説明

サーキュレータの制御装置

【課題】 室内の温度分布を均一化するためのサーキュレータの制御装置に関する。
【解決手段】 ベース1の上に枠体2を配置し、枠体2の背面と前面に空気取入口4と空気吹出口5を設け、枠体2内に送風ファン5を備える。室内温度を検出する室温検出手段6と、送風ファン5の回転数を制御する風量制御手段7とを設け、風量制御手段7には所定の温度毎に設定された複数の風量変更ポイントPと、各風量変更ポイントP間の温度範囲Tに対応して送風ファン5の回転数Rが定められた制御パターンNを備える。風量制御手段7は室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントPと一致したときに、設定された回転数Rの変更を送風ファン5に指示するものであり、室温に対して最適な風量で送風ファン5を運転することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は室内空気を循環させるサーキュレータの風量の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンやストーブなどの冷暖房機器を単独で運転するときは、冷房時には室内の床面付近に冷気が集まり天井付近の温度が低下せず、暖房時には暖かい空気が室内の天井付近に集まり床面付近の温度が上昇しないため、室内の天井と床面付近では温度差が生じてしまう。サーキュレータはこれらエアコンやストーブなどの冷暖房機器と併用されて、室内空気を循環させることで室内の天井と床面付近の温度差を少なくして、冷暖房時の快適性を向上している。また、夏季には冷房機器の設定温度を高くし、冬季には暖房機器の設定温度を低くしても室内を快適な温度に維持できるようになり、省エネルギー性の向上に寄与できるものである。
【0003】
サーキュレータの風量を手動で操作して変更するときは、室内の温度分布に風量が一致していないときがあり、風量が不足するときは室内空気が循環されないため温度差が解消されないことになる。一方、風量が多いときは室内空気が循環されて温度差は解消できるが、騒音の問題や不必要に風が吹き付けて不快感を与えることがある。
【0004】
そこで、サーキュレータ本体に室内温度検出手段を備え、室内温度が設定温度に達したときに自動でファンの運転・停止を行ったり、風量を制御したりするものがあり、室内温度にあわせて風量を変化させることで風量不足や不必要な送風といった問題を解消している(特許文献1)。
【0005】
また最近では、室内の天井と床面のそれぞれの温度を検出するセンサを備え、天井と床面の温度差によってサーキュレータの運転を制御するものや、サーキュレータと冷暖房機器に通信手段を備えて、冷暖房機器の運転に連動してサーキュレータの運転を制御するものなどが提案されており、快適性や省エネルギー性の確保を図っている(特許文献2)。
【特許文献1】登録実用新案第3104900号 公報
【特許文献2】特開平8−270992号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サーキュレータの風量があらかじめ設定された温度で変更されるように設定されると、冷暖房機器の設定温度がサーキュレータの設定温度と一致しているときや、人の出入りが多く室温の変化が頻繁に起こるときには、サーキュレータの風量が頻繁に変更されることがあり、音や風量の変化が頻繁に繰り返されるため取扱者に不快感を与えたり、取扱者が故障と勘違いしたりすることがある。
【0007】
また、床面と天井の温度差や冷暖房機器と連動するものは、複数の温度センサや冷暖房機器との通信手段などが必要であり、部品点数や製造コストが増加し製品が高価なものになってしまう。サーキュレータは冷暖房機器の補助として使用されるものであり、安価であることが購入の条件として重視されるため、実用化は難しいものであり、生産コストを低く抑えながら、室内温度の変化に対応できる風量制御方法が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記の課題を解決するもので、床面に設置されるベース1と、該ベース1の上に配置される枠体2とを設け、前記枠体2の背面に形成する空気取入口3と、前記枠体2の前面に形成する空気吹出口4と、前記枠体2内に配置する送風ファン5とを設け、前記送風ファン5によって前記空気取入口3から前記枠体2内に取り込まれた空気が前記空気吹出口4から吹き出すサーキュレータにおいて、室内温度を検出する室温検出手段6と、前記送風ファン5の回転数を制御する風量制御手段7とを設け、前記風量制御手段7は所定の温度毎に設定された複数の風量変更ポイントPと、各風量変更ポイントP間の温度範囲Tに対応して送風ファン5の回転数Rとが定められた制御パターンNを備え、前記風量制御手段7は前記室温検出手段6の検出温度が前記風量変更ポイントPと一致したときに、設定された回転数Rの変更を前記送風ファン5に指示することを特徴とするものである。
