材46はガイドレール13の取付用溝26からタイミングガイド溝24にわたって設けられ、上部側が取付用溝26に嵌合されてガイドレール13に固定されている。
【0030】
このフロント係止部材46には、下方、すなわちタイミングガイド溝24に向けて開口状の係止溝47が形成され、この係止溝47に前記フロントタイミング部材45が下方側から嵌脱自在に嵌合可能とされている。
フロントスライダ30はガイドレール13のパネルガイド部18に前後移動自在(長手方向移動自在)に支持され、前後移動することによりフロントパネル作動装置9を駆動してフロントパネル6を開閉作動する(フロントパネル6を昇降及び前後移動させる)ものである。
【0031】
このフロントスライダ30は前スライダ48と、該前スライダ48の後方に配置された後スライダ49と、該後スライダ49から前方に延びるジョイント片50と、このジョイント片50と前スライダ48とを連結するジョイントシュー51とから主構成されている。
前スライダ48はフロントリフタ28の前部下方側に配置され、底壁52と、該底壁52の左右方向内外両側から立ち上がる一対の側壁53とを有する。
【0032】
この前スライダ48の内側の側壁53の下端には、内側のスライドガイド溝23に長手方向摺動自在に嵌合したスライドシュー54が設けられ、該スライドシュー54がスライドガイド溝23内を摺動することで前スライダ48が前後移動自在とされている。
また、前スライダ48の外側の側壁53の下端には、外側のスライドガイド溝23及びケーブルガイド溝25を長手方向に移動自在なケーブル固定具55が設けられ、このケーブル固定具55に駆動ケーブル12が固定されている。したがって、駆動ケーブル12が長手方向に押し引きされることによりフロントスライダ30が前後移動するよう構成されている。
【0033】
前スライダ48の内側の側壁53の前部には、タイミングアーム29の係合突部44に係合自在な係合溝56が設けられている。
前スライダ48の後部にはフロントリフタ28を挟むように内外の側壁53から上方に延出した左右一対の延出片57が設けられ、この延出片57の上部には、図15に示すように、該左右延出片57を貫通すると共にフロントリフタ28のチルトガイド溝36を挿通するチルトピン58(フロント前支持部)が設けられている。
【0034】
前スライダ48の後端側には接続片59が設けられている。
後スライダ49は、底壁61と、該底壁61の左右方向内外両側から立ち上がる一対の側壁62とを有し、ジョイント片50は該後スライダ49の内側の側壁62から前方に延出されている。
この後スライダ49の内外の側壁62の下端には、内外のスライドガイド溝23に長手方向摺動自在に嵌合したスライドシュー63が設けられ、該スライドシュー63がスライドガイド溝23内を摺動することで後スライダ49が前後移動自在とされている。
【0035】
図7(a)、図15(b)に示すように、後スライダ49の内外の側壁62の前部上端には、対向側へ延設された取付片64が設けられ、各取付片64には係合シュー65が取り付けられ、係合シュー65はシャッティングカム40の左右両側に位置しており、該係合シューの対向側にはシャッティングカム40のシャッティングカム溝41に挿入する係合部66(フロント後支持部)が設けられている。
【0036】
フロントパネル6及びリヤパネル7がルーフ開口4を閉鎖する全閉状態において、後スライダ49の後端側は、フロントパネル6とリヤパネル7との合わせ目の下方側に位置し、図7(a)、図16(a)に示すように、該後スライダ49の内外の側壁62の後部上端には、対向側へ延設された取付片67が設けられ、各取付片67には係合シュー68が取り付けられており、該係合シュー68の対向側には係合部69(リヤ前支持部)が設けられている。
【0037】
この後スライダ49の前後の係合部66,69は同じ高さ位置に設けられている。
また、後スライダ49の内側の側壁62の後端には後方に向けて延出状の連結片70が設けられ、この連結片70には連結ピン71(被連結部)が左右方向外方に突出状に設けられている。
図15(a)に示すように、ジョイントシュー51は内側のスライドガイド溝23に長手方向摺動自在に嵌合しており、前部が前スライダ48後端側部の接続片59に連結され、後部がジョイント片50の前部に連結されている。
【0038】