【0009】
また、前記風量制御手段7には前記室温検出手段6の検出室温が前記風量変更ポイントPと一致したときに所定時間作動する可変停止手段8を設け、前記風量制御手段7は可変停止手段8が作動中の所定時間は送風ファン5の回転数Rを維持し、前記可変停止手段8の動作停止後に設定された回転数Rの変更を前記送風ファン5に指示することにより、室温が安定してから送風ファン5の回転数Rが変更するので、送風ファン5の風量が頻繁に変化することがないものである。
【0010】
また、前記風量制御手段7には運転開始から所定時間は送風ファン5をあらかじめ設定された回転数Raに保持する風量保持手段9を備え、前記風量保持手段9の動作停止後に制御パターンNによる制御を開始することにより、室内の温度分布を均一化してから制御パターンNによる制御を開始することができる。
【0011】
また、前記風量制御手段7の制御パターンNを複数個備えたパターン記憶手段10と、該パターン記憶手段10に備えた複数の制御パターンNのうちの一つを選択可能とする制御パターン選択手段11とを設けたことにより、使用環境に合わせて制御パターンNを選択することができる。
【0012】
また、前記制御パターンNには基準となる風量変更ポイントPsを定め、その風量変更ポイントPsから所定の温度範囲T毎に風量変更ポイントPが設定されると共に、前記風量変更ポイントPsの温度を選択可能とする基準温度設定手段12を設けたことにより、冷暖房機器の設定温度に合わせて風量変更ポイントPが設定でき、冷暖房機器による室温の変化に対応して送風ファン5の風量を変化させることができるものとなった。
【0013】
また、前記風量制御手段7は、本体の設置状態を検出する位置検出手段13を設け、位置検出手段13の出力信号によって異なる制御パターンNを選択することにより、サーキュレータの設置方法を変更したときに最適な制御パターンNが選択されるものとなった。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、風量制御手段7には所定の温度毎に設定された複数の風量変更ポイントPと、風量変更ポイントP間の温度範囲Tに対応する送風ファン5の回転数Rが定められた制御パターンNを備え、室温検出手段6の検出温度に基づいて送風ファン5の回転数Rを制御する構成としている。室温検出手段6の検出室温が風量変更ポイントPに一致したときに、あらかじめ設定された回転数Rを送風ファン5に出力するものであり、室温に対して最適な風量で運転するので、風量不足や不必要な送風による騒音や不快感を与えることはなくなり、室内の温度分布を均一化することができるものとなった。
【0015】
また、室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントPに一致したときは、可変停止手段8が所定時間作動し、風量制御手段7は可変停止手段8が作動中は回転数Rの変更を送風ファン5に出力せず、送風ファン5はそのままの回転数Rを保持しており、所定時間が経過して可変停止手段8の動作が停止後に回転数Rの変更を送風ファン5に指示する。
【0016】
室内温度に時間の要素を組み合わせることで、室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントPと一致してもすぐに回転数Rが変更されず、室温が安定してから送風ファン5の回転数Rの変更が行われるから、室内空気の循環が確実に行われて室内の温度分布を均一化することができた。
【0017】
また、風量変更ポイントPと冷暖房機器の設定温度が一致しているときや、人の出入りにより一時的に室温が変化したときなどには、短時間の間に風量変更ポイントPが繰り返し検出されることがあるが、この発明では、可変停止手段8の所定時間が経過する前に風量変更ポイントPが検出されるときは、送風ファン5は同じ回転数Rを維持したまま送風ファン5の回転数Rが変更されないから、音や風量の変化による不快感を与えることがなく、快適性が向上できるものとなった。
【0018】