リヤパネル作動装置10は、図4、図6に示すように、リヤリフタ72と、タイミングリンク73と、リヤスライダ74と、連結アーム75、フロントスライダ30の後部(後スライダ49)によって主構成されている。
リヤリフタ72は、リヤパネル7の略前端から略後端にわたる長さに形成され、図16(b)に示すように、パネルガイド部18の内外スライドガイド溝23の間の上方位置に位置しており、取付ブラケット76を介してリヤパネル7の左右方向の側縁側に取り付けられている。
【0039】
このリヤリフタ72の左右方向内外両側面には、図4に示すように、前部側に1つのリフトガイド溝77(カム溝)が形成され、後部側に前後一対のリフトガイド溝78,79(カム溝)が形成されている。
これらリフトガイド溝77,78,79は後方に向けて上り勾配の傾斜状に形成されている。
【0040】
リヤリフタ72前部のリフトガイド溝77を前部リフトガイド溝といい、リヤリフタ72後部の前側のリフトガイド溝78を前側の後部リフトガイド溝といい、後側のリフトガイド溝79を後側の後部リフトガイド溝という。
また、リヤリフタ72の左右方向内外両側面には、リヤリフタ72の前端から前側の後部リフトガイド溝78の前端に至る摺動溝80が、ガイドレール13の長手方向に沿って形成されている。
【0041】
この摺動溝80の前端は前方に向けて開放状とされ、中間部は前部リフトガイド溝77の前端に連続しており、後端は前側の後部リフトガイド溝78の前端に連続している。
また、この摺動溝80には、図16(a)に示すように、フロントスライダ30の後スライダ49の後部に設けられた係合シュー68の係合部69が前後移動自在に挿入されている。
【0042】
タイミングリンク73はリヤリフタ72の後方側に配置され、前端側が枢軸81を介してリヤリフタ72の後端側に左右軸回りに回動自在に枢支連結されている。
タイミングリンク73の後端側には、図6、図17(d)に示すように、左右方向内外両側に配置されたローラ83が支持部材82を介して左右軸回りに回動自在に支持されている。内側のローラ83はタイミングガイド溝24に長手方向移動自在に嵌合しており、外側のローラ83はガイドレール13のパネルガイド部18に設けられた規制壁27に摺動自在に接当している。
【0043】
タイミングリンク73の中間部には、図6、図17(c)に示すようにリヤタイミング部材84が設けられている。このリヤタイミング部材84はタイミングリンク73の左右方向内側方に位置し、タイミングガイド溝24を長手方向に移動可能とされている。
リヤパネル7がルーフ開口4の後部を閉鎖する位置において、タイミングリンク73の左右方向内側方にはリヤタイミング部材84を係止することでリヤリフタ72の前後移動を規制するリヤ係止部材85が配置されている。
【0044】
このリヤ係止部材85は、ルーフ開口4の後縁下方に配置されている。
図13に示すように、このリヤ係止部材85はガイドレール13の取付用溝26からタイミングガイド溝24にわたって設けられ、上部側が取付用溝26に嵌合されてガイドレール13に固定されている。
このリヤ係止部材85には、タイミングリンク73の後端のローラ83の中心を支点とする円弧状の係止溝86が形成されている。この係止溝86は、その上端が上方に開口状とされ、前面87の下端はタイミングガイド溝24の底面に至るように形成され、後面88の下端はタイミングガイド溝24の上面に至るように形成されている。
【0045】
リヤスライダ74は、リヤリフタ72の下方に配置され、ガイドレール13のパネルガイド部18に前後移動自在(長手方向移動自在)に支持されており、前後移動することによりリヤパネル作動装置10を駆動してリヤパネル7を開閉作動する(リヤパネル7を昇降及び前後移動させる)ものである。
このリヤスライダ74は、リヤリフタ72の後部に配置され、図7(b)に示すように、底壁89と、該底壁89の左右方向内外両側から立ち上がる一対の側壁90とを有する。
【0046】
このリヤスライダ74の左右方向内外の側壁90の下端には、左右方向内外のスライドガイド溝23に長手方向摺動自在に嵌合したスライドシュ91ーが設けられ、該スライドシュー91がスライドガイド溝23内を摺動することでリヤスライダ74が前後移動自在とされている。