また、運転開始から所定時間は風量保持手段9が作動して室温に関係なくあらかじめ定められた回転数Raで運転する構成としたので、運転開始時に床面付近と天井付近で温度差があるときでも室内空気を循環させており、床面と天井付近の温度差を解消してから制御パターンNによる制御を開始するので、短時間で確実に室内の温度分布を均一化することができる。
【0019】
また、複数個の制御パターンNをパターン記憶手段10に備え、複数の制御パターンNから最適なものを選択できるようにすることで、冷房機器と併用する場合や、暖房機器と併用する場合、もしくはサーキュレータ単独で使用する場合など、使用条件によって異なる室内の温度変化に合わせて最適な制御パターンNを選択して使用することができ、室内の温度分布の均一化の効果が期待できる。
【0020】
また、基準となる風量変更ポイントPsを定めて、その風量変更ポイントPsから所定の温度範囲T毎に各風量変更ポイントPが設定されるように構成しており、基準となる風量変更ポイントPsの温度を基準温度設定手段12によって変更できるようにしている。このようにすると、冷暖房機器の設定温度を変更したときに、風量変更ポイントPsを冷暖房機器の設定温度に合わせて設定することにより、冷暖房機器の設定温度による室温の変化に合わせて送風ファン5の風量が変化するものとなり、送風ファン5が最適な風量で運転するものとなり、室内の温度分布の均一化の効果が期待できる。
【0021】
また、サーキュレータは床置きだけでなく壁掛けでも使用できるものがあるが、床面付近と天井付近では室温変化の仕方が異なる。このため、風量制御手段7は本体の設置状態を検出する位置検出手段13を設け、位置検出手段13の出力信号によって異なる制御パターンNを選択する構成としたから、サーキュレータの設置方法が変更されたときは、設置方法に合わせて最適な制御パターンNが選択されるものであり、設置方法を変更したときに取扱者が制御パターンNを選択する必要はないから取扱いが容易であり、1台の製品で使用環境の異なる幅広いユーザーの要望に対応できるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施例を示すサーキュレータの構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施例を示すサーキュレータの縦断面図である。
【図3】この発明の実施例を示すサーキュレータの温度と回転数の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図に示す実施例によってこの発明を説明すると、1はサーキュレータのベース、2はベース1の上に設置する枠体、3は枠体2の背面に形成した空気取入口、4は枠体2の前面に形成した空気吹出口、2aは枠体2背面の空気取入口3と枠体2前面の空気吹出口4とを連通するように枠体2内に形成した空気流路、5は枠体2の空気流路2a内に配置したプロペラファンで構成される送風ファンであり、送風ファン5が回転すると枠体2背面の空気取入口3から室内空気が吸い込まれ、枠体2前面の空気吹出口4から前方に向かって吹き出す。
【0024】
14はサーキュレータの運転・停止を指示する運転スイッチ、15は風量を設定する風量設定手段、7は運転スイッチ14や風量設定手段15の出力信号を受けて送風ファン5の運転・停止や回転数を制御する風量制御手段であり、風量設定手段15は例えば「強」「中」「弱」「微風」の4段階の風量を備え、各風量に対応して送風ファン5の回転数Rを4段階に設定している。
【0025】
運転スイッチ14が操作されて運転開始信号が出力されると、風量制御手段7は風量設定手段15で設定された風量に基づいて送風ファン5を駆動する。風量設定手段15が操作されると、風量制御手段7は送風ファン5の回転数Rを変更する。また、運転中に運転スイッチ14が操作されて運転停止信号が出力されると、風量制御手段7は送風ファン5への通電を停止する。
【0026】
16はベース1と枠体2との間に形成した角度調節機構であり、枠体2の前面の空気吹出口5の吹出角度が前方と上方との間で変更できるようになっており、角度調節機構16によって枠体2前面の空気吹出口5を斜め上方や真上に向けることで、サーキュレータを床面に設置したまま部屋の上部空間や天井に向けて送風して室内空気を循環することができる。
【0027】
夏季にエアコンなどの冷房機器と併用するときは、枠体2の前面の空気吹出口4を斜め上方に向けると低温度の空気が室内全体に循環しやすくなり、床面と天井の温度差をなくして室内温度を均一にできるようになっている。一方、冬季にストーブなどの暖房機器と併用するときには、枠体2の前面の空気吹出口4を真上に向けて天井に向けて送風することで天井付近の温められた空気が床面に流れるので空気が循環しやすくなり、天井付近に暖かい空気が溜まるのを防ぐことができ、床面と天井の温度差をなくして室内温度を均一にできる。
【0028】
6はベース1に取り付けられた室温検出手段であり、サーキュレータが設置された室内の温度を検出する。風量制御手段7は風量設定手段15で設定された風量に基づいて送風ファン5の回転数Rを制御する手動運転モードと、室温検出手段6の検出室温に基づいて送風ファン5の回転数Rを制御する自動運転モードの2つの運転モードを備えている。17はこの2つの運転モードを切替える運転モード選択手段であり、手動運転中に運転モード選択手段17が操作されると自動運転が開始され、自動運転中に運転モード選択手段17が操作されると手動運転が開始される。
【0029】
自動運転モードが開始されると、風量制御手段7は室温検出手段6の検出室温に基づいて送風ファン5の回転数Rを変更するが、この発明は、送風ファン5の回転数Rを変更するときを風量変更ポイントPと定め、風量変更ポイントPを所定の温度毎に設定し、風量変更ポイントP間の温度範囲Tに対応して送風ファン5の回転数Rがあらかじめ設定されている。18は風量制御手段7に備えた比較手段であり、比較手段18は室温検出手段6の検出温度がどの温度範囲Tにあるかを判断して送風ファン5の回転数Rを決定しており、室温が上昇もしくは低下して風量変更ポイントPと一致して異なる温度範囲Tが検出されると、送風ファン5を対応する回転数Rに変更する。
【0030】
実施例では、風量変更ポイントP0より低い温度範囲をT0、風量変更ポイントP0とP1の間の温度範囲をT1、風量変更ポイントP1とP2の温度範囲をT2、風量変更ポイントP2より高い温度範囲をT3と設定し、温度範囲T0、T1、T2、T3のときの回転数をそれぞれR0、R1、R2、R3と設定している。風量制御手段7は、例えば、室温検出手段6の検出温度が温度範囲T2のときは送風ファン5を回転数R2で駆動しており、室温が上昇して室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントP2を検出したときは、送風ファン5を回転数R3に変更し、室温が低下して室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントP1を検出したときは、送風ファン5を回転数R1に変更するものであり、室温の変化に合わせて送風ファン5の風量を変化することができる。
【0031】
10は風量制御手段7に備えたパターン記憶手段であり、複数の風量変更ポイントPとそれに対応する回転数Rを定めたものを一つの制御パターンNとして設定し、パターン記憶手段10には風量変更ポイントPの温度と、風量変更ポイントP間の温度範囲Tに対応する送風ファン5の回転数Rの設定が異なる複数の制御パターンNを備えている。11はパターン記憶手段10に備えた複数の制御パターンNのうちの一つを選択可能とする制御パターン選択手段であり、制御パターン選択手段11を操作すると制御パターンが例えばN1・N2・N3・・と順に変更され、選択された制御パターンNが比較手段18に出力され、風量制御手段7は制御パターン選択手段11で選択された制御パターンNに基づいて送風ファン5の回転数Rを制御する。冷房時と暖房時では室温の変化の仕方が異なるが、冷房時や暖房時の運転条件に合った制御パターンNを設定することで、室内の温度変化に合わせて送風ファン5の回転数Rが制御できるので、室内の温度差を抑えて確実に室内の温度分布の均一化を図ることができる。
【0032】
実施例では、パターン記憶手段10の制御パターンNとして、冷房時に対応する制御パターンN1と、暖房時に対応する制御パターンN2と、その他の単独運転時に対応する制御パターンN3を備えている。
【0033】