リヤスライダ74の内外の側壁90の後部上端には、対向側へ延設された取付片92が設けられ、各取付片92には係合シュー93が取り付けられている。図17(a)に示すように、係合シュー93は後側の後部リフトガイド溝79の左右両側に位置しており、該係合シュー93の対向側には後側の後部リフトガイド溝79に挿入する係合部94(リヤ後支持部)が設けられている。
【0047】
図7(b)、図12に示すように、リヤスライダ74の前部には、フロントスライダ30が連結する連結アーム75が設けられている。
この連結アーム75は、その後部が枢軸95によってリヤスライダ74の内側の側壁に左右軸回りに回動自在に枢支連結されている。
連結アーム75の前部の左右方向内側面にはフロントスライダ30後端の連結ピン71が挿入可能な連結カム溝96が形成されている。
【0048】
この連結カム溝96は、前端側は前方に向けて開口状とされていて連結ピン71の挿入口97とされ、この挿入口97は前方に向けて拡開するように形成されている。
該連結カム溝96の後部は後方に向かうに従って下方に移行する傾斜溝98とされ、該傾斜溝98の後端は閉鎖状とされている。
挿入口97と傾斜溝98との間はガイドレール13の長手方向に沿う横溝部99とされている。
【0049】
連結アーム75の下面にはストッパ100が下方突出状に設けられている。
図12、図17(b)に示すように、ガイドレール13の底壁22には、連結アーム75のストッパ100が嵌脱自在に嵌る係止孔101(アーム係止部)が上下貫通状に形成され、該係止孔101にストッパ100が嵌ることによりリヤスライダ74の前後移動が規制される。
【0050】
リヤスライダ74と連結アーム75との間には、該連結アーム75を枢軸33回りに下方に付勢するU字形のスプリング102が設けられている(図7(b)参照)。
前記構成のサンルーフ装置2にあっては、先ず、フロントパネル6及びリヤパネル7がルーフ開口4を閉鎖している図2(a)に示す全閉状態からフロントパネル6が前後方向略同位置(ルーフ開口4の前部位置)において後部が上昇するように(後傾状に傾くように)チルトアップして図2(a)に示すフルチルトアップ状態となり、その後、このフルチルトアップ状態でフロントパネル6が後方移動して図3(a)に示すようにフロントパネル6の後部がリヤパネル7の前部上方にオーバーラップしてルーフ開口4の前部を略半開する。この間、リヤパネル7はルーフ開口4の後部を閉鎖した状態で動かない。
【0051】
次に、図3(b)に示すように、先ず、リヤパネル7の前部が後部に比べて大きく下降
(リフトダウン)した後、図3(c)に示すように、リヤパネル7の後部が前部に比べて大きく下降してリヤパネル7がリフトダウン完了状態となる。
その後、フロントパネル6がフルチルトアップ状態で且つリヤパネル7がリフトダウン完了状態で、フロントパネル6及びリヤパネル7が後方移動して、リヤパネル7がルーフ3の後部下方に収納され且つフロントパネル6後部がルーフ3の後部上方にオーバーラップした全開状態となる。
【0052】
以下、このパネル開閉動作を詳細に説明する。
図2(a)に示す全閉状態では、図4、図8に示すように、フロントリフタ28の前端側を枢支する枢軸33はタイミングアーム29の軸挿通孔42の前端側に位置し、タイミングアーム29の後部の上部に設けられたピン43はフロントリフタ28のピン挿通溝37の上端側に位置し、フロントスライダ30の前スライダ48の後上部のチルトピン58はフロントリフタ28のチルトガイド溝36の前端側に位置し、フロントスライダ30の後スライダ49前部の係合シュー65の係合部66はシャッティングカム40のシャッティングカム溝41の前部に位置している。
【0053】
フロントリフタ28は、前部が枢軸33とチルトピン58とによって、後部が後スライダ49前部の係合部66によって支持されている。
後スライダ49前部の係合シュー65の係合部66がシャッティングカム40のシャッティングカム溝41に係合していることによりフロントパネル6後部の浮き上がりが規制されている。また、後スライダ49前部の係合部66でフロントパネル6がルーフ開口4の前部を閉鎖した状態でフロントパネル6の後部を支持する。
【0054】
また、フロントタイミング部材45は、図10(a)に示すように、フロント係止部材46の係止溝47に嵌合していて、フロントリフタ28の前後移動が規制されている。このとき、フロントリフタ28のピン挿通溝37の後傾溝38にタイミングアーム29の後上部のピン43が位置していることから、フロントタイミングアーム29は下方揺動が規制され、これによって、フロントタイミング部材45が係止溝47から下方に離脱しないように構成されている。