図3(a)は、冷房時の制御パターンN1を示しており、冷房機器の運転開始後は室温が高く、冷房機器の設定温度に近づくにつれて室温が低下するから、風量変更ポイントP2より高い温度範囲T3のときの回転数R3を「中」、P2とP1の間の温度範囲T2のときの回転数R2を「弱」、P1とP0の間の温度範囲T1のときの回転数R1を「微風」、P0より低い温度範囲T0のときの回転数R0を「停止」に設定している。このようにすると冷房機器の運転開始後、室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントP2より高い温度範囲T3であれば、送風ファン5の風量が「中」に設定され、室温が低下して室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントP2と一致すると、送風ファン5の風量が温度範囲T2に対応する「弱」に変更される。その後、室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントP1に一致すると送風ファン5の風量が温度範囲T1に対応する「微風」に変更され、室温が冷房機器の設定温度付近まで低下して、室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントP0に一致して温度範囲T0になると送風ファン5が停止する。
【0034】
このように冷房機器と併用するときは、使用開始後の室温が高いときは送風ファン5の風量を多くすることで室内の床面付近に集まりやすい冷気を天井付近に循環させ、床面付近と天井付近の温度差を少なくして室内全体の温度を均一に下げることができるので、冷房機器が設定温度を検出するまでの時間を短くでき、省エネルギー性の向上につながるものとなった。また、室温が低下した後は送風ファン5の風量が低下もしくは停止するので、騒音の発生を抑えると共に不必要な送風による不快感を与えることがない。
【0035】
また、図3(b)は暖房時の制御パターンN2を示しており、暖房機器の運転開始後は室温が低く、暖房機器の設定温度に近づくにつれて室温が上昇するから、風量変更ポイントP2より高い温度範囲T3のときの回転数R3を「停止」、風量変更ポイントP2とP1の間の温度範囲T2のときの回転数R2を「微風」、風量変更ポイントP1とP0の間の温度範囲T1のときの回転数R1を「弱」、P0より低い温度範囲T0のときの回転数R0を「中」に設定している。このようにすると暖房機器の運転開始後、室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントP0より低い温度範囲T0であれば、送風ファン5の風量が「中」に設定され、室温が上昇して室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントP0と一致すると、送風ファン5の風量が温度範囲T1に対応する「弱」に変更される。その後、室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントP1に一致すると送風ファン5の風量は温度範囲T2に対応する「微風」に変更され、室温が暖房機器の設定温度付近まで上昇して、室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントP2に一致して温度範囲T3になると送風ファン5が停止する。
【0036】
このように暖房機器と併用するときは、使用開始後の室温が低いときは、送風ファン5の風量を多くすることで室内の天井付近に集まりやすい暖かい空気を床面付近に循環させ、床面付近と天井付近の温度差を少なくして、室内全体の温度を均一に上昇させることができるので、暖房機器が設定温度を検出するまでの時間を短くでき、省エネルギー性の向上につながるものとなった。また、室温が上昇すると送風ファン5の風量が低下もしくは低下するので、騒音の発生を抑えると共に不必要な送風による不快感を与えることがない。
【0037】
また、図3(c)は春や秋などの冷暖房機器を使用しないときの制御パターンN3の実施例であり、制御パターンN3では風量変更ポイントP0とP1が設定され、温度範囲T2が広く設定されている。風量変更ポイントP1より高い温度範囲T2のときの回転数R2を「弱」、P1とP0の間の温度範囲T1のときの回転数R2を「微風」、P0より低い温度範囲T0のときの回転数R0を「停止」に設定しており、制御パターンN3を選択するときは、サーキュレータを単独で使用するときを想定しているから、風量変更ポイントPを少なくして送風ファン5の回転数を安定させ、音や風量の変化ができるだけ少なくなるようにしている。
【0038】
各制御パターンNの風量変更ポイントPの温度と、温度範囲Tに対応して設定される送風ファン5の回転数Rは任意であるが、室温が変化しないときは送風ファン5が高い回転数Rのまま長時間運転する可能性がある。このため、実施例では自動運転時の最高回転数を一段階低い「中」に設定することで、長時間室温が変化しない場合の騒音の発生を抑えることができる。
【0039】
このように風量変更ポイントPと、風量変更ポイントP間の温度範囲Tに対応して送風ファン5の回転数Rが定められた制御パターンNを備えることで、室温の変化に合わせて送風ファン5の回転数Rを制御することができるので、風量不足や無駄な送風がなくなり、室内の温度分布の均一化ができる。また、冷房時と暖房時の室温の変化の仕方に対応した風量変更ポイントPと送風ファン5の回転数Rを備えた複数の制御パターンNを用意したから、年間を通じて室内の温度分布の均一化の効果を得ることができるものとなった。
【0040】
8はタイマーを内装する可変停止手段であり、室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントPと一致したときに内装するタイマーを作動し、可変停止手段8はタイマーの設定時間だけ作動して風量制御手段7による送風ファン5の回転数の変更動作を停止する。タイマーの設定時間が経過して可変停止手段8が停止すると、風量制御手段7が対応する回転数Rの変更を送風ファン5に指示する。
【0041】
また、可変停止手段8のタイマーの設定時間が経過する前に、室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントPと一致して異なる温度範囲Tになったときは、タイマーをリセットしてカウントをやり直すものであり、室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントPと一致してから同一の温度範囲Tを設定時間以上維持したときに、はじめて風量制御手段7が送風ファン5の回転数Rを変更するものである。
【0042】
サーキュレータは床面に置いて使用されるため、室温検出手段6が床面付近の温度を検出することになるが、冷房時は床面付近の温度が低下しやすいため、室温検出手段6が風量変更ポイントPに対応する温度を検出したときでも、天井付近では温度が高く、床面付近と天井付近の温度差が大きいときがあり、送風ファン5の回転数をすぐに低下すると温度差の解消に時間がかかることがある。
【0043】
また、人の出入りが多く室温が安定しないときや、冷暖房機器の設定温度が風量変更ポイントP付近に設定されているときには、室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントPをまたいで変化しやすいので、風量変更ポイントPが頻繁に検出されることがある。このとき、送風ファン5の回転数Rが短時間で頻繁に変更されると、風量や音の変化が頻繁に繰り返されて不快感を与えたり、ユーザーが故障と勘違いしたりすることがある。
【0044】
この発明では、室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントPと一致してから設定時間は送風ファン5の回転数Rをそのまま維持しており、室温が冷暖房機器の設定温度に達するまでは送風ファン5の回転数Rを低下させるタイミングを遅らせて室内の空気をできるだけ循環させるので、床面付近と天井付近の温度差を少なくすることができ、確実に温度差を解消して室内の温度分布を均一化できるものとなった。そのため、冷暖房機器が設定温度を検出するまでの時間も短くでき、省エネルギー性が向上できるものとなった。
【0045】
また、冷暖房機器の設定温度付近で室温が安定後、人の出入りなどによって風量変更ポイントPをまたいで室温が上下に変化したときでも、可変停止手段8の設定時間が経過する前に風量変更ポイントPが検出されたときは、送風ファン5の回転数Rがそのまま維持されるから、送風ファン5の風量が頻繁に変更されることがなくなり、風量や音の変化による不快感を与えたり、誤って故障と判断されたりするようなことはなくなった。
【0046】
9はタイマーを内装した風量保持手段であり、風量保持手段9は運転モード選択手段16によって自動運転が選択されたときに内装するタイマーを作動し、風量保持手段9はタイマーの設定時間だけ作動し、風量保持手段9の作動中は風量制御手段7があらかじめ定められた回転数Rを送風ファン5に出力する。設定時間が経過して風量保持手段9が停止すると、風量制御手段7が室温検出手段6の検出温度に基づいて運転を開始する。
【0047】
サーキュレータの運転開始後は、床面付近と天井付近の温度差が大きく開いていることがあり、この場合は床面付近の温度は天井付近より低い温度が検出されるため、室内温度検出手段6の検出温度に基づいて運転すると、室内の天井付近の温度が高いときでも送風ファン5の回転数が低く設定されることがあり、室内空気の循環不足が起こり温度差を解消できないことがある。