【0055】
また、前スライダ48の係合溝56は、係合突部44の前方に位置している。
また、後スライダ49後部の係合シュー68の係合部69はリヤリフタ72の摺動溝80の前端側(前部)に位置していて(換言すると、後スライダ49後部の係合シュー68の係合部69はリヤリフタ72の前端側に位置していて)、後スライダ49の後部でリヤリフタ72及びリヤパネル7の前端側(前部)を支持している。
【0056】
また、リヤスライダ74はリヤリフタ72の後部に位置し、該リヤスライダ74後部の係合シュー93の係合部94はリヤリフタ72の後側の後部リフトガイド溝79の前端側に位置していて、リヤスライダ74後部によってリヤリフタ72及びリヤパネル7の後部を支持している。
従来のサンルーフ装置にあっては、フロント、リヤのパネルを支持するスライダは、フロントとリヤで独立しているのに対し、本実施形態のサンルーフ装置2にあっては、フロントスライダ30の後部でリヤパネル7の前部を支持すると共にリヤスライダ74でリヤパネル7の後部を支持する構造となっている。
【0057】
これによって、全閉時において、リヤパネル7の前部を支持する係合部69(リヤ前支持部)と、リヤパネル7の後部を支持する係合部94(リヤ後支持部)との距離を極力広く採ることができ、リヤパネル7の保持剛性の向上を図ることができる。
また、リヤスライダ74の前部に枢支連結した連結アーム75のストッパ100は係止孔101に挿入されていてリヤスライダ74の前後移動が規制されている。
【0058】
また、図13(a)にも示すように、タイミングリンク73は前傾状とされると共にリヤタイミング部材84がリヤ係止部材85の係止溝86の上部に位置していて、リヤリフタ72の前後移動が規制されている。
このフロントパネル6及びリヤパネル7の全閉状態からフロントスライダ30を後方移動させると、前スライダ48の後上部のチルトピン58がフロントリフタ28のチルトガイド溝36を後方移動し且つ後スライダ49前部の係合部66がシャッティングカム40
のシャッティングカム溝41を後方移動する。
【0059】
すると、後スライダ49前部の係合部66がシャッティングカム溝41から離脱すると共にフロントリフタ28及びフロントパネル6の後部が枢軸33を中心として上昇する(チルトアップする)。このとき、フロントリフタ28前端側の枢軸33は軸挿通孔42内を後方移動し、タイミングアーム29後上部のピン43はピン挿通溝37の後傾溝38内を下方移動する。
【0060】
次に、前スライダ48の後上部のチルトピン58がチルトガイド溝36の後端側に移動すると、図2(b)及び図9に示すように、フロントパネル6がフルチルトアップ状態となる。
このフルチルトアップ状態では、フロントリフタ28前端側の枢軸33は軸挿通孔42の後端側に位置する。また、タイミングアーム29後上部のピン43はピン挿通溝37の下向き溝39の上端側に位置し、タイミングアーム29が枢軸33を支点として下方揺動可能となると共に、図10(b)に示すように、前スライダ48の係合溝56がタイミングアーム29の係合突部44に係合してタイミングアーム29を引き下げる。これによってフロントタイミング部材45がフロント係止部材46の係止溝47から下方に外れると共に、該フロントタイミング部材45がタイミングガイド溝24を後方移動可能となる。
【0061】
このフルチルトアップ状態から、フロントスライダ30を前方移動させると、フロントタイミング部材45がフロント係止部材46の係止溝47の前面下端側に接当して該フロントタイミング部材45の前方移動が規制されると共に、係合突部44が係合溝56の後面に押圧されて押し上げられることによりフロントタイミング部材45が係止溝47に嵌入する。
【0062】
そして、フロントリフタ28及びフロントパネル6の後部は、前記とは逆の動作によって下降し、フロントパネル6がルーフ開口4の前部を閉鎖する閉鎖位置に戻る。
前記係止溝47を有するフロント係止部材46、タイミングアーム29、該タイミングアーム29に設けられた係合突部44及びフロントタイミング部材45、前スライダ48の係合溝56等によって、フロントパネル6のチルト動作中は該フロントパネル6の前後移動を規制し且つフロントパネル6がフルチルトアップした状態では該フロントパネル6の前後移動規制を解除するフロントタイミング機構が構成されている。