【0048】
この発明では、運転開始から一定時間は室温検出手段6の検出温度に関係なく送風ファン5を「弱」で運転して強制的に室内空気の循環を行うので、床面付近と天井付近の温度差を少なくして室内の温度分布が均一化されてから、室温検出手段6の検出温度に基づく制御を開始するから、短時間で温度差を解消して確実に室内の温度分布を均一化できるものとなった。実施例では騒音を抑えるために風量保持手段9で設定される風量を「弱」に設定しているが、この風量は「強」や「中」でもよい。
【0049】
ところで、冷房機器の設定温度が風量変更ポイントP0より高く設定されているときや、暖房機器の設定温度が風量変更ポイントP2より低く設定されているときは、室温が冷暖房機器の設定温度になっても送風ファン5の風量が低下しないことがある。また、冷房機器の設定温度が風量変更ポイントP0より低く設定されているとき、あるいは暖房機器の設定温度が風量変更ポイントP2より高く設定されており、風量変更ポイントPと冷暖房機器の設定温度との温度差が大きいときは、早い段階で送風ファン5の回転数Rが低下もしくは停止してしまうことがある。
【0050】
この発明の他の実施例では、基準となる風量変更ポイントPsを定めて、その風量変更ポイントPsを基準として各風量変更ポイントPが設定されるように構成している。12は風量変更ポイントPを変更する基準温度設定手段であり、基準温度設定手段12で希望する温度を入力すると、風量変更ポイントPsの温度が変更される。基準となる風量変更ポイントPsを変更しても各風量変更ポイントP間の温度範囲Tは変更されない。基準となる風量変更ポイントPsの温度を高く変更したときは高くした分だけ各風量変更ポイントPの温度も高くなり、基準となる風量変更ポイントPの温度を低く変更したときは低くした分だけ各風量変更ポイントPの温度も低くなる。
【0051】
制御パターンN1のときは基準となる風量変更ポイントがP0となり、制御パターンN2では基準となる風量変更ポイントがP2となるように構成されている。したがって、冷房時の制御パターンN1のときは、風量変更ポイントPsを冷暖房機器の設定温度に設定すれば、風量変更ポイントP0が冷房機器の設定温度と一致し、暖房時の制御パターンN2のときは、風量変更ポイントPsを暖房機の設定温度に設定すれば、風量変更ポイントP2が暖房機器の設定温度と一致するものとなる。
【0052】
冷暖房機器の設定温度に合わせて風量変更ポイントPsの基準温度を設定すれば、冷暖房機器の設定温度になったときに確実に送風ファン5の風量が低下もしくは停止するものとなるから、サーキュレータの送風ファン5の風量の変化が冷暖房機器の設定温度と一致でき、快適性が向上できる。
【0053】
サーキュレータを暖房機と併用するときにおいて、床面に置いて使用するときは空気吹出口4を真上に向けて天井に向けて空気を吹き出すようにするが、暖房機器と併用するときは壁掛けにして天井付近の高所に設置して使用したいという要望がある。この場合、床面付近と天井付近では温度変化の仕方が異なるから、壁掛け用の制御パターンが必要となるが、単純に制御パターンの種類を増やすと取扱者が設定を間違えたり、どの制御パターンを選択すればよいかわからなくなったりすることがある。
【0054】
13はベース1内に設けた傾斜センサで構成する位置検出手段であり、床面に設置したときと、壁掛けにして横向きになったときを検出して異なる信号を風量制御手段7に出力する。
【0055】
パターン記憶手段10には壁掛け時のための制御パターンN2aを備えており、取扱者が制御パターン選択手段11によって制御パターンN2を選択していたときにおいて、位置検出手段13が床置き時の信号を出力しているときは制御パターンN2が設定され、位置検出手段13が壁掛け時の信号を出力しているときは制御パターンN2aが設定されるようになっている。
【0056】
位置検出手段13の出力信号によって、同じ制御パターンN2でも異なる制御を行うようにしており、図3(d)は位置検出手段13が壁掛け時の信号を出力しているときの暖房時の制御パターンN2aを示しており、風量変更ポイントP2より高い温度範囲T3のときの回転数R3を「中」、P2とP1の間の温度範囲T2ときの回転数R2を「弱」、P1とP0の間の温度範囲T1ときの回転数R1を「微風」、P0より低い温度範囲T0のときの回転数R0を「停止」に設定して、床置き時と壁掛け時とでは逆の制御を行うようにしている。
【0057】