【0063】
一方、フルチルトアップ状態から、さらに、フロントスライダ30を後方移動させると、フロントパネル6は、フルチルトアップ状態のまま、フロントリフタ28、タイミングアーム29と共に後方移動する。
このとき、図10(c)に示すように、フロントタイミング部材45はタイミングガイド溝24内を後方移動する。また、タイミングガイド溝24内には、リヤ係止部材85まで、フロントタイミング部材45の後方移動を妨げるものは存在しない。
【0064】
また、フロントスライダ30が後方移動すると、該フロントスライダ30の後スライダ49後部の係合部69はリヤリフタ72の摺動溝80を後方に移動するので、リヤリフタ72前部を支持している部分(係合部69)が後方に変動してリヤリフタ72の支持間隔が狭くなるが、途中から後スライダ49前部の係合シュー65の係合部66が摺動溝80内に前端側から挿入する。
【0065】
その後は、この後スライダ49前部の係合部66によってリヤリフタ72の前部が支持されるので、常に広い支持間隔でリヤリフタ72(リヤパネル7)を支持することができる。また、後スライダ49前部の係合部66がリヤリフタ72の摺動溝80に挿入した後は、後スライダ49前部の係合部66と、スライダ49後部の係合部69と、リヤスライダ74の係合部94との3点でリヤパネル7を支持することができ、支持剛性の向上を図ることができる。
【0066】
フロントパネル6がフルチルトアップ状態のまま後方移動すると、フロントパネル6の後部がリヤパネル7の前部にオーバーラップすると共に、フロントスライダ30がリヤスライダ74に連結する。
なお、図2及び図3において、実線で示すリヤパネル7は左右方向中央部の断面を示しており、また、フロントパネル6及びリヤパネル7は、左右方向中央部が中高状とされて
いる。したがって、リヤパネル7の左右方向の側部は、図3に仮想線Xで示す高さ位置に位置しているので、フロントリフタ28の後部がリヤパネル7に接触することはない。
【0067】
図3(a)及び図11(a)は、フロントスライダ30とリヤスライダ74との連結が完了した状態を示している。
このフロントスライダ30とリヤスライダ74との連結動作・連結解除動作を、図12を参照して説明する。
図12(a)に示すように、リヤスライダ74の前部側に設けられた連結アーム75のストッパ100が係止孔101に挿入された状態で、フロントスライダ30後端の連結ピン71は、連結アーム75の連結カム溝96の挿入口97と同じ高さ位置に位置し、該連結ピン71が連結カム溝96に挿入可能とされている。
【0068】
この図12(a)に示す状態からフロントスライダ30を後方移動させると、連結ピン71が連結カム溝96内に挿入すると共に該連結ピン71が傾斜溝98の後面を押圧する。すると、図12(b)に示すように、連結アーム75が上方に押し上げられてストッパ100が係止孔101から離脱し、連結ピン71と連結アーム75との連結が完了する。
そして、ストッパ100が係止孔101から離脱すると、図12(c)に示すように、ストッパ100がガイドレール13の底壁22上を後方に摺動し、フロントスライダ30に押圧されてリヤスライダ74が後方移動する。
【0069】
また、フロントスライダ30及びリヤスライダ74を前方移動させるときは、連結アーム75が下方揺動しない限り連結ピン71と連結アーム75との連結状態は解除されないので、連結ピン71によって連結アーム75が前方に引動されてフロントスライダ30と共にリヤスライダ74が前方移動する。
そして、フロントスライダ30と共にリヤスライダ74を前方移動させている際において、連結アーム75のストッパ100が係止孔101の上方位置にくると、自重及びスプリング102の付勢力によって連結アーム75が下方移動してストッパ100が係止孔101に嵌る。
【0070】
ストッパ100が係止孔101に嵌ると、連結ピン71が連結カム溝96の傾斜溝98上端側に至ると共に横溝部99を前方移動して連結カム溝96から前方に離脱し、連結ピン71と連結アーム75との連結が解除される。
連結ピン71と連結アーム75との連結が解除される場合、連結アーム75が自重のみで係止孔101に嵌るようにしてもよいが、本実施形態のように、スプリング102の付勢力によってもストッパ100が係止孔101に嵌るようにすることにより、連結アーム75の誤作動を防止でき、確実に、ストッパ100が係止孔101に嵌るという効果を奏する。
【0071】
図3(a)及び図11(a)に示すフロントスライダ30とリヤスライダ74との連結完了状態において、フロントスライダ30の後スライダ49後部の係合部69は前側の後部リフトガイド溝78の前端側に位置し、フロントスライダ30の後スライダ49前部の係合部66は前部リフトガイド溝77の前端側に位置する。
フロントスライダ30をリヤスライダ74への連結位置まで後方移動させる際において、フロントスライダ30の後スライダ49後部の係合部69は前部リフトガイド溝77内に入らずに、該前部リフトガイド溝77を通り過ぎて前側の後部リフトガイド溝78に至るが、フロントスライダ30の後スライダ49前部の係合部66が前部リフトガイド溝77に至った際には、後スライダ49後部の係合部69が前側の後部リフトガイド溝78の前端側に挿入してリヤリフタ72を若干引き下げるので、後スライダ49前部の係合部66が前側の後部リフトガイド溝78内に挿入可能となる。
【0072】
図3(a)、図11(a)に示す連結完了状態からフロントスライダ30を後方移動させると、該フロントスライダ30に押動されてリヤスライダ74が後方移動し、リヤリフタ72及びリヤパネル7が下降(リフトダウン)する。
このリヤリフタ72の下降動作を、図3及び図11を参照して説明する。
前記連結完了状態からフロントスライダ30及びリヤスライダ74を後方移動させて、図3(b)、図11(b)に示すように、各スライダ30,74に設けた各係合部66,
69,94が各リフトガイド溝77,78,79の中途部まで移動すると、前部リフトガイド溝77の前部の傾斜角度が前側の後部リフトガイド溝78及び後側の後部リフトガイド溝79の前部の傾斜角度よりも大であり、前側の後部リフトガイド溝78の前部の傾斜角度が後側の後部リフトガイド溝79の前部の傾斜角度よりも大であることから、先ず、リヤリフタ72(リヤパネル7)の前部が後部に比べて大きく下降(リフトダウン)する。
【0073】
次いで、さらに、フロントスライダ30及びリヤスライダ74を後方移動させて、図3(c)、図11(c)に示すように、各スライダ30,74に設けた各係合部66,69,94が各リフトガイド溝77,78,79の後端側まで移動すると、前部リフトガイド溝77の後部が前側の後部リフトガイド溝78及び後側の後部リフトガイド溝79の後部よりも緩傾斜であり、前側の後部リフトガイド溝78及び後側の後部リフトガイド溝79の後部の後半部が前半部よりも急傾斜であることから、リヤリフタ72(リヤパネル7)の後部が前部に比べて大きく下降(リフトダウン)する。
【0074】
これによって、リヤパネル7はルーフ3よりも低い位置となり、リヤパネル7がルーフ3の後部下方に収容可能とされる。
一方、前記リヤリフタ72の下降動作が完了するまでは、リヤ係止部材85の係止溝86にリヤタイミング部材84が嵌っていることにより、リヤリフタ72の後方移動が規制される。
【0075】
このリヤリフタ72の移動規制動作を図13を参照して説明する。
リヤリフタ72が下降動作する前の状態では、図13(a)に示すように、タイミングリンク73は前傾状とされると共にリヤタイミング部材84がリヤ係止部材85の係止溝86の上部に位置していて、リヤリフタ72の前後移動が規制されている。
図13(b)に示すように、リヤリフタ72が下降するに連れて、タイミングリンク73が後端のローラ83を中心として下方に揺動し、これに伴ってリヤタイミング部材84も係止溝86内を下方側に移動し、徐々にタイミングガイド溝24内に入り込む。
【0076】
そして、リヤリフタ72のリフトダウン完了状態で、リヤタイミング部材84がタイミングガイド溝24内に入り込んで、リヤタイミング部材84がタイミングガイド溝24内を後方移動可能となる。これによって、リヤリフタ72の後方移動規制が解除され、フロントパネル6及びリヤパネル7が後方移動可能となる。
また、この状態からフロントスライダ30及びリヤスライダ74を前方移動させると、リヤタイミング部材84が前方移動してリヤ係止部材85の係止溝86の前面87下部に接当すると、該リヤタイミング部材84の前方移動が規制されることでリヤリフタ72の前方移動が規制される。
【0077】