暖房機器の運転開始後は室温が低く、室温検出手段6の検出温度が温度範囲T0のときは送風ファン5が停止している。室温が上昇して室温検出手段6の検出温度が風量変更ポイントP0と一致すると送風ファン5の風量が「微風」に変更され、天井付近の空気を床面に向けて循環させる。更に室温が上昇して検出温度が風量変更ポイントP2と一致すれば、送風ファン5の風量が「中」変更される。暖房時は床面よりも天井付近の温度が先に上昇するから、室温が高くなるときに送風ファン5の風量を多くすることで天井付近に集まる暖められた空気を床面付近に循環させることができ、室内の温度分布を均一化しやすいものである。
【0058】
この構成では、取扱者が制御パターンN2を選択する必要はなく、位置検出手段13の出力に基づいて風量制御手段7が自動で制御パターンNの設定を行うから、制御パターンNを誤って設定したり、どの制御パターンNを設定すればよいか迷ったりすることがなく、取り扱い性が良いものとなる。
【符号の説明】
【0059】
1 ベース
2 枠体
3 空気取入口
4 空気吹出口
5 送風ファン
6 室温検出手段
7 風量制御手段
8 可変停止手段
9 風量保持手段
10 パターン記憶手段
11 制御パターン選択手段
12 基準温度設定手段
13 位置検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設置されるベース(1)と、該ベース(1)の上に配置される枠体(2)とを設け、
前記枠体(2)の背面に形成する空気取入口(3)と、前記枠体(2)の前面に形成する空気吹出口(4)と、前記枠体(2)内に配置する送風ファン(5)とを設け、
前記送風ファン(5)によって前記空気取入口(3)から前記枠体(2)内に取り込まれた空気が前記空気吹出口(4)から吹き出すサーキュレータにおいて、
室内温度を検出する室温検出手段(6)と、
前記送風ファン(5)の回転数を制御する風量制御手段(7)とを設け、
前記風量制御手段(7)は所定の温度毎に設定された複数の風量変更ポイントPと、各風量変更ポイントP間の温度範囲Tに対応して送風ファン(5)の回転数Rとが定められた制御パターンNを備え、
前記風量制御手段(7)は前記室温検出手段(6)の検出温度が前記風量変更ポイントPと一致したときに、設定された回転数Rの変更を前記送風ファン(5)に指示することを特徴とするサーキュレータの制御装置。
【請求項2】
前記風量制御手段(7)には前記室温検出手段(6)の検出室温が前記風量変更ポイントPと一致したときに所定時間作動する可変停止手段(8)を設け、
前記風量制御手段(7)は可変停止手段(8)が作動中の所定時間は送風ファン(5)の回転数Rを維持し、前記可変停止手段(8)の動作停止後に設定された回転数Rの変更を前記送風ファン(5)に指示することを特徴とする請求項1記載のサーキュレータの制御装置。
【請求項3】
前記風量制御手段(7)には運転開始から所定時間は送風ファン(5)をあらかじめ設定された回転数Raに保持する風量保持手段(9)を備え、
前記風量保持手段(9)の動作停止後に制御パターンNによる制御を開始することを特徴とする請求項1または2に記載のサーキュレータの制御装置。
【請求項4】
前記風量制御手段(7)の制御パターンNを複数個備えたパターン記憶手段(10)と、該パターン記憶手段(10)に備えた複数の制御パターンNのうちの一つを選択可能とする制御パターン選択手段(11)とを設けたことを特徴とする請求項1から3に記載のサーキュレータの制御装置。
【請求項5】
前記制御パターンNには基準となる風量変更ポイントPsを定め、その風量変更ポイントPsから所定の温度範囲T毎に風量変更ポイントPが設定されると共に、前記風量変更ポイントPsの温度を選択可能とする基準温度設定手段(12)を設けたことを特徴とする請求項1から4に記載のサーキュレータの制御装置。
【請求項6】
前記風量制御手段(7)は、本体の設置状態を検出する位置検出手段(13)を設け、
位置検出手段(13)の出力信号によって異なる制御パターンNを選択することを特徴とする請求項1から5に記載のサーキュレータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−13261(P2012−13261A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147708(P2010−147708)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)
【Fターム(参考)】