そして、その後は、リヤリフタ72及びリヤパネル7が前記とは逆の動作によって上昇し、リヤパネル7がルーフ開口4の後部を閉鎖する閉鎖位置に戻る。
前記タイミングリンク73、該タイミングリンク73に設けられたリヤタイミング部材84、係止溝86を有するリヤ係止部材85等によって、リヤパネル7のリフト動作中は該リヤパネル7の前後移動を規制し且つリヤパネル7がリフトダウンを完了した状態では該リヤパネル7の前後移動規制を解除するリヤタイミング機構が構成されている。
【0078】
一方、図3(c)、図11(c)に示すリヤパネル7のリフトダウン完了状態で、さらにフロントスライダ30及びリヤスライダ74を後方移動させると、フロントパネル6がチルトアップし且つリヤパネル7がリフトダウンした状態で後方に移動し、フロントパネル6の後部がルーフ3後部の上方にオーバーラップし且つリヤパネル7の全部がルーフ3の後部下方に収納された全開状態となり、ルーフ開口4が大きく開口する。
【0079】
この全開状態では、リヤ係止部材85が外部から見えず、見栄えを向上させることができる(フロント係止部材46しかないように見える)。
また、該全開状態では、フロントタイミング部材45はリヤ係止部材85の前方に位置する。
本実施形態では、タイミングガイド溝24のリヤ係止部材85より前方側をフロントタイミング部材45が前後移動し、タイミングガイド溝24のリヤ係止部材85より後方側
をリヤタイミング部材84が前後移動するように構成されている。すなわち、フロントタイミング部材45とリヤタイミング部材84とが共通のタイミングガイド溝24を前後移動するよう構成されている。また、リヤスライダ74の前後移動を規制するのに、連結アーム75のストッパ100がガイドレール13の底壁22に設けた係止孔101に嵌るように構成している。これらより、本実施形態のサンルーフ装置2では、ガイドレール13の断面の小型化(ガイドレール13の簡素化)を図ることができると共にガイドレール13のレイアウト性の向上・軽量化を図ることができる。
【0080】
前記フロントスライダ30とリヤスライダ74とを連動連結するスライダ連結機構は、リヤスライダ74に設けた連結アーム75と、この連結アーム75に設けた連結カム溝96と、フロントスライダ30に設けた連結ピン71と、連結アーム75に設けたストッパ100と、ガイドレール13の底壁22に形成した係止孔101とから構成されているので、該スライダ連結機構を、部品点数が少なく、シンプルでコンパクトな機構に構成することができる。
【0081】
また、従来のフロントスライダとリヤスライダとを連動連結するスライダ連結機構にあっては、リヤスライダの前後移動を規制する構造は、該リヤスライダの前部に連結アームを設けると共に連結アームの側方にアーム係止部材を配置し、連結アームの先端に設けた連結ピンをアーム係止部材に形成した係止溝に係止することにより構成され、前記アーム係止部材は、ガイドレールの底壁から上方に延出された左右側壁のうちの一方の側壁の対向側に設けているので、該アーム係止部材がガイドレールの上下方向の総厚に影響を及ぼす。これに対し、本実施形態では、ガイドレール13の底壁22に形成した係止孔101に連結アーム75に設けたストッパ100が嵌ることにより、リヤスライダ74の前後移動を規制するという構造を採っているので、ガイドレール13の総厚に影響を及ぼさない構造とされ、且つコンパクトであるので、左右方向内外のスライドガイド溝23間で且つリヤリフタ72の下方の狭い空間に配置することができる。
【0082】
また、本実施形態のサンルーフ装置2では、前記後スライダ49前部の係合部66は、フロントパネル6がルーフ開口4の前部を閉鎖した状態でフロントパネル6の後部の浮き上がりを防止する機能(シャッティング機能)と、リヤパネル6の前部を支持する機能と、リヤパネル6の前部を引き下げる機能とを有し、部材の兼用化が図られている。
また、本実施形態のフロントパネル6のシャッティング構造は、フロントスライダ30の後スライダ49前部の係合部66をフロントリフタ28後端側のシャッティングカム溝41に係合するという構造を採っているので、部品構成がシンプルである。
【0083】
また、本実施形態では、リヤスライダ74の前部に設けた連結アーム75に連結カム溝96を設けると共にフロントスライダ30後端の連結片70に連結ピン71を設けているが、連結アーム75に連結ピン71を設け、連結片70に連結ピン71に嵌合することにより連結アーム75を上方に揺動する連結カム溝を設けるようにしてもよい。
また、連結アーム75の揺動方向は左右方向でもよい。また、係止孔101は底壁22に形成されていなくてもよく、ガイドレール13自体に形成されていればよい。
【0084】
また、本発明は、前記実施形態のサンルーフ装置2に限定されることはなく、従来のサンルーフ装置のように、リヤリフタの後部を先に下降させた後に前部が下降するように構成されているサンルーフ装置にも採用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 車両
3 ルーフ
4 ルーフ開口
6 フロントパネル
7 リヤパネル
13 ガイドレール
22 底壁
30 フロントスライダ
71 連結ピン
74 リヤスライダ
75 連結アーム
96 連結カム溝
100 ストッパ
101 係止孔
102 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)のルーフ(3)に形成されたルーフ開口(4)の前部を開閉自在に閉鎖するフロントパネル(6)と、前記ルーフ開口(4)の後部を開閉自在に閉鎖するリヤパネル(7)とを備え、
前後移動させることでフロントパネル(6)を作動させるフロントスライダ(30)と、前後移動させることでリヤパネル(7)を作動させるリヤスライダ(74)とを備えると共に、これらフロントスライダ(30)及びリヤスライダ(74)を前後方向移動自在に案内するガイドレール(13)を備え、
フロントスライダ(30)を後方移動させてリヤスライダ(74)に連結させることにより、リヤスライダ(74)がフロントスライダ(30)に連動して前後移動するようにしたサンルーフ装置において、
リヤスライダ(74)の前部に連結アーム(75)を揺動自在に枢支し、この連結アーム(75)に、前記ガイドレール(13)に形成された係止孔(101)に嵌ることによりリヤスライダ(74)の前後移動を規制するストッパ(100)を設け、
前記フロントスライダ(30)又は連結アーム(75)の一方に連結ピン(71)を設け、他方に該連結ピン(71)が係合することでフロントスライダ(30)と連結アーム(75)とを連動連結する連結カム溝(96)を設け、
フロントスライダ(30)が後方移動して連結ピン(71)と連結カム溝(96)とが係合することにより、連結アーム(75)が揺動してストッパ(100)が係止孔(101)から外れてリヤスライダ(74)がフロントスライダ(30)に連動して前後移動するように構成されていることを特徴とするサンルーフ装置。
【請求項2】
前記連結アーム(75)はリヤスライダ(74)に上下揺動自在に枢支され、前記係止孔(101)はガイドレール(13)の底壁(22)に形成され、連結ピン(71)と連結カム溝(96)とが係合した際に連結アーム(75)が上方揺動することでストッパ(100)が係止孔(101)から外れると共に、ストッパ(100)が係止孔(101)から外れてリヤスライダ(74)が係止孔(101)より後方を前後移動する際に該ストッパ(100)がガイドレール(13)の底壁(22)上を摺動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のサンルーフ装置。
【請求項3】
前記フロントスライダ(30)に前記連結ピン(71)を設け、前記連結アーム(75)に前記連結カム溝(96)を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のサンルーフ装置。
【請求項4】
前記ストッパ(100)を係止孔(101)に嵌る方向に付勢するスプリング(102)を設けたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のサンルーフ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−121358(P2012−121358A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271437(P2010−271437)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000108889)ベバスト ジャパン株式会社 (36